気まぐれCINEMAレビュー BackNumber
1999年〜
【ラ行】
過去の「気まぐれCINEMAレビュー」をまとめました。満足度は★で、がっかり度は×で評価しました。
五十音順にタイトルが並んでいます。
データベースとしてご活用下さい。
【過去の年間BEST3】 BackNumber CINE LATINO (2007年〜 中南米映画 日本未公開版 2007年〜 【ア】【イ】【ウ】【エ】【オ】 【カ】【キ】【ク】【ケ】【コ】 【サ】【シ】【ス】【セ】【ソ】 【タ】【チ】【ツ】【テ】【ト】 【ナ】【ニ】【ヌ】【ネ】【ノ】 【ハ】【ヒ】【フ】【ヘ】【ホ】 【マ】【ミ】【ム】【メ】【モ】 【ヤ】【ユ】【ヨ】 【ラ】【リ】【ル】【レ】【ロ】 【ワ】【タイトル不明】 1999〜2005年 【ア】【イ】【ウ】【エ】【オ】 【カ】【キ】【ク】【ケ】【コ】 【サ】【シ】【ス】【セ】【ソ】 【タ】【チ】【ツ】【テ】【ト】 【ナ】【ニ】【ヌ】【ネ】【ノ】 【ハ】【ヒ】【フ】【ヘ】【ホ】 【マ】【ミ】【ム】【メ】【モ】 【ヤ】【ユ】【ヨ】 (1999〜2006) 【ラ】【リ】【ル】【レ】【ロ】 (1999〜2006) 【ワ】【タイトル不明】(1999〜2006) |
ライフ・イズ・ミラクル LIFE IS A MIRACLE ★★
エミール・クストリッツァ監督 レビューはCINEMAの監督たち(E・クストリッツア)へ
ランド・オブ・プレンティ LAND OF PLENTY ★★
ヴィム・ヴェンダース監督、ミシェル・ウィリアムズ、ジョン・ディール、ウェンデル・ピアース、バート・ヤング出演☆2003年の9月。宣教師の親に連れられ、アフリカやヨルダン川西地区で暮らしていたアメリカ人女性ラナは、母の弟ポールに会うために、アメリカへ帰国する。
一方、ベトナム戦争の帰還兵であるポールは、ロサンゼルスの街中を監視カメラ付の車で走りまわり、一人で武装してコマンドになりきっている。
ある日、ポールが不審者と思い込み監視を続けていたアラブ人ハッサンが殺された。現場を目撃したポールは、イスラムのテロリストが関与していると信じ込み、捜査を始める。
妄想にとりつかれた男ポールは「タクシー・ドライバー」でデニーロが演じたトラビスそのものだ。
トラビスのような不気味なキャラではないけど、本人はいたって真剣。まわりは敵だらけと思い込み、「自分は国を救うヒーロー」「アメリカは負けたことがない」、と信じている。その姿は滑稽でもあるのだが、こうなってしまった理由を考えると笑い飛ばせない重みがある。
ベトナム戦争で傷ついた心と体は癒えることなく、「911テロ」を迎えることになってしまった。それゆえの間抜けな奇行。
ポールのおかしくて痛々しい言動を、姪のラナが悲しそうに見つめるシーンは、胸につまるものがあった。
一方、ラナも「911」によって傷ついた一人だったことが最後に明かされる。亡き母の手紙を叔父に届けるためだけに帰国したのではなかったのだ。
この映画はあくまで白人側からの視点で描いているので、賛否両論いろいろあるだろう。
無残に殺されたハッサンの人生はほとんど語られていないし、「テロリスト説」のオチも、なんだか釈然としなかった。
ただ、「反戦」というメッセージだけはしっかりと印象づけられた。声高に言ってるわけではないんだけど、気持ちがこめられていた。
お恥ずかしいが、イスラエル、パレスチナ問題については知識があまりないので、ラナが暮らしていたのがヨルダン西地区と聞いても、ピンと来なかった(勉強不足を反省)。
あまり評判はよくないけど、スピルバーグの「ミュンヘン」とも見比べてみたい。
ポール役のジョン・ディール、知らない役者だったがいい味だしてた。ミシェル・ウィリアムズもピュアな役を初々しく演じていてGOOD。ヒース・レジャーとはベスト・カップルなので、せめて3年はもってほしいな(余計なお世話か)。
&「ロッキー」の名コーチ役バート・ヤングの顔を久々に拝めたのにも歓喜。まだご健在だったのねー。
とにもかくにも、いろいろと考えさせられた余韻の残る作品だった。2006.2.12 参考CINEMA:「アメリカ、家族のいる風景」「ミリオンダラー・ホテル」
ラテン・アメリカ/光と影の詩 EL VIAJE (1992年・アルゼンチン) ★
フェルナンド・E・ソラナス監督、ウォルター・キロス、ドミニク・サンダ、ソルダード・アルファロ、クリスティーナ・ベセラ出演☆アルゼンチンの南の孤島で暮らす高校生マルティンは、生き別れた父を探すため島をでる。延々と続く荒地を自転車で黙々と走り続けるマルティンは、旅の途中で奇妙な人々に遭遇。大洪水のブエノスアイレス、腐敗した政治家、マヤ文明の遺跡等々、旅を通じてマルティンは社会を知るようになる。
だだっ広い南米大陸の風景に、徹底した社会批判を盛り込んだ誌的世界が独特で、思わず見入ってしまった。社会批判を笑いでくるんだ描き方はクストリッツア作品にも通じる世界だ。
アルゼンチン、ペルー、ブラジル、メキシコ…。各地の抱える問題に触れてはいるが、決して説教臭くはなく、一歩引いたところから冷静に語られているのがいい。アートである。ロードムービー、現実と幻が絡み合う構成、風刺のきいたユーモア。私の好きな要素が3拍子揃った映画。ぜひ、大きなスクリーンで見直してみたい1本である。
監督は、後にアルゼンチン大統領に名誉棄損で訴えられ、さらには、狙撃される事件もあったらしい。闘う監督ならではのエピソードだ。日本で言えば、伊丹ワールドに壮大さとポエムを加えたような感じでしょうか。2007.3
ライフ・イズ・コメディ THE LIFE AND DEATH OF PETER SELLERS
スティーヴン・ホプキンス監督、ジェフリー・ラッシュ、シャーリーズ・セロン、エミリー・ワトソン、ジョン・リスゴー出演☆喜劇俳優ピーター・セラーズの半生を描いた伝記ドラマ。ジェフリー・ラッシュが本人そっくり!演技力に感服しました。4度も結婚してるから、マザコン男だとは思ってたけど、「貪欲に生きろ」と息子に言い続けた母親のキャラは強烈だった。
ソフィア・ローレンに恋をしたっていう話は知らなかった。スターの伝記っていろんな裏話が出てくるのが面白い。欲を言えば「Drストレンジ・ラブ」でのキューブリック監督との確執をもうちょっと詳しく描いてほしかったかなあ。
マーロン・ブランドやフランク・シナトラは、かなりの面白話がありそうだけど、誰か映画化してくれないかな。2005.10.23
ライト・スタッフ ★
フィリップ・カウフマン監督、エド・ハリス、デニス・クエイド、スコット・グレン、サム・シェパード出演☆長い作品だし、あんまり宇宙ものに興味がなかったのでずっと、はずしていたんだけど、思わぬヒット。見ようによっては、ドキュメンタリータッチでわかりにくいんだけど、ただひたすら速度を追及するパイロットのロマンが伝わってくる不思議な映画だった。サム・シェパードは、始め宇宙飛行士になるかと思ったんだけど、別の道を歩んだのねえ。有名になり英雄視された宇宙飛行士たちも、元々は単純に速さを競うパイロットだったのかあ。等等、知らないことだらけ。
ちょうど「From The Earth,Go to The Moon」(見応えあり)という月旅行計画を追ったドキュメンタリーをテレビで見たところだったので、宇宙飛行士たちのその後の人生も伺い知ることができて興味深かった。
宇宙飛行士の中で、最も印象的だったのは不運の男ガス。ジョン・グレンは美味しいとこ取りで、議員になってちゃっかりスペース・シャトルにも乗ってるんだよね。真のパイロットとは何ぞや? 立花隆の「宇宙からの帰還」も読み直してみよう。 2001.7.13
ラウンド・ミッドナイト
ベルトラン・タヴェルニエ監督、ハービー・ハンコック音楽、デクスター・ゴードン、フランソワ・クリュゼ、マーティン・スコセッシ、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、
トニー・ウィリアムズ、 フレディ・ハーバード出演☆50年代末のパリが舞台のジャズ映画。モデルはジャズ・ピアニスト、バド・パウエル。デクスター・ゴードンってほんとにアル中?と思わせる迫真の演技。(たぶん演技じゃないと思うが)。
そうそうたるミュージシャンを使っているので、ライブ・シーンは見ごたえがあった。フランス人の若いファンが、ミュージシャンを酒から抜けさせようとする姿が痛々しかった。結局NYに戻って、また元の破滅人生を送ってしまう、という結末は悲しかったけど、それもまた人生。人にはその人にしか理解できない生き様があるのだろう。
スコセッシ監督がNYの怪しいプロモーター役で出ていた。スコセッシ監督がからんでた映画の音楽ってみんなセンスがいい。ファンとしては、大作よりもNYが舞台の秀作をもっとたくさん撮って欲しいのだが。2004.2.21
ラウンダーズ
マット・デイモン、ジョン・マルコビッチ、エドワード・ノートン出演☆評判通り、しょうもない友人役のノートンが、デイモンを食っていた。ギャンブル好きにはおもしろいんだろうけど、正直、あまり楽しめなかった。2000.2.19
ラスト・ゲーム
スパイク・リー監督、デンゼル・ワシントン出演☆高校のバスケットのスター、ジーザス。彼の進路を巡って大人たちが、大騒ぎをする。どこの国でも同じですね。スポーツ選手のスターって、大変。で、ジーザスの父は誤って妻を殺してしまった囚人。彼は市長の出身校に息子を進ませれば刑期を短くしてやると約束され、1週間の期限付きで出所する。が、息子は父が母を殺したことで、父を恨んでいて心をひらかない。でも、本当は自分にバスケを教えてくれた父を尊敬もしていて…。デンゼルが、めずらしく、あまりさえない父親役を演じていた。格好悪い役やると格好悪くみえるもんなのね。スパイク・リーっぽくなかったのは、バスケファンが高じてできた作品だからか。ちょっとドキュメントっぽかったです。息子の役はほんとの選手がやっていたらしいけど、後半はなかなか良かったです。2000.3.26 参考CINEMA:「インサイド・マン」「25時」
ラスト・サムライ Last Samurai ★★
エドワード・ズウィック監督、トム・クルーズ製作・主演、渡辺謙、真田広之、小雪ほか出演☆明治初期の日本。近代的軍隊の育成のため、アメリカから派遣された元大尉が、刀を手に国家に抵抗する武士たちと触れ合ううちに、武士道を重んじる男たちの精神に魅せられていく。
ハリウッドが日本を描く、ということであんまり期待してなかったが、黒澤映画を見ているように迫力があり楽しめた。
前半はアメリカ人と日本人の「異文化コミュニケーション」ばかりで少々飽きてしまったが、後半の戦闘シーンは昔の大河ドラマを見ているようだった。
田舎の風景がカナダみたいだったり、町の電柱が妙だったり、勝元の最期で兵隊たちが土下座するのがやりすぎだったり、いろいろ細かいところはつっこみたくなったんだけど、そんなことを上回るスケールの大きさを感じた。
大砲や鉄砲で殺しあうことを拒否し、剣の道で生きようとする侍の生き様が格好いい!
トム・クルーズやるじゃん!古きよき日本の姿を描いてくれたことに感謝したい。ひとつだけ難癖つけるとすれば、エンディングかな。トムだけ生き残って好きな女性の待つ場所に戻るっていうのは、いかにもハリウッド的なエンディング。あそこで渡辺謙と一緒に壮絶な最期を遂げるのが、真の侍なのになあ。その美学を理解してもらうのはやっぱり無理か。
渡辺謙は「独眼流政宗」のときとたいして変わりのない演技だと思った。でも、アメリカ人には新鮮に感じるのかも。
スタッフも日本人を使ってるのかなあ。違和感をあまり感じなかったのは、日本の俳優の英語がうまくなったのも要因かも。それと子役が上手でびっくりした。演技が上手なのか、演出のおかげなのか。
2004年の初めの映画としてはなかなかベストな1本でした。2004.1.1
ラッチョ・ドローム
トニー・ガトリフ監督タラフ・ドゥ・ハイドゥークス出演☆ロマ(ジプシー)発祥の地と呼ばれる北西インドから、エジプト、トルコ、ルーマニア、ハンガリー、スロバキア、フランス、スペイン、それぞれの地で生きるロマたちの歌と踊りを、広大な自然と共に描いた作品。
同じ民族の音楽ではあっても、土地によって微妙に感じが違うし、人々の服装や表情もまったく違う。それを比較して見るだけでも面白い。
ジプシー映画は、クストリッツア監督のものがやっぱり一番好きだが、正攻法で描いたガトリフ監督ものも、ドキュメンタリータッチで好感が持てた。ロマの発祥の地が北インド、というのは初耳だった。リシケシュでヒンズーの祈りを生で聞いた後だったので、聞き入ってしまった。2003.8.2 参考: インド旅行記 エミール・クストリッツア 参考CINEMA:「愛より強い旅」
「僕のスイング」
LOVERS 十面埋伏 ★
チャン・イーモウ監督、金城武、チャン・ツィイー、アンディ・ラウ出演☆9世紀中頃の中国。“飛刀門”一派の壊滅に乗り出した王朝側の二人の捕吏(警察官みたいなもの)は、遊郭で一番人気の盲目の踊り子が飛刀門一派とにらんで近づく。
お互い敵同士と知りながら惹かれあってしまう若い二人と、女をけなげに愛し続けた中年男。若い二人の姿は美しかったが、ボロボロになる中年男アンディに肩入れしてしまった。「インファナル・アフェア」でもそうだったけど、敵役のアンディは哀愁があって魅力的。「HERO」と比較すると、映像、ストーリー、役者ともにちょっと見劣りするが、アクションあり、せつないラブストーリーありで、飽きずに楽しめた。2004.9.3 参考CINEMA:「HERO」「初恋のきた道」「至福のとき」
ラブ・アクチュアリー LOVE ACTUALLY
リチャード・カーティス監督、ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、ローラ・リニー、ローワン・アトキンソン、ビリー・ボブ・ソーントン出演☆クリスマス前のロンドンを舞台に、さまざまな境遇の男女が、淡い片思いを実らせようと奮闘する豪華スター競演のラブコメディ。
若い大統領はちょっと太目の秘書に恋をし、障害者の弟を持つOLは、若い同僚に片想いし、母親を亡くした少年はアメリカへ帰国する少女の気をひくためにドラムのレッスンに夢中になり…。どうってことない恋のお話、といってしまえばそれまでなんだけど、青春時代の淡い恋心を思い出させてくれるかわいいラブストーリーだった。
障害者の弟をもつOLには一番、幸せになってもらいたかったのに、中途半端に終わってしまったのがちょっと残念。大統領の恋よりも、不遇の女性を幸せにする話のほうが、もっとヒットしたはず。惜しかったで賞。
ちなみに、個人的にお気に入りのキャラは、毒舌の爺ロッカー。かっこよくはないんだけど、いい味だしてた。2004.10.30
ラブ・アンド・デス
J・プリーストリー監督・出演、ジョン・ハート出演☆ロンドンで孤独に生きる作家が、あるアイドルに恋をする。そして、彼に会うためにNYへ行き、言葉巧みに近づいて、ついに愛を告白する。ビスコンティの名作「ベニスに死す」の現代版。アイドルを追い掛ける老紳士の姿が滑稽だけどかわいかった。何歳になっても、恋はしたいものだ、と感じた。 2001.1.21
ラマン
マルグリット・デュラス原作、ジャン・ジャック・アノー監督、ジェーン・マーチ、レオン・カーフェイ出演ジャンヌ・モロー:ナレーション☆フランス人の少女と中国人との出会いと別れをエロチックに描いた衝撃作。
1度見たときは退屈に感じたが、エロだけじゃなくて、家族のドラマもあったのね。
デュラスって金持ちでスノッブなイメージがあるけど違ったようだ。植民地でもフランス人がみんな裕福な暮らしをしていたわけではなかったのね。でも、やっぱり華僑は成金だったようだ。ベトナムでも中華街に行って見たい。2003.9.5
ランダム・ハーツ
シドニー・ポラック監督、ハリソン・フォード、クリスティン・スコット・トーマス出演☆警官の妻と下院議員の夫が事故にあった飛行機に夫婦として同乗。それをしった警官と議員は二人の関係を一緒に探しながらお互いにしかわからない痛みをなぐさめあい、それが恋に代わっていく。「花様年華」と似てる設定で、これまた大人の恋愛物語。
ハリソン・フォードだから事件ものかと予想してたので、意外な作品だった。けっこう好きかも。苦悩するハリソンはやっぱりすてき。2001.4.29
ラン・ローラ・ラン LOLA RENNT
トム・ティクヴァ監督・脚本、フランカ・ポテンテ、モーリッツ・ブライブトロイ、ハイノ・フェルヒ出演☆恋人から20分で10万マルクを工面しなければ殺される、と聞かされた女が金の工面に町を奔走する。解決方法を3つそろえ、3つ目でやっと丸く収まる、というストーリー構成が面白かった。走る女の姿がりりしい!さすがゲルマン女!日本人とは筋肉のつき方が違うわー、と見とれてしまった。2005.6.26
参考CINEMA:「ヘブン」
ライブ・フレッシュ
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ラスベガスをやっつけろ
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リトル・ミス・サンシャイン LITTLE MISS SUNSHINE ★
ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス(夫婦で)監督、 グレッグ・キニア、トニ・コレット、スティーヴ・カレル、アラン・アーキン出演☆フーヴァー家は、お世辞にもリッチとは言えない小市民ファミリー。家長のリチャードは、「勝ち組」になるためのセミナーを開いて、本の出版でひと稼ぎしようと必死だが、妻は大口を叩く夫の言葉に耳をかさない。
ニーチェに傾倒する15歳の息子は一言も口をきかず、ポルノ好きのヤク中じいちゃんは老人ホームから追い出されて居候。
さらに、自殺未遂したプルースト研究家の叔父まで抱え込む。
個性豊かな面々がそろうフーバー家に突然舞い込んだのは、ちょっと太目の末娘、オリーブのミスコン出場話。一家は「ミスコン優勝!」という娘の無謀な夢をかなえるため、オンボロのワゴン車で、アリゾナから“夢のカリフォルニア”へ向かう。
前向きに挑戦することと、無謀な夢の境目はどこにあるのだろう。
たとえば、宝くじで1億円当てたいと願うのは無謀な夢。
キャリアアップするために資格を取ろうとすることは前向きな挑戦、になるのだろうか。
でも、資格をとることでも、人によっては無謀な夢、と感じるかもしれないし、逆に、宝くじがホントに当たると信じてる人もいるだろうし…。
オリーブは、パパから「勝ち組になれ」と、始終プレッシャーをかけられてきた7歳の女の子。もちろん、無謀な夢と、前向きな挑戦の境目なんてわかるわけがない。自分はかなりかわいい方だと思ってるし、ミスコンで優勝することができると本気で信じている。
そんなオリーブの夢を壊しちゃかわいそう、とフーバー・ファミリーは立ち上がる。
なんて娘思いのファミリーなの!!
ところがどっこい、そんなに世の中、単純じゃない。
この一家、揃いもそろって夢や理想を実現できず、社会の中で敗者に甘んじている「負け組」ファミリー。勝ち組にコケにされ、傷つき、いつか見返したい、と思いながらも、負けを認めざるを得ない状況にあるのだ。
だから、純粋なオリーブの夢に自分も便乗して、一瞬だけでも、夢見る気分を味わおうとするのである。
パパ、じいちゃん、叔父さん、お兄ちゃん。キャラクターはバラバラだけど、みーんな間抜けなところがSO NICE! そして、夢見る眼鏡少女のオリーブが最高にキュート。クライマックスのダンスシーンなんて、いじらしくて泣けてきちゃいました。
お気に入りの名脇役トニ・コレットは、今回、唯一、まともな役だったけど、彼女が演じてるってだけで、やっぱりこのママもちょっとオカシイと思えてしまったし…。
オンボロな黄色のワゴン車はダメ人間、フーバー家の象徴である。あちこちガタがきてるけど、なんとかみんなで協力し合えば、とりあえず前へ進んでいける。
人間も同じこと。ダメ人間ばかりでも、必死になって助け合えば、見栄えは悪くても、笑って生き抜くことができるのだ。
「夢」も「理想」もかなわなくたっていいじゃない。生きてりゃいいことあるかもよ。
そんな、小さな希望を与えてくれる超キュートな作品だった。
この映画、アメリカでプチ・ヒットしたらしい。「アメリカン・ドリーム」の本家には、大志を頂いて挫折した「負け組」もたくさんいるということでしょう。
「勝ち組」「負け組」っていう言葉はヘドが出るほど嫌いですが、自分を含めた「負け組」へのエールをこめて、あえて使わせていただきました。
負け組映画「リトル・ミス・サンシャイン」と、勝ち組映画「幸せのちから」を見比べてみるのも、面白そうデス。
最後にもう一言:最高に楽しめたんだけど、エロじいちゃんの活躍、もう少し見てみたかったなあ。あとひと騒動あれば、楽しさも倍増した気がする。小粒すぎたのがちょっとだけ残念。2007.1
参考:脇役たち(トニ・コレット)
リリイ・シュシュのすべて ★★
岩井俊二監督、市原隼人、忍成修吾、蒼井優、伊藤歩ほか出演☆中学生の雄一は優等生・星野と親しくなり、星野からいろいろなことを教えてもらう。夏休み、いたずらから大金を手にした子供達は西表島へ旅行に行き、最高の夏を楽しむ。そして2学期。星野の人格が突然崩壊し、常軌をいっした悪質ないじめ、レイプを繰り返す。星野からいじめのターゲットにされ、パシリになった雄一は、カリスマ・アーティスト「リリイ・シュシュ」のファンサイトでを立ち上げ、そこで心の痛みを癒していた。
とてもショッキングな映画。ストレートないじめの描き方は目を覆いたくなるぐらい悲惨で、今まで抱いていた岩井ワールドとは別物だった。
正直、あの透明感のある感覚的世界が好みではなかったのだが、この映画に限っては「すごい」「やられた」と言うしかない。
悪質ないじめやレイプ・シーンに重なる、リリィの透き通った歌声…。一見、被害者側の心情に重なるようだが、私には、鬼に変わった星野の叫びに聞こえてならなかった。
成績優秀でおとなしくて、いじめられっ子だった星野。家族の崩壊というきっかけがあったにせよ、なぜあんなになってしまったのか、それがとてもやりきれなくて…。
鬼になった星野は、西表島で死にたかったのかもしれない。
そして雄一は、ファンサイトの青林檎の正体をたぶん知っていたのだろう。昔の星野に戻って欲しい。リリィのコンサートに最後の望みをかけた気がしてならない。
思い出すだけでため息がでてしまうような、辛くて痛い救いのない世界だけれど、青春映画の傑作としてあげられる映画だ。2006.12
力道山 RIKIDOZAN
ソン・ヘソン監督、ソル・ギョング、中谷美紀、萩原聖人、藤竜也ほか出演☆1944年、朝鮮人であるために先輩力士からいじめを受けていた金は、相撲界の重鎮・菅野との出会いにより、力道山という名前をもらう。着々と番付をあげ、関脇にまでなった力道山だったが、朝鮮人であるために、大関昇進を見送られる。力道山はそんな相撲界に見切りをつけ、西洋の格闘技「プロレス」を学ぶため単身渡米する。
力道山といえばプロレスのイメージが強かったが、力士だったとは知らなかった。今は海外の選手が横綱になる時代だが、当時は公然と差別されていたんだろう。
あまり評判よくなかったがソル・ギョングはいい演技してました。日本語もそれほど違和感なかったし、体つきもかなりマッチョにして、格闘家らしく見えた。とくに若い頃の荒削りな力さんは最高。あの激しさは日本人にはなかなか表現できないんじゃないかなあ。(もし日本人が演じるなら、レスラーの血を引く坂口憲二?ちょっとかっこよすぎか) 伝記映画としてはオーソドックスな展開だったが、力道山の不器用さがよく描かれていた。力と菅野の男の絆が最高にカッコイイ。ソル・ギョングと藤竜也、ベストな配役だ。2006.12
リストランテの夜 BIG NIGHT
スタンリー・トゥッチ、キャンベル・スコット監督・出演、トニー・シャルーブ、イアン・ホルム、ミニー・ドライヴァー、イザベラ・ロッセリーニ、 アリソン・ジャネイ出演☆イタリア移民の兄弟プリモとセコンドは、ニュージャージーでイタリア料理店を開いているが、商売は火の車。営業担当の弟は、有名ミュージシャンを呼んでパーティーを開くという企画に乗り、一発勝負に出る。職人気質の兄と商売人の弟。タイプが違うし、ケンカばかりしているけど、お互いに支えあっている姿が微笑ましかった。
ライバル店のオーナー、イアン・ホルムがいい。妻の不倫に気づきながら、言い出せず、姑息な手段に出る、なさけない男がぴったり。さすが芸達者。
「ホワイト・ハウス」のやり手広報ウーマン、CJ役のアリソン・ジャネイが地味な花屋の店員を演じていたのにはびっくり。清楚な役だったので、しばらく気づかなかった。こういう役も悪くはないけど、やっぱりCJのほうがあってる。2006.12
リバティーン ××
ローレンス・ダンモア監督、ジョニー・デップ、サマンサ・モートン、ジョン・マルコヴィッチ、ロザムンド・パイク出演☆17世紀のイギリス。ロチェスター伯爵は劇作家としての才能に恵まれ、国王からも一目置かれる存在だったが、破天荒な性格から自ら身を滅ぼしていく。
久々、まったく受け付けない映画に遭遇。デップの皮膚ドロドロ顔はびっくりだったけど、内容はいただけない。中世ものがあまり得意じゃないせいかもしれないけど、映像暗くてみんなドラキュラみたいに顔色悪いし、台詞も難しいし、人間関係も何だかよくわからなかった。国王にマルコビッチ、愛人にサマンサ使っててもったいなーい。デップはときどき駄作に出ちゃうんだよね。まあ、それもスターの定めかも。残念!2006.5
リベラ・メ LIBERA ME
ヤン・ユノ監督、チェ・ミンス、キム・ギュリ、チャ・スンウォン、ユ・ジテ出演☆幼児虐待のトラウマから異常放火魔となった青年と、熱血消防士の熱き戦いを描いたアクション映画。チェ・ミンス、カッコイー!ユ・ジテも初々しい!はじめの1時間だけ楽しめました。2006.2.13
リアル・ブロンド
トム・ディチロ監督、マシュー・モディン、キャスリン・キーナー、ダリル・ハンナ、クリストファー・ロイド、スティーブ・ブシェミ、キャスリ・ターナー出演☆売れない俳優とモデルのメイク係のカップル。二人のすれ違いと恋を都会的に描いている。別れるのかな、と思ったら、実はお互い愛し合っていたことに気づいてハッピーエンド。ドラマチックじゃないのが好感を持てたけど、今一つヒネリがなかったかのが残念。
2001.1.20
リターン・トゥ・ミー この胸のときめき RETURN TO ME
ボニー・ハント監督・脚色、デビッド・ドゥカブニー、ミニー・ドライバー出演☆幸せな結婚生活を送っていた男だが、妻を事故で亡くし悲嘆にくれる生活を送っている。一方、その妻の心臓を移植して、元気になったイタリア人の女は、移植してくれた家族にコンプレックスを抱いている。そんな二人が、偶然か必然か、出会ってひかれあい、恋をする。けど、真実を知り……。こちらもお決まりのラブコメ。けど、イタリア人の年寄り集団がコミカルだったり、ふたりの役者がいい味だしてて、なかなか感動ものでした。同じ話でも、チャチくなるのとそうでないのは、どこが違うんだろ。役者の力も大きいけど、脇がいかに主役を盛り上げるか、もポイントなんだろうな。2000.7.31
リディック THE CHRONICLES OF RIDDICK
デヴィッド・トゥーヒー監督、ヴィン・ディーゼル、ジュディ・デンチ出演☆人気のヴィン・ディーゼル映画もたまには見なきゃ、と手を伸ばしてみたものの…。ごめんなさい。やっぱり私の苦手な分野なので、感想は述べません。2005.10.31
リトル・ダンザー
スティーブン・ダルドリー監督、出演ジェイミー・ベル,ジュリー・ウォルターズ,アダム・クーパー出演☆イギリスの炭坑町で育った少年が、ダンスに目覚めるんだけど、父親と兄はスト中で金がない。母親は死んでて、少年は呆けたおばあちゃんの世話してる。少年がダンスをするときの表情がたまらなくカワイイ。単純なサクセスストーリーじゃなくて、ファミリーを描いた人間ドラマだった。お父さんが信念まげて、息子のオーディションのためにスト破りしようとするシーンは泣けた。 2001.8.26
参考CINEMA:「めぐりあう時間たち」
リトル・ボイス
マーク・ハーマン監督、ユアン・マクレガー、ブレンダ・ブレッシン、マイケル・ケイン出演☆ 無口な女の子の歌の才能をしって、回りがスターにしようと大騒ぎするが、彼女はそんんなことは望んでいず…。うるさい母親役のブレンダが最高。みんな変な奴で、コメディだったのが意外。無口な子が最後、母親を罵倒するシーンはちょっと泣けました。2000.4.22
参考CINEMA:「シーズン・チケット」
リプリー ××
アンソニー・ミンゲラ監督、マット・デイモン、ジュード・ロウ、グゥイネス・パルトロウ出演☆最低。ジュード・ロウの美しさだけが取り柄の映画。「太陽がいっぱい」と比べなくても、へんな映画。ラストなんて??だよ。マット・デイモンは「ホモだった」っていうのは別にいいんだけど、あまりにも馬鹿な、リプリーの行動にイライラした。生きのいい役者そろえても、本がこれじゃあね。
2001.2.18 参考CINEMA:「コールド・マウンテン」
猟奇的な彼女
クァク・ジェヨン監督、チョン・ジヒョン、チャ・テヒョン出演☆ダメ男の典型みたいな大学生キョヌが、酔っ払いの女を介抱したことがきっかけで、その彼女に振り回される痛快コメディ。綺麗でおとなしそうな顔してるのに、啖呵をきってまわる「かっこいい彼女」は見ていて気持ちがよかった。彼女も痛快だが、振り回されっぱなしのキョヌが、見るからに「情けない男」顔。日本でリメイクしたら、彼女は柴崎コウで決定!キョヌは誰かなあ。
ただし、別れて1年後の「延長戦」は、いきなりコメディから、定番のラブストーリーに様変わりしてしまったのがちょっと残念。コメディは最後まで馬鹿げたオチで終わって欲しいんだよねえ。ハリウッドがリメイクするらしいが、延長戦&エンディングを変えて欲しいな。2004.2.26
猟人日記 YOUNG ADAM
デヴィッド・マッケンジー監督、アレグザンダー・トロッキ原作、ユアン・マクレガー、ティルダ・スウィントン、ピーター・ミュラン、エミリー・モーティマー出演☆40年代のイギリス。港湾労働者として働く青年と女性たちの淫らな関係を淡々と描いた作品。冷酷な男役のユアンに久しぶりに会えた気がした。彼はこういう癖のある役が合うよなあ。「スターウォーズ」とか「ビッグ・フィッシュ」とか英会話学校のCMで好感度アップする必要はまったくないのに。個性派の道を目指してほしいものです。2005.11.1
隣人は静かに笑う
マーク・ペリントン監督、ジェフ・ブリッジス、ティム・ロビンス、ジョーン・キューザック出演☆FBI捜査官だった妻を亡くした大学教授の隣りに住む家族に、爆弾魔の疑いが。教授は一人で隣家をさぐるが、息子を人質にとられてしまう。そして、最後に自分が爆弾テロの首謀者として葬られるという悲劇。初めから読めていた展開とはいえ、後味の悪い映画。でも、これが現実なのかも、と思うと怖くなった。話自体はとくに面白味はなかったけど、役者がいいのが救いだった。1999.11.15
LIMBO 最果ての地
ジョン・セイルズ監督、デビッド・ストラザーン出演☆アラスカに住む中年の男女の出会いと恋、そして、娘との関係を真摯に描いた作品。無人島に取り残されてしまった3人が、意外に冷静だったのが、現実っぽくてよかった。ドラマチックじゃないところが好感がもてた。2002.8.23 参考CINEMA:「サンシャイン・ステイト」「カーサ・エスペランサ」
リンダ リンダ リンダ
山下敦弘監督、ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織、三村恭代、甲本雅裕、小出恵介ほか出演☆高校の軽音部に所属する恵、響子、望は、文化祭直前に即席ギャル・バンドを結成する。ボーカルに指名したのは韓国からの留学生ソンちゃん。毎日徹夜で練習するが、なかなかまとまらず…。バンド、友達&恋の悩み、制服。青春映画の定番ではあるんだけど、みんな肩の力が抜けていて、ドキュメンタリーを見てるような気分になってきた。なかでも香椎由宇とペ・ドゥナが最高。香椎由宇、テレビではお嬢さん役ばっかりだけど不良っぽい役もいいわ。ペ・ドゥナは表情がおもしろーい。
「リンダ・リンダ」世代の私は歌うシーンで楽しめたけど、ブルーハーツっていまどきの高校生にとってどういう存在なんだろ。甲本ヒロトの弟が冴えない教師役やってたのも笑えました。自然な演技を引き出した山下監督。今後の作品にも要注目。2006.5
リボルバー 青い春
渡辺武監督、狩撫麻礼、松本大洋原作、佐藤佐吉脚本、玉木宏、森山未来、佐藤隆太、大杉漣ほか出演☆落ちこぼれの高校生3人がひょんなことからピストルを見つけ、町に繰り出す青春グラフィティ。注目度大の若手俳優がそれぞれ個性的な役を巧みに演じていた。ただ、もうちょっとスピード感があればなあ。ラストでしみじみするのはいいんだが、ちょっと長すぎ。青春映画の定番である「海」のシーンはもっと短くてよかった気がする。 2004.6.7
竜馬の妻とその夫とその愛人
三谷幸喜監督、木梨憲武、中井貴一、江口洋介、鈴木京香ほか出演☆坂本竜馬の妻おりょうの再婚相手は、竜馬とは月とスッポンの情けない男。おりょうは、竜馬に良く似た男にほれてしまい、夫はおりょうを取りかえそうと必死になる。そこに、おりょうの義理の弟も絡んできて…。
みんなが坂本竜馬の影を背負っている、という設定は、竜馬ファンの私としてはうれしい限り。前半はたるかったけど、後半は三谷幸喜らしい一幕ものの人間ドラマが展開して楽しめた。ただ、もうちょっと人間関係を単純にしたほうが、面白さが引き立つ気がするんだけど。ちょっと残念。
2003.11.28 参考CINEMA:「みんなの家」「有頂天ホテル」
ルアンの歌 扁担姑娘
ワン・シャオシュアイ監督、グオ・タオ、シー・ユー、ワン・トン出演☆舞台は80年代末の中国。地方から都会へ出てきた青年トンツーは同郷のガオピンの部屋に居候している。ある日、ガオビンは、ベトナムから来たクラブ歌手ルアンホンと恋仲に。だが、アンホンはヤクザの女だった。
世間知らずの青年が友人とその恋人と接するうちに、人生の苦さを体験していく。つらい別れもあるが、たくましくなった青年の姿をエンディングで見ることができてほっとした。画面から伝わる田舎くささが心地よかったけど、新鋭監督ジャ・ジャンクーの作品に似ている気がた。こちらのほうが先輩か。この田舎くささが海外の映画祭では受けるようです。2007.1
ルージュ
スタンリー・クワン監督,アニタ・ムイ,レスリー・チャン出演☆30年代の香港。娼婦と客の若い男が恋に落ちる。が、周りから結婚を反対された二人は心中を図ってしまう。50年後、幽霊となった娼婦が、死んだはずの男を探しに現代の香港に現れる。
安っぽい作りの映画で、レスリーも主役の女を裏切る嫌な男の役。役柄にはまったく魅力を感じなかったけど、レスリーの美しさ、色っぽさは、さすがに際立っていた。2005.5.1参考CINEMA:「欲望の翼」「ガラスの城」
ルナ・パパ LUNA PAPA
バフティヤル・フドイナザーロフ監督、チュルパン・ハマートヴァ、モーリッツ・ブライブトロイ出演☆タジキスタンの村に住む17歳の少女が、ある夜、俳優を名乗る男に甘い言葉を掛けられて身体を許し、妊娠してしまう。閉鎖的な村で父なし子を身ごもることは許されない行為である。少女は父や脳に障害を持つ兄と一緒に相手の男を捜す旅に出かける。
中東系民族特有の激しくてしつこいキャラクターを思う存分に楽しめる映画。空を飛ぶシーンが多いのと、村人たちの濃いキャラが、クストリッツア映画に通じるものあり。主役の女の子が超キュート。気に入った! 2005.11.20
RESCUE DAWN
ヴェルナー・ヘルツォーク監督、クリスチャン・ベイル、スティーブ・ザーン、ジェレミー・デイビス出演☆舞台は1965 年のベトナム。アメリカ空軍に所属するドイツ移民のデングラーが乗った爆撃機が墜落した。デングラーは、一人、ベトコンの影に怯えながら、ジャングルの中をさまよう。途中、アメリカ軍のヘリにSOSを送るが、ヘリは無情に去ってしまう。
ジャングルを熟知しているベトコンから逃げ切れるはずもなく、デングラーまもなく捕えられる。
激しい拷問に耐え、山奥の捕虜収容所に入れられたデングラーは、2年以上捕虜生活を送る仲間たちをけしかけ、逃亡計画を錬る。
なぜ今頃ベトナムもの? と不思議に思ったが、1997年にヘルツォークが作ったドキュメンタリー映画「Little Dieter Needs To Fly」が元になっているらしい。
ということは10年分の思いがこめられている入魂の作品ということになる。
ベトナム、捕虜、拷問、サバイバル等々、とっくの昔に流行ったテーマだし、正直、見飽きた感もある。はじめはテレンス・マリックの「シン・レッド・ライン」みたいと思ったが、映画が進むにつれて、随所にヘルツォークらしさを見てとることができた。
舞台はベトナムになっているが、TVドラマ「LOST」のように、孤島に置き換えることもできる。
ベトナム戦争なので、もちろん相手はベトコンだが、そこに感情はない。
捕虜を取って拷問したり、見張ったりするロボットのような存在である。
一緒に投獄される捕虜仲間も、それぞれ個性はあるが背景はわからないし、デングラー自身についてもほとんど素性は明かされない。
よくある戦争もののように、家族や恋人を思って涙したり、手紙を書いたりはしないのだ。
2枚目でお坊ちゃん風のデングラーが、ジャングルをさまよい、過酷な捕虜生活を送るうちに、どんどん狂気染みてくる。それもジワジワと…。
ウジ虫食べたり、ヒルが体中に張り付いたり、気持ち悪いシーンの連続だが、映像がすべてリアル。
とくに、優しい顔して生きた蛇にかみつくシーンは圧巻。人間、いざとなったら何でも食うのだ。
(ホントに噛みついているとしか思えなかった。ヘルツォークならやらせそうですが。なんたって、大船をアンデス山越えさせた監督ですから)
個人的には、捕虜仲間の一人、気の弱い詩人風の男(スティーブ・ザーン)のキャラが好きで注目していたのだが、デングラーは、彼を補助しながら、あくまでも生き延びる道を選ぶ。サバイバルに情けは無用、ということだ。
動物的とは対極にある優男クリスチャン・ベイルのワイルドなお姿、想像つかないかもしれないが、かなりいい感じだった。ハンサムだがどこか危ない感じがするし、「地獄の黙示録」のマイケル・シーンにも匹敵する当たり役だ。
ただし、冒頭とラストの15分は、なんじゃこれ? です。
「愛と青春の旅立ち」のパクリ?と、笑ってしまったが、何分ヘルツォークですから、よくある戦争映画への皮肉が入っていると考えれば、それもまたヨシ。
少々、肩透かしの感もあったが、もう1度見たら新たな発見ができそう。まだまだ奥が深そうな映画です。
日本ではドイツ映画祭あたりでかかればいいのだけど…。DVDだと面白さ半減なので、映画館で観ることをおススメします。2007.12 SPにて 参考CINEMA:「フィツカラルド」「ノスフェラトゥ」「カスパー・ハウザーの謎」「神に選ばれし無敵の男」「 ワイルドブルー・ヨンダー」
THE REST IS SILENCE (2007年・ルーマニア)
Nae Caranfil監督☆舞台は第1次大戦前のブカレスト。映画が人々にとって娯楽でなかったころの時代、一人の男が、1本の映画を作りあげるために奔走する物語。夢と希望と現実をコミカルにまとめてあるのだが、とても長ーい映画で飽きてしまった。セルビア系映画と比べ、ハチャメチャさが足りない感じ。残念。2007.10.28 サンパウロ国際映画祭07にて
レセ・パセ 自由への通行許可証 LAISSEZ-PASSER
ベルトラン・タヴェルニエ監督、ジャック・ガンブラン、ドゥニ・ポダリデス、シャルロット・カディ出演☆ナチス占領下のパリ。助監督のジャン=ドヴェーヴルは、ドイツの映画会社から仕事のオファーを受け、戸惑いを隠せない。レジスタンス活動家でもあるジャン=ドヴェーヴルは、悩んだ末、映画会社からドイツ軍の情報を盗み出す役目を買って出る。一方、女好きの無頼派、脚本家のジャン・オーランシュは、同じ映画会社からの誘いを断り続ける。
実在の映画人2人の半生を真摯に描いた作品。ジャン=ドヴェーヴルが、敵の資料を盗み出し、イギリス軍に接見するシーンは見ごたえがあった。地下活動を扱った映画は、命かけてるから重みがある。ただ、ちょっとセリフが多すぎて、見ていて疲れてしまった。フランス映画ってやっぱり苦手かも。言葉の響きを、美しい、と感じられないのよねえ。今度フランス映画をみるときは、吹替えにしてみよう。2006.11 参考CINEMA:「ラウンド・ミッドナイト」
レボリューション6 WHAT TO DO IN CASE OF FIRE ★
グレゴール・シュニッツラー監督、ティル・シュヴァイガー、マーティン・ファイフェル、クラウス・レーヴィッチェ出演☆舞台はベルリン。80年代、アナーキストとしてチームを組んでいた6人は、昔仕掛けた爆弾が15年後に爆発したことをきっかけに再会する。
15年前と変わらない生活をしているホッテとティムに対し、売れっ子広告マンになったマイクや、母親になったネレなど、それぞれの人生を歩んでいた仲間たちは戸惑いを隠せない。
仲間達がそれぞれ個性的で、再会のきっかけもアナーキー。こういうポップな青春プレイバック映画はかなり私好み。反体制活動家だった男が、いまや「Iloveビル・ゲイツ」なんてTシャツ着て、商業主義に染まってるあたりがケッサク。
昔堅気の刑事も、ルパンに出てくる銭形みたいだし。今更過去には戻れないんだけど、やっぱり古い友達はいいもんです。久々に、青春群像もの見たので、かなりはまってしまいました。ティル・シュヴァイガーは相変わらずかっこよくて見とれてしまった。2006.10 参考CINEMA:「ノッキンオン・ヘブンズ・ドア」
Ray/レイ RAY ★
テイラー・ハックフォード監督、ジェイミー・フォックス、ケリー・ワシントン、クリフトン・パウエル、レジーナ・キング出演☆レイ・チャールズの波乱の半生を描いた伝記映画。なんといっても驚いたのがJ・フォックスの演技。声も動作も顔もレイそっくり!映画としては、とりたてて工夫もなくてシンプルな作りなんだけど、フォックスの演技とレイの音楽だけで、十分楽しめた。R&B好きなので3時間の長さも気にならなかった。
公民権運動のさなかにジョージア州でのコンサートを拒否して長い間州への出入り禁止になっていたという事実をこの映画ではじめて知った。商売上手っていうイメージもあったんだけど、盲目の黒人が世渡り上手というだけでのし上がれるほど、世の中甘くないよね。いつもうがったモノの見方をしてしまう自分を少し反省。
クインシー・ジョーンズが古い友人だったっていうエピソードも目からウロコでした。2005.2.10 サントラはこちら 参考CINEMA:「プルーフ・オブ・ライフ」
レイジング・ブレット
ジョン・シュレンジャー監督、サリー・フィールド、エド・ハリス、キーファー・サザーランド出演☆娘をレイプされ、殺された母親が、娘の復讐のためにレイプ犯と闘う。キャストと監督に引かれて借りてみたけど、「火曜サスペンス劇場」みたいなありきたりな映画。でも、キャストがみんな個性的なので、それだけが救われた。 2001.7.13
レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード ONCE UPON A TIME IN MEXICO
ロバート・ロドリゲス監督・製作・脚本・音楽、アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック、ジョニー・デップ、ミッキー・ローク、チーチ・マリン、ウィレム・デフォー出演☆みごとなオールスターキャスト。ロドリゲス監督のデビュー作「エル・マリアッチ」は低予算映画だったのに、ずいぶん出世したわねえ。
バンデラスよりも、デップのほうが主役みたいだった。デップの情報屋としてチーチ・マリンが出ていた。(「刑事ナッシュ・ブリッジス」のジョー)久々にお目にかかれてうれしかった。2004.10.14
レディ・キラーズ THE LADYKILLERS
イーサン・コーエン&ジョエル・コーエン監督、トム・ハンクス、イルマ・P・ホール、ライアン・ハースト、J・K・シモンズ、ツィ・マー、マーロン・ウェイアンズ出演☆55年作品「マダムと泥棒」のリメイク。「教授」を名乗る強盗が、敬虔なクリスチャンであるマンソン夫人宅の地下室を借り、トンネルを掘ってカジノの収益金強奪を企てる。黒人のおばちゃん役イルマ・P・ホールが最高!大ボケ・キャラを見事に演じてた。トム・ハンクスは毎度おなじみの演技でしたが…。リメイクだから仕方ないのかもしれないけど、コーエン兄弟作品らしい“毒”があまり感じられなかったのが残念〜。2005.1.8参考CINEMA:「オー、ブラザー!」 「バーバー」 「ディボース・ショウ」
レッド・ドラゴン
ブレッド・ラトナー監督、アンソニー・ホプキンス、 エドワード・ノートン、レイフ・ファインズ、エミリー・ワトソン、ハーヴェイ・カイテル(ジャック・クロフォード役「羊〜」ではスコット・グレン)出演☆ハンニバル・レクター博士を捕まえた捜査官が、レクターの力を借りながら、新たな猟奇殺人に挑む。残虐シーンがカットされていたので、いたって普通のサスペンスドラマだった。
その分、出演者がみんな芸達者。それだけで見応えあり。犯人役のレイフ・ファインズはいい男のイメージが強いんだけど、容姿に異常なコンプレックスを抱えている役、というのが面白かった。2003.11.25 参考CINEMA:「ハンニバル」
レッド・バイオリン
フランソワ・ジラール監督、サミュエル・L・ジャクソン、グレタ・スカッキ、シルヴィア・チャン出演☆伝説の名器“レッド・バイオリン”に魅せられた、さまざまな人々の波乱に満ちたドラマを描いたサスペンス。バイオリンを手にした人には名声と不幸が訪れるというのはわかったんだけど、なぜそのレッド・バイオリンをみんなが欲しがるのか、という伏線が見えてこなかった。ラストのどんでん帰しは気に入った。ひょっとして本当にあるの?あるのなら聞いてみたい。2003.11.26
恋愛適齢期 SOMETHING'S GOTTA GIVE
ナンシー・マイヤーズ監督、ジャック・ニコルソン、ダイアン・キートン、キアヌ・リーヴス、フランシス・マクドーマンド出演☆恋愛から遠ざかっている女流脚本家が、プレイボーイに恋をしたことで第二の青春を謳歌する。
好きな人を思うだけで涙がこぼれてしまう乙女心は、いくつになってもあるものなのね。D・キートンとJ・ニコルソンの名コンビは、文句つけようがありません。恋をあきらめかけていた中年女性にオススメの1本。2005.1.15
恋愛マニュアル Manuale d’amore
ジョヴァンニ・ヴェロネージ監督、マルゲリータ・ブイ、ジャスミン・トリンカ、シルヴィオ・ムッチーノ、カルロ・ヴェルドーネ、ディーノ・アッブレーシャ出演☆調子の良さだけがとりえの若者は一目ぼれした女性の前に日ごと通い、倦怠期の夫婦は妻が暴走し、婦人警官は夫の浮気発覚にブチ切れ、その警官と喧嘩した医者は妻に家出され…。
年齢も職業も違う数組のカップルが織り成す恋愛模様を、コミカルにつづったオムニバス映画。
台詞やキャラがとても魅力的でグイグイ引き込まれた。コメディ映画ってお国柄がでるものだけど、イタリア人と日本人の感覚ってどこか共通点がある。「ベニスで恋して」を見たときにも思ったのだが、ドン臭いところや古臭いところ、人とのしがらみに縛られてるところが似ているのかも。オッシャレーな台詞が飛び交うフランス映画と違い、庶民的でみんなかっこ悪いところが気に入った。ちょっとベタな感じもしたけど、気軽に楽しめた。お調子者に好かれてしまう美女役は「輝ける青春」のジョルジア演じた女優ジャスミン・トリンカ。キャラが違うのでまったく気づかず。2006.5 イタリア映画祭にて 参考CINEMA:「ベニスで恋して」
レイクサイド マーダーケース
青山真治監督、東野圭吾原作、役所広司、薬師丸ひろ子、柄本明、鶴見辰吾、杉田かおる、黒田福美、眞野裕子、豊川悦司ほか出演☆妻と別居中の男・並木は、愛人宅から山の別荘へ向かう。そこでは、中学受験を控えた子を持つ3家族が塾の講師を招いて合宿をしていたのだ。その晩、並木は愛人・英里子の訪問を受け動揺。さらに、妻が愛人を殺害する、という事件が起こってしまう。
お受験、感情を表さない子供達、狂信的な親…。社会問題を鋭くつついた点は面白かったのだが、3家族と塾講師のキャラクターが弱すぎて、あまり楽しめず。子供達の不気味さも足りなかったし。いい役者そろえたんだから、もうちょっとそれぞれのキャラをははっきりさせても良かった気がする。青山真治監督らしいと言ってしまえばそれまでだけど、だったら、こういう半端な映画は作らないでほしい。TV局からの雇われ仕事なんでしょうけどね。2006.6 参考CINEMA:「ユリイカ」
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ローズ・イン・タイドランド TIDELAND
テリー・ギリアム監督、レビューはCINEMAの監督たち(テリー・ギリアム)へ
ロスト・イン・ラ・マンチャ LOST IN LA MANCHA
テリー・ギリアム監督、レビューはCINEMAの監督たち(テリー・ギリアム)へ
ロック、ストック、2スモーキング・バレルズ ★★
ガイ・リッチー監督、スティング出演☆泥棒、悪党、チンピラ。みんなしてちょっと抜けてて、お互いが盗みあいする結末は圧巻。始めはよくわからなかったけど、見直してみるとぜんぶつながっていたことが判って、また楽しめた。マドンナが見初めただけあって、監督の腕に脱帽です。2000.4.23 参考CINEMA:「スナッチ」
ロード・オブ・ドッグタウン LORDS OF DOGTOWN
キャサリン・ハードウィック監督、デヴィッド・フィンチャー製作総指揮、ジョン・ロビンソン、エミール・ハーシュ、ヴィクター・ラサック、ヒース・レジャー出演☆70年代、LAのベニスビーチで、スケートボードに熱中していた少年たちの姿をドキュメンタリー・タッチで追った青春ドラマ。脚本家となった少年の一人、ステイシーの自伝的作品。半分はスケボーの技を見せる映画なんだけど、少年達がそれぞれかわいいので、つい見入ってしまった。ヒース・レジャーが珍しく、美しい顔が判別不能なアル中のおっさん役で出ていたのにびっくり。ヒースは将来、ジョニー・デップと同じ道をたどるのか? なかなかナイスな選択です。2007.6
ローサのぬくもり SOLAS
ベニト・サンブラノ監督、マリア・ガリアナ、カルロス・アルヴァレス=ノヴォア、アナ・フェルナンデス出演☆都会で暮らす娘・マリアのもとへ、母ローサがやってきた。ローサは病院に入院した夫の看病にマリアの部屋から通うことにしたのだ。
酒に溺れ、孤独なマリアは、身勝手な父親と同じような暴力男の子を妊娠してしまう。一方、母ローサは、マリアのアパートの下に住む老人と親しくなる。
原題は「孤独」。マリアの孤独感は他人事とは思えず身につまされた。母親の世代の人は身勝手な夫に対しても我慢して尽くしてる人が多いけど、我慢しても報われないなんてやりきれない。お母さんの代わりに、娘マリアには幸せになってほしい、と心から思える映画だった。2006.12
ロード・トゥ・メンフィス THE ROAD TO MEMPHIS
リチャード・ピアース監督、マーティン・スコセッシ製作総指揮、B・B・キング、ボビー・ラッシュ、ロスコー・ゴードン、アイク・ターナー、ルーファス・トーマス出演☆テネシー州メンフィスのビール・ストリートは、50年代、黒人たちが朝まで酒と音楽を楽しむ「ブルースの聖地」だった。昔の面影のなくなったビール・ストリートを見て嘆くロスコー、地方巡業を変わらず続けるボビー・ラッシュ、偉大なるブルースマンB・B・キングやアイク・ターナー。一時代を築いたミュージシャンの姿とメンフィスの歴史を絡めて追った音楽ドキュメンタリー。
晩年はNYでクリーニング屋を営んでいたというロスコーや、スター街道とは無縁のボビー・ラッシュの生き様に興味を持った。スター・ミュージシャンの伝記ものが最近、流行っているが、消えていった人や、地道に活動しているミュージシャンの生き様を描いた映画をもっと見たくなりました。やっぱりブルースは最高!メンフィスに、いつかは訪れてみたい。2006.2.26 参考CINEMA:「ゴッドファーザー&サン」「ソウル・オブ・マン」
The Road (中国)
Jiarui Zhang監督、ZHANG Jing Chu , FAN Wei , NIE Yuan出演☆文革の時代、山奥を走るバスで車掌をしている若い娘は、青年医師に恋をする。二人は強く惹かれあうが、政府に睨まれていた医師は、工夫として働くはめに。
二人の逢瀬が知れ渡り、医師は罪人となる。
そして数年後、明るさを失った娘の前に現れた見合い相手は、長い間、面倒を見てくれたバスの運転手だった。
激動の中国を生きた女性の半生モノ。中国らしいオーソドックスな展開で、正直、苦手な部類。少女が可愛すぎたせいか、痛々しい姿ばかりが印象に残った。
コン・リー&チャン・イーモウの女の一生モノでは、コンリーのたくましさ、したたかさが小気味良かったので、後に爽快感が残ったが、この作品は逆。役者の力量不足というよりも、可愛いすぎたのが災いした気がする。女の半生モノは、泥まみれが似合う「ニッポン昆虫記」の左幸子みたいな強い女に演じてほしい。 2006.10.15 釜山国際映画祭06にて
ローラーとバイオリン
アンドレイ・タルコフスキー監督・脚本、アンドレイ・コンチャロフスキー脚本、J・フォムチェンコ、V・ザマンスキー、N・アルハンゲルスカキ出演☆バイオリンを抱えて練習に通う7歳の少年は、いじめっ子たちから助けてくれたローラー乗りの労働者と親しくなる。少年はローラーを運転させてもらったかわりにバイオリンを聞かせる。二人は映画を見にいく約束をするが、少年の母親から止められてしまう。
難解な映画作家というイメージの強いタルコフスキーの学生時代の作品。意外にもかわいくてわかりやすい話だったが、鏡や水溜りに反射する光を効果的に使うなど、随所に映像センスが光っていた。いじめっ子たちが、置き去りにされたバイオリンを見つけたとき、盗んだり壊したりせずに、ケースをそっと開けて眩しそうに眺めるシーンが印象的だった。
解説を読んで知ったのだが、この映画には、子供に楽器を習わせるブルジョワ階級と労働者階級の格差に対する批判精神がこめられているとのこと。労働者階級の子供達は、普段は少年をいじめていたけど、バイオリンを見るのが初めてだったんだろう。なかなか深い映画でした。2006.6
ロイヤル・テネンバウムズ
ウェス・アンダーソン監督、ジーン・ハックマン、ベン・スティラー、アンジェリカ・ヒューストン、グィネス・パルトロウ、ダニー・グローバー ☆最低親父ロイヤルと、天才児ともてはやされた子供たちの再出発をシニカルに描いたコメディ。いつもジャージ姿の天才ディーラー、風呂場から出ようとしない元人気作家の娘など、登場人物のキャラがケッサク。だけど、あんまり笑えなかった。独特のユーモアセンスが私の笑いのつぼにはまらなかったのが残念。2003.8.8 参考CINEMA:「天才マックスの世界」
ロード・トゥ・パーディション
サム・メンデス監督、トム・ハンクス、ジュード・ロウ、ポール・ニューマン出演☆禁酒法の時代。ギャングの父親が人を殺す現場を少年が目撃する。父と息子は口封じのために家族を奪われ、逃亡を余儀なくされる。
トム・ハンクス親子が主役ではあるのだが、愚かな放蕩息子の裏切りを知りながらも、自らさばくことが出来ない老いたポール・ニューマンの渋い演技が光っていた。2003.6.7
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
THE LORD OF THE RINGS: THE RETURN OF THE KING
ピーター・ジャクソン監督、J・R・R・トールキン原作、イライジャ・ウッド、イアン・マッケラン、ヴィゴー・モーテンセン、ショーン・アスティン、リヴ・タイラー出演☆3部作のの完結編。今回は、戦いのシーンだけでなく、感動のドラマもいっぱい。が、やっぱり長くて疲れた。。。
チビたちが、途中、ゴラムに翻弄されながらも、滅びの山目指して、頑張るシーンには心打たれた。ゴラムはしょうもない奴だけど、人間のおろかさや弱さの象徴みたいで、憎めなかった。
隣で見ていた女性が、泣きっぱなしだったのが不思議だった。たぶん、この3部作にかなりの思い入れがあるんだろう。ちょっとうらやましかった。 いろいろつっこみたいこともあるけど、ファンタジー大作やアニメは苦手分野なので、これ以上の感想は差し控えたい。2004.3.12
ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 Load of the rings
ピーター・ジャクソン監督、イライジャ・ウッド、ヴィーゴ・モテンセン、リブ・タイラー、ケイト・ブランシェット、イアン・マッケラン出演☆すごいきれいな山々!特撮ありアクションあり、の見せ場の連続!やっぱり大画面で見ないとこの映画は楽しめないと痛感。
でも、仕事帰りの疲れた夜にみたので、ちょっと長かった。ホビットたちの友情物語と2重人格のゴラムの場面は力を抜いて見ることができた。次も早くみたーい。
疑問:ガンダルフが最後に助太刀で連れてきたのは王の息子?じゃあ、ベッドで死んでたのは誰?まあ、細かいこと気にしてたら楽しめない、楽しめない。2003.4.10
ロード・オブ・ザ・リング 旅の仲間 Load of the rings
ピーター・ジャクソン監督イライジャ・ウッド、ヴィーゴ・モテンセン、リブ・タイラー、ケイト・ブランシェット、イアン・マッケラン出演☆劇場で見逃してしまったため、パートU公開の前に、慌ててビデオ鑑賞。いつ行ってもオール・貸し出し中でビデオ借りるのも一苦労だった。
さて、本題。原作の読破にパート1で挫折した私は、素直に「指輪物語辞典」を片手に鑑賞することに。特撮やアクションの迫力は劇場鑑賞よりは劣るが、その分、辞典でチェックしながら、ストーリーを追っていけたので、ただ映画をみるよりか理解ができた。とにかくいろいろな聞きなれない名前が出てくるので、映画だけでそれを理解するのは至難のワザである。
冒険ものというと、誰かに会いににいく、何かを探しにいくという話が多いなかで、これは邪悪な力を持つ指輪を「捨てに行く」というお話。長いシリーズの1回目ということで、旅の仲間のキャラ紹介がメインで、あんまり話の展開はなかったのだが、次回に興味を持たせるエンディングが気に入った。これは、次回作を見せるための映画だったようだ。2003.2.22
ロスト・イン・トランスレーション LOST IN TRANSLATION ★
ソフィア・コッポラ監督・脚本、フランシス・フォード・コッポラ製作総指揮、ビル・マーレイ, スカーレット・ヨハンソン,ジョヴァンニ・リビシ,マシュー南,田所豊ほか出演☆新宿のパークハイアットホテルで出会ったハリウッド俳優と若いアメリカ人妻が、異国で寂しさを感じながら、心を通わせていくプラトニックなラブストーリー。
アメリカ人から見た日本人の変なところ、東京の不思議さがユーモラスに描かれていた。
これといったドラマチックな展開がないところが気に入った。有名でも無名でも、中年でも若くても、金もちでも貧乏でも、日本人でもアメリカ人でも、みんなみんな、孤独感からは逃れられないのかもしれない。
結局、ささやかな幸せを感じながら、孤独感と付き合っていくしかないのだろう。
ソフィアは個人的な映画、と言っているが、富と名声と立派な家族を持つ彼女自身も孤独感から泣きたくなることがあるんだ、と、ちょっと親しみを感じた。
最後の晩、二人には絶対寝てほしくなかったので、エンディングも大満足です。
(若妻の夫は「ヘブン」でケイトと逃避行する青年を演じた俳優。全然違って軽いあんちゃん風だった。) 2004.5.22 参考CINEMA:「バージン・スーサイズ」 「マリー・アントワネット」
ロス・ムエトロス Los Muertos
リサンドロ・アロンソ監督、アルゼンチノ・ヴァルガス出演☆アルゼンチンの監獄から出所した中年男がジャングルで自給自足の生活をしながら娘に会いに行くドキュメンタリー・タッチの映画。人気のないジャングルで、黙々と生きている男の自然な姿は、ロビンソン・クルーソみたいだった。
生きたヤギを捕まえて解体するシーンは、生々しくて見ていられなかったけど、そういう自分も平気で豚や鳥や牛の肉、食べてるんだよね。本能のままに生きるってことは、生き物の本来あるべき姿なのでしょう。極端に台詞が少ない映画なので、いろんなことを考えながら見てしまった。2005.4.4 第29回香港国際映画祭にて
ロゼッタ
ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ(兄弟)監督☆99年のカンヌ映画パルムドール受賞作。というから、期待したけど、これは、カメラドールレベルだよ。たしかに、ロゼッタの迫力ある演技と動きのあるカメラワークは斬新ではあったけど、若さでつっぱしってるってだけの映画だと思った。アル中の母親とキャンプ場で暮らしてるロゼッタは、仕事を次々クビになる。それでも、人に頼ることをしないで、必死で肩肘はっていきがってる。そんな姿が痛々しくて……。自分にも通じる部分があるので、辛かったよ。最後、もうダメ……。と、崩れ落ちるように泣くシーンは、「よかったねー、やっと泣けたよ」、って背中を叩いてあげたくなった。2000.10.28参考CINEMA:「息子のまなざし」「ある子供」
ロック・スター ROCK STAR
スティーヴン・ヘレク監督、マーク・ウォールバーグ、ジェニファー・アニストン出演☆人気ハードロックバンドの熱狂的ファンだった青年が、急遽そのバンドのボーカルに抜擢されるサクセス・ストーリー。マーク・ウォールバーグ好きだから見てみたけど、コテコテB級映画でした。バンドのモデルは「バン・ヘイレン」?チラッとデイブ・リー・ロスの歌が流れていたのも意味深。すっかり消えてしまったデイブとダブらせてしまいました。2005.9.26
ロルカ、暗殺の丘 DEATH IN GRANADA
マルコス・スリナガ監督、アンディ・ガルシア、イーサイ・モラレス、ナイム・トーマス、エドワード・ジェームズ・オルモス出演☆1936年。内戦下のスペイン。少年リカルドは友人とロルカの芝居を見に行き、感動を覚える。しかし、友人は内戦の犠牲となり、リカルドの家族は、逃げるようにスペインを後にする。
1954年。成人したリカルドは、銃殺されたロルカの真実を本にするため、取材でスペインに帰郷するが、軍警察から妨害を受けてしまう。
スペインの詩人ロルカが殺された事件をモチーフにしたサスペンス。ロルカという詩人に興味があったので見てみたが、魅力があまり引き出されていなかった。ロルカの話というよりは、リカルドに起こった悲劇がメインになっていた。当時は、言論弾圧などで、多くの一般人が自由を奪われ犠牲になった、ということは伝わってきたのだが、フラッシュバックも煩雑で、「〜星条旗」とは月とスッポン。もっと綿密に作りこめば、傑作にもなりえただろうに。残念の出来だった。2007.1
ロング・エンゲージメント A VERY LONG ENGAGEMENT
ジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥ、ギャスパー・ウリエル、ジャン=ピエール・ベッケル、ジョディ・フォスター、チェッキー・カリョ出演☆第一次大戦下のフランス。戦場で不正に怪我をした罪で死刑を宣告された5人の囚人が、ドイツ軍との激戦地帯に置き去りにされる。囚人の一人マネクが生きていると信じる婚約者のマチルドは、マネクを捜しまわりながら、囚人たちのそれぞれの人生に触れてゆく。
囚人たちの過去や現在がいったりきたりしすぎて、初め、なんだかよくわからなった。ラスト30分になって、なるほどー、そういうことねー。と納得したけど、後の祭り。ジョディ・フォスター、久々に見たけど、変わらないねえ。チョイ役すぎてもったいない気がした。2005.8.27 参考CINEMA:「アメリ」
ロング・グッドバイ
ロバート・アルトマン監督、エリオット・グールド,ニーナ・ヴァン・パラント,スターリング・ヘイドン出演☆探偵フィリップ・マーロウの渋い魅力がいっぱいのスタイリッシュ・ジャズ・ムービー。優作の「探偵物語」はこの作品のぱくりだったのね! 音楽が素敵。探偵のタバコを吸う姿がダンディー!鏡やガラスを効果的に使った映像もかっこいー!やっぱり、70年代映画はいいわ。2002.1.27 参考CINEMA:「ゴスフォードパーク」「クッキー・フォーチュン」「ドクターTと女たち」「バレエ・カンパニー」「ターナー・オン・ターナー」
ロンドン・ドッグス
ドミニク・アンシアーノ、レイ・バーディス監督、サディ・フロスト、ジョニー・リー・ミラー、ジュード・ロウ出演☆ロンドンのギャングのおばかな奴等のおばかなお話。セックス・ネタあり、カラオケあり、おばかなんだけど、人情もあり、そして、やくざモンということで残酷な現実もあり。北野武の映画を明るくしたような映画。脇役に徹していたジュード・ロウは相変わらず格好よかった。ジョニー・ミラーもかわいい顔して、この手の足りない役が多いんだよね。今後の活躍に期待したい俳優。2002.2.11