最新のラテン映画&DVD(ブラジル、メキシコ、アルゼンチンetc…)をワンポイント診断。
大絶賛から辛口コメントまで、BOSSA独自の視点で切り込みます。
MEXICO BRASIL ARGENTINA CUBA COLOMBIA  PERU URUGUAI CHILE、BOLIVIA e outro 

タイトル
監督・出演
☆解説&感想 鑑賞日時

【ブラジル】

アクエリアス Aquarius
クレベール・メンドンサ・フィリオ監督、ソニア・ブラガ、メイヴ・ジンキングス、イランジール・サントス出演
☆レシフェの海岸に建つ高級マンション、アクエリアスの住人は65歳のクララ一人。再開発が進み地上げの対象となったマンションの住人たちは、すでに引っ越していたが、クララは自分の人生が詰まった部屋を売り渡す気はない。若い地上げ屋は様々な嫌がらせをするが、クララは屈しない。
孤独や恐怖と戦いながらも、自立した存在であろうとするクララの生き様がすさまじく、いくつになっても美しいソニア・ブラガに拍手を送りたくなった。福島の被災地からの立ち退きを拒む人にも通じるものを感じた。私自身は土地とか過去の思い出に拘らないタイプなのだが、そういう生き方も尊重すべき、と強く感じさせる映画だった。
 クララは自由を愛する音楽評論家という設定。「ネットで知り合ったカリオカ女子と初めて会うんだ」と話す若い甥に「マリア・ベターニャを聴かせなさい」と勧めて、きょとんとされるシーンなど、世代間のギャップも織り交ぜていたのも面白い。クイーンからマリア・ベターニャ、ヴィラ・ロボスまで音楽も多ジャンル盛り込まれていて、楽しめました。2016.10 東京国際映画祭にて


ロスト・パトロール A ESTRADA 47
ヴィセンテ・フェハス監督、ダニエル・オリヴェイラ出演
☆第二次大戦に参戦したブラジル兵士の苦悩を描いた作品。誰のために戦っているのか…。というメッセージが強く心に残った。戦争をして幸せになる人は武器商人と政治家ぐらい。多くの人間にとっては悲劇です。2016.8

ストリート・オーケストラ TUDO QUE APRENDEMOS JUNTOS
セルジオ・マシャード監督、ラザロ・ハーモス、サンドラ・コルベローニ、カイケ・ジェズース、エウジオ・ヴィエイラ出演
☆神童と呼ばれたヴァイオリニスト、ラエルチはスランプに陥り交響楽団のオーディションに落ちてしまう。生活のために渋々スラム街の学校で音楽教師を始めるが、そこで彼が目にしたのは楽譜が読めず学校に通うのもままならない子どもたちの姿だった。サンパウロの巨大ファベーラ、エリオポリスで生まれた交響楽団の物語からインスパイアされた音楽映画。
ファベーラの子供たちの悲惨な現実だけでなく、渋々教師になったラエルチの葛藤も並行して描いている。「立派な教師が子供たちを変える」というような説教臭い文部省推薦作品ではなかったのが好感度大。
悪者は麻薬のディーラーや、カード詐欺をしている若者だけでなく、やたらめったら銃を撃つ警察も社会悪として描いているのがブラジルらしい。
「音楽ですべてを変えることはできないけれど、音楽が何かのきっかけになればいい」。そんな志をこの作品から感じることができました。
クラシック音楽だけでなく、ファベーラの子供たちに馴染のあるラップも随所に出てきて、しかもブラジルの有名ラッパー二人、Rappin' HoodとCrioloがゲスト出演しているのもOTIMO!2016.8

ペレ 伝説の誕生 PELE: BIRTH OF A LEGEND
ジェフ・ジンバリスト監督、ケヴィン・ヂ・パウラ、セウ・ジョルジ出演
☆1950年W杯自国開催で優勝出来なかったブラジル国民は悲しみのどん底にいた。貧しい村に育った少年は、元サッカー選手の父からマンゴーの果実でサッカーの技術を学ぶ。白人の子供たちからバカにされ、ペレとあだ名を付けられた少年ペレは、たちまち頭角を現し、FCサントスにスカウトされる。
定番のブラジリアンドリーム。英語とポル語が混ざっていたり、粗削りな映画ではあったが、シンプルで子供たちが生き生きと描かれていたので満足です!2016.7

Que Horas Ela Volta?
Anna Muylaert監督、Regina Case, Helena Albergaria, Michel Joelsas出演
☆レシフェ出身の家政婦バウは、長い間サンパウロの資産家一家のもとで働いていた。ある日、レシフェに住む娘がサンパウロの大学受験のために上京してきた。資産家一家は彼女の娘を快く迎えてくれたのだが、雇い主と対等にふるまおうとする娘の言動にバウはふりまわされる。
格差社会ブラジルの今を描いた作品。ラテンアメリカ映画のトレンドとも言えるテーマ。雇い主とメイドは、絶対的な格差ではなくなりつつあるだけに、その間に葛藤が生まれるのだろう。サンパウロの友達の家に掃除にきていた若いファシネイラも、まるで友人のようにふるまっていたので、初めはファシネイラだと気づかなかった。逆に、よく家に来ていたおばさん、子守もしてくれていたので、てっきりファシネイラだと思ったら、隣人だったり…。そんな等身大のブラジルをうまく料理していた。ちょっとありきたりで途中、飽きてしまったけれど、ドラマチックじゃないところも今風なのかも。印象に残ったのは、資産家一家が夕食時に、みんなスマホをいじりながら食事していたシーン。スマホ中毒は世界共通なんですね。2016.6

セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター O Sal da Terra
ヴィム・ヴェンダース監督、ジュリアーノ・リベイロ・サルガド共同監督、セバスチャン・サルガド出演
☆ブラジルのミナス・ジェライス州出身の写真家セバスチャン・サルガドの作品と半生に迫ったドキュメンタリー「セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター」を観に行った。このドキュメンタリーでは、彼の作品だけでなく、生い立ちや家族にも迫っている。サルガドの父が暮らすミナスの農場は、見るからに乾いた土地。老いた父が「土地が乾燥してしまい、作物が取れなくなっている」と嘆く姿が印象的だ。
妻と軍事政権を逃れてフランスに渡ったこと、次男がダウン症だったこと、大学では経済を専攻していたこと等々、彼が写真家となるまでの歴史も描かれている。
今までのヴィム・ヴェンダース作品に比べて、アート志向でないのは、サルガドの息子ジュリアーノが共同監督なのも影響しているのかもしれない。
サルガドの作品を目にしたのは、今回の映画がほぼ初めてということもあり、その作品の迫力と美しさに、終始圧倒されっぱなしだった。
とくに、アフリカの「死にゆく人々」を被写体にした作品「Sahel サヘル」は、衝撃的で胸が締め付けられた。
そんなインパクトの強い作品で名声を得た後、サルガド自身も彼らの苦悩を背負い、心に深い傷を負ってブラジルへ帰郷する。
穏やかな心を取り戻したサルガドは、故郷で森林を再生する環境保護活動を始める。
さらに、2004年からは、地球をモチーフにしたプロジェクト「GENESIS ジェネシス」に取り組み、自然美を追求する作品を次々に生み出していく。
この「ジェネシス」は、白熊や、クジラ、ペンギンといった動物たちの生活を切り取ったアート性の強い作品で、見ている私自身も平静を取り戻し、爽快感を覚えることができた。
さらにサルガドはアマゾンの先住民たちにも密着。彼らの狩りの様子や儀式にも迫っていく。
サルガドの作品からは、アート的なこだわりの強さを感じたのだが、映画の中のサルガド本人はいたってシンプルで、さほど個性も強くないのが意外だった。田舎で暮らすサルガドの父のほうがキャラが強くて印象に残ったぐらい。そんなニュートラルなサルガドだからこそ、報道から自然の世界へ、シフトすることができたのかもしれない。2015.8

ニーゼと光のアトリエ Nise da Silveira: Senhora das Imagens 
ホベルト・ベリネール監督、グロリア・ピレス、ファブリシオ・ボリベイラ、アウグスト・マデイラ出演☆
精神疾患を抱える患者を人間扱いしない40年代のリオの精神病院に、女医のニーゼが着任する。ニーゼは患者をクライアントと呼び、絵を描かせることで治療していく画期的な改革案を導入する。
感動の実話は、得てしてお涙頂戴のドラマチックな展開になりやすいのだが、この映画では、ニーゼへの嫌がらせや患者の苦しみ等を最小限にとどめ、絵を描く作業やピクニックなど、治療の過程を丁寧に描いていて好感が持てた。監督は13年も間、この作品にかかりきりだったとのこと。元々ドキュメンタリー作家だったということもあり、このようなタッチになったのでしょう。グロリア・ピレスも貫録の演技。患者たちの演技も素晴らしかったです。東京国際映画祭、グランプリも納得の力作でした。日本で公開されるといいなあ。2015.10 TIFFにて

リオ、エウ・チ・アモ Rio,Eu te amo
ステファン・エリオット、パオロ・ソレンティーノ、イム・サンス、ナディーン・ラバキー、ギジェルモ・アリアガ、ジョン・タトゥーロ、カルロス・サウダーニャ、ジョゼ・パジーリャ、アンドルーシャ・ヴァジントン、フェルナンド・メイレレス監督、ハーベイ・カイテル、フェルナンダ・モンテネグロ、ロドリゴ・サントロ出演
☆リオの街で路上生活を送る老女と孫の再会、海外スターと世話係の小さな冒険、別れを前にしたバレリーナの男女の舞、米国人俳優と神からの電話をまつ駅の少年のほほえましい交流などなど、リオを舞台に市井の人々の暮らしを切り取ったオムニバス。
リオの景色が懐かしくて、イメージ映像として十分に楽しめた。それぞれのエピソードはつまらないものもあったが、スターが大勢出ていたし、ハーベイと少年のエピソードがかわいかったので、よしとしましょう。個人的には、海外セレブの案内役を演じたMarcelo Serradoが気に入りました!ノベーラによく出ている俳優のようです。2015.4 ブラジル映画祭にて

リオデジャネイロ、魔法にかけられた街
サブリナ・フィダルゴ監督、クリオーロ、セウ・ジョルジ、ESG出演
☆リオのヴァーリ・エンカンタードが、今、消滅の危機にさらされている。この危機を多くの人に知ってもらおうと、2012年より音楽祭「フェスティヴァル・エンカンタード」が始まった。セウ・ジョルジや、クリオーロなど、フェスの趣旨に賛同したミュージシャンが集結し、コミュニティー維持を訴えていく。
自然や伝統的暮らしを守ろうとする側と開発しようとする国。どこの国でもいつの時代でも、同じ問題は起こりうる。ドキュメンタリーの質的には、素人さが鼻につき、飽きてしまったが、このフェスには賛同します。2015.4 ブラジル映画祭にて

看守という仕事 A Gente
アリ・ムリチバ監督
☆アリ・ムリチバ監督が、かつて働いた刑務所の看守チームの仕事に密着したドキュメンタリー作品。原題A Genteは、看守を意味する言葉Agenteにかけられている。刑務所の囚人でも、警察でもない、看守にスポットを当てた、という意味では新鮮だった。看守は銃を持てない、という現実には驚き。街中のチンピラは銃を持てるのに、危険な仕事の看守がなぜ?ブラジル社会の矛盾が見えた。一方で看守が銃を持つと、殺し合いが起こりやすいっていうのもあるだろうし…。難しい問題です。2015.4

母の差し入れ
アリ・ムリチバ監督
☆アカデミー賞短編映画賞ノミネート候補作品。服役中の息子との面会に向かった母は、看守らの目をかいくぐり携帯電話を息子に渡そうとする…。携帯電話を違法に差し入れるまでの緊張感と、微笑ましい種明かしの対比が絶妙。上質な短編をもっといろいろ見たかったなあ。2015.4

アレイジャジーニョ
フレッジ・トヌッチ、レオナルド・グッド・ゴッド監督
☆オウロ・プレットに花開いたミナス流バロック様式。その立役者アレイジャジーニョの作品が持つ美の秘密に迫る。
古典芸術に疎いせいか、あんまり印象に残らず。2015.4

トニーニョ・オルタ 大胆不敵な音楽
フェルナンド・リバーニオ監督
☆トニーニョ・オルタが紡ぐサウンドのルーツは故郷ミナス。オルタの足跡を、周囲の人々のインタビューやライブなどのアーカイブ映像を交えて追っていく。オルタとお母さんの微笑ましい2ショットが印象に残る作品。もうちょっと演奏シーンを見たかったです…。2015.4

粋な男
マリアナ・カステロ・ブランコ監督
☆セルジーニョ・ベーアガーは、ベロオリゾンチが生んだ、古き良き時代から受け継がれるピュアなサンバの心を持ち続けるサンビスタ。彼の音楽と人となりに迫った短編。演奏シーンがもっと見たかった~。2015.4


トラッシュ!-この街が輝く日まで-TRASH
スティーヴン・ダルドリー監督、マーティン・シーン、ルーニー・マーラ、ワグネル・モウラ、セルトン・メロ出演
☆リオデジャネイロのゴミ山で暮らす少年ラファエルは、ゴミ山から金の入った財布を拾う。そこには金のほかに、身分証とロッカーのカギが入っていた。まもなく、警察が財布を探しにやってくる。
社会の底辺で暮らす少年たちの活躍と冒険を描いたファンタジックストーリー。悪い大人たちの暴力や追跡に屈せず逃げ回る3人の少年たちが生き生きしていて楽しくみれました。ダルドリー監督、さすがの演出です。セルトン・メロが悪役っていうのがめずらしかったけど、しっかり存在感だしてました。物語はディズニーっぽかったですが、リオのファベーラでの撮影がリアルでした。2015.1

悩めるジアンのバラード Casa Grande, or the Ballad of Poor Jean
フェリペ・バルボザ監督、サレス・カバルカンチ、マルセロ・ノバエス、スザナ・ピレス、ブルーナ・アマヤ出演
☆鉄柵に囲まれたリオの豪邸で暮らす17歳のジアンは、進路や恋愛など悩みがつきない。何不自由のない暮らしを送りながらも、ジアンは過保護な家族から逃げ出すことを考え始める。一方、ジアンの家は経済的に大きな問題を抱えていた…。
豪邸生活とは裏腹な借金まみれの生活。プライドばかり高くて仕事も見つからない父、使用人への給料を滞納して訴えられ、息子の友人の父からは金を返せ、家を売れ、と詰め寄られ…。そんな父の姿を子供たちは冷ややかに見つめ…。人間の弱さが丁寧に描かれた山田太一ドラマのような展開で面白く見れた。監督の次回作にも期待。2014.11 ラテンビート映画祭にて

A Busca
Luciano Moura監督、ワグネル・マウラ出演
☆仕事人間で家族を顧みない男は、ある日、息子の失踪にショックを受ける。息子の足跡をたどるうち、自分の原点を思い出し…。地味な映画ではあるが、ブラジルらしい原風景と殺伐とした都会の暮らしの対比がリアルで好感が持てた。2014.7

Os Homens Sao de Marte... E E Pra La Que Eu Vou!
Marcus Baldini監督、Monica Martelli, Paulo Gustavo, Daniele Valente, Marcos Palmeira出演
☆39歳独身、結婚パーティー企画会社を仕切るキャリアウーマンのフェルナンダは、幸せな結婚を夢見る女性。美貌は完璧、仕事も順調なのに、出会う男はみなはずればかり。一夜限りで遊ばれたり、自然を愛するヒッピー男と恋に落ちたり、有名演出家に3Pを迫られたり…。それでもあきらめないフェルナンダを、同僚たちは応援するが…。
フェルナンダと同僚二人のキャラと関係性は、コロンビアのヒットドラマと同じなので、パクリ感ありあり。それでも、定番ラブコメとして、おもしろく見れました。誰とでも簡単にベッドインしてしまうあたりはブラジルらしいけど、結婚に憧れる女性像はいずこの国でも同じ、ということでしょう。2014.6 ブラジルにて

Praia do futuro
Karim Ainouz監督、ワグネル・マウラ、Clemens Schick、Jesuita Barbosa出演
☆フォルタレーザの海岸で暮らすライフガードのドナートは、海難事故をきっかけに知り合ったドイツ人の男コンラッドと関係を持つ。ドナートは、彼と共にドイツへ旅立ち、ベルリンで一緒に暮らし始める。数年後、ドナートの弟アイルトンが、突然姿を消した兄の元にやってくる。アイルトンは自分とブラジルを捨てた兄への恨みを払しょくできずにいた。
お互い愛すれど、幸せとは言えないゲイカップルの陰鬱な雰囲気をまったりと追っていく異色のラブストーリー。マウラがゲイの役って見覚えがないので、新鮮ではあったのだが、明るさゼロで、相手役のドイツ人も今一つ魅力にかけるので、退屈に感じてしまった。
常夏のフォルタレーザと雪のドイツ、舞台が変わっても二人の微妙な関係は変わらず、ということを描きたかったのか?今一つ理解できず、残念。2014.6 ブラジルにて

オンナの快感2 DE PERNAS PRO AR 2
Roberto Santucci監督、Maria Paula出演
☆SEXショップを立ち上げ、軌道に乗せたやり手女社長は、仕事中毒を指摘されカウンセリングを受けることに。だが、入院先でも仕事が気になる女は、リフレッシュ旅行と嘘をつき、NYへ商談に出かける。
笑える大人のおもちゃがたくさん出てきた1作目のほうが、斬新で面白かったが、この作品もブラジルらしいコメディで好感が持てた。こういう肩の力抜いて見られるコメディは話もシンプルなので、言葉わからなくても楽しめます。2014.7

いつか行くべき時が来る Un giorno devi andare
ジョルジョ・ディリッティ監督、ジャスミン・トリンカ出演
☆心に深い傷を負った30歳のアウグスタは、修道女のアマゾン布教に着いていく。川べりの貧民地区で暮らすインディオの人々とふれあいながら、アウグスタは少しずつ心を開いていく。
アマゾンで暮らす人々のリアルな生活。昔ながらのコミュニティを大事にしたい人々と、金の誘惑に負けコミュニティを捨てる人々。どちらが正しいとか間違っているとかではなく、社会が否応なしに分断されてしまうことに、やりきれなさを覚えた。ドキュメンタリー風のブラジルの風景や人々の暮らしの映像は秀逸。イタリア側とブラジル側、いったりきたりの構成が少々分かりづらかった。サンダンス映画祭コンペ部門出品。イタリア映画祭にて 2014.4

FLORES RARAS
BRUNO BARRETO監督、グロリア・ピレス、ミランダ・オットー出演
☆アメリカ人詩人ミランダ・ビショップは、ブラジルで女性建築家ソアレスの家に滞在。まもなく恋に落ちる。元恋人の存在に嫉妬をしながらも愛の生活は続き、ミランダはピューリッツア賞を受賞。一方、ソアレスはボタフォゴ公園の建設に没頭し、二人の間に溝ができはじめる。
実在の女性二人の恋愛をストレートに描いている。ブラジルのブルジョワ社会が舞台なので、ブラジルらしさは正直感じられなかったのだが、これもブラジルのもう一つの姿なのでしょう。実話ということ。当時はレズビアンであることは公にしていなかったようだが、アーチストの世界にはよくある話なのでしょう。詩人と建築家のカップルというのは、映画には不向きかな。小説ならもっと楽しめるかも。2014.7

彼の見つめる先に Hoje eu quero voltar sozinho
ダニエル・ヒベイロ監督、ギレルメ・ロボ、ファビオ・アウディ、テス・アモリム、ルシア・ロマーノ出演
☆盲目の少年レオナルドは、幼なじみのジョバンナや両親の庇護のもと、恵まれた生活を送っていたが、過干渉すぎる周囲から解放されたい気持ちも抱えていた。ある日やってきた転校生ガブリエルは、レオナルドと親しくなり、やがて二人に新しい感情が芽生え始める。ベルリン国際映画祭FIPRESCI(国際批評家連盟)賞、テディ賞2冠受賞。映像が綺麗でセリフもシンプル。レオを演じた少年の演技も素晴らしくて引き込まれた。ストーリー展開はちょっとお決まりで、収まりの悪さは感じたが、初々しい少年少女の好奇心・冒険心が素直に描かれていて好感がもてた。僕はゲイです、と公言した若いヒベイロ監督もかわいくて、今後の作品に期待大。2014.7 SKIPシネマ映画祭にて

聖者の午後 CORES
フランシスコ・ガルシア監督
☆祖母の年金が頼りのタトゥーアーチストのルカ、薬の横流しで稼ぐルイス、熱帯魚店で働くルイスの彼女ルアラ。3人は、落書きだらけの塀、鉄格子で囲われた家々が並ぶ、お世辞にも美しい景観とはいえないサンパウロの下町で暮らしている。
今の生活に満足はしていないのだが、そこから抜け出そうと、一歩を踏み出すこともできずにいる。ビールとピザとTVを見るだけ…。そんな3人の日常を、モノクロ映像で淡々と
追ったインディーズ映画である。
ルカの家の壁に貼ってあるポスターは、ジャームッシュ監督の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』。 観客の多くが感じるであろう、この脱力感は『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の世界そのものである。
若者3人は、ビールの飲み過ぎのせいか、揃いもそろってお腹ぽっこり体型で、カッコよさや美しさからはほど遠い風貌。その姿が実にリアル。肩に力が入っていない、だらだら、ユルユルな感じがいい。
3人はそれなりに、もがき苦しんではいるのだが、そこに痛々しさはなく、自暴自棄にもならないのが、なんともブラジルらしく微笑ましい。
私が、サンパウロにいたときに知り合った若者は、彼らと違って大学卒だったが、「いい仕事ないかな~」とは言うけれど、あくせくと探しに行くこともせず、お金ないから、基本は部屋でだらだらしたり、ビール飲んで踊ったり、家族が集まって世間話をして過ごしていた。
日本人の中では怠け者組の私でさえ、彼らのゆるさに最初は違和感があったのだが、次第にそのゆるさが心地よくなり「先のことをくよくよ心配したって仕方ない、今がそこそこ生きられればまあいいか」と思えるようになっていった。
そんなこんなを映画を見ながら、サンパウロですごした日々を回想し、ブラジルへの郷愁は募るばかり…。
サンバもボサノバもバイオレンスもない、等身大のブラジルを感じられる異色の青春群像劇です。2014.3

リオ2096 Uma Historia de Amor e Feria
ルイス・ボロネーズィ監督、セルトン・メロ、カミラ・ピタンガ、ロドリゴ・サントロ声の出演
☆1566年、南米大陸で暮らす先住民族の戦士は、侵攻してきたポルトガル人によって、愛する妻ジャナイーナを殺される。失意の戦士は鳥に姿を変え、1825年、奴隷制時代のブラジル東北部マラニョンへ飛んでいく…。
ポルトガル人の入植から、奴隷制時代、軍事政権時代を経て、鳥となった戦士は、水を巡る戦争後の未来、2096年のリオ・デ・ジャネイロへと降り立つ。
美しい女性ジャナイーナと、彼女を一途に愛し続ける戦士の、時代を超えたラブストーリーを、600年という長い戦いの歴史を背景に描いたSFアニメーション大作。アヌシー国際アニメーション映画祭2013。
ブラジルの長い戦いの歴史を、鳥となった一人の男がつなげていく、というストーリー構成がお見事。2096年未来の物語が浅くてちょっと残念でしたが、大人むけのアニメに仕上がっていた。海賊版サイトでみたときとは、やっぱりスケール感がまったく違う。アニメは映画館で見ないとダメですね。2013.10

はぐれても、はぐれても A BEIRA DO CAMINHO
ブレノ・シルベイラ監督、ジョアン・ミゲル、ヴィニシウス・ナシメント出演
☆失意のトラック運転手ジョアンは、孤児の少年ドゥダと共に旅に出る。
母をなくした少年と、妻をなくした男が道で出会い、サンパウロまで旅する物語。ベタな物語ではありますが、ブラジルらしい、直球勝負のお涙頂戴ものでした。ホベルト・カルロスの歌に影響を受けた作品とのことで、随所に彼の歌が流れていました。ジョアン・ミゲルと、小ロナウドみたいな少年の演技がマラビリョーゾでした。2013.10 ブラジル映画祭2013にて

ゴンザーガ~父から子へ~ Gonzaga- de pai pra filho
ブレノ・シルベイラ監督
☆バイオフォンの神様ゴンザーガと、息子ゴンザギーニャの波乱の物語を描く。監督は『フランシスコの二人の息子』のシルベイラ。
ルイス・ゴンザガと息子ゴンザギーニャのことは、ブラジルにいたころから、よく耳にしていたのだが、二人の間にこんな歴史があったとは、驚きでした。映画は長すぎの感ありで、もう少し間引きしてほしかったかな、というのが正直なところ。ゴンザギーニャってまだ健在なのかと思ったら、交通事故で亡くなっていたとは。現地では、ゴンザーガ生誕100年記念で様々なイベントが行われているようです。映画としては、こなれてないけど、ノルデスチ音楽の伝説ゴンザーガの伝記なのでよしとしましょう。2013.10 ブラジル映画祭2013にて

アントニオ・カルロス・ジョビン A MUSICA SEGUNDO TOM JOBIM
ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス、ドラ・ジョビン監督
☆アントニオ・カルロス・ジョビンの遺した名曲を、ジョビンはもちろん、世界各国、新旧のミュージシャンが奏でてつなぐ、語りのない音楽オンリーのドキュメンタリー。この構成で2時間、飽きずに持たせてしまうのは、ひとえにジョビンの曲だから。さまざまなジャンルのミュージシャンがジョビンを演奏していることにも驚きでした。
巨匠ドス・サントスは、ドラマチックな作風のイメージがあったが、見事に間逆のドキュメンタリー。ボサノバ一色で退屈かも、と見る前は心配でしたが、十二分に楽しめました。2013.2

シングーXingu
カオ・アンブルゲール監督、ジョアン・ミゲル、カイオ・ブラット、フェリペ・カマルゴ出演
☆1940年代、ブラジル内陸部マトグロッソ州の開発隊に参加したヴィラス・ボアス3兄弟は、アマゾン川支流のシングー川流域で暮らす先住民族インディオと遭遇し、友情を育くむ。
キリスト教や森林開発、疫病といった外圧から、彼らの生活を守るため、3兄弟は行動を起こすことを決意する。
物語は極々シンプル。いわゆるステレオタイプの人間ドラマなのだが、ブラジル内陸部の広大な自然を背景にしているので、見ているだけで心が洗われた。ブラジルの経済発展のため、白人たちが、開発を進めて行く気持ちもわかる。そんな中にあって、先住民族との共存を選び、権力者たちに屈せず、ときには媚を売りながら、居住地を勝ち取っていく。
突出した魅力あるキャラもないし、ドラマチックな出来事もないのだが、見終わった後で何とも言えない心地よさは感じた。2012.9 ラテンビート映画祭にて

トロピカリア Tropicalia
マルセロ・マシャード監督、アルナルド・バプチスタ、カエターノ・ベローゾ、ジルベルト・ジル出演
☆1967年から68年にかけてリオを中心に起こったカルチャー・ムーブメント“トロピカリア”。軍事政権下にあった当時のブラジルで、様々な抑圧への抵抗運動として音楽・演劇・映画などを媒体にした表現活動で社会を変える試みが行われていた。
カエターノ・ヴェローゾ、ジルベル・ジル、トン・ゼーなど、今も第一線で活躍するミュージシャンの当時のライブ映像はもちろん、激しい抵抗運動の様子や、軍による弾圧の実態など、リアルなニュース映像も交えた音楽ドキュメンタリー。
都会的で奇抜なカルチャー・ムーブメントを、音楽にとどまらず、アートや映画、政治的背景にも迫った通好みの作品。ブラジルの歴史や音楽シーンをある程度知らないと、置いてきぼりを食いそうな深い内容で、歴史の勉強をしている気分になった。
カエターノの顎&髪の長さや、ムタンチスのヒタ・リーのあどけなさに、時の流れを感じました。2012.9 ラテンビート映画祭にて

センチメンタルなピエロの旅
セルトン・メロ監督、パウロ・ジョゼ、セルトン・メロ、アーラモ・ファコー、トグン、ファビアナ・カルラ出演
☆ドサ周りを続けるアットホームなサーカス団のピエロ、ベンジャミンは、ピエロとして笑われ続けることに悩みを抱えていた。慣れ親しんだサーカス団を離れ、一人で生きようと決めるが…。
ブラジルの乾いた大地と、のんびりとした雰囲気が画面から漂ってきて、懐かしさがこみ上げてきた。ピエロを演じるセルトンが超キュート。前の監督作は暗い話だったが、今回はテイストがまったく違って、万人受けするヒューマン・ストーリーに仕上がっていた。
脇役もどこかで見たことある顔が多く、チョイ役で弟ダルトン君も出ていて、さすがセルトン。人望もあるのね~。2012.10 ブラジル映画祭にて

サッカーに裏切られた天才、エレーノ
ジョゼ・エンヒケ・フォンセカ監督、ホドリゴ・サントロ、アリーニ・モライス、アンジー・セペダ出演
☆1940年代、天才と呼ばれたサッカー選手エレーノは、その美貌と破天荒な性格から、女性や酒に溺れる日々を送っていた。性病の治療をせずに、サッカーを続けるエレーノは、アルゼンチンのチームに移籍するが、成績は振るわず…。
実在のサッカー選手ということで、興味津々だったが、冗長な展開に飽きてしまった。ホドリゴは、さすが!の存在感で、廃人の演技も光っていたのだが、ロドリゴの一人芝居があまりにも長過ぎて、プロモーション・ビデオを見ているようだった。
この内容なら90分が限度なのに…。テーマと役者は一流なのに、演出はNGで残念。2012.10
ブラジル映画祭にて

2ラビッツ
アフォンソ・ポイアルチ監督、フェルナンド・アルヴィス・ピント、アレサンドラ・ネグリーニ出演
☆交通事故で母子を引き殺してしまった若者は、ギャングたちの金を奪う計画を練り始める。一方、被害者の夫は、若者の命を狙い…。
スピード感があり、ストーリーも複雑ではありながら、なかなかよくできているので、ハリウッドがリメークしたがるのも頷ける。が、欲を言えば、もうちょっと緩急が欲しかった。
2010.10 ブラジル映画祭にて

ホチュアー ~笑いの遣いのインディオ~
レチシア・サバテラ、グリンゴ・カルヂア監督
☆トカンチンス川のほとりに暮らすインディオ、クラオ族を追ったドキュメンタリー。クラオ族に伝わる道化師“ホチュアー”の存在にスポットをあて、先住民の暮らしに迫っていく。先住民に、お笑い芸人のような存在がいる、というのは興味深いのだが、彼らの暮らしぶりを描いたドキュメンタリーは数多く見てきたせいか、特別目新しさは感じず。2012.10 ブラジル映画祭にて

汚れた心 CORACOES SUJOS
ヴィセンチ・アモリン監督、伊原剛志、常盤貴子、菅田俊、余貴美子、大島葉子、エドゥアルド・モスコヴィス、奥田瑛二出演
☆舞台は太平洋戦争終戦直後のブラジル日系移民社会。
遠く離れた祖国の状況を案ずる人々は、ブラジル政府から出された日本敗戦の知らせに耳を傾けようとしない。
「デマだ!」「日本は負けない」と信じる“勝ち組”の人々は、過激な愛国思想に陥っていく。写真館を営むタカハシは、勝ち組のリーダー、ワタナベに命じられ、現実を受け止めてブラジル社会に溶け込もうとしている“負け組”の青木を粛清しに向かう。

☆☆ついに日本公開されたブラジル映画『汚れた心 CORACOES SUJOS』。
長い間封印されてきた日系移民の“汚点”を、非日系ブラジル人作家フェルナンド・モライスが小説にし、非日系ブラジル人監督が映画にした。
演じるのは、日本人と日系人のトップ俳優たち。一昔前では考えられなかったコラボである。
この映画は、世界中の情報がネットで即、伝えられる現代では起こり得なかった、悲しい歴史の一事件を描いている。

遠いブラジルに渡り、仲間と協力しながら小さなコミュニティを築いてきた日本人同士が、敗戦をきっかけに血なまぐさい殺し合いを始めた事件(臣道聯盟事件)は、日系社会では長い間封印されてきた。
もちろん、ブラジルに行くまでこの事件についてはまったく知らなかったし、日系人の知り合いからも、詳しい話はきくことはなかった。
日本人としてのプライドを今でも持ち続けている一世の人たちにとっては、日系人社会の“汚点”を自ら語りたくはないのも当然だろう。

映画は、勝ち組の刺客となった男を中心に描かれている。妻を愛し、近所の子供にも慕われている心やさしい男が、日本への歪んだ忠誠心にのめり込んでいく様が、痛々しいぐらいリアルだ。
勝ち組のリーダーであるワタナベの過激な思想と、彼に洗脳されていく若者たちは、連合赤軍やオウムとなんら変わりはない。
“国賊!”と罵る姿と、連合赤軍の“総括します!”がだぶって見えてゾッとした。
一部の暴徒のテロ行為、と片づけてしまうのは簡単だが、天皇=神という戦前教育を受けた人々にとって、天皇の「人間宣言」や日本降伏のニュースは信じがたいことだったろうし、遠い祖国を思って頑張ってきた彼らの生きる支えでもあっただろうから、勝ち組にも同情の余地はある。
奥田瑛二が演じた扇動者ワタナベと、彼の思想にがんじがらめにされていく純粋なタカハシ。描き方は多少、ステレオタイプではあるのだが、二人の関係性が変化していく様が丁寧に描かれていて好感が持てた。
外国人が小説や映画で描く“ニッポン、ニッポン人(Japao,Japones)”というのは、日本人から見ると不自然に感じるものが多いのだが、この映画は、ほぼリアルな日本人像だったので、それほど違和感なく感情移入することができた。
役者が日本のトップ俳優、というのも大きいだろうが、日系人のプライドを傷つけることなく、勝ち組、負け組、そして否応なしに巻き込まれていく家族の苦悩まで、真摯に描いてくれたアモリン監督にはお礼を言いたい。

21世紀になった今でも、古風で保守的なニッポンを引きずっている日系人社会を、「面倒臭いなあ。日本の田舎より閉鎖的だわ…」と思ったこともあったのだが、よその国で日本人としての誇りを捨てずに生き抜くためには、日本人よりも日本人らしく、自分を律しながら生きざるを得なかったのかもしれない。
日本に戻り、ブラジルの日系人社会を俯瞰できるようになってはじめて、彼らの生き方に敬意を表せるようになった。2012.7

ブラジル、女医ヴェロニカの欲望 ERA UMA VEZ EU, VERONICA
マルセロ・ゴメス監督、エルミーラ・ゲーデス出演
☆レシフェで暮らす女医ベロニカの満たされない日常を淡々と描く。『スエリーの青空』のエルミーラ・ゲーデス主演。
美しい海岸が有名なレシフェ。綺麗ではあるのだが、どこか寂しげでけだるい街の雰囲気と、孤独感から抜け出せない女医の内面が見事にマッチしている。正直、見やすい映画ではないのだが、中年女性の満たされない気持ちは世界共通なんだと実感。2013.11

あもーるあもれいら サマークリスマスのかげで
岡村淳監督
☆パラナ州にある田舎町アモレイラの保育園には、長崎の修道女が数名派遣されている。その中の一人である堂園シスターは、1980年代に渡伯し、数多くのブラジルの子供たちを見てきた。ある日、15歳で子供を生んだ少女が保育園に顔を出さなくなった。子供を養子に出されて気を落とした彼女は、シスターの前で自分の身の上を語り出す。
クリスマスプレゼントが配られる前日には、6歳の少女が暴れ、泣き叫んでいた。
1年に渡って保育園を撮影し続けてきた岡村監督渾身の3部作最終版。
岡村監督作品はこれが2作目だが、取材対象との距離の近さが興味深い。しつこいなあ、とカメラをどかしたくなるぐらいなのだが、彼のひとなつこい人柄のせいか、取材される人々が徐々に心を開いて行く。
手持ちカメラで、どちどきぶれながらも、執拗に被写体へ迫り、本音を引き出していくまでが面白い。これぞドキュメンタリーの原点、という感じ。
ブラジルの貧民層は日本とは比べられないほど、荒んでいるのだが、それでも子供たちの未来にかすかな希望が見えるラストだった。2012.5 参考CINEMA「郷愁は夢のなかで」

サンパウロ、世界で最も有名な娼婦 Bruna surfistinha
マーカス・バルディーニ監督、デボラ・セッコ、カシオ・ガブス・メンデス、ファビウラ・ナシメント、クリスティーナ・ラゴ出演
☆女子高生ラクエルは、家では、育ての親と兄に距離感を覚え、学校ではイジメにあっていた。クラスメートからセクハラを受けたラクエルは、家を出て娼婦になる決意をする。ネットで客をとり、一躍人気娼婦となったブルーナの半生を描く。娼婦になるまでのいきさつは世界共通だが、性に奔放なお国柄らしく、娼婦生活の描き方は超ポジティブ。あんなに客とって身体は大丈夫なのかい、と心配になりましたが、もう引退したらしいし、悲壮感はなかったです。
日本ではエロ指定されちゃってますが、しっかりとブルーナの人間性を描いている一般作品です。ブラジル版アカデミー賞のグランヂ・プレミオ2012主演女優賞。ブルーナを演じたデボラ・セッコ、どこかで見たことある、と思ったらグローボの人気ドラマ「パライゾ・トロピカル」「ファボリータ」にも出演していた女優でした。2012.11

テリトリー・オブ・ゴッド Boca do Lixo
フラビオ・フレデリコ監督、ダニエル・ヂ・オリベイラ、エルミーラ・ゲーデス出演
☆60年代のブラジル・サンパウロに君臨した裏社会のボス、イロイト・ジョアニデスの半生を描く。
 分厚い眼鏡のダニエルはステキだったけど、ドラマの展開があまりにもお粗末で見るのがきつかったです。脚本と編集に難なり。2012.10

クリチバ0℃ CURITIBA ZERO GRAU
Eloi Pires Ferreira監督、Edson Rocha出演
☆仕事で大失敗し今後の人生に不安を抱く中流階級の男、廃品回収業をしながら家族を支える男など、冬のクリチバを舞台に、市井の人々の生活を丁寧に切り取ったオムニバスストーリー。ブラジルならではの生活の違いを描きつつ、どんな生活でも人は悩みを抱え、精一杯生きているんだ、というニュートラルなスタンスで描いているのが好感がもてた。「リオ40度」へのオマージュ、ということ。半世紀前のリオと、21世紀のクリチバでは、温度差があるが、それもまたブラジル。様々な顔を持つのが多民族国家ブラジルの魅力でもある。2011.10 ブラジル映画祭2011にて

オンナの快感 De Pernas Pro Ar
Roberto Santucci監督、Ingrid Guimaraes出演
☆広告会社のやり手宣伝ウーマンは、仕事で大ミスをして解雇されてしまう。帰宅すると、今度は、夫から三行半のメッセージが…。夫の浮気を疑い、女としての魅力のなさに気付かされた妻は、同じマンションに住むアダルトショップの店長に相談。それをきっかけに、アダルトグッズの訪問販売を手掛けるようになる。
テーマはエロなのに、ちっともいやらしくない爆笑コメディに仕上がっている。『メリーに首ったけ』のような作品で、笑いの仕掛けがあちこちにちりばめられていて、エロ面白いお母さんや、大人びた息子など、わき役も超キュート。アダルトグッズも子供のおもちゃのようにバラエティに富んでいる。エロと笑いのミックス度も絶妙で、女も男も、もしかしたら子供も楽しめちゃう作品だ。
ブラジルは、くっだらないコメディも多いんだけど、この作品は大当たり!
まったく期待してなかったので、存分に楽しめた。DVD発売希望!2011.10 ブラジル映画祭にて

ジューサーの考察 Reflexoes de um Liquidificador
Andre Klotzel監督、Ana Lucia Torre、セウトン・メロ出演
☆長年連れ添った夫の捜索願を警察に届けた老女は、愛用していたジューサーと、会話をするようになる。実は、夫には愛人がいて…。ジューサーとの奇妙な会話も面白いが、ボケ一歩手前の老女の不気味さが際立っている。
徐々に、彼女の正体が明かされるのだが、時系列が煩雑なため少々混乱してしまった。
ジューサーが話を始めたのは、夫の失踪後かと思ったら、そうでもないみたいだし…。
面白いテーマだとは思うが、今一つはまらなかった。セウトン・メロは、ジューサーの声だったようです。2011.10 ブラジル映画祭にて

MPB1967
Renato Terra監督
☆1967年に開催されたテレビRECORD主催の音楽コンテストの模様を映した音楽ドキュメンタリー。カエターノや、ジウベルト・ジウの若いころの姿が初々しく、また、会場の人々の興奮する様子も興味深かった。激しいブーイングは、サッカーの試合と同じですね。遠慮がないのもブラジルらしい。2011.10 ブラジル映画祭にて

大地の時代 A IDADE DA TERRA (80年)
グラウベル・ローシャ監督、マウリシオ・ド・バッレ出演
☆バイーアの美しい海岸、リオのカーニバル、ブラジリアの近未来的建築物etc...。そんなブラジルの風景を背景に、あるものは政治を、あるものは原爆を、あるものは欲望を語り、叫び、闘っていく。
それは、現代文明に対する怒りや嘆きにもとれるし、ただ、わめいているだけのようにも見える。ストーリー性を排除した、アングラ演劇のような台詞回しと、ブラジルの自然や現代建造物をコラボさせた摩訶不思議な映画である。
演者の叫びが延々と続くので、飽きてきても息抜きすらできない。
途中で「耳をふさいで映像だけ見てみようかなあ」なんて思ったり…。
でも、それではこの映画を見にきた意味がないので、我慢我慢…。
昨今のブラジル映画を追いかけて、日本の皆様にお伝えしていく、という勝手な使命感も若干あるので、この奇天烈な世界を理解しなきゃ、とは思うのだが、“理解しよう”とすること事態が陳腐なことのように思えてくる。
あまりにも肩がこるので、途中、溜息をつきながら「私は凡人だから理解するのは無理無理」と非力を認めたら、少しだけ楽になった。
古臭いレスラーみたいな風貌のマウリシオ・ド・バッレがあまりにも強烈で、出てくるたびに笑ってしまったのが、なんだか声を出して笑ってはいけない雰囲気…。
でも、バッレが素の顔で、「こんな映画でいいの?」と監督に語りかけるシーンでは、クスクスと笑い声も漏れてきて、ほっとした。
何を言いたいのか、頭で考えてばかりいると疲れるので、時々、頭空っぽにして、無の状態でみると、新しい発見があるかもしれません。
余談ですが、同じ台詞をはっきり何度もくどいほど言うので、ポルトガル語のリスニングの勉強にもなりますよ。
この映画は、ローシャ監督の最後の作品で、1980年制作となっているが、その世界観は80年代にあらず。パゾリーニや、ゴダールや初期のヘルツォーク作品に近い感じ。
震災後、便利で豊かな暮らしに危機感を覚えている今だからこそ、この映画を見て何かを感じる人も多いだろう。
観客を混乱させるスーパー・ハードな映画なので、1日1本の鑑賞をオススメします。
参考CINEMA:「アントニオ・ダス・モルテス」「黒い神と白い悪魔」

バラベント BARRAVENTO (62年)
グラウベル・ローシャ監督、アントニオ・ピタンハ、ルイザ・マラニョンナイーナ出演
☆舞台は60年代のバイーア。カンドンブレや海の神を崇拝する村人たちの多くは、道具も船も持たない貧しい漁民たちだ。ある日、都会から舞い戻ってきた若い男フィルミノは、彼らの信じるものをすべて否定し、若いリーダー、アルアンに敵意を抱く。
ココナッツの生い茂るのどかなバイーアの海岸を舞台に、土着的な宗教観に囚われて暮らす人々と、現代社会に毒された若者の確執をストレートに描いている。
ローシャ作品は、強烈に個性的な映画を先に見ていたため、予想外にシンプルで分かりやすい展開にほっとして、終始、和やかな気持ちで映画を楽しむことができた。
何の手もつけられていないバイーアの海岸は、今でも映画と同じような姿で残っていたよなあ。
あの場所にいつかまた戻りたい…。そんな郷愁を抱いたり、ファビアナのCDで何度も聞いた「Saudac,ao para lemanja」のメロディに心を癒されたり…。
ローシャ映画を見てこんな穏やかな気持ちになるなんて、驚きである。
モノクロではあるのだが、バイーアの青い海と空の美しさは、画面から染み出ていたし、褐色の若者たちのキリリとした表情や肌のピチピチ感も生々しく伝わってきた。
古さを感じさせない映像美は、やはりスクリーンでなければ堪能できない、と実感。
物語は、因習や宗教に拘る人々と、そこに一石を投じる若者の関係を描いているのだが、とくに突飛な展開はないため、どちらにも感情移入しやすい。
新しモノ好きで嫉妬深い若者が、一人悪者のようにもとれるが、彼は、現代社会で生きる多くの人間の姿を投影している。実際、古いものは、どんどん踏みにじられ、人々は無意識のうちに毒されてしまっているのだ。
ローシャ監督作品は、表現方法を変えてはいるが、古くから伝わる伝統や因習とそれを脅かす新しい価値観を描く、というテーマは一環している。
ブレのない強烈な主張が、ローシャ監督の魅力でもあるのだろう。
もしまだ生きていたら、どんな監督になっていたのか…。社会から変人扱いされ落ちぶれていたのか、現代社会にとりこまれ、上手に泳いでいたのか…。
たられば、ではあるが、前者だった、と思いたい。
ローシャ映画の入門として「バラベント」は最適で、一般受けする映画です(この映画はサンパウロのDVDショップでよくみかけました)。
美しい映像とビリンバウの音色を聞くだけでも、十分楽しめるブラジルらしい映画です!2011.6

狂乱の大地 TERRA EM TRANSE (67年)
グラウベル・ローシャ監督、ジャルデル・フィーリョ、グラウセ・ホーシャ出演
☆華やかな帝国を支配していた階級の没落を描いた前衛的作品。
城の中で支配階級の男女が世を憂う姿が延々続き退屈…。社会が変わっていく時の慌てぶりは伝わってきたが…。マルコス、チャウシェスクそして北朝鮮の金ファミリーなど、独裁政権の権力者側の華やかな生活を想像してみたり…。
台詞が難解で、まったく頭に入ってこず。今回は音楽もほとんどなかったので、苦行、でした。半分は寝てました^^;。2011.6

エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOP TROPA DE ELITE2 -O Inimigo Agora E Outro
ジョゼ・パジーリャ監督、ヴァグネル・マウラ、イランディー・サントス、アンドレ・ハミロ、 セウ・ジョルジ出演
☆特殊部隊BOPE結成から10年が過ぎた頃、隊長のナシメントは軍服を脱ぎ、背広族となっていたが、今でも警官を続けている。妻は新しい夫で人権問題活動家のフラガと暮らし、息子ハファエルも彼になついている。
ある日、監獄内で暴動が発生。フラガは囚人の説得のため、監獄へ出向き人質に取られてしまう。極秘で出動していたBOPEのアンドレは、一瞬、説得に応じたように見えた囚人を一発で射殺する。
フラガはBOPEのやり方を激しく糾弾し、アンドレに処分が下る。
それから数年後のリオ。警察とギャング、そして権力者たちの不正は続き、相変わらず武器やドラッグの裏取引が行われていた…。
2008年、ブラジル国内で大ヒットし、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したパート1の第2弾。エリート学生の間でまん延するドラッグ汚染と、ギャングのつながりにメスをいれた1作目とは様変わりし、今回はBOPEの元隊長が悪徳警官&政治家と対決する。
スピーディーな展開と派手なパフォーマンスが話題だった1と比べて、2はシリアスな政治サスペンスに仕上がっている。
相変わらず、台詞が多くて辛辣なので、詳細は理解できなかったのだが、複雑でドロドロした人間関係にナシメントの家族が絡んできたり、パート1の主演だったアンドレが、非業の死を遂げるなど、見どころは満載だ。
シリアスな政治の舞台裏にエンタメ性が盛り込まれ、見ていて飽きがこなかった。さすがパジーリャ監督!実力は本物だと確信した。
ファベーラのギャングの実態や、汚職警官・悪徳政治家など、日本では現実味がないのだが、ブラジルではリアルな社会問題の一つ。
ブラジルの友人は、「ブラジル=犯罪、と思われてしまうのは恥ずかしいし悲しい」と、嘆いていたが、その現実は見過ごすことはできない。
かなり辛辣で、希望が見えない展開なので、おそらくブラジルでは1作目ほどヒットはしなかっただろうが、社会派映画好きには超オススメ。何度でも見直したい一本だ。
ブラジル・ポップス界の大スター、セウ・ジョルジがあっという間に殺されてしまう、暴動を起こした囚人役で出ているのも見もの。犬死する囚人役を引き受けたセウにも脱帽です。
参考CINEMA:「TROPA DE ELITE」「バス174」

名前のない少年、脚のない少女 OS FAMOSOS E OS DUENDES DA MORTE
エズミール・フィーリョ監督、エンリケ・ラレー、 イズマエル・カネッペレ出演
☆舞台はブラジル南部の田舎町。ボブ・ディランに憧れる少年は、人生に希望を見出せずにいた。友人と一緒に橋を通りかかった少年は、飛び降り自殺後の現場に遭遇する。その橋は、かつて友人の姉が恋人と心中をはかり、姉のみが亡くなった事件の現場だった。
閉鎖的な田舎町で母と暮らす少年の孤独と、死への興味を繊細なタッチで描いている。8ミリ風映像がシャレていて、ガス・バン・サントの初期作品を彷彿とさせる。日本では、ブラジルといえば黒人、ファベーラ、カーニバル、というイメージが強いが、移民の国ブラジルの南部は多くのヨーロッパ系移民が暮らしていて、ヨーロッパの風習が今でも残っている。ノルデスチのブラジル人と比べて、排他的で大人しい人たちも多いようだ。
少年が、心中で生き残ってしまった青年に強い関心を持ち、死へと導かれそうになるシーンはハラハラさせられ、“行っちゃダメ”、と声に出しそうになった。
なぜ彼があんなにも死に憧れてしまったのかが曖昧で、少々、唐突にも感じたが、少年の演技も映像も素晴らしく、「死にたい」と思うことに、明確な理由なんてないのかも、と納得させさせられた。
この映画の舞台となった2008年。ボブ・ディランがブラジルにやってきたときは、サンパウロでも大騒ぎで、高いチケット代が話題になっていたことを思い出した。同じ時期のブラジルとは思えないほど、サンパウロとは風景も人々の暮らしも違っていて、興味深かった。2011.4

ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡 Waste Land
ルーシー・ウォーカー監督、フェルナンド・メイレレスほか製作総指揮、ヴィック・ムニーズ出演
☆現代アート界の旗手ヴィック・ムニーズは、故郷のブラジルで、大量のゴミ処理場からリサイクル品の回収をしている人々(カタドール)を取材し、彼らのポートレートをリサイクル品で表現するアートの制作に取り掛かる。
様々な事情を抱えたカタドールの本音に迫り、彼らのプライドが復活するまでが描かれた感動のドキュメンタリー。
ブラジルは世界一のリサイクル率を誇っている。だが、それは国民のリサイクル意識が高い、ということではない。町にはゴミがあふれているし、裕福な人、高い教育を受けた人たちでも、町中にゴミを捨てるのが当たり前の社会だ。
世界一のリサイクル率は、町にあふれたゴミから、リサイクル品を集める人々の存在が大きいのだ。
日が暮れると、店や家々から捨てられたゴミから、空きビン、空き缶、ペットボトル、段ボールなどを集めるカタドールがどこからともなく現われ、ゴミあさりをを始める。野外ライブの会場や、サッカー場、カーニバル会場では、熱狂する観客の間を縫いながら、カタドールたちが黙々と空き缶集めをしている姿をよく目にした。
また、大量にリサイクル品を積んだ軽トラックの上で子供が待ち構え、父親の投げる段ボールを受け取る姿や、集めた缶を効率よく運ぶため、バス停につぶした缶を置いて、バスに踏んでもらっているカタドールを見かけたこともある。
さまざまな工夫をしながら、生活のためにリサイクル品を集める人々。ブラジルに2年いて、彼らの姿を見ない日は1日たりともなかったのである。
彼らはプロとしての自覚を持つ一方で、人から蔑まれているゴミ集めの仕事にコンプレックスも抱いている。
ビックのゴミ・アートに関わることで、生きる希望やあたらしい自分を見つけた彼らの姿は、本当に生き生きとしていたし、完成に喜ぶ様子から、彼らの今までの苦しみを感じとることができた。
ビックと一緒にアートのオークションに行き、聞いたこともないような金額で、自分たちが作ったアートが売れたことに驚く若いカタドール。
ビックの手伝いをしてしまったことで、「もうリサイクル品集めの生活には戻りたくないの」と、泣きじゃくるカタドール…。
新しい価値観を見つけたカタドールたちの姿が目に焼きついた。

ブラジルはすばらしい国ではあるが、街中で平気でゴミを捨てる習慣だけはイタダケナイ、といつも感じていた。きちんと分別してゴミを捨てれば、カタドールも集めやすいと思うんだけどなあ。
そんなこんなを考えさせてくれる極上のドキュメンタリーでした。2010.10 東京国際映画祭にて

ファベーラ物語 5 x FAVELA, AGORA POR NOS MESMOS
ヴァグネル・ノバイス、マナイラ・カルネイロ、ホドリゴ・フェーリャ、カカウ・アマラウ、ルシアーノ・ヴィヂガウ、カドゥ・バルセロス、ルシアナ・ベゼーラ監督、シウヴィオ・ギンダネ、チアーゴ・マルティンス、サミュエル・デ・アシス出演
☆ブラジルのファベーラ(スラム街)には、衝撃的な殺人や激しい銃撃戦だけではない、夢や希望を感じさせる庶民の暮らしも存在する。ブラジルの若手監督たちが、ファベーラで暮らす人々のリアルな生活をやさしい視点で描いたオムニバス・ストーリー。
5つのエピソード、それぞれに個性があり、好感が持てた。悲劇は1作で、あとはコメディ。「Cidade dos homens」のTV版に似ていなくもないが、見ていて安心感のあるほのぼのした人間ドラマだった。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて

ルラ、大統領の息子 LULA, O FILHO DO BRASIL
ファビオ・バヘト監督、フイ・ヒカルド・ヂアス、グローリア・ピレス、ジュリアーナ・バローニ出演
☆1945年、後に"ルラ"と呼ばれるようになるルイスは、ブラジル東北部の貧しい農村で生まれた。ルイスの母は女手一つで子供たちを育てていたが、都会へ行った夫からの手紙を読み、上京を決心。トラックで13日かけてサンパウロ州の港町サントスへ向かう。だが彼らを待ち受けていたのは、過酷な暮らしと父親の暴力だった。父の元を離れたルイスは働きながら学問を続け、金属工の職を得る。だが、事故で指を切断。さらに愛する家族に悲劇が襲う…。現ブラジル大統領ルラの激動の半生を描いた感動のヒューマン・ストーリー。
大統領の人生があまりに劇的過ぎるのか、実話なんだろうけど、なぜかウソ臭くみえてしまった。苦労した少年時代よりも、成人してからの話が長いのだが、社会派といえるほど、主義主張もされていない。なんだか中途半端な作品。現役大統領の自伝が在職中に映画になるっていうのはどうなのかなあ。裏事情は描けないだろうし、あちこちに遠慮しなきゃならないだろうし…。やっぱりこういう映画は、死んでからか、引退した後に作られるべきものだと思った。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて

僕のことを話そう O CONTADOR DE HISTORIAS
ルイス・ヴィラッサ監督、マリア・デ・メデイロス出演
☆母から施設にあずけられた少年は何度も施設を抜け出す問題児。だがある日、フランスから社会調査にきていた女性に声をかけられ、彼女の家で暮らし始める。愛に飢えていた少年は徐々に心を開き…。
のちに作家となった男の実話を映画化。これまたよくある文部省指定映画風。今回のブラジル映画祭は子供映画に絞ったのでしょうか。悪くはないんだけど…。分かりやすい映画ではあるのだが、飽きてしまった。2010.10 ブラジル映画祭にて

世界が終わりを告げる前に
アナ・ルイーザ・アゼヴェド監督、ペドロ・テルゴリーナ出演
☆ブラジル南部の田舎町で暮らす少年は彼女に振られ、ふてくされる。親友と彼女ができていると知った少年は、学校の化学実験室を荒らしてしまう。犯人として親友が疑われ、彼は停学。少年は自分がやったと正直に名乗り出るが、学校側は取り合わない。やがて、少年が荒らした実験室からパソコンが盗まれていたと知り…。
思春期の友情と初恋を生き生きと描いている。「天国の口~」の文部省指定映画版、といったところ。 「中学生日記」のようなありがちなドラマではあったが、少年の実父との交流や、暖かい家族の描写が丁寧だし、恋人を奪った親友との経済的な格差にも少しふれていて、女性監督らしい、細やかな心配りが見てとれる映画だった。黒人が郵便配達員しか出てこないブラジル映画、というのは日本ではめったに見られないので、ある意味新鮮だった。ブラジルらしくないブラジル映画ではあるが、これもブラジルの真の姿であることは間違いない。2010.10 ブラジル映画祭にて

マクナイーマ MACUNAIMA
ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督、グランヂ・オテロ、パウロ・ジョゼ出演
☆アマゾンの密林で暮らすマクナイーマは、兄たちと共に大都会リオへやってくる。
サイケデリックで、脳ミソいっちゃってる感じのラリパッパ映画を久々に見せていただきました。ブラジルのブラック・コメディ番組「カセッタ・プラネッタ」にノリは似てなくもないのだが、真面目にアート系作品を見に来た観客に交じって、バカ笑いする気にもなれず。シラフで見るのはちょっときつかったです。「意味わかんねー、けど、なんだか奇妙でおかしい」というのが率直な感想です。2010.12

ファヴェーラの丘 FAVELA RISING
ジェフ・ジンバリスト監督
☆リオのファベーラで育ったアンデルセンは、家族や仲間が犯罪組織に入り命を落とすのをみて、違う人生を歩むことを決意。ファベーラで音楽グループ「アフロレゲエ」を結成し、活動し始める。リアルなリオのファベーラの様子が描かれていて、「シティ・オブ・ゴッド」や「トロパ・デ・エリッチ」と照らし合わせてみるとより面白い。大きくなったらギャングになる、と言い切る少年が、後日アフロレゲエに参加した、というテロップを見って心からほっとした。2011.1

夫婦間戦争 Guerra conjugal (1975年)
ジョアキン・ペドロ・デ・アンドラーデ監督、ダウトン・トレヴィザン原作、クリスティーナ・アシェー、 リマ・ドゥアルチ、イタラー・ナンディ出演
☆悪態ばかりつくジジイの横で不満気に眠る老婆、色気たっぷりの女性にムラムラするエロ弁護士等々、さまざまな男女の関係を描いた群像ドラマ。会話重視のフレンチ映画っぽくもあり…。シンプルなコメディ映画、と見れなくもないが、台詞の端々に皮肉がたっぷり隠されている感じ。
ウディ・アレンの初期作品を素朴にした感じ…?。日本語字幕だとちょっとニュアンスが伝わらない気がした。2010.12

リオ、40度
ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督、ジェゼ・ヴァラダン、グラウセ・ローシャ出演
☆舞台は1950年代のリオ。丘の上のファベーラで暮らす人々の暮らしをリアルに描いた群像劇。
当時のファベーラの暮らしは、今のように武器や麻薬がまん延した社会ではなく、貧しいけれど人々がけなげに生きていた。リアリズムを追求したドキュメンタリー風の映画は当時は斬新だったのだろう。サルバドールの市井の人々の生活を描いた「オー、パイ、オー」はこの映画の焼き直しだし、「オルフェ」や「シティ・オブ・ゴッド」もこの映画に少なからず影響を受けている、と感じた。
人々の暮らしぶりを映し出すモノクロ映像と、時折流れるサンバの名曲「A Voz do Morro」(マツケン・サンバPart2)が絶妙に絡み合い、音楽映画としても十分楽しめた。2010.12

カルトーラ
リリオ・フェへイラ監督
サンバの作曲家、カルトーラの人生を追った音楽ドキュメンタリー。耳にしたことのあるサンバのオンパレード。死んでから見直されたタイプのミュージシャンだったようです。2010.7

抱くなら愛して FALSA LOURA
カルロス・ヘイシェンバー監督、ロザンヌ・ムルオランド、ルシアーナ・ブリテス、プリシラ・ジアス、ジン・スガンゼルラ出演
☆工場で働くシウマーラは、美人で気の強い女性。工場の仲間たちから慕われ、シャイな友人の面倒をみる優しさも持ち合わせている。或る日、お気に入りのバンドのライブにいったシウマーラは、ミュージシャンと一夜を共にする。一方、犯罪歴のある父親は、娘に世話になっていることを卑下し、ある謎の弁護士と接触する。
シウマーラのキャラが魅力的で好感が持てたのだが、ドラマがとっちらかっていて何がいいたいんだか、さっぱりわからず。工場で働く人々のファッションや好きな音楽など、その洗練されていない加減がリアルでサンパウロの人々を思い出した。
日本に伝わっている危険なファベーラや、ボサノバを奏でる優雅な白人の世界はブラジルのほんの一部であり、多くは、シウマーラのような労働者。黒人も白人も一緒になって肉体労働に従事し、週末は踊って楽しむ。そんな日常の切り取り方がうまかっただけに、後半の唐突な夢物語は違和感があった。2010.7

監獄の記憶 MEMORIAS DO CARCERE(ブラジル・1981年)
ネルソン・ペレイラ・ドス・サントス監督、カルロス・ヴェレーザ、グロリア・ピレス出演
☆ノルデスチの海辺の町マセオで、公務員として働きながら小説を書いているラモスは、軍人からの圧力を受け、逮捕される。刑務所内で出会った人々は、ラモスのような政治犯から強盗、軍人まで、様々な人々であふれていた。リオの刑務所に移ったラモスは、刑務所内で書いた本を出版。妻のはからいでささやかな出版記念パーティーが開かれる。
だが、まもなく島へ送られたラモスは、そこで過酷な生活を強いられることになる。
3時間という長い上映時間の多くは監獄での生活で占められていたが、飽きることなく見ることができた。軟禁から一般刑務所、そして過酷な島の刑務所へ。舞台は変わっても監獄であることに変わりはない。そんな中で、ラモスは看守の目を盗んで筆を走らせる。
一つ間違えば、重くて暗いだけの作品になりそうな設定だが、そこはブラジル。ギラギラの太陽の光と、脇役の陽気なキャラが、時に笑いも誘い、肩肘張ることなく見ることができた。
ネルソン・ぺレイラ監督作品は初めて見たのだが、思ったよりもわかりやすい。ほかの作品もぜひ見てみたいが、次に見れるのはいつになるのやら…。2010.6

シティ・オブ・ドッグ SHOW DE BOLA (ブラジル)
アレクサンダー・ピックル監督、ティアゴ・マーティンス出演
☆リオのファベーラで、寝たきりの母を看病する毎日を送るヂアゴは、ファベーラのドンからサッカーの腕を買われ、名門チームの下部チームに所属する。だが、ドンの仕事をミスった親友が制裁を受け、殺されるのを目撃したヂアゴは、ドンに反発し始める。
ドイツ人の監督が撮ったブラジル映画。よくあるファベーラが舞台の映画で、とくに新しさも衝撃も感じず。この手のドラマは日本では日の目をみるのだが、正直見飽きた感がある。ブラジル=ファベーラの犯罪、貧困、といった世界以外にもさまざまな顔があるのがブラジルなのに…。2010.5

BESOURO
Joao Daniel Tikhomiroff監督、Ailton Carmo, Jegssica Barbosa出演
☆20世紀初頭、まだ、カポエラが一部の人々にしか知られていない時代に、超人的な動きで人々を魅了したカポエラの達人ベゾウロ。だが、彼の存在を苦々しく思っていた白人の地主たちは、ベゾウロを追い詰めていく。ブルース・リーの映画をユルユルにした感じのアクション映画。
ベゾウロのしなやかな動きは美しかったが、カンフー映画ほどアクション・シーンが洗練されていないので、飽きてしまった。アクション映画なのかアート映画なのか中途半端な感あり。残念!2010.11


【メキシコ】
ノー・エスケープ 自由への国境 DESIERTO
監督:ホナス・キュアロン、出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ジェフリー・ディーン・モーガン、アロンドラ・イダルゴ
☆メキシコから米国へ徒歩で国境を越えたメキシコ人グループは、凶暴な犬を連れた一人の男の人間狩りの餌食にされる。
ひたすら追いかけっこが続くのだが、ハラハラドキドキが持続。構成がよくこなれている。エンタメ風ではあるのだが、実際に起こり得る社会状況がある。怖い。若い人にぜひ見てほしい一本。2017.5

モンスター・ウィズ・サウザン・ヘッズ Un monstruo de mil cabazas
ロドリーゴ・プラ監督、ハネ・ラルイ、セバスティアン・アギーレ・ボエダ、エミリオ・エチェベリア、ダニエル・ヒメネス・カチョ出演
☆在宅介護していた夫の容体が急変する。慌てた妻は主治医に連絡を取ろうと必死になるが、事態は思わぬ方向に転がっていく…。平凡な主婦が絶望的な行動に走る様を、抜群のテクニックで描くノンストップ・サスペンス。サスペンス一色になりがちなストーリーではあるのだが、そこはプラ監督。事件後の裁判での目撃者の発言を間に挟んだり、ピントを外したぼかし映像を多用したり、随所にいろいろな仕掛けがあって、まったく飽きることなく楽しめた。エンタメ寄りの作品ではあるのだが、保険システムや横柄な医者など、社会問題にもしっかりとメスを入れているのはさすが。社会派映画が多いので、気難しいタイプかと思ったら、プラ監督、すごーく気さくな人で、やさしくて、感激の涙。念願かなってお会いできてうれしかったです!2015.10 TIFFにて

ウイークエンド・セーラー The Weekend Sailor
ベルナルド・アルスアガ監督、サイモン・ル・ボン、ラモン・カルリン出演☆ヨットの世界一周レースがスタートした1973年。注目を浴びたのは実績のあるヨーロッパ勢ではなく無名のメキシコ人セーラー、ラモン・カルリンとその家族が乗ったSAYULAⅡ号だった。素人集団と蔑まれたSAYULAⅡは9カ月にも渡る航海で快進撃を続ける。サプライズの思い出を語る元クル―の顔が楽しそうで、見ている側もほっこり。夢を実現するって素敵なことね、と思わせるシンプルなドキュメンタリーでした。2016.10 ラテンビート映画祭にて

600マイルズ 600 Millas
ガブリエル・リプステイン監督、ティム・ロス、クリスティアン・フェレール、ノエ・エルナンデス出演☆武器の密輸を生業にするメキシコ人青年アルヌルフォは彼を捕えようとしたATFエージェントのハリスを誘拐。アリゾナから600マイル先にあるメキシコの麻薬組織の本拠地まで長い旅に出る…。泣き虫で気の小さい青年が、叔父のヤクザ稼業を無理くり手伝わされてる感が伝わってきて痛々しかった。海千山千の大人たちに翻弄されるアルヌルフォの姿にスポットをあてながら、メキシコの犯罪の連鎖という現実を描いている。いい人ぶってるハリスも実は…という苦いエンディングも秀逸。リプステイン監督の次回作も期待したい。2016.10 ラテンビート映画祭にて

堕落の王国 DECADENCIA
ホアキン・ロドリゲス監督、ナタリー・ウマーナ 、 アレハンドロ・エストラーダ出演☆セクシーな売り子アナベルは若き経営者オスカルに見初められるが、オスカルはアブノーマルな性癖を持つ男だった。変態ものにしては、淫靡さも変態度も低く…。クオリティも低くて残念。ナタリー・ウマーナは魅力的でしたが。2016.2

パラドクス EL INCIDENTE
アイザック・エスバン、イサーク・エスバン監督、エルナン・メンドーサ、ナイレア・ノルビンド出演☆刑事に追われた兄弟が非常階段に逃げ込んだ。まもなく刑事と二人は出口のない階段であることに気づく…。家族旅行に出かけた一家は、走っても走っても目的地にたどり着けないループの世界に迷い込む。
二つのループ世界の恐怖を描いた作品。ユニークなゲーム感覚のSFだった。35年後の世界をもう少し丁寧に描けばさらに面白かったのに。家族旅行の最初のくだりは余計な感あり。いきなり車からでも十分な気がした。2016.2

ブロークン・アイデンティテイ LA ULTIMA MUERTE
ダビド・ルイス監督、クノ・ベッカー、アルバロ・ゲレロ出演☆全ての個人情報がシステムによって管理された近未来。医師ハイメは瀕死の身元不明の青年を助けるが、彼は何者かに命を狙われていた。他人事ではない管理社会に、蘇生技術を悪用したSFサスペンス。ハリウッドのノリだったが、よくできていて楽しめた。ハッピーエンドじゃないのも私好み。後半の説明がちょっと長すぎなのが気になった。アルバロ・ゲレロ、好い役者です。2016.1

マルタのことづけ LOS INSOLITOS PECES GATO
クラウディア・セント=ルース監督、ヒメナ・アヤラ、リサ・オーウェン出演
☆グアダラハラで暮らす孤独なクラウディアは、虫垂炎で運ばれた病院で、マルタというシングルマザーと同室となる。4人の子どもたちに囲まれ、いつも賑やかなマルタの家。末期がんの母を中心にした彼らにクラウディアは心を開き始める。不治の病ものが苦手なのだが、お涙頂戴にならない展開は好感が持てた。ただ、展開が単調で少々飽きてしまいました。2015.11

エイゼンシュテイン・イン・グアナファト Eisenstein in Guanajuato
監督:ピーター・グリーナウェイ/出演:エルマ・バック、ルイス・アルベルティ
☆『戦艦ポチョムキン』でモンタージュ理論を確立したロシアの映画監督セルゲイ・M・エイゼンシュテインは、ドキュメンタリー映画『メキシコ万歳』の撮影のため、メキシコのグアナファトを訪れる。彼は映画の撮影をよそに、ガイドのパルミーノとの愛とSEXに溺れていく…。
グリーナウェイ監督らしさ満載。ゴージャスなホテルの部屋がグルグル回ったり、奥行きをわざと平面的に写したり…。映像がアートでした。エイゼンシュテインの撮った映像もちらりと出てはきたけど、もちろん伝記的要素はほぼ皆無。映画監督でありながら映画が撮れない苦悩を性への目覚めに転嫁していく男の姿を、まるでリアルでなく描いていて面白かったです。男の局部全開の裸体も見ているうちになんとも感じなくなりました。グリーナウェイ監督の個性健在なのがうれしかったです。グリーナウェイ監督特集とかやってくれないかなあ。2015.10 LBFFにて

選ばれし少女たち Las Elegidas
監督:ダビ・パブロス/出演:ナンシー・タラマンテス、オスカル・トレス、レイディ・グティエレス
☆米国サンディエゴとの国境の町ティファナで暮らす14歳のソフィアは、恋人のウリセスに、彼の父親が営む売春宿に売られてしまう。呵責に苛まれるウリセスだったが、ソフィアを救い出すには代わりの少女を見つける必要があった…。救われない展開にどどっと落ち込みましたが、少女たちの演技がみんなとても自然で素晴らしかったです。素人さんを使ったとは思えない体当たり演技。ストーリー展開が巧みでまったく飽きずに見られた。監督の将来性を予感させる作品でした。2015.10 ラテンビート映画祭にて

パーカー La parka
監督:ガブリエル・セラ・アルゲージョ/出演:エフライン・ヒメエス・ガルシア
☆25年以上もの長い間、メキシコシティの食肉処理場で働いているエフラインは、生き物の死と向き合う日々の仕事について語り始める…。牛の生命を奪う仕事に対する、エフラインの罪の意識や喪失感を静かに見つめた短編ドキュメンタリー。監督はニカラグア出身の新鋭ガブリエル・セラ・アルゲージョ。2014年のドキュメンタ・マドリードで審査員特別賞受賞、2015年米国アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞ノミネートなど、世界各国の映画祭で評価された逸品である。常にパーカーを羽織っているエフラインの「後ろめたさ」が辛かったです。家族を食わせるために、肉を食べる人類のためにやっている、人のための仕事なのだが、牛から見れば「死神」なんですよね。エフラインにありがとう、といいたくなりました。2015.10 LBFFにて

皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇 NARCO CULTURA
シャウル・シュワルツ監督
☆年間3000件を越す殺人事件が発生するシウダー・フアレスで、死と隣り合わせの捜査を続ける地元警察官リチ・ソト。一方で麻薬カルテルのボスたちを英雄と称える音楽ナルコ・コリードのエドガー・キンテロは、米国で成功を手にしようと野心を燃やす。対照的な2人の男に密着し、現在のメキシコが抱える問題の複雑さと深い闇を明らかにしていく。
フアレス市の話は聞いていたが、警官が次々殺害される生死体の映像は強烈。メキシコは警察の腐敗も話題だが、真面目な地元警官も大勢犠牲になっている現実に言葉を失った。ナルコ・コリードに関しては、あり得る話。組織のボスというのは、違法手段でも、地元の人に仕事や金を落とす役目も果たしていることも多いので、英雄視されるのはよくあること。古典的な「ゴッド・ファーザー」の世界。ラテン社会では、なぜ裏社会に富と権力が集中したのか。そこには欧米という上お得意が絡んでいたはず。現実をなぞるだけでなく、「なぜ?」という部分まで突っ込めば、さらに説得力のある作品に仕上がっていた気がします。2015.4

モレニータ・スキャンダル 消えた聖女 MORENITA, EL ESCANDALO
アラン・ホンソン・ガビカ監督、オラシオ・ガルシア・ロハス、マヤ・サパタ出演
☆祖父の手術代を稼ぐため、青年は、飼育している鳩を使って麻薬密売の手助けをする。だが、麻薬の一部が紛失し、青年は家族を殺すと脅される。青年は、メキシコ人が奇跡の絵画と崇拝するグアラルーペの聖母の絵画を盗み出し、身代金を要求する。
グアダルーペの聖母をどれだけメキシコ国民が崇拝しているかが感じられるメキシコらしいサスペンス。元兵士の祖父役の俳優は存在感あり。おそらくメキシコの名優なのでしょう。2015.2

セザール・チャベスCesar Chavez
ディエゴ・ルナ監督、マイケル・ペーニャ、アメリカ・フェレーラ、ジョン・マルコビッチ出演
☆1960~70年代、カリフォルニアのブドウ農園では、ブラセロと呼ばれる多くのラテン系季節労働者が、低賃金重労働を強いられ、差別的扱いを受けながら過酷な生活を送っていた。彼らの待遇改善のために立ち上がったメキシコ系移民、セザール・チャベスは、ブドウの不買運動やデモ行進、断食など、非暴力での抵抗を続け、労働者の権利を勝ち取っていく。
チャベスの生い立ちには触れず、様々な抗議運動の様子と経営者サイドとのバトルを描いた骨太感が気にりました。派手さはないけど誠実な映画。ディエゴの監督としての手腕は確かですね。監督に徹した姿勢も好感がもてます。デモにすべてをささげた父に反発した息子はその後、どうなったのかが気になった。調べてみるとするか。2014.10 ラテンビート映画祭にて

グエロス Gueros
アロンソ・ルイス・パラシオス監督、テノッチ・ウエルタ、セバスティアン・アギーレ、イルセ・サラス出演
☆大学のストライキ中、学生のソンブラとサントスは、メキシコシティーの古アパートで怠惰な日々を送っていた。ある日、ソンブラの弟トーマスが部屋に転がり込んできた。3人はトーマスが憧れる伝説のミュージシャンが、今や病床に伏していると知り、彼を探しに向かうが…。
インディー映画の王道的作品で好感が持てた。モノクロの映像もオシャレで、兄役の主演俳優も魅力的。メキシコの学生運動の様子がリアル。43人の学生が市長とマフィアに殺された事件が起こったばかりだったので、見入ってしまいました。2014.11 ラテンビート映画祭にて

父の秘密 DESPUES de LUCIA
マイケル・フランコ監督、テッサ・イア・ゴンサレス、エルナン・メンドーサ、ゴンサロ・ヴェガ・シスト出演
☆妻ルシアを交通事故で失い、悲しみに暮れるロベルトは、娘のアレハンドラとともにメキシコ・シティに移り住む。ある日、軽い気持ちで友人の彼氏と関係を持ったアレは、淫乱呼ばわりされ、激しいいじめにあう。
メキシコのアッパークラスの子供たちの日常を描いた作品は、あまりお目にかかったことがなかったのだが、高校生が豪邸のプールで酒とドラッグ三昧、という風景はいずこも同じ。ばか騒ぎしているのが、苦労知らずのボンボン&嬢ちゃんで、彼らが陰湿なイジメをする、というのも全世界共通。子供のころから恵まれすぎていると、人の痛みを思いやったり、いたわる気持ちが育たないんろうね。溜息の連続でした。
虐められながらも、親にも泣きつかず、泣き言を言わないアレの気持ちが痛くて、つらくなったが、彼女が死を選ばなかったことだけが、せめてもの救い。大切なものを亡くしたあとの心のケアって、ほんとに大切なんだな、と痛感させられた。暗くて重い内容ではあるが、心にぐさっと刺さる作品だった。カンヌ国際映画祭2012ある視点部門作品賞。2014.5

メキシコ 地獄の抗争 EL INFIERNO
ルイス・エストラーダ監督、ダミアン・アルカサル、ダニエル・ヒメネス・カチョ出演
☆家族を殺された男の復讐劇。凄惨な殺人シーンがたくさんでてきてかなり引いた。メキシコのマフィア物は救いがないので、見ていてつらくなります。2014.6

5月5日の戦いCinco de Mayo : La batalla
ラファ・ララ監督、クリスティアン・バスケス、クノ・ベッカー、アンジェリカ・アラゴン出演
☆1862年5月、ナポレオン3世がフランス軍を率い、メキシコに侵攻した。プエブラの将軍イグナシオ・サラゴサは、メキシコの自由を死守するため、数千の貧しい民兵を率い、6000人の兵を持つ敵軍に果敢に立ち向かう。メキシコの誇りをかけた戦い「プエブラの会戦」を、壮大なスケールで描きだした歴史スペクタクル。
戦闘シーンは迫力ありましたが…。兵士たちのキャラクターが曖昧で、誰が誰だか最後まで区別がつかず。ただ、サラゴサの演説シーンは見応えあり。2013.10 ラテンビート映画祭にて

エリ Heli
アマ・エスカランテ監督、アルマンド・エスピティア、アンドレア・ベルガラ、リンダ・ゴンサレス出演
☆舞台はメキシコ・グアナフアト州にある小さな田舎町。住民の多くは貧しく、自動車組み立て工場の仕事か、麻薬密売組織の手先になるしか、生きる道がないような厳しい状況にある。そんな中、17歳のエリは、大人たちの汚れた裏の顔に直面していく。カンヌ国際映画祭監督賞受賞。
監督の前作よりはるかに見やすく、物語も整っていて見応えがありました。エリの家族は、巻き添えを食っただけなのに、父は殺され、末娘はおそらくレイプされ…。リベンジしてしまうエリの気持ちもわかるけど、彼の暗い未来を予感させることが、この映画のテーマであり、問題提起、なのでしょう。2013.10 ラテンビート映画祭にて

ダヤニ・クリスタルの謎 Who is Dayani Cristal?
マーク・シルバー監督、ガエル・ガルシア・ベルナル出演
☆2010年、米国アリゾナ州とメキシコの国境に位置するソノラ砂漠で、ある出稼ぎ労働者の遺体が見つかった。この場所は国境警備隊が「死の回廊」と呼ぶ危険区域である。遺体は身分証明書を所持しておらず、手掛かりは彼の刺青「ダヤニ・クリスタル」の文字のみ。映画では、この謎の遺体の人物像と、刺青に残されたダヤニ・クリスタルの意味を探っていく。
中南米諸国から不法に国境を越えねばならない出稼ぎ労働者の実態に鋭く迫った骨太のドキュメンタリー。
このテーマの映画は何度も見ているのだが、ガエル自ら出稼ぎ労働者になりきり、ホンジュラスから国境を超える旅にでる、という設定がユニーク。途中、出稼ぎ労働者と語り合ったり、危険な電車の上に一緒に乗ってみたり…。電車の上は、さすがに怖そうでしたが。
夜、寝ているときに電車から落ちてひかれる人が後をたたない、という話を聞き、生きるために危険を冒して轢死する中米と、物にあふれた国にいながら電車に飛び込む人が後を絶たない日本、どちらが幸せなんだろう、としみじみ考えてしまいました。どちらも幸せとは言い難い、ということでしょうね…。2013.10 ラテンビート映画祭にて

闇の後の光 Post Tenebras Lux
カルロス・レイガダス監督、アドルフォ・ヒメネス・カストロ、ナタリア・アセベド出演
☆田舎の豪邸で暮らす若い夫婦には、幼い子が二人。犬を何匹も飼っていて、主人は時々犬を激しく虐待してしまうことに、悩んでいる。一方、妻もそんな夫に不安を抱いていて…。
ストーリーはあってないような感覚的な映画。
子供と犬の自然な姿や、静かな山、雲の動きを追い掛けながら、そこにときおり、幻想のような映像が挿入される。妻らしき女がスワッピングクラブ?にいるのは、あれは夢?それとも、未来? などなど、よくわからないのは100も承知で見始めたので、それほど嫌な気分にはなりませんでした。レイガダス作品は「静かな光」以外は、やっぱり、難しい…。現代アートですね。2012.10 東京国際映画祭にて

MISS BALA/銃弾 MISS BALA
ヘラルド・ナランホ監督、ステファニ・シグマン、イレーネ・アスエラ、ミゲル・コトゥリエル出演
☆ミス・バハ・カリフォルニアになることを夢見る23歳のラウラは、友人と出かけた国境の町のナイトクラブで、ある凄惨な虐殺現場に遭遇する。ラウラは警官に助けを求めるが、彼らは犯罪組織と深いつながりを持っていた。犯人グループのリーダー、リノは、ラウラに犯罪に手を貸すよう命じる。
「ラウラは、犯罪社会から逃れられないメキシコそのもの」というプロデューサーの言葉が、印象的な骨太の社会派バイオレンスである。
犯罪組織、警察、ミスコンの事務局。すべてが関係していて、どこにも逃れることのできないラウラの怯えた表情が忘れられない。2011.9 ラテンビート映画祭にて

うるう年の秘め事 ANO BISIESTO
マイケル・ロウ監督、モニカ・デル・カルメン、グスタボ・サンチェス・パラ、アルマンド・エルナンデス出演
☆4年に1度だけやってくる、うるう年の2月。メキシコシティのアパートに一人で暮らすラウラは、田舎の母親と電話で話したり、インターネットを利用して外の世界とつながりながら、淡々と暮らしていた。だが、夜になると彼女の生活は一変。激しい孤独感から、夜な夜な男たちを部屋に連れ込み、激しく身体を重ねるようになる。中でもアルトゥーロとの関係にラウラは夢中になる。そして、ラウラが忘れることのできない2月29日がやってくる…。
まったくエロさを感じさせない、普通の女が、夜になると豹変する様が異様。彼女のトラウマは克服されることなく、4年に1回訪れるのだろう。うるう年の2月だけ発情する女、という設定が面白い。2011.9 ラテンビート映画祭にて

グッド・ハーブ LAS BUENAS HIERBAS
マリア・ノバロ監督、ウルスラ・プルネダ、オフェリア・メディーナ出演
☆シングルマザーのダリアは、薬草研究家の母ララが一人で暮らす家に戻り、居候を始めるが、間もなく母の異変に気づく。気丈な母は、自ら検査に行くが、アルツハイマーの宣告を受けてしまう。
次第に記憶を失っていく母の苦悩、それを見守ることしかできない娘…。
抗うことのできない哀しい母娘の物語ではあるのだが、癒される鈴の音や、静かな音楽、ハーブが生い茂る庭の映像など、とても居心地がよく、穏やかな気持ちにさせられた。
匂ってくるはずのないさわやかなハーブの香りを感じられる不思議な空間でした。
メキシコ映画といえば、バイオレンス系やアート系の印象が強かったのだが、まったく異質の癒される女性映画だった。011.8

バンディダス BANDIDAS
ヨアヒム・ローニング監督、ペネロペ・クルス、サルマ・ハエック出演
☆父親を同じ男に殺されたマリアとサラ。性格も育った環境もまったく違う2人は、銀行強盗となり…。
リュック・ベッソン制作、2大ラテン美女スター競演でありながら、仕上がりは典型的B級エンタメ。敵役をもっと、魅力的かつ豪華にしないとダメですね。2013.12

青い部屋の女 LA HABITACION AZUL
ワルテル・ドエネル監督、ジョルジュ・シムノン原作、フアン・マヌエル・ベルナル、パトリシア・ジャカ、エレナ・アナヤ出演
☆スペイン人の妻と子供を連れ、メキシコの片田舎にある故郷に戻ったアントニオは、少年時代に思いを寄せていたアンドレアと再会。彼女は幼馴染で有名店の息子ニコラスと結婚していた。まもなく二人は恋仲になりホテルで逢瀬を重ねる。ある日、持病持ちのニコラスが急死。その後、アントニオの妻が何者かに毒を盛られて殺害される。
閉鎖的な田舎町で起こった不倫騒動と殺人事件。よくあるサスペンスではあるのだが、町の怪しげな雰囲気と一癖ありそうな登場人物が秀逸。ときおりフラッシュバックされる取調べシーンのタイミングもGOOD。刑事役のダミアン・アルカザール、主演の弟役ホセ・マリア・ヤスピク、そして意地悪な義母を演じたマルガリタ・サンスなど、曲者俳優陣が脇を固め、スパイスのきいた味わいのあるサスペンスに仕上がっていた。2010.10

闇の列車、光の旅 SIN NOMBRE (メキシコ)
キャリー・ジョージ・フクナガ監督、パウリーナ・ガイタン、エドガー・フロレス出演
☆ホンジュラスに住む少女サイラは、父と共にアメリカへ不法入国するため、メキシコを縦断する列車の屋根の上に乗り込む。一方、メキシコのギャング団の一人カスペルは、彼女を仲間に殺され、深く傷つく。カスペルらは、列車の屋根の上の労働者から金品を奪いに行くが、サイラを暴行しようとした仲間を殺してしまう。
サイラは自分を助けてくれたカスペルに好意を持ち始めるが、ギャング団は、カスペルへの復讐指令を出す。
生活苦からアメリカを目ざす、労働者たちの命がけの旅。そして、貧しさからギャングの一味になることしか道のないメキシコの若者たち。二つの厳しい現実を、列車の上で出会わせる構成が巧みである。少女サイラと少年カスペルの恋はドラマチックに発展することはないが、二人は少しずつ心を開きあう。そのもどかしさがリアルで、心に響いてきた。
命をかけてもアメリカへ向かおうとする彼らの未来は、明るいのだろうか。苦しくても、家族と一緒に田舎で暮らしていたほうが幸せなのではないか…。留まるのも地獄、行くのも地獄。だとしたらどちらを選ぶか? そう選択を迫られたときの決断に、正しい答えはない。生きて国境を渡ることができたサイラのささやかな未来に小さな希望を感じ、自分を大切に強く生きてね、とエールを送りたくなった。2010.7

アベルの小さな世界 ABEL 
ディエゴ・ルナ監督、クリストファー・ルイス・エスパルサ、カリナ・ギディ、ホセ・マリア・ヤスピック出演
☆9歳の少年アベルは、父親の失踪後、心を閉ざして人と話すことをやめてしまう。母はそんな息子を心配するが、ある朝、アベルは突然話し始め、自分は子供たちの父親だと言い出す。アベルの大人びた振る舞いに戸惑いながらも、家族は次第にアベルを頼りにし始める。そんな時、2年ぶりに父親が帰ってきた…。
大人の都合に翻弄されることを拒否したアベルの心の揺れが丁寧に描かれていて好感が持てた。アベルが、突然大人になってしまう、という発想もユニークで、アベルを演じた少年の大人びた振る舞いがキュートで抱きしめたくなった。欲を言えば、もう少し遊びの部分というか、ラテンらしいおおらかさ、コミカルなエピソードがあるとよかったのだが…。
ディエゴの長編デビュー作としては上出来。ディエゴは監督しても才能あり。次回作にも期待大 2010.9 ラテンビート映画祭2010にて

猟奇的な家族 SOMOS LO QUE HAY
ホルヘ・ミッチェル・グラウ監督、アドリアン・アギーレ、ミリアム・バルデラス、フランシスコ・バレイロ出演
☆メキシコの街中である男が謎の死を遂げた。警察は男の死を不審に思い捜査を開始する。一方、死んだ男の妻と3人の子供たちは"食料"を得る手段を失い途方に暮れていた。彼らは人肉を食料にする怪物一家だったのだ。計算高い妹サビーナは、兄アルフレッドに人間狩りのリーダーシップを取るようけしかけるが、兄は気が弱く行動に移せない。しびれを切らした弟フリアンは、街中で声をかけてきた女を無理やり拉致し、家に連れ帰る。カニバリズムを扱った衝撃のホラー作品。ホラー映画なのかアート系なのか中途半端な感あり。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて

ANO BISIESTO
マイケル・ロウ監督、モニカ・デル・カルメン、グスタボ・サンチェス・パラ、アルマンド・エルナンデス出演
☆4年に1度だけやってくる閏年の2月。メキシコシティのアパートに一人で暮らすラウラは、田舎の母親と電話で話したり、インターネットを利用して外の世界とつながりながら、淡々と暮らしていた。だが、夜になると彼女の生活は一変。激しい孤独感から、夜な夜な男たちを部屋に連れ込み、激しく身体を重ねるようになる。中でもアルトゥーロとのSMプレイにラウラは夢中になる。そして、ラウラが忘れることのできない2月29日が訪れる…。
激しい性描写やSM等、アブノーマルな世界を描き、2010年のカンヌ国際映画祭では、大島渚監督の「愛のコリーダ」と並び称されるほどの衝撃を与えた。
オーストラリア出身のロウ監督はこの作品でカメラドール(新人監督賞)を受賞している。
激しい性描写が話題にはなっているが、それよりも彼女の孤独感と死への憧れが丁寧に描かれていた。彼女は生まれ変わることができたのだろうか…。それとも4年後、また同じことを繰り返すのか…。たぶん後者だろうなあ。4年に1度の発情期、という発想がユニーク。監督の次回作にも期待したい。2010.7

レボリューション REVOLUCION
マリアナ・チェニリョ、フェルナンド・エインビッケ、アマ・エスカランテ、ガエル・ガルシア・ベルナル、ロドリゴ・ガルシア、ディエゴ・ルナ、ヘラルド・ナランホ、ロドリゴ・プラ、カルロス・レイガダス、パトリシア・リヘン監督、アドリアナ・バラーサ、カルメン・コラル出演
☆「メキシコ革命」をテーマに10人の気鋭の監督が独自の視点で革命を見つめなおしたメキシコ革命100周年記念作品。
革命から100年たった現在のメキシコは素晴らしい国になったのか?という疑問を呈するスタンスで作られた本作。監督それぞれの個性が出ていて興味深かったのだが、もうヒトひねり欲しい、と思わせる作品もあり。
カルロス・レイガダスの作品は意味がさっぱりわからなかったのだが、空き地に、あらゆる人種、階級、年齢の人を集め、自由に行動させたときに自然発生的に何が起こるか、と実験した実録モノ、という話をきいてなるほどー、と納得。100年前の革命もこんなふうに自然発生的に起こったのかもしれない、という仮説も面白い。カルロス・レイガダスって一般人には理解できない独特の発想力を持っている人だ、とあらためて関心させられた。(好きかどうか、は別ですが)。お気に入りのロドリゴ・プラ監督の作品は、比較的分かりやすい作品ではあったが、静止画像の使い方にセンスを感じた。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて

僕らの家はどこ? WHICH WAY HOME?
レベッカ・カンミサ監督、ジョン・マルコビッチ製作
☆アメリカ合衆国に行けば夢がすべてかなうと、漠然とした憧れを抱くホンジュラスの少年、ニューヨークにいる母に会いたいと泣き出すエルサルバドルの少年…。貧困に苦しむ中央アメリカ各国からアメリカ合衆国に不法入国しようとする人々は後を経たない。子供たちは、家族との再会や新しい人生を夢見て、列車の屋根に乗り危険な旅を続ける。その先にあるのは希望か絶望か…。リスクを冒しても国境を越えようとする彼らの苦難の旅をありのままに伝える衝撃のドキュメンタリー。
夢を語る少年、母を思って泣く少年など、境遇は様々。生きたまま米国入国できるのは一握りの人間にもかかわらず、不法入国しようとする少年たちは減らない…。隣の国なのに、月とスッポンの経済状況っていう世界、に怒りを感じた。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて

ルドandクルシ RUDO Y CURSI (メキシコ)
カルロス・キュアロン監督、ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、ギレルモ・フランチェラ出演
☆バナナ園で働く兄ベトはギャンブル好きで妻から叱られてばかりのダメ男。弟タトは、ちょっと頭が弱いけど歌手になりたい夢を持つ陽気なラテン野郎。二人の兄弟が所属する草サッカーチームでは、キーパーとストライカーとして活躍していた。
ある日、兄弟が偶然知り合った男パトゥータは、二人のうち一人をサッカー選手としてスカウトする、と言いだした。対抗意識を燃やす二人だったが、結局、弟タト一人が、引き抜かれることに。
サッカーにさほど意欲のないタトだったが、パトゥータの裏工作や強運が重なり、あれよあれよという間に名門チームのストライカーとなり、派手な彼女と豪華な家を手に入れる。
一方、田舎に取り残され、ふてくされていた兄ベトも、ひょんなことから、ライバルチームのキーパーに抜擢される。
典型的な田舎者兄弟の栄光と転落の人生を、ひたすら軽ーく明るく描いたラテン系コメディ。ギャンブル好きで嫉妬深い兄をディエゴ、頭の弱いお気楽な弟タトをガエルが軽妙に演じている。メキシコ映画界の2トップの二人が、ここまで肩の力を抜いた緩い演技をするのは初めてみたが、さすがは役者、二人ともサマになっていた。とくにディエゴは今まで見たことないほど、魅力ゼロのだらしない男役でびっくり。美しいディエゴのファンが見たら、ちょっとショック受けるかも…。
典型的なアメリカン・ドリームならぬメキシカン・ドリームをつかんだ二人だが、海千山千の大人たちに食い物にされ、浮かれるままに誘惑に負け、挙句の果てに八百長試合まで請け負ってしまう。
コッテコテのコメディ映画ではあるのだが、南米のサッカー界では、この手の話がゴロゴロしていそうだし、取り巻きに食い物にされ、つぶれていく選手も大勢いるのだろう。
デブデブ太ったロナウドやロナウジーニョ、酒びたりだったアドリアーノも、ブルー・カラー育ちだし、映画の二人と似たり寄ったりの人生を送ってきたのかもしれない。
ルドとタトは結局、ロナウドやロナウジーニョにはなれず、もとの生活に戻っていくのだが、金と女と名声をなくしても、バナナがあれば楽しい我が家~♪、といったメキシコならではの陽気なエンディングが気に入った。
キュアロン、イニャリトゥ、デルトロが作ったプロダクションの一作目ということで、もっと気負った映画になると思ったら…。若干、肩すかし食らった感はあるが、まずはコメディから、という緩さもメキシコらしい?! 2010.3

命を燃やしてARRANCAME LA VIDA (2008年・メキシコ)
ロベルト・スネイデル監督、アナ・クラウディア・タランコン、ダニエル・ヒメネス・カチョ出演
☆舞台は30年代のメキシコ。15歳の美少女カタリーナは、年上の将軍に見初められて結婚。将軍は州知事、そして大統領、と精力的に上を目指すが、カタリーナは夫の裏の姿を知ってしまう。30歳の女性になった頃、音楽家のアントニオと出会い、二人は夫の目を盗みながら、愛し合おうようになる。
町の実力者に嫁いだ女性の半生を正攻法で描いた大河ドラマ。ドラマ展開は予定調和で飽きてしまったが、カタリーナを演じたアナの凛とした美しさと、強欲な夫を演じた名優ダニエルの演技は見応えあり。2010.3

ワイルド・ライズ SULTANES DEL SUR (07年・メキシコ)
アレハンドロ・ロサーノ監督、トニー・ダルトン、ジョルディ・モリャ出演
☆メキシコの銀行から大金を盗み出した強盗4人組は、金を持ってブエノスアイレスへ飛ぶ。だが、そこで何者かに金を奪われ、さらに、強盗の主犯が、マフィアのドンに拉致され、仲間の目の前で殺害されてしまう。
ハリウッドを意識した洗練された作りで、派手な爆発シーンやカー・アクションも満載。マフィアのドンや、悪徳警官も魅力たっぷりで、見応え十分のクライム・アクション映画に仕上がっていた。最後の大どんでん返しも面白くて、思わず、最初から見直してしまった。いろいろ細かいことをつつけば、辻褄が合わないことばかりだが、軽い気持ちで楽しむには最適の映画。ちょっとスマートすぎて、ラテンっぽさが感じられなかったけど…。予想以上に楽しめたのでマル。2010.3 参考CINEMA:「カクタス・ジャック」

熱狂はエル・パオに達す LA FIEVRE MONTE A EL PAO
ルイス・ブニュエル監督、ジェラール・フィリップ、マリア・フェリックス出演
☆ある島の刑務所で理想主義者の男は悪徳上司の妻と恋仲になる。まもなく上司が殺され、男はその妻の助けを借りて出世。政治犯には鎖をつけない、体罰禁止という新しいシステムを実現すようとする。ブニュエル監督、ジェラール・フィリップ主演ということで見てみたが、特別に感じるものもなく…。フィリップの遺作となった作品ということ。美しかったです。2010.11


【アルゼンチン】
名誉市民 El Ciudadano Ilustre
マリアノ・コーン、ガストン・ドゥプラット監督、オスカル・マルティネス、ノラ・ナバス出演
☆世界的な成功をおさめた作家ダニエル・マントバーニは、生まれ故郷であるアルゼンチンの町サラスから「名誉市民」としての招待を受け、40年ぶりにヨーロッパから帰国する。彼の小説はサラスでの思い出から着想を得たものも多く、故郷の人々から盛大に歓迎される。幼なじみや昔の恋人とも再会しご満悦のダニエルだったが、まもなく手痛いしっぺ返しを食らうことに…
ノーベル文学賞受賞挨拶シーンから、偏屈な男の性格が見えにやにや笑い。絵のコンクールで大物の絵に文句つけたら嫌がらせされてまた笑い、マッチョな幼馴染のキャラにまた笑かされ…。「ル・コルビジェの家」の監督コンビの2作目なのだが、テイストはほぼ同じ。やばい人がいきなりエスカレートしてしまう極端さも同じでした。こういうシニカルコメディ、最近減っていたので、懐かしさも感じながら笑い転げました。2016.10 ラテンビート映画祭にて

エル・クラン EL CLAN
パブロ・トラペロ監督、ギレルモ・フランセーヤ、ピーター・ランサーニ、リリー・ポポヴィッチ出演
☆軍政時代を引きずっていた1980年代のアルゼンチン。プッチオ一家の周りで次々と誘拐殺人事件が起こる。家長のアルキメデスは花形のラグビー選手である長男アレハンドロや親類らを手下に、手荒な誘拐を繰り返す。実話というから恐ろしい…。一昔前、日本でも鬼のようなババアが土地持ちを監禁・暴行・殴り殺してして土地や金品を奪っていた事件があったけど、世界中に人格が壊れた化け物がいるんですよね。ただ、プッチオ一家の背景にはアルゼンチンの軍政時代があり、アルキメデスは仕事として誘拐監禁拷問をしていたことは予想がつく。逮捕後も無実を訴え続け、獄中で弁護士資格までとったという話。ロス事件の三浦被告にも共通するものを感じた。トラペロ監督らしいエッヂのきいた作品でした。2016.9

ラスト・タンゴ UN TANGO MAS
ヘルマン・クラル監督、ヴィム・ヴェンダース製作、マリア・ニエベス、フアン・カルロス・コペス出演☆アルゼンチン・タンゴに革命を起こした伝説のタンゴ・ペア、マリア・ニエベスとフアン・カルロス・コペス。14歳と17歳で出会ってから50年近くも踊り続けてきた2人の愛と確執を追ったドキュメンタリー。二人の関係を証言によってつないでいるシーンが多く、ダンスシーンがあまりフィーチャーされていないので飽きてしまった。残念!2016.7

エルヴィス、我が心の歌 EL ULTIMO ELVIS
アルマンド・ボー監督、ジョン・マキナニー、グリセルダ・シチリアニ、マルガリータ・ロペス出演☆昼間は工員として働き、夜はステージに上がりエルヴィス・プレスリーに変身する中年男の姿を追ったヒューマンストーリー。プレスリーの声によく似ているのだけど、プレスリーのようなスターには永遠になれない。それを自分でも知っているからこその選択が、悲しすぎました。2016.6

ザ・タイガー 救世主伝説
パブロ・フェンドリック監督、ガエル・ガルシア・ベルナル、アリス・ブラガ出演☆アルゼンチンの熱帯雨林で暮らすジョアンと娘バニアは、土地の権利を奪おうとする残忍な男たちに襲われる。孤高の男カイは拉致された娘バニアを助け出すが、男たちが再び襲ってくる。ジャングルの映像が美しく、カイはトラの生まれ変わり?と想像させるような幻想的な雰囲気は秀逸。ただし後半のドンパチは退屈でちょっとがっかり。前半の雰囲気と違い過ぎ。2016.1

ブレイクアウト・プリズン El tunel de los huesos 
ナッチョ・グラッシーノ監督、ラウル・タイボ、ダニエル・ヴァレンズエラ、ルチアーノ・カゾー出演☆ブエノスアイレスの刑務所で脱獄事件が発生。まもなく一人のジャーナリストに脱獄犯から電話が入る。彼は、脱獄のために掘った刑務所の地下に大量の人間の骨が埋まっていたと話はじめる。
プリズン・ブレイクのようなエンタメ性には欠けたが、実話らしいのでよしとしましょう。脱獄犯の初老の男を演じたラウル・タイボがかっこよくて見とれてしまいました。2016.1

パウリーナ La Patota
監督:サンティアゴ・ミトレ/出演:ドロレス・フォンシ、オスカル・マルティネス、エステバン・ラモチェ
☆28歳のパウリーナは都会での弁護士の職を捨て、社会奉仕のため故郷の町へ帰郷。寒村で暮らす若者たちへ民主的権利を教える政治プログラムの教師になるが、まもなく現地の不良集団に襲われてしまう…。ミトレ監督らしい骨太の社会派もの。リメイクということが驚きです。レイプされてできてしまった子供を産む、という発想がないもので、彼女の選択には苦しんだけど…。カトリックの世界ならではの話のような気がします。ドロレスの演技は素晴らしかったです。この映画をきっかけに監督と恋人になったとのこと。監督の愛を感じました。2015.10 LBFFにて

人生スイッチ RELATOS SALVAJES
ダミアン・ジフロン監督、リカルド・ダリン、オスカル・マルティネス、エリカ・リバス、ダリオ・グランディネッティ出演
☆飛行機に乗り合わせた人々がすべて元カレと関わりがあることを知ったモデル…。ウェイトレスは、客として現れた男が家族の敵と気づく。
などなど、不運に見舞われ、制御がきかなくなった人間たちをユーモアたっぷりに描いたブラックコメディ。
結婚式で新郎の浮気をしってブチ切れる女優エリカ・リバスの演技が光ってました。懐かしいテイストの定番コメディ。日本でヒットしてくれてうれしい限り。2015.8

約束の地 JAUJA
リサンドロ・アロンソ監督、ヴィゴ・モーテンセン、ヴィールビョーク・マリン・アガー出演
☆19世紀末。アルゼンチン政府軍による先住民掃討作戦に参加したデンマーク人大尉は、若い男と一緒に姿を消した一人娘インゲボルグを探すため、荒野をさまよう。
パタゴニアの荒涼とした大地の映像と、ちっぽけな人間たちの醜い殺し合い。さらには人間に飼われた犬や馬たちの暮らし。ドラマ性を排除し、自然と人間を静かに見つめた独創性はアロンソ監督らしかったです。モーテンセンは音楽も担当しているとのこと。商業映画とは一線を画した姿勢も素敵。正直、見やすい映画ではないのだが、わけわかんないことを予想していたので、わりとすんなり世界に入ることができました。2015.6

愛の通り魔 INEVITABLE
ホルヘ・アルゴラ監督、フェデリコ・ルッピ、ダリオ・グランディネッティ出演
☆銀行の幹部だったエリートが、絵描きの女に溺れていくまでの心理描写が秀逸。変装してストーカーまでやってしまう中年男の悲哀をダリオが見事に演じていました。公園の老人とある老女の物語はとってつけた感あり。2015.2

ブエノスアイレス恋愛事情 MEDIANERAS
グスタボ・タレット監督、ハビエル・ドロラス、ピラール・ロペス・デ・アジャラ、イネス・エフロン出演
☆ブエノスアイレスに暮らすマリアナは4年間付き合った恋人と別れたばかり。一方、近所に暮らすマルティンも恋人がアメリカに旅立ち、引きこもりの日々を送っている。この二人のささやかな日常を描きながら、少しずつ共通点を引き出していく構成が絶妙。世の中の出会いはすべて必然なのかも、と思わせるさわやかなラブストーリーでした。2014.12

プライズ ~秘密と嘘がくれたもの~ EL PREMIO
パウラ・マルコビッチ監督、ラウラ・アゴレカ、パウラ・ガリネッリ・エルツォク出演
☆70年代の軍事独裁政権下。海岸の隠れ家で母親とひっそりと暮らす少女は学校へ行きたいと母にせがむ。少女は、母に言われたとおり生い立ちを偽って学校へ通いだす。
監督の自伝的映画ということ。抑圧された社会で暮らす人々のおびえた表情が印象的。チリ映画の傑作『マチュカ』にテイストが似ているかな。少女が書いた作文の書き直しを頼みに、母が担任の家に行くシーンはハラハラでした。とても丁寧な描き方で好印象。
第61回ベルリン国際映画祭で撮影・美術2部門で銀熊賞芸術貢献賞受賞。2015.1

ブエノスアイレスの殺人 Muerte en Buenos Aires
ナタリア・メタ監督、チノ・ダリン、モニカ・アントノプロス、デミアン・ビチル出演
☆舞台は80年代のブエノスアイレス。敏腕警部チャベスは、ある男の凄惨な殺人事件現場に駆け付ける。そこにはガンソと呼ばれる若い警官が先に到着していた。捜査線上に浮かんだ容疑者が、ゲイの集うクラブにいることを突き止めた二人は、店に潜入する。ダリンの息子の青臭さと、彼に魅せられていく中年警部の男臭さが印象にのこった。80年代の音楽も懐かしかったです。2014.11ラテンビート映画祭にて

メッシ Messi
アレックス・デ・ラ・イグレシア監督、リオネル・メッシ、アンドレス・イニエスタ、ペップ・グアルディオラ出演
☆アルゼンチンの天才サッカー選手リオネル・メッシ。彼の子供時代の映像や再現ドラマ、チームメイトや監督など、彼を知る人々へのインタビュー等で構成されたスポーツ・ドキュメンタリー。
メッシの子供時代の天才技が見られる貴重な映像には見入ってしまった。成長ホルモン異常を治すための高額な治療代のために故郷を捨てた、という逸話は知らなかった。大スターなんだけど、私生活が地味なメッシと、マラドーナの比較も興味深かったです。2014.10 ラテンビート映画祭にて

ル・コルビュジエの家 EL HOMBRE DE AL LADO
ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン監督、ラファエル・スプレゲルブルド、ダニエル・アラオス出演
☆世界的建築家ル・コルビュジエが設計した私邸に引っ越した椅子のデザイナー、レオナルドは、ある朝、隣人ビクトルが自宅の壁をハンマーで破壊して、レオナルドの家に向けて窓を作ろうとしている現場を目撃する。
窓をめぐって奇妙な隣人とトラブルになるブルジョア一家の物語。アルゼンチンらしいシニカルな香りがプンプンする大人向けコメディ。ズカズカと他人の私生活に踏みこんでくる人ってたまにいるが、たしかに迷惑。でも、悪気ないのもわかるしなあ。隣人は彼らと仲良くしたかっただけなんだろうけど、レオナルドとその妻が、インテリ風ふかして隣人を毛嫌いする様が笑いを誘った。アートって人によって感じ方が様々だし、人によっては洒落た椅子より、隣人が作った奇妙なオブジェのほうが傑作、と思うかもしれないし…。人間の偏見や差別を、アートを絡めた異色作。なかなか興味深かったです。2014.1

愛と情事のあいだ DOS MAS DOS 2+2
ディエゴ・カプラン監督、アドリアン・スアル、カルラ・ペテルソン、フリエタ・ディアス出演
☆ブエノスアイレスのハイクラスの夫婦が、倦怠気味な夫婦生活から抜け出すために、スワッピングパーティーの誘いに乗ってしまう大人向けコメディ。何から何まで別世界で誰にも同情できず。著名な医師と美人お天気キャスターのカップルが主役なのだが、贅沢な悩みとしか見えず。この映画、ブエノスで大ヒットしたらしいが、本当かしら?一部の高級モール映画館限定でヒットなのでは? 2014.2

見知らぬ医師 ワコルダ Wakolda
ルシア・プエンソ監督、フロレンシア・バド、アレックス・ブレンデミュール出演
☆舞台は1960年代のパタゴニア。美しい自然に囲まれたバリローチェの湖畔で民宿を始めた夫婦は、ある品のいいドイツ人医師を最初の客として招き入れる。医師は、年よりも幼く見える12歳の娘リリスに興味を示し、リリスもまた、孤独な彼に、次第に心を開いていく…。
第二次大戦中、多くのユダヤ人に人体実験を行ったナチスの将校ヨーゼフ・メンゲレが、身分を偽り、アルゼンチン人の家族と暮らしていたという衝撃の実話を映画化。
アルゼンチンのスイスと言われる景勝地バリローチェに、ナチス残党の巣窟があった、という事実にまず衝撃。幼く見えて小悪魔チックなリリスと、彼女を見つめるメンゲレの関係が危なっかしくて、ドキドキ。メンゲレはもちろんリリスの母の内面や、女性写真家の正体など、すべてが謎めいていて、見ている側を不安にさせる要素がたっぷり。実話が元になっているので、はっきりできない部分もあるのでしょう。役者もそれぞれ存在感があって、見応えがありました。プエンソ監督は、身体にコンプレックスを持つ少女に興味があるのでしょうね。「XXY」も衝撃でしたが、背が伸びないリリスの心の痛みも丁寧に描かれていて、共感できました。日本で公開してほしい1本。2013.10 ラテンビート映画祭にて

偽りの人生 TODOS TENEMOS UN PLAN
アナ・ピターバーグ監督、ヴィゴ・モーテンセン、ソレダ・ビジャミル、ダニエル・ファネゴ出演
☆双子の兄を殺した医師が、兄になりすまして、故郷へ戻る。兄は陰湿な村のいざこざに巻き込まれていた…。
閉鎖的な村の雰囲気と人々が、見ている側を暗い気持ちにさせる映画でした。兄を殺し兄になり済ます弟の気持ちがわからず。まったく違う人生を歩むならまだしも、二人のことをよくしる幼なじみが暮らす村にあえて戻ったのはなぜ?いろんな意味で解せない映画。この映画がTOHOで上映できてしまう日本の映画業界システム、映画の内容よりも解せません。単館アート系ならまだしも…。2013.7

ママったらアルゼンチン/LENGUA MATERNA
リリアーナ・パオリネッリ監督
☆40歳のルースは、10年以上の関係にある彼女を母には友達と紹介していた。ついに2人の関係を知った母は、娘を理解しようと努めるが…。
レズビアンの娘に戸惑いながらも、受け入れようと奮闘する母の姿が微笑ましかったです。2013.7 ゲイ&レズ映画祭にて

Un cuento chino
Sebastian Borensztein監督、リカルド・ダリン出演
☆ブエノスアイレスで雑貨屋を営むロベルトは、ある日、まったく言葉の通じない中国人の男を助ける。しばらく家においてやるが…。アルゼンチンに中国人はたしかに少なそうだった。多種民族が暮らすニューヨークやサンパウロだったら、成り立たない物語ですね。不器用なオジサン役のダリンもまた、ステキでした。台詞がわからなくても、安心して見られる人間ドラマ。2013.7 セルバンテスにて

ある殺人に関するテーゼ Tesis sobre un homicidio
Hernan Goldfrid監督、リカルド・ダリン、アルベルト・アンマン出演
☆犯罪法律学の教授ロベルトは、ある日、若い女性の殺人事件に遭遇。ロベルトは、教え子が犯人ではないかと疑うが…。ある殺人事件に病的にのめり込んでいく中年教授をダリンが熱演。過去の事件などが絡んで少々複雑ではあるのだが、ハラハラドキドキもあり、見応えがあった。ただ、藪の中のエンディングには、ちょっと拍子抜け。この展開なら、解決するでしょ、と突っ込みたくなりました。2013.7 飛行機にて

ホワイト・エレファント Elefante Blanco
パブロ・トラペロ監督、リカルド・ダリン、マルティナ・グスマン、ジェレミー・レニエ出演
☆司祭のフリアンは、心に傷を抱えた若い外国人神父ニコラスを連れて、ブエノスアイレス郊外のスラム地区に赴任する。人々の悲惨な生活環境を目の当たりにした二人は、ソーシャルワーカーとして働くルシアナと共に、町の人々の声に耳を傾ける。まもなく社会への怒りを爆発させた住民が暴徒化。教会や警察は、彼らの弾圧に動き出す。
ブラジルのファベーラ映画は数多く見てきたが、アルゼンチンのは初めてかも。建設途中の巨大な病院が、廃墟のようになり、そこが犯罪現場のメッカになってしまっている、というのは事実らしく、それだけでも興味深かった。(かつて、あのマラドーナも、無用の長物、という意味で「エレファンテ・ブランコ」という言葉を使っていました)
司祭の目から見たスラムの実態、という切り取り方は新鮮ではあったのだが、スラムの人々のキャラが今一つ曖昧で、あくまで白人視点、というのが少々気にはなった。スラム映画ではブラジルに軍配あり、ですね。2012.10 ラテンビート映画祭にて

獣たち Los Salvajes
アレハンドロ・ファデル監督、レオネル・アランシビア、ロベルト・コワル、ソフィア・ブリト出演
☆少年院で出会ったガウチョ、シモン、グレース、モンソン、デミアンの5人は、自由を求めて少年院を脱走。追ってから逃れ、生き延びるために、山岳地帯に逃げ込む。
野性人間として生きる少年たちと、荒涼とした山岳地帯の風景。このコントラストが面白い。台詞はほとんどなく、退屈かなあ、と心配したが、山の風景がアートで、見入ってしまった。この手の映画は苦手な部類なのだが、意外や意外、けっこうはまりました。2012.10 ラテンビート映画祭にて

El estudiante
サンチアゴ・ミトレ監督、エステバン・ラモチェ、ロミナ・パウラ、ヴァレリア・コレア出演
☆ブエノスアイレス大学へ入学後、目標を見失っていた地方出身の青年は、魅力的な女教師に近づくため、彼女の参加する政治活動にのめりこんでいく。
政治集会での対立や、裏工作に、一人の学生が巻き込まれていく様をリアルに描いた硬派な作品。政治の権力闘争は、苦手なので、見ていて辛くなりました。もうちょっとドラマチックにしてくれたら、面白かったんだろうけど…。ある意味アルゼンチンらしい小難しい映画でした。2012.10 ラテンビート映画祭にて

幸せパズル ROMPECABEZAS
ナタリア・スミルノフ監督、マリア・オネット、ガブリエル・ゴイティ、アルトゥーロ・ゴッツ出演
☆専業主婦マリアは、50歳の誕生日にプレゼントされたジグソーパズルに夢中になり、家族に内緒で“パズル大会パートナー募集”の広告に応募する。パートナーは彼女の才能を見出し、ドイツで行われる世界大会を目指しはじめるが…。家族に愛されながらも充実感を得られない主婦が、パズルに夢中になり眠っていた才能を開花させる、主婦の再生ドラマ。丁寧に作られていて好感は持てるのだが、少々退屈に感じた。よくある話だよね~。とくにアルゼンチンらしさも感じず。2012.5

瞳は静かに Andres no quiere dormir la siesta
ダニエル・ブスタマンテ監督、ノルマ・アレアンドロ、コンラッド・バレンスエラ出演
☆1977年、多感な少年アンドレスは、母の突然の死によって父方の祖母オルガのもとへ預けられる。
しっかりものの祖母やエキセントリックな父親の不穏な動きを敏感に察知したアンドレスは、大人たちに反抗的な態度をとるようになる。
ちょっとしたことでも反社会的とみなされ、拷問や拉致監禁が公然と行われていた70年代のアルゼンチン社会を、純粋な子供の視点から見つめた作品である。
ガブラス監督(娘)の『ぜんぶ、フィデルのせい』に設定は似ているが、こちらは大人たちがもっと辛辣である。父は、母の死を悼むよりも先に、遺品をすべて燃やしてしまうし、一見、世話好き風の祖母は、道を掃除しながらアンドレスや町の人々を監視し、ときには密告めいたこともしている。
それもこれも、自由が許されない社会のせいではあるのだが、悲しみを背負い無償の愛を欲しているアンドレスにとっては、彼らの行動が、非情に思えてしまうのも無理はない。
誰でもいいからアンドレスを、ただ抱きしめてあげるだけで、彼の心はもう少し落ち着くんだけどなあ…。でも、大人にもそんな余裕はないのだろうし…。
(唯一、アンドレスの大伯父だけは、中立的なこと言っていたのだが、今一つインパクトに欠けていました。)
社会の裏側で何が行われているか、詳細に描かれていないので、少々わかりにくい作品ではあるのだが、あくまでアンドレスの視点で描いているのだ、と思えば納得できる。
アンドレスを演じた少年は、『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』を彷彿とさせる愛らしさで、見ているだけで癒された。それだけに、彼が周りの大人たちの行動に少なからず影響されていく様が痛々しく、やりきれなさを感じた。
『みつばちのささやき』『蝶の舌』『マチュカ』など、ラテン映画は子供視点の名作揃い。
日本では、マナチャン・フククンがブームだが、かわいいだけではない奥の深ーい作品をぜひ日本映画でも見てみたいものです。2012.1

プールサイド AUSENTE
マルコ・ベルヘール監督、カルロス・エチェバリア、ハビエル・デ・ピエトロ、アントネラ・コスタ出演
☆高校教師のセバスティアンは、目を怪我したと言う生徒マルティンを病院に連れていく。治療後、車で自宅へ送ろうとするが、マルティンは「家のカギを失くし、親と連絡もとれない」と巧みに嘘をつき、セバスティアンの家へ上がり込む。人目もはばからず、裸で部屋を歩き回るマルティンにセバスティアンは戸惑いを覚えるが…。怪しげな魅力を放つ16歳の少年と、徐々に彼の虜になっていく高校教師。二人の微妙な距離と心の奥の探り合いを、独特のカメラワークであぶり出す異色の恋愛ドラマ。
ベルギーのダルデンヌ兄弟の映画に作風はよく似ている。説明を極力排除し、カメラアングルで揺れる恋心をあぶりだす、そのテクニックには拍手。少々退屈だったですけどね。2011.9 ラテンビート映画祭にて

木曜日の未亡人 LAS VIUDAS DE LOS JUEVES ★
マルセロ・ピニェイロ監督、パブロ・エチャリ、レオナルド・スバラグリア、エルネスト・アルテリオ出演
☆舞台は2001年のアルゼンチン。金融危機で社会が揺れる中、超高級住宅街では、中世の貴族社会を彷彿とさせる優雅なパーティが開かれていた。
その直後、豪邸のプールで男3人の死体が発見される。警察は感電による事故と判断するが…。
男たちの死は、事故なのか殺人なのかそれとも集団自殺なのか。謎の死を遂げた男たちは、この住宅街の住人。何不自由なく優雅に暮らしているかに見える人々だったが、それぞれが悩みを抱えている。中心人物の夫婦は冷え切った関係にあり、見せかけの愛に苦しんでいる。隣人の若い妻は心の病を抱えたDVの夫に怯える日々を送っている。エリートサラリーマンだった男は職を失ったことを家族に告げられず、貯金は底を突こうとしている。そして、引きこもりがちの息子のいる一家は、妻が職のない夫に代わって家族を支えている。
幸せそうな高級住宅街で暮らす人々の裏事情は、豊かさから没落したアルゼンチン社会を見事に投影している。自分たちの置かれている状況を直視できず、優雅だった過去の生活にしがみつく大人たち。そんな大人の姿を思春期を迎えた子供たちは、冷やかに見つめている。設定は「デス妻」を真面目なテイストにしたような作品。家族もそれぞれ個性的で、心理描写も秀逸だ。
斜陽を迎えたアルゼンチン社会や、過去の豊かさにしがみつき現実に対応できないひ弱なエリートたちの姿は、今の日本社会や日本人にも通じるものがあり、身につまされた。
人間も社会もいつかは成長が止まり秋を迎えるものだ。その変化から目を背けず、どう乗り越え、新しい価値観で生きていくか。みんなが考えなければいけない時期に来ているのかも…。
そんなことをしみじみと考えさせられる上質のサスペンスだった。2011.1

あなたのせい POR TU CULPA
Anahi Berneri監督、Erica Rivas, Nicasio Galan, Zenon Galan, Ruben Viani出演
☆子育てと仕事に忙殺された主婦は、目を話した隙に息子がけがをして、パニックに陥る。
子育て中の若い母の苛立ちをドキュメンタリー・タッチで描いた作品。日本でもラテンでも子育ては女の役目であることにかわりはない。子育てしてる主婦の皆さんには、本当にお疲れ様です、といいたくなった。とくに面白味のない作品だった。可もなく不可もなく、という感じ。2010.10

隠れた瞳 LA MIRADA INVISIBLE
ディエゴ・レルマン監督、フリエタ・シルベルベルク、オスマル・ヌニェス出演
☆舞台は82年の軍事独裁政権末期。ブエノスアイレスのエリート養成学校の若い女教師は、生徒たちを常に監視し、恋愛やケンカをしている生徒たちを次々に見つけては、主任に報告していた。或る日、タバコを吸っている生徒を見つけるため、男子トイレに忍び込んだ女は、男子生徒たちの排尿の音を聞き、性的快感を覚えるようになる。
抑圧された社会で生きる若い女教師の性の目覚めを、学校という閉じた場所を舞台に描いている。原作が有名な小説、ということで、当時のアルゼンチン社会を学校の中に置き換えた設定が興味深かった。
監視と告げ口、いわゆるスパイ行為は、独裁政権の十八番。見ているだけで気持ちが沈んで、終始自分が何かに監視されているような気分にさせられ、とても肩のこる映画だった。女教師を演じた女優は、いかにも監視員風のルックスで、はまっていた。
若い映画作家たちが、自国の過去の負の遺産をしっかりと見つめ、表現しているアルゼンチン映画界には敬服させられる。レルマン監督は俳優のような魅力的なルックスで思わず見とれてしまいました(サッカーのアイマールをインテリ風にした感じ)。
2010.10 東京国際映画祭にて

カランチョ CARANCHO
パブロ・トラペロ監督、リカルド・ダリン、マルティナ・グスマン出演
☆ソーサは交通事故専門のベテラン弁護士。終始、病院のERや警察に出入りし、ハゲタカのようにクライアントを探し回っている。一方、赴任してきたばかりの若い女医ルハンは、ERにひっきりなしに運び込まれる交通事故の被害者の対応に追われ、満足に眠ることさえできずにいた。二人は、ルハンが道で被害者を救援中に出くわし、恋に落ちていく…。
交通事故の保険金を巡って保険会社、弁護士、警察がずる賢く立ち回る一方、被害者の貧しい人々は、オロオロするだけ。ソーサは悪に手を染めながらも、被害者の生活のために奔走する。一方、若いERの女医は、仕事に忙殺され、鎮痛剤中毒に陥っている。二人は、お互いの傷をなめ合うように急速に魅かれていき、悲劇へと突き進む。
事故現場のリアルな映像、スピード感あふれる展開に引き込まれた。リカルド・ダリンはオヤジなんだけど、渋くてカッコイイし、女医役のマルティナも疲れた女にぴったり。クライマックスの二人の逃避行は「俺たちに明日はない」のボニー&クライドを彷彿とさせた。いろいろな引き出しをもつパブロ・トラペロ監督の次回作にも期待大。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて 

殺しの後にタンゴを Naranjo En Flor (08年・アルゼンチン)
アントニオ・ゴンザレス・ヴィヒル監督、ベロニカ・ボンテル、エドゥアルド・ブランコ、マリア・マルル、ダニエラ・カラーラ出演
☆男に襲われる娼婦を助けようとして、男を殺害してしまった女医マレーナは、自分の罪を償いたい、という思いから、殺された男の妻に近づく。だが、妻は警官だった夫から暴力を受けていたことを告げる。そんなマレーナに死んだ警官の同僚が近づき、二人は愛し合うようになる。ブエノスアイレスが舞台のクライム・サスペンス。殺人を犯した精神科医と、近づいてきた警官の心の探り合いが謎めいていて、ゾクゾク感あり。ブエノスアイレスは南米のパリと言われるだけあり、映画の作風もどこかフランスっぽく、哲学的な台詞も目立っていた。ただし、心をえぐられる深さのようなものは感じなかった。2010.3

アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち CAFE DE MAESTROS
ミゲル・コアン監督、ウォルター・サレス製作、オラシオ・サルガン、レオポルド・フェデリコ、マリアーノ・モーレス出演
☆50年代に活躍したアルゼンチンタンゴの大御所ミュージシャンたちが、アルバム「CAFE DE LOS MAESTROS」を収録するために集まってきた。彼らの日常とタンゴの演奏を絡めた音楽ドキュメンタリー。
コロン劇場がミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座に並ぶ世界三大劇場、ということを知らなかったので、訪れなかったことをちょっと後悔。劇場の前を何度も歩いたのだが…。
ブエノスアイレスの町の風景を懐かしく思い出しながら見ることができた。
ただ、内容的にはタンゴの歴史を語るわけでもなく、名演奏がフルコーラスで披露されるわけでもなく…。なんだかどっちつかずのドキュメンタリーで正直退屈だった。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とは似て非なり。2010.11

ジャスティス 闇の迷宮 IMAGINING ARGENTINA (2003年)
クリストファー・ハンプトン監督、アントニオ・バンデラス、エマ・トンプソン、ルーベン・ブラデス出演
☆70年代の軍事政権下。ブエノスアイレスで暮らす女性記者セシリアは市民の失踪事件の取材をした直後、軍に連れ去られてしまう。児童劇団を主宰する夫カルロスは、ある日、少年の手をとった際に彼の父の運命を読み取ってしまう。以来カルロスは失踪した家族の行方を捜す人々のために、失踪者の状況を教えるボランティアを始める。だが、まもなくこの活動は軍にも知られ、一人娘が連れ去られてしまう。
飽きるほど語られてきたアルゼンチンの悲劇。いろいろな切り口があるが、この映画は超能力を持った男の目を通してみた被害者家族の姿を描いている。
会話が英語、というのが正直、気にはなったが、南米に興味のない人にも見てもらうため、という明確な主張を感じられたし、バンデラスもエマも迫真の演技で好感が持てた。
行方不明になった妻を探しまわるカルロスが、妻の監禁場所まで行きながら突入しない、というのは意外ではあったが、ある意味リアルかも。あそこで一人で押し入って妻を助けられるのはフィクションの物語。現実は、自分も殺されてジ・エンドだろう。
強い意志を持った妻はきっと生きて帰る。そう信じて待つ夫のけなげな姿に哀愁を感じた。
日本映画だったら間違いなく女が待つ方なので、新鮮に感じた。
バンデラスは、マッチョのイメージが強いが、心やさしい男の役もはまっていてびっくり。ハリウッド・スターではあるが、Jロウの社会派ラテン映画「ボーダー・タウン」にも脇役で出演していたし、ラテンを見捨ててないところに惚れなおしました。
娘や同僚の扱いや、ドラマ展開には多少解せないこともあったが、総体的に見て見応えがある作品だった。2010.11

ルイーサ
ゴンサロ・カルサーダ監督、レオノール・マンソ、ジャン・ピエール・レゲラス出演
☆初老の女性ルイーサは、毎日同じ服を着、同じバスに乗り職場へ通っている。墓地の管理人と女優宅のメイドの仕事を終えて帰宅すると、そこには愛猫が待っている。そんなささやかな暮らしを長い間、淡々と続けていた。
或る日ルイーサに突然、転機が訪れる。愛猫が死に、2つの職場を解雇されてしまったのだ。電気代すら払えなくなったルイーサは、猫の埋葬代を稼ぐため、今まで足を踏み入れたことのない地下鉄の駅へ向かう。
堅物で孤独なおばさん、ルイーサが、愛する猫の埋葬代を稼ぐため、盲目のふりをし、変装をして地下鉄で物乞い、という発想がとてもユニーク。多少唐突過ぎる感もあるのだが、ルイーサの、ちょっとコミカルで憎めないキャラクターが魅力的なので、つい引き込まれてしまった。
ブエノスアイレスの地下鉄(スブテ)は、日本やNY、サンパウロともまったく違い、駅は汚くてとっても狭い。これが首都の地下鉄?と疑いたくなるほどメンテナンスされていない。
でも、夕方の通勤時になると、無料で入場出来、運賃も格安だ。車両は昔の丸ノ内線を再利用していて、日本語の表示がそのままになっていたりするので、とても親しみやすい。
一方、地下鉄の中では、貧しい子供たちがアメやシールを配って小金を稼いでいたりもする。ブエノスは交通渋滞もひどいので、地下鉄は、労働者だけでなく、多くの買い物客や背広姿の通勤客も利用している。まさにブエノスで暮らす人々の縮図といえるだろう。
そんな様々な人々が行き交う地下鉄で、ルイーサは、今まで目を背けていた現実と向き合い、新しい自分を発見していく。少しずつ変わっていくルイーサを演じた女優の演技は圧巻。アルゼンチンの国民的女優だそうです。
ルイーサおばちゃんのなりふり構わない奮闘ぶりに、少しだけ元気をもらい、老いるのも悪くないな、と思えるようになりました。2010.10


【キューバ】
VIVA
パディ・ブレスナック監督、エクトル・メディナ、ホルヘ・ペルゴリア、ルイス・アルベルト・ガルシア出演
☆ハバナで暮らす美しい青年ヘススは、ドラァグクイーンのオーディションを受け、ビバという芸名で女装をしてクラブのステージに立ち始める。そんな彼の元へ15年ぶりに父親が戻ってきた。暴力的な父親との共同生活に翻弄されるヘスス。クラブでの活動にも反対されるが…。エクトル・メディナの美しさにうっとり。華がある俳優です。彼を支えるのが父役のホルヘとママ役のルイス。特にママ役が最高でした。おっさんの女装は笑えるっていうのもあるけど、歌真似シーンは泣けてくるうまさ。特にひねりはないんだけど、もう一度見てみたい作品です。2016.10 ラテンビート映画祭にて

ハバナ・ムーン:ザ・ローリング・ストーンズ・ライヴ・イン・キューバ
THE ROLLING STONES HAVANA MOON
ポール・ダグデイル監督、ザ・ローリング・ストーンズ出演
☆50年という長い間の鎖国状態が終わり、キューバが新しい時代を迎えた2016年に50年以上のキャリアを持つストーンズがハバナで野外ライブを行った。その模様を世界同時公開した音楽ドキュメンタリー。大画面で見るストーンズのライブは、まるでキューバの人々と一緒に見ている気分になり圧巻。3500円は高いと思ったけど、至福のひと時でした。2016.9

ザ・キング・オブ・ハバナ El rey de la Habana
監督:アグスティ・ビジャロンガ/出演:マイコル・ダビ・トルトロ、ヨルダンカ・アリオサ、エクトル・メディナ
☆10代の青年レイナルドは少年院を脱走し、チンピラや売春婦、物乞いなど貧しい者たちが集まる街で暮らし始める。レイナルドはマグダという女性と出会い恋に落ちるが…。90年代後半のハバナの下町を舞台に、出口の見えない貧困の中でたくましく生きる人々の姿を描いたストーリー。ペドロ・フアン・グティエレスが1999年に発表した小説の映画化。
転んでもタダでは起きないレイナルドとゲイの男との関係は微笑ましく、安心して見れたのだが、マグダとの関係には危うさを感じてしまい…。それがラストのまさかの悲劇につながるんですけどね。もうちょっと伏線が欲しかったです。前半は明るい展開だったので。
終わってみれば「Cidade dos deus」。こう終わるなら、もっと鋭さが欲しかった。2015.10 LBFFにて

ルシア LUCIA
ウンベルト・ソラス監督、ラケル・レブエルタ、エスリンダ・ヌニェス出演
☆スペイン軍と革命軍の抗争が激化した19世紀。スペインから来た愛人に捨てられ、弟を抗争で失ったルシアは絶望し…。1932年。革命を目指す男と恋に落ちたルシアは、男と一緒に生きる決意をする。1960年。キューバ革命後の農村で、独占欲の強い男と結婚したルシアは家に閉じ込められる…。キューバの変革の歴史を、ルシアという名の女性の立場から描いたオムニバス。最初のエピソードは、ホーシャ風で哲学的だったが、あとの2つはいたってシンプル。68年に作られた作品なので、革命万歳テイストではあったが、どの時代のルシアも元は保守的な女性。女の歴史=抑圧の歴史なんだなあ、としみじみ考えさせられました。2015.4

ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド Juan de los muertos
アレハンドロ・ブルゲス監督、アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス、ホルヘ・モリナ、アンドレア・デューロ出演
☆フアンは、かつてアンゴラ内戦に従軍し、忍者からマーシャルアーツを習得。ブルース・リーを敬愛する中年男だ。娘カミーラを心から愛していたが、日々の暮らしには夢も希望も持てずにいる。ある日突然、人間同士が襲い合う事件が発生。キューバ政府はこの騒動を、アメリカ政府による挑発と発表する。しかし、襲っているのは普通の人間ではなくゾンビだと悟ったフアンは、ゾンビを退治する商売を始める。
モンスターの定番であるゾンビと、閉塞感漂うキューバ社会を組み合わせた異色のパニック・ムービー。
キューバとゾンビ、の組み合わせにまずびっくり!もっとも今はお堅い社会主義国だけど、国民性は明るいので、まあ、ありですよね。キューバ旅行のとき、毎日のように歩いていたマレコン通りや、2泊だけした高級ホテル、ホテル・リブレに、ゾンビがあふれていて面白く見れた。深読みすれば、現政権への批判も含まれているのだろうけど、B級ノリのチープ感がよかったです。2012.10 ラテンビート映画祭にて

7 Days in Havana/7dias en la Habana
ベニチオ・デル・トロ、パブロ・トラペロ、フリオ・メデム、エリア・スレイマン、ファン・カルロス・タビオ、ギャスパー・ノエ、ローラン・カンテ監督、エミール・クストリッツァ、ジョシュ・ハッチャーソン出演
☆ハバナを舞台に7人の監督がキューバへの想いを描いたオムニバス映画。同じハバナを舞台にしながら、監督たちの個性がそれぞれ反映されていて、見ていて飽きがこなかった。唯一のキューバ人監督ファン・カルロス・タビオは、彼の映画の常連俳優を使い、スペイン人監督フリオ・メデムの作品とも絡めながらコミカルに今のハバナを描くというサービス満点の内容。一方、アラブ人監督スレイマンは言葉もわからない初めての社会主義国で成すすべもない自分の滑稽な姿をそのまま映画にしてしまっているドキュメンタリータッチの内容。一方で、クストリッツアが、映画賞にまったく興味のない酔っぱらい監督(ネタ元はカウリスマキ?)を演じ、ギャスパー・ノエはブードゥー教の儀式を延々映し…。単なるハバナ観光案内に収まっていないのが、好感が持てた。2012.6

バスを待ちながら LISTA DE ESPERA ★ (2000年)
フアン・カルロス・タビオ監督、ウラジミール・クルス、タイミ・アルバリノ、ホルヘ・ペルゴリア出演
☆田舎町のバスターミナルには、大勢の人がバスを待っている。「最後の人は?(ウルティモ?)」と聞いて待つのが、彼らのマナーだ。
農村へ向かうバスに乗るためターミナルにやってきたエミリオは、スペインで暮らす彼に会うためハバナ空港へ行きたいジャクリーネと出くわす。
バスの故障で、何日も足止めを食らっている人々は、イライラを募らせていたが、そんな時、盲目の男が現れた。ジャクリーネは、彼のために「順番を譲ってあげて」と、頼むが、みんな様々な理由をつけて断る。
思いあまったエミリオが「バスをみんなで修理しよう」と言い出した。

バスを待つ人々の間に巻き起こる様々なドラマをコミカルに描いた一幕物の群像劇。
まるで舞台を見ているかのような、よくこなれたシナリオで、お見事!
一時も飽きさせず、また、バスを待つ人々のキャラクター設定も絶妙だ。
仕切り屋の女性は、お腹をすかせた人のために、食べれるハーブを探し、怠け者の男二人は釣りをする。ずる賢いデブ男は、一人隠れて缶詰を食べてしまい、盲目だと思っていた男も実は…。日本でいえば、“三谷コメディ”の世界そのもの。
コメディとしての質の高さに加えて、不便な生活を強いられるキューバのお国事情も絡んでくる。
いつまでたってもやってこない長距離バス…。
やっと来た!と思ったら、定員はたったの1名だったり…。
さらに、壊れたバスを修理するプロも部品も見つからない…。
タクシーはあるけど、当然、庶民一人で払える代金ではないので、バスを待たねばならない…。
そこで、人の善意を悪用しようとする人が出てくる…。

1度だけキューバに行ったことがあるが、観光客向けの大衆ホテルでさえ、エレベーターが壊れてしまい、滞在中ずっと階段で上り下りをしていたことや、あちこち雨漏りのする巨大な映画館や、椅子が道路にくっつきそうなクラシックなアメ車など、日本ではお目にかかれないハプニングの数々を思い出し、懐かしさを覚えた。
バスを待つことに疲れた人々が、協力しあって、理想郷のような駅を作り上げていく、という展開も面白いのだが、さらにそれには裏があり…、という理想と現実の見せ方も絶妙で、お上手!!
この映画の監督、フアン・カルロス・タビオはアレア監督と共に『苺とチョコレート』を監督したのだが、その主演の二人、クルスとペルゴリアがまったく違うタイプの役を演じているのも見ものである。
(クルス演じるエミリオが、「『苺とチョコレート』では○○だった…」、という台詞をはくサービスもあり)
映画のエンディングには、「アレア監督(Titon)に捧げる」、という一文も出てきて、感慨深い。
数少ないキューバ映画鑑賞歴の中では、1、2を争う大当たりの傑作コメディだ。
なかなか日本で見る機会は少ないとは思いますが、必見です!2012.5 セルバンテス・キューバ映画上映会にて

CASA VIEJA
Lester Hamlet監督、Yadier Fernandez、Manuel Porto、Alberto Pujol、Isabel Santos出演
☆スペインで暮らすキューバ人エステバンは、病気の父を見舞うため14年ぶりにキューバへ帰省する。空港で出迎えたのは姉ラウラ。久しぶりの再会を喜ぶが、家族はそれぞれ秘密を抱えていた…。
キューバの今を切り取った映画を見る機会はめったにないので、それだけで新鮮だったが、内容は世界共通の家族や差別の問題を扱っている。
閉鎖的な田舎町では、不倫や同性愛などはご法度。周りから白い目で見られるのは、日本でも同じである。唯一キューバらしいエピソードは、隣人や同僚の不貞行為を共産党員が告発する、というエピソード。いつ告げ口されるか不安な人たちは、つねにビクビクしながら生きなければならないのだ。一見、淡々とした日常の風景が続くのだが、父の死を機に一気にそれぞれの本音があぶり出される。兄弟姉妹というのは、得てしてタイプが違うものだが、真逆ともいえるエステバンと兄の関係性がリアルで興味深かった。キューバでも日本でも個々人の抱える悩みは一緒のようです。2012.5 セルバンテス・キューバ映画上映会にて

HABANASTATION
Ian Padron監督、Claudia Alvarino、Ruben Araujo、Blanca Rosa Blanco出演
☆著名なJAZZピアニストの父を持つマヒートは、高級住宅街で何不自由なく暮らしている。一方、マヒートのクラスメート、カルロスは貧しい地区の出身で、祖母と二人暮らし。メイデーの祭典の日、マヒートは教師とはぐれて、カルロスの住む貧民地区に迷い込む。
リッチな少年マヒートの家には、薄型テレビ、ホンダ車、最新のプレイステーションがある。そこはキューバとは思えないほど物にあふれている。
一方、カルロスが住む地区では、ボールも買えない子供たちが裸足で野球やサッカーに興じている。子供社会の格差をテーマにした映画は南米映画の十八番であり、ブラジルでは定番なので、見あきた感はあるのだが、これがキューバであることは、注目に値する。
労働者中心の社会主義国ではありながら、実情は、外国で稼げる人ばかりがどんどんリッチになっていき、その手段がない一般の人々の生活は、一向に改善されない。いわゆる本音と建前のある矛盾した社会になっている。それでも、子供にとっては、はたして裕福であることがよいことなのか、と、問われれば、友達もできない、カギっ子のマヒートが幸せであるとは言いきれない。格差は“社会悪”ではあるのだが、すべて公平な社会、なんてものが果たしてホントに作れるのかは、疑問である。
格差の描き方はブラジルなど、他の中南米映画とよく似ていて、とくにキューバらしさを感じなかったが、それも時代の流れなのかもしれない。
社会派を期待してしまうと、少々物足りなさは残るが、子供たちの友情物語としては、とてもよく出来たかわいいヒューマン・ドラマです。2012.5 セルバンテス・キューバ映画上映会にて

GUANTANAMERA  
トマス・グティエレス・アレア、フアン・カルロス・タビオ監督、カルロス・クルス、ホルヘ・ペルゴリア出演
☆故郷グアンタナモに返った老歌手は、かつての恋人と再会するが、その場で急死してしまう。姪のヒーナは、役人の夫のツテで、ハバナまで彼女の遺体を運ぼうとするが、そこへ彼女の昔の恋人まで現れて…。
グアンタナモからハバナまで遺体を車で運んでいくまでの珍道中をコミカルに描いたロードムービー。
英語字幕だったので、台詞の細かな面白さは、残念ながら理解できなかったのだが、たたみかけるようにお決まりの災難が降りかかる吉本新喜劇風なコメディで、見ていて安心感があった。自分が銅像になるのを夢見ているヒーナの夫とは対照的に、元恋人はマッチョなトラック運転手。神聖なる遺体をコメディの道具にしてしまう、という展開は、昔見たアレア監督の『Muerte de un Burocrata 』(1966年)を彷彿とさせる。彼は、ブラックな笑いがお好きなようですね~。
アレア監督の貴重な過去の作品を見れただけでも、価値あり!の作品でした。2012.5 セルバンテス・キューバ映画上映会にて

キューバの恋人 
黒木和雄監督、津川雅彦、ジュリー・プラセンシア、フィデル・カストロ出演
☆1968年。革命から10年後のハバナに降り立ったノンポリの日本人青年アキラは、街で見かけたマルシアに心を奪われる。アキラは、彼女を追ってキューバを縦断。マルシアは、彼に惹かれながらも、革命軍の民兵として、従軍を決意する。
世界中の若者が熱くなっていた時代に作られた映画なので、革命賛歌的な思想のにおいは否めないが、60年代を知らない世代にとっては、そんな熱さ、一途さも新鮮に感じられた。
主演の津川氏が、初めて全編を見た、というのにも驚いたが、当時の日本の映画界というのは、共産主義的映画と、そうでない娯楽作との間に、今以上の隔たりがあったのかもしれない。
ストーリーはごくシンプル。追う男と追われる女の出会いと別れを描いているのだが、その背景で映し出されるドキュメンタリー映像が、とても興味深い。
演説に向かうトラックに乗りあう若者たちの高揚した顔、演説の天才カストロの話に聞き入る民衆、広場に集って祭りを楽しむ人々etc..、モノクロの画面からは彼らの熱気が時を超えて伝わってくる。
キューバを解放し、ヒーローとなったカストロは、50年を経て、キューバの人々にどう思われているのか、本当のところはわからない。
ただ、あの頃は、確かに民衆は彼を欲していたし、多くの抑圧から解放されたことを喜んでいた。
そんな「時代」や「歴史」をリアルに感じることのできる貴重な映画であることは間違いない。

チコとリタ CHICO & RITA  
フェルナンド・トゥルエバ、ハビエル・マリスカル監督
☆若きジャズ・ピアニストのチコと、美しい歌姫リタ。キューバで生まれ育った恋人同士の二人は、いつか米国に渡りミュージシャンとして成功したい、という夢を持っていた。才能を認められたリタは、ニューヨークへと旅立ち、スターへの道を突き進む。やがてキューバと米国の関係が悪化。二人の行く手には様々な困難が立ちはだかる。
キューバとアメリカを自由に行き来し、アメリカンドリームを夢見ることもできた50年代に青春時代を送ったミュージシャン・カップルのピュアなラブ・ストーリー。
ハバナのマレコン通りや、23通りの映画館、ニューヨークのビレッジバンガードなど、旅で訪れたことのある風景がアニメで再現されていて、また旅に出たいわ~、とサウダージ。
そしてそして、何よりも素晴らしいのが全編に流れる音楽。
ザッツ・ラテン!! なのだ。
ディジー・ガレスピーや、ナットキング・コールも出てきて(アニメだけど)、その演奏がまた素敵。中でも、チコがリタのために作った歌「リタ(リリー)」のメロディはとってもロマンチック。
時代に翻弄された二人のドラマチック過ぎる展開も、アニメなので嘘くさく感じない。
こちらは、『キューバの恋人』と違ってまったく革命臭のない娯楽作。
音楽監修とチコの演奏はキューバ音楽の重鎮ベボ・バルデス! 
ジャズ好きにお勧めの逸品です。2011.9 ラテンビート映画祭にて

キューバ音楽の歴史 HISTORIAS DE LA MUSICA CUBANA (キューバ)
マヌエル・グティエレス・アラゴン、パベル・ジロー、レベカ・チャベス監督
☆キューバ発信のラテン・ジャズ、しっとり歌い上げるフィーリンの歴史は興味深かった。音楽好き向けのマニアックな内容ではあったが、ミュージシャンの名前や歴史云々より、単純にキューバの音楽を楽しめたので十分満足できました。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて

レッド・ゾーン KANGAMBA (キューバ・08年)
ロヘリオ・パリス監督、アルマンド・トメイ、ラファエル・ラエーラ、リネット・ヘルナンデス出演
☆長引くアンゴラ内戦に従軍したキューバ兵と、地元の人々との交流、過酷な戦闘シーンをリアルに描いた戦争映画。
戦場で起こる悲劇は、お国が違えど、何処も同じ。とくにキューバらしさ、アフリカらしさは感じず。ただ、キューバ人とアンゴラ人が、自然にスペイン語とポルトガル語で会話していたのは、新鮮だった。現地の女性と兵士の恋愛話もお互い会話が通じるので、米兵とアジア人女性の関係と違って、卑屈な感じがなく好感が持てた。大国が、アフリカやアジアをコケにした代理戦争にはほんと腹がたつ。いまだに、朝鮮は分断されたままだっていうのに。アメリカとロシアで責任とれやっ!2011.6

【コロンビア】
エスコバル 楽園の掟 ESCOBAR: PARADISE LOST
監督:アンドレア・ディ・ステファノ、出演:ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ハッチャーソン
☆兄と共にコロンビアを訪れたカナダ人サーファーのニックは、現地の美女マリアと出会い恋に落ちるが、彼女の叔父は悪名高いパブロ・エスコバルだった。実話とフィクションを絡めた犯罪映画。ベニチオの演技が圧巻。うまい役者です。2017.4

彷徨える河 EL ABRAZO DE LA SERPIENTE
シーロ・ゲーラ監督、ヤン・ベイヴート、ブリオン・デイヴィス、ニルビオ・トーレス出演
☆アマゾン川流域の奥深いジャングル。孤独に生きるシャーマンのカラマカテは、侵略者によって滅ぼされた先住民族の唯一の生き残り。ある日、重い病に苦しむドイツ人民俗学者が救いを求めてやって来た。一行は治療に必要な聖なる植物ヤクルナを求めて川を遡っていく。数十年後、年老いたカラマカテの元に、ドイツ人学者の書いた本に傾倒した若い男が現れる。アマゾンの秘薬を求める旅を詩的描いたアート作品。白人サイドではなく先住民の男の目線で描いているところが興味深い。南米先住民と白人の関係を描いた作品は数多く見てきたが、どれとも似ていないのが新鮮だった。ただ、年老いたカラマテと若い学者の関係は、正直興味がもてず、必要かな、と思ってしまった。2016.10

GABO~ガルシア=マルケスの生涯~ Gabo: la magia de lo real
ジャスティン・ウェブスター監督
☆コロンビアの新進作家J. G. バスケスがマルケスの足跡をたどるドキュメンタリー。ガルシア=マルケスの生い立ちや祖父母との関係から、ジャーナリストの視点、「百年の孤独」誕生秘話等々、興味深い話が続々出てきて、あっという間の1時間半。もっと深く詳しく知りたいなあ。マルケスの人生は、奥が深いので6時間ぐらいの長編希望します。
カストロ議長との関係や、クリントン元米国大統領の発言もあり、南北アメリカの激動の二十世紀を生で触れてきた人なんんだと実感。それでいて、堅苦しくなく、オンナ好きでお茶目な人柄で…。一度でいいからお会いしてみたかったです。2016.5

土と影 La tierra y la sombra
監督:セサル・アウグスト・アセベド/出演:アイメル・レアル、イルダ・ルイス、マルレイダ・ソト
☆家族を捨てて家を出ていた初老のアルフォンソは、サトウキビ畑が広がる故郷の村へ17年ぶりに帰郷する。重い病に伏した息子や幼い孫マヌエルのために、アルフォンソは荒れ果てた家の再興と、家族の絆を取り戻そうとする。
朽ちた家の静止映像が油絵のよう。窓から見えるさとうきび畑も美しかったです。
エンディングはつらかったけど、絶望感はなかったです。一人残る決心をした母にアッパレ。2015.10 LBFFにて

ロス・オンゴス Los Hongos
オスカル・ルイス・ナビア監督
☆祖母の介護をする比較的裕福な大学生と、母と暮らす勤労青年。二人は家庭環境は違っても、大の親友で、塀の落書きアートに夢中になっている。大規模なゲリラ・ペインティング企画に参加した二人は、警察に追われるが…。
カリの街の雰囲気や落書きアートがサンパウロ似ていて、サウダージ。大人たちからとがめられても落書きを辞めない若い情熱がうらやましく、応援したくなりました。
出演者は全員素人ということだが、とても自然な演技。監督の次回作にも期待大。監督は第1作『Crab Trap』(10)がベルリン映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し、続いてプロデューサー作の『La Sirga』(13/William Vega 監督)がカンヌ映画祭で上映されるなど、同国気鋭の新進映画人だそうです。2014.10 東京国際映画祭にて

デリリオ-歓喜のサルサ- Ciudad Delirio
チュス・グティエレス監督、カロリーナ・ラミレス、フリアン・ビリャグラン、イングリッド・ルビオ出演
☆スペイン人の医師ハビエルは、仕事で訪れたコロンビアのカリでサルサスクールのオーナーであるアンジーに心奪われる。サルサのダンスシーンは見応えあり。主役の男性がもうちょっと色気があればなあ。コロンビア版「シャル・ウィー・ダンス」。2014.11 ラテンビート映画祭にて

ケシ畑の小さな秘密 JARDIN DE AMAPOLAS
フアン・カルロス・メロ・ゲバラ監督、ルイス・ブルゴス、カルロス・ウアルパ、ルイス・ロサーノ出演
☆麻薬カルテルの大物に可愛がられていた少年は、麻薬を盗み出す手伝いを父から頼まれてしまい…。
政府軍と麻薬組織の戦いに否応なしに巻き込まれてしまう少年の姿を描く。
南米映画らしい犯罪と少年の物語。ちょっと見あきた感あり。ラテンアメリカ映画祭(アルゼンチン)最優秀企画賞。 2013.12

暗殺者と呼ばれた男 Roa 
アンドレス・バイス監督、マウリシオ・プエンテス、サンティアゴ・ロドリゲス、カタリーナ・サンディノ・モレノ出演
☆1948年、コロンビアの首都ボゴタ。失業中のロアは、兄に運転を教えてもらっていたとき、偶然、大統領候補の自由党党首ガイタンに声をかけられる。この日より、ガイダンに固執するロアは、ロアの事務所を訪ね、仕事をしたい、と申し出るが、断られてしまう。
ロア暗殺事件を、犯人と言われたロアの視点から描いた政治ドラマ。
害のない小市民ロアが、政治闘争の波にのまれていくまでをドラマチックに描いている。
政治の裏のドロドロしたものは、明らかにはされないものの、利用されてしまうロアの人生があまりに悲しくて…。コロンビアの歴史に疎いので、勉強になりました。2013.10 ラテンビート映画祭にて

ある殺人者の記録 Satanas
アンドレス・バイス監督、ダミアン・アルカザール出演
☆ベトナム帰還兵の英語教師エリセオは、極度の不安神経症で、毎日のように年老いた母親と言い合いを繰り返している。15歳の教え子ナタリアに恋心を抱くが、彼女の誕生パーティーの席で恋人を紹介されたエリセオは絶望し…。'86年にボゴタで起こった実話を基に書かれたベストセラー小説を映画化。
世界各国で繰り返される無差別殺人事件。犯人の多くは、このエリセオのような誇大妄想的な被害者意識を抱いているのだろう。病んだエリセオを演じたダミアン・アルカザールが超上手い。ジワジワとストレスが増幅していき、爆発にいたるまでの演技が抜群です。
映画では、事件に巻き込まれてしまうウエイトレスや牧師の半生も描いていく。
彼らの人生も苦悩に満ちていて、とくにウエイトレスの人生は、不運の連続。ペネロペ似の美人が演じているので、なおさら彼女のついていない人生が浮き彫りになる。
サスペンスではあるのだが、心理描写も丁寧で見応えのある作品。心臓をえぐられる展開で、後味の悪さは残るけど、傑作であることは間違いなし。2013.10 ラテンビート映画祭にて

ヒドゥン・フェイス LA CARA OCULTA
アンドレス・バイス監督、マルティナ・ガルシア、キム・グティエレス、クララ・ラゴ出演
☆スペイン出身の指揮者アドリアンは、恋人のベレンと一緒にコロンビアの豪邸に移り住むが、ベレンはビデオメッセージを残して姿を消す。傷心のアドリアンは、バーのウエイトレス、ファビアナと暮らし始めるが、彼女は、バスルームで不思議な音を聞く。
謎の隠れ部屋に閉じ込められてしまったベレンの息のつまるような生活、新しい彼女といちゃつく彼の姿を見せつけられる日々…。地獄のような毎日は想像しただけでぞっとする。
前半はファビアナの視点から、後半は閉じ込められたベレンの視点から描く、という構成が面白い。二人の女優も好演していて、優柔不断男を演じたキムもグッド。コロンビアのバイス監督、『サタナス』も凄いと思ったが、この映画も心理描写が巧みです。次回作も楽しみです。2013.11

二人のエスコバル LOS DOS ESCOBAR 
ジェフ・ジンバリスト、ミカエル・ジンバリスト監督
☆1994年、サッカーWカップのアメリカ大会で、優勝候補と言われたコロンビア代表が予選敗退してしまった。オウンゴールによって戦犯扱いされたアンドレス・エスコバル選手は、帰国後まもなく、婚約者の前で射殺されてしまう。
この悲劇の主人公の半生と、コロンビア・サッカー界と裏組織とのつながりに迫った社会派ドキュメンタリーである。
コロンビア・マフィアのドンだったパブロ・エスコバルについては、ラテンビート映画祭で上映された『わが父、パブロ・エスコバル』を見て知っていたし、エピソードもダブっていたので、さほど驚きはなかったのだが、サッカー選手のアンドレス・エスコバルについてはまったくの無知だったので、興味深く見ることができた。
よりによって、二枚目で、品行方正なキャプテンだった彼が事件に巻き込まれてしまうなんて、なんとも惜しいことである。
単なる酔っ払いの喧嘩だったのか、不法賭博がらみの抱腹だったのか、事実はいまだに闇の中。さらにこの事件は、アンドレスが在籍していたメデジンのチームのオーナー、パブロが殺されてから(1993年12月)わずか半年後に起こっている、というのも、なんともきな臭い話である。
マフィアたちがサッカー・チームを掌握していたことや、パブロの暮らす豪華な刑務所に、代表選手が呼び出されて試合を行ったことなど、驚きの事実が次々に飛び出してきて、ぞっとした。
日本人にとっては、コロンビア=”麻薬&マフィア”、というマイナスイメージが強いが、もちろんそんな世界とは無縁の人々も大勢暮らしている。
カリブ海に面した美しいリゾート地もあるし、小説や映画、ドラマは面白くて質も高いし、お洒落な美男美女も多いし、コーヒーも宝石もたくさん取れるし…。
ドラッグ取引の巣窟というレッテルからはやく解放されることを祈りたい。2012.2 フットボール映画祭にて

デビル 孤高の暗殺者 SALUDA AL DIABLO DE MI PARTE
フアン・F・オロスコ監督、エドガー・ラミレス、カロリナ・ゴメス出演
☆元テロリスト、通称デビルは娘と共に拉致され、昔の仲間を始末するよう脅される。
テロリスト=悪ではない、コロンビアならではの複雑な復讐ドラマ。人間関係が今一つよくわからなかったのだが、女子供が愚かな殺し合いを冷めた目で見ている、というのがリアル。監督が人気恋愛コメディドラマの監督ということで、ドラマで見たことのある役者陣がちらちら出演していました。社会派なのか、アクションエンタメなのか、どっちつかずの映画でした。2013.1

キング・オブ・ドラッグ EL REY
ホセ・ドラド、アントニオ・ドラド監督、フェルナンド・ソロルサーノ、クリスティナ・ウマーニャ出演
☆コロンビアのカリで、麻薬ギャングとして君臨したエル・レイの半生を描いた作品。コロンビア版「グッド・フェローズ」。よくあるパターンね、で、とくに新しさは感じず。2011.4

愛その他の悪霊について DEL AMOR Y OTROS DEMONIOS (09年コスタリカ・コロンビア)
イルダ・イダルゴ監督、 G・G・マルケス原作、パブロ・デルキ、エリサ・トリアナ、マルガリッタ・ロサ・デ・フランシスコ、ダミアン・アルカザール出演
☆18世紀のコロンビア。侯爵の娘が狂犬に咬まれ、修道院の地下へ隔離されてしまう。若い神父は、悪魔祓いのため、彼女を訪ね、密かに恋心を抱く。狂犬病を発病しないまま娘は閉じ込められ、神父はついに彼女と愛し合うようになる。
映像が美しく、少女の魅力も存分に引き出されていた。マルケスの古典ワールドをしっかりと踏襲した映画、という点では好感が持てたが、今一つインパクトにかける、かな。映画館で見た方が、マルケス・ワールドにどっぷりとつかれた気がします。2010.11

85ミニッツ 余命85分 PVC-1
スピロス・スタソロプロス監督、メリダ・ウルキーア、ダニエル・パエス、アルベルト・ソルノーサ、 ウーゴ・ペレイラ出演
☆コロンビアのある農場に武装グループが侵入。一味は母親の首に時限爆弾を巻き付け、その場を立ち去ってしまう。大金を払わないと、母親を殺す、と脅された一家は、爆弾処理班が待つ広場へ急ぐ。
ハンディカメラで、窮地に陥った家族の姿を追っていくドキュメンタリー風インディペンデント映画。実話が元になっている、というだけありリアル。
爆弾処理班の男は、家族とドライブ中に呼び出されたので、装備もなく、ライターとロウソクと、小さなナイフを使って爆弾を外そうとする。アカデミー賞受賞作「ハートロッカー」とは、月とスッポンの安っぽさ、なのだが、コロンビアの現実は、こんなものなのだろう。リアル、という意味で見るのは面白いが、エンタメ作品ではないので要注意。
2010.11

わが父の大罪 -麻薬王パブロ・エスコバル- PECADOS DE MI PADRE
ニコラス・エンテル監督
☆敵対する政治家の殺害や飛行機の撃墜等、極悪非道の麻薬王として君臨し、1993年に殺害されたパブロ・エスコバル。父の死の直後に祖国を去り、アルゼンチンで身元を隠しながら暮らしていたセバスティアンは、30歳を過ぎて密かにコロンビアに帰国。父に殺された政治家の遺族と対面する。
コロンビアは、日本人にとって馴染みの薄い国である。聞いたことがあるのは、ハリウッドのアクション映画の中だけ。テロリストと麻薬の密売人しかいない国、飛行機降りた途端に誘拐される、などなど、多くの人が、コロンビアという国にマイナスのイメージしか持っていないだろう。
南米で暮らしたことのある自分でさえ、コロンビアに行きたいとは思わなかった(行くことを許されていなかった)。有名なリゾート地もあるとは聞いていたが、学校の運動会を機関銃持った軍人が警備している写真を見せられ、想像以上に危険な国、というイメージが刷り込まれてしまった。そんな危ない国で恐れられた男というのはいったいどれだけ悪い奴なのか…。

映画に映し出されたパブロは、社会的には悪人そのもの。怖いものは何もない傲慢極まりない男である。すべてを手に入れ、刑務所ですら自分のためのお城に改造するような絶対的権力を持っていた。自分に逆らったものは皆殺し、人の命なんて軽いもの、と考えていたのだ。
一方で、家族には愛を注ぎ、やさしい父であり夫だった。また、家のない人々に町を作ってあげるなど、慈善事業も行い、一部の人からはヒーロー扱いされていた。
そんな二面性のある父を持ってしまった息子セバスティアンの心情は、想像できないほど複雑なものだったろう。父の殺害後、アルゼンチンに脱出した16歳のセバスティアンは、当初「父の仇をとってやる」と映画の中で述べている。
だが、30歳を過ぎたセバスティアンは、復讐がさらなる悲劇を生むことを悟り、父の殺した政治家の息子たちと対面して謝罪する道を選んだ。映画では、そんなセバスティアンの複雑な心境、そして犠牲者の遺族である若者たちの苦悩が、包み隠さず語られている。
彼らの発言にヤラセはなく真実であることは、画面を通じて伝わってきたし、セバスティアンと遺族との対面シーンは、息をのむほど緊張した。お互いに堅く握手しあう姿には思わず涙…。これぞドキュメンタリーの真骨頂、と呼べるほど、マフィア一族のリアルな物語が語られていた。
名作「ゴッドファーザー」3部作は大好きな映画ではあるが、パブロ・エスコバルの人生はまさにビトー・コルレオーネそのもの。貧しさから成り上がり、悪事でのし上がった半面、貧しい人々への施しも忘れない男だった。
息子セバスティアンがもしマイケル・コルレオーネと同じ道を歩んでいたら…、などと考えたら鳥肌がたちました。一般公開は無理でも、DVD化されることを切に願います。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて 2010.9

ホステージ・オブ・エネミーライン LA MILAGROSA(2008年・コロンビア)
ラファエル・ララ監督、アントニオ・メラーノ、ギレルモ・イヴァン、モニカ・ゴメス出演
☆政府軍対ゲリラ革命軍の紛争が長引くコロンビアで、資本家の息子エドワルドが誘拐された。何不自由なく暮らしてきたエドワルドは、突然、山奥での過酷な生活を強いられる。一方、革命軍側には、子供の頃、父親を政府軍に殺され、革命軍のボスに助けられた姉弟がいた。捕虜の世話係の姉マイラとエドワルドは、言葉をかわすうちに、徐々に交流を深めていく。
コロンビアで、実際にあった誘拐事件を基に描かれた骨太の社会派映画である。
ゲリラたちの過酷で緊迫した生活は、ソダーバーグの「チェ 2部作」にも匹敵するリアルさで描かれていて、見応えがあった。
DVDの宣伝文句やパッケージは「激しい戦場アクション」を強調していたが、これは単純なアクション映画ではない。誘拐された青年の戸惑いと苦しみ、そして心の変遷も丁寧に描かれているし、ゲリラ側の本音にも耳を傾けている。
コロンビアでは、実際にこういった誘拐事件が多発していて、いまだに解放されない人が大勢いる。一昨年も、白人女性が数年ぶりにゲリラから解放されたことが大々的にニュースになったばかりである。
そんなゲリラ軍は、コロンビア社会の腐敗の副産物でもある。もし、日本もこのまま格差社会が進み、社会が混とんとし、貧困層の不満が爆発すれば、コロンビア社会のようにゲリラ革命軍が生まれることだってあり得るかも。こんなこと言うと、笑われるのは百も承知だ。日本に住んでいれば、確かに現実味のない話だろう。でも、南米に暮らす人々は、日本人とまったく違った価値観を持っているわけではなく、豊かで安全な普通の暮らしを望んでいるだけなのだ。
コロンビアと今の日本。一見、あまりにも違う社会ではあるのだが、「あり得ない」なんてことは何一つない。日本での生活が世界基準でないことは、南米に暮らして思い知らされた。
主演を演じたアントニオ・メラーノが、プロデュースと原案も兼ねているとのこと。志を持った若きラテン映画人の今後の活躍に大いに期待したい。2010.3

エメラルド・カウボーイ EMERALD COWBOY (2002年・コロンビア)
早田英志、アンドリュー・モリナ監督、早田英志、ルイス・ベラスコ、パトリシア・ハヤタ出演
☆70年代にコロンビアに渡り、鉱山を巡ってエメラルドの輸出業に乗り出した日本人のサクセス・ストーリー。本人が監督・主演ということで、金持ちの自己陶酔道楽映画、ではあるのだが、コロンビアの宝石鉱山の様子や、商売の方法、そして外国人排斥運動などが細かく描かれていて、興味深く見れた。
南米移民の成功者は、多かれ少なかれ、早田のように強引で自己顕示欲が強いものである。そうでなければ、生き残れない厳しさがあるのだ。「貧乏だと、犯罪に手を染めるしか生きる道はない。でも、努力して富を得ると命を狙われる」。それがコロンビア社会。ヌクヌクと平和に生きることを望まない人でなければ、足を踏み入れられない社会であることは間違いない。日本と南米の違い等々、様々なことを考えさせられる映画だった。2010.3

【ペルー】
夜のボレロ Bolero de noche
エドゥアルド・メンドーサ監督、ジョバンニ・シクシア 、 バネッサ・テルケス 、 テディ・グスマン 、 レオナルド・トーレス・ビラール 、 ジョバンニ・シッシア 、 マヤ・ザパタ出演☆
事務員をしながら作曲を続ける中年男は、事故で偶然出会った若い女性と恋に落ちる。
ファムファタールに中年男が翻弄されながら作曲家として大成する物語。性に奔放な女なんだけど、おおらかでエロくないのが新鮮でした。ペルー映画なんだが、ペルーっぽくないというか…。メキシコ映画っぽかったです。2016.1

悪意 Las malas intenciones
ロサリオ・ガルシア・モンテロ Rosario Garcia-Montero監督
(11年)
☆不在がちだった母が、身ごもって帰ってきた。8歳のカジュタナは、大人たちへの反抗を繰り返す。
テロの恐怖におびえる社会と、ある資産家一家の娘の孤独を描いている。 孤独な少女の演技には脱帽。シビアなテーマなため、終始重たい雰囲気でかなり疲れたが、少女が最後にやっと涙を見せるシーンにはほっとさせられた。かわいい少女を主役にしながらも、お涙頂戴の感動ストーリーでないところがよかったです。2011年マルデルプラタ映画祭でイベロアメリカ・ベスト映画受賞。 2013.6

PERU SABE 「ペルー・サベ」
ヘスス・マリア・サントス監督、フェラン・アドリア、ガストン・アクリオ出演
☆「エル・ブリ」の料理長として名をはせていたフェラン・アドリアは、2011年の閉店後、新たな展開の場として、食材が豊富な南米ペルーに注目。アドリアは、ペルーのトップシェフであるガストン・アクリオとともにペルー沿岸部や山間部、アマゾン川流域などを旅して周り、ペルーならではのユニークな食材や、伝統料理からインスピレーションを得ていく。
ペルーの食材の豊かさと、若者たちの輝く目が印象的な元気をもらえるドキュメンタリーでした。2012.10 ラテンビート映画祭にて

Loxoro 「ロクソロ」
クラウディア・リョサ監督
☆シングルマザーのマクティは、19歳の娘ミアが突然姿を消したことに心を痛めていた。マクティは娘を探すため、ニューハーフの娼婦たちが立つリマ の夜の街を歩き回るが…。2012年ベルリン国際映画祭テディ賞(短編部門)受賞。なんだかよくわからない短編だったが、ゲイの娼婦の悲しい末路にいたたまれない気持ちになりました。2012.10 ラテンビート映画祭にて

OCTUBRE 
ダニエル・ベガ、ディエゴ・ベガ監督、ブルーノ・オダール、ガブリエラ・ベラスケス、 カルロス・ガッソルス出演
☆無愛想で非情な質屋の主人クレメンテは、生まれたばかりの赤ん坊を拾ってしまう。赤ん坊の世話に困ったクレメンテは、客としてやってきた近所に住む中年女ソフィアを、家政婦として雇い入れる。信心深いソフィアは孤独を癒すかのように家事や育児を楽しみ、クレメンテも、今まで感じたことのない愛情を赤ん坊に抱くようになる。赤ん坊とソフィアの出現により、クレメンテを中心とした疑似家族が出来上がるが、妻のように振る舞いだしたソフィアに、クレメンテは戸惑いを覚える。
カウリスマキ風の静止画像を多用した不思議感が面白い。ぼんやりして見てしまうと、何がなんだかよくわからなくて終わってしまうのだが、細部に注意しながら見ると、けっこう見応えある。テーブルの上の花瓶の花一つにも、意味があるし、質屋の主人、家政婦の女性、それぞれの微妙な心理もよく描けていて、練られた作品だった。地味ですけどね。2010.7

【ウルグアイ】
LA VIDA UTIL
Federico Veiroj監督、Jorge Jellinek出演
☆シネマテカの中年支配人は、映画一筋の男だったが、大学の女教師を映画館に招待。彼女をデートに誘おうとするが失敗してしまう。そんなとき、シネマテカが閉鎖になることが決まり…。
モノクロ映像で昭和の香りぷんぷん。淡々とした作風はカウリスマキ風なのだが、なぜかバックの音楽が、黒沢明監督の侍映画っぽくて、そのギャップに笑ってしまった。
シネマテカを守るために立ち上がるのかと思ったら…、のまさかの展開にも?
いろんな意味で、へんちくりんな映画でした。2015.5

マリアの選択 LA DEMORA
ロドリゴ・プラ監督、ロクサーナ・ブランコ、カルロス・バリャリノ、オスカル・ペルナス出演
☆ウルグアイの首都モンテビデオに住むマリアは、3人の子供の世話と、80歳の父親の介護に追われ、多忙を極めていた。心身ともに疲れ果て、経済的にも窮地に陥ったマリアは、父の介護の援助を頼みに社会福祉局を訪ねる。だが、少ないながらも定収入があるため公的補助は受けられない、と追い返されてしまう。ベルリン国際映画祭2012フォーラム部門エキュメニカル審査員賞受賞。
父親を公園に置き去りにしてしまった娘の良心の痛みと、娘が迎えに来るのを待ち続ける老人のけなげな姿が、胸にジワジワとしみてきて、とても切ない気持ちになりました。
プラ監督が、前2作とまったく違ったテイストの映画を作ったことにまず驚き。
とっても地味な作品ですが、心理描写は丁寧に作られています。
次はどんな作品が出てくるのか、期待は膨らむばかりです! 2012.10 ラテンビート映画祭にて

大男の秘め事 GIGANTE
アドリアン・ビニエス監督、オラシオ・カマンドゥレ、レオノール・スバルカス出演
☆巨漢のハラはスーパーで夜間ガードマンの仕事をしている。大柄な外見に似合わず、気が小さいハラは、ある日、同じ店で清掃係をしているフリアに密かな恋心を抱く。監視カメラ越しにフリアの姿を追いかけ、日に日にフリアへの思いを募らせるハラ。彼女が好きな音楽を聴き、彼女が言葉を交わした人たちに近づいていく。
言葉少なく無表情で風貌は恐ろしいけど、その熊みたいな体型に次第に愛着を覚えた。体型の割に気が優しいハラに対し、恋するフリアは、清掃中にこっそり万引きしたり、メタルのライブで踊ったり、と、大人しそうに見えて意外に過激。そのギャップが面白い。
ただ、展開は予定調和だし、とくに新しさも感じなかったので、ベルリンで3冠っていうのは褒めすぎの感あり。それでも、ハラ君の優しい心情が丁寧に描けていたのでヨシとしましょう。ラテンビート映画祭2010にて 2010.9

アライブ -生還者-VENGO DE UN AVION QUE CAYO EN LAS MONTANAS (2007年・ウルグアイ)
ゴンサロ・アリホン監督
☆1972年10月、ウルグアイのラグビー・チームが乗った飛行機が雪山に墜落。捜索は打ち切られるが、16人の乗客は、72日間を生き抜き奇跡の生還を果たした。彼らは食料もない雪山で、どうやって生き延びたか、という問いに、死亡した仲間の肉を食べた、と語り、世界中で話題になった。30数年後の生還者たちの言葉と、当時のニュース映像、再現フィルムを交えた渾身のドキュメンタリー。
極限状態に陥った人間には、どこまで許されるのか、といったことを考えさせられた。「人肉を食べていなかったら今ここにはいない。非難されようが後悔はしていない」と、当時を振り返る生還者の言葉が忘れられない。そんな状況に陥りたくはないけれど…そうなれば誰でもそうせざるを得ないだろう。2010.3


【チリ, ボリビア、パラグアイ、ベネズエラ、グアテマラほか】

コロニア
監督:フロリアン・ガレンベルガー、出演:エマ・ワトソン、ダニエル・ブリュール、ミカエル・ニクヴィスト
☆チリのピノチェト独裁政権下で実際に拷問施設として使用されていた“コロニア・ディグニダ”を題材にしたサスペンス。
脱出劇よりピノチェト時代、反政府活動家がカルト教団に監禁されていたという事実が衝撃的。このドイツ人監督は、日本で一般公開が出来ずDVDにもなっていない日本軍を扱った映画「ジョン・ラーベ」の監督でもある。直球映画はあまり好みではないのだが、監督の伝えたい思いはひしひしと感じた。2017.5

チリの闘い 第三部 民衆の力 LA BATALLA DE CHILE: LA LUCHA DE UN PUEBLO SIN ARMAS - TERCERA PARTE: EL PODER POPULAR
監督:パトリシオ・グスマン
☆平凡な労働者や農民が協力し合い、"民衆の力"と総称される無数の地域別グループを組織してゆく姿を追う。彼らは食糧を配給し、工場や農地を占拠・運営・警備し、暴利をむさぼる闇市場に対抗し、近隣の社会奉仕団体と連携する。こうした活動は、まず反アジェンデ派の工場経営者や小売店主や職業団体によるストライキへの対抗手段として始められたものだった。やがて"民衆の力"は、右派に対し決然たる態度で臨むことを政府に要求する、ソビエト型の社会主義的組織体へと徐々に変質してゆく。

チリ33人 希望の軌跡 THE 33
監督:パトリシア・リゲン、出演:アントニオ・バンデラス、ロドリゴ・サントロ、ジュリエット・ビノシュ、ジェームズ・ブローリン、ルー・ダイアモンド・フィリップス、マリオ・カサス
☆2010年8月5日チリのサンホセ鉱山で落盤事故が発生。坑道の奥深くに33人が閉じ込められた。生存が絶望視され事故発生から17日後。ついに33人全員の生存が確認される。世界中に奇跡の救出ドラマが生中継された事故を映画化。ラテン出身のスタッフと豪華キャストで見応えあり。スペイン語版も作ってほしかったなあ。日本では完全に無視された映画になってしまったけれど、つまんないハリウッドものよりよっぽどハラハラドキドキ、感動的でした。結果がわかっててもウルウルでした。2016.12

彼方から Desde Alla (ベネズエラ)
ロレンソ・ビガス監督、アルフレド・カストロ、ルイス・シルバ、ヘリコ・モンティーリャ出演☆
カラカスで暮らす歯科技工士の中年男アルマンドは道端で好みの青年を見つけると、金を渡して自分の部屋に誘う日常を送っている。目的は買春ではなく、青年を鑑賞することに喜びを感じていた。ある日アルマンドは不良グループのリーダー、エルデルを部屋に誘う。この出会いをきっかけに二人の運命は大きく変わっていく…。アルマンド役のカストロがとにかくすごいの一言。無表情だけど圧があるあの目。セリフを排除しながらも二人の関係と気持ちの移り変わりがスムーズに描かれているあたりが、さすが。アリアガが共同脚本、ベニチオ・デル・トロが製作に関わっているらしく、地味だけとそれぞれの熱を感じる映画でした。2016.10 ラテンビート映画祭にて

盲目のキリスト El Cristo ciego
クリストファー・マーレイ監督、マイケル・シルバ、バスティアン・イノストロサ、アナ・マリア・エンリケス出演
☆舞台はチリ北部の砂漠地帯。貧しい村で工員として働く30歳のマイケルは、酒びたりの父の世話をしながらひっそりと暮らしている。ある日、マイケルは砂漠で神の啓示を受ける。最初は誰も彼の話に耳を貸さなかったが、ある出来事を機に周囲の態度が一変し、マイケルを「キリストの再来」と崇めるようになる…。
ドキュメンタリータッチではあるのだが、そこにチリ北部に伝わる民話等を絡め、淡々と人々の貧しさを描いている。砂漠の映像は秀逸。若くて偏屈な白人監督が撮った映画とは思えないギャップもまた面白かったです。2016.10

光のノスタルジア NOSTALGIA FOR THE LIGHT
パトリシオ・グスマン監督
☆チリのアタカマ砂漠には世界中から天文学者が集まり、遥か彼方からやって来る何十億年も過去の光を捉えようとしている。一方でこの地には、ピノチェト独裁政権下で政治犯として捕らわれた人々の遺体も埋まっており、行方不明になった肉親の遺骨を探し続ける女性たちもいた。
広大な宇宙、延々つづく砂漠の光景と、背中を丸め黙々と身内の骨を探し続ける家族たち…。その対比の映像を見ただけで自然とじんわり涙が出てきた。殺された人々への鎮魂の気持ちと同時に、ここは死んだと宇宙に戻れる場所なのかも、と思ったり…。宇宙の大きさに比べ人間はなんとちっぽけなんだろう。小さなところでいざこざ起こしてる人間の愚かさも感じてしまいました。2015.12

ザ・クラブ El Club
監督:パブロ・ラライン/出演:アルフレド・カストロ、ロベルト・ファリアス、アントニア・セヘルス
☆4人の聖職者は過去に犯した罪により海辺の僻地に送られ、禁欲の日々を送っていた。新しい5人目の聖職者は少年への性的虐待の罪を否定していたが、まもなく彼と性的関係を持ったという男が街に住み着き…。
暗すぎる…。罪を犯した聖職者たちのさらなる密かな犯罪にゾッとして、人間不信に陥りました。2015.10 LBFFにて

アジェンデ Allende, mi abuelo Allende 
監督・出演:マルシア・タンブッティ・アジェンデ/出演:オルテンシア・ブッシ・デ・アジェンデ
☆1970年、チリで史上初の自由選挙による左派政権が成立し、サルバドール・アジェンデ大統領が誕生した。しかし3年後、ピノチェトによるクーデターが起こり、アジェンデは非業の死を遂げる…。悲劇の大統領アジェンデの孫娘マルシア・タンブッティ・アジェンデ監督が、長い間封印されてきた祖父の話題や、クーデター後の家族の思いを近親者へインタビューし、アジェンデ一族の歴史をひも解いていくセルフ・ドキュメンタリー。アジェンデの自殺だけでなく、側近だった娘が、キューバに亡命して数年後に自殺した、というエピソードにもスポットをあてていたのが好感が持てた。家族を自殺で亡くした人々の複雑な思い。娘が祖父や母の写真を公にしてこなかった、というのもわかります。カトリック社会では自殺は大罪ということもあるんだろうなあ。切腹潔しの文化がある日本とは、残されたもののプライドの持ち方が違う気がした。2015.10 LBFFにて

リアリティのダンス LA DANZA DE LA REALIDAD ★★★
アレハンドロ・ホドロフスキー監督、ブロンティス・ホドロフスキー、パメラ・フローレス出演
☆1920年代の軍事政権下のチリ。幼少のアレハンドロは、ウクライナ移民の両親と北部の炭坑町トコピージャで暮らしていた。反体制派の父は、独裁者の大統領暗殺を企み、首都へと向かうが…。
「エル・トポ」と「ホーリー・マウンテン」を見た後だったので、かなり構えていたのだが、意外や意外、物語もしっかりあって、皮肉たっぷりで、笑いもあり、でもちろん絵柄もアーチスティックで、最初から最後まで飽きずに十二分に楽しめた。
黒装束のペスト患者が山から下りてくるシーンはアーチスティックでソアレス風。一方、一人オペラ歌手の爆乳妻が可笑しくて、放尿シーンは吹き出してしまった。もちろん政治批判ネタもしっかり組み込まれている。暗殺しようとして手が硬直してしまう気のやさしい父のキャラが最高。演じているのは監督の息子なのだが、顔がそっくりで演技もうまくて、存在感あり。この面白さをうまく表現できないのだが、アートと笑いと皮肉たっぷりで、また見てみたい傑作。80歳過ぎてこのクオリティ。コアなファンがいうように、天才ですね、ホドロフスキー。2014.7

エル・トポ EL TOPO
アレハンドロ・ホドロフスキー監督・出演
☆ガンマン、エル・トポ(もぐら)は、荒野を血で染めぬいた挙げ句、命を落とす。だが、僧侶として再生し…。
Topoという単語が「もぐら」という意味だと初めてしりました。
超異色のウエスタン。ガンマン時代より、坊主になってからのほうがとっつきやすかった。なんだかよくわからなかったが、眠くないとき、もう一度見てみたい。2014.6

ホーリー・マウンテン THE HOLY MOUNTAIN
アレハンドロ・ホドロフスキー監督・出演
☆前衛的な実験映画が数多く作られていた年代らしい奇妙奇天烈な作品でした。2014.6

ヴォイス・オーヴァー Le Voz en Off
クリスチャン・ヒメネス監督
☆元女優でシングルマザーのソフィアは、妻子ある男と不倫して寂しさを紛らわしている。姉のアナが、フランスから夫と子供を連れて帰国した。二人の姉妹は、父から離婚したい、と切り出され、動揺。ソフィアは愛妻家だと信じていた父の女性関係を調べ始める。チリ南部の小都市バルディビアを舞台にした家族の物語。チリ版向田ドラマ。娘の動揺は国が違えど一緒なんだけど、行動のとり方や発言はラテンなので比較しながら、面白く見れた。父も母も娘二人も、子供みたいなところがかわいい。監督も、大人の幼児性を狙っていると、話していた。ランゴスタを食べてみたい、と涎をたらしてテレビを見ている本当の子供二人が、我慢を強いられ、大人たちは好き勝手にやってるよ~。でも、みんな必死で生きてるから許してあげましょう。いろんな引き出しのある家族ドラマでした。2014.10 東京国際映画祭にて

殺せ Matar a un hombre
アレハンドロ・フェルナンデス・アルメンドラス監督、ダニエル・カンディア、ダニエル・アンティビロ、アリエル・マテルナ出演
☆公園で働くホルヘは、近所に住むチンピラから絡まれても抵抗できない気弱な男。ある晩、息子がチンピラのボス、カルレに撃たれ重症を負う。ホルヘと妻は法に訴えるが、カルレはすぐに釈放されてしまう。まもなくカルレたちの執拗な嫌がらせがエスカレートし…。家族を守るすべのない父の苛立ちや失望、そして復讐を描いたドラマ。2014年サンダンス映画祭ワールドシネマ部門で審査員賞受賞。
静と動の対比が印象的。ひたすら暗い物語でした。2014.10ラテンビート映画祭にて

解放者ボリバル Libertador (ベネズエラ)
アルベルト・アルベロ監督、エドガー・ラミレス、マリア・バルベルデ、イワン・リェオン出演
☆19世紀初頭、南米諸国をスペインからの独立に導いた英雄シモン・ボリバルの半生をドラマチックに描く。今まで語られることのなかった英雄ボリバルの激動の半生や、大迫力の戦闘シーンなど、見どころ満載の歴史大作。ボリバルの物語を初めて見たので、勉強になりました。2014.11 ラテンビート映画祭にて

叛乱者たち Insurgentes (ボリビア)
ホルヘ・サンヒネス監督、ルカス・アチリコ、レイナルド・ユフラ出演
☆スペインからやってきた征服者たちとの戦いから、現代に起こったコチャバンバの水戦争、ガス戦争にも触れ、再現ドラマと史実を絡めて、現代のモラレス政権へと導いていくドキュメンタリー風ドラマ。
ボリビアの歴史上の革命家たちの名前をまったく知らない新参者としては、見ること聞くこと、すべてが新鮮。先住民族の大統領が誕生し、政治家や公務員も先住民族が増えている現状は、長い革命の歴史による進歩と言えることはできるだろうが、今でも白人の支配階級は存在するし、明らかな差別な格差も残っている。先住民族の映画製作集団ウカマウが、先住民族側からだけではなく、旧支配階級側からの乾いた目線も、少しではあるが触れているのが印象に残った。
エンディングに流れる音楽をオペラにしたことが気になってしかたない。
先住民族の音楽を使わず、いかにも貴族的なオペラを流した意図を監督に聞いてみたくなった。2014.5

ブッチ・キャシディ 最後のガンマンBLACKTHORN (ボリビア)
マテオ・ヒル監督、エドゥアルド・ノリエガ 、 サム・シェパード 、 スティーブン・レイ 出演☆米国で名をはせた列車強盗コンビ、ブッチとサンダンスは南米で生きのびていた。「明日に向かって撃て」の続編をサム・シェパードが演じる、ということで楽しみにしていたのだが…。しんみりした西部劇になっていて、ボリビアの塩湖の風景も寂しげで…。かなりがっかり度が高かった。もっとスピード感がないと飽きてしまう。映画館で見ればまた違ったのかもしれないが。残念。もう一度、「明日に向かって撃て」を見たくなった。2016.1

グロリアの青春 Gloria
セバスティアン・レリオ監督、パウリナ・ガルシア、セルヒオ・エルナンデス、ディエゴ・フォンテシージャ出演
☆58歳・離婚歴ありのグロリア。子供たちの独立後、生きがいを見つけられず、一人寂しい夜を過ごす毎日を送っている。意を決して足を運んだお見合いパーティーで、グロリアは7つ年上の元海軍将校ロドルフォと出会う。まもなく恋に落ちた二人だったが、元妻や娘に頭の上がらないロドルフォの姿に興ざめし…。
58歳にして第2の青春を謳歌しちゃってるグロリアの日常は、まるで10代の小娘のようで笑ってしまった。性欲も全開で、惜しげもなくさらけ出すのがまた小気味いい。
彼女の体当たり演技がベルリンでの女優賞を呼んだのでしょう。グロリアを見て、男性陣や保守的な女性たちは、イタイ、と思うのでしょうか?意見がわかれそうな作品ですが、私は十分に楽しめました。2013.10 ラテンビート映画祭にて

クリスタル・フェアリー Crystal Fairy
セバスティアン・シルバ監督、マイケル・セラ、ガブリエル・ホフマン、フアン・アンドレス・シルバ出演
☆南米チリに旅に出たシャイな青年ジェイミーは、チリ人の悪友3兄弟と、伝説的なシャーマニズムに使われる、強い幻覚作用を持つサボテン「サン・ペドロ」を求めて砂漠へと向かう。旅の途中、ジェイミーらは、自分をクリスタル・フェアリーと呼ぶ、風変わりなアメリカ人女性と出会う。
監督が実際に出会った女性がモデル、ということ。手作り感あふれる作品でした。マイケル・セラのすっとぼけた顔、この役にぴったり。サボテンを盗もうと必死のジェイミーに爆笑。2013.10 ラテンビート映画祭にて

マジック・マジック Magic Magic
セバスティアン・シルバ監督、ジュノー・テンプル、マイケル・セラ、カタリーナ・サンディノ・モレノ出演
☆カリフォルニアから初めてチリを訪れたアメリカ人のアリシアは、従姉妹のサラ、彼女の恋人アグスティン、そしてエキセントリックな友人ブリンクらと共に、離島の別荘で、楽しくバカンスを過ごすことにする。
だが、サラが都会に戻った後、孤独感を募らせたアリシアは、睡眠障害に陥ってしまう。悪ノリしたブリンクらは、アリシアに催眠術をかけ、彼女を精神的に追い込んでいく。
正直、まったく期待していなかったのだが、チリの孤島の寂しげな雰囲気の映像や、アリシアが被害妄想や睡眠障害に陥っていく心理描写が巧みで、見入ってしまった。
映像の美しさは、さすがクリストファー・ドイル!カーウァイ監督初期作品の、あの新鮮な映像美を彷彿とさせるものがありました。まだまだ御大健在で嬉しいかぎり。
アリシアをイライラさせるウザ~イ男を演じたマイケルがまた上手!あの鷲鼻のせいなのか、人を小馬鹿にした風貌が腹立つのよねえ。アリシアじゃなくても、あっち行け、と追っ払いたくなる奴で…。若者たちの話ではあるのだが、世代や国を超えて共感を呼ぶ作品。内向きに、どんどん自分を追い詰めてしまうことの恐怖にゾッとしました。2013.10 ラテンビート映画祭にて

NO
パブロ・ラライン監督、ガエル・ガルシア・ベルナル、アルフレド・カストロ、ルイス・ニェッコ、アントニア・セヘルス出演
☆長い間、チリの恐怖政治を率いてきたピノチェト政権末期の1988年。
国際的な批判が高まる中、ピノチェトは、現政権の信任を問う国民投票の実施を決める。
国民の間では「出来レース」との諦めムードが漂っていたが、反体制派は「NO」キャンペーンを、若い広告プロデューサーのレネに依頼する。
 コカコーラのCMのような軽いノリの試作を見た反体制派の重鎮たちは、主義主張の見えないCMに唖然とし席を立つ。
レネは、弾圧を受ける活動家の元妻や、被害者家族の思いを苦慮しながらも、子供から老人まで口ずさめるCMソングや、カラフルなロゴマークで、「NO」キャンペーンを盛り上げていく。
高みの見物をしていた「YES」陣営は焦って様々な脅しをかけてくるが、「NO」キャンペーンの勢いは止まらず…。
☆☆ピノチェト独裁政権下の弾圧を描いた映画は、今やチリ映画の定番だし、今作もまた辛い拷問シーンがあるんだろうなあ、と覚悟して見始めたのだが、意外や意外、歌あり踊りありの軽~いCMのような政治キャンペーンに、いきなり肩すかしを食らった。
長い独裁政治に「NO」を言うのだから、当然、激しい口論やシュプレヒコール、嫌がらせや拷問、殺人もありだろう、と先入観を持ってしまっていたのだ。
独裁政権末期。政治に対して何も希望が持てず、諦めてしまっていた人々が、ノリのいいCMを見て、“楽しく”「ノー・モア・ピノチェト!」と声を挙げ始める、という展開が面白くて、思わず身を乗り出して、見入ってしまった。
もちろん、YES側の嫌がらせや暴力シーンも皆無ではないのだが、この映画の焦点はあくまで、選挙キャンペーン。
ジョージ・クルーニー監督作のような、米国政治のドロドロとした裏側を描いた作品とはまた違ったテイストで、「ノー・モア・ピノチェト!」キャンペーンが、乾いた視点でドキュメンタリー風に語られていく。
流れているのは、実際に使われたキャンペーンの映像で、その他のシーンでも、わざわざ80年代のカメラを取り寄せて、古臭い映像にした、というこだわりようで、ラライン監督のこの作品に賭ける思いが伝わってきた。
中東で起こった数々の反体制派運動も、21世紀のメディア、フェイスブックがきっかけだったように、この88年の選挙運動も、80年代ポップスの軽いノリが、チリの人々の心に火をつけたのだろう。
この“ブームを生む”手法が果たして正しかったのかは、判断出来かねるが、時代に乗った、ということでは、意味あるキャンペーンだったのだろう。
結局ピノチェトは、この選挙で敗北し、この後、チリを追われることになるのだから。
映画を見ていて思い出したのは、ミャンマーのこと。今のミャンマーも、この頃のチリと似た状況なのかもしれない。国際社会に媚びるように民主化に動き出し、スーチーさんの軟禁を解き…。今、公平な選挙が行なわれれば、チリと同じように「ノー・モア独裁政治」に人々は動くに違いない。2012.10 東京国際映画祭にて

ヴィオレータ、天国へ Violeta se fue a los cielos
アンドレス・ウッド監督、フランシスカ・ガヴィラン、トマ・デュラン、ホルヘ・ロペス出演
☆チリの貧しい村で生まれたヴィオレータは、幼いころから道端や酒場で歌を歌って小銭を稼ぐ日々を送っていた。大人になり、フォルクローレ歌手の道を歩み始めたヴィオレータは、民謡の研究や、曲作りに没頭。彼女の歌はメディアにも取り上げられるようになる。
ある日、ヴィオレータの歌をラジオで聞いたという若いスイス人男性が訪ねてきた。一目で恋に落ちたヴィオレータは、恋人とともにパリへ渡る。
フォルクローレ歌手として3千以上の曲を残し、絵画や刺繍など、美術作品でも多くの名作を残したチリを代表するアーチスト、ヴィオレータ・パラの波乱の半生を描いている。
恥ずかしながらこの映画を見るまでパラのことはまったく知らなかった。波乱万丈のパラの半生も興味深かったが、彼女の歌に一番に引き付けられた。2012.10 ラテンビート映画祭にて

木曜から日曜まで De jueves a domingo
ドミンガ・ソトマイヨール監督、サンティ・アウマダ、エミリアーノ・フレイフェルド、フランシスコ・ペレス=バネン、パオラ・ジャンニーニ出演
☆木曜早朝。両親はせっせと荷物を運び、眠たげな子供たちは急かされながら車に乗り込む。チリの乾燥地帯を進む車の中で、子供たちは無邪気に振る舞っているが、前席の夫婦には不穏な空気が流れ…。ロッテルダム映画祭Tiger Award(作品賞)受賞作。
監督が、見る側に一種の居心地の悪さを与えたかった、と言っているのを聞いて納得。ドラマらしい展開がなく、退屈ではあったのだが、きっと映画の中の子供たちもどこかで退屈していたのだろう。母親とフランスに住む知り合いの男がデキている、というのは予想がついたが、なんで一緒にキャンプするかが合点がいかず。物語そのものよりも、チリの荒涼とした大地が、パタゴニア旅行を思い出させ、懐かしく感じました。2012.10 東京国際映画祭にて

家政婦ラケルの反乱 LA NANA
セバスティアン・シルバ監督、カタリナ・サアベドラ、クラウディア・セレドン、マリアナ・ロヨラ出演
☆ラケルは、バルデス家で20年以上も働いているベテランの家政婦。無愛想だが黙々とよく働くラケルに一家は厚い信頼を寄せている。そんなラケルの身体を思いやった主は、若い家政婦を助手として雇うことにする。だが、自分の居場所を奪われることを恐れたラケルは、若い家政婦たちを苛め、次々に追い出してしまう。
20年間、バルデス家だけが自分の居場所で、生きがいは子供たちとご主人様の世話。外の世界とつながらずに20年生きてきてしまったラケルに、突然、降りかかった災難。同じ境遇ではなくても、彼女の気持ちは痛いほどよくわかる。これまでの20年、コツコツ真面目に生きてきた中年女にとって、他の家政婦に自分のテリトリーを奪われるのは死活問題だ。若い家政婦を閉めだしたり、自分のやり方に従わないベテラン家政婦とケンカするのもごもっとも。女の戦いは、かくもすさまじいものなのです。
戦いに疲れ、ボロ雑巾になったラケルに、後半、救世主が現れる。ラケルのイジメにユーモアで応戦してきた若い家政婦は、ラケルの頑なな心を溶かし、二人に友情が芽生える。
ラケルの表情は柔らかくなり、お腹のそこから笑えるようになるのだ。
ラケルに感情移入できた観客にとって、この映画は最高に楽しめたはずだ。
彼女の変化を心から喜び、自分のお城の外へ一歩踏み出したラケルに、エールを送ったことだろう。
一方、彼女の反乱を俯瞰した観客にとっては、地味で意地悪な中年家政婦の些細な物語、という感想にとどまるかもしれない。アクション活劇やアニメ好きな人向けの映画ではないが、アメリカや日本でリメイクしても面白そうだし、舞台化もありかも。チリが舞台の映画ではあるのだが、どこの国の人でも共感できる人間ドラマに仕上がっている。ゴールデングローブ賞ノミネートも納得の逸品だ。2010.9 ラテンビート映画祭2010にて 

愛するSEX sexo con amor
ボリス・ケルシア監督、シグリッド・アレグリア、ボリス・ケルシア出演
☆小学校の女教師は教え子の父親と不倫中。父親参観の日、集まってきた親たちは、それぞれ何らかの夫婦の性生活に悩みを抱えていた。性をコミカルに扱って大ヒットし、ブラジルでもリメイクされた作品。ブラジル版よりもほのぼの感があり、見やすい感じがした。いずれにしても、南米は性にオープンなお国柄なので、淫靡な雰囲気はまったくなし。笑い飛ばせるおおらかさがいいですね。2011.3

ベッドの中で EN LA CAMA (チリ)
マティアス・ビセ監督、ブランカ・レヴィン、ゴンサーロ・バレンスエラ出演
☆行きずりの男女はモーテルで激しく愛し合った後、少しずつ、自分を語りはじめる。愛し合い、話、また愛し合い、話し…の繰り返し。フランス映画風なこじゃれた台詞は面白かったのだが、セックスシーンが激しすぎてポルノ見てるような気分になった。「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のチリ版、という感じ。2011.1


火の山のマリア Ixcanul 
監督:ハイロ・ブスタマンテ/出演:マリア・メルセデス・コロイ、マリア・テロン、マヌエル・アントゥン出演
☆グアテマラにある活火山麓のコーヒー農園で暮らすマヤ族のマリアは、都会での暮らしを夢見ている。両親は農園主任との結婚を望んでいたが、マリアは恋人ペペと駆け落ちし、間もなく子供を身ごもる…。火山の麓の映像の美しさ、過酷さをみるだけでも価値ありの作品。若いマリアの母を演じた女優は唯一のプロの女優とのこと。存在感ありました。グアテマラの先住民族の衣装も素敵。もっとグアテマラについていろいろ知りたくなる、新鮮な映画だった。2015.10 LBFFにて

雨さえも~ボリビアの熱い一日~ TAMBIEN LA LLUVIA (ボリビア)
イシアル・ボジャイン監督、ルイス・トサル、ガエル・ガルシア・ベルナル、エンマ・スアレス出演☆舞台は2000年のボリビア。映画監督のセバスティアンとプロデューサーのコスタは、新大陸の発見者クリストバル・コロンを描く映画撮影のため、スタッフとともにボリビアのコチャバンバを訪れる。
折しも現地では、欧米企業による横暴な水道事業の独占によって、多くの住民が水道料金の大幅値上げに苦しめられていた。
大勢のエキストラ応募者の中から、スタッフの目にとまった先住民族のダニエルは、映画の撮影の合間に抗議運動に参加。映画の資金源である投資家の目を気にするコスタは、彼の行動に難色を示し、映画に専念するよう諭す。
☆☆映画の経費節約のためにボリビアをロケ地に選んだ、いい御身分のスペイン人と、水を求めて死に物狂いで抗議するボリビアの民衆。
両方の立場を対比させると同時に、新大陸を発見したスペイン人と先住民族の関係を描いた映画を劇中で見せることで、征服するものと、されるものの立場があぶりだされる…。
見れば見るほど、よくできた脚本である。
劇中劇では、征服者と先住民、先住民を守ろうとする聖職者。
現代では、経費を気にするプロデューサー、映画のことしか頭にない熱血監督、しぶしぶボリビアにやってきた役者陣。そして、水を奪われた原住民とその子供たち…。
さまざまな立場の人間が登場し、劇中劇も入ってくるので、複雑な構成ではあるのだが、一人ひとりの心理描写が丁寧で、それぞれに感情移入ができる。
蛇口をひねれば飲み水が手に入る、恵まれた先進国の人間にとって、“不当に高い水道料金”、というのは現実味がないのだが、大震災後、水、電気、そしてガソリンが手に入らない恐怖を味わった私たち日本人は、「水は死活問題だ!」と、訴えるダニエルの言葉に、以前よりも大きな共感を覚えたのではないだろうか。
震災直後の数日間、水を求めて歩き回ったことや、水を分けてもらうために何時間も待たされたことなど、半年前のリアルな体験を思い出すと、今でも鳥肌が立つ。
その後で飲んだ水が、なんとおいしく、またありがたく感じられたことか…。
みんなが熱くなっている中、一人だけ達観していた酔っ払いのベテラン俳優が、捕まった民衆にビールを分けてやるシーンは涙…でした。(彼のゴヤ賞助演男優賞も納得!)
この映画は、社会問題を扱った硬派な作品ではあるのだが、映画への愛や、男の友情、親子愛なども描かれていて、女性監督らしい細やかさも感じられる。
脚本のポール・ラバーティはボシャイン監督の夫、ということ。
夫婦二人三脚で作った傑作を、埋もれさせたくないものです。ぜひぜひ日本公開をお願いいたします!2011.9 ラテンビート映画祭にて


7BOX 7 CAJAS (パラグアイ)
フアン・カルロス・マネグリア,タナ・シェムボリ監督、セルソ・フランコ出演
☆アスンシオン市場。動画の撮れる携帯電話が欲しいビクトルは、精肉店の店主から、100ドルを渡す代わりに7つの箱を運ぶ仕事を頼まれる。簡単な仕事だと思っていたが、商売敵やスリに行く手を阻まれ…。
数多くのラテン映画を見ているつもりだが、パラグアイ映画ははじめて。パラグアイに行ったこともないので、町の風景や人々の風貌、パラグアイなまりのスペイン語など、ひとつひとつが新鮮に感じて楽しめた。実際にアスンシオンの市場で撮影し、エキストラもリアルな市場の人々、ということです。
テイストはコロンビアのエンタメ作品と似ている感じ。携帯電話がどれだけ高価で、また、若者にとって憧れの製品であるかが垣間見れて、興味深かった。ビクトルの姉が韓国料理店で働いている、というのが現代風。以前なら中華料理店だったろうに。車も料理も、韓国製が労働者社会にしっかりと根付いている、ということだろう。
子供の薬のために仕事を奪おうとした男が悪人扱いされる展開は少々つらいものがあったが、エンタメ作品なので、よしとしましょう。まだまだパラグアイの生活は厳しいのだろうけど、応援したくなる国の一つです。2014.2

黙して契れ HERMANO (ベネズエラ)
マルセル・ラスキン監督、エリウ・アルマス、フェルナンド・モレノ、アリ・ロンドン出演
☆フリオと弟ダニエリ(通称ガト)は、町のサッカーチームの2トップとして活躍している。ガトは、赤ん坊の頃、フリオと母に拾われたことを知っており、母と兄に深い愛情を抱いていた。有名チームの選考会の前日、ガトは町で不良たちに絡まれ、大事なスパイクを奪われてしまう。そのいざこざを見ていたサッカー仲間は、銃で彼らを脅し、発砲。流れ弾が偶然通りかかったガトと母にあたってしまう。
 サッカーを愛する純粋な二人の少年が、母を殺され苦悩する青春ストーリー。ブラジルのファベーラ映画に設定はよく似ているのだが、兄弟の関係性が丁寧に描かれていて、ついウルウル。けなげな弟ガト君の一生懸命さに惚れてしまいました。
ガトの恋のライバルが「野球の方が稼げるぜ」という台詞が唯一ベネズエラらしかったです。
各映画祭で賞をとっただけある見応えのある青春映画でした。2012.11

クルード ~アマゾンの原油流出パニック~ CRUDE (エクアドル)
ジョー・バーリンジャー監督
☆エクアドルのアマゾン川流域を開発したアメリカの大手石油会社シェブロン(旧TEXACO)は、油田開発の際に原油を垂れ流したまま、エクアドルの国営企業に権利を売り渡す。まもなく流域に住む原住民たちの健康被害が発覚。エクアドル人の弁護士は、環境団体と共に、石油会社に訴えを起こす。
「アマゾン・チェルノブイリ」と呼ばれた世界最大級の環境汚染と、それに対する訴訟に密着したドキュメンタリー映画である。
訴訟物は硬いので、正直苦手なのだが、この映画は、アマゾンで暮らす人々のインタビューや、苦労して弁護士になったエクアドル人の人柄にもスポットを当てているので、見やすい作品に仕上がっている。さらに、スティングの妻トゥルーディが設立した環境保護団体も支援しているので、華やかさもある。
2008年のポリス再結成南米ツアーの模様まで映し出される。
スティングはちらり、と出てくるだけで、わき役に徹しているのも好感度アップ!
主役はあくまで、現地の弁護士と、そこで暮らす人々、なのである。
原油の垂れ流しによる環境汚染、というテーマは、そのまま、今の日本が置かれている状況にも当てはまる。
原発事故による放射能の拡散によって、多くの住民が家を追われ、汚染による人体への影響を危惧せざるを得ないニッポン人にとって、アマゾン川の原住民の問題は他人事ではない。ぬるま湯に浸かっていた311前と後では、危機感がまったく違ってしまっている。便利で物にあふれた暮らしと、安心感のある暮らし、どちらを選ぶか、今、世界中の人々が選択を迫られている気がしてならない。2012.2

ROMERO (1989年・エルサルバドル)
ジョン・ダイガン監督、ラウル・ジュリア主演
☆1977年、サン・サルバドルの大司教に任命されたオスカル・ロメロは、消極的な言動から軍部や富裕層に利用されていたが、民衆のために戦う司教が暗殺されたことをきっかけに、強硬派へと変わっていく。
「20世紀の殉教者10人」の1人として有名らしいが、存在すら知らなかったので、興味深く見れた。映画の出来としては、物足りなかったのだが、ラウル・ジュリアが大化けしていたのには驚きました。2011.9

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