気まぐれCINEMAレビュー BackNumber
2006年
【サ行】
過去の「気まぐれCINEMAレビュー」をまとめました。満足度は★で、がっかり度は×で評価しました。
五十音順にタイトルが並んでいます。
データベースとしてご活用下さい。
【過去の年間BEST3】 BackNumber CINE LATINO (2007年〜 中南米映画 日本未公開版 2007年〜 【ア】【イ】【ウ】【エ】【オ】 【カ】【キ】【ク】【ケ】【コ】 【サ】【シ】【ジ】【ス】【セ】【ソ】 【タ】【チ】【ツ】【テ】【ト】 【ナ】【ニ】【ヌ】【ネ】【ノ】 【ハ】【ヒ】【フ】【ヘ】【ホ】 【マ】【ミ】【ム】【メ】【モ】 【ヤ】【ユ】【ヨ】 【ラ】【リ】【ル】【レ】【ロ】 【ワ】【タイトル不明】 1999〜2005年 【ア】【イ】【ウ】【エ】【オ】 【カ】【キ】【ク】【ケ】【コ】 【サ】【シ】【ス】【セ】【ソ】 【タ】【チ】【ツ】【テ】【ト】 【ナ】【ニ】【ヌ】【ネ】【ノ】 【ハ】【ヒ】【フ】【ヘ】【ホ】 【マ】【ミ】【ム】【メ】【モ】 【ヤ】【ユ】【ヨ】 【ラ】【リ】【ル】【レ】【ロ】 【ワ】【タイトル不明】 |
サムサッカー THUMBSUCKER
マイク・ミルズ監督、ルー・プッチ、ティルダ・スウィントン、ヴィンセント・ドノフリオ、ヴィンス・ヴォーン、キアヌ・リーヴス出演☆17歳の少年ジャスティンは、成績も風貌もぱっとせず、今でも親指を吸う癖が治らない。ところが、学校で多動障害と診断され、薬を飲み始めると、たちまち頭の回転が速くなり、弁論部の花形として活躍を始める。
両親は、冴えなかった息子の変貌に目を細めるが、ジャスティンは薬依存になっていく。
能力があるのに自信がない少年が、何かをきっかけに新しい道を見つけていく定番の青春ストーリー。小品ではあるが、両親、教師、弟、女の子、といった少年の周りをとりまく人々の心の揺れも丁寧に描かれていて好感が持てた。
親指吸い、髪の毛抜き、夜尿症…。子供の頃の恥ずかしい癖が成長後も治らないことはよくあるのだが、本人にとっては大きな問題だし、それがコンプレックスの原因だったりもする。青春時代ってホント難しい。それでも、今思い出すと、些細なことでウジウジしていた10代は、嫌いじゃないし、いろいろな経験もできたし、もう一度、やり直してみたい人生の1ページでもある。
ジャスティンの苦悩を、自分の過去と照らし合わせ、苦笑いしながら楽しめた。2007.6
サプライズ SURPRISE PARTY
キム・ジンソン監督、シン・ハギュン、イ・ヨウォン出演☆ドジな美容師は親友から、彼氏を空港へ迎えに行き、時間稼ぎをしてほしいと頼まれる。
B級ノリのお決まりコメディ。ほぼ予想どおりではあったが、シン・ハギュンの演技、もうちょっと期待していたんだが…。彼はやっぱり「復讐者〜」「トンマッコル〜」のようなヒトクセある役がいいよなあ。かわいい話で嫌いじゃないけど、あまりにもありきたりすぎる展開に失笑してしまいました。2007.4
参考:脇役たち(シン・ハギュン)
最後の恋のはじめ方 HITCH
アンディ・テナント監督、ウィル・スミス、エヴァ・メンデス、ケヴィン・ジェームズ出演☆恋愛ベタな男たちに女性を落とす方法を教えるデート・ドクターのヒッチ。彼は、ドン臭い会計士アルバートから、有名セレブと付き合いたい、との依頼を受ける。彼の真剣な思いにほだされたヒッチは、アルバートにかっこよく振舞う方法を伝授する。一方、ヒッチは、ゴシップ誌の女性記者と知り合う。
フツーのラブコメ。アルバート役のケヴィン・ジェームズ、なかなかよかったが、ほかのキャストは…。軽く見られていいけどね。2006.8 参考CINEMA:「アンナと王様」
サマリア SAMARIA
キム・ギドク監督、クァク・チミン、ソ・ミンジョン(ハン・ヨルム)、イ・オル出演
レビューはCINEMAの監督たち(K・ギドク)へ
さよなら、さよならハリウッド HOLLYWOOD ENDING ★
ウディ・アレン監督、ウディ・アレン、ティア・レオーニ、トリート・ウィリアムズ、マーク・ライデル出演☆過去の栄光にしがみつく映画監督ヴァルは、元妻がプロデュースするハリウッド映画の監督を引き受ける。ところが、突然、ストレスから目が見えなくなってしまった。ヴァルは、マネージャーにだけ事実を伝え、目が見えないことを隠して撮影を続ける。
単純明快で軽妙なウディ・アレン映画に久々お会いできてうれしかった。神経症で愚痴ばっかり言ってるダメ男を演じたアレンは、細かいこと考えずに笑えたし、なによりも台詞が最高に楽しかった。なんでもない会話なんだけど、やりとりが絶妙。
かっこ悪くてダメダメ男なんだけど、接しているうちになぜか情が沸いてくる。母性をくすぐられる、というのでしょうか。映画業界の裏話も盛り込み、風刺もほどほどにきいていて、これぞコメディ映画のお手本、といえる作品だった。
マネージャー役のアルを演じた役者、マーク・ライデルは、メル・ギブソンの「リバー」やヘンリー・フォンダの「黄昏」を撮った監督。大物監督がちょい役やってるのもアレン作品ならでは。2006.3.21
参考CINEMA:「スコルピオンの恋まじない」「セレブリティ」「おいしい生活」「ギター弾きの恋」「マッチポイント」
サユリ MEMOIRS OF A GEISHA ××
ロブ・マーシャル監督、スピルバーグ製作、チャン・ツィイー、渡辺謙、ミシェル・ヨー、役所広司、桃井かおり、工藤夕貴、コン・リー出演☆9歳で置屋に売られ、売れっ子芸者・初桃からいじめられていた少女・千代は、ある日、芸者を連れたやさしい紳士に声を掛けられる。「芸者になりたい」という気持ちが芽生えた千代は、初桃のライバル・豆葉につき、やがて、京都一の芸者へと上りつめる。
長すぎて退屈…、というか終始違和感。アメリカ映画だから台詞が英語なのは譲るけど、挨拶とかのちょっとした台詞はなぜに日本語?どちらかに統一しないと変だよー、って思わないのかしら。そういう雑なところが、日本文化をなめてる気がして腹がたった。
日本の花街という舞台を借りただけのアメリカン・ドリーム映画。
よかったところは…、ミシェル・ヨーの着物の着こなし、所作はなかなかでした。
&チャン・イーモウ監督の元カノVS今カノ(?もう終わってる?)対決は、生々しくて見応えあり。もっとはげしく髪つかみ合ったりすればよかったのに。ちょっと「大奥」っぽいけど。&渡辺謙と工藤夕貴の英語がGOOD。そんなとこです。日本をなめんなスピルバーグ! 本年最高のがっかり賞 2006.12 参考CINEMA:「シカゴ」
三年身籠る THREE YEAR DELIVERY
唯野未歩子監督、中島知子、西島秀俊、木内みどり、奥田恵梨華、塩見三省出演☆冬子は現在、妊娠9ヶ月。女系家族で育った冬子は、母や祖母から「絶対女の子よ」と言われているが、子供が生まれるという実感を持てないでいる。そうこうしているうちに、妊娠18ヶ月目に突入。だが、お腹の子は生まれてこない。
お腹の大きな冬子が道を延々と掃き続けるシーンから映画が始まる。それがなぜか一番印象に残っている。ボーっとしていて何考えてるのかつかめない冬子の唯一本心は、お父さん宛に書かれた手紙だけ。自己表現の苦手な冬子は、自分と似たタイプではないのだが感情移入できた。逆に、自由に生きてるお騒がせ女の妹にはうんざり。あのしゃべり方も生理的に受け付けない(というか女優が苦手)。もっとコメディ色が強いかと思ったけど、不思議な雰囲気のある映画だった。2006.9
しあわせな孤独 OPEN HEARTS
スザンネ・ビエー監督、ソニア・リクター、マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・カース出演☆若い女性セシリは、目の前で恋人ヨアヒムの交通事故に遭遇する。一命は取り留めたものの全身不随になったヨアヒムは、ショックからセシリを遠ざける。ヨアヒムを轢いた女性の夫ニルスは、償いの気持ちからセシリを慰めていたが、まもなく二人はただならぬ関係になる。
恋人に冷たくされ、絶望感からほかの男に救いを求める女の気持ちは痛いほどよくわかる。でも、それって決して美しいものじゃないし、心の隙間をうめるためだけの恋愛だから、惨めさが漂っていて、見ていてつらくなった。ニルスが若さにおぼれるのも、わからなくはないが、やっぱり男はあそこでぐっと我慢しなきゃー、と思うのは私が女だからでしょう。正直、苦手な部類の話なんだけど、ラストは私好み。セシリが、一人で頑張ろう、と思ってくれたことだけが救いだった。2006.10
しあわせの法則 LAUREL CANYON
リサ・チョロデンコ監督、フランシス・マクドーマンド、クリスチャン・ベイル、ケイト・ベッキンセール、ナターシャ・マケルホーン、アレッサンドロ・ニヴォラ出演☆自由に生きる音楽プロデューサーの母親に嫌悪感を抱く息子とその恋人が、母と同居をするはめに。優等生の恋人は次第にミュージシャンの奔放な生活に感化され、息子は研修中の病院でイスラエル人の女性に惹かれてしまう。
ハーバード大医学部卒の超エリートという保守的な若者と、ヒッピーの母親の対立、というのが現代風で面白かった。フランシス・マクドーマンドのヒッピー役始めてみたけど、さすが芸達者。なりきってました。息子とその恋人にはまだまだ波乱がありそう、という含みを持たせたエンディングもリアルで好感がもてた。2006.1.25
死ぬまでにしたい10のこと MY LIFE WITHOUT ME
イザベル・コイシェ監督、サラ・ポーリー、スコット・スピードマン、デボラ・ハリー、マーク・ラファロ、アマンダ・プラマー出演☆裕福とはいえないながらも愛する家族に囲まれて暮らす23歳のアンが余命2ヶ月の宣告を受けた。アンは病を誰にも告げず、死ぬまでにしたいことを書き出していく。アンは、子供達に毎日愛してると言い、子供たちを愛してくれそうな新しい母親候補を探し、そして最後の恋をする。
自分がもしアンだったら、と想像してしまった。彼女のようにわずかな人生を強い意志で生きることはできるだろうか…。
たぶん無理だろう。取り乱して情緒不安定になって、誰かに救いを求めようとするに違いない。アンの最後の人生はあくまで理想像。拒食症の同僚に対してイライラをぶつけるシーンに、唯一の本音が隠されていた気がする。アマンダ・プラマーのデブぶりにびっくり。さすが名女優。アンの恋人になるマーク・ラファロも、見込んだとおり魅力的な俳優です。2006.3 参考PAGE:脇役たち(マーク・ラファロ) 参考CINEMA:「あなたに言えなかったこと」、「あなたになら言える秘密のこと」
至福のとき 幸福時光
チャン・イーモウ監督、チャオ・ベンシャン、ドン・ジェ出演☆工場が閉鎖され失業中の中年男チャオは、自分は旅館の社長だとウソをつき見合いをする。見合い相手は、前の夫の連れ子で盲目の少女を疎ましく思っていて、チャオに、マッサージ師として旅館で雇ってくれないか、と持ちかける。チャオは結婚のために、元同僚らとともに廃工場を改築し、マッサージ室を作りあげるが…。
イーモウ監督初のコメディ? 市井の人々のオトボケ・キャラが微笑ましかった。こういうリアリティのある小品も作れるのね。さすが名監督!
根っからのホラ吹き男チャオ、見合い相手のデブなおばちゃん、チャオの同僚たち。みんな癖モノだけど味があって憎めない。盲目の少女は、デブのおばちゃんに苛められてかわいそうではあるんだけど、なかなかどうして。チャオの人の良さを察知して、うまく連れ出してもらうしたたかさも持ち合わせている。
チャオたちのうそに付き合いながら、人の心の温かさを実感していく少女の表情の変化が、自然に描かれていた。彼女の演技と監督の演出に脱帽。 2006.8 参考CINEMA:「HERO」「ラバーズ」「初恋のきた道」
シリアナ SYRIANA
スティーヴン・ギャガン監督、ジョージ・クルーニー製作総指揮・出演、マット・デイモン、クリス・クーパー、ジェフリー・ライト、クリストファー・プラマー出演☆中東の石油利権を巡る血生臭い裏取引を、CIA工作員、アメリカ政府、アラブの王族、石油会社、油田労働者など、さまざまな立場の視点から描いた社会派サスペンス。
産油国の若き後継者である第一王子ナシールは、アメリカの巨大企業コネックス社との癒着関係を打ち切り、中国企業と手を結ぼうとする。それを知ったアメリカ側は、第二王子に近づき裏工作を画策する。
一方、引退を決意したCIA工作員のボブは、政府から最後の仕事を命じられる。それは、若き理想主義者である第一王子ナシールの暗殺だった。
これは1エピソードにすぎず、実際のストーリーはとても複雑。
はじめの30分は、必死で字幕読んで追いつこうとしたけど、人間関係もストーリーもチンプンカンプンで、正直まいった。ただ、状況が一気に緊迫してくる後半は見ごたえあり。
アラブは旅したことがないし、詳しくないので、あくまで想像でしかないのだが、産油国は表面的には潤って見えるけど、実際はアメリカやヨーロッパや日本に食い物にされ、一部の権力者だけが私腹を肥やしているんだろう。親会社の都合で突然解雇された若い油田労働者が、イスラム過激派の教えに傾倒していくのも無理もないことだと思った。
自分達の意見を堂々と言ったり、みんなで話しあったり、選挙したり…。
そういう民主的な国家を作れば、不満だらけの労働者も、自分の意志で動く意識に目覚めるだろうし、それが、結果的に過激なテロを防ぐことにもなるだろうに…。
新しい国家を作ろうとした第一王子ナシールの熱意は空回りし、救われない結末へと向かっていく。
自分は理想主義者ではないつもりだが、やはり「正義は負ける」「悪い奴ほど生き延びる」ような世の中に対しては憤りを覚えた。
「腐敗は我々に安定と豊かさを与えてくれる」とうそぶく弁護士の言葉は虫ずが走ったが、でも、それが真実なんだろう。やりきれない…。
原作は、元CIA工作員ロバート・ベアの著書「CIAは何をしていた?」。
この映画が事実だとしたら鳥肌モノの恐ろしさだ。世界の悪事はアメリカがすべて裏で手を引いてるんじゃないか、と疑いを持ってしまった。2006.3.8
シン・シティ SIN CITY
フランク・ミラー監督、ブルース・ウィリス、ミッキー・ローク、クライヴ・オーウェン、ジェシカ・アルバ、ベニチオ・デル・トロ、イライジャ・ウッド、ブリタニー・マーフィ出演☆仮出所中のマーヴが一夜を共にした娼婦が殺された。マーヴは復讐のために、犯人を追う。一方、少女連続殺人犯を追う刑事ハーティガンは、相棒に裏切られ、無実の罪で投獄される。
劇画のようなモノクロ映像に赤や黄色など、鮮烈な色を重ねたスタイリッシュな映像がかっこいい。この映画は映画館で見たほうが楽しめただろうなあ、と、ちょっと後悔。タランティーノやロドリゲスが楽しんで作った感じが伝わってきた。ダサいけど味がある俳優クライヴ・オーウェンは、最近のお気に入りです。2007.3
親切なクムジャさん SYMPATHY FOR LADY VENGEANCE
パク・チャヌク監督、イ・ヨンエ、チェ・ミンシク、クォン・イェヨン出演☆幼児誘拐殺人犯に子供を誘拐され、濡れ衣を着せられたクムジャさんは、13年後、自分を陥れた殺人鬼への復讐を開始する。
辛く悲しい女の運命をじっとり暗く描いているのかと思ったら、演出も映像もコミカルで楽しめた。クムジャさんは、天使なのか、悪魔なのか…。被害者の代わりに復讐してくれるという意味では天使だけど、無表情で人を殴ったり騙したりする冷酷さは悪魔そのもの。イヨンエ、いい表情してました。
オールバックにして背広着たチェ・ミンシクは、かぶり物時代の姉歯にそっくり。そればかりが気になって小悪党にしか見えず。
なぜ殺人犯はクムジャさんの子供を生かしておいたのか、など、解せない部分もあったけど、赤を基調にしたポップな映像、テンポのよさが気にいった。衝撃度は低いけど、復讐3部作のなかではいちばん明るくて見やすい作品だった。2006.6
参考CINEMA「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」「JSA」
シンデレラマン CINDERELLA MAN
ロン・ハワード監督、ラッセル・クロウ、レネー・ゼルウィガー、ポール・ジアマッティ、パディ・コンシダイン出演☆大恐慌時代のどん底生活からカムバックした伝説のボクサー、ジム・ブラドックの半生を描いたヒューマン・ストーリー。
1930年代のはじめは、アメリカのもっとも辛かった時期なのだろう。禁酒法の頃ってよく映画の舞台になるんだけど、アメリカはあの大恐慌を経て、どうやって世界大戦まで突き進み、さらに、物にあふれる豊かな50年代を向かえたのか。歴史ドキュメンタリーが見たくなった。
ボクサーの栄光と挫折、そして家族愛。もう想像つきますね。想像どおりの感動映画です。さすがにロン・ハワード、泣かせどころを心得てます。けど、ありきたりだし、お行儀よすぎ。ジアマッティもよかったけどバート・ヤングにはかなわない。ボクサーものは、やっぱり「ロッキー」が一番。2006.4
参考CINEMA:「エドTV」「ビューティフル・マインド」「ダヴィンチ・コード」
ジンガ GINGA (2005年・ブラジル)
ハンク・レヴィン監督、フェルナンド・メイレレス製作☆リオの貧民街で暮らすサッカー小僧、サンパウロの裕福な家庭で育ったサッカー小僧、ビーチバレーの足版のようなフット・バレー選手の少女などなど、夢を持って生きるブラジルの子供達の姿を追ったスポーツ・ドキュメンタリー。「ジンガ」とは、ブラジルサッカー特有の身体的リズムのことを言うらしい。子供たちの華麗な足技には圧倒されっぱなし。何よりも、楽しそうにプレイする子供たちの笑顔が最高だ。2007.3
ゲイリー・ウィニック監督、ジェニファー・ガーナー、マーク・ラファロ出演☆冴えない少女13歳のジェナは、ある日、早く大人になりたいと願って眠りにつくと、翌朝、30歳になってしまう。ファッション誌の敏腕編集者で超リッチな生活を送る自分の姿に戸惑いを隠せないシェナは、中学時代のボーイフレンドを訪ねる。かわいい30歳をジェニファーがキュートに演じていて好感がもてた。そして、元ボーイフレンド役のマーク・ラファロは、期待どおり!二枚目じゃないけど何ともいえない魅力がある。女心をくすぐるオーラが出てるのでしょうか。たぶんシェナが感じたように一緒にいてほっとできるタイプ、なのかも。参考:脇役たち(マーク・ラファロ)2007.8
16ブロック 16 BLOCKS
リチャード・ドナー監督、ブルース・ウィリス、モス・デフ、デヴィッド・モース出演☆NYの刑事ジャックは、裁判の証人エディを16ブロック先の裁判所まで護送する仕事を頼まれる。ところがエディは、同僚刑事の悪事を暴く重要証人であったため、二人は警察から命を狙われる。
ブルース・ウィリス主演の刑事アクション。単純な話ではあるのだが、これがけっこう楽しめた。落ちぶれた刑事ジャックのヨレヨレ感、正義と保身の間で揺れるジャック、ドジでお人よしの黒人エディ、そして、ただただしつこい善人面の悪徳刑事。キャラがそれぞれ味があるし、結末もホロリとさせられ…。しっかりと中身のあるアクション映画でした。2007.5
柔道龍虎房 THROW DOWN
ジョニー・トー監督、ルイス・クー、アーロン・クォック、チェリー・イン、レオン・カーフェイ出演☆落ちぶれた元柔道家ポウのもとに、柔道の勝負で金儲けをしている熱血格闘家トニーが現れた。さらに、歌手になる夢を持つ女も現れ、3人はバンドを組むことに…。なんだかハチャメチャでよくわからないんだけど嫌いじゃない。トー監督ならではのスピード感、個性的なカット割は、ある意味芸術的でもある。
「姿三四郎」の歌ばっかり歌ってる頭のちょっと足りないあんちゃんのキャラがケッサクです。
闘うシーンは、日本の柔道というよりは、カンフー交じりのエセ柔道。そこがまた香港映画らしくて面白いですが。トー監督は、アートな作風で売ってるカーウァイ監督と対極にあるようだけど、どちらも自分のスタイルをしっかりと持ってるところがよいですね〜。やっぱり香港はオモロイわ。2007.5
参考CINEMA:「ザ・ミッション 非情の掟」「ブレイキング・ニュース」「PTU」
13の月
池内博之監督、柏原崇、大塚寧々、津田寛治、斉藤陽一郎、ミッキーカーチス、吉沢京子ほか出演☆会社をやめ、田舎に戻った男は、学生時代に愛していた女性と再会。再び気持ちを募らせるが、彼女には婚約者がいた。
俳優・池内博之の初監督作。質的には少々青臭さを感じたが、ピュアな部分は伝わってきた。おそらく池内監督はロマンチストなのでしょう。1年を28日で区切ると、13ヶ月と空白の1日ができる、という話は興味深かった。暦の不思議と、せつないラブストーリーを絡めているのはわかるのだが、ちょっとわかりづらいのが残念。2007.2
ジェイ・チョウを探して HiddenTrack ★
オーブリー・ラム監督、ポポ、ショーン・ユー、ダニエル・ウー、イーソン・チャン、デニス・ホー、ジェイ・チョウ出演☆中国・武漢に住むボボは、大好きな彼から別れを告げられ傷心の毎日を送っていた。ボボは、香港の姉のもとへ身を寄せ、彼との思い出の曲を探し始める。ジェイ・チョウが歌っている、とだけしかわからないボボは、中古レコード屋を訪ねる。その店の店長も、15年連れ添った愛犬を亡くしたばかりで、傷心の日々を送っていた。
「アメリ」と「恋する惑星」を足して2で割ったようなポップなガール・ムービー。主演のボボがキュートで、彼女をとりまく男たちも個性的。ショーン・ユーは、ほんとにあのイケメンのショーン?と、疑いたくなるぐらい、冴えない店長役を好演していた。
&警官役のダニエル・ウーは、見かけは完璧なんだけどマザコンで、バイクにまたがり風を切りながらテレサ・テンを聴く男、という設定。
ダニエルもショーンも、かっこ悪い男を演じるのを楽しんでる感じが画面から伝わってきて、ワクワクしてしまった。
時折出てくるポップなアニメや、ボボの部屋の小物もオシャレで、映画のテイストにぴったり。(ダニエルが「四大天王」でアニメを使ったのはこの映画の影響ありと見た)
軽いアイドル映画かと思いきや、ボボの切ない気持ちも丁寧に描かれているし、かなりいい感じ。「アメリ」が好きな人なら、この世界、きっと楽しんでもらえるはず。
ちなみにジェイ・チョウは、「欲望の翼」のトニー・レオンに毛が生えた程度しか出てませんのであしからず。2006.11
ジェリー GERRY
ガス・ヴァン・サント監督、マット・デイモン、ケイシー・アフレック出演☆ソルトレイク・シティの砂漠で、道に迷って抜け出せなくなった若者2人の極限状態をヴァン・サント監督独特のカメラアングルでドキュメンタリーっぽく撮影した異色作。
だだっ広い砂漠を二人が黙々と歩く姿を背中から延々と撮り続けるだけの映画。見ていて苦痛だったけど、なぜか目が離せなかった。「エレファント」の原点ともいえるだろう。 タイトルのジュリーとか、二人が何かヘマをしたときに、呼び合う造語のこと。
こういう実験的映画をメジャーな監督&役者が作る、というところにアメリカ映画の懐の深さを感じた。2006.3.5 参考CINEMA::「エレファント」「グッドウィル・ハンティング」「小説家を見つけたら」
地獄の逃避行 BADLANDS 1973年 95分
テレンス・マリック監督、マーティン・シーン、シシー・スペイセク、ウォーレン・オーツ出演☆1958年のネブラスカ。清掃員のキットは15歳の少女ホリーと親しくなり、逢瀬を重ねる。だが、ホリーの父から交際を反対されたキットは父親を殺害し、ホリーを連れて逃亡。二人は逃亡先で次々に殺人を犯し、マスコミに騒がれるようになる。
ジェームス・ディーンと自分の姿を重ね合わせ、ヒーロー気分で自分に酔いしれるキット。その姿を傍観しながらも、黙って着いて行く魔性の少女ホリー。
広大な荒地を、孤独な二人が、目的もなく突っ走っていく光景は幻想的で、彼ら二人だけ別世界にいるよう。
テレンス・マリックという監督は、デビュー当時から風景を詩的に切り取る天才だったんだなあ。このピュアな世界感を貫き続けているテレンス・マリックはやっぱりすごい監督です。
この映画、テレビ画面じゃなくて、スクリーンでもう1度見てみたい。余談だが、テレンス作品の美術監督ジャック・フィスクは、実生活ではシシーの夫だそうです。「キャリー」ではじめて知ったけど、シシーのキャリアにも脱帽です。2007.1
参考CINEMA:「ニュー・ワールド」「シン・レッド・ライン」
12人のパパ2 CHEAPER BY THE DOZEN 2
アダム・シャンクマン監督、スティーヴ・マーティン、ユージン・レヴィ、ボニー・ハント、ヒラリー・ダフ出演☆12人の子供を持つ子離れできない父親が、子供達を誘って友人の別荘へ。隣には金持ちで子だくさんのライバルが住んでいて、二人は子供をめぐってバトルを繰り広げる。
スティーヴ・マーティンお得意のベタなオバカ・コメディ。ライバルの父親役のユージン・レヴィとの対決はケッサクだったが、私的には、もうちょっと毒が欲しいかなあ。まあ、ファミリー向けコメディなので仕方ないか。エロイ人妻に興奮する犬クンがかわいかった。2006.5
脇役たち(ユージン・レヴィ)
純愛譜 ASAKO IN RUBY SHOES
イ・ジェヨン監督、イ・ジョンジェ、橘実里、キム・ミニ、大杉漣、余貴美子、粟田麗、ダンカン出演☆予備校生・彩は日付変更線の上で自殺するために、ネットの覗き見サイトに出演する。一方、韓国では、毎日やる気なく暮らしている公務員ウィンが、赤毛の女につきまとう。ウィンは彼女に似た女性をネット上で探し、彩のサイトに夢中になる。
東京とソウル。舞台は違っても、人生に希望を抱けない人間の思考は一緒。「かったるさ」が画面から伝わってきて、なかなか味のある映画だった。
大注目のイ・ジョンジェは、だらしなくてやる気のない男を好演。役によって顔つき変わるのにびっくり。韓国の若い役者ってうまい人多いよなあ。橘実里もはじめてみる顔だけど、魅力的だったし、ペットボトルを音たてて飲む友人役の女優(たぶん粟田麗?ひさしぶりに聞く名前)も存在感あり。もっと日韓合作映画、いろいろ見てみたい。2006.6
【ス su】
スール/その先は…愛 SUR (1988年・アルゼンチン・フランス)
フェルナンド・E・ソラナス監督、ミゲル・アンヘル・ソラ、ススー・ペコラーロ出演☆政治犯として五年間投獄されていた男が出所した。男は街をさまよい歩きながら、かつての仲間たちの亡霊に遭遇。一方、彼の帰りを待つ妻にはある秘密があった…。
労働運動に参加したことで仲間を殺され、自らも投獄された男が、自分の過去を振り返りながら新しい一歩を踏み出すまでを、独創的な映像と音楽で描いたアート作品。
国を負われ8年間の亡命を経て祖国に戻ったというソラナス監督の復帰作なだけに、監督の気持ちがいっぱい詰め込まれている。正直、見やすい映画ではないが、現実と向き合おうとしながらも、過去を振り替えざるを得ない主人公の気持ちは胸に響く。青みがかった幻想的な映像とバックに流れるタンゴの旋律は秀逸。
ステイト・オブ・ウォー ILUMINADOS POR EL FUEGO (2005年・アルゼンチン)
トリスタン・バウアー監督、ガストン・パウルス、パブロ・リバ、ヴィルジニア・イノセンティ、シザー・アルバラシン出演☆1982年、イギリスとの領土を巡る戦いが、マルビナス島(フォークランド島)で勃発した。最前線へ送られたアルゼンチン軍の若い兵士、エステバンたちは、厳しい上司から叱責されながら、友情を深めていく。まもなく戦況が悪化。アルゼンチン軍は、イギリス軍から一斉攻撃を受ける。
戦場に狩り出されたアルゼンチンの若者の友情と別れをストレートに描いた戦争映画。島という設定や壮絶な戦いのシーンは、日本軍を描いた「硫黄島からの手紙」と通じるものがある。国は違っても、戦争によって受ける苦しみ、痛みは同じである。
戦争後遺症に苦しむ元兵士の自殺者が後を絶たないという社会問題にもメスを入れた意欲作である。2007.2
スウェー★ニョ SUENO
レニー・チャバリア監督、ジョン・レグイザモ、アナ・クラウディア・タランコン、エリザベス・ペーニャ出演☆メキシコ人の若者アントニオは、隣に越してきたシングル・マザー、ミラベラと知り合い、彼女の歌にほれ込む。二人は、スペイン語で歌うバンドを結成し、コンテストにのぞむ。
舞台はLAなのだが、まるでラテン映画を見ているよう。ラテン系のコミューンで開かれるコンテスト、スペイン語で歌うバンド、台詞も、英語とスペイン語が混ざっている。アメリカには、多くのラテン系の人たちが移り住んでいるということだろう。
内容はシンプルなサクセス・ストーリーで少々退屈だったが、ラテン音楽が楽しめたので良しとしましょう。2007.6
SPY リー・チョルジン/北朝鮮から来た男 THE SPY (韓国)
チャン・ジン監督、ユ・オソン、パク・イヌアン、パク・チニ、チョン・ヨンスク、シン・ハギュン出演☆北から韓国に潜入したスパイは、ソウルに入る途中でタクシー強盗にあい、装備を盗まれてしまう。
「チング」オソンとシン・ハギュンが出てるから見てみたが、ブラック・コメディと呼ぶにははじけてないし、社会派といえるほどテーマ性も感じられず。残念。2007.1 参考:脇役たち(シン・ハギュン)
太極拳の達人・朱は、故郷を離れ、ニューヨークで暮らす息子夫婦のもとへ身を寄せる。英語も分からず、生活になじめない朱の唯一の気晴らしは、中華街で太極拳を教えることだ。アメリカ人の妻と昔気質の父の間で板挟みになった息子は、父に結婚相手を探して別居を促そうと画策する。
西洋文化や若い世代とのギャップに戸惑いながらも、息子のお荷物になることを嫌い、自力で人生を切り開いていこうとする老人の姿が微笑ましく描かれています。
「推手」とは、太極拳の組み手の一つで、相手の力を利用する戦法のこと。強面のギャングを朱老人が推手を使って撃退するシーンは圧巻です。
老後をどう生きるか思い悩む人たちに元気を与えるオススメの一本です。(A新聞 [週末のこの1本] 2006.4.1 掲載コラム)参考CINEMA:「ブロークバック・マウンテン」「グリーン・デスティニー」
西瓜 THE WAYWARD CLOUD
ツァイ・ミンリャン監督、チェン・シャンチー、リー・カンション、夜桜すもも出演☆舞台は水不足の台湾。博物館に勤める若い女は、水不足を西瓜ジュースで解消する毎日を送っている。女は、公園で知り合った若い男と親しくなるが、彼は同じマンションでアダルトビデオを撮影しているAV男優だった。
いきなり、どエロいスイカプレーで始まり、目が点…。ユニークな発想だわあ、と感心したんだけど、AV撮影シーンがあまりに多すぎて、面食らってしまった。
「性」って快楽がすべてなの?もっと神聖なものなんじゃないの??? 男と女の違いもあるかもしれないけど、一つの生命を生み出すことのできる営みなんだからさあ。
数え切れないぐらいの映画を見てきたけど、こんなにエロばっかな映画は初めて。
もっと笑い飛ばせる雰囲気で見れたら違った印象を持てたんだろうけど、会場はオジサンがやたらと多くて、なんかいやらしい雰囲気が漂っていて、身の置き場がなくて、居心地が悪かった。エロビデオを10本立て続けにみた気分で、どっと疲れた。
エロの合間に、やたらと派手でコミカルなミュージカルが入るんだけど、箸休め程度にしか思えず。
ただ、ツァイ・ミンリャンはやっぱりただ者でないことだけは確信した。セリフが二言三言しかないのに、飽きずに見せる構成力には脱帽。
しかし、芸術とエロの境目は、どこにあるのでしょうか。 すごい映画ではあるけど、私にはエロビデオ撮影シーンばかりが頭に残ってしまいました。
リー・カンションが阪神の藤本そっくり!藤本見るたびにこの映画、思い出しそう。2006.9
スウィート・シックスティーン SWEET SIXTEEN
ケン・ローチ監督、マーティン・コムストン、ミッシェル・クルター、アンマリー・フルトン、ウィリアム・ルアン出演☆貧民街に住む少年リアムは、服役中の母と一緒に湖畔で暮らしたいと願い、家の資金を稼ぐため、売人からヤクを盗んで売りさばく。
悪賢くてヤクザにも一目置かれるリアムなんだが、母親に関してだけは、唯一冷静になれない。愚かな母でも、盲目的に愛そうとする姿に、15歳という若さがにじみ出ていて、痛々しかった。
母親に殺された綾香ちゃんも、バカな母親を一生懸命かばって笑顔を作っていたという。愛に飢えているがゆえの盲目愛。なんて切ない響きなのでしょうか。
不良少年を描いた映画は「大人はわかってくれない」をはじめとして、さまざま作られいるけど、この映画も、少年の心理をうまく描いた秀作だ。
ただ、ケン・ローチ作品って、いつもユーモアがないのがちょっとなあ。リアムの親友ピンボールをもう少し笑えるキャラにしてくれたら、もっとよかったのにー。と、注文つけたくなってしまう。きっと、監督がとーっても真面目なのでしょう。2006.7
参考CINEMA:「やさしくキスをして」「麦の穂をゆらす風」「明日へのチケット」
スカーレットレター THE SCARLET LETTER
ピョン・ヒョク監督、ハン・ソッキュ、イ・ウンジュ、ソン・ヒョナ、オム・ジウォン 出演☆写真館の主人が殺された。担当刑事は妻に疑いを向けながらも、彼女の不思議な魅力の虜になる。一方、清純派の妻とジャズ歌手の愛人、どちらからも妊娠を告げられた刑事は、女たちの間で苦悩する。
女3人がみんな魅力的に描かれていてしかもエロい。韓国映画特有のグロいシーンもたっぷりあって、かなりねちっこい。でも、それがいやらしく感じないし、映像も綺麗。女の人にぜひ見てほしい作品だ。
ただ残念なのは、主演のハン・ソッキュ。実力派俳優なのは認めるんだけど、遊び人の役は正直あわなかった。それと、愛人も妻も、いい家に住みすぎ。なんでジャズ歌手がこんな贅沢してるの?誰かパトロンがいるの?などと、余計なこと考えてしまった。
等身大にしろ、とまでは言わないけど、刑事の妻と愛人がセレブっていうのが、違和感あり。2006.4
スクラップ・ヘブン
李相日監督、加瀬亮、オダギリ ジョー、栗山千明、光石研、柄本明ほか出演☆刑事志望の警察官シンゴが乗ったバスが、拳銃を持った男にハイジャックされた。清掃員のテツは、犯人に食って掛かり、拳銃で撃たれてしまうが、シンゴは何もすることが出来ない。
3ヵ月後、そんな二人が再会。テツはシンゴに復讐請負のバイトを持ちかける。
甘チャン警官シンゴと、世の中に希望を見出せないテツ。二人のコンビがGOOD。ジョーの危ない演技もよかったけど、加瀬亮の惨めったらしい演技が最高だった。ただし、ストーリーは、とくに斬新さは感じられず。2006.8
ステップフォード・ワイフ THE STEPFORD WIVES ★
フランク・オズ監督、アイラ・レヴィン原作、ニコール・キッドマン、マシュー・ブロデリック、ベット・ミドラー、グレン・クローズ、クリストファー・ウォーケン出演☆敏腕TVプロデューサーのジョアンナは、仕事で失敗をしたのをきっかけに、郊外の住宅地ステップフォードに移り住む。そこでは、女たちはすべて男に従順な妻であり、男たちは毎日ゲームを楽しんでいる。一見、理想郷のようだが、ジョアンナは操り人形のような女たちに違和感を覚える。
女たちが男のいいなりになるようにロボット改造されているのは、はじめからわかってるんだけど、誰が何のために、という種明かしが面白かった。
こういう風刺のきいたSFっぽい映画は大好きだ。エリート妻を持った男の苦悩、嫉妬もわからなくはないけど、いまどき、男のいわれるままに黙ってる女なんていませんよ。2006.4 参考CINEMA:「イン&アウト」
スタンドアップ NORTH COUNTRY
ニキ・カーロ監督、シャーリーズ・セロン、フランシス・マクドーマンド、ショーン・ビーン、ウディ・ハレルソン出演☆二人の子供を抱え、生活が苦しいジョージーは、故郷に戻り、給料のいい炭鉱で働きはじめる。しかし、男社会の炭鉱では、セクハラは日常茶飯事。ジョージーが上司に訴えると、男たちは陰湿な嫌がらせをはじめる。
女同士のいじめはうっとおしくて嫌だけど、セクハラは身の危険を感じるから、女にとっては耐え難い苦痛。この気持ちは、殿方にはわからないでしょう。一度、女に生まれてみたい、という男性も多いけど、そういう人は、女になって男だらけの満員電車に毎日乗ってみてクダサイ。
実話だそうですが、ジョージーの勇気にはホント頭が下がります。それを美人女優がやるから、またかっこいい!
難病にかかった妻を支えるショーン・ビーンが演じたような男性、どこかにいないかなあ。理想の夫、理想の妻は、永遠に分かり合うことのない男と女の幻にすぎないのでしょうか? 参考CINEMA:「クジラの島の少女」
スパン SPUN
ジョナス・アカーランド監督、ジェイソン・シュワルツマン、ミッキー・ローク、ブリタニー・マーフィ出演☆ヤク中の若者がひょんなことから麻薬密造人の運転手をすることになり振り回される「私ラリってます〜」映画。エログロ・アニメ、ヤクやる度にアップになる血走った目、等、MTVノリの映像が面白い。ジェイソン・シュワルツマンのダメ男役、すっかり板についてます。従兄弟のニコラスみたいに、つまんない大作にばっかり出るようにならないでね〜。
ヤク中ではないけどアル中気味なので、こういうラリラリ映画は大好き。普通っぽい顔してやること怖すぎジェイソン。密造人のオヤジがミッキー・ロークだとはまったく気づかず。昔みた「バーフライ」っていうアル中映画を思い出しました。2006.6
スポッツウッド・クラブ SPOTSWOOD
マーク・ジョフィ監督、アンソニー・ホプキンス、トニ・コレット、ベン・メンデルソーン、ラッセル・クロウ出演☆経営難のモカシン工場に、経営コンサルタントのウォルスが派遣される。古ぼけた工場、ダサい商品、働く人々はおしゃべりばかりしている。ウォルスは呆れながらも、お人よしの従業員のペースに次第にはまっていく。一方、コンサルタントの同僚が大規模なリストラを敢行したため、ウォルスも執拗な嫌がらせを受けるようになる。1991年の作品。みんな若ーい。トニ・コレット目当てで見たんだけど、昔から名わき役の片鱗あり。主人公の地味な同僚役を好演してました。ラッセル・クロウは野心家の嫌な奴役。善人役よりこっちのほうがあってるかも。
ちょっと間抜けな善人たちは、肩の力が抜けてていいよなあ。負け組、勝ち組、格差社会、という言葉が最近大はやりだけど、負け組でもいいじゃーん、と思えてしまえる心暖まる映画だった。2006.5 脇役たち(トニ・コレット)
スラム SLAM
マーク・レヴィン監督、ソール・ウィリアムズ、ソーニャ・ソーン、ボンズ・マローン、ボウ・シーア出演☆ワシントンDCの低所得者住宅に暮らす青年が、大麻所持で逮捕された。刑務所内でギャングたちの抗争に嫌気がさした青年は、詩を教えに来ていた女性と出会い、自分の才能に目覚めていく。
リズムに合わせて詩を朗読する「スラム」を青年がパフォーマンスするシーンは迫力あり。「8マイル」の黒人版といったところか。
私にもう少し英語力があれば、言葉の微妙なニュアンスが伝わってくるんだろうけどなあ。こういう映画はやっぱりネイティブじゃないと、本当の良さはわからないんだろう。ワシントンDCってホワイトハウスがあるっていうだけで、白人の多い豊かな町のイメージを持ってたけど、全然違うのね。まだまだ知らないことだらけです。2006.3.4
参考CINEMA:「ゴッドファーザー&サン」
セクレタリー SECRETARY
スティーヴン・シャインバーグ監督、ジェームズ・スペイダー、マギー・ギレンホール、ジェレミー・デイヴィス出演☆精神病院から退院したばかりの自傷癖のあるリーは、自立のため弁護士事務所の秘書になる。ボスのグレイはリーに対して、高圧的な態度で接したため、リーは再び自傷に走ろうとする。だが、現場を目撃したグレイは、リーに体罰を加えるようになる。
心を安定させるため自傷に逃げるリーと、誰にも心を開けない偏執気味のグレイ。リーが彼の体罰によって自傷をやめ、結果的に彼女の揺ぎない愛が彼の頑なな心を開かせる。不器用な二人の愛は、周りから見たら異常にうつるが、いいじゃないの、二人が幸せならば。
人間の抱きやすいコンプレックスを鋭くえぐった快作だ。SMとかエロとか、そんな売り方してほしくないサイコチックな人間ドラマだった。
J・スペイダーって実際もあんな風に偏屈なのかも。癖のない二枚目顔なのに、最近は内面が顔に表れているのか、ちょっと怖い。2007.5
絶対の愛 TIME
キム・ギドク監督、ソン・ヒョナ、ハ・ジョンウ、パク・チヨン出演
レビューはCINEMAの監督たち(K・ギドク)へ
セレブの種 SHE HATE ME
スパイク・リー監督、アンソニー・マッキー、ケリー・ワシントン、エレン・バーキン、モニカ・ベルッチ、ウディ・ハレルソン、ジョン・タートゥーロ出演☆超エリートビジネスマンのジャックは、自殺した友人が残した不正告発ビデオを暴露したことで、会社を解雇される。銀行預金も引き出せず、生活に困ったジャックは、かつての恋人で今はレズビアンの彼女がいるファティマから、精子の提供を依頼される。
優秀なオスの精子を求める女の姿をみて、浅ましいと思うのは、おそらく大半は男でしょう。男たちは、いろんな女とヤレてうらやましいと思うか、精子目的なんて悲しいと嘆くのでしょうが、女の本能としては、正直、優秀な精子は魅力的ですからねえ。
初めは笑いながらみていたのだが、だんだんと、精子をビジネスに出来る世界が恐ろしく思えてきた。人間は、いろいろなタイプがいるから面白いのに、優秀な精子や卵子だけしか存続する価値がなくなったとしたら…。それこそ「ガタカ」の世界が現実になるかも。
そう遠くはない将来、同じような思考回路の人間ばかりが増えてしまうことに、一抹の不安を覚えた。
テーマ的にはとても斬新で面白いと思ったのだが、後半、モニカ・ベルッチが出てきたり、マフィアが絡んでくるのは余計な感じ。もうちょっとシンプルでもよかった気がする。主役のアンソニー・マッキーは、今時のインテリ黒人役がぴったり。今後に期待したい。2007.5
参考CINEMA:「25時」「サマー・オブ・サム」
清風明月 SWORD IN THE MOON
キム・イソク監督、チョ・ジェヒョン、チェ・ミンス出演☆エリート武官の養成所で苦楽を共にしてきた同志が、政変の中で敵と味方になって刃を向け合う。
チェ・ミンスとチョ・ジェヒョン、韓国随一の濃ゆい俳優が、男同士の熱い友情と対立を熱演。まるで二人のプロモビデオを見ているよう。チェ・ミンスの眼光の鋭さには、さすがのジェヒョンもかなわないわね。2006.8
戦場のフォトグラファー WAR PHOTOGRAPHER
クリスチャン・フレイ監督、ジェームズ・ナクトウェイ出演☆戦場カメラマンのジェームズ・ナクトウェイの生き様を2年に渡って追いかけたドキュメンタリーを鑑賞した。
バルカン半島コソボでは子供を殺された母親の悲しみを写し、インドネシアのジャカルタでは線路脇で暮らす貧困家族の生活に密着。さらにイスラエルとの争いが絶えないパレスチナや、インドネシアの硫黄鉱山で働く人々の姿を、ナクトウェイは、ときに涙を流しながら撮影を続ける。
戦場カメラマンという仕事は、人並外れた正義感とは裏腹に、ときには残酷さも必要な職業だと思っていた。戦う人、苦しむ人に手を差し伸べずにカメラを回し続けることが出来る人って、どういう精神構造の持ち主なのか、理解に苦しんだこともある。
永野会長やオウムの村井刺殺事件のときに、大勢のカメラマンの目の前で殺人が行われた映像は、今でも鮮明に頭に焼き付いていて、人が目の前で殺されようとしていても、仕事優先で助けない神経に無性に腹がたったのを覚えている。
でも、ナクトウェイは違った。被写体に感情移入し、涙が止まらなくなる姿や、リンチをする男達に向かって「彼を殺さないでくれ」と懇願した、というエピソードにウソはないと感じた。やらせではない真実がそこにはあった。
戦場から面白半分に手榴弾を持ち帰り、空港で人を死なせた日本人ジャーナリストとは大違いである。
戦争の生の悲惨さを伝えることで反戦を訴えるナクトウェイの孤高の姿にただただ圧倒されっぱなしの90分だった。
私もあらためて「戦争反対」に一票を投じたい。 2006.4
マルコ・マク監督、ダニエル・ウー、エリック・ツァン、クワン・サウメイ、デヴィッド・リー、ラム・シュー、トニー・ホー出演☆街中で拳銃を発砲し職を辞した警官は、上官からヤクザ組織への潜入捜査を命じられる。ヤクザのボスに可愛がられ、幹部となった男は、ボスの妻と浮気。さらに、同じく潜入捜査官だった友人の正体がばれたと知り…。
「インファナル・アフェア」の前年に製作されているようだが、「インファナル〜」はこの作品が元ネタ?と思えるほど、設定が似ていた。もちろん、出来は「インファナル〜」にははるかに及ばない小品ではあるが、ダニエルがだんだんと悪に染まっていく感じがよかった。背が高くて彫が深い典型的なイケメンだが、冷たくて賢そうな雰囲気もあるので知能犯役がぴったり。エリック・ツァンは毎度お馴染みのキャラでしたけど。2006.10
それでも生きる子供たちへ LES ENFANTS INVISIBLES★★
カティア・ルンド、スパイク・リー、エミール・クストリッツァ、メディ・カレフ、ステファノ・ヴィネルッソ、ジョン・ウー、ジョーダン・スコット、リドリー・スコット監督
レビューはCINEMAの監督たち(E・クストリッツア)へ
デヴィッド・フィンチャー監督、ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr.、アンソニー・エドワーズ出演☆☆人生をかけて連続殺人事件を追った4人の男の心理ドラマ。韓国映画の傑作「殺人の追憶」にゾクゾク感を覚え、かつ根気のある人は必見!
逆に、D・フィンチャー作品「セブン」「ゲーム」のファンは、期待しすぎるとしっぺ返しを食らうかも?
☆1969年、カリフォルニアで若いカップルが銃撃される事件が起こった。まもなく犯人と名乗る男が、警察に自らの反抗を告白。男は自分を「ゾディアック」と名乗り、マスコミや警察に、暗号文と手紙を送りつける。
新聞社の風刺漫画家グレイミスは、ゾディアックの暗号に興味を示し、事件を追う記者エイブリーとともに、ゾディアック探しに夢中になる。
一方、担当刑事トースキーとアームストロングは、ある一人の容疑者リーを喚問。直感で犯人とにらむが、筆跡鑑定でシロと出てしまう。
警察とマスコミをあざ笑うかのように、連続殺人を繰り返すゾディアック。暗号、手紙、タレコミ…。状況証拠はたくさんあるかに見えたが、真犯人にはどうしてもたどり着けない。
やがて、担当記者エイブリーは、ゾディアック事件にのめり込みすぎ、何かに取り付かれたかのように怯え、そしてアルコールで身を持ち崩す。
その後、担当刑事トースキーとアームストロングも、ゾディアック事件への執着で心身ともに疲れ果て、担当を外れることに。
長い年月が過ぎ、事件が風化してしまったかのように思えたある日、再びゾディアックが動き出す。最後に残ったのは、漫画家のグレイミス。彼は、妻から見放されながらも、ゾディアック事件にのめり込み、事件の謎に迫る本を出版する。
担当記者、刑事、挿絵家。4人の人物が、ゾディアック事件に執着し、事件の解明にのめり込むうち、人生を狂わせていく様子が、執拗かつ丁寧に描かれている。
はじめは、フィンチャー監督の出世作「セブン」に似てるな、などと冷ややかに見ていたのだが、エイブリーが身を持ち崩すあたりから、なぜか身体がゾクゾクするぐらい、気持ちが高ぶり、その面白さにはまってしまった。
ゾディアック事件は実話で、未解決であることがわかっていても、謎解きをせずにいられない。ゾディアックという幻のような犯人に取り付かれた男たちと一緒になって、苦しみながら、あれこれ考えずにいられなくなってしまったのである。
おそらく、この映画は、まったく受け付けない人も多いだろう。
何だかさっぱりわかんない、とギブアップした人もいたはずだ。
それこそがフィンチャー監督の狙い。迷宮の中、出口を見つけようともがき苦しむ4人と一緒に、観客が頭をかきむしる姿を想像して、監督は、ほくそ笑んでいたに違いないのだ。
「さっぱりわからん」と、出口探しを諦めてしまった人にとって、この映画は苦痛の2時間半となる。
一方、出口探しを最後まで根気よく続けられた人は、結果的に出口が見つからなかったとしても、4人と苦悩を共有できたことで、何かしらの満足感を得ることができるのだ。
正直、今まで、フィンチャー監督の映画は、あまり好みではなかった。「セブン」「ゲーム」は、評価されているものの、あっと驚かせすぎるエンディングに私は嫌悪感を覚えた。
だが、この「ゾディアック」に関しては、フィンチャー監督、やっぱりすごい、アッパレ!と、白旗あげずにはいられない。
怪しげな雰囲気、じっとり汗ばむような重さ、そして、追う側と追われる側の人生をかけた長期に渡る心理戦…。
ゲーム感覚で事件が解決してしまうエンターテイメント作品と違い、実際の事件を扱っているだけに、真実のゾディアック事件はどうだったのかを知りたくなる。
実際の未解決事件というのは、こうやって何人もの人間が関わり、苦しんだ末に、迷宮入りしていくものなのかもしれない。
エンドロールが終わり「あー、疲れた」と、腰を上げたとき、面白かったと思えるか、もしくは苦痛だったと感じるか。
評価ははっきり二つに分かれるだろう。でも、フィンチャー監督の魂がこもった渾身の一作であることは間違いない。
もう一言:
元アル中、ダウニーJr.の落ちぶれた姿は、さすがにリアル。
役作りのせいか、少しぽっちゃりしたマーク・ラファロにご執心のため、担当刑事トースキー編が、もっとも楽しめた。相棒刑事が「ER」のグリーン先生だったとはまったく気づかず。メガネないし、髪があるんだもの…。
この事件、連続ドラマにしても面白そうだが、アメリカではもうドラマ化されてる? 2007.6 参考CINEMA:「パニック・ルーム」「ゲーム」「殺人の追憶」参考:脇役たち(マーク・ラファロ)