最新の映画&DVDをワンポイント診断。
大絶賛から辛口コメントまで、BOSSA独自の視点で切り込みます。
2021年

タイトル
監督・出演
☆解説&感想 鑑賞日時

2020年度 (高評価作品)

その手に触れるまで LE JEUNE AHMED  ★★
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ 他 出演:イディル・ベン・アディ | オリヴィエ・ボノー | ミリエム・アケディウ/
ベルギーに暮らす13歳のアメッドは、近所の導師の語る過激思想に染まっていく。さらにアメッドに手を差し伸べようとした女性教師イネスを背教者と決めつけ、聖戦の標的と信じ込むようになる。
 イスラム批判映画だと嫌だなあ、と思いながら見始めたが、潔癖症の少年の葛藤を掘り下げて描いていたので好感が持てた。オウム真理教に入信した若者たちも同じように洗脳されていったのだろう。アメッドの心があまりに頑なで痛々しく、見ていて辛いものはあった。最後がどうなるのかハラハラ感もあり。なんんとも絶妙なエンディングになっていて、さすがはダルデンヌ監督。アッパレです。2021.3

WAVES/ウェイブス
監督:トレイ・エドワード・シュルツ、出演:ケルヴィン・ハリソン・Jr | ルーカス・ヘッジズ | テイラー・ラッセル
/フロリダに住むタイラーはレスリング部のエース。家では厳格な父に叱責されながらも、青春を謳歌していた。しかし、肩の負傷を隠して試合に出たテイラーは大きな挫折を味わい、さらに恋人の妊娠が発覚する。
 1年後。兄の影のような存在だった妹エミリーは、白人青年ルークと出会い、少しずつ心を開いていく。
 イケてる黒人青年の栄光と挫折の物語だけではく、両親との関係や妹の戸惑いなど、個々人の心理描写が丁寧に描かれていて心にしみた。余韻を十二分に楽しめました。期待を裏切る当たり作。映像も美しく、音楽も心地よく、調和のとれた完成度の高さ。監督の次回作にも期待大。2021.3

i-新聞記者ドキュメント- 
監督:森達也、出演:望月衣塑子/東京新聞社会部記者・望月衣塑子は官房長官の記者会見で一人で気を吐くことから、記者クラブでも異端な存在である。森監督はその望月に密着取材を通して、日本の大手メディアと政界との「なれ合い」体質に迫っていく。
 まず森監督のキャラが最高。飄々としてるんだけど頑固。法廷にカメラを入れようとして、望月記者に罵倒されるシーンまで盛り込まれているのがケッサク。沖縄の取材や、籠池夫妻へのインタビューなど、なかなか普通のニュース報道では見れない姿が見れて興味深かった。菅はほんとに望月記者が苦手なんだ、ということが表情から伝わってきて笑いが止まらず。権力に忖度したら権力者はどんどん付けあがる。人間とはそういうもの。ジャーナリズム精神は大事です。2020.10

屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ THE GOLDEN GLOVE 
監督:ファティ・アキン、出演:ヨナス・ダスラー | マルガレーテ・ティーゼル | カーチャ・シュトゥット/1970年代のハンブルク。安アパートの屋根裏に暮らす孤独な中年男フリッツは、酒酔いのたまり場で泥酔して酔いつぶれる日々。同じ店で知り合った中年の酔っ払った中年女性を部屋に連れ込むことに成功したフリッツは、彼女の娘を紹介してもらいたい、と言い出す。
 不愉快極まりない部屋で及ぶ強姦と暴力とバラバラ殺人…。なんだけど、なぜか笑ってしまったのは、殺される側にもかなり間抜けだからなのか。というか、どっちもどっち感がコメディチック。ブラックだわあ。おぞましいけどフリッツに少しは同情できるし、それよりも全員酔っ払い~、なのが面白い。ファティ・アキンはいろんな引き出しをもっているなあ。さすがです。2020.10

テルアビブ・オン・ファイア TEL AVIV ON FIRE 
監督:サメフ・ゾアビ、出演:カイス・ナシェフ | ルブナ・アザバル/エルサレムに住むパレスチナ人青年のサラームは、叔父がプロデューサーを務めるパレスチナの人気ドラマ「テルアビブ・オン・ファイア」の撮影現場で、雑用やヘブライ語の言語指導として働いていた。撮影所に通うために検問所を通っていたサラームは、イスラエルの軍人アッシに呼び止められ、ドラマの中のイスラエル側の軍人の描き方にクレームを入れられる。適当に答えていたが、ひょんなことからサラームが脚本を担当することになり、アッシの案を採用してしまう。
 パレスチナとイスラエル、長い間政治的には対立しているが、市井の人々は交流があるし、同じドラマを見て楽しんでいるのも現実なのだろう。この状況は北朝鮮と韓国にも通じるものがあり、人気ドラマの敵同士の恋愛ドラマが、「愛の不時着」とオーバーラップしてしまった。脚本がとてもよく構成されていて見ごたえあり。コメディなのだが、エンディングは予想外で大笑いしてしまった。これが本当の話だったらいいのになあ。2020.9

ザ・ファイブ・ブラッズ Da 5 Bloods 
監督:スパイク・リー、出演:デルロイ・リンドー | ジョナサン・メジャース | クラーク・ピータース
/老人となったベトナム帰還兵の4人(ポール、エディ、オーティス、メルヴィン)は若くして戦地で命を落としたノーマン隊長の遺骨と埋蔵金を回収するべくベトナムを訪れる。ポールの息子デヴィッドも加わり、5人の珍道中が始まる。
 いきなり「地獄の黙示録」へのオマージュ(パロディ?)のようなシーンが次々と出てくるので、これはかなりゴリゴリの戦争批判ものなのか?と思いきや、物語は意外とシンプル。詐欺や仲間割れなどを盛り込んだエンタメ作品に仕上がっていた。ただしベトナム戦争から50年経った今でも地雷は埋まったままで遺骨収集も滞っている、という社会的なテーマも織り込んでいるあたりはさすがリー監督。音楽もかっこよくて、もう一度見たくなる映画だった。やっぱりスクリーンでみたいなあ、と思わせる力作。2020.7 Netflix

運命は踊る FOXTROT 
監督:サミュエル・マオズ、出演:リオル・アシュケナージ | サラ・アドラー | ヨナタン・シレイ/ミ
ハエルとダフナ夫妻のもとに、息子のヨナタンが戦死したとの知らせが届く。まもなくイスラエル軍から戦死したのは別人だったと知らされミハエルは激怒。息子を呼び戻すよう要求する。一方ヨナタンは国境の検問所で退屈な日々を送っていた。
 時間軸が少しわかりづらいのだが、息子を亡くした夫婦の怒りや悲しみと、検閲所で起こる事件と軍の対応、という社会的な問題を巧みに絡めた見ごたえのあるドラマだった。イスラエルには正直あまり良いイメージがないのだが、このような軍を否定するような作品が生まれ、それが国内の映画祭で絶賛されたということに意味があると感じた。ヴェネチア国際映画祭審査員グランプリ受賞。2020.4

最後の追跡 HELL OR HIGH WATER 
監督:デヴィッド・マッケンジー、出演:ジェフ・ブリッジス | クリス・パイン | ベン・フォスター/
田舎町で暮らす男は刑務所を出たばかりの兄に銀行強盗の話を持ち掛ける。それは、特定の銀行の支店を狙い、人を殺さずに少額だけを奪うという計画だった。
前科者の兄は弟のやり方に不満があり、勝手に一人で強盗をしてしまう。
 弟の意図が徐々に明らかになっていく過程が面白い。社会的弱者に対する銀行の非情さや、掘削の権利まで絡んでいたのには驚いた。脚本賞に選ばれるのも納得の面白さ。保安官を演じたジェフも鉄板の演技でした。2020.3 Netflix

名もなき生涯 A HIDDEN LIFE 
監督:テレンス・マリック、出演:アウグスト・ディール | ヴァレリー・パフナー | ブルーノ・ガンツ/第二次世界大戦下のオーストリア。フランツは愛する妻ファニと子どもたちに囲まれ穏やかな日々を送っていたが、彼のもとにも召集令状が届く。フランツはヒトラーへの忠誠を頑なに拒み逮捕されてしまう。前半の穏やかな農村の暮らしと、後半の過酷な監獄暮らしを対比させることで独裁国家や戦争に対する確固とした抵抗を描いている。ここ最近のマリック作品はミュージックビデオ調で正直物足りなく思っていたので、静かで上品だが揺るがない世界に戻ってきてくれてありがとう、と言いたくなった。
 長ーい映画なのだが、飽きずに見れたのはやっぱり映像の力が大きい。マリック作品は詩的な台詞も魅力ではあるが、字幕だと心への響き方に限界がある。それでもフランツの独白は痛々しくて、スコセッシの「沈黙」を彷彿とさせるものがあった。踏み絵を迫るナチスと拒み続けるフランツ。そして彼を思い続ける妻…。思い出しただけで涙しそう…。これ、実話だそうです。いつそちら側に転んでもおかしくない世界の状況への警告でもある気がした。2020.3

マイヤーウィッツ家の人々(改訂版) THE MEYEROWITZ STORIES (NEW AND SELECTED)
ノア・バームバック監督、アダム・サンドラー、ベン・スティラー、ダスティン・ホフマン、エリザベス・マーヴェル、グレイス・ヴァン・パタン、エマ・トンプソン出演/芸術家の父を持つ3人の子供たちが、疎遠だった父が病気になったのをきっかけに再会。
 家族の関係をマシンガントークで描いていく様が、ウディ・アレン風で終始笑いながら見れた。役者陣がいずれも芸達者なのでまったく飽きず。バームバック監督はウディ・アレンの後継者決定!次回も楽しみ。2020.2

マッドバウンド 哀しき友情 MUDBOUND 
監督:ディー・リース、出演:キャリー・マリガン | ジェイソン・クラーク | ジェイソン・ミッチェル、メアリー・J・ブラージ、ジョナサン・バンクス/アメリカ南部で暮らす白人のマッカラン夫婦は夫の夢だった農場経営のために農村に移住。そこには土地を買って独立を目指す黒人のジャクソン一家が暮らしていた。間もなく第一次世界大戦がはじまり、白人の夫の弟ジェイミーと黒人一家の長男ロンゼルが従軍。戦場で辛い思いをした二人は、帰国後に友情を深めるが、マッカラン一家の父親は人種差別主義者だった。
 何度も映画で見てきた南部の白人至上主義者の非人道的な暴力。この映画がほかと違うのは、白人夫婦の妻ローラの視点で描いているところだろうか。ローラの流産や不倫などの事件はあるものの彼女の立ち位置は俯瞰。この映画で特に言いたいのは、反戦、反差別なのだろう。戦争で心に傷を負った二人の若者の友情と、でもその友情を許さない閉じた社会。今もアメリカの南部にはこういう社会が存在しているのかもしれない。
 差別や偏見はなぜなくならないのか。人間というのは愚かで弱いものだということを自覚し、その弱さを認めて他者を思いやることを常に意識することが大事なのだろう。ブラジルには黒人を意識する日、というのがあるぐらいだし。多民族社会では、油断すると差別や偏見が溢れてくるもの。その感情は寝かしつけなければ争いは永遠に続いてしまう。とくに新しい驚きはなかったが、今の社会と照らし合わせ、いろんなことを考えさせられる映画だった。2020.2

ヘヴンズ ストーリー
瀬々敬久監督、寉岡萌希、長谷川朝晴、忍成修吾、村上淳、山崎ハコ/
8歳の少女・サトは、両親と姉を殺され、祖父に引き取られる。サトはテレビで、19歳の少年に妻子を殺されたトモキの会見に見入る。4時間半という超大作ながら、まったく飽きない。最初はオムニバス風に始まるのだが、少しずつつながっていく過程がお見事、でした。内容もヘビーなので、映画館で4時間ぶっ通しで見るのは辛いかもしれないが、巣ごもり中には最適の映画だった。アルツハイマーに侵された人形作家・きょうこを演じた山崎ハコの存在感が半端なかったです。復讐は憎しみの連鎖を生むので反対、ではあるのだが、身近な人が無差別殺人に巻き込まれたこともあり、簡単に復讐はダメ、とは言えないものもある。当事者にならないと「憎しみの重さ」は想像することしかできない。結果的にサトの復讐心だけが成就するのだが、あとに残るのは涙だけ…、というのがなんともつらい。2020.4

ラブレス 
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ、出演:マリヤーナ・スピヴァク | アレクセイ・ロズィン | マトヴェイ・ノヴィコフ/
「父、帰る」「裁かれるは善人のみ」のズビャギンツェフ監督による2017年のカンヌ国際映画祭審査員賞受賞作。
 夫婦仲が冷え切ったボリスとジェーニャには、お互いに新しい恋人がいる。問題はどちらが12歳の息子アレクセイを引き取るか。そんな中アレクセイが行方不明になってしまう。
 肉体的な虐待はなくても繊細な息子の心は傷んでいる。この映画は、息子視点はほんの数分だけで、あくまで親視点、とくに母親の冷たさにスポットを当てているのが新鮮だった。こういう自分のことだけしか考えないハイソな女ってけっこういるかも、と思わせるリアルさが怖かった。もちろん息子が見つからないことに傷ついてはいるのだが、だからといって自分の生活は変えない強さが怖い。ひょっとしたら、この女が息子を殺したのか、と思えてきてしまう。ズビャギンツェフ監督の作品はどれも非情なのだが、見ごたえがある。物語はシンプルなのだが、人間の闇の部分を浮き彫りにさせる巧みさが半端ない。今後の作品にも期待大。ただ、いつも心が痛くなる映画なので、見る時間と場所を選ばないといけないのですが…。2020.4


2019年度 (高評価作品)

パラサイト 半地下の家族 PARASITE ★★★
監督:ポン・ジュノ、出演:ソン・ガンホ | イ・ソンギュン | チョ・ヨジョン/
失業中の父親キム・ギテクとその妻、大学受験に失敗したギウと美術が得意なギジョンが暮らしているのは半地下の部屋。ギウが大学生の友人が家庭教師の代役を頼まれたことから、社長一家の豪邸への寄生が始まっていく。
 最初は、単純な落ちこぼれ一家の寄生をコミカルに描いた作品なのか、と軽い気持ちで見ていたのだが、豪邸に地下がありそこにも寄生男がいたことが発覚したあたりから、大展開が始まる。前半のコミカルな部分にもソン・ガンホふんする父親の表情などから、金持ち一家に対する嫌悪感は表れていたし、最後はやるかな、とは想像できたのだが、その結末にもっていくまでの展開がすさまじくて、圧倒されてしまった。
ポン・ジュノは社会問題をエンターテイメント化する天才だと思った。それは「グエムル」の時にも感じたのだが、あの時はまだエンタメ寄りだった。今回はしっかりと、ずっしりと見るものに対し問題提起している。見終わった後も余韻が重くて、咀嚼に時間がかかってしまった。直後の感想は「誰も悪人がいないのに何に怒っていいのかわからず、だけど、ただただ怒りが込み上げてきた」だったが、冷静になってみると、自分が怒りをコントロールできない状況にさせた映画の力に恐怖さえ覚えた。
 ブラックコメディで笑いもたくさんあるのだが、最後にずっしりと重い。カンヌのパルムドールは文句なしだが、アカデミー賞まで取るとは予想外だった。とにかくアッパレの映画です。2020.2

バーニング 
イ・チャンドン監督、ユ・アイン、チェ・スンホ出演/
小説家を目指しながらアルバイト生活を送るイ・ジョンスは、街で幼なじみのシン・ヘミと偶然の再会を果たし付き合いはじめる。間もなくヘミがアフリカ旅行に出かけ、ジョンスはヘミのアパートに通い、姿を見せない猫にエサをあげ続ける。村上春樹の短編の映画化ではあるのだが、ジョンスの妄想が膨らんでいく過程が面白く、長い作品にもかかわらず飽きずに見れた。さすがチャンドン監督。奔放でミステリアスな女性ヘミのキャラは村上春樹作品らしく苦手なキャラだったが、それより金持ちの放蕩息子の闇が気になって仕方なかった。最後、ジョンスはヘミへの想いが、放蕩息子への想いにすり替わっていった気がした。これはゲイムービーと言えるだろう。2019.12

誰もがそれを知っている Todos lo saben ★★
監督アスガー・ファルハディ、ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、リカルド・ダリン、エドゥアルド・フェルナンデス出演
/ラウラは妹の結婚式のため、アルゼンチンから子供を連れて帰国。だが、家族が集まり楽しい宴の最中、16歳の娘が誘拐される。ラウラは娘の救出のため、かつての恋人でワイン農場経営者のパコに頼る。
本格的なハラハラのサスペンスなのだが、地主であったラウラの家族の盛衰、周囲の嫉妬、かつての恋人との主従関係が浮き彫りになっていく展開が面白くて見入ってしまった。羽振りがいいと思われていたアルゼンチン人の夫が実は破産していて失業中だったり、パコが妻の働く更生施設の生徒を疑ったり…。一つの誘拐事件により、人間の負の部分があらわになり、後味の悪さがハンパなかった。キャストは豪華だから、つい普通のサスペンスを想像してしまったが、あの「セールスマン」のイランのファルハディ監督だったのを思い出して納得。実際の夫婦であるペネロペとバルデムをかつての恋人という設定にしたのもすごい。監督は私生活を忘れさせるほどの演出に自信があったのでしょう。やるなあ。2019.6

帰れない二人 江湖儿女 ASH IS PUREST WHITE ★★
ジャ・ジャンク―監督、チャオ・タオ、リャオ・ファン出演/
2001年、山西省・大同(ダートン)。チャオは恋人ビンを救うため拳銃で威嚇射撃をしたことで刑務所送りとなる。5年後、出所したチャオはビンの行方を追って三峡ダムのある奉節へと向かう…。
中国の内陸を舞台に、二人の男女の愛と別れ、再会のドラマをストレートに描いた壮大なロードムービー。
 ジャンクー監督のメインテーマである、三峡ダムの町、長江流域で暮らす市井の人々を描きつつ、まっすぐに生きる粋な女の人生にスポットを当てた作品。今までの作風よりもエンタメ感は強いのだが、安っぽくならないのは、なんといっても監督のミューズ、チャオの存在感。広大な大地とそこを流れる大きく長い河。その流域で暮らす人々は、急速に工業化した時代の波にのまれながらも、必死で生きている。大陸の人々のたくましさも感じられ、すがすがしい気持ちになった。もう一度スクリーンで見直したい秀作。2019.9

ジョーカー ★★
監督:トッド・フィリップス、出演:ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ
/母と2人で暮らしている心優しいアーサーは、ピエロのメイクで大道芸人をして日銭を稼いでいる。緊張すると笑いが止まらなくなる病を持つアーサーは地下鉄の中で酔った男たちに絡まれる。
 孤独で繊細なアーサーが社会から疎外され、信じていたものに裏切られることで怪物ジョーカーとなっていくまでを描いた人間ドラマ。どこを切ってもホアキン演じるアーサーの苦悩、という一人芝居のような映画なのだが、ホアキンの演技がすさまじくて飽きずに見入ってしまった。おそらく司会者を演じたデニーロが怪演した「タクシードライバー」「キング・オブ・コメディ」を意識して作られたのだろうが、ホアキンはかつてのデニーロと肩を並べたな、と確信できる映画だった。怪物を演じていたころのデニーロのファンでもあったので、ホアキンが後を継いでくれたことが心から嬉しい。ジョーカー役といえば亡きヒース・レジャーの代表作。憑依俳優の末路は悲惨なことも多いので、ホアキンには、兄リバーやヒースの分まで長く活躍し続けてほしい、と切に願います。2019.10

天国でまた会おう AU REVOIR LA-HAUT★★
監督:アルベール・デュポンテル 出演:ナウエル・ペレス・ビスカヤール | アルベール・デュポンテル | ロラン・ラフィット
/1918年、休戦目前の西部戦線。生き埋めにされたアルベールは、若い兵士エドゥアールに助けられ九死に一生を得るが、エドゥアールは爆撃され顔の下半分を失ってしまう。パリの銀行家の息子でありながら父を毛嫌いするエドゥアールが家に帰るのを拒んだため、アルベールは戦死を偽装して二人で暮らし始める。エドゥアールは、持ち前の芸術的才能を発揮。やがてある壮大な詐欺計画を企てる。戦争で顔と声を失った若いエドゥアールと彼を支えるアルベールのバディームービー。泣いて笑えるエンタメ作品で久々に興奮した。エドゥアールの、戦争を美化することで詐欺を働くという計画が皮肉が聞いていて面白い。エドゥアールの作る仮面もウィットに富んでいて楽しめた。スクリーンでもう一度見直したい秀作。2019.12

菊とギロチン ★★
監督:瀬々敬久、出演:木竜麻生、東出昌大、寛一郎、韓英恵、渋川清彦
/関東大震災直後の日本。東京近郊に女相撲一座“玉岩興行”がやって来る。夫の暴力から逃れ力士となった花菊は、アナーキスト集団“ギロチン社”の大次郎と出会う。長さを感じさせない見ごたえのある青春映画だった。ギロチン社の面々のドラマよりも女相撲の訳アリ力士に焦点を当てたのもよかった。それぞれのキャラもしっかり立っていて、魅力的でした。2019.6

COLD WAR あの歌、2つの心 ★★
パヴェウ・パヴリコフスキ監督、出演:ヨアンナ・クーリク、トマシュ・コット
/1949年、共産主義政権下のポーランド。音楽舞踊団を結成したピアニストのヴィクトルはオーディションに応募してきた歌手志望のズーラと恋に落ちる。当局の監視を受けるようになったヴィクトルは西側への亡命を決意しズーラも誘うが彼女は待ち合わせ場所に現れなかった。数年後、パリで暮らしていたヴィクトルは、パリ公演にやって来たズーラと再会を果たす。男女の出会いと別れ、再会を描いたシンプルなラブストーリーなのだが、アンニュイなモノクロ映像と、ポーランドやパリ、イタリアなど、各地の社会状況の鏡のような音楽が秀逸で引き込まれた。故郷を捨てた亡命者の苦悩は本人にしかわからない。ポーランドに戻る決意をしたヴィクトルの決断が痛すぎて辛かった。2019.7

ラッキー  LUCKY
監督:ジョン・キャロル・リンチ、出演:ハリー・ディーン・スタントン、デヴィッド・リンチ、ロン・リヴィングストン/
90歳のラッキーはひとり暮らし。家ではクイズ番組を見、ヨガをやり、酒場ではタバコをくわえながら店主と無駄話&クロスワード・パズル。そんな日常を追いかけたただけの映画なのだが、ラッキーの魅力にぐいぐい引き込まれた。「孤独と一人は違うんだ」と言い放ち、男気を見せて若い男相手にケンカを売るが、「寂しいよ」と本音も吐く。そんなラッキーの人生を見てると、年取るのもいいな、と思えてきた。ハリー・ディーン・スタントンの最期を飾るのにふさわしい素敵な作品でした。2019.2

2018年 (高評価作品)

女は二度決断する IN THE FADE ★★
監督:ファティ・アキン、出演:ダイアン・クルーガー、デニス・モシット、ヨハネス・クリシュ、サミア・シャンクラン/
ドイツ人のカティヤは学生時代に出会ったトルコ系移民のヌーリと結婚。息子にも恵まれ幸せな日々を送っていたが、ある日、ヌーリの事務所前で爆発事件が起こり、最愛の夫と息子を一瞬にして失う。カティヤは事務所の前に自転車を置いて去ったドイツ人女性がいたことを警察に話し、ネオナチの若いドイツ人夫婦が逮捕されるが…。
前半は一瞬にして愛する家族を失った女の苦しみ。中盤ではリアルで非情な裁判の様子が描かれる。そして後半は一人苦しみと向き合う女の姿に焦点をあてていく。
テロの被害者はいつも無害な市民や子供たちだ。その被害者家族の悲しみ・苦しみを描いた作品は、何度見ても心が苦しくなる。ただこの映画はいわるゆテロ被害者の悲しみの先を描いている。後半のハラハラドキドキする展開をエンターテイメントに寄り過ぎ、と非難する意見もあるだろうが、ヒューマンな前半、社会派の中盤、そしてサスペンスタッチの後半、と三部構成になっているため、飽きることなく見ることができた。
ダイアンは演技派というイメージはなかったのだが、この映画で見事にトップ女優に躍り出た感あり。
女の最後の決断には賛否あるだろうが、無差別テロへの抗議の一つの手段として、私は「あり」だと感じた。被害者家族を俯瞰で「可哀そう」と憐れむのは簡単だが、当事者の気持ちは本人でないと理解できるものではない。人の心は善と悪、二つに割り切れはしない。そんなに単純ではない。善に見える裏にある邪悪なもの、悪に見える行為の裏にある悲しみや苦しみを感じることが大事。
ダイアンの容姿がジェシカ・ラングに似ていたせいか、「ミュージック・ボックス」を思い出してしまった。あの映画も女の最後の決断に賛否が分かれる重苦しさがあった。
見終わった後で気持ちがずっしりと重くなる映画ではあるが、力作であることは間違いない。やっぱりアキン監督作品は外せない。2018.4

裁かれるは善人のみ LEVIATHAN 
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ、出演:アレクセイ・セレブリャコフ、エレナ・リャドワ、ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ/モスクワから遠く離れた静かな町で美しい妻と暮らすコーリャは、彼の土地をめぐって市を相手に訴訟を起こす。市長ヴァディムの嫌がらせに対抗するため、モスクワから親友の弁護士ディーマを呼び寄せる。
 見ごたえのある社会派作品。やりたい放題の権力者に制裁を!と訴えたくなるけど、現実は…。2018.5

ビューティフル・デイ YOU WERE NEVER REALLY HERE 
監督:リン・ラムジー、出演:ホアキン・フェニックス、ジュディス・ロバーツ、エカテリーナ・サムソノフ/元軍人のジョーは幼少期に受けたDVのトラウマから自殺願望に取りつかれている。ある日、上院議員から10代の娘ニーナを売春組織から取り戻してほしいという依頼を受けたジョーはハンマーを片手に娼館に乗り込む。
 トラウマと自殺の妄想のフラッシュバックが巧みで、観客をぐいぐい引き込んでいく。見事に肉体改造したホアキンが、死にきれずに危険な世界に引きずり込まれる男を熱演。カンヌ男優賞も納得です。 ひたすら苦しく辛く重い映画だったが見応えあり。テイストは違うが監督は「タクシー・ドライバー」に影響受けてる感あり。心をえぐられるような上質の心理サスペンス。2018.6
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2016,17年 (高評価作品)

パターソン PATERSON ★★
監督:ジム・ジャームッシュ、出演:アダム・ドライヴァー、ゴルシフテ・ファラハニ、バリー・シャバカ・ヘンリー、永瀬正敏
☆ニュージャージー州パターソン。町名と同じ名前のバス運転手パターソンは、愛する妻ローラの隣で毎朝同じ時間に起きて仕事に向い、夜は愛犬マーヴィンの散歩をして、バーに立ち寄り、帰宅するとローラの隣で眠りにつく。
そんなパターン通りの生活を送るパターソンの日常にも小さな出来事がたくさん転がっている。双子、犬、モノトーン、そしてパターソンの愛する詩…。些細な日常の中に、こだわりの小道具が散りばめられている、そのセンスが何とも心地よく、至福の時を味わえた。ジャームッシュの世界はやっぱり私の波長に合っている。
何度でも見返したくなる映画。永瀬の「あーはーん?」も良かったです。助演賞は満場一致でマーヴィンだけどね。2017.9

オン・ザ・ミルキーロード ★★
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ブレードランナー 2049 BLADE RUNNER 2049
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ、出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、マッケンジー・デイヴィス、ロビン・ライト、シルヴィア・フークス、ジャレッド・レトー
☆荒廃が進む2049年の地球。人造人間“レプリカント”のKは、不満分子の旧式狩りをする捜査官だ。ある旧式を始末した際、Kは木の下に埋められた骨を発見する。Kはこの骨と子供時代のかすかな記憶の謎を解き始める。一方、レプリカント開発を手掛けるウォレス社の総帥はレプリカントの生殖機能開発に執着していた。
 30年ぶりのブレードランナー続編ということで、より豪華にパワーアップした最新のエンタメ作品に仕上がったいるのだろうと予想していたのだが、見事に、いい意味で期待を裏切られた。
新型レプリカントKの悶々とする日々を、美しい近未来映像を背景に哲学的に描いている。巨匠リドリー・スコット製作だからこそ可能な贅沢で高尚なSF世界だった。この作品をゲーム&アニメ世代に見てもらいたいけど、おそらく無理だろうなあ…(「テンポが遅くて眠くなった~。意味わからん」と一蹴されそう)。
 ライアン・ゴズリングは悩めるレプリカントにぴったり。
「ラ・ラ・ランド」のゴズリングより100倍味がある演技にしびれました。感情も姿も人間と変わらない。人間になりたいけどなれない。恋もしたいけどバーチャルな恋人しか作れない。そんな鬱屈したKが不憫で不憫で、つい感情移入。
バーチャル恋人役のキューバ人女優アナもキュートでぴったり(彼女は2009年のラテンビート映画祭で来日もしていました。ビッグになりました!)。
そして怖くて強いレプリカントも存在感あり。オランダ人女優とのこと。若かりし頃、ルドガー・ハウアーに熱を上げたことを思い出したりして、しっかりファンサービスしてくれてることにも歓喜。
 ハリソン・フォードはすっかり老いてはいたけど、相変わらず不死身。でも存在感をあえて抑え、脇役に徹していた。Kが素敵すぎるっていうのもありますけどね。
個人的にはジャレット・レトが好きなのでもう少し出番よければよかったかな。
 とにもかくにもオールドファンにはたまらないSFアート作品に大満足でした。2017.11

バンコクナイツ BANGKOK NITES 
監督・主演:富田克也、出演:スベンジャ・ポンコン、スナン・プーウィセット、伊藤仁、川瀬陽太☆タイの首都バンコクの日本人相手専門風俗店で働くラックは、ラオスとの国境付近のイサーン地方からバンコクへ出稼ぎに出て5年になる、人気No.1で日本人のヒモと高級マンションに暮らしながら、故郷の大家族を支えるために仕送りをしていた。ある日、彼女は昔の恋人オザワと再会。オザワは自衛隊時代の上官からラオスへ出張に行くよう依頼される。オザワは途中、ラックと共にラックの故郷ノンカーイを訪れる。
バンコクの風俗業界の裏側を描いた前半と、田舎の村での日々を描いた後半のつながりが絶妙で、長い映画なのに飽きることなく見れた。ラックの頼もしさに比べ、日本人男たちのだらしなさが際立っていて笑ってしまった。現地で堕落した人たちを「沈没組」というのですね。バンコクの空港で並んでいるとき、買春に来た日本人男と風俗嬢の会話をずっと隣で聞いていたことを思い出し、そうそうこんなだったわ、と一人思い出しにやにや。
 中途半端で生きるオザワの悶々感も伝わってきて異色の人生リスタート物語に仕上がっていました。次回作も楽しみです!2017.6

タレンタイム 
監督:ヤスミン・アフマド、出演:パメラ・チョン、マヘシュ・ジュガル・キショール ☆多民族、多宗教の子供たちが通う高校で、音楽コンクール“タレンタイム”が開かれることになった。予選を通過したのは、イギリス人とマレー人の血を引く裕福な家庭で育ったムルーや、生真面目な中華系の青年、そして優秀なマレー系の転校生など。ムルーはタレンタイムの練習の送り迎えをしてくれるインド系の青年と恋に落ちる。
アート系映画を想像していたが、ベタな笑いも盛り込まれたシンプルな青春ものだった。マレー系、中華系、インド系、ムスリム、ヒンズーなど、多民族多宗教の生徒が通う高校を舞台に出会いと別れをやさしく描いている。途中まではなんだか古臭くて、ちょっと拍子抜けだったのだが、高校生が歌う音楽にぐいぐいと引き込まれてしまい、予定調和なのにウルウルしてしまいました。女性監督の真摯な思いが込められているのを感じた。亡くなってしまったことが悔やまれる。ちなみに挿入曲はマレーシアのポップシンガー、ピート・テオが作曲した「I Go」、「Angel」「Just One Boy」ということです。2017.6

わたしは、ダニエル・ブレイク I, DANIEL BLAKE 
監督:ケン・ローチ、出演:デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ
/イギリス北東部ニューカッスル。妻に先立たれ、心臓を患っている大工のダニエルは医者から仕事を止めるよう言われ、国から援助を得るため手続きに出かける。だが、何度役所に出かけても認められず職探しをした証拠を見せろ、などと理不尽なことを言われてしまう。
同じく役所で門前払いを食らっていたシングルマザーのケイティと言葉を交わしたダニエルは、彼女の家の修理や子守を手伝いはじめる。
 ケン・ローチ監督作品らしい地味だけどまっすぐな姿勢に敬服。ストーリーは予定調和ではあるのだが、子役たちの演技とダニエルの熱演に涙腺が緩んだ。辛い物語ではあるのだが、ダニエルの反乱シーンには拍手したくなるぐらい気持ちよかった。ブラボーな作品。カンヌのパルムドール受賞も納得の作品だった。2017.12

AMY エイミー AMY ★★
アシフ・カパディア監督、エイミー・ワインハウス出演
☆ジャズが好きなエイミーは、彼女の才能に魅せられたニックをマネージャーの力を借り歌手としてデビューを果たす。20歳でシングルを発売し、順調にスター街道を歩み始めるが、私生活ではブレイクに恋をしたことで精神的に不安定になり、ドラッグや酒に依存するようになる。
21世紀のジャニス・ジョプリンと言っても過言ではない波乱の人生。
27歳でアルコール依存による心臓発作で短い人生を終えてしまったエイミーの繊細な心が痛々しくて、後半は見ているのが辛くなった。
無邪気な少女時代を知る幼友達や最初のマネージャーが、もう少し介入できていれば…。
ポップスターとして売り出されなければ、トニー・ベネットのようなジャズ歌手になって今もまだ歌い続けていただろうに…。
あのハスキーボイスが大好きだっただけに、悔しくて悔しくて…。
などなど、惜しい、悔しいという気持ちがどんどん増していき、胸が苦しくなった。
この映画は、有名人と取り巻きの関係、メディアの過熱報道、ドラッグ・アルコール依存症の恐ろしさにもスポットをあてているので社会派ドキュメンタリーとしても見応えがある。
子供のころから過食症の傾向があり、恋愛やドラッグなどへの依存体質だったエイミーなのだがほとんど適切な治療が行われなかった。さらにはエイミーの金目当てとしか思えないタイミングで近づいてきた元恋人ブレイクや父親の存在が、彼女の依存症を悪化させていく。(あくまで映画を見た上での推測であり真偽はわからないが)。
ドラッグ中毒にさせたブレイクと、無理にステージに立たせた父親には心底腹が立ったのだが、冷静に考えると、父に捨てられたりブレイクに振られたからこそ名曲が生まれたのかもしれないし…。身を削って曲を作り、心の想いを絞り出して歌い続けたエイミー。
悲しいけれど、それが彼女の選んだ現実だったのだから運命とも言えるのかもしれない。
印象に残ったのはトニー・ベネットに受賞の名前を呼ばれ、少女のように歓喜するエイミーの姿。最後に、あこがれの大巨匠トニー・ベネットとレコーディング出来たことだけは、神様のご褒美と考え、彼女の人生に拍手を送りたい。
監督は「アイルトン・セナ ~音速の彼方へ」(こちらも名作!)のアシフ・カパディア。アカデミー賞受賞も納得の音楽ドキュメンタリーの傑作です。

恋人たち ★★
監督: 橋口亮輔、出演:篠原篤、成嶋瞳子、池田良、安藤玉恵、木野花、光石研ほか出演
☆アツシは数年前、最愛の妻を通り魔殺人事件で失った。精神疾患で不起訴となった犯人への怒りが収まらず、裁判費用ねん出のために、身を削って生きている。弁当屋で働く主婦の瞳子は、鶏肉卸業者の中年男と知り合い、不倫にのめりこむ。一方、アツシに弁護士を依頼された若いエリート弁護士の四ノ宮は、学生時代からの男友だちを想い続けていた…。
三者三様の一般市民。立場も性格もまったく違う3人それぞれに感情移入できてしまうほど、心理描写が秀逸でぐいぐい引き込まれた。インタビュー記事等で橋口監督自身が抑圧された日々を送っていたことは想像できたが、それにもかかわらず、物語はシリアスではなく、滑稽でもある。「やってらんねーよ」と投げ出したくなる日々。そんな中にも、小さな希望を見つけることができた3人にエールを送りたくなりました。
橋口監督には、ぜひまた素敵な作品を作ってもらいたいので、監督にもエール!そして、自分にもエールを送って2016年を締めくくります。2016.12

インサイダーズ/内部者たち INSIDE MEN
監督: ウ・ミンホ監督、イ・ビョンホン、チョ・スンウ、ペク・ユンシク、イ・ギョンヨン、キム・ホンファ出演
☆次期大統領候補議員と大手自動車会社会長の汚職を追う検事ウ・ジャンフンは、財務部長から得るはずだった裏金の証拠を、アンに横取りされる。アンはその証拠の品を旧知の記者ガンヒにリークするが、ガンヒこそが汚職の張本人だったことから、裏切りの見せしめに片手を切り取られてしまう。アンは復讐のために黒い闇に迫っていく…。
ドロドロに汚れた韓国財政界。現実でも大騒ぎの真っ最中だけに、この汚職ドラマもフィクションとも言い切れない怖さがある。超学歴社会やコネ社会といった韓国の現実を揶揄するセリフが多いのも興味深い。なかなか巨人の悪事を裁けない二人の熱血漢を演じたビョンホンとスンウはもちろん魅力的なのだが、悪人側の憎たらしさが秀逸。復讐をやり遂げる爽快感よりも、そこに至るまでのドロドロ感が印象に残ったという意味で、この作品はエンタメではなく社会派ドラマでしょう。
「記事の語尾に『強く疑われる』と書くだけで大衆は操れる」という悪徳記者のセリフには鳥肌がたった。日本の週刊誌には、芸能人の不倫ネタより権力者の悪事をもっと暴いて欲しいものです。2016.12

山河ノスタルジア 山河故人 
ジャ・ジャンクー監督、チャオ・タオ、チャン・イー、リャン・チントン出演
☆1999年、山西省・汾陽。タオは、炭鉱労働者のリャンズーと野心家ジンシェンという2人の幼なじみから想いを寄せられ、強引なジンシェンとの結婚を決意する。2014年、実業家となったジンシェンと離婚したタオは、父の葬儀に出席するためにやってきた幼い息子ダオラーと再会するが、息子は心を開かない。一方、リャンズーは肺を患い、タオに助けを求める。
2025年、19歳になったダオラーは、酒浸りのジンシェンとオーストラリアにいた。
急激な成長を遂げた中国で生きる一人の女性の波乱の人生を通し、中国の過去から未来を映し出した作品。今までのジャ・ジャンク―監督作品とはテイストが違っていたが、ある家族の歴史が丁寧に描かれていたので、感情移入して見ることができた。タオの視点だけでなく、タオに振られた炭鉱夫や、離れ離れになった息子の視点からも描き、そこに中国という大国の行く末へのアンチテーゼも見て取れた。いろいろ考えさせられたが、きっとダオラーとタオは再会して心を通わせるんだろう、という幸せな結末をあえて見せず、観客にゆだねた点も好感が持てた。いい映画でした。2016.5

スポットライト 世紀のスクープ SPOTLIGHT 
トム・マッカーシー監督、マーク・ラファロ、マイケル・キートン、レイチェル・マクアダムス、リーヴ・シュレイバー出演
☆2001年、夏。ボストンの地元新聞“ボストン・グローブ”の新任編集局長は神父による子どもへの性的虐待事件を追跡調査する方針を打ち出す。特集記事欄《スポットライト》を担当する4人の記者たちが調査を開始。4人は突然異動になった神父のリストに着目する。久々に硬派なジャーナリスト魂を見ることができてすがすがしい気持ちになれました。アメリカは問題もたくさんあるけど、民主主義を守ろうとする正義感もいるのが強みでもあると感じた。それに比べて日本のマスコミは…と愚痴りたくなりました。マークの熱血ぶりがかわいくてかわいくて、やっぱり大好きな役者です。神父の幼児虐待はラテンアメリカの映画では毎度おなじみのテーマなので、その事実についてはさほど驚きはなかったのだが、この映画は、事実を追求し暴くことで、被害者の心に少しでも光がさせば、という意図がストレートに伝わってきてさわやかさも感じたほど。こういう映画は日本でははやらないのが残念ですが、個人的には大好きです。2016.5

野火 FIRES ON THE PLAIN
塚本晋也監督・主演、リリー・フランキー、中村達也、森優作出演
☆日本軍の敗北濃厚のレイテ島で、結核を患った田村一等兵は野戦病院行きを命じられる。だが結核ごとき、と追い出され、舞い戻った部隊でも邪魔者扱いされる。行き場を失いジャングルを彷徨する田村は、空腹で朦朧とする中、肉の塊と化した遺体や亡霊のような兵隊たちと出くわす。
深い緑のジャングルがゾンビの森と化している状況を、深く掘り下げて映像化した塚本監督の思いが伝わる渾身の一本。中村達也演じる兵士はまあまともだったが、歩けないふりをして若い兵隊を奴隷のように扱う伍長をリリーが嫌らしく演じていた。塚本監督は俳優としても超一流、と確信。すごい才能です。2016.1

君が生きた証 RUDDERLESS 
ウィリアム・H・メイシー監督、ビリー・クラダップ、アントン・イェルチン、フェリシティ・ハフマン エミリー出演
☆エリート広告マン、サムは大学で起きた銃乱射事件で息子ジョシュを失う。2年後、ペンキ塗りの仕事をしながらヨットで暮らしていたサムは、生前にジョシュが書きためていた自作曲のデモCDを聴き、ジョシュの遺した曲を歌い始める。それを聴いた青年クエンティンはサムをバンドに誘うが…。
息子の死の真相が明かされる前と後のギャップが大きすぎて正直戸惑ったが、息子の心理よりも、あくまで父の苦悩にスポットをあてて描かれていたので、好感が持てた。
メイシー監督も自らライブバーのオーナー役で出演し、妻フェリシティが元妻役という手作り感がまたいい。小品ではあるが監督の思いが伝わってくる作品。ビリー・クラダップは「Almost famous」でロックスター役だったのを思い出し、時の流れを感じてしみじみ。音楽映画はやっぱりいいですね。2016.7

レヴェナント:蘇えりし者 THE REVENANT 
アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督、レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン出演
☆1823年アメリカ北西部。グラスは先住民族の息子ホークを連れ狩猟のガイド役として旅をしていた。そんな中、グラスがグリズリーに襲われ、瀕死の重傷を負ってしまう。ヘンリー隊長は旅の負担になるとグラスを諦め、ブリジャーとフィッツジェラルドに彼の最期を看取り丁重に埋葬するよう命じるのだったが…。
森の中、瀕死の男が息子を殺した男への怒りを糧に奇跡の復活をとげる過程が丁寧に描かれていて見応えがあった。長い映画ではあるがほとんど飽きずに見られたのは、森や雪景色の映像が見事だったから。ディカプリオも、身体を張った演技をしていて脱帽。死んだ馬の臓物取り出して、体の中に入って暖をとるシーンは見入ってしまった。
復讐を神の手にゆだねるか自分の手で下すか…。自分の手で下したとたん、その物語はエンタテイメントとなり、神にゆだねると芸術作品に近づく。エンタメ要素も盛り込んだアート作品、という作り手の意図も感じられた。坂本龍一の音楽も荘厳で、単純なエンタメ作品とは違った趣が伝わってきた。イニャリトゥ監督はやっぱりすごい。一つのところに留まらない挑戦的作品をどんどん生み出している。次はどうでるか。今後も注目していきたい。2016.5


オペレーション・メコン Operation Mekong 公河行動
ダンテ・ラム監督、チャン・ハンユー、エディ・ポン出演
☆ミャンマー、ラオス、タイにまたがり、麻薬の密造エリアとして知られる「黄金の三角地帯」。このエリアのメコン河で中国船が拿捕され、乗組員13人が殺された。知らせを受けた特殊部隊が無法地帯へ乗り込んでいくが…。実話を基にした痛快アクション映画。若い潜入捜査官とベテラン刑事の友情物語あり、タイ警察と麻薬ディーラーの大物との駆け引きあり、派手なカーアクションやボートの追っかけっこあり、と見どころ満載で心臓バクバクさせながら見れた。久しぶりに香港アクション映画をたっぷり堪能できて大満足。監督が意外に若いのには驚いたが、中国人のファンが嬉しそうに質問していたのも印象に残った。実際の事件ということで事実は藪の中、なんだが、単純に楽しむことができました!2016.10 東京国際映画祭にて

最愛の子 親愛的DEAREST
監督: ピーター・チャン、ヴィッキー・チャオ、ホアン・ボー出演
☆2009年夏深セン。 下町で3歳のポンポンが誘拐される。父ティエンと別れた妻ジュアンは必死で捜索を続けるが、消息は一向につかめな。3年後、2人はある農村でついに我が子を発見する。しかし6歳になったポンポンは、もはや実の親であるティエンとジュアンを覚えていず、母親と慕うのは誘拐犯の妻ホンチンだった。実話とのこと。子供を誘拐して労働力として売られている現実がいまだにあることに驚いたが、それよりも誘拐された親たちの悲しみが痛すぎて終始ウルウル。育ての親の必死さも気持ちがわからなくもないが、夫が誘拐犯というのがなあ。2016.12

誰のせいでもない EVERY THING WILL BE FINE 
監督: ヴィム・ヴェンダース、出演:ジェームズ・フランコ、シャルロット・ゲンズブール、マリ=ジョゼ・クローズ
☆作家のトマスは雪道で幼い子供をひいてしまう。罪悪感に苛まれたトマスは恋人サラと破局。長い時間をかけて心の傷と闘う日々を送る。一方、子供の母親も罪悪感に苦しんでいた。
罪悪感という共通の罪をもった男女、そして子供の成長を静かなトーンで見つめている。罪悪感は死ぬまでなくなることはないが、時とともに重量が減っていく。イニャリトゥの「21グラム」と同じテーマでありながら、切り口はソフト。答えは一つではないけれど、人の運命について考えさせられる作品だった。2016.11

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2021年度

異端の鳥 THE PAINTED BIRD 
監督:ヴァーツラフ・マルホウル 出演:ペトル・コトラール | ウド・キア | レフ・ディブリク、ハーベイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー/ユダヤ人の少年は、一人で田舎へ疎開し叔母と暮らし始めるが、間もなく叔母が急死。少年は生き延びるため、悪魔のような大人たちの餌食となっていく…。性悪説が基になった悲惨な現実では、ゲシュタポがましな大人に見えてしまうほど。でも、ユダヤ人として虐待にあっているのは、そもそもナチスのホロコーストがきっかけになっているわけだし。動物と少年、女性への虐待、暴力シーンが多くてつらかったが、強く記憶にインプットされる傑作。2021.5

アメイジング・グレイス Amazing Grace 
監督:シドニー・ポラック/出演:アレサ・フランクリン、コーネル・デュプリー(ギター)、チャック・レイニー(ベース)、バーナード・パーディー(ドラム)/1972年1月13日、14日、ロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行われたアレサ・フランクリンのライブを撮影した音楽ドキュメンタリー。
 ここまでアレサ尽くしの作品は初めて。初めの曲「ホーリー・ホリー」から、その声の質にゾクゾクして鳥肌が立った。さらにキャロル・キングの「You've Got a Friend」のゴスペルアレンジは圧巻。知らぬ間に涙が出てきて、お次の「Amazing Grace」では嗚咽出そう。理屈じゃない感動で、音楽の底力を体感できた。
 アレサの歌って音程がまったく狂わないのが本当にすごい。天性のものもあるんだろうけど、音楽の英才教育を受けていたのでしょう。有名な牧師だったというお父様も出てきてます。クリスマスの季節にでも毎年劇場で見たい作品。たっぷり堪能できました!2021.6

アメリカン・ユートピア DAVID BYRNE'S AMERICAN UTOPIA 
監督:スパイク・リー 出演:デヴィッド・バーン/デヴィッド・バーンが2018年に発表したアルバム『アメリカン・ユートピア』を基にした伝説のブロードウェイ・ショーをスパイク・リー監督が収録したライブ・パフォーマンス映画。「ストップ・メイキングセンス」にはまった世代なので、懐かしの曲のオンパレードを聞いて、一気に青春時代にフラッシュバック!バーンの現役バリバリのダンスと、風刺のきいた歌詞のセンス、反差別メッセージなどなど、すべてが洗練されていて、さすがです。いつかNYで生で見たいなあ。スパイク・リーらしいドストレートなメッセージもしっかり効いていました。2021.7

パーム・スプリングス PALM SPRINGS 
監督:マックス・バーバコウ 出演:アンディ・サムバーグ | クリスティン・ミリオティ、ピーター・ギャラガー
/砂漠のリゾート地、パーム・スプリングスで行われた妹の結婚式に参加したサラは、ナイルズと知り合うが、彼は謎の男に襲われてしまう。ナイルズを追って謎の光を放つ洞窟に入ったサラは、目覚めると結婚式の朝に戻っていた。以来、二人はタイムループにハマり、毎日が妹の結婚式、という人生を送るはめになる。
 ループ生活でやりたい放題、楽しむ二人の自暴自棄さがケッサク。ループものなので、いろいろ細かいところは矛盾があるのだが、そういうことが気にならないぐらい、テンポが良くて楽しめた。サラがループから抜け出すために、猛勉強を始めるシーンを見ながら、「今の私の生活はループ生活のようだな」と自分を重ね合わせてしまった。抜け出せないコロナ自粛生活。自分で何かやりがいを見つけるしかないんだよね、きっと。単純なコメディなのに教訓にもなった。2021.4

博士と狂人 THE PROFESSOR AND THE MADMAN 
監督:P・B・シェムラン、メル・ギブソン、ショーン・ペン、ナタリー・ドーマー、エディ・マーサン、ジェレミー・アーヴァイン、スティーヴ・クーガン出演
/19世紀中ごろ。スコットランド出身の言語学者マレー博士は、オックスフォード大学の辞書編纂プロジェクトの編者として採用される。一方、南北戦争で精神を病み、罪のない男を殺してしまったマイナーは精神病院に収監される。二人の人生がつながるまでの過程、そして繋がってからの感動のドラマに引き込まれた。キャストが豪華だが物語は地味なのも好感がもてた。実話というから驚き。メル様はやっぱりさすがです。2021.6

パブリック 図書館の奇跡 THE PUBLIC 
監督・出演:エミリオ・エステヴェス 出演:アレック・ボールドウィン、ジェナ・マローン/公共図書館の図書館員スチュアートは毎日さまざまな市民の対応に追われている。町に大寒波が襲ったある日、70人のホームレスが、路上で凍死する状況に抗議して図書館に立てこもる。弱者の小さな力が少しずつ膨れ上がり、大きな力となるまでが丁寧に描かれている。さすが親がデモ魔なだけある。デモをする市民の姿がリアルで共感できた。エミリオはいい年の取り方をしているよなあ。今後の作品にも期待大。2021.6

ノマドランド NOMADLAND 
監督:クロエ・ジャオ 出演:フランシス・マクドーマンド | デヴィッド・ストラザーン 、リンダ・メイ/
工場の閉鎖により家を失ったファーンは、亡き夫との思い出と向き合いながら、キャンピングカーで移動する季節労働者として生き始める。実際にノマド(遊牧民)生活をしている人々の独白は、悲しみというよりもっと崇高なもので、人間として本来あるべき姿と言おうか、野生のたくましさのようなものを感じることができた。
 映画を見た後で何を記そうか考えてみたのだが上手く表現できない。でも、見ているときは確実に映像の力に圧倒され、彼らの生き様をリスペクトした。これぞスクリーンで見るべきで、スマホなんかで見てほしくない作品。これがアカデミー賞を受賞したのは、映画館でしか味わえない崇高な世界を描いていたからなのかもしれない。
 光の使い方が素晴らしくて、テレンス・マリック作品の影響をかなり受けているのは感じ取れた。一言ではいい表せない素晴らしい作品。2021.4

レ・ミゼラブル 
ラジ・リ監督、出演:ダミアン・ボナール | アレクシ・マナンティ | ジブリル・ゾンガ出演
/パリ郊外のモンフェルメイユは「レ・ミゼラブル」の舞台となった町。移民や低所得者が多く住むこの地域に配属された警官のステファンは、2人の先輩警官とともに地域のパトロールを開始する。サーカス団からライオンの子どもが盗まれる事件が発生し、ライオンの捜索に乗り出すステファンたちだったが…。
 最初は、人間関係がよく掴めなくてついていけなかったのだが、徐々に人々の繋がりが見え始め、大きなうねりとなっていくまでの展開は圧巻。クライマックスは『Cidade dos deus』のような迫力があった。人間の偏見の根深さを突きつけられて、愕然とした。映画館で見るべきだった。2021.5

アンブレイカブル UNBREAKABLE
監督:M・ナイト・シャマラン、出演:ブルース・ウィリス | サミュエル・L・ジャクソン | ロビン・ライト/デヴィッドはある飛行機事故の唯一の生存者となる。傷ひとつなく自宅に戻った彼のもとに、なぞの男が近づく。
 ホラーでもサスペンスでもない不思議な感覚の作品。不死身の男が哀愁を漂わせているのがいい。それをマッチョなウィリスが演じているのも面白い。いろんな意味でお決まりじゃないのがさすがシャマラン監督。2021.6

アジアの天使
監督:石井裕也 出演:池松壮亮 | チェ・ヒソ | オダギリジョー/妻を病気で亡くし、8歳の息子・学を連れて兄を頼ってソウルにやって来た剛。兄は怪しげな貿易ビジネスをやっている。一方、元アイドルのソルは、事務所を解雇され、兄と妹とともに、故郷に両親の墓参りに行く。
 それぞれ、大切な人を亡くしたことを昇華できていない韓国人と日本人が出会い、お互いを知り共感していく物語。テーマとしてはとても興味があるのだが、話がてんこ盛りで少々、とっ散らかった感あり。もっと幼い息子に焦点を充てるとかしたほうが、感情移入しやすいかも。もしくは前半のそれぞれの事情のくだりをもっと削って、ロードムービー感をもっとフューチャーするとか。テーマも役者もとてもいい映画だと思うので、もったいない感あり。2021.7

A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー
監督:デヴィッド・ロウリー 出演:ケイシー・アフレック | ルーニー・マーラ/テキサス州で暮らす若い夫婦に突然悲劇が襲う。夫が交通事故で亡くなり、残された妻は悲しみにくれる。夫はシーツを被ったゴーストとなり、妻と暮らした家に戻ってくる。
 ほとんど台詞がなく、説明なく話が飛ぶのでよくわからず、2度見てしまった。よくわからないのだが、気になるのは、映像の美しさのせいなのか。テレンス・マリックの影響が随所に感じられて、雰囲気がいい。不思議な余韻のある幻想的なアート映画でした。2021.8

Our Latin Song
レオン・ギャスト監督/1972年のニューヨークで、ファニア・オールスターズのコンサートが開かれた模様を記録した音楽ドキュメンタリー。
 ライブのシーンだけでなく、町の中で歌うシーンや当時の子どもたちがはしゃぎまわる姿、リハーサル風景など、当時のラテンコミュニティの様子が興味深かった。2021.7

エイブのキッチンストーリー ABE
監督:フェルナンド・グロスタイン・アンドラーヂ 出演:ノア・シュナップ | セウ・ジョルジ | ダグマーラ・ドミンスク/料理が好きなブルックリン生まれの少年エイブ。イスラエル系の母とパレスチナ系の父を持ち、文化や宗教の違いで家族同士の対立が絶えない悩み多き日々を送っていた。ある日、世界各地の味を掛け合わせる“フュージョン料理”を作るブラジル人シェフのチコと出会いチコのもとで修業をすることに。
 当事者ではなく、ブラジル人監督が描いたイスラムとユダヤの文化の違い、というのが新鮮だった。世界は民族や宗教など、対立だらけだが、隣に住む場所や職場などで、違うもの同士が知り合い、好意を持つことは合って当然のこと。差別発言する人って、個人的に何か恨みがあるとか、自分の社会だけしか知らない人、両極端な気がする。
 アブラハムとイブラヒムとエイブ、3つの名前をもつ少年は複雑だとは思うけど、彼の存在自体が多様性。こういう若い世代がもっともっと増えればいい、と映画をみて思いました。2021.7

グッバイ、リチャード! RICHARD SAYS GOODBYE
監督:ウェイン・ロバーツ 出演:ジョニー・デップ | ローズマリー・デウィット | ダニー・ヒューストン/大学教授のリチャードは、突然ガンの宣告を受け余命6ヵ月と告げられてしまう。さらに妻は学長と不倫中と知り、チャーリーは残り少ない人生を謳歌し始める。デップ主演の割には、自暴自棄になった主人公の振り切れ感が甘くてちょっと残念。2021.7

コロンバス COLUMBUS
監督:コゴナダ 出演:ジョン・チョー | ヘイリー・ルー・リチャードソン | パーカー・ポージー/韓国出身のコゴナダの長編監督デビュー作。モダニズム建築の宝庫コロンバス。建築学者の父が倒れたとの知らせを受け、韓国からやって来た青年ジンは、図書館員ケイシーと出会う。彼女は母親の看病のために夢を諦め、コロンバスにとどまる運命を受け入れていた。
 若い男女が、建築の町を歩きながら、それぞれの内なる思いを吐露する物語。小津を尊敬しているだけあり、随所にこだわりが感じられる構図あり。二人の心理描写もよく描けていて、それぞれに感情移入できた。監督の将来性を感じられる一本。2021.7

サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~ SOUND OF METAL
監督:ダリウス・マーダー ?出演:リズ・アーメッド | オリヴィア・クック | ポール・レイシー/ロックバンドのドラマーとして活動していた青年が、突然難聴になってしまう。渋々聴覚障害施設に入り、手話を学び、仲間もできるのだが、音楽への夢を捨てきれず手術を決意する。
 ストーリーはごくシンプルだが、一人苦悩するリズ・アーメッドの静かな姿にくぎ付けになった。存在感のあるいい役者です。パキスタン系英国人とのこと。2021.8 

ジャズ・ロフト The Jazz Loft According to W. Eugene Smith
監督/サラ・フィシュコ、出演/サム・スティーブンソン、カーラ・ブレイ、スティーヴ・ライヒ、ビル・クロウ、(以下、写真のみ/声のみ)ユージーン・スミス、セロニアス・モンク、ズート・シムズ、ホール・オーバートン/ユージン・スミスが1950年代半ばから住んでいたマンハッタンのロフトでは、連日連夜様々なジャズ・ミュージシャンが出入りし、ジャムセッションを繰り広げていた。当時の写真と映像、音声、当時を知る人々へのインタビューをつないだドキュメンタリー。
 前半はスミスの私生活や仕事を彼の残した作品を中心に迫っていき、後半は、ホール・オーバートンとセロニアス・モンクの音声やタウンホールでのコンサートに向けて音作りをしていくミュージシャンの様子をつないでいく。とても見ごたえのある構成になっていて、まったく飽きずに見ることができた。『MINAMATA』を見てからもう一度、見てみたい。若かりし頃のユージーンは男前で、ジョニー・デップにちょっと似ていました。2021.7

ともしび HANNAH
監督:アンドレア・パラオロ、出演:シャーロット・ランプリング | アンドレ・ウィルム/初老のアンナは、長年連れ添った夫が収監されたことで、孤独とのたたかいの日々と向き合いはじめる。台詞も展開もほとんどない、アンナの日常を追うだけの映画。悪い予感が的中でなぜ夫が収監されたのか、家族と疎遠になったのか、まったく分からずに終わってしまい唖然…。2021.6

トム・オブ・フィンランド TOM OF FINLAND
監督:ドメ・カルコスキ 出演:ペッカ・ストラング | ラウリ・ティルカネン | ジェシカ・グラボウスキー/第二次世界大戦直後。同性愛が法律で禁止されていたフィンランドで、帰還兵トウコは密かにハードゲイの男たちのイラストを描いていた。当局の目を盗み、同じ性癖のある男たちと出会ったトウコは、“トム・オブ・フィンランド”の作家名でアメリカの雑誌社に自分の絵を投稿する。実在の人物の伝記映画。同性愛が犯罪であった時代に生きた人々の抑圧された人生が丁寧に描かれていた。2021.7

ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち THE HUMMINGBIRD PROJECT
監督:キム・グエン 出演:ジェシー・アイゼンバーグ | アレキサンダー・スカルスガルド | サルマ・ハエック/ニューヨークでトレーダーとして活躍するヴィンセントと従兄弟のアントン。株の高頻度取引が注目を集め、より高速での取引を目指して0.001秒を争う熾烈なアクセス短縮競争が繰り広げられていた。ヴィンセントは、カンザス州にあるデータセンターとニューヨーク証券取引所のサーバーを結ぶ光ファイバーケーブルを直線で敷設できれば、従来のアクセス時間を0.001秒短縮できると思い立つ。データの通信速度をめぐる攻防、っていうのが新しい。すごい世界でついていけないわ。アイゼンバーグはベン・ステラ―の後継者として着実に地位を築いている感あり。2021.7

ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え! BILL & TED FACE THE MUSIC
監督:ディーン・パリソット 出演:キアヌ・リーヴス | アレックス・ウィンター | クリステン・シャール/2020年。伝説のロックバンド“ワイルド・スタリオンズ”として活動するビルとテッドはすっかり落ちぶれてしまっていた。そんな2人の前に未来からの使者が現れ…。おバカコメディ、なんだけど、さっぱり乗れず。期待外れ。2021.7

ザ・ピーナッツバター・ファルコン THE PEANUT BUTTER FALCON
監督:タイラー・ニルソン 他 出演:ザック・ゴットセイゲン、シャイア・ラブーフ、ダコタ・ジョンソン(メラニーとドン・ジョンソンの娘)、ジョン・ホークス、ブルース・ダーン、トーマス・ヘイデン・チャーチ/ザックは養護施設に暮らすダウン症の青年。子どもの頃からプロレスラーに憧れていた彼はある日、プロレスラーの養成学校を目指して施設を脱走する。一方、孤独な漁師のタイラーは、無許可で漁をしていて地元漁師とトラブルになり、ボートで逃亡を図る。
ダウン症の役者はとてもよかったのだが、その他のキャラに今一つ魅力が感じられず。2021.6

ビリー
ジェイムス・エルスキン監督/ビリー・ホリデイに関する本を書こうと取材をしていた女性が亡くなった後、取材テープを再編成してつくられたドキュメンタリー。
 稀有のジャズ歌手ビリー・ホリデイについては『奇妙な果実』で黒人差別を告発する歌を歌ったことや、ドラッグ依存で命を縮めたことぐらいしか今まで知らなかった。ビリーはブルースを歌うことを要求されてうんざりしていた、肌の色が薄いので黒くしていた、などなど、ステレオタイプの黒人女性のイメージを押し付けられていた逸話など、意外な話も多く、勝手に彼女のイメージをつくってしまっていた自分を反省。
 ドキュメンタリーの構成としては、本人が歌う姿の映像や本人の生の声がもっとあればなあ、という感じ。ビリー・ホリデイの人となりを知る周りの人へのインタビューが主で、かつ彼女を取材していた女性の話も入ってきて、多少、焦点がぼやけてしまった感あり。最後まで謎の部分も多い異色のドキュメンタリーだった。2021.7

ブニュエルと亀甲のラビリンス Bunuel en el laberinto de las torgugas
監督: サルバドール・シモ/1930年のパリ。スペインの新進の映画監督ルイス・ブニュエルは、次の映画にスペインの貧困村ラス・ウルデスについてのドキュメンタリーを企画するが、資金が集まらずにいた。友人のラモン・アシンは、宝くじが当たったら製作資金に充てると約束。その宝くじが当たり、映画の撮影が始まる。
 鬼才ブニュエルの映画への執念を、アニメと実際の作品映像を絡めて描いた作品。黒沢や勝、ギリアムにも通じる映画製作への執着が、ひしひしと伝わってくるアニメ作品だった。ブニュエル作品ファンでなくても楽しめます。2021.7

フェアウェル THE FAREWELL
監督:ルル・ワン 出演:オークワフィナ |チャオ・シュウチェン | ダイアナ・リン、水原碧衣/ニューヨークに暮らすビリーは、大好きな祖母ナイナイがガンで余命3ヵ月の宣告を受けたと知り、両親とともに中国へ帰郷する。家族は最後まで病のことはナイナイには伏せておくというが、ビリーは納得できない。
 中国と米国、二つの国に分かれて暮らすファミリーの姿を丁寧に見つめた作品。移民ならではのアイデンティティーの悩みや文化の違い。そうだろうなあ、と予想はできたが、今一つ入り込めず。これって監督の実話?なら、彼女はのちに自分の道を見つけたのですね。2021.7

続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画 BORAT SUBSEQUENT MOVIEFILM
監督:ジェイソン・ウォリナー 出演:サシャ・バロン・コーエン | マリア・バカローヴァ/アメリカのトランプ政権に媚びを売るため、娘を連れてアメリカいりしたボラットが大暴れ。娘をエロ政治家への貢物にするために大変身させるのだが…。
実名と本物がぐっちゃぐちゃに入り乱れ、お下劣をやりたい放題の二人には、顔をしかめながらも笑ってしまった。こういう映画を評価する米国の映画界はやっぱりオープンということなのか?好きではないけど、権力にすり寄ったり忖度しない芸風にはアッパレ。2021.8

ホワイト・ストーム THE WHITE STORM 2: DRUG LORDS
監督:ハーマン・ヤウ 出演:アンディ・ラウ | ルイス・クー | ミウ・キウワイ/元ヤクザのアンディが、親分から制裁を受け指を失った元仲間と反目し、命を狙われるノワール映画。ヤクザの親分に可愛がられて今は堅気、というアンディの設定が「インファナル・アフェア」とかぶっていて、かなり意識的に作られてる感あり。ライバル役の役者も味があっていいのだが、やっぱりトニー・レオンの印象が強いので、ちょっと物足りなさも感じた。でも懐かしい香港映画の香りもぷんぷんして、楽しめました。検閲が始まると娯楽映画も変わってしまうのかなあ。とっても残念。2021.6

マーティン・エデン MARTIN EDEN
監督:ピエトロ・マルチェッロ 出演:ルカ・マリネッリ | ジェシカ・クレッシー | カルロ・チェッキ/貧しい船乗りの青年マーティンは、ブルジョワ階級の令嬢エレナと出会い恋に落ちる。マーティンはエレナに少しでも近づきたいと読書に目覚め、独学で作家を目指すようになる。主演俳優は魅力的ではあるのだがさほど琴線に触れず。物語もステレオタイプ。2021.7

レイニーデイ・イン・ニューヨーク A RAINY DAY IN NEW YORK
監督:ウディ・アレン 出演:ティモシー・シャラメ | エル・ファニング | セレーナ・ゴメス、ディエゴ・ルナ/ギャツビーとアシュレーは地方の大学に通う学生カップル。アシュレーが有名な映画監督のポラードにインタビューできることになり二人はマンハッタンにやってくる。生粋のニューヨーカーであるギャツビーは旧友に頼まれ撮影の手伝いをするハメになり…。
 ウディ・アレン映画らしいウィットに富んだ台詞が楽しめた。ティモシーもエルもさすが若手の実力派だけあり、しっかりアレン映画にはまっていた。軽い気持ちで楽しめた。ディエゴ・ルナが遊び人のスター俳優役だったのが以外だったが、しっかりはまってました。2021.8


君の心に刻んだ名前 YOUR NAME ENGRAVED HEREIN
監督:リウ・クワンフイ 出演:エドワード・チェン | ツェン・チンフア | ジェイソン・ワン/台湾の戒厳令が解除になった80年代に、規律の厳しい男子校に通う二人の青年が、互いに強く惹かれ合いながらも、本心を告げられずに苦悩する姿を描いた作品。シンプルだが切ない青春映画。二人の少年が美しくて、見ていて飽きなかった。テイストは韓国映画風。若いころに見たら、もっと感情移入できたかも。2021.4

グリンゴ/最強の悪運男 GRINGO
監督:ナッシュ・エドガートン 出演:デヴィッド・オイェロウォ | シャーリーズ・セロン | ジョエル・エドガートン/製薬会社で真面目に働いてきたハロルドは、上司と妻に裏切られ、自暴自棄になる。出張先のメキシコで偽装誘拐を企てるが…。普通に面白かった~けど、見たのも忘れてしまうようなシンプルな映画。2021.5

ジェントルメン THE GENTLEMEN 
監督:ガイ・リッチー 出演:マシュー・マコノヒー | チャーリー・ハナム | ヘンリー・ゴールディング、コリン・ファレル
/ロンドンで大麻ビジネスを展開して莫大な資産を築いたアメリカ人のミッキー。彼の後釜を狙うチャイニーズ系、ユダヤ系、そしてゲスな英国人探偵が、金と利権を巡って探り合いを始める。
 今の世界の権力争いを揶揄するようなストーリー展開。見事に全員悪人ではあるのだが、唯一善人なのがコリン・ファレル扮する謎の男とその手下。コリン・ファレル、やっぱり大好きだわあ。と再確認。「ベニスの商人」の話が出てきたのはわかったのだが、たぶん、いろいろウィットに富んだ台詞があったんだろうなあ。もう一度見てみたい。久々にガイ・リッチー節炸裂!の映画でした。2021.5

新聞記者
監督:藤井道人 出演:シム・ウンギョン | 松坂桃李 | 本田翼/東都新聞社会部の若手記者・吉岡のもとに大学新設計画に関する極秘情報が記された匿名FAXが届く。一方、内閣府情報調査室の若手エリート、杉原は、公にはできない闇仕事をする日々を送っている。大使館勤務時代の上司・神崎から呼び出され、旧交を温めた矢先、神崎が自殺する。
 現実のモリカケ事件や、しおりさん性被害事件などを背景にしているので、物語がリアルでぞっとした。ドキュメンタリーが面白かったので、フィクションには期待していなかったのだが、別物だった。苦いエンディングも現実にありそうな話。もし本当にかけ学園設立の裏の目的が生体実験場だったら、と想像してしまった。2021.5

スキャンダル BOMBSHELL
監督:ジェイ・ローチ 出演:シャーリーズ・セロン | ニコール・キッドマン | マーゴット・ロビー、ジョン・リスゴー/保守系テレビ局FOXニュースのCEOにしてアメリカTV界の帝王と恐れられるロジャー・エイルズからセクハラを受けたと告発した元キャスターのグレッチェン・カールソン。一方、看板キャスターのメーガン・ケリーは、女性蔑視が目に余るトランプ大統領候補への対決姿勢を鮮明にしていく。そんな中、メインキャスターの座を狙う野心あふれる若手ケイラ・ポスピシルは、ついにロジャーとの面接のチャンスを得るが…。実際に起こったセクハラスキャンダルの映画化。ジョン・リスゴーが別人顔に変身していてびっくり!セクハラ問題は万国共通ですね。2021.5

スパイの妻
監督:黒沢清 出演:蒼井優 | 高橋一生 | 坂東龍汰、東出昌大、恒松祐里、笹野高史/ 1940年、神戸。貿易会社を営む夫の福原優作と何不自由ない生活を送っていた聡子。満州から戻った優作のある秘密を知った聡子は…。ベネチアで監督賞受賞は喜ばしいのだが、蒼井の演技が苦手なせいか、あまり心は動かされず。2021.5

友罪
監督:瀬々敬久 出演:生田斗真 | 瑛太 | 夏帆/過去のある行いへの罪を感じながら寮のある町工場に流れ着いた元記者の益田。同じ日に入った鈴木は、17年前に日本中を震撼させた凶悪事件を起こした少年Aだった。瀬々監督は『ヘブンズ・ストーリー』『楽園』でも罪と償いについて描いていた。おそらくこのテーマに興味があるのだろう。 瑛太は演技上手いなあ。複雑な青年役を見事に演じていた。一つ気になったのが、鈴木と出会って恋をする女性の描き方。ポルノ映画出身監督のせいなのか、他の作品にも言えるが『菊とギロチン』以外は、耐える女が男性の理想目線に感じた。2021.5

TENET テネット
クリストファー・ノーラン監督、ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、マイケル・ケイン、ケネス・ブラナー出演/ウクライナの劇場で起きたテロ事件で人質救出作戦に参加した男は、適性を見込まれ未来からやって来た敵と戦うミッションを命じられる。男は、時間を逆行させ敵と戦う。
 時間を逆行させて闘う特撮シーンはお見事!なのだが、見ているうちに慣れてしまいだから何?っていう感じ。物語も難解で、2度見したがそんなに複雑な話でもない気もするし。ソ連のある町、というのはチェルノブイリのこと?そこにプルトニウムを隠すっていうのはなるほどね、ではあるのだが、テロを企てた悪者の目的が希薄。私的にはちょっと期待はずれ。2021.5


ビーチ・バム まじめに不真面目 THE BEACH BUM
監督:ハーモニー・コリン 出演:マシュー・マコノヒー | スヌープ・ドッグ | アイラ・フィッシャー/天才と称えられた詩人のムーンドッグは、大富豪の妻ミニーの庇護のもとで、日々バカ騒ぎに明け暮れていた。ある日、妻のミニーが事故死してしまい…。
 『ラスベガスをやっつけろ』的なクレージーな映画を期待していたのだが…。ムーンドッグの奇天烈さが中途半端で、映像もさほど美しいとも思えず…。ハーモニー・コリン監督の作品は正直、いつも期待はずれ。2021.5

ホムンクルス
監督:清水崇 出演:綾野剛 | 成田凌 | 岸井ゆきの/記憶を失い新宿で車上生活を送る名越に研修医・伊藤が、頭蓋骨に穴を空ける“トレパネーション”をしないか、と持ちかける。サイコサスペンスタッチで見ごたえあり。綾野剛はテレビドラマよりも映画の個性的な役の方が断然光る。2021.4

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ
ジョー・タルボット監督、ジミー・フェイルズ、ジョナサン・メジャース、ダニー・グローヴァー出演/サンフランシスコで親友モントの家に居候している黒人青年ジミーは、かつて暮らしていて、今は富裕層の街となった古い一軒家を心の底から愛していた。“サンフランシスコで最初の黒人”と呼び、祖父が建てた家であると信じているジミーは、空き家になった家に、昔の家具を持ち込んで暮らし始める。
 サンフランシスコの地価高騰のニュースは聞いていたので、興味深かった。単なる格差映画ではなく、いつも罵倒されながらも良き友人であった男の死や、脚本家を目指す風変りな友人のキャラなど、丁寧に描かれていた。分かりやすい映画ではないのだが、小道具やファッションもお洒落で楽しめた。監督の次回作にも期待大。2014.5

リトル・ジョー LITTLE JOE
監督:ジェシカ・ハウスナー 出演:エミリー・ビーチャム | ベン・ウィショー | ケリー・フォックス/息子のジョーと2人暮らしのシングルマザー、アリスは、バイオ企業で新種の植物開発に携わる女性研究者。ある日彼女は、持ち主に幸福をもたらす美しい真紅の花の開発に成功。“リトル・ジョー”と名付け大切に育てていたが、その花粉を吸い込んだ助手クリスの言動に違和感を抱き始める。
 謎の花粉の感染の仕方が、コロナウイルスのようでぞっとした。時代を予言した映画。2021.5

ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋 LONG SHOT
監督:ジョナサン・レヴィン 出演:シャーリーズ・セロン | セス・ローゲン | オシェア・ジャクソン・Jr/記者のフレッドはあるパーティの会場で、幼い頃にベビーシッターをしてくれた初恋の人シャーロットと再会。彼女は国務長官として注目されていた。
 格差のある男女の恋をコミカルに描いた作品。単純だけど楽しめた。2021.6

ジョジョ・ラビット JOJO RABBIT
監督・出演:タイカ・ワイティティ 出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス | トーマシン・マッケンジー/第二次世界大戦下のドイツ。母と2人暮らしの10歳の少年ジョジョはヒトラーを信奉するナチス少年。だが、ユダヤ人の少女が自宅に隠れていると知り…。
戦時中は日本にもこういう洗脳された少年が大勢いたんだろうなあ。ユダヤ人少女が辛辣な台詞を吐くのが今風。お涙頂戴のドラマじゃなかったのが好感が持てた。2021.6

スプリット SPLIT
監督:M・ナイト・シャマラン 出演:ジェームズ・マカヴォイ | アニャ・テイラー=ジョイ | ベティ・バックリー/ケイシー、クレア、マルシアの女子高生3人は多重人格の男に拉致監禁されてしまう。本格的なサイコサスペンスで怖かった。ジェームズ・マカヴォイ、名演でした。2021.4

時の面影
サイモン・ストーン監督、リリー・ジェームズ、レイフ・ファインズ、キャリー・マリガン出演/第2次世界大戦にイギリスが突入する直前に、イギリスのある邸宅の敷地で世界を驚かす古代の調度品が発見される。地味だけど考古学者のロマンを感じさせるいい映画だった。実話とのこと。いつか大英美術館に見に行きたい。2021.4 Netflix

ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌- HILLBILLY ELEGY
監督:ロン・ハワード 出演:エイミー・アダムス | グレン・クローズ | ガブリエル・バッソ/田舎町に暮らす少年J・D・ヴァンスは、看護師として働きながらもドラッグ中毒となった母ベヴに人生を翻弄されてしまう。思春期の孫の行く末を心配した祖母は、孫を引き取ることに。苦労しながら弁護士になった男性の実話とのこと。典型的なアメリカンドリーム映画で安心して見られた。役者がそれぞれさすがの存在感。ハワード監督の真骨頂という感じの優等生映画だった。2021.4

マルコム&マリー MALCOLM & MARIE
監督:サム・レヴィンソン 出演:ゼンデイヤ | ジョン・デヴィッド・ワシントン/新進気鋭の映画監督が、授賞式の後、自宅に戻ると、恋人から辛辣な言葉を浴びせられる。
セレブの仲間入りをしたばかりの若手監督とその恋人との一晩の会話をおしゃれにまとめた作品。監督はバリー・レビンソンの息子、俳優はデンゼル・ワシントンの息子。2021.4

ミッドナイト・スカイ THE MIDNIGHT SKY
監督:ジョージ・クルーニー 出演:ジョージ・クルーニー | フェリシティ・ジョーンズ、デヴィッド・オイェロウォ/リリー・ブルックス=ダルトンのSF小説『世界の終わりの天文台』を映画化したNetflix作品。何らかの災厄によって人類がいなくなり、謎めいた少女とふたりきりで北極圏に居残り、ミッションを終えて帰還しようとしている探査船に地球の危機を伝えようと交信を試みる老科学者オーガスティンと、地球との交信が途絶え、不安を抱えながらも仲間たちとともに地球へ向けて航行を続ける探査船の乗組員サリーの運命を描く。宇宙船の映像や北極の氷のシーンなど、拘りが感じられる作品で劇場で見たかった。環境破壊が進む地球への警笛ではあるのだが、説教臭さはなく、上質のSF映画だった。派手さはないけど、クルーニーらしい作品。2021.4

ザ・プロム THE PROM
監督:ライアン・マーフィー 出演:メリル・ストリープ | ジェームズ・コーデン | ニコール・キッドマン/インディアナ州の田舎町に暮らす女子高生のエマはレズビアンであるためプロムに参加することをPTAに阻止されている。一方、ベテラン舞台俳優ディーディーとバリーは、批評家に酷評され舞台が打ち切りに。話題づくりにエマのために人肌脱ぐことにする。楽しいミュージカルなんだけど説教くさく感じてしまったのはなぜだろう?2021.4

私というパズル PIECES OF A WOMAN
監督:コルネル・ムンドルッツォ 出演:ヴァネッサ・カービー | シャイア・ラブーフ | エレン・バースティン/自宅での出産にこだわった女性が、赤ん坊に起こった悲劇と向き合う過程をじっくりと描いた作品。「ホワイト・ゴッド」が好きな作品なので期待したが、正直苦手な作品。徹底した心理描写への拘りはわかるのだが、裕福で保守的な母親のデリカシーのない言動も娘を思ってのことだろうし、彼女を支えようとしながらも空回りしてしまう夫の気持ちもわかるので、はっきりしない彼女の態度に少々、イラっとした。またそれが監督の意図するところであるのもすけて見えた。ベネチアで女優賞受賞は異論はありませんが。2021.4



2020年度 (その他)

悪の偶像 Idol
監督:イ・スジン 出演:ハン・ソッキュ | ソル・ギョング | チョン・ウヒ/知事選の最有力候補ク・ミョンフェは息子のヨハンが飲酒運転中に人をはねた上、遺体を自宅ガレージに運び込み、隠ぺい工作をしたと知る。ミョンフェは死体を現場に戻し、ヨハンを自首させイメージアップを謀る。被害者の父ユ・ジュンシクは息子の新妻で中国からの不法滞在者リョナを探し始める。複雑なサスペンスドラマ。韓国の大御所二人が懐かしかった。2021.2

在りし日の歌 地久天長 SO LONG, MY SON
監督:ワン・シャオシュアイ 出演:ワン・ジンチュン | ヨン・メイ | チー・シー/1980年代の中国。地方都市に暮らすヤオジュンとリーユンの夫婦は息子のシンと幸せな日々を送っていた。リーユンは2人目を妊娠したことが発覚。“一人っ子政策”のために堕胎させられ、二度と妊娠できない身体になってしまう。そんなある日、同僚夫婦の息子に川遊びに誘われたシンが事故で命を落とす。壮絶な夫婦のドラマ。中国の文革や一人っ子政策、現代の格差社会などが丁寧に描かれていて見ごたえがあった。この映画は中国で上映できたのだろうかが気になります。2021.2

エンテベ空港の7日間 ENTEBBE
監督:ジョゼ・パヂーリャ 出演:ロザムンド・パイク | ダニエル・ブリュール | エディ・マーサン/1976年6月27日。イスラエルのテルアビブからパリへ向けて出発したエールフランス139便が、4人のハイジャック犯によって乗っ取られる事件が発生する。犯人o二人のパレスチナ人で、他の2人は西ドイツの過激派組織メンバー、ボーゼとクールマン。飛行機はウガンダのエンテベ空港へ降り立ち、人質たちは空港ビルの旧ターミナルに監禁される。犯人側から服役中の仲間たちの釈放などの要求を突きつけられたイスラエル政府では、交渉止むなしの立場に傾くラビン首相とそれに断固反対するペレス国防大臣の対立が表面化していく。実録物が得意なパヂーリャ監督らしい骨太のサスペンス。イスラエル側と犯人側、どちらにも肩入れしないで映画いているので、分かりづらさはあったが、この事件をまったく知らなかったので勉強になった。イスラエル側の犠牲者兵士の兄が今の強権派のイスラエル首相とのこと。過去を清算できないまま、イスラエルとパレスチナはどこへ向かうのだろう…。2021.2

カポネ
監督:ジョシュ・トランク 出演:トム・ハーディ | リンダ・カーデリーニ | ジャック・ロウデン、マット・ディロン/40年代半ば。刑期を終え、フロリダの豪邸で家族や友人に囲まれ、静かな隠遁生活を送っていたアル・カポネ。梅毒の影響による認知症や脳梗塞などの病で満身創痍のカポネに対し、FBIは大金の在処を突き止めようと監視を続ける。
 徐々にボロボロになっていくカポネをハーディが熱演。七変化俳優デニーロの後継者とも呼べそうな迫真の演技だった。だけど内容的には特に驚きもなく…。カポネの幻覚のシーンに物足りなさを感じた。2021.3

9人の翻訳家 囚われたベストセラー LES TRADUCTEURS
監督:レジス・ロワンサル 出演:ランベール・ウィルソン | オルガ・キュリレンコ | リッカルド・スカマルチョ/世界的ベストセラー『デダリュス』3部作の完結編『死にたくなかった男』の出版権を獲得した出版社社長アングストロームは、各言語の翻訳者9人を豪邸の地下室に集める。情報流出を防止するため監禁状態で翻訳作業が始まるが、ある日ネットに作品の冒頭10ページが流出する。
 よくできたミステリー。からくりがよくわからなくてもう一度見直してしまった。なんとなく予想は出来たので、結論にさほど驚きはなかったが、展開は面白く見れた。2021.3

これからの人生 LA VITA DAVANTI A SE
エドアルド・ポンティ監督、ソフィア・ローレン、イブラヒマ・ゲイェ、レナート・カルペンティエリ/セネガルで生まれた孤児のモモは老婦人ローザの元で暮らし始める。反抗的なモモに手を焼くが…。ローザの心が次第に壊れていく過程が辛く悲しかった。もう少しモモとローザの心理描写が細かく描けていればなあ。1時間半だと登場人物が多すぎて、深みにに欠けた。惜しい感あり。2021.4 Netflix

ザ・ホワイトタイガー THE WHITE TIGER
ラミン・バーラニ監督、アダーシュ・ゴーラヴ、ラージクマール・ラーオ/インドの田舎から出てきた野心家の青年は、資産家の息子に気に入られ、運転手になるが…。格差社会のインドでのし上がろうとする青年の姿を独白という形で描いた作品。『パラサイト』のインド版ではあるのだが、エンディングを悲劇的に描かないあたりが面白い。エンタメ性も残しているので見やすかった。2021.4 Netflix

さらば愛しきアウトロー THE OLD MAN & THE GUN
監督:デヴィッド・ロウリー 出演:ロバート・レッドフォード | ケイシー・アフレック、ダニー・グローヴァー、トム・ウエイツ/1980年代初頭のアメリカ。74歳のフォレスト・タッカーは、紳士的な銀行強盗として名をはせていた。何度も脱獄を繰り返し、銀行強盗そのものを楽しんでいる。偶然出会った未亡人ジュエルとも恋に落ちるのだが…。
 レッドフォードが引退作品に選んだのはこれなのか、と思っただけで感慨深いものあり。『明日に向かって撃て』と『スティング』が、映画好きになった原点なので、感謝でいっぱいです。エリートやヒーローものではなく、最後は愛すべき犯罪者役を選んだのも好印象。レッドフォードの肩ひじ張らない素敵な生き方にアッパレです。2021.3

シチリアーノ 裏切りの美学 IL TRADITORE
監督:マルコ・ベロッキオ 出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ | ルイジ・ロ・カーショ | マリア・フェルナンダ・カーンヂド/実録マフィア映画。イタリア版、「仁義なき戦い」&「ナルコス」。シチリアでマフィアの抗争が激化していた1980年代初頭。パレルモ派の大物ブシェッタは抗争の仲裁に失敗しブラジルに逃れるが、家族や仲間たちがコルレオーネ派によって次々と抹殺されていく。ブラジルで逮捕されイタリアに引き渡された彼は、マフィア撲滅に執念を燃やすファルコーネ判事に協力することを決断する。 出てくるマフィアが多すぎて誰が誰だかよくわからないのだが、マフィアの実像を明らかにしたブシェッタの勇気にはアッパレ。ほかのマフィアがもう少しイケメン揃いだったらより楽しめたのだけど、硬派なベロッキオ監督だから、そこはあえてエンタメ色を出さなかったのでしょう。実話なだけに見ごたえあり。2021.3

シカゴ7裁判 THE TRIAL OF THE CHICAGO 7
監督:アーロン・ソーキン 出演:サシャ・バロン・コーエン | エディ・レッドメイン | ヤーヤ・アブドゥル=マティーン二世/1968年8月、シカゴでベトナム戦争に反対する大規模なデモが行われ警官隊と衝突。責任を問われ首謀者とされた7人が逮捕・起訴されるが、彼らは別々の組織に属していた。ニクソン政権下の偏見に満ちた司法制度を糾弾したアメリカらしい社会派映画。法廷侮辱罪にも屈せずに闘う被告の熱い姿は素直にかっこよかったです。7人の一人は、ジェーン・フォンダの元夫だった有名な活動家とのこと。ハリウッドが好むテイストなのでアカデミー賞とるかも。2021.4 Netflix

スパロークリーク 野良犬たちの長い夜 THE STANDOFF AT SPARROW CREEK
ヘンリー・ダナム監督、ジェームズ・バッジ・デール、ブライアン・ジェラティ、クリス・マルケイ/右翼の民兵のアジトから銃が盗まれ、警察官襲撃に使われた。民兵たちは、組織を守るために仲間の中から、犯人捜しを始めるが…。一幕ものの仲間割れドラマ。『ユージュアル・サスペクツ』を思わせる展開で楽しめた。俳優陣がもう少し魅力があればよかったかな。地味でした。2021.3

Fukushima 50
監督:若松節朗 出演:佐藤浩市 | 渡辺謙 | 吉岡秀隆/福島第一原子力発電所の事故現場で命をかけた職員たちの物語。キャラクターが丁寧に描かれていて感情移入できたのだが、事故の臨場感は弱いかな。「生きて帰れて良かった」で終わらずに、その後も少しだけ描いてくれたのは好印象。いろいろ批判もされた作品ではあるが、いろんな視点から描くのはいいことだと思います。ドキュメンタリーとフィクション、両方見ているのでいろいろと感じるものがあった。2021.3

プライベート・ウォー A PRIVATE WAR
監督:マシュー・ハイネマン 出演:ロザムンド・パイク | ジェイミー・ドーナン | トム・ホランダー/英国サンデー・タイムズ紙の特派員として活躍するアメリカ人記者のメリー・コルヴィン。2001年にはスリランカでの取材中に戦闘に巻き込まれ、左眼を失明してしまう。実在した女性戦場ジャーナリストの半生を描いた作品。日本では生まれにくいヒロインもの。勇敢な女性を賛美する風土が日本にはないので羨ましくもあった。正攻法で描いていたのでとくに目新しさはなかったが、こういう女性がいた、ということを知れてよかったです。2021.3

ブルータル・ジャスティス DRAGGED ACROSS CONCRETE
監督:S・クレイグ・ザラー 出演:メル・ギブソン | ヴィンス・ヴォーン/ベテラン刑事のブレットとその相棒トニーは逮捕時の行き過ぎた行為が問題となり無給の停職処分となる。家族のために金が必要なブレットはトニーを誘い、ボーゲルマンという男の監視を始める。警官が強盗を追跡して金を奪おうとするけれど、ドンデン返しがあり…、というお決まりだけど面白い展開で見ごたえはあるのだが、前半部分があまりにも長すぎて…。もう少しスピーディーに描いたら楽しめたのだが。2021.3

ペトラは静かに対峙する PETRA
監督:ハイメ・ロサレス 出演:バルバラ・レニー | アレックス・ブレンデミュール | ジョアン・ボテイ、マリサ・パラデス/ある日、著名な彫刻家にして資産家のジャウメのアトリエに、画家のペトラが現われる。ペトラはジャウメが自分の本当の父親かどうかを確かめようとする。時系列を複雑にして、サスペンス風にした構成がユニーク。ただ内容が大映ドラマ風な人間模様で、最初からある程度展開が読めてしまった。役者陣が豪華なだけに、もうちょっとキャラクターの心理描写があればなあ。残念。2021.3

マ・レイニーのブラックボトム MA RAINEY'S BLACK BOTTOM
ジョージ・C・ウルフ監督、ヴィオラ・デイヴィス、チャドウィック・ボーズマン、グリン・ターマン/ブルースの母と呼ばれたマ・レイニーのスタジオ録音での出来事を描いたオーガスト・ウィルソンの戯曲の映画化。会話劇なので日本人にはとっつきにくいのだが、すでに病気が進行していたと思われる痩せたチャドウィックが、神に訴える台詞は鬼気迫るものがあった。『ブラックレイン』の松田優作の演技を思い出してしまった。2021.4 Netflix

読まれなかった小説 THE WILD PEAR TREE
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン 出演:アイドゥン・ドウ・デミルコル | ムラト・ジェムジル | ベンヌ・ユルドゥルムラル/作家を夢みるシナンは、大学を卒業し、トロイ遺跡近くの故郷へと戻ってくる。父のイドリスは競馬好きのダメ教師で、シナンはそんな父を受け入れられない。長ーい会話劇が何層にも重なり合って物語が展開していくジェイランらしい作品。父と子の関係が丁寧に描かれていて、見ごたえはあるのだが…。いつも思うが長すぎる…。でも驚きも多いからつい最後まで見てしまう。一気に3時間は見れないのですが、この長さを摘まもうとしない作家の拘りに感服します。2021.2

ザ・ライダー
監督:クロエ・ジャオ、出演:ブレイディ・ジャンドロー、ティム・ジャンドロー、リリー・ジャンドロー/ロデオの名手だったが青年は、事故に遭い、新たな人生をどう生きるか思い悩む。俳優がほぼ素人で、重傷を負った友人役もリアルな姿ということ。限りなくドキュメンタリーに近い作品。このような静かな作品を中国出身の女性監督が撮ったということが驚きだった。2021.4 NETFLIX

LORO 欲望のイタリア
監督:パオロ・ソレンティーノ 出演:トニ・セルヴィッロ、エレナ・ソフィア・リッチ/イタリアのメディア王から政界へと進出し、数々の疑惑やスキャンダルにまみれながらも3度にわたって合計9年間もイタリア首相の座に君臨したシルヴィオ・ベルルスコーニをモデル。映像が美しく構成も凝っているのだが、内容にはついていけず。フェリーニっぽさもあるのだが、イタリアの腐敗政治を揶揄しているのだろうけど、イタリアのことをよく知らないので、さっぱりわからなかった。2021.3

楽園
監督:瀬々敬久 出演:綾野剛 | 杉咲花 | 佐藤浩市/喉かな田園地帯で小学生・愛華がY字路でこつ然と姿を消した。12年後、愛華の親友だった紡は罪悪感を拭えずにいた。一方、外国籍の女性の息子・豪士は閉鎖的な田舎町の隅っこで暮らしている。住民たちは、豪士が少女の失踪事件の犯人だと言い出し…。田舎の閉鎖性がきっかけで起こった二つの悲しい事件を、村八分にされた側から描いた作品。役者陣が上手くて見ごたえあり。やっぱり綾野剛の演技は映画でこそ光る。個性的な役を見事に演じていた。逆に後半の佐藤浩市編は今一つ。綾野剛編にしぼってほしかった感あり。おそらく瀬々監督は、複数の物語をくっつけるのが好きなのでしょう。「菊とギロチン」と「ヘヴンズストーリー」が名作なだけに期待し過ぎてしまった。2021.3


あの夜、マイアミで ONE NIGHT IN MIAMI
監督:レジーナ・キング、出演:キングズリー・ベン=アディル | イーライ・ゴリー | オルディス・ホッジ/サム・クックとマルコムX、カシアス・クレイ、ジム・ブラウンという各界の黒人の英雄が、マイアミのホテルの一部屋に集まって語らう架空の舞台劇を映画化。白人が好むポピュラー音楽に傾倒するサム・クックをマルコムXが非難し、ボブ・ディランを引き合いに出すやり取りが面白かった。奇しくも二人はほぼ同じ時期に怪しい死に方をしているし…。架空ではあるが、当時の黒人差別やイスラム教への傾倒など、会話の中から社会情勢も空けて見えて興味深かった。個人的にはサム・クックの存在が気になったが、死に方が悲惨だったせいか、音楽的評価もやぶの中の感あり。2021.1

イエスタデイ YESTERDAY
監督:ダニー・ボイル、出演:ヒメーシュ・パテル | リリー・ジェームズ | ケイト・マッキノン/売れないミュージシャンのジャックが夢を諦めたその日、世界規模で12秒間の大停電が起きる。その瞬間、交通事故に遭い、意識を失って病院に担ぎ込まれたジャック。彼が目覚めると、そこはなぜか歴史上からビートルズの存在が完全に消えた世界になっていた。ジャックが仲間たちに弾き語りでビートルズの『イエスタデイ』を披露すると、幼なじみで友人のエリーは初めて聴く美しいメロディに驚く。
 予定調和ではありましたが、ビートルズの曲への敬意が溢れていて、よい話でした。名曲を金儲けに使わない決断をしたジャックにブラボー!2021.1

1917 命をかけた伝令
監督:サム・メンデス、出演:ジョージ・マッケイ | ディーン=チャールズ・チャップマン | マーク・ストロング/第一次世界大戦西部戦線。イギリス軍の若い兵士スコフィールドとブレイクは、ドイツ軍の罠を知らせるために、伝令に向かう。評価が高いので見てみたが、見飽きた感のある戦場もの。2021.1

風をつかまえた少年 THE BOY WHO HARNESSED THE WIND
キウェテル・イジョフォー監督・出演、マックスウェル・シンバ、アイサ・マイガ出演/2001年、アフリカの最貧国のひとつマラウイを大干ばつが襲う。14歳のウィリアムは飢饉による貧困で学費を払えず通学を断念するが、図書館で一冊の本と出会い、独学で風力発電のできる風車を作り、乾いた畑に水を引くことを思いつく。少年の向学心には頭が下がるが、それよりも20年前の生活とは思えないマラウイの貧しさに愕然とした。JICAも協力隊も大勢いっているようだけど、小さな村までは支援が届いていないのでしょう。世界は広い。格差問題を解決するのは長い時間がかかりそう。2021.1

記憶にございません!
監督:三谷幸喜 出演:中井貴一 | ディーン・フジオカ | 石田ゆり子/内閣総理大臣の黒田は、演説中に聴衆から飛んできた石が頭に当たって昏倒し、そのまま病院送りに。ベッドの上で目覚めた黒田は一切の記憶を失っていた。「民王」に似ていて新鮮味なし。昔の暴君時代との比較がほとんどないので、ただのいい人になっていて期待外れ。2021.1

KCIA 南山の部長たち THE MAN STANDING NEXT
監督:ウ・ミンホ 出演:イ・ビョンホン | イ・ソンミン | クァク・ドウォン/大統領の直属の機関、韓国中央情報部(KCIA)のトップだったパク元部長が亡命し、アメリカの議会で韓国大統領の腐敗を告発する証言を行った。現部長キムが事態の収拾を命じられアメリカへ渡り、パクに接触する。
 事実に基づいたフィクション、ということだが、最後に実際の映像や音声がはいることもありかなりリアルだった。人間関係が複雑でパリでの暗殺シーンは誰が誰に命じられたのかよくわからず。それよりもじわじわと追い詰められていくキムの内面描写が見ごたえあった。ビョンホンもこの役に難しさを感じていたとのこと。そうだろうなあ。実在する暗殺犯を演じるのだし。当時は、エリートの嫉妬による殺人として片づけられたようだが、
アメリカからの圧力もあっただろうし。プロのヒットマンに依頼せず、自ら手を下したことに、仕事としてだけでは片づけられない強い思いがあったのでしょう。2021.2

サイド・エフェクト SIDE EFFECTS
監督:スティーヴン・ソダーバーグ、出演:ジュード・ロウ | ルーニー・マーラ | キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、チャニング・テイタム/インサイダー取引で服役していた夫マーティンが出所した。妻エミリーはうつ病に苦しめられ自殺未遂。精神科医のバンクスは、彼女に新薬を処方する。毒婦もので見ごたえあり。なのだが、1度どこかで見た記憶があったので今一つドキドキできず。ルーニーは清楚に見えるのだが、癖のある役も上手。ホアキンと夫婦になれるぐらいだから、かわいいだけじゃない女優なのでしょう。2021.1 アマゾンプライムにて

30年後の同窓会 LAST FLAG FLYING
監督:リチャード・リンクレイター、出演:スティーヴ・カレル | ブライアン・クランストン | ローレンス・フィッシュバーン/ベトナム戦争を経験した元軍人のドクは、妻に先立たれた上、2日前には一人息子をイラク戦争で亡くしてしまう。ドクは共に戦った旧友サルとミューラーを訪ね、息子の軍葬に一緒に行ってほしいと頼む。
さりげないやさしさを描くのがうまい監督らしく、人間関係が丁寧に描かれていた。地味だけど、とてもいい映画。ローレンス・フィッシュバーンは「地獄の黙示録」でもベトナム従軍兵役で殺されたことを思い出してしみじみ。2021.1 アマゾンプライムにて

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語 LITTLE WOMEN
監督:グレタ・ガーウィグ、出演:シアーシャ・ローナン 、エマ・ワトソン 、ティモシー・シャラメ、ローラ・ダーン、メリル・ストリープ/1860年代のアメリカ、マサチューセッツ州。マーチ家の四姉妹の次女ジョーの夢は小説家になること。長女のメグは結婚こそが女の幸せと信じる保守的な女性、末娘エイミーは生意気盛で負けづ嫌いの明るい女の子。そして三女のベスは、病気と闘っていた。
 子供のころに誰もが読んだことのある「若草物語」を現代風にアレンジ、という宣伝文句に騙され期待しすぎたせいか、「若草物語」そのものじゃない、という感想しか持てず。「エンディングでは女は結婚させないと売れない」といわれ編集者に従わざるを得ない時代性も伝えたかったのだとは思うが、さほどインパクトなし。2021.1

ソング・トゥ・ソング SONG TO SONG
監督:テレンス・マリック、撮影:エマニュエル・ルベツキ、出演:マイケル・ファスベンダー | ライアン・ゴズリング | ルーニー・マーラ/音楽の街オースティンを舞台に、美しい4人の男女が織りなす恋愛模様。映像の美しさは予想通りだったが、音楽がたくさん出てくる割に、印象に残る曲がなかった。イギー・ポップ、パティ・スミスも出てきても、今一つピンとこず。もっとも印象に残ったのが、おデブになったヴァル・キルマーの切れっぷり。ヴァル・キルマーといえば「ドアーズ」でジム・モリソンを演じたときは美しかったなあ。懐かしや。2021.1

チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛 TULIP FEVER
監督:ジャスティン・チャドウィック ?出演:アリシア・ヴィカンダー | デイン・デハーン | ジャック・オコンネル/17世紀のオランダ。人々はチューリップに熱狂し、球根一つが邸宅一軒にも相当するほど投機熱が過熱していた。孤児として修道院で育ったソフィアは豪商のコルネリスのもとに嫁ぐが、跡継ぎを身ごもれずにいた。そんな中、コルネリスはソフィアとの肖像画を描かせるために若手画家ヤン・ファン・ロースを雇う。
若い画家との不倫愛はよくある話なのだが、身ごもった女中の子供を利用しようとしてからは、サスペンスタッチで見ごたえあり。2021.1

バグダッド・スキャンダル BACKSTABBING FOR BEGINNERS
監督:ペール・フライ、出演:ベン・キングスレー、テオ・ジェームズ | ベルチム・ビルギン | ジャクリーン・ビセット/2002年。24歳のアメリカ人マイケルは国連職員として国連が主導する“石油・食料交換プログラム”に携わることに。イラクの民間人を救うために行われている人道支援政策だったが、プロジェクトの利権には何人もの怪しげな人物が群がっていた。原作は元国連職員のマイケル・スーサン。実話というのが驚き。汚職が当たり前の中東社会ではありうる話だが、国連もあやしい組織だよなあ。ベン・キングスレーはいつも悪役ばかり。「ガンジー」で名を挙げた役者が真逆の役でブレークしているのがなんとも皮肉。2021.1

花筐/HANAGATAMI
監督:大林宣彦 出演:窪塚俊介 | 満島真之介 | 長塚圭史、常盤貴子/1941年、春。17歳の青年・榊山俊彦は、唐津に暮らす叔母の家に身を寄せる。肺病を患う従妹の美那にほのかな恋心を抱くが…。檀一雄の小説の映画化。戦争の影をバックに生き急ぐ青年たちの姿が痛かった。風変りな映画なので一度みただけではよくわからないのだが、いつまでも気になる作品だった。大林監督入魂の一作。もう一度見てみたくなった。2021.1

ボヤージュ・オブ・タイム
テレンス・マリック監督/ナレーション:ケイト・ブランシェット/地球創生をイメージさせるマグマの映像から、宇宙や海の生き物の映像、に「母よ」で始まるモノローグが重なる。さらに祭りや市場で集う人間たちの様子や、動物の姿もインサートされる。という映像の美しさと世界観に拘ったマリック監督らしい作品。映画館とかプラネタリウムで見たかった。2021.1

メイキング・オブ・モータウン HITSVILLE: THE MAKING OF MOTOWN
監督:ベンジャミン・ターナー 他、出演:ベリー・ゴーディ | スモーキー・ロビンソン/デトロイトの一軒家“ヒッツヴィルUSA”から始まったモータウンの歴史を追った音楽ドキュメンタリー。テンプテーションズ、スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ、ジャクソン5の懐かし映像にワクワクした。ベリー・ゴーディに迫ったネットフリックスのドキュメンタリーのほうが、作品的には面白かったが、こちらはモータウンの良い時代だけをつないだ感じ。いつかモータウン発祥の地に行ってみたい。2020.12

マネーモンスター MONEY MONSTER
監督:ジョディ・フォスター、出演:ジョージ・クルーニー | ジュリア・ロバーツ | ジャック・オコンネル/投資バラエティの人気司会者リー・ゲイツが、銃を持った若者に人質に。若者はゲイツが番組で推奨した株に投資して全財産を失ったと主張。カメラが見守る中、興奮する犯人を必死でなだめようとするゲイツだったが…。
 可もなく不可もなく、ハリウッドらしい映画。今一つ楽しめず。2021.1 アマゾンプライムにて

モリのいる場所
監督:沖田修一 出演:山崎努 | 樹木希林 | 池谷のぶえ、加瀬亮/昭和49年、東京。94歳になる画家のモリは、30年間自宅から出ることもなく、小さな庭に生きる虫や草花を飽きもせずに観察しつづける、まるで仙人のような毎日を送っていた。
 モリのキャラは最高だったが、周りの人々が予想を超えておちゃらけていてコメディでした。脇役が超豪華。三上博史まで名もない男役で出てきてた。山崎努はどんな役でも演じられるよなあ。本当にすごい役者です。2021.1 アマゾンプライムにて


家庭裁判所 第3H法廷 Courtroom 3H
監督:アントニオ・メンデス・エスパルサ/米フロリダ州のレオン郡の裁判所。虐待、ネグレクト、育児放棄などを理由に保護された子どもを、親の元に戻すか否かを巡り、数々のケースが審議される。ずーっとリアルな裁判を映したドキュメンタリーを始めてみたので新鮮だった。誰が正しいのか、誰もわからないけど、子供には幸せになってほしいとしか言えない。2020.12 ラテンビート映画祭にて

モラル・オーダー Ordem Moral
監督:マリオ・バローゾ/出演:マリア・デ・メディロス、マルセロ・ウルジェージェ、ジョアン・ペドロ・マメーデ/1918年、大新聞社の相続人マリアは、22歳年下の運転手マヌエルと駆け落ちをしたことで世間から非難を浴びる。夫はあらゆる手段を使って彼女を探し出すが、マリアは数々の妨害に屈することなく信念を貫いていく。実話とのこと。ランプの光や太陽光の使い方が素敵でした。ドラマチックな大河ドラマかと思ったけど、静かで大人な映画。2020.11 ラテンビート映画祭にて

マリアの旅 La vida era eso
監督:ダビッド・マルティン・デ・ロス・サントス/出演:ペトラ・マルティネス、アンナ・カスティーリョ、フローリン・ピエルジク・Jr./入院中の初老のマリアは、相部屋となった若い女性ヴェロニカが同じスペイン出身と知り心を通わせる。幼いころに家族でベルギーに移住してきたマリアは、ヴェロニカとの友情をきっかけにスペインへと向かう。
 老女の新たな人生を描いたロードムービー。監督の母親を投影した、ということでした。
フランコ政権時代を生きた女性は自分を押し殺して生きてきた、とのこと。これは日本の大和撫子崇拝と同じですね。好きなテーマではあるが、細部が男目線な感じが気になった。2020.12 ラテンビート映画祭にて

Mank/マンク
監督:デビッド・フィンチャー、出演:ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド、チャールズ・ダンス、リリー・コリンズ、アーリス・ハワード/1930年代のハリウッド。脚本家マンクはアルコール依存症に苦しみながら、新たな脚本「市民ケーン」の仕上げに追われていた。
 ハーマン・J・マンキウィッツという存在をまったく知らなかった。弟は「イヴの総て」のジョセフ・L・マンキウィッツ監督ということも、MGMの共同創設者ルイス・メイヤーが共和党支持者で1934年のカリフォルニア州知事選挙で民主党候補のアプトン・シンクレアを映画を用いたプロパガンダで攻撃し落選に追い込んだ話なども、知らないのでので、勉強になりました。
 モノクロ映像が「市民ケーン」風なのがいい。時代がいったりきたりする構成なので最初は、人間関係がつかめなかったが徐々に面白くなった。もう一度最初から見てみたい。『市民ケーン』も改めて見たくなった。新聞王ハースト自身より愛人のブロンド女優マリオン・デイビスの、愛人ならではの苦悩を描いていたのが興味深かった。ゲイリーはほんとにうまい俳優だよなあ。『プリックアップ』がもう一度見たくなった。2020.11


エリカ38
監督:日比遊一、出演:浅田美代子 | 樹木希林 | 平岳大、木内みどり/人心掌握に長けた渡部聡子は、喫茶店で知り合った女性・伊藤の紹介で国境を超えたビジネスを展開している平澤という男性と出会う。途上国支援事業という名の下で投資ビジネスを手伝うようになった聡子は平澤の愛人となり私腹を肥やす。60過ぎなのに38歳と偽ってタイで豪遊して捕まり、ニュースになった女性の半生を描いている。すっぴんもさらけ出した浅田美代子が熱演。樹木希林と木内みどり、亡くなった人が二人出ていたのでしんみりしてしまった。2020.11

幸福なラザロ LAZZARO FELICE
監督:アリーチェ・ロルヴァケル、出演:アドリアーノ・タルディオーロ | アニェーゼ・グラツィアーニ | ルカ・チコヴァーニ/外の世界と隔絶されたイタリアの小さな村で暮らす小作人の一人ラザロは、村人たちから手足のように扱われていたが、不平不満も一切ないピュアな心の持ち主だった。ある日、侯爵夫人の息子タンクレディがやって来たことでラザロの人生が変わっていく。
 不思議なラザロが後半は天使になってカムバックするのがユニーク。盗みや詐欺をしながら生きている昔の仲間たちの生活や、落ちた元貴族たちの生活など、イタリア社会の問題にもメスを入れている感がいい。見終わったあとでいろいろ考えてしまう映画。カンヌ国際映画祭で脚本賞もなっとくの作品でした。2020.9

第三夫人と髪飾り THE THIRD WIFE
監督:アッシュ・メイフェア ?出演:トラン・ヌー・イェン・ケー | マイ・トゥー・フオン | グエン・フオン・チャー・ミー/19世紀の北ベトナム。絹の里を治める富豪のもとに嫁ぐことになった14歳のメイ。富豪にはすでに第一夫人のハと第二夫人のスアンがいた。自分に求められているのは元気な男児を産むことだと自覚していくメイだったが…。
女は後継ぎとなる男の子を生む道具と考えられていた時代の物語。第二夫人に惹かれていくメイの変化と、悲しい女の性が絵画のように美しく描かれていた。2020.8

岸辺の旅
監督:黒沢清 出演:深津絵里 | 浅野忠信 | 小松政夫 /3年前に失踪し、死者となって帰ってきた夫と、そんな彼を静かに受け入れた妻が、一緒に彼が世話になった人々を巡りながら永遠の別れに向かって旅を続ける姿を描く。二人の関係性が微笑ましくもあるのだが、二人の間には越えられない壁があるなんとも言えない寂しさがじわりと伝わってきた。2020.9

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった
監督: ダニエル・ロアー、製作総指揮:マーティン・スコセッシ、ロン・ハワード、出演:THE BAND ロビー・ロバートソン、リック・ダンコ、リヴォン・ヘルム、ガース・ハドソン、リチャード・マニュエル/ロビー・ロバートソンの視点からバンドの誕生、メンバーとの確執、交通事故や、ドラッグ中毒などを語ったドキュメンタリー。いろいろあったのは予想していたが、優等生ロビーと、ほかのメンバーとの距離が出来てしまったことが大きいのでしょう。ガースが今もまだウッドストックに住んでいるのがとっても嬉しくかんじた。リヴォン・ヘルムの声を聴くと不思議と涙腺が緩み、涙が止まらず。2020.11

白河夜船
監督:若木信吾、出演:安藤サクラ | 谷村美月 | 井浦新 /永遠に眠り続ける妻を持つ岩永と不倫を続ける寺子。ある日、“添い寝屋”をしていた親友のしおりが死んだ…。
主演の二人が好きなのでみてみたが、同じことの繰り返しで、映画としては退屈だった。2020.11

仁義の墓場
監督:深作欣二、出演:渡哲也 | 梅宮辰夫 |多岐川裕美/昭和21年、新宿。水戸出身の石川力夫は、新宿のヤクザの組員として暴れまわっている。組長に刃を向けた石川は、大阪に逃走。逃亡先で覚せい剤中毒となる。
 渡哲也は、前半は大門刑事のような爽快さなのだが、しゃぶ中になってからは危機迫るものがあり、渡哲也の魅力が全開だった。深作監督の初期作品なのだが、石川本人の戸籍や古い写真、水戸の町の様子なども盛り込まれ、ドキュメンタリー風でもあり、興味深かった。対象3年生まれ、というから、深作監督とも5歳上ぐらいでしょう。同じ町で生き、片やヤクザとなって散っていた男。そしてそれを映画化した映画監督。二人の人生をつい見比べてしまった。2020.10

ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密 KNIVES OUT
監督:ライアン・ジョンソン、出演:ダニエル・クレイグ | クリス・エヴァンス | アナ・デ・アルマス、マイケル・シャノン、ドン・ジョンソン、トニ・コレット、クリストファー・プラマー/世界的ミステリー作家にして富豪のハーラン・スロンビーが85歳の誕生日を迎え、ニューヨーク郊外にある彼の豪邸では家族が集いパーティが開かれる。ところが翌朝、ハーランは遺体で発見される。匿名の人物から依頼を受けた名探偵ブノワ・ブランが現われ、殺しと確信して調査を開始する。容疑者は家族や家政婦、ハーランの看護師といった屋敷にいた全員。オリエント急行殺人事件風、ではあるのだが、ラテン系移民の看護師が主役で、さらりと差別を描いている。オールスターキャストの割に、種も仕掛けもないシンプルなミステリーでした。2020.10

パヴァロッティ 太陽のテノール PAVAROTTI
監督:ロン・ハワード、出演:ルチアーノ・パヴァロッティ/3大テノールの一人、パヴァロッティの魅力に迫ったドキュメンタリー。マナウスのオペラハウスで歌うプライベート映像は無邪気な子供のように喜んでいて微笑ましかった。豪快だけど繊細で、女性が大好きで、U2と共演するなど、クラシック界の型にはまらない見事な人生にアッパレ。2020.10

運び屋 THE MULE
監督・出演:クリント・イーストウッド | ブラッドリー・クーパー | ローレンス・フィッシュバーン/大量の麻薬の運び屋として逮捕されたのは、著名な園芸家でもあった孤独な老人だった。という実話の映画化。イーストウッドの演技がとにかく素晴らしいの一言に尽きる。ヒーローではない男の物語を映画化したことに敬服。2020.10

ベル・カント とらわれのアリア BEL CANTO
監督:ポール・ワイツ 出演:ジュリアン・ムーア | 渡辺謙 | セバスチャン・コッホ、加瀬亮、マリア・メルセデス・コロイ/1996年、南米の某国。世界的オペラ歌手ロクサーヌ・コスは副大統領邸で開催されるパーティーで歌を披露。そこにはコスの長年のファンである日本人実業家ホソカワもいた。そこへゲリラたちがなだれ込み、政治犯の開放を要求する。
 あくまで小説、とは言いながら、大統領の名前や風貌がそのまんまフジモリ大統領だったり、台詞もスペイン語と英語、日本語が入り混じっていたり、とかなり事実に基づいたテイストになっていた。加瀬亮は多言語ができる通訳として大活躍。通訳と恋に落ちるカルメン役を、「火の山のマリア」や「ラ・ヨローナ」のマリア・メルセデス・コロイが出ているなど、ラテン側の俳優もよく見る顔が多くキャストが豪華。ロマンスが唐突な気がしたが、仕方ないかなあ。個人的にはゲリラ側の人生に興味あり。2020.11

僕はイエス様が嫌い JESUS
監督:奥山大史,出演:佐藤結良 | 大熊理樹 | チャド・マレーン/サンセバスチャン国際映画祭で最優秀新人監督賞を史上最年少受賞するなど、海外の映画祭で高い評価を受けた思春期ドラマ。祖父が亡くなり、祖母と暮らすために両親とともに雪深い地方に引っ越し、ミッション系の小学校へ転校した少年ユラ。お祈りの習慣に馴染めないユラだったが、彼の前に小さなイエス様が姿を現わしたことで人生が少しずつ楽しくなっていく。和馬という大切な友だちができた矢先、悲劇が起こる。
 少年ユラ役の演技に引き込まれた。監督の優しい視点も心地よく、未来の是枝を予感させた。宗教をシニカルに扱った作品なのかと思ったら、ストレートにいい映画だったので拍子抜けはしましたが、学生時代の作品ということなので良しとします。2020.10

リップヴァンウィンクルの花嫁
監督:岩井俊二、出演:黒木華 | Cocco | 地曵豪、綾野剛/2016年の東京。派遣教員として働く平凡な女性、皆川七海。ある日、SNSで鶴岡鉄也という男性と知り合い、そのままトントン拍子で結婚へと至る。結婚式に呼べる友人・親族が少ない七海は、代理出席の手配を“なんでも屋”の安室に依頼する。しかし新婚早々、夫の浮気疑惑が持ち上がると、反対に義母から七海が浮気を疑われ、家を追い出されてしまう。行き場もなく途方に暮れた七海は安室に助けを求め、彼が斡旋する怪しげなバイトを請け負うようになる。やがて、豪邸で住み込みのメイドとして働き始めた七海は、謎めいたメイド仲間、里中真白と意気投合、互いに心を通わせていくのだったが…。


アポカリプト
監督:メル・ギブソン、出演:ルディ・ヤングブラッド | ダリア・エルナンデス | ジョナサン・ブリューワー/狩猟民族の血統を受け継ぐ青年ジャガー・パウは、妻子や仲間と共にジャングルで平和な生活を送っていた。ところがある日、彼らの村は都会からやって来たマヤ帝国の傭兵による襲撃に遭う。捕らえられたパウは他の仲間と一緒に街へ連れ去られた。目的は干ばつを鎮めるための儀式の生け贄だった。
 マヤの生贄のシーンが残酷だったが、森での生活や逃亡劇など、見どころが満載で見入ってしまった。賛否両論あるだろうが、手抜きしていない質の高い作品。さすがはメル・ギブソン。2020.7

家族を想うとき SORRY WE MISSED YOU
監督:ケン・ローチ、出演:クリス・ヒッチェン | デビー・ハニーウッド | リス・ストーン/イギリスのニューカッスルで介護福祉士の妻アビーと息子セブ、娘ライザと家族4人で暮らすリッキー。よりよい生活を送るため、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立するが、厳しい規則とノルマ、違約金により次第に窮地に追い込まれる。妻は介護福祉士として朝から晩まで働き、聡明な息子と娘の情緒も不安定になっていく…。
 日本のコンビニのフランチャイズ制やウーバーイーツの配送員なども、似たような状況なのだろう。とても辛いけど目を背けてはいけない問題。自分も業務委託で生き延びているので他人事ではなく恐ろしくなった。いつ仕事を失ってもジタバタしない心の余裕をもって生きたい。贅沢な生活はもう望まない。2020.9

金子文子と朴烈(パクヨル)ANARCHIST FROM COLONY
監督:イ・ジュンイク、出演:イ・ジェフン | チェ・ヒソ | キム・インウ/1923年、金子文子は、“犬ころ”という詩に心を奪われ、作者である朝鮮人アナキスト朴烈と同棲を始める。関東大震災が発生し社会が大混乱に陥る中、2人は他の朝鮮人や社会主義者らとともに検挙されてしまう。死を恐れない二人の熱い思いがビシビシ伝わってくる映画だった。朴烈が戦後も生き抜き、韓国の英雄となったことなど、知らないことも多くて勉強になりました。2020.08

心と体と ON BODY AND SOUL
監督:イルディコー・エニェディ、出演:アレクサンドラ・ボルベーイ | ゲーザ・モルチャーニ | レーカ・テンキ/ブダペストの食肉処理場で働く若い女性マーリアは、片手が不自由な中年男エンドと同じ鹿の夢を見ていると知る。ベルリン国際映画祭金熊賞のハンガリー映画。夢の共有が恋に発展するまでを独特なペースで描いた恋愛ドラマ。二人の不器用さが初々しくていくつになっても恋は可能、という夢を与えてくれる映画だった。2020.8

真実
監督:是枝裕和、出演:カトリーヌ・ドヌーヴ | ジュリエット・ビノシュ | イーサン・ホーク/大女優ファビエンヌが、『真実』という名の自伝本を出版。脚本家の娘リュミールは、夫ハンクと娘のシャルロットを伴い母を訪ねる。
 有名女優と娘の微妙な関係を中心にした劇中劇風映画。子供の演出はさすが、とは思ったが全体的に是枝監督らしさの感じられない雇われ仕事感の強いフランス映画だった。2020.9

ドッグマン DOGMAN
監督:マッテオ・ガローネ、出演:マルチェロ・フォンテ | エドアルド・ペッシェ | アダモ・ディオニージ/犬を愛する男マルチェロは、別れた妻子とも良好な関係が続いていて、それなりに幸せな日々を送っていた。だが暴れ者シモーネに付きまとわれ、盗みや薬の売買など、たびたび彼の悪事を手伝わされてしまう。
 最初は、ジャイアンとのび太のような関係なのかな、と軽い気持ちで見ていたのだが、マルチェロも単なるお人よしとも言えない狡さや汚さを持っていることが浮き彫りになってくるあたりが、さすが「ゴモラ」のガローネ監督。とても苦いエンディングに気持ちがどんよりしたが、これが現実なのかも。2020.8

バイス vice
監督:アダム・マッケイ、出演:クリスチャン・ベイル | エイミー・アダムス | スティーヴ・カレル/チェイニーは、婚約者のリンに叱咤されて政界を目指し、やがて下院議員ドナルド・ラムズフェルドのもとで政治のイロハを学び、次第に頭角を現わしていく。その後、政界の要職を歴任し、ついにジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領の地位に就く。上昇志向丸出しの妻の存在に注目しながら見ていた。徹底的な共和党批判映画なので、どこまでが事実なのかはわからないが、ブッシュジュニアが、大統領選挙で負けていれば、世の中はどうなっていたのだろう、などと想像してしまった。2020.8

ハーフネルソン HALF NELSON
監督:ライアン・フレック、出演:ライアン・ゴズリング | シャリーカ・エップス | アンソニー・マッキー/ブルックリンの公立中学校で歴史を教え、女子バスケ部のコーチをしているダンは、ドラッグ中毒から抜け切れずにいた。ある日、トイレの個室でドラッグを吸っている現場を、女子生徒ドレイに見つかってしまう。ドレイは仕事の忙しい母と二人暮らしで、孤独な日々を送っていた。
 地味だけど丁寧に人間が描かれていて、掘り出し物感のある作品だった。ゴズリングはさすがに若い時から目を引く演技をしていて、さすが。女子学生役の女優も存在感があり印象に残った。2020.9

半世界
監督:阪本順治、出演:稲垣吾郎 | 長谷川博己 | 渋川清彦/地方都市で、妻と中学生の息子と暮らす39歳の高紘は、備長炭づくりを生業としている。ある日、中学時代からの親友で、自衛隊員をしていた瑛介が突然帰郷。同級生・光彦と3人で酒を酌み交わす。
 男の友情物語だけではなく、イジメにあっている息子や、仕事の問題など、誰にでも起こり得る出来事が自然な形で流れていくので感情移入できた。エンディングはまさか、だったけど、それも十分あり得る話ではあるし…。人生、甘くないけど希望を持とう、と思わせる映画でした。2020.8

フォードvsフェラーリ FORD V FERRARI LE MANS '66
監督:ジェームズ・マンゴールド、出演:マット・デイモン | クリスチャン・ベイル | ジョン・バーンサル/元レーサーのキャロル・シェルビーはカー・デザイナーとして活躍している。フォードが「ル・マン」に新規参入すると知り、天才的なレーサーでありながら不遇の日々を送るケン・マイルズを口説き落としフォードGT40の改良を進めていく。
 二人の友情物語と企業買収劇のドロドロをミックスさせているのだが、今一つハラハラ感がなかった。最後は企業の都合に翻弄されてしまう、というのも実話ならでは。クリスチャン・ベイルは減量して本人に寄せるお得意の七変化ぶり。アッパレです。2020.8

ポルトガル、夏の終わり FRANKIE
監督:アイラ・サックス、出演:イザベル・ユペール | ブレンダン・グリーソン | マリサ・トメイ/世界的に名の知れた女優のフランキーは、世界遺産に選ばれたポルトガルの避暑地シントラに夫と息子、夫の連れ子夫婦とその娘、最初の夫、そして仕事仲間だった旧友を呼び寄せる。家族はそれぞれに問題を抱えていた。
 不治の病にある女優が最後に大芝居をうつのかと思いきや、意外にも大女優自身は静かに俯瞰し、家族たちが悩んでいる、という設定がユニーク。シントラという町も地味で静かな田舎町風で行ってみたくなった。ユペールは立っているだけで絵になる女優だわ。粋な女性。個人的にはマリサ・トメイが好きなので見てみたが、相変わらず親しみやすい可愛い女優さんだったのが嬉しかった。2020.8

僕たちのラストステージ STAN & OLLIE
監督:ジョン・S・ベアード、出演:スティーヴ・クーガン | ジョン・C・ライリー | ニナ・アリアンダ/1953年。スタン・ローレルとオリバー・ハーディは、“ローレル&ハーディ”としてハリウッドで一時代を築いた伝説のお笑いコンビだったが、落ち目になってからはイギリスで巡業の日々を送っていた。
 お笑いコンビの友情が美しかったです。2020.8

ホワイト・クロウ 伝説のダンサー THE WHITE CROW
監督:レイフ・ファインズ、出演:オレグ・イヴェンコ | アデル・エグザルコプロス | レイフ・ファインズ/ルドルフ・ヌレエフは将来を嘱望された才能あふれるソ連のバレエ・ダンサー。だがソ連では異端視され当局からも警戒されていた。1961年の滞在先のパリではフランス人の知識人と交流を重ねる。ヌレエフの亡命の裏話に興味があったので見てみた。自由には自己責任が伴うので、すべてがバラ色ではないのだが、行動が監視される窮屈な社会にはやっぱり住みたくない。2020.8

女神の見えざる手 MISS SLOANE
監督:ジョン・マッデン、出演:ジェシカ・チャステイン | マーク・ストロング | ググ・ンバータ=ロー/大手ロビー会社で働くエリザベス・スローンは、手段を選ばない戦略で知られている。銃の擁護派団体から新たな銃規制法案の成立を阻止してほしいと依頼を受けたエリザベスは、それに反対しクライアントを激怒させる。銃規制法案を目指す新興ロビー会社のCEOはエリザベスとその部下を招き、規制法成立へ向けて動き出す。
 裏方であるロビイストにスポットを当てたサスペンス。どんでん返しが面白かった。ジェシカはどんな役でもこなせるすごい役者でアッパレ。2020.8

ローグ アサシン WAR
監督:フィリップ・G・アトウェル、出演:ジェット・リー | ジェイソン・ステイサム 、ジョン・ローン、石橋凌/サンフランシスコ。日本人ヤクザと中国マフィアの抗争の中で、一人の殺し屋が暗躍。彼は何度も整形を重ねており正体不明と言われていた。3年前に相棒一家を惨殺され復讐に燃える捜査官クロフォードは、その殺し屋を追い詰めるが…。
ジェット・リーが不死身の殺し屋役というのが珍しいのと、ヤクザのドンが石橋凌、中国側が懐かしのジョン・ローンなので見てみた。が、予想外の展開で面白く見れた。日本のヤクザ社会は米国風でなんちゃって感はあったのだが、石橋凌が親分なので存在感あり。2020.8

2ガンズ
監督:バルタザール・コルマウクル、出演:デンゼル・ワシントン | マーク・ウォールバーグ | ポーラ・パットン/DEAの潜入捜査官ボビーと軍からの密命を受けた男マイケルは、メキシコの麻薬組織のマネーロンダリング先の銀行を襲撃する。デンゼル・ワシントンとマイキーがコンビニなるバディームービー。2人とも大好きな俳優なので楽しめました。ストーリーはよくある話、でした。2020.6 Netflix

ハイ・フライング・バード -目指せバスケの頂点- HIGH FLYING BIRD
監督:スティーヴン・ソダーバーグ、出演:アンドレ・ホランド | ザジー・ビーツ | メルヴィン・グレッグ、カイル・マクラクラン/NBAのドラフト候補ナンバーワンのエリックは、借金を返済できず経済的な不安を抱えている。彼のエージェントの男は、ストを続行中のNBA経営者側の目を盗み、ある選手とのマッチアップを画策する。
 金儲けにまい進する経営者サイドとプレーヤー側、そして間を取り持つことで多額のエージェント料を手にする者たちの人間模様がリアルに描かれていて興味深かった。2020.6 Netflix

ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから THE HALF OF IT
アリス・ウー監督、リーア・ルイス、ダニエル・ディーマー、アレクシス・ルミール出演/アメリカのド田舎で暮らす中国系移民の女の子は成績優秀ではあったが、学校ではいじめの対象。彼女はアルバイトで、クラスメートのレポートの代行を請け負っている。
 ある日、学校の人気者の女子に恋をした男子が、彼女にラブレターの代筆を依頼。電気代も払えないほど金に困っていた彼女は依頼を受け入れる。
 とくに期待もせずに見始めたが、一人一人の個性がとても生き生きと描かれていて引き込まれた。主役を演じたリーアは、とても複雑な役なのだが名演。そして彼女とかけがえのない友情をはぐくむことになるちょっと頭のトロい男子がまたサイコー。相手の心の深読みは出来ないけど、嫌がることは絶対しない好青年ぶりにほっこりした。2020.7 Netflix

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男 BORG MCENROE
監督:ヤヌス・メッツ、出演:スヴェリル・グドナソン | シャイア・ラブーフ | ステラン・スカルスガルド/ボルグの過去と、ウィンブルドン5連覇前のナーバスな時期を描いた作品。「ラッシュ/プライドと友情」のような2人の関係のジリジリ感を期待したのだが、ボルグ側の目線の映画。幼少期は感情的な少年だったことや、親が裕福ではなかったのとなど、意外なエピソードがあった。映画の展開的にはちょっと退屈でした。2020.8

モリーズ・ゲーム MOLLY’S GAME
監督:アーロン・ソーキン、出演:ジェシカ・チャステイン | イドリス・エルバ | ケヴィン・コスナー/女子モーグルのトップ選手として活躍していたモリー・ブルームは、五輪目前の大事な国内予選で転倒して重傷を負い選手生命も絶たれてしまう。法学部に入学する前の休暇の最中、セレブやビジネス界の大物たちが高額を賭けて遊ぶ非合法のポーカー・ゲームでアシスタントを始めたモリ―は、自ら地下カジノの運営に乗り出す。
 実話ということ。ギャンブル中毒の実態も描かれていて興味深かった。あの製紙会社の御曹司もこういう世界で大金をすったのでしょう。七変化女優ジェシカ・チャステイン、いい女優です。2020.7

LETO レト
監督:キリル・セレブレンニコフ、出演:ユ・テオ、イリーナ・ストラシェンバウム、ローマン・ビールィク/1980 年代前半のレニングラード。西側諸国の文化に対する検閲の陰でも、L・ツェッペリンやT・レックスなどの音楽は一部のロックファンの間で愛されていた。人気バンド「ズーパーク」のリーダー、マイクのもとにある日、ロックスターを夢見る朝鮮人とのハーフ、ヴィクトルが訪ねてくる。彼の歌詞の才能に惹かれたマイクは、自分のステージで彼をデビューさせる。一方で、マイクの妻ナターシャはヴィクトルに強く惹かれていく。ソ連時代のロックミュージシャンのことはまったく無知だったので勉強になった。ヴィクトルはアジア系でありながらも人気を博した、というところにロシアの懐の深さも感じた。映画は主にマイクの目線で描かれていたので、ヴィクトルの才能を見出しながらもジェラシーも感じてしまうマイクに感情移入。彼はヴィクトルが事故で亡くなった翌年にアルコール絡みで亡くなった、という事実を知って余計に気になってしまった。Tレックスが好きだったというヴィクトルが同じく自動車事故で命を落とす、というのも皮肉だなあ。人に歴史あり。2020.8


ある天文学者の恋文 LA CORRISPONDENZA
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ、出演:ジェレミー・アイアンズ | オルガ・キュリレンコ/著名な天文学者エドとその教え子エイミーは深く愛し合っていたが、エドには妻子がある。ある日、大学の講義に出席したエイミーは、エドが4日前に亡くなっていたことを知る。だが、エドからの手紙や贈りものは届き続ける…。
 ミステリー風に作られているのだが、ちょっとやりすぎの感あり。エドのメールとビデオメッセージが延々に続くし、同じことの繰り返しが多いので、しつこく感じてしまった。おそらく二人の愛の深さを描きたかったのだとは思うのだが。エドの娘は出てきても妻が一度も出てこないことも不自然な感じ。不倫愛という現実感を出さない意図もあるのだろうが、だったら娘も息子も出さずにおいてほしかった。ほとんど出ずっぱりのオルガが美しかったので良かったですが。2020.5

イエスマン “YES”は人生のパスワード YES MAN
監督:ペイトン・リード、出演:ジム・キャリー | ゾーイ・デシャネル | ブラッドリー・クーパー/銀行の貸し付け担当カールは後ろ向きな人生を送っていた。ところがあるセミナーへ参加し、全て“イエス”と言えば人生が変わる、と洗脳されたカールは、依頼、すべての依頼にイエス、と言い始める。怪しげなセミナーに洗脳されたことで人生が変わっていく男をジム・キャリーが彼らしく演じていた。2020.6

エクス・マキナ
監督:アレックス・ガーランド、出演:ドーナル・グリーソン | アリシア・ヴィカンダー | オスカー・アイザック/世界最大の検索エンジンを運営するブルーブック社でプログラマーとして働くケイレブは、社内試験の結果、社長のネイサンが隠遁生活を送る山荘に招かれ、1週間滞在できることに。しかし人里離れたその場所は、ネイサンが人工知能を開発するための研究施設だった。ケイレブの前に、女性型の美しきロボット“エヴァ”が姿を現わす。AIの暴走は、『2001年宇宙の旅』で初めて経験し、それがあまりにも強烈だったので、以降、同じような話には新しさを感じられず。オスカーが珍しいIT社長役。2020.6

幼な子われらに生まれ
監督 三島有紀子、出演:浅野忠信, 田中麗奈, 南沙良, 鎌田らい樹, 新井美羽, 水澤紳吾, 池田成志, 宮藤官九郎, 寺島しのぶ、脚本:荒井晴彦、原作:重松清/バツイチ子持ちの中年サラリーマン・信は妻・奈苗と数年前に再婚。彼女の二人の連れ子と一緒に暮らしながら、実の娘との面会日を楽しんでいた。多感な長女から「本当の父親に会いたい」と反抗されたり、妻が新しい子を授かったり、仕事ではリストラされ倉庫勤務になったり、と思い通りにならないことだらけの毎日に、信の心はすさんでいく。
 特別な家族に見えるが、おそらく現代の日本では同じような思いをしている人が大勢いるはず。ツギハギ家族、といっていたが、一生添い遂げる夫婦が減るのは自然の流れだ。女性が社会進出し、夫の庇護がなくても生きられるようになった今は、1度や2度の離婚は自然なこと。だが、子供はそういう親たちに翻弄されてしまう。
 誰も悪くはないだけに、解決は難しいのだが、信のように葛藤しながらも答えを探していくしかないのだろう。大変だよなあ、と客観しながらも、頑張るお父さんをみてちょっとうらやましくもなりました。2020.6

勝手にふるえてろ
監督:大九明子/出演:松岡茉優 | 渡辺大知 | 石橋杏奈/24歳のOLヨシカは恋愛経験はゼロで、中学の同級生“イチ”への片思いを10年間も脳内で育て続けていた。ある日、会社の同期“ニ”から突然告白されたヨシカ。気が乗らないながらもデートを続けるが、イチに会いたいという気持ちが募ってしまう…。10代の初恋っていくつになっても心に残るもんだよなあ、などと思いながら感情移入。かなり痛い女子ではあるのだが、可愛かったです。二を演じた黒猫チェルシーの渡辺大知が気に入った。2020.6

亀は意外と速く泳ぐ
監督:三木聡/出演:上野樹里 | 蒼井優 | 岩松了/夫が海外単身赴任中の平凡な主婦・片倉スズメ。日課はペットの亀にエサをあげるだけ。一方、幼なじみの親友、クジャクは波乱万丈に生きている。そんな時“スパイ募集!”の小さな貼り紙を見つけ、電話をしてみると…。三木ワールド全開で、キュートな曲者がたくさん出てきて楽しめました。2020.6

奇跡
監督:是枝裕和、出演:前田航基 | 前田旺志郎 | 林凌雅/小学6年生の航一と小学4年生の龍之介は両親の離婚で、鹿児島と福岡で離ればなれに暮らしていた。九州新幹線の一番列車がすれ違う瞬間を目撃すれば願いが叶うという噂を耳にした航一は、家族4人で暮らすという願いをかなえるため、龍之介と連絡を取りすれ違う現場に行こうと約束する。
 子供映画の魔術師、是枝監督の良心があふれたハートウォーミングストーリーだった。久しぶりに心がほっこりできた。2020.5

教誨師
監督:佐向大、出演:大杉漣 | 玉置玲央 | 烏丸せつこ/プロテスタントの牧師・佐伯保は、教誨師として月に2回拘置所を訪れていた。一癖も二癖もある死刑囚たちとの対話を通して、人の内面に迫っていく。想像通りの映画でした。大杉連の遺作が死を扱う作品になってしまったことに、預言のようなものを感じてしまった。2020.6

ゲノム・ハザード
監督:キム・ソンス、出演:西島秀俊, キム・ヒョジン, 真木よう子, 伊武雅刀/会社員の石神はある日、自宅で殺害されている妻を発見する。だが、電話の向こうから聞こえてきたのは妻の声だった……。この日を境に、彼には別の記憶が混在するようになる。
 人格が混濁する、という難しい設定を西島が好演していた。韓国映画ではあるが舞台は日本。こういう作品がもっとたくさん出てくるといいのですが…。2020.6

ジャコメッティ 最後の肖像 FINAL PORTRAIT
監督:スタンリー・トゥッチ、出演:ジェフリー・ラッシュ | アーミー・ハマー | クレマンス・ポエジー/1964年、パリ。アメリカ人作家ジェイムズ・ロードは、友人のアルベルト・ジャコメッティから肖像画のモデルになってくれと頼まれ、“1日で終わる”との言葉を信じ、帰国を延ばしてモデルを引き受けることに。だがセッションはたびたび中断、いつ帰国できるか分からない…。実際にモデルを経験した作家が書いた原作の映画化ということで、ジャコメッティのルーチン化した苦悩はリアルではあったが、映画でみると少々退屈に感じてしまった。2020.6

スノーデン
監督:オリヴァー・ストーン ?出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット | シェイリーン・ウッドリー | メリッサ・レオ/青年エドワード・スノーデンは、国家の役に立ちたいと2004年に軍への入隊を志願。その後CIAの採用試験に合格した彼は、コンピュータの知識を高く買われる。そんな中、ジュネーヴにあるアメリカの国連代表部に派遣された彼は、国民を監視しるシステムの存在を知ってしまう。
 これが現実というのだから、すでに全世界の人は監視下にあるのでしょうね。電波の届かない山奥で仙人のように暮らすしか自由になれない、ということだろう。スパイ行為を告発したスノーデンとその妻の勇気に感服した。2020.6

ターミネーター4
監督:マックG、出演:クリスチャン・ベイル | サム・ワーシントン | アントン・イェルチン/2018年。スカイネットが引き起こした“審判の日”をかろうじて生き延びた人間たちは抵抗軍を組織し、大人になったジョン・コナーもその一員として機械軍との死闘に身を投じていた。マーカス・ライトは脳と心臓以外すべて機械化されていたが、人間だと主張。将来彼の父となるカイル・リースに身の危険が差し迫っていることをマーカスから知らされる。ターミネーター1,2に通じる話、ということで見てみたが、先日見た「宇宙戦争」と同じようなテイストでした。2020.6

天才作家の妻 -40年目の真実- THE WIFE
ビョルン・ルンゲ監督、グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター出演/ノーベル文学賞を受賞した世界的な作家は、妻と息子を連れて授賞式へ。だが、彼の作品には誰にも言えない秘密があった。妻は浮かれる夫の姿を見ているうちに、激しい感情が高まる。ネタ晴らしをしてしまっている邦題に唖然。古典的なミステリーではあるのだが、グレン・クローズの怖い演技と、ジョナサン・プライスの能天気演技が素晴らしく見入ってしまった。舞台劇風。2020.5

天の茶助
監督:SABU、出演:松山ケンイチ |
大野いと | 大杉漣/天界では脚本家が下界の人間一人ひとりの“人生のシナリオ”を書いていた。茶助は、そんな脚本家たちに茶を配る天界の茶番頭。ある日、茶助が気に掛けていた口のきけない女性ユリが交通事故死する運命に陥ってしまう。茶助はユリを助けてしまおうと下界に向かう。「ベルリン 天使の詩」を軽~くコメディータッチにした物語。キャラがしっかりしていて面白く見れました。サブ監督は最近はほんわか映画が多いようです。「ポストマンブルース」のような疾走感が好きなんだけど。2020.6

デッド・ドント・ダイ 2019
THE DEAD DON'T DIE
監督:ジム・ジャームッシュ、出演:ビル・マーレイ | アダム・ドライヴァー | ティルダ・スウィントン/警察官が3人しかいないアメリカの田舎町センターヴィルで不可解な現象が続発。ダイナーで2人のウェイトレスの惨殺死体が発見される。それはゾンビの仕業だった…。お腹を抱えるほどではないが、クスクスと笑えるホラー・コメディ。イギー・ポップのゾンビには受けたけど、思っていたよりゾンビが怖かった。警官二人の役者が、「ゴーストバスターズ」と「スターウォーズ」なのも面白い。しっかり小ネタも入っていた。けど、エンディングが、意外なえーっ?!で、ゾンビがウイルスに思えてしまった。全部感染するまで終わりがない感…。意外と社会派のゾンビ映画でした。2020.6


河瀨直美監督、出演:永瀬正敏, 水崎綾女, 神野三鈴, 小市慢太郎, 大西信満, 堀内正美, 白川和子, 藤竜也/美佐子は、視力弱者のためにある映画に音声ガイドをつける仕事をしている。モニターから鋭い指摘をうけながらもガイドライターの仕事に向き合っていたがなかなか満足のいくガイドがつけられずにいた。美佐子は弱視の天才カメラマン・雅哉と知りい、彼との距離を少しずつ縮めていく。
 人間の内面に真摯に向き合ったすばらしい作品だった。河瀬監督の作品は正直苦手だったのだが、この作品はそれなりにドラマ性もあり、美佐子のキャラクターもどこにでもいる普通の女性だったで共感できた。人間の掘り下げ方が秀逸。さすがです。2020.6


監督:大森立嗣、出演:井浦新 | 瑛太 | 長谷川京子/離島、美浜島。中学生の信之は同級生の美花と付き合っていた。父親から激しい虐待を受けていた小学生の輔は信之を慕い、いつも彼の後をついていた。ある夜、信之は神社の境内で美花が男に犯されている姿を目撃する。激高し、美花を救うために男を殺してしまう信之。
 原作を読んでいて、あまり好きな物語ではないので、避けていたのだが、新が好きなので見てみた。役者陣はそれぞれのキャラをしっかりつかんで演じていて見ごたえあり。2020.6


飢餓海峡
何度見ても見ごたえがある日本のミステリーの傑作。左幸子がすばらしかった~。健さんカッコイイ!

蜘蛛巣城
横暴になっていく三船の演技には魅せられたが、この映画は映画館じゃないと楽しめないかなあ。

緋牡丹博徒
藤純子扮するお竜さんの美しさと、どこを切ってもかっこよすぎる健さん、二人の存在が絵に描いたようで安心して楽しめた。こういう定番のヤクザ物語を、当時の大衆が喜んでみたのはすごくよくわかる。非日常が日常になりつつある今だからこそ、定番の安心感。待ってました!と、声をかけたくなった。


エリザのために GRADUATION
監督:クリスティアン・ムンジウ、出演:アドリアン・ティティエニ | マリア・ドラグシ | ヴラド・イヴァノフ/医師のロメオの娘エリザが暴漢に襲われる。ロメオは英国留学を控える彼女のために、試験で不正をするよう画策する。
 単なる親バカの父親の話なのかと思ったら、妊娠している愛人がいたり、自国の教育や社会に絶望しているなど、かなりストレスを抱えている父親で、それがじわじわとあぶりだされていく展開が面白かった。2020.5

さよなら歌舞伎町
監督:廣木隆一、出演:染谷将太 | 前田敦子 | イ・ウンウ、南果歩、松重豊、忍成修吾/歌舞伎町のラブホテルで店長として働く徹はミュージシャンを目指す沙耶と同棲している。徹はお台場の一流ホテルで働くはずだったことを周囲に話すことで自分のプライドを保っている。彼氏に内緒でデリヘル嬢をしている韓国人のイ・ヘナは客の待つラブホへと向かう。ホテルで働く里美は、時効を目前にした男をかくまっていた。
 ラブホで出会う人々をオムニバス風に描いた作品。アイドルの前田敦子が大胆な演技をしているのかと思ったら全く違い、韓国人のデリヘル嬢を演じたイ・ウンウの演技が素晴らしかった。みんなが誰かを裏切り嘘をついているのだが、誰も悪人じゃないところに、市井の人々の真実が詰まっていた。2020.4

28日後 28 DAYS LATER...
監督:ダニー・ボイル、出演:キリアン・マーフィ | ナオミ・ハリス | クリストファー・エクルストン/数秒で人間を狂暴化させるウイルスにイギリスが汚染されてから28日後に、交通事故で昏睡状態に陥っていたジムは、ロンドン市内の病院の集中治療室で意識を取り戻す。
 カルトな人気のある作品なので見てみたが、割とシンプルなゾンビ映画。
要塞を築く軍人たちが過激化していく様を見て、人間の集団心理の恐ろしさを改めて感じた。人間の恐怖心からくる過剰な自衛意識など、こういう世界が実際に起こりつつあるのが怖い。コロナ後は、パンデミックがらみの映画が数多くつくられるのだろうなあ。現実が映画みたいなので、あえて見たいとは思わないのだが。2020.5

MR.LONG/ミスター・ロン
監督:SABU、出演:チャン・チェン | 青柳翔 | イレブン・ヤオ/台湾からヤクザを殺すために日本にやってきたロンは、深手を負い、台湾人の母を持つ少年ジュンに助けられる。
ほんとにチャン・チェン?と疑いたくなるほど、見るからに危険な殺し屋だったが、でも子供や近所のおせっかいない日本人と触れ合ううちに、心を開いていく感じが素敵だった。物語はステレオタイプなんだけど、静と動の使い方が秀逸。2020.5

雪の轍 WINTER SLEEP
監督:ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、出演:ハルク・ビルギナー | メリッサ・スーゼン/トルコの世界遺産カッパドキアにあるホテルのオーナーをしているアイドゥンは、慈善活動に入れ上げる若い妻ニハルや、出戻りの妹ネジラと、毎晩のように話ながら、意見の対立を埋められずにいる。店子のイスマイル一家の家賃未納問題もあり、家族はバラバラになっていく。
 理屈っぽい会話の応酬が3時間続くので、見ていて辛いものはあったが、台詞一つ一つはよく練られていた。そこがカンヌでは評価されたのでしょうか。でもこれって演劇だよなあ。映画としては苦手な部類。あえて見るのを避けていたのだが、やっぱり予想どおりでした。2020.5

テルマ
監督:ヨアキム・トリアー,出演:アイリ・ハーボー,カヤ・ウィルキンズ/ノルウェーの田舎町で暮らすテルマには、不思議な力が備わっていた。大学に入り一人暮らしを始めたテルマは、同級生のアンニャと初めての恋に落ちるが。「キャリー」みたいな能力を持つアルマの物語。いまいち、入り込めず。2020.4

無言歌
ワン・ビン監督、出演:ルウ・イエ、ヤン・ハオユー/1956年、毛沢東による共産党批判歓迎の表明により、自由に発言をしたことで、ゴビ砂漠で過酷な強制労働の毎日を送る男たちは、次々と命を落としていく。
死人の肉を焼いて食う者も現れるあたりは、戦場を描いた「野火」に匹敵する恐ろしさがあった。とにかくつらくて、その辛さに目を背けず、ストレートで訴えかける映画の力に圧倒され、どっと疲れました。ワン・ビン監督が世界で評価されているのも納得。2020.5

夜と霧
アラン・レネ監督/第2次世界大戦の最中、ユダヤ人を強制的に収容したアウシュヴィッツの実録ドキュメンタリー。惨い映像を断片的に見たことがあるだけだったが、長い休みを機に思い切って全編見てみた。やっぱり辛かったです。骨と皮だけになって、投げ捨てられていく屍…。人はなぜあそこまで人に対して残酷になれるのか。この無情の世界が再び来ることだけは避けねば、と強く思わせる映画だった。2020.4


アメリカン・アニマルズ AMERICAN ANIMALS
監督:バート・レイトン 出演:エヴァン・ピーターズ | バリー・キオガン | ブレイク・ジェナー/大学生のウォーレンとスペンサーは平凡な日常に苛立ちと焦りを募らせていた。そんな時2人が目を付けたのが、大学図書館に所蔵されているジェームズ・オーデュボンの画集『アメリカの鳥類』という、10億円以上の価値がある貴重な本だった。大学生が図書館にある本を盗み出す計画をして実行するまでを描いている。実話とのこと。ゲームのような感覚で始めてしまう愚かさが際立っていて苦笑い。ルパンのようにかっこよく盗めると思ったら大間違い、っていうこと。映画としてはちょっと退屈だったのはスピード感が足りなかったからかな。2020.4

ウインド・リバー WIND RIVER
監督:テイラー・シェリダン、出演:ジェレミー・レナー | エリザベス・オルセン | ジョン・バーンサル/アメリカ中西部ワイオミング州にあるネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバーでハンターとして働くコリーは、雪の上で死んでいる若い女性の死体を発見する。彼女はコリーの娘エミリーの親友ナタリーだった。エミリーは数年前に何者かに殺されていた。ネイティブアメリカンが半強制的に暮らしている辺境地で起こった若い女性のレイプ事件を丁寧に描いた作品。目新しさはないのだが、被害者に対する差別意識から起こった事件であるだけに、胸に刺さるものがあった。ジェレミー・レナーはアクション俳優顔だよなあ。今一つ深さを感じなかったのは俳優の顔のせいかも。2020.4

永遠のジャンゴ
監督:エチエンヌ・コマール、出演:レダ・カテブ | セシル・ドゥ・フランス | ベアタ・パーリャ/1943年、ナチス支配下のフランス。パリの名門ミュージック・ホールのステージで喝采を浴びるギタリストのジャンゴ・ラインハルト。一方、彼が属するジプシー・コミュニティではナチスによる迫害が激しさを増していく。ジャンゴ・ラインハルトは名前しか知らなかったので勉強になりました。最近は奇をてらった伝記映画が多いが、この作品はとてもシンプルで見やすかった。2020.4

俺たちホームズ&ワトソン HOLMES AND WATSON
監督:イータン・コーエン、出演:ウィル・フェレル | ジョン・C・ライリー | レベッカ・ホール/ウィル・フェレル作品らしい、おバカ映画でフツーに笑えました。2020.4

カフェ・ソサエティ
ウディ・アレン監督、ジーニー・バーリン、スティーヴ・カレル、ジェシー・アイゼンバーグ出演/ボビーはハリウッドで敏腕エージェントである叔父の下で働き始め、秘書のヴォニーに心を奪われるが。好きな女が伯父の愛人、という話。ウディ・アレン作にしては会話の妙が感じられず。西海岸よりも東海岸が好き、ということをテーマにしたかったのかもしれないが、今一つ違いが判らず。2020.4

ゴールデン・リバー THE SISTERS BROTHERS
監督:ジャック・オーディアール、出演:ジョン・C・ライリー | ホアキン・フェニックス | ジェイク・ギレンホール/1851年、オレゴン。兄のイーライと弟のチャーリーは提督と呼ばれる雇い主から、ウォームという男を探し出し始末せよというものだった。テイストはゴールドラッシュ時代の西部劇なのだが、ウォームが危険な薬剤で砂金を探し出す方法を知っている、という詐欺のようなうまい話が現代風だった。豪華なキャスト、有名監督、ベネチア受賞、というので期待してみたのだが、あまりピンとこず。2020.4

ダイ・ビューティフル DIE BEAUTIFUL
監督:ジュン・ロブレス・ラナ、出演:パオロ・バレステロス | クリスチャン・バブレス | グラディス・レイエス/トランスジェンダーのトリシャはミスコンでみごと栄冠を勝ち取るが、その直後に急死してしまう。彼女の願いは葬儀までの7日間、日替わりでセレブメイクの死に化粧をして旅立ちたいというものだった。フィリピンのオネエたちがの境遇を死に化粧を通して描いているのがユニーク。オネエサンたちがみんな魅力的に描かれていた。2020.4

魂のゆくえ FIRST REFORMED
監督:ポール・シュレイダー、出演:イーサン・ホーク | アマンダ・セイフライド | セドリック・カイルズ/ニューヨーク州北部の小さな教会で牧師を務めるトラー。彼は、自ら軍に送り出した息子が戦死したことで心に傷を負っていた。ある日、妊娠中の信徒メアリーから、堕胎を迫る夫マイケルと話してほしいと相談される。環境活動家のマイケルは精神を病み…。暗ーい映画とは予想していたのだが、後半、マイケルが乗り移ったかのようなトラ―の行動は、「タクシー・ドライバー」を彷彿とさせた。ただしエンディングは意外。安易な感は否めず。2020.4

ディヴァイン DIVINES
監督:ウーダ・ベニャミナ、出演:ウーヤラ・アマムラ | デボラ・ルクムエナ | ケヴィン・ミシェル/最貧地区で暮らす少女は友達と万引きを繰り返す日々を送っていた。怖いもの知らずの少女は麻薬取引に手を染める。母親のようになりたくない、と思いながらも母思いの少女。彼女の生き方は痛々しくもあるのだが、たくましさにほれぼれもする。強さと弱さが混在する少女の内面にぐいぐいと迫った作品。ダンサーに恋をしながらも、恋より友情を選んだ結果のエンディングが辛すぎて後味は悪いのだが、それが少女の運命。その過酷さが現実を写してもいるのだろう。2016年のカンヌ国際映画祭カメラドール受賞も納得の力作だった。2020.3

ドント・ウォーリー DON'T WORRY, HE WON'T GET FAR ON FOOT
監督:ガス・ヴァン・サント、出演:ホアキン・フェニックス | ジョナ・ヒル | ルーニー・マーラ/自動車事故で車いす生活となったジョン・キャラハンは、断酒のグループ・セラピーで主催者のドニーと出会う。不自由な手で風刺漫画を描き始めたジョンは、新聞社に作品を売り込む。ホアキンとルーニーが出会った作品だし、サント監督なので見てみたが、若干期待外れ。ジョナ・ヒルが意外と男前なのを発見。彼との関係にもう少し突っ込んでほしかったのだが。2020.4


バスキア、10代最後のとき BOOM FOR REAL: THE LATE TEENAGE YEARS OF JEAN-MICHEL BASQUIAT
監督:サラ・ドライヴァー、出演:ジャン=ミシェル・バスキア | アレクシス・アドラー | バスキアがアートの世界に飛び込んだころの話を、彼をしるアーチストたちが語るドキュメンタリー。アートの技術的な話が多くて少々飽きてしまった。2020.3

俳優は俳優だ ROUGH PLAY
監督:シン・ヨンシク 脚本:キム・ギドク、出演:イ・ジュン | ヤン・ドングン | ソ・ヨンヒ/若手俳優オ・ヨンは、ある作品で主役を食った演技を披露し、スター俳優の仲間入りを果たす。映画業界とヤクザのずぶずぶの関係を描いた作品。韓国のエンタメ業界もドロドロしてるという噂を聞いているので、あながち嘘じゃない気がした。主役の俳優はかっこよかったです。キム・ギドク脚本とはなっているが、ギドク作品らしさはなかったかな。2020.4

フルートベール駅で FRUITVALE STATION
監督:ライアン・クーグラー、出演:マイケル・B・ジョーダン |メロニー・ディアス| オクタヴィア・スペンサー/2009年1月1日未明、カリフォルニア州オークランドの地下鉄フルートヴェイル駅で、黒人青年オスカーが白人警官によって射殺される事件が発生する。オスカーが完全に無抵抗な状態だったことが明らかとなり、全米中に衝撃をもたらした事件の映画化。
 何の罪も犯していない黒人青年が白人警官に殺される事件は、おそらく見えないところで何件も発生しているのだろう。それが表に出ないことが米国の抱える差別の闇。若いころ、米国は自由な移民国家という憧れも抱いてきたのだが、実は保守的な国なんだということがトランプ大統領の誕生によって世界中に知られることになった。差別が少ないと思われているカリフォルニアでさえこのあり様。米国にはあまり近づきたくないとさえ思う今日この頃。この映画はシンプルに善良な黒人青年の非運の1日を描いている。怒りを露わにしてはいないのだが、裏に隠された社会的背景を考えずにいられない。2020.3

ブルーイグアナ 500万ポンドの獲物
監督・脚本ハディ・ハジェイグ、サム・ロックウェル主演/前科者エディと相棒ポールのもとに、イギリス人の弁護士キャサリンが仕事を依頼しにやって来る。フツーのクライムアクション。面白みに欠けたのでながら視聴。2020.4

フリー・ファイヤー
ベン・ウィートリー監督、シャールト・コプリー、アーミー・ハマー、ブリー・ラーソン、キリアン・マーフィ/銃取引のため倉庫に集まった2組のギャング。だが交渉がこじれてしまい、突如として壮絶な銃撃戦が勃発する。倉庫の中で、誰が敵なのかわからず、ずーっと撃ちまくるだけの映画。なんだけど、意外と楽しめちゃったのは監督の上手さ、なのでしょう。スコセッシが製作に携わっていたので見てみたが、彼も銃撃戦好きだからなあ。
2020.4

0.5ミリ
安藤桃子監督、安藤サクラ、津川雅彦、木内みどり、織本順吉、坂田利夫、角替和枝出演/天涯孤独な介護ヘルパー山岸サワは、派遣先の家で思わぬトラブルに巻き込まれ仕事をクビになってしまう。サワは、街で自転車泥棒や万引きをする老人を見つけては、彼らの家に転がり込み、居候生活を送る。安藤サクラの演技力と老人たちの悲哀に引き付けられた。ただ、長い映画で、途中で飽きてしまった感もある。もう少し凝縮して欲しかったかな。主要な俳優陣が半分ちかく亡くなっていることも、感慨深いものがあった。とくにヘルパー仲間を演じた安藤サクラの義理母でもある角替和枝との共演シーンがとても印象に残った。2020.3

ロッキー・ザ・ファイナル
スタローン監督・主演/永遠のワンパターン、ロッキーを久々に見た。さすがスター!以上。2020.4

若い女 MONTPARNASSE BIENVENUE
監督:レオノール・セライユ、出演:レティシア・ドッシュ | グレゴワール・モンサンジョン | スレマン・セイ・ンジャイェ/2017年カンヌ国際映画祭カメラ・ドール受賞。
 フランス、パリ。10年も付き合っていた恋人にいきなり捨てられてしまった31歳のポーラ。お金も家も仕事もないまま、なぜか恋人の飼い猫を抱えてパリの街を彷徨うハメに。住み込みのベビーシッターのバイトや下着売り場の売り子を始めてもトラブルが続き…。
『フランシス・ハ』のような作品を期待したのだが、ポーラのような依存気質のトラブルメーカーのキャラが苦手で感情移入できず。。2020.4

ユニコーン・ストア UNICORN STORE
ブリー・ラーソン監督・出演、ジョーン・キューザック | ブラッドリー・ウィットフォード、サミュエル・L・ジャクソン/風変りな女の子が、謎の男からユニコーンの飼育を仰せつかる。ブリー・ラーソン監督ということで見てみたが、「アメリ」風不思議少女のかわいらしい映画だった。2020.2

アトランティックス ATLANTIQUE
マティ・ディオプ監督、ママ・サネ、アマドゥ・エムボウ、イブラヒマ・トラオレ出演/セネガルの海辺の町で暮らすエイダには恋人スレイマンがいる。だが、スレイマンは不法移民船でスペインへ向かおうとしていた。エイダは親が決めた裕福な一家の元へ嫁ごうとしていた。若い二人の悲恋と、貧困、そして亡くなった人の憑依を絡めた幻想的な物語で見ごたえがあった。エイダ役の女優のモデル体型に終始見とれてしまったが、死んだスレイマンの魂が憑依した刑事も魅力的。カンヌ国際映画祭グランプリ受賞も納得の完成度の高さ。欲を言えば、夜の幻想的なシーンが多いのでスクリーンで見たかったなあ。テレビだと映像の美しさを味わえないので。2020.2

オペレーション・フィナーレ OPERATION FINALE
クリス・ワイツ監督、出演:オスカー・アイザック、ベン・キングズレー、メラニー・ロラン/アルゼンチンに逃げたナチスの幹部アイヒマンを見つけ、アイヒマンを秘密裏にイスラエルへ運ぼうとする諜報員たちの物語。どこまでが事実に即しているのかはわからないが、人心掌握に長けたアイヒマンと彼を尋問する諜報員とのやり取りがスリリングで見ごたえがあった。当時のアルゼンチンは、軍事政権前だとは思うが、秘密警察やナチスの残党のようなものが暗躍していたのは事実だろう。その社会の裏側に怖さも覚えた。2020.1

アメリカで最も嫌われた女性 THE MOST HATED WOMAN IN AMERICA
監督:トミー・オヘイヴァー、出演:メリッサ・レオ | ジョシュ・ルーカス | マイケル・チャーナス/60年代、学校での宗教教育に異論を唱え、政教分離を訴えて無神論者協会を立ち上げた主婦は、様々な嫌がらせを受けながらも協会を拡大していく。数十年後、元従業員の男に誘拐されてしまう。
 協会の支援金を不正にプールしたことから破滅に向かっていくファミリーの生き様がなんともお粗末な感じで同情できず。政教分離運動には賛同できるのだが、財団系って入出金が無明瞭なイメージがある。 裏金作ろうと思えばやりたい放題なのかも。まったく知らない事件だったので勉強になりました。2020.3

嵐の中で DURANTE LA TORMENTA
オリオル・パウロ監督、アドリアーナ・ウガルテ、チノ・ダリン、ハビエル・グティエレス/ベラは引っ越し先の家で古いビデオテープを見つける。そこには1989年の嵐の夜にギターを弾く少年ニコの姿が録画されていた。隣人に話すと、彼はその日、隣人の殺人事件を目撃して逃げる途中で事故に遭い亡くなったという。真夜中に再び映像を見た際、ベラは画面の向こうのニコと時空を超えて会話をしてしまう。ベラは彼に起こり得る未来を話してしまうことで、自分の人生が変わってしまう。
 よく作り込まれたSF作品で、なんとなく展開は読めるのだが、目が離せずハラハラさせられた。ウガルテとダリンが魅力的なのも大きい。2020.3

デトロイト DETROIT
監督:キャスリン・ビグロー、出演:ジョン・ボイエガ | ウィル・ポールター | アルジー・スミス/1967年7月、デトロイト。黒人たちによる暴動が激化。“ザ・ドラマティックス”のメンバー、ラリーが宿泊していたアルジェ・モーテルに、警察が乗り込み宿泊客を恐怖に陥れる。黒人への差別が激しかった60年代のデトロイトで起こったおぞましい事件をサスペンスタッチで描いた力作。さすがビグロー監督。終始ドキドキが止まらない展開で見ごたえがあった。こんな事件があったことすら知らなかった。最近のアメリカの保守化は、この時代の差別意識の再燃なのかもしれない。アメリカへの嫌悪が募る作品だった。2020.2

ポルカ・キング THE POLKA KING
マヤ・フォーブス監督、ジャック・ブラック、ジェイソン・シュワルツマン、ジェニー・スレイト出演/投資詐欺で捕まったポルカ歌手の物語。憎めない詐欺師をジャック・ブラックがいききと演じていた。2020.2

マクマホン・ファイル THE LAST THING HE WANTED
監督:ディー・リース、出演:アン・ハサウェイ | ベン・アフレック | ウィレム・デフォー/中米エルサルバドルの虐殺事件で名を挙げた女性ジャーナリストが、父親の代わりにコスタリカを訪れたことで、米国政府が絡んだ組織犯罪に巻き込まれていく。という話だが、複雑すぎて何がなんだかわからず。豪華キャストだから見てみたが、もう少し話を整理してほしかった。原作もののようですので、原作を読んでからみたほうがよかったかも。2020.3
麻薬王 THE DRUG KING
監督:ウ・ミンホ、出演:ソン・ガンホ | チョ・ジョンソク | ペ・ドゥナ/70年代、釜山の麻薬王の物語。相変わらずガンホの演技が光っていた。けど物語はありきたり。2020.3

ザ・ランドロマット -パナマ文書流出- THE LAUNDROMAT
スティーヴン・ソダーバーグ監督、メリル・ストリープ、ゲイリー・オールドマン、アントニオ・バンデラス、ジェフリー・ライト、デヴィッド・シュワイマー出演/観光船で夫を失った一人の主婦は、船会社の保険が下りないことを不信に思い、調べ始める。その裏にはタックスヘブンに闇会社を作っる組織があった。複雑でよく理解できないところもあったが、人を小ばかにした金満野郎を演じたオールドマンとバンデラスのコンビは楽しめた。監督がソダーバーグと知り納得。2020.2

南瓜とマヨネーズ
冨永昌敬監督、臼田あさ美、太賀、オダギリジョー出演/売れないミュージシャンのせいいちと同棲中のツチダ。ツチダは生活のために彼に内緒でキャバクラで働き、さらに一人の客と愛人契約を結ぶ。昔からよくある夢を追う男とその男のために体を売る女の物語。監督が富永監督の割にはとくに斬新さも新鮮さもなかったのだが、元カレ役のジョーのくそ男ぶりと、夢追いビトのタイガ、そして臼田あさ美がそれぞれいい味出してて、役者ありきの映画だった。2020.1

娼年
監督:三浦大輔、出演:松坂桃李 | 真飛聖/名門大学に通う領は会員制ボーイズクラブのオーナー静香と出会い娼夫リョウとして働き始める。笑えないずーっと裸で全裸監督のようだった。三浦大輔監督の世界は、ラース・フォン・トリアと似ていて苦手だ。2020.2

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け STAR WARS: THE RISE OF SKYWALKER
JJエイブラムス監督、デイジー・リドリー、アダム・ドライヴァー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー出演/シリーズ最終作で、キャリー・フィッシャーの遺作、ということで、久々にスターウォーズを劇場で鑑賞。前回、父ハンソロを殺したアダム・ドライヴァーが、最終的にヒーローになってくれたのは素直にうれしかった。このシリーズに関わった人、ファンの方、みなさんに、長い間お疲れさまでした、と言いたくなった。2020.2

オーソン・ウェルズ IN ストレンジャー THE STRANGER
監督・主演:オーソン・ウェルズ、出演:エドワード・G・ロビンソン、ロレッタ・ヤング/ナチ残党狩りに執念を燃やす戦犯聴聞会委員長ウィルソンは、ナチの残党マイネックを釈放。目的は収容所の考案者で米国に潜入している高官フランツ・キンドラの逮捕だ。名前を変え、教師となっていたキンドラはマイネックと再会後すぐに殺害し判事の娘メアリと結婚する。戦後すぐの作品なので反ナチ意識がストレートに出ている作品だった。よくできたお手本的なストーリー展開だが、作品に個性は感じられず。ウェルズはいつも悪役に徹するのがすごいよなあ。その辺が監督としての評価にもつながっている気がした。2020.2

となりのテロリスト FE DE ETARRAS
監督:ボルハ・カベアガ,出演:ハビエル・カマラ | フリアン・ロペス/バスク独立の組織に所属する男女は、活動が下火になった現代にテロを計画するが、すべてがうまくいかず。
かなりシニカルなコメディで面白かったのだが、バスク独立を願う人々にしたら複雑な内容。独立を願いつつも、ワールドカップでスペインを応援せずにいられない状況になってしまう過程が一番うけた。2020.1

母の秘密 A pesar de todo
ガブリエラ・タリグアビーノ監督、ブランカ・スアレス、マカレナ・ガルシア、マリサ・パレデス出演/亡くなった母のビデオメッセージを聴き、本当の父親探しを始める4姉妹の物語。スペインの有名女優が勢ぞろいした軽いノリのコメディ。フツーに楽しめました。2020.1


ビリーブ 未来への大逆転 ON THE BASIS OF SEX
ミミ・レダー監督、フェリシティ・ジョーンズ、アーミー・ハマー/ルース・ギンズバーグは名門ハーバード大学法科大学院に入学した彼女だったが、同じ大学に通う夫マーティンがガンを患い、学業と夫の看病、育児と多忙な日々を送る。優等生の出世映画。こういう方がいらっしゃることを知れて勉強になった。2019.12

2人のローマ教皇 THE TWO POPES
監督:フェルナンド・メイレレス 出演:アンソニー・ホプキンス | ジョナサン・プライス/2013年、カトリック教会が様々な問題で大きく揺れる中、ローマ教皇ベネディクト16世はホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿を呼び出す。ローマ教皇ベネディクト16世が自らの意志で退位するという700年ぶりとなる異例の決断を下すまでを会話形式で追った映画。
 「シティー・オブ・ゴッド」のメイレレス監督らしからぬドラマチックではない会話ドラマで意外だった。教皇という立場の孤独感をアンソニー・ホプキンスが静かに演じていたのが印象に残った。2020.1

マリッジ・ストーリー MARRIAGE STORY
監督:ノア・バームバック 出演:スカーレット・ヨハンソン | アダム・ドライヴァー | ローラ・ダーン/舞台演出家の夫と女優の妻は、理想的な結婚をして二人でニューヨークで暮らしていたが、ある日、妻が家族のいるカリフォルニアに子どもを連れて出て行ってしまう。妻は夫との離婚を望み、弁護士に相談する。
 夫婦間に溝ができてしまったことは仕方のないことだし、愛は終わることもあるので、二人には感情移入できた。一方、二人の溝をさらに大きくしようとする弁護士のえげつなさがいかにも今の米国。金の亡者のやり手弁護士を演じたローラ・ダーンが憎たらしいほお存在感があった。感情的には、子供と離れ離れになる寂しさを爆発させたアダムにくぎ付け。いい役者です。2019.12

麻雀放浪記2020
監督:白石和彌、出演:斎藤工、もも、ベッキー、的場浩司、岡崎体育、ピエール瀧
、音尾琢真/敗戦直後の東京から、第三次世界大戦後となる近未来にタイムスリップしてきた若き天才ギャンブラーの物語。期待し過ぎのせいか全く楽しめず。2019.12
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2019年

戦争のさなかで Mientras dure la guerra  
監督:アレハンドロ・アメナバール/出演:カラ・エレハルデ、エドゥアルド・フェルナンデス、サンティ・プレゴ/1936年のサラマンカ。著名な思想家でサマランカ大学総長のミゲル・デ・ウナムーノは、スペイン国内の混乱の収束を望み、反乱軍の支持を決意。だがウナムーノは共和国政府を批判したことで大学総長の職を解かれる。一方、反乱軍を指揮するフランコは密かに軍を強化し、内戦は泥沼化。まもなくウナムーノの友人や同僚も投獄されてしまう。ウナムーノの演説シーンがすべて。スペイン内戦前夜、次々と人々が連衡されていった恐怖の時代の始まりを描いていて、胸が締め付けられた。2019.12 ラテンビート映画祭にて

ファイアー・ウィル・カム LO QUE ARDE
監督:オリヴァ―・ラクセ/出演:アマドール・アリアス、ベネディクタ・サンチェス、イナシオ・アブラオ/ガリシア地方の森の中。アマドールはバスに揺られながら故郷に帰ってくる。放火の罪で2年もの間服役し、仮釈放になったのだ。森の奥に立つ古い家で待っていたのは老いた母ベネディクタと3頭の牛。母と息子は静かに森の静寂の中で生きていく。森の映像や、霧、霞など、風景描写が秀逸で、アンゲロプロスを彷彿とさせた。放火をしたのか冤罪なのかよりも、自然の描写が印象的。主演二人はまったくの素人とのこと。演出力にも脱帽。ラクセ監督の次回作にも期待大。2019 ラテンビート映画祭にて

8月のエバ La virgen de agosto 
監督:ホナス・トルエバ監督/出演:イタソ・アラナ、ビト・サンス、ジョー・マンホン/33歳間近のエバは、多くの人がバカンスに出かけてしまう8月に、マドリードにとどまることに決めている。人の減った都会の休日を一人で気ままに過ごしていたエバは、ある野外イベントに参加し、今まで縁がなかった人々との出会いを経験する。ロメールの「緑の光線」のリメイク風。子供のいる元親友に久しぶりに連絡をとったり、新しいアパートの住人とキャンプに行ったりしても、なかなか満たされない。どこにでもいる普通の女の子が、普通に悩んで恋をする話。若かりしころにみたらけっこう好きなジャンルなのだが…。正直、妊娠は唐突すぎて、ついていけず。タイトルにはマリア様のお祭りの意味があったようです。2019.11 ラテンビート映画祭にて

アダムズ・アップル ADAMS AEBLER
監督:アナス・トマス・イェンセン、出演:マッツ・ミケルセン、ウルリク・トムセン/ネオナチの男が出所後に身を寄せたのは、ある牧師のいる教会だった。
 屈折した信仰心に取りつかれた牧師をマッツ・ミケルセンが演じている。聖書に絡めた奇妙な物語。カウリスマキ風?な北欧映画でクスクス笑えて楽しめました。2019.9

ある女流作家の罪と罰 CAN YOU EVER FORGIVE ME?
監督:マリエル・ヘラー、原作:リー・イスラエル、出演:メリッサ・マッカーシー、リチャード・E・グラント/元ベストセラー作家のイスラエルは、金に困り、偶然見つけた著名作家の手紙に自分なりのフレーズを付け加えて収集家に販売。味を占めたイスラエルは偽手紙作りに没頭する。実話というのが面白い。過去の栄光にしがみついて落ちていく人物の話は数限りなくあるが、犯罪とはいうものの自分の特技をしっかり生かしているイスラエルに拍手を送りたくなった。2019.10

おかえり、ブルゴーニュへ CE QUI NOUS LIE
監督:セドリック・クラピッシュ、出演:ピオ・マルマイ、アナ・ジラルド/フランスのブルゴーニュ地方でワイン生産業を営む一家の長男ジャンが父の危篤をしり、10年ぶりに帰郷。妹のジュリエットと弟ジェレミーと再会する。ワイナリーの仕事に家族のドラマを絡めたシンプルな人間ドラマ。ワイナリーの牧歌的な風景は美しいが、経営は大変、隣人との確執など、リアルなエピソードが面白かった。長男は、メンドーサ、チリを経てオーストラリアでワインを作っている、という設定も興味深かった。2019.10

ゴッズ・オウン・カントリー GOD'S OWN COUNTRY
監督:フランシス・リー、出演:ジョシュ・オコナー、アレック・セカレアヌ、ジェマ・ジョーンズ/英国のヨークシャー地方を舞台に、牧場を一人で切り盛りする孤独な若い男と彼のもとで働き始めた季節労働者のルーマニア人青年の切なくも情熱的な恋愛を描き、英国アカデミー賞の英国作品賞ノミネートをはじめ各地の映画祭や映画賞で評判を呼んだドラマ。主演は英国期待の若手ジョシュ・オコナーとルーマニア出身のアレック・セカレアヌ。英国版「ブロークバック・マウンテン」。体が不自由な父と年老いた祖母と暮らし、農場の仕事に追われるだけの毎日を送る青年の悶々とした日々が痛くて…。出番は少ないけど祖母役がとても印象に残った。2019.11

戦場を探す旅 Towards the Battle
監督:オーレリアン・ヴェルネ=レルミュジオー、マリック・ジディ、レイナール・ゴメス/19世紀半ばのメキシコ。フランス軍の従軍カメラマンとしてメキシコに赴いたフランス人写真家ルイは、戦闘を求めて険しい自然の中をさまよううち、現地の農民ピントと出会う。戦争写真をとるはずが、戦場にたどり着けない男の迷いを描いている。観念的な映画なのかと身構えたが、割と物語や主張がはっきりとしていて飽きずに見れた。
コスタリカ人というピント役の役者が良かったです。なんと、「ナルコス」に出ていたあの重要な手下、運転手リモンを演じた役者さん!2019.10 東京国際映画祭にて


サバービコン 仮面を被った街 SUBURBICON
監督:ジョージ・クルーニー、出演:マット・デイモン、ジュリアン・ムーア、ノア・ジュープ、オスカー・アイザック/50年代のアメリカのニュータウン、サバービコン。理想の住宅地をうたう地域で、優しい父ガードナーと車椅子の母ローズ、彼女の双子の姉マーガレットと少年ニッキーは暮らしている。ある日、隣に黒人一家が引っ越してきたことで住民たちの排斥運動が激化。そんな中、自宅に強盗が押し入りローズが命を落とす。軽いブラックコメディ―かと思ったらかなりシニカルで、まともなのは子ども二人と太っちょオジサンだけ。ほかの白人の大人たちはどいつもこいつも悪党ばかり。もともとコーエン兄弟が撮るはずだった作品ということで、テイストは「ファーゴ」に似ていた。あまり話題にならなかったけど十分にハラハラドキドキした隠れた名作だわ。子役が上手で思わず感情移入。父親を信じられない恐怖感がじわじわ伝わってきた。2019.10

スリー・ビルボード THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI
監督:マーティン・マクドナー、出演:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、サンディ・マーティン/ミズーリ州の田舎町エビング。娘をレイプされ焼かれながら犯人が見つからないことへの抗議として、母ミルドレッドは犯罪現場の道路脇に立つ3枚の立て看板に、地元警察への辛辣な抗議メッセージ広告を出す。名指しされた署長のウィロビーは末期ガンに苦しみながら冷静に対応するが、差別主義者のディクソン巡査はミルドレッドへの怒りを露わにする。
 危ないパンクな母と最低野郎の巡査のバトルは単純に面白いのだが、実はその裏に置き去りにされた田舎の白人村社会の縮図が見てとれて、実はすごくメッセージ性の強い作品なんだろうなとは感じた。アメリカで評価されたのは納得。だけど日本人にはそこまで読みとれるかというと…。でも日本にも彼らのような負け組がヘイトスピーチの中心になっているという話も聞くし、他人事ではない。映画では、彼らが自分の愚かさに気づく展開なのだが、そううまくいかないのが現実でもある。いろんな意味で考えさせれらた。うまい役者をそろえているので、見ごたえあり。ディクソンの母役のサンディ・マーティンが最高でした。よく知らない女優だけど演劇界の大物のようです。テレビでよく見るジェリコ・イヴァネクが珍しくお人よしのいい人役だった。2019.10

男と女、モントーク岬で RETURN TO MONTAUK
監督:フォルカー・シュレンドルフ、出演:ステラン・スカルスガルド、ニーナ・ホス、スザンネ・ウォルフ/新作のプロモーションのためにベルリンからニューヨークにやって来た人気作家のマックスは、17年前にこの地で恋に落ちたかつての恋人レベッカのことが忘れられず、弁護士として成功していた彼女のもとを訪ねることに。しかしレベッカは戸惑うばかりで、すげなく追い返されてしまう。過去の恋人と再会して愛し合うけど、うまくはいかず、というシンプルな話なのだが、役者がそれぞれ魅力があり、映像もきれいで引き込まれた。単に男と女の違い、というだけでなく、恋愛の熱量は人ぞれぞれであり、自分の愛し方と相手の愛し方も違うし、その違いを認め合うことが大事なのだろうが、人間は自分第一だから、うまくいかなくなる。作家の独りよがりの恋に対して、女たちがみんな冷静なのが、面白かった。「ボイジャー」の原作者マックス・フリッシュに捧ぐ、と出ていて、監督の話からも実話のようだ。2019.10
 
清須会議 
監督:三谷幸喜、出演:役所広司、大泉洋、小日向文世、佐藤浩市、鈴木京香/天正10年(1582年)。本能寺の変で織田信長と長男・忠信が討ち死にして、織田家の後継争いが勃発する。筆頭家老・柴田勝家と明智討伐の功労者・羽柴秀吉が後見に名乗りを上げ、それぞれ三男の信孝と次男の信雄を推して激しく対立する。お市様は、秀吉への恨みを晴らすべく勝家に加勢。大河ドラマとして面白く見れました。2019.10

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン
監督:松岡錠司、出演:オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子/1960年代、オトンに愛想を尽かしたオカンは幼いボクを連れ、小倉から筑豊の実家に戻ると、妹の小料理屋を手伝いながら女手一つでボクを育てた。1970年代、15歳となったボクは大分の美術高校に入学、オカンを小さな町に残し下宿生活を始めた。1980年代、ボクは美大生となり憧れの東京にやって来る。ベストセラー小説と不治の病ものが苦手なので、敬遠していたが、樹木希林とオダギリの演技が見たくてやっと拝見しました。映画のテイストは予想通りだったが端役までオールスターキャストなのに驚いた。娘時代を希林さんの娘が演じていた。さすが濃いDNA、存在感が半端なかった。内田也哉子の今後のアーティスト人生に期待大。2019.10

宵闇真珠
監督:クリストファー・ドイル、ジェニー・シュン、出演:オダギリジョー、アンジェラ・ユン/香港の漁村。父親から日光に当たると死んでしまう奇病だと教えられ、幼い頃から太陽を避けて生活している16歳の少女は、歌手だったという母の写真と歌を心の支えに生きている。ある日、少女は古い洋館である男とであう。ドイルとカーウァイがコンビを組み、数々の名作を生んだ頃の作品にテイストは似ていたが、少々退屈に感じてしまった。映像はドイルなのだが、リズム感が足りない気がして…。もう一度二人のコラボ作品を見たいんだけどなあ。ちょっと残念。2019.10

きみの鳥はうたえる
監督: 三宅唱、出演: 柄本佑、石橋静河、染谷将太/函館郊外の書店で働く「僕」は、失業中の静雄と小さなアパートで一緒に暮らしていた。書店の同僚の佐知子と付き合い始めた僕だったが…。評判よくて3人の役者も大好きなので期待してみたが、男を渡り歩く佐知子のキャラが受け付けられず。よくあるんだけど、女の描き方が男の願望目線でリアリティなし。同じ原作者の映画なのだが、「そこのみにて光り輝く」のほうが心に残る映画だったな。

軍中楽園 PARADISE IN SERVICE
監督: ニウ・チェンザー、出演:イーサン・ルアン、レジーナ・ワン/台湾と中国が緊張状態にあった1969年。台湾の青年兵士ルオ・バオタイは、最前線の島“金門島”に配属され、“軍中楽園”と呼ばれる娼館を管理する部隊で働くことに。娼館が舞台の悲しい人間模様をシンプルに描いている。ステレオタイプではあるけれど、キャラがそれぞれ魅力的でつい感情移入。少年のころ中国から半強制的に金門島に連れてこられ、娼婦に母の面影を見て夢中になってしまう中年兵士の生きざまが痛々しくていちばん泣けました。2019.9

女王陛下のお気に入り THE FAVOURITE
監督:ヨルゴス・ランティモス、出演:オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ/18世紀初頭のイングランド。フランスとの戦争が長引く中、アン女王の幼馴染で、イングランド軍を率いるモールバラ公爵の妻サラは、女王に代わって宮廷の実権を握っていた。そこへサラの従妹アビゲイルが現れ、召使いとして働き始める。計算高い若いアビゲイルがエマ・ストーンにぴったり。心がすさんだ女たちのキャラがリアルで面白かったけど、展開はありきたりでちょっと飽きてしまった。2019.9

空と風と星の詩人 ~尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯~ DONGJU: THE PORTRAIT OF A POET
監督:イ・ジュニク 、出演:カン・ハヌル、パク・ジョンミン、キム・インウ/1917年北間島(ぷっかんど)の同じ家で生まれ育った、いとこ同士の尹東柱(ゆんどんじゅ)と宋夢奎(そんもんぎゅ)は中学を卒業すると共にソウルの延禧専門学校へ進学する。東柱は詩人になる夢を持っていたが、二人は日本へ留学。夢奎は京都帝大へ、東柱は東京の立教大学に入学する。まもなく独立運動を主導した嫌疑により宋夢奎は逮捕され、帰郷しようとしていた尹東柱も捕らわれてしまう。若くして命をなくした二人の青年の人生が痛ましくてつらかったです…。青春映画として、「菊とギロチン」に通じるものあり。2019.9

エル・スール El sur
監督:ヴィクトル・エリセ、出演:オメロ・アントヌッティ、ソンソレス・アラングーレン、イシアル・ボジャイン/故郷“エル・スール”を捨て、北の地へ移り住んだ一家。だが父は、かつての恋人だったある女優への思いを捨てられずにいる。ある日、幼い娘は映画館に通う父を見かける。シンプルな映画ではあるのだが、ぐっと引き付けられてしまうのは、映像の力なのか、役者の存在感なのか…。退屈でありそうで退屈でない映画。余韻が残った。2019.9

ディアマンティーノ 未知との遭遇 DIAMANTINO
監督:ガブリエル・アブランテス、ダニエル・シュミット、出演:カルロト・コッタ、クレオ・タヴァレス、アナベラ・モレイラ/サッカーのスター選手が、難民支援に目覚め、難民の少年を養子にする。だが、その少年は、彼の脱税を調査する女性捜査官だった。物語はシンプルだが、テイストが不思議ワールドで、少々ついていけず。

ロケットマン
監督: デクスター・フレッチャー、出演:タロン・エガートン、ジェイミー・ベル 、ブライス・ダラス・ハワード、リチャード・マッデン/ロンドン郊外で不仲な両親のもとに生まれ、愛のない家庭に育った少年レナードは、音楽的な才能を見出されて国立音楽院に入学。ロックに目覚め、エルトンと名乗り始める。レコード会社の公募で作詞家バーニー・トーピンと運命的に出会い2人は作曲家・作詞家コンビとして幾多の名曲を生み出してく。エルトンを演じたタロンの歌がうまくて、そっくりで楽しめた。バーニーという作詞家との関係については知らなかったので、目から鱗でした。バーニーを演じたジェイミーもGood。「リトル・ダンサー」の少年役がりっぱな大人になってたことが、うれしかったです。「ピンボール~」聞いたら「トミー」がみたくてたまらなくなった。2019.9

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド ONCE UPON A TIME IN HOLLYWOOD
出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、エミール・ハーシュ、ブルース・ダーン、アル・パチーノ/ 落ち目のTV俳優リック・ダルトン。彼を慰めるのは、リックのスタントマンとして公私にわたって長年支えてきた相棒のクリフ・ブース。彼の家の隣には、時代の寵児となった映画監督のロマン・ポランスキーとその妻で新進女優のシャロン・テートが越してきて、彼らとの勢いの違いを痛感するリック。一方クリフはヒッチハイクをしていたヒッピーの少女を拾い、彼女をヒッピーのコミューンとなっていた牧場まで送り届けてあげるのだったが…。現実に起こった事件と架空の俳優の生活をリンクさせた、西部劇オタク大好き監督が一部のファンのためだけに撮った映画という感じ。だったらよかったのに、というエンディングには驚いたが。もうちょっと、タランティーノらしい笑えるぐらいの暴力満載であったほうがよかったのに。2019.9 このページのTopへ

アリー/ スター誕生 A STAR IS BORN
監督・出演:ブラッドリー・クーパー、出演:レディー・ガガ/ウェイトレスとして働きながらも歌手を夢見るアリー。場末のバーで歌っていたアリーの前に、世界的ロックスターのジャクソンが現われる。彼はアリーの歌声に惚れ込み、彼女を自身のコンサートに招待する。バーブラ版とほぼ同じのシンプルなミュージカル。
鼻にポンプレックスがあるガガは、予想通り歌と存在感が半端ないのだが、クーパーが意外や意外、歌声も素敵で、アル中っぷりも様になり、どんどんクリス・クリストファーソンに風貌も寄っていき…。この映画は「スター転落」がメインの話だったということを思い出させてくれた。懐かしい名作をリメイクしてくれてありがとう。2019.1

愛と哀しみのボレロ LES UNS ET LES AUTRES
クロード・ルルーシュ監督、出演:ロベール・オッセン、ジョルジュ・ドン、ダニエル・オルブリフスキー、ジェラルディン・チャップリン、ニコール・ガルシア/フランス、アメリカ、ロシアを舞台に、1940年代から60年代、80年代、と様々な人生を送った人々の親子、孫の生き方を切り取った群像劇。テーマは戦争と音楽。ジャズからクラシック、ポップスまで、様々な音楽が出てくるのがうれしい。グレン・ミラーとヌレエフ、カラヤンはモデルなのはわかったがほかの、人物にもモデルがいるのでしょう。戦争は人の人生を狂わすという、メッセージはしっかり受け止めました。以前見たときはまだ10代で、印象的なシーンしか覚えていなかったので、まっさらな気分で見れました。2019.2

女と男の観覧車 WONDER WHEEL
ウディ・アレン監督、ケイト・ウィンスレット、ジム・ベルーシ 、ジュノー・テンプル、ジャスティン・ティンバーレイク出演/1950年代のコニーアイランドの遊園地で働く元女優のジニーは監視員のバイトをしている脚本家志望の若者ミッキーと出会い恋に落ちる。再婚した夫には飽き飽き、息子は放火ばかりする問題j児、女優のプライドが捨てきれず満たされない日々を送っていたジニーにとってミッキーはまさに救世主だった。だが夫の先妻の娘がギャングに追われて逃げ込んできたことで運命の歯車が狂い始める。ケイト・ウィンスレットの凄まじいまでの嫉妬の演技に釘付け。舞台っぽくてちょっとやりすぎの感のあるが、メリル・ストリープのような演技派スターへの道が見えた。揺れる女の気持ちを色で表現したストラーロの映像が秀逸でした。主演だけがアレン映画っぽくないのも新鮮だった。2019.3

悲しみに、こんにちは SUMMER 1993
監督:カルラ・シモン、出演:ライア・アルティガス、パウラ・ロブレス/両親を亡くし、田舎の叔父夫婦に引き取られた少女フリダの戸惑いを描いた作品。。慕ってくる幼いいとこのアナに意地悪をしたり、叔母に逆らったり…。寂しさをストレートに表現できないフリダの心の痛みがヒシヒシ伝わってきた。子役がうまい!新人監督の自伝映画のようだが、自作にも期待大。2019.6

グリーンブック GREEN BOOK
監督:ピーター・ファレリー、出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ/1962年。ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒を務めるトニー・リップはけんかっ早いが家族思い。仕事を失ったトニーはカーネギーホールに住む天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリーの南部ツアーの運転手の仕事に就くことに。2人は、黒人が利用できる施設を記した旅行ガイドブック“グリーンブック”を手に旅立つ。
当時の黒人差別を描いた映画俳優数えきれないほど見てきたし、物語の展開も先読みできてしまう凡庸さ。ではあるのだが、役者二人の存在感が際立っていて、わかっちゃいるけど泣けてしまいました。古典的とも思えるこの手の作品がいまだにアカデミー賞で作品賞をとるということは、人種差別が今でも根深く残っていることに他ならない。
 二人は亡くなるまで親友でいたという実話は心温まる話ではあるのだが、よかったね~、だけで終わらせちゃいけないってこと。人は知らないから差別する。個人個人で友情が芽生えれば黒も白も黄色も関係ない。ということを言いたいんだろうが、そんなに単純ではないんだよなあ。いろんなことを考えさせられる映画だった。2019.3

孤狼の血
白石和彌監督、役所広司、松坂桃李、真木よう子、音尾琢真、ピエール瀧、石橋蓮司 、江口洋介/暴力団対策法成立直前の昭和63年。広島の地方都市、呉原。そこでは地場の暴力団“尾谷組”と、広島の巨大組織“五十子会”をバックに進出してきた新興組織“加古村組”が一触即発の状態で睨み合っていた。呉原東署に赴任してきたエリート新人刑事の日岡は、黒い噂が絶えないマル暴のベテラン刑事・大上の下に配属される。どうしても「仁義」とくらべてしまうのだが、よくできたヤクザ映画でした。役者の迫力がちょっとねえ、でしたが。危ない真珠男=音尾を発見できたのは収穫。2019.4

斬、
塚本晋也監督・出演、池松壮亮、蒼井優、中村達也/江戸時代末期。農村で暮らす若い侍・杢之進は、隣人のゆうの弟・市助を相手に剣の稽古に余念がない。ある日、剣の達人である澤村が村に現れた。美しい剣さばきと、塚本監督お得意の血がドボドボ、ギロチン系の違和感が新鮮ではあったのだが、ちょっと国際映画祭受け狙いに走っていた感あり。塚本監督と蒼井優のいちゃいちゃシーンは監督の願望?と勘ぐってしまった。
「野火」が傑作だっただけにちょっと期待はずれ。中村達也の極悪人役はサイコーでした。2019.4

SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬
相原裕美監督、鋤田正義/デヴィッド・ボウイやイギー・ポップ、マーク・ボラン、忌野清志郎、YMOをはじめ、世界的アーティストの代表的なポートレートやアルバム・ジャケットを数多く手掛けてきた日本人写真家、鋤田正義の偉大な足跡を追ったドキュメンタリー。写真家に疎いので面白かった。マーク・ボランって交通事故で死んだの知らなかった。てっきり薬だと思ってた。思い込みってこわいですね。2019.4

ブラック・クランズマン BLACKKKLANSMAN
スパイク・リー監督、ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライヴァー出演/ 1970年代前半。コロラド州のコロラドスプリングス警察署初の黒人刑事となったロン・ストールワースは、過激な白人至上主義の秘密結社KKKのメンバー募集の新聞広告を見つけるや自ら電話を掛け、白人男性と思い込ませることに成功する。ロンは同僚の白人刑事フリップ・ジマーマンを潜入させ、電話はロン、潜入はフリップというコンビが結成される。こんなことが実話、というのが驚き。昔だから電話の声が変わるのはあり得るけど、結末を知らなかったので、いつばれるかと冷や冷やしながら見てしまった。KKKが黒人だけでなく全有色人種を排斥したがっていることは薄々知ってはいたのだが、ユダヤ人に対しても差別していたとは知らず。とても勉強になりました。アダム・ドライバーは引っ張りだこだよなあ。イケメンでもなく、演技も地味だけど妙な味があるところがいいのかも。KKKの差別的発言の連続で聞いていて辛い部分もあったが、これが現実なんだ、というスパイク監督の主張がしっかり詰め込まれていた。2019.4
悲しみに、こんにちは SUMMER 1993
監督:カルラ・シモン、出演:ライア・アルティガス、パウラ・ロブレス/両親を亡くし、田舎の叔父夫婦に引き取られた少女フリダの戸惑いを描いた作品。。慕ってくる幼いいとこのアナに意地悪をしたり、叔母に逆らったり…。寂しさをストレートに表現できないフリダの心の痛みがヒシヒシ伝わってきた。子役がうまい!新人監督の自伝映画のようだが、自作にも期待大。2019.6

イン・ビトゥイーン・デイズ Correspondencia: Isaki Lacuesta y Naomi Kawase
イサキ・ラクエスタ監督・河瀨直美監督/イサキ・ラクエスタ監督と河瀨直美監督の間の取り交わされた書簡を映像したドキュメンタリー作品。感覚的な二人にしかわからない世界でした。

マリア(とその一家) Maria (y los demas)
ネリー・レゲラ監督/15歳で母を亡くして以来、マリアは家族の世話を一手に引き受けてきた。だが癌を克服した父が看護師カチータと再婚することで状況が一変する。本屋で働きながら小説家を目指すマリア。家族はどんどん離れていき、彼氏にも適当にあしらわれ…。やってらんないよね。でも、悲壮感がなかったのが良かったです。周りのみんなは自分勝手に見えるようでも、しっかり愛情は感じられるし、いいファミリー。スペイン人も日本人も悩みは一緒なのですね。2019.6

さよならが言えなくて No se decir adios
リノ・エスカレラ監督/父と長い間連絡を取っていなかったカルラは、ある日父が病気になったという連絡を受ける。父の死を前に戸惑う姉妹の物語。キャラ設定がよくわからず。字幕も雑で見にくかった。残念。2019.6

サウラ家の人々 SAURA(S)
フェリックス・ビスカレット監督/2017年/サウラと彼の子供たちをインタビューするドキュメンタリー。寡黙だけど妻と子供が何人もいるのがいかにもラテンのアーチスト。歴代の妻にもインタビューしてほしかったが、それはまた次の機会に。2019.7

アイ、トーニャ
スケートのトーニャ・ハーディングの生い立ちを映画化した作品。母親からの言葉の虐待、二卵性双子のような夫との関係が興味深かった。殴打事件はあってはならないけど、豊かな社会から置いてきぼりにされた白人社会から、全米代表選手にまで上り詰めたトーニャにはブラボーだ。母親役のアリソン・ジャネイはアカデミー賞とるのも納得だが、映画の内容に関しては、どうかなあ。初期のコーエン兄弟作品のようなコミカル&シニカルなテイストを期待していたので。2019.7

オール・アイズ・オン・ミー ALL EYEZ ON ME
監督:ベニー・ブーム、出演:ディミートリアス・シップ・Jr、カット・グレアム/1996年に25歳の若さで凶弾に倒れた伝説のラッパー、2PACの壮絶な人生を映画化した音楽伝記ドラマ。ニューヨークのスラムで生まれ育った2PACは、ブラックパンサー党員の母に連れられ、住まいを転々とする少年時代を過ごす。やがてラップに夢中になる。両親がブラックパンサー党員だったことや、有名女優と幼馴染だったことなど、知らないことだらけだったので目から鱗。ミュージシャンの伝記映画としては予定調和で印象に残らず。2019.6

哭声/コクソン THE WAILING
ナ・ホンジン監督、出演:クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼/のどかな田舎の村。山の中の一軒家に一人の日本人が住み着き、村人たちの間にこのよそ者に対する不気味な噂が広まり始めていた。そんな中、村人が自分の家族を惨殺する謎の猟奇事件が連続して発生する。いずれの事件でも、犯人の村人は体中を奇妙な湿疹に覆われ、正気を失った状態で現場に残っていた。村八分とゾンビが絡んだホラー映画。予想外の展開についていけず。2019.6


華氏119 AHRENHEIT 11/9
マイケル・ムーア監督/2016年11月9日、アメリカ大統領選でドナルド・トランプが勝利を宣言した。誰も予想できなかった驚きの結果だったが、マイケル・ムーア監督は数ヵ月も前にその可能性に言及、警鐘を鳴らしていた。ごりごりの反権力ドキュメンタリーではあるのだが、トランプに対する茶化しよりも、ミシガン州知事への怒りや、フリント市民の鉛中毒の話のほうが印象に残った。アメリカの光と影。取り残された中部の田舎では、ひどい鉛の被害にあっていたことすら知らなかったのでショックだった。「安全な水を買うために働いている」という言葉が胸に残った。日本も他人事じゃない…。2019.7

ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ SICARIO: DAY OF THE SOLDAD
監督:ステファノ・ソッリマ、出演:ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、イザベラ・モナー/アメリカのテロに不メキシコの麻薬カルテルが関わっていることを突き止めたアメリカ政府は、CIA工作員マットにカルテル壊滅の極秘ミッションを命じる。マットはコロンビアにいたアレハンドロに協力を仰ぐ。前作にはあまりピンとこなかったのだが今回は見ごたえ十分。相変わらず米国政府のやりたい放題感は半端ないのだが、そうは言ってもデルトロ演じる殺し屋が、家族の仇の娘を見殺しにしないあたりにホッとさせられたり…。最後までハラハラドキドキで面白かった。2019.7

シャイラク CHI-RAQ
スパイク・リー監督、出演:ニック・キャノン、ウェズリー・スナイプス、テヨナ・パリス、ジェニファー・ハドソン/ギリシャ神話を現代の黒人社会に置き換え、女性がセックスを拒むことで男たちの争いをやめさせようとするムーブメントを舞台風に描いた作品。舞台で見た方が面白いかも。評価は高くない作品だが、主張がはっきり出ていてよかったです。2019.5

ビル・エヴァンス タイム・リメンバード BILL EVANS/TIME REMEMBERED
監督:ブルース・スピーゲル、出演:ジャック・ディジョネット、ジョー・ラバーベラ
ゲイリー・ピーコック/ジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンスの音楽と人生を見つめたドキュメンタリー。曲は知ってはいたが、人となりに関しては無知だったので面白く見れた。仲が良かった教師の兄の悲劇や、バンドメンバーの事故死、曲まで作った彼女の自殺などの暗い出来事や、本人のドラッグ中毒など、ザッツ波乱万丈、これぞ天才ミュージシャンといった人生だったのですね。それでも子供が出来たりして、幸せな時間もあったようで。デビ―がかわいらしい曲なのは、姪っ子のための曲だったと知ってさらに好きになりました。2019.5

ブラックパンサー BLACK PANTHER
監督:ライアン・クーグラー、出演:チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ/アフリカの秘境に隠れるように存在している超文明国ワカンダ。国王の突然の死を受け、息子のティ・チャラが急遽王位を継ぐことに。しかしワカンダの国王はある重要な使命を帯びていた。それは、世界を崩壊させるパワーを秘めた希少鉱石“ヴィブラニウム”というワカンダ最大の秘密を守ること。すべてが、かっこよかった! 

BESSIE/ブルースの女王
監督:ディー・リース、出演:クイーン・ラティファ、モニーク/20年代にブルースの女王と言われた歌手ベッシーの半生を描いた作品。映画としてはステレオタイプだったが、ベッシーの存在を知らなかったので勉強になりました。2019.5



寝てもさめても
監督:濱口竜介、出演:東出昌大、唐田えりか、瀬戸康史/美術館で不思議な青年麦と出会い恋に落ちた朝子。だが麦は突然姿を消す。5年後、カフェで働く彼女は、コーヒーを届けに行った先である男、亮平が麦とそっくりなことに驚く。男に一途で芯の強い女性、というキャラ設定が苦手なのでまったく入れず。ただしキャラが丁寧に描かれていて評価が高いのは納得。2019.6

ジュピターズ・ムーン JUPITER HOLDJA
監督:コルネル・ムンドルッツォ、出演:メラーブ・ニニッゼ/医療ミスにより患者を死なせた過去を持つシュテルンは、難民キャンプで国境警備隊に撃たれた難民の青年アリアンと出会う。アリアンは何発もの銃弾を受けながらも、重力を操り浮遊する不思議な能力を持っていた。難民の青年と彼の能力を利用しようとする医師の奇妙な関係を描いた作品。この監督の作品はいつも切り口が風変わり。社会問題を独自の視点で切り取っているのが面白かった。2019.4

69 sixty nine
監督:李相日、出演:妻夫木聡、安藤政信、金井勇太、太田莉菜、柴田恭兵、加瀬亮、柄本佑、星野源/1969年、佐世保。佐世保北高校3年のケンは、仲間のアダマやイワセと屋上で掃除をサボっているとき、フェスティバルの開催を思いつく。安保反対が学生たちの時代のトレンドだったのでしょう。そこに信念はないのだが何かやってやりたいだけの若者たちの爆発感が気持ちよかった。クドカンの脚本が躍動していて笑いっぱなし。今をときめく星野源がもっともかっこ悪いけどおいしい役を演じてたのも面白かった。2019.4

止められるか、俺たちを
監督:白石和彌、出演:門脇麦、井浦新、山本浩司、岡部尚/1969年、春。21歳の吉積めぐみは、ピンク映画の旗手・若松孝二率いる“若松プロダクション”の扉をたたく。当時の若松監督の奇天烈さ、足立監督の冷静さ、荒井晴彦の意地悪さなどなど、大御所たちの若かりし頃の関係性が面白く、役者たちも楽しそうに演じているのが伝わってきた。めぐみさん個人の描き方は浅い感もあったが、群像劇として時代の熱気が伝わってくる作品。めぐみさんを描くことや、彼女の死に関しては、もっとも深い関係だったと思われる、名撮影監督の高間氏、足立氏からも詳しく話を聞きたい気分になったが、事実がどうとかよりも、彼女が生きた証として価値のある映画だと思った。うるさ型の方々からけちょんけちょんに言われるのを覚悟してこの映画をとったスタッフ&キャストに拍手を送りたい。2019.4

名もなき野良犬の輪舞 THE MERCILESS
監督:ビョン・ソンヒョン、出演:ソル・ギョング、イム・シワン/刑務所に服役中のジェホは新入りの若者ヒョンスの物怖じしない態度を見込み固い絆で結ばれていく。ヒョンスから自分は潜入捜査官であると知らされたジェホだったが…。アンチ・インファナルアフェアとでも言おうか、潜入捜査側が寝返りヤクザになる話。いまひとつ人間関係がよくつかめず。期待はずれ。2019.4

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ THE BIG SICK
監督:マイケル・ショウォルター、出演:クメイル・ナンジアニ、ゾーイ・カザン、ホリー・ハンター/パキスタン生まれ、シカゴ育ちの青年クメイルは、ウーバーの運転手をしながら駆け出しのコメディアンとして小さなクラブのステージに立つ日々。そんなある日、大学院生のエミリーと出会い、たちまち恋に落ちる。実話の映画化。本人たちが脚本を書いたそうです。障壁を乗り越えた、いいお話でした。米国では、イスラム差別を笑いに変えてしまうしかない現実があるのでしょう。たくましく生きないとね。2019.4

人斬り与太 狂犬三兄弟
監督:深作欣二、出演:菅原文太、田中邦衛、渚まゆみ、渡辺文雄/北闘会の会長を刺殺した権藤は、六年間服役した後に出所。村井組の金バッジになれると思い込んでいた権藤だったが、北闘会と村井組が手打ちしたことで蚊帳の外に置かれる。子分とともに闇売春宿をはじめるが…。
 肩で風切って吠えまくる文太さんにずーっと見入ってしまいました。時代を感じさせる激しい強姦シーンには少々引きましたが。文太さんフォーエバー。ワンパターンと言われようが、この時代のやくざ映画は一つの文化。しっかり人間味がにじみ出てしまう主役の魅力と、激しさ、スピード感が画面いっぱいにはちきれていました。2019.4

リメンバー・ミー COCO
監督:リー・アンクリッチ、声の出演:アンソニー・ゴンサレス、ガエル・ガルシア・ベルナル/ミゲルは音楽が大好きな少年。だが彼の家では、むかし起こったある出来事がきっかけで、代々演奏はおろか音楽を聴くことも禁じられていた。人々が先祖の魂を迎える“死者の日”、ミゲルは死者の国に迷い込んでしまう。素敵な音楽とカラフルでキュートなな映像に心が癒されました。オアハカに行ってみたくなりました。2019.4

レディ・バード LADY BIRD
監督:グレタ・ガーウィグ、出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、ティモテ・シャラメ/2002年、カリフォルニア州サクラメント。閉塞感漂う町を早く出たいクリスティンは、母に反抗し自分のことをレディ・バードと呼ぶよう促す。演劇サークルに入った彼女はダニーという好青年のボーイフレンドと恋仲に。青春映画は数多くみているが、とても良質のいい映画。主役が最高にキュートでした。2019.5

ローマンという男
デンゼル・ワシントン主演/パートナーの突然の悲劇により、調査専門だった弁護士ローマンは司法の現場の世界に放り出される。意固地なローマンは思うような仕事に就けず悶々とする。世の中の不公平さに絶望したローマンは、ある男から得た情報を検察にリークして違法な懸賞金を受け取ってしまう。デンゼルが地味で不格好なローマンを熱演。演技うまいの一言につきる。




ザ・スクエア 思いやりの聖域 THE SQUARE
監督:リューベン・オストルンド、出演:クレス・バング、エリザベス・モス、ドミニク・ウェスト/現代美術のキュレーター、クリスティアンは、インスタレーション“ザ・スクエア”を発表する。そんなある日、道端で思わぬトラブルに巻き込まれ、携帯と財布を盗まれてしまう。皮肉たっぷりの知的なコメディ。好きなジャンルではあるのだがなぜかこの監督の作品は苦手だ。2019.3

スパイナル・タップ(1984) THIS IS SPINAL TAP
ロブ・ライナー監督・出演クリストファー・ゲスト、アンジェリカ・ヒューストン、ダナ・カーヴィ、ブルーノ・カービイ/英国のロックバンド“スパイナル・タップ”の全米ツアーに密着したという設定で描かれるフェイク・ドキュメンタリー。たぶんフェイク映画の走りなんだろうけど、今見るととくに可もなく不可もなく…。2019.3

スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015) STAR WARS:THE FORCE AWAKENS
J・J・エイブラムス監督、出演:ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、アダム・ドライヴァー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック/「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」(旧3部作の3)からおよそ30年後。帝国軍の残党“ファースト・オーダー”の台頭により、銀河は再び恐怖に支配されようとしていた。彼らは、消息が分からない最後のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーの行方を追っていた。そんな中、砂漠の惑星で家族を待ち続けている孤独なレイは、ある地図の情報を持つドロイドBB-8と、ストームトルーパーの脱走兵フィンと運命的な出会いを果たす。

スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017)STAR WARS: THE LAST JEDI
監督:ライアン・ジョンソン、出演:マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、アダム・ドライヴァー、デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、ベニチオ・デルトロ/レイア将軍率いるレジスタンスはファースト・オーダーの猛攻に晒され、基地を手放し決死の脱出を図る。その頃、レイは伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーを連れ戻そうと説得を試みていた。ラテン系、アジア系、アフリカ系にも気を使った配役、オールドファンを喜ばすレイアとルークの2ショットなどなど、見所満載で楽しめました!2019.3

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016) ROGUE ONE A STAR WARS STORY
ギャレス・エドワーズ監督、フェリシティ・ジョーンズ、ディエゴ・ルナ、ベン・メンデルソーン、ドニー・イェン、マッツ・ミケルセン出演、声の出演:ジェームズ・アール・ジョーンズ(ダース・ベイダー)/「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」(旧3部作の1)でレイア姫がR2-D2に託した“デス・スター”の設計図はいかにして反乱軍の手に渡ったのかを描く。ダース・ベイダー擁する帝国軍の究極兵器“デス・スター”がついに完成しようとしていた。デス・スターを作った科学者ゲイレン・アーソを父に持ち、家族と離れ一人で生き抜いてきたタフな女アウトロー、ジン・アーソ。ある日、彼女は反乱軍の将校キャシアン・アンドーのいる反乱軍の極秘チーム“ローグ・ワン”の一員となる。キャストが超豪&物語もシンプルでよかった。2019.3

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー SOLO: A STAR WARS STORY
監督:ロン・ハワード、出演:オールデン・エアエンライク、ウディ・ハレルソン、エミリア・クラーク/若者ハンは幼なじみのキーラとともに故郷からの脱出を図るも失敗、2人は離ればなれに。ハン・ソロ好きなので見てみたが、彼の過去にとくに面白みは感じられず。
2019.4


タクシー運転手 ~約束は海を越えて~ A TAXI DRIVER
監督:チャン・フン、出演:ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマ/1980年、韓国のソウル。妻に先立たれ、幼い娘を抱えて経済的に余裕のないタクシー運転手のキム・マンソプは、ドイツ・メディアの東京特派員ピーターから、光州での極秘取材の運転手の仕事を依頼される。光州事件のことをまったく知らなかったので勉強になった。韓国映画らしいドラマチックな展開はやりすぎの感があったがガンホの演技がうまいのでつい涙した。実際にはドイツ人ジャーナリストがこのタクシー運転手と再会できなかったというのがなんとも謎なのだが、事実とは得てしてそういうものなのでしょう。 2019.3

聖なる鹿殺し
ヨルゴス・ランティモス監督、コリン・ファレル、ニコール・キッドマン、
バリー・コーガン/心臓外科医スティーブンは、手術中に亡くなった男の息子マーティンを気にかけ家族に紹介する。その後、次男が歩けなくなり食欲をなくす。続いてマーティンに夢中の長女も同じように歩けなくなる。
この監督がキューブリックに影響を受けている感は伝わるし、見ている側を迷宮に誘い込むテクニックはすごいと思うのだが。鑑賞後も、もやもやする映画は嫌いじゃないんだけど、なぜか受け付けない。「ロブスター」もそうだが、たぶんゲームっぽいからダメなんだと思った。2019.3

ディストラクション・ベイビーズ
真利子哲也監督、 柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎/愛媛県松山市西部の小さな港町。高校生の芦原将太は両親を早くに亡くし、兄の泰良と2人暮らし。泰良はある日突然姿を消しけんかをしては徘徊し始める。高校生の北原裕也はそんな泰良の迫力に取り付かれ一緒に暴力ゲームに興じだす。二人はキャバ嬢の那奈を拉致し警察も動き出す。猟奇的な暴力の連鎖を執拗に描いた衝撃作。菅田の演技が秀逸だった。2019.3

ドント・ブリーズ DON'T BREATHE
監督:フェデ・アルバレス、製作:サム・ライミ、出演:ジェーン・レヴィ、ディラン・ミネット、ダニエル・ゾヴァット、スティーヴン・ラング/デトロイトで、少女ロッキーと恋人のマニー、友人のアレックスは盲目の老人が一人で暮らす家に押し入り、賠償で得た大金を強奪しようとする。ホラーというよりサイコサスペンス。パート2も作るられることを予感される終わり方だった。監督はウルグアイ生まれの若手有望株。2019.3

バトル・オブ・ザ・セクシーズ BATTLE OF THE SEXES
監督:ヴァレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン、出演:エマ・ストーン、スティーヴ・カレル、アンドレア・ライズブロー/全米女子テニス・チャンピオンのビリー・ジーン・キングは、女子の優勝賞金が男子の1/8であることに反発し、仲間たちともに“女子テニス協会”を立ち上げる。そこへ55歳の元世界王者ボビー・リッグスが対戦を申し込んでくる。キング夫人の性的嗜好や男尊女卑的な制度を知らなかったので勉強になりました。エマ・ストーンはがんばってたと思うけど、女優としてなぜかあまり魅力を感じず。2019.3

ビール・ストリートの恋人たち IF BEALE STREET COULD TALK
監督:バリー・ジェンキンズ、原作:ジェイムズ・ボールドウィン、出演:キキ・レイン、ステファン・ジェームズ、レジーナ・キング/1970年代のニューヨーク。19歳のティッシュは幼なじみのファニーと恋人同士。二人は愛を育むが、白人警官の怒りを買ったことをきっかけに無実の罪で逮捕される。
 若くてピュアな男女の初恋のドキドキ感と、ジャジーな音楽、二人をやさしく包み込む光の演出がお見事。とっても素敵なラブストーリーでした。それだけに、当時のマイノリティに対する迫害が痛く心に突き刺さる。黒人だけでなくプエルトリコ出身女性に対するレイプ事件というのも、マイノリティに対する非人間的扱いの象徴として描かれている。
 法廷ものではないので無罪にならないことはわかってはいたが、それでも望んでしまう気持ちが湧いてきた。ささやかな幸せを望みながら人は生きていくものなのですね…。余韻を楽しめる映画。映像が美しく劇場で見て正解でした。2019.2



ロープ/戦場の生命線 A PERFECT DAY
監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア/出演:ベニチオ・デル・トロ、ティム・ロビンス、オルガ・キュリレンコ、メラニー・ティエリー/1995年、停戦直後のバルカン半島。ある村で井戸に死体が投げ込まれ、大切な水が汚染されてしまう。国連の動きは鈍く、NGOのメンバーが死体の引き上げに乗り出すが、肝心のロープがなぜか手に入らず…。バルカン紛争地帯が舞台なのでついクストリッツア映画と比べてしまったが、ほどよく肩の力の抜けた感がよかった。少年の悲劇もお涙頂戴にせず、たくましく生きていけそうな予感を感じさせてくれた。「しゃあねえなあ」「めんどくせー」とダラダラしながらもやるときゃやるキャラを演じたデル・トロが最高でした!2019.3


万引き家族 SHOPLIFTERS
監督:是枝裕和、出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、城桧吏、樹木希林/都会の古びた平屋の一軒家には、家主の初枝を中心に、日雇い労働者の治、妻でクリーニング店に勤める妻のほか、身寄りのない少年・ショウタ、風俗で働く若い女が暮らしている。治とショウタは万引き稼業の帰り道、団地の廊下で寒さに震えている女の子を見つけ家に連れ帰る。それぞれがどんな関係なのかをなかなか明かさずに日常を見せていく手法は、少々まどろっこしくも感じたが、キャラクターがそれぞれ魅力的に描かれていて、さすが是枝監督。とくに子供の演技の引き出し方が天才。パルムドール受賞は少年と少女、二人によってもたらされたものですね。パサパサ、サバサバしていた妻が、最後に見せる涙にはぐっと心をつかまれた。安藤サクラもブラボー!一方、素晴らしい作品なんだけど、是枝作品は実はさほど好みじゃないってことも再確認。たぶん彼は根っから真面目なのでしょう。もう少し皮肉や笑いがあるのが私好み。2019.2

パーティで女の子に話しかけるには HOW TO TALK TO GIRLS AT PARTIES
ジョン・キャメロン・ミッチェル監督、出演:エル・ファニング、アレックス・シャープ、ニコール・キッドマン/1977年、ロンドン郊外。パンクが大好きな内気な高校生エンは、ある日、不思議なパーティでザンと出会う。彼女は、謎の団体に所属していて…。ポップ感とサンのかわいさが印象的。ジョン・キャメロンらしく音楽と衣装と役者の雰囲気がぴったりはまっていた。2019.1

ファントム・スレッド PHANTOM THREAD
監督:ポール・トーマス・アンダーソン、出演:ダニエル・デイ=ルイス、レスリー・マンヴィル、ヴィッキー・クリープス/1950年代、ロンドン。レイノルズは英国の高級婦人ファッション界の中心に君臨する天才的仕立て屋。雑事を一手に取り仕切るのが姉のシリル。ある日、レイノルズは若いウェイトレスのアルマに出会い、彼女を新しいミューズとして迎え入れる。
気難しい初老のデザイナーを演じたダニエルの存在感に尽きる。恋人アルマが小悪魔から悪魔に変貌していく過程や、泥沼にずぶずぶとはまっていくレイノルズの関係性など、心理描写が秀逸でさすがアンダーソン監督、という感じ。ただしハマれない人には苦痛の2時間かも。自分はこういう世界は好きではあるのだが、拒否反応が出た。女の異常さ、ずるさ、嫌らしさを見せ付けられ、とっても苦い気分にさせられた。相手のすべてを欲しくなる、というのは究極の恋愛ではあるのでしょうが…。2019.2

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 THE FLORIDA PROJECT
監督:ショーン・ベイカー、出演:ブリア・ヴィネイト、ウィレム・デフォー、ブルックリン・キンバリー・プリンス/モーテルで暮らすシングルマザーの生態をドキュメンタリー風に描いた作品。
自堕落な母親と野放しの子ども達が騒ぎ、暴れまわる、ただそれだけの映画なんだが、社会の底辺で暮らす人の実態はこんなものなのかもしれない。這い上がる気力さえない母と悪知恵ばかりつけてしまう子ども達に、目をしかめ、批判することは簡単なのだが、どうになしなきゃまずいけど出口がわからないことに絶望的になった。逃げた子ども達の行く先に、明るい未来があればいいのだけど…。ディズニーランドそばで暮らしながら、夢の国とは縁のない生活。彼らの生き方を痛々しく感じること自体が、もう自分はつまらない大人ってことなのでしょうか。2019.2

ひつじ村の兄弟 RAMS
監督:グリームル・ハゥコーナルソン、出演:シグルヅル・シグルヨンソン、テオドール・ユーリウソン/アイスランドの村に暮らす老兄弟グミーとキディー。隣に住みながら犬猿の中仲の2人はる羊の品評会優勝を争い、兄キディーの羊が優勝。だがその羊が疫病に感染していることを弟グミーが見抜いたことをきっかけに羊の全村殺処分に追い込まれる。
コメディと思って借りたが、羊の悲劇がせつなく、兄弟の憎しみも半端ない。ところが、徐々に二人の関係が憎しみだけではないことが浮き彫りになっていき、そこにはなんとも言い表しがたい微笑ましさまであり、そしてそして、ラストシーン!ユニークな展開でうけたわ。カンヌある視点部門グランプリも納得の良作です。2019.2

フェンス Fences
監督・主演: デンゼル・ワシントン、 ヴィオラ・デイヴィス/50年代。元野球選手の黒人の男を中心とした家族の物語。ロングランした名作舞台のキャストをそのままに、デンゼルが監督。舞台ものなので、せりふ回しが理屈っぽくて長く、見ていて疲れはするのだが、それぞれのキャストの個性、存在感が秀逸。アカデミー賞助演女優賞も納得の作品。役が乗り移っている、とはこういうことを言うのかも。派手な演技はないけれど、リアルで見ごたえががあった。2019.2

私はあなたのニグロではない I AM NOT YOUR NEGRO
監督:ラウル・ペック/アメリカ黒人文学を代表する作家兼公民権運動活動家ジェームズ・ボールドウィンの言葉を通して、アメリカにおける黒人差別の歴史を辿る社会派ドキュメンタリー。恥ずかしながらメドガー・エヴァースの存在を知らなかったので勉強になりました。2019.2


I Hate New York
監督:グスタボ・サンチェス/出演:アマンダ・ルポール、クロエ・ズビロ、ソフィア・ラマール、T・ デ・ロング/ニューヨークのアンダーグラウンドシーンで生きるLGBTQの人々を2007年から2017年までの10年間取材し、舞台上で見せる華やかな世界とは違う裏の素顔、彼らが経験した差別や病気への恐怖、苦悩に迫ったドキュメンタリー。ドラグクイーンよりもエイズポジティブのクロエと彼のカップルの数奇な運命が衝撃的。

アブラカダブラ ABRACADABRA
監督:パブロ・ベルヘル/出演:マリベル・ベルドゥ、アントニオ・デ・ラ・トレ、ホセ・モタ/カルメンは夫のカルロスを連れ甥の結婚式に出席。カルメンの従兄ペペの余興の催眠術ショーを茶化してやろうとカルロスは被験者を買って出る。一度はインチキだと笑い飛ばしたものの、まもなくカルロスの性格が一変。サッカーにしか興味のないダメ夫から家事に勤しむ優しい夫へと変貌する。統合失調症の男が無差別殺人を起こした、というホラー話と魂の入れ替わりが絡んだブラックコメディ。スペインらしい映画でした。

カルメン&ロラ Carmen y Lola
監督:アランチャ・エチェバリア/出演:ロシー・ロドリゲス、サイラ・ロメロ、カロリナ・ジュステ/マドリード郊外にあるロマのコミュニティーで暮らすカルメンは、他の多くの女性たちと同じように、適齢期になったら結婚して母になる人生を歩もうとしている。一方、ロラは同じロマ出身でありながら、大学進学の希望を捨てず、鳥の絵を描きながら自立した女性になることを願っている。ロラは町で出会ったカルメンに強く惹かれるが、カルメンはロラの従兄の婚約者だった…。若い二人が素人とは思えない存在感で生き生きしていて気持ちがよかった。ロマ社会の閉鎖性も興味深かった。

ローマ法王フランシスコ Pope Francis: A Man of His Word  El Papa Francisco, un hombre de palabra
監督:ヴィム・ヴェンダース/出演:フランシスコ法王/ヴィム・ヴェンダース監督が、バチカン市国の協力のもと、フランシスコ法王とのインタビューを敢行。アルゼンチン人として初めて法王となったフランシスコ法王が、世界が直面している貧困、環境問題、社会問題など、さまざまな質問に対して真摯に応えている。フランシスコ法王に対するヴェンダース監督の尊敬と愛情が詰まったドキュメンタリー。映像も美しく気持ちが洗われる感あり。

アナザー・デイ・オブ・ライフ Another Day of Life
監督:ラウル・デ・ラ・フエンテ、ダミアン・ネノウ/声の出演:ミロスワフ・ハニシェフスキ/1975年のワルシャワ。ベテランのジャーナリスト、カプシチンスキは、ポルトガルから独立して間もないアンゴラの首都ルアンダへ取材のために赴任。そこでカプシチンスキは、混乱を極めるアンゴラの実情を目の当たりにする。アニメを交えたドキュメンタリーという手法が生きていた。カプシチンスキが生存中に撮っていたらさらに深い作品になっていたかも。

ありがとう、トニ・エルドマン TONI ERDMANN
監督:マーレン・アデ、出演:ペーター・ジモニシェック/ドイツに暮らす悪ふざけが大好きな初老の男性ヴィンフリートは、ルーマニアのブカレストでコンサルタント会社に勤める娘イネスのもとをサプライズ訪問する。愛すべき変人の父と娘の関係をユニークな視点で描いた作品。お父さんのキャラは最高だったがちょっと長すぎて飽きてしまった。

サイドマン:スターを輝かせた男たち SIDEMEN: LONG ROAD TO GLORY
監督:スコット・ローゼンバウム、出演:パイントップ・パーキンス、ウィリー・“ビッグ・アイズ”・スミス/ブルースの巨人マディ・ウォーターズとハウリン・ウルフを支えた3人の偉大なサポート・ミュージシャン、パイントップ・パーキンス、ウィリー・“ビッグ・アイズ”・スミス、ヒューバート・サムリンに光を当てた音楽ドキュメンタリー。薄っぺらいブルースファンんのため、サイドマンたちの存在について、知らないことばかりで目からうろこでした。2019.1
 
ニワトリ★スター
監督: かなた狼、出演:井浦新、成田凌、津田寛治/奇妙なアパートに暮らす30代半ばの草太と20代半ばの天真爛漫な楽人。2人は草太が密売する大麻の稼ぎで生活していた。前半の破天荒さと後半の人情話の温度差が極端すぎてついていけず。前半は面白かったです。やくざのリンチシーンが怖かった。

エリック・クラプトン~12小節の人生~ ERIC CLAPTON: LIFE IN 12 BARS
監督: リリ・フィニー・ザナック/クラプトンの音楽の変遷だけでなく、生い立ちから、「レイラ」誕生秘話、ドラッグ・アルコール中毒の苦悩、そして立ち直った直後の息子の死まで、私生活に切り込んだ見応えのあるドキュメンタリー。パティとの恋愛話はジョージが亡くなっているからできるんだろうなあ。ジミヘンとの関係は知らなかったので驚きでした。2018.12

爆裂都市 BURST CITY
監督:石井聰亙、出演:陣内孝則、大江慎也、戸井十月、町田町蔵、泉谷しげる、スターリン、麿赤児ほか/近未来の荒廃した都市を舞台にロッカーたちとやくざが入り乱れ、ひたすら暴れまわる映画。
キャストとスタッフが超豪華なので見てみたのだが、ずーーーっと暴れて叫んでるだけで拷問のようだったが、後半はなぜか笑ってしまった。若いころに見ていたらはまっていたかも。音楽は当たり前ですがパンクです。「マッドマックス2」に似ているな、と思っていたら影響を受けたようです。町田の若いころの映像が印象的。2018.11

パンク侍、斬られて候
監督:石井岳龍、出演:綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、若葉竜也、近藤公園ほか/自ら“超人的剣客”と豪語する浪人・掛十之進は黒和藩の藩士に“腹ふり党”なる新興宗教団体の脅威が迫っていると説き、重臣・茶山半郎のもとで仕官への道を開く。
町田康原作の奇抜なストーリーをクドカンが脚本したエンタメ作品。馬鹿が馬鹿に洗脳されていく様が、各国で起こっている扇動的政治家の台頭と被ってしまった。圧巻はオサムの超能力のシーン。この映画の後で「爆裂都市」見たので、「パンク侍」は町田さん演じるイヌののリベンジなんだな、とつながった。2018.11

ボヘミアン・ラプソディ BOHEMIAN RHAPSODY
監督:ブライアン・シンガー、出演:ラミ・マレック、ルーシー・ボーイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、マイク・マイヤーズ/インド系移民で容姿へのコンプレックスを抱えた孤独な若者が、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラーたちと出会い、バンド“クイーン”を結成。フレディと名前を変えた男は圧倒的な歌唱力で注目を浴びるようになる。オペラ調の『ボヘミアン・ラプソディ』は6分という当時としては異例の長さに、ラジオでかけられないとレコード会社の猛反発を受けるフレディたちだったが…。
 極上のエンターテイメント。豪華な音楽ミュージカルとして堪能できました。ガールフレンドとの関係を描いたドラマ部分が多すぎる、とか家族の許しがあっさりしすぎ、とか、音楽以外の部分が浅い感じはいなめないが、おそらく映画の舞台化も狙ってのミュージカルなのでしょう。マイク・マイヤーズのセリフが「ウエインズワールド」につながっていると見た後でわかり、ブライアン・シンガーらしい小ネタに嬉しくなった。とにかくメンバーの容姿がそっくりなのには驚いた。そんなにクイーンのファンではないけど音楽もほとんど知っていたし。時代を感じる映画でした。2018.11
 
ポルトの恋人たち ~時の記憶
監督:舩橋淳、出演:柄本佑、アナ・モレイラ、中野裕太/18世紀のポルトガル。大震災の後、復興事業のためにインドから連れてこられた日本人召使の宗次と四郎。宗次は屋敷で働く女中のマリアナと心を通わしていく。後半は21世紀の日本。東京オリンピック後の不況で工場が縮小され、日系ブラジル人の幸四郎はエリート会社員の加勢柊次によってクビ切りに遭う。
 震災とポルトガル、日本を時代を超えてつなげたところは面白かったのだが、少々長すぎて飽きてしまった。過去と未来をはっきり前後編でわけずに、混ぜてコンパクトに見せてほしかったなあ。過去の亡霊が今につながる話はとても興味深かったです。過去の部分の映像が素敵でした。2018.11

イット・フォローズ IT FOLLOWS
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル、出演:マイカ・モンロー、キーア・ギルクリスト、ダニエル・ゾヴァット/19歳のジェイは新しい彼氏ヒューとデートし、ことが終わるやヒューに薬を嗅がされ気絶してしまう。目を覚ましたジェイにヒューは「人殺しの霊に襲われる感染症を移した」と告げる。回避したければ、誰かとセックスして移す以外に方法はなく、もしその移した相手が殺されたらまた霊は自分に戻ってくるという。
 設定は面白いとおもったが襲われるシーンがあんまり怖くないし、後半は飽きた。ゲームみたいで深みを感じず。2018.8

カメラを止めるな!
監督:上田慎一郎、出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和/とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。それは37分ワンカットのゾンビ・サバイバルというテレビ局の無理難題を受け入れた監督によるあまりにも無謀な挑戦だった。
前半は、素人の手作り感満載のB級ゾンビ映画。あちこち突っ込みどころが満載。で、後半はそのつっこみどころの裏話を暴露していく、という業界内幕モノ。よく練られた脚本と演者のB級感がぴったりはまった、今までにありそうでなかった作品。あんまり期待していなかったけど、水戸がロケ地ということで、半ば義務感で見たのだが、十分楽しめた。後半の舞台裏を再度確認したくなるからもう一度みたくなる、という観客心理もよくつかんでいる。上田監督アッパレです!2018.8


悪女/AKUJO THE VILLAINESS
監督:チョン・ビョンギル、出演:キム・オクビン、シン・ハギュン/幼い頃に父を殺されたスクヒはマフィアの男ジュンサンに引き取られ、殺し屋として育てられる。やがて一流の殺し屋に成長した彼女は、ジュンサンと恋に落ち、結婚するが。可もなく不可もなく。シン・ハギュンを久しぶりに見たくて借りてみました。

エターナル A SINGLE RIDER
監督:イ・ジュヨン、出演:イ・ビョンホン、コン・ヒョジン、アン・ソヒ/証券会社の支店長カン・ジェフンは、英語教育のために息子と妻スジンをオーストラリアに留学させていた。しかしある日、会社が不良債権を抱えて破綻する。とっても悲しくて辛い映画でした。ビョンホンは相変わらず素敵でしたが、展開が単調で飽きてしまった。

キングスマン:ゴールデン・サークル KINGSMAN: THE GOLDEN CIRCLE
監督:マシュー・ヴォーン、出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、タロン・エガートン、 ペドロ・パスカル/ロンドンの高級テーラーの地下に本部を置く、どの国にも属さないスパイ機関“キングスマン”がある日、サイコパス女ポピー率いる世界的麻薬組織“ゴールデン・サークル”の攻撃によって壊滅してしまう。麻薬を憎悪する悪人に「ナルコス」のペドロが扮していたので、何気につながってる~とうれしくなった。普通に面白いスパイもの。

ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件 QUE DIOS NOS PERDONE
監督:ロドリゴ・ソロゴイェン、出演:アントニオ・デ・ラ・トレ、ロベルト・アラモ、ルイス・サエラ/連続老女殺人事件を追う二人の刑事の執念の捜査を描いたサスペンス。よくある話で可もなく不可もなく。

デヴィッド・リンチ:アートライフ DAVID LYNCH: THE ART LIFE
監督: ジョン・グエン/出演:デヴィッド・リンチ/デヴィッド・リンチの創作の秘密に迫るアート・ドキュメンタリー。作品が奇抜なわりに出生はシンプル。彼はアーチストなんだ、と再確認。

ふたりの5つの分かれ路 5X2
監督:フランソワ・オゾン、ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ出演/離婚手続きを終えたマリオンとジルの歴史を、節目ごとに遡っていく。この手法は良くあるとは思うけど、恋愛中の男女が見たら、現実を見せられて嫌だろうなあ。中年以上向けの映画。2018.8

ラスト・フェイス The last face
監督:ショーン・ペン、出演:ハビエル・バルデム、シャーリーズ・セロン/かなり評判悪かったが、そんなに酷評するほどでも…。ただ、恋人だったセロンをあまりにも美しく描き過ぎ。テレンス・マリック作品意識しすぎ。アフリカの紛争地帯の過酷さと、白人医師の恋愛模様のギャップが大きすぎて物語に入り込めず。2018.7

リベリアの白い血 OUT OF MY HAND
監督:福永壮志、撮影監督:村上涼、出演:ビショップ・ブレイ/内戦後のリベリア共和国。ゴム農園で働くシスコは仲間たちと過酷な労働環境を改善しようと立ち上がるが、ストは失敗。従兄弟のマーヴィンからニューヨークに誘われ、家族を残して単身渡米を決意する。日本人の撮影監督がマラリアで亡くなったという衝撃が大きすぎて、映画に入り込めず。リベリアのシーンはリアルで見応えあり。NYのほうは見飽きた感あり。ゴム農園の農夫がNYにいきなり出てきてタクシー運転手できるのか疑問。最初は皿洗いか掃除人かデリバリーでは??その辺のリアリティが感じられず。2018.12

ローマ法王になる日まで CHIAMATEMI FRANCESCO - IL PAPA DELLA GENTE
監督:ダニエーレ・ルケッティ、出演:ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、セルヒオ・エルナンデス、メルセデス・モラーン/2013年3月13日、第266代ローマ法王に就任したフランシスコ。アルゼンチン生まれで、法王史上初めてのアメリカ大陸出身者だ。20歳のとき、家族や友人、恋人と別れ、神に仕えることを決意し、イエズス会に入会すると35歳の若さで管区長に任命される。折しも国内は軍事独裁政権の圧制下にあった。軍政時代の描き方がリアルでした。抗議運動をしただけの母親が眠らされたあげく空から落とされるシーンがつらくて印象に残っています。軍政の恐ろしさを忘れてはいけないと痛感。12..6

バスターのバラード THE BALLAD OF BUSTER SCRUGGS
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン、出演:ティム・ブレイク・ネルソン、ジェームズ・フランコ/西部劇オムニバスという一風変わった映画。殺されっぷりがそれぞれユニークでした。けど、飽きた。2018.12


あゝ、荒野
監督:岸善幸、出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン、でんでん、木村多江、ユースケ・サンタマリア、木下あかり、モロ師岡、高橋和也/2020年の東京オリンピック後。刑務所を出所したばかりの新次は、仲間を裏切った因縁の相手・裕二がボクサーになったと知り、自分もボクサーになって倒そうと、場末のボクシングジムへ。一方、吃音の散髪屋は父親からうける暴力に抗うためボクサーを目指す。
男だらけのバディームービー。菅田将暉、ヤン・イクチュンという日韓の演技派俳優の演技の上手さにつきる。シンプルなスポコン青春映画なのだが、二人に漂う影がいい。ちょっと長すぎる印象もあったが、寺山に敬意を払ってのことでしょうか。エンディングはショッキングだったがバリカンの新次への愛が成就された、と理解しました。やっぱり実写が好きなのは、こういう演技の上手さが楽しめるからなのだと再確認した。2018.7

暗殺のオペラ STRATEGIA DEL RAGNO
監督:ベルナルド・ベルトルッチ、原作:ホルヘ・ルイス・ボルヘス、出演:ジュリオ・ブロージ、アリダ・ヴァリ/ボルヘスの迷宮の世界(原作は『裏切り者と英雄のテーマ』)をベルトルッチがイタリア戦後史の知的総括として映画化した作品。
 一人の青年が父が暮らした田舎町にやってくる。反ファシズムの英雄だった父はなぜ、殺害されたのか…。みんなが声を潜め、誰もが密告者になりうるファシズム社会を、ベルトリッチ独特の世界感で描いている。珍しくエロスを感じさせない作品だったが、いつも誰かに監視されているような閉そく感がじわじわと伝わってきて見応えがあった。2018.7

エル ELLE
監督:ポール・ヴァーホーヴェン、出演:イザベル・ユペール、ロラン・ラフィット/ゲーム会社の敏腕女社長ミシェルは、ある日自宅で覆面をした男に襲われる。ミシェルは何事もなかったようにふるまうが、まもなくストーカーからメールが届く。
ユペールの身体をはった演技には恐れ入ったが、正直好きな映画ではない。レイプする側とされる側、どちらも屈折している似た者同士だった、ということだろうか…。2018.7

君の名前で僕を呼んで CALL ME BY YOUR NAME
監督:ルカ・グァダニーノ、出演:アーミー・ハマー、ティモシー・シャラメ、マイケル・スタールバーグ/1983年夏。北イタリアで夏休みを過ごす17歳のエリオは、美術大学の教授の父のインターンとしてやってきた24歳のアメリカ人大学院生オリヴァーと出会う。エリオはオリヴァーのことが気になりながらも、同年代の女子たちと遊び回っていたが…。高校生の恋の疼きが画面から伝わってきて、十代の頃を思い出してしまった。
シンプルなゲイムービーで、「ブロークバック・マウンテン」を彷彿とさせるのだが、彼の父の告白や、オリヴァーが敬虔なユダヤ教徒であることなど、まだまだ同性愛をオープンにできない80年代という時代性を感じさせた。同世代なので共感できる部分も多いが、一方で、彼のような優雅でオープンな夏休みを送れる環境が普通の日本人にはないので、別世界のうやらましい物語でもあった。2018.7

ゲット・アウト Get out
監督:ジョーダン・ピール、出演:ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、ブラッドリー・ウィットフォード、キャサリン・キーナー/黒人のカメラマン、クリス・ワシントンは、白人の恋人ローズ・アーミテージから実家に招待される。アーミテージ家はクリスを温かく迎えるが、使用人として働く黒人の姿に胸騒ぎを覚える。
物語展開は読めたのだが、それでもハラハラさせられた。米国の人種差別主義者の本性はこんなものなのかもね。恐ろしや~。2018.7

サラエヴォの銃声 SMRT U SARAJEVU
監督:ダニス・タノヴィッチ、出演:ジャック・ウェベール、スネジャナ・ヴィドヴィッチ/サラエヴォにある“ホテル・ヨーロッパ”では、事件から100年の記念式典を迎える準備に追われていた。そんな中、屋上ではジャーナリストが事件とその後の歴史についてインタビュー取材を行い、式典に参加する要人の一人は、部屋に籠って演説の練習を繰り返す。いっぽう従業員たちはストライキを画策し、支配人はその阻止に動き出すのだったが…。少々難しい展開でインタビューの内容が理解できず。ボスニア独立賛成派と反対派が混在している街ならではの緊張感や、労働者と経営者の確執など、いろんな要素が詰まっていた。ゴリゴリの社会派映画でした。2018.7

ラスト・フェイス The last face
監督:ショーン・ペン、出演:ハビエル・バルデム、シャーリーズ・セロン/かなり評判悪かったが、そんなに酷評するほどでも…。ただ、恋人だったセロンをあまりにも美しく描き過ぎ。テレンス・マリック作品意識しすぎ。アフリカの紛争地帯の過酷さと、白人医師の恋愛模様のギャップが大きすぎて物語に入り込めず。2018.7

あと1センチの恋 LOVE, ROSIE
監督:リスティアン・ディッター 、出演:リリー・コリンズ、サム・クラフリン☆ 英国の田舎町に暮らすロージーとアレックスは幼なじみの大親友。2人は米国ボストンの大学に一緒に進学する夢を持っていたが、ロージーは遊び人の男と一回きりのセックスで妊娠し進学を諦める。とっても軽い男女二人のすれ違い感はギャグに近いんだけど、かわいいから許しちゃいました。現実はああならないんだけどね。個人的には、じいちゃんばあちゃんになってからのハッピーエンドがよかったかな。2018.1

犬ヶ島 ISLE OF DOGS
監督:ウェス・アンダーソン、声の出演:エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、野村訓市、スカーレット・ヨハンソン/2038年の日本。ドッグ病が蔓延したメガ崎市では、小林市長が人間への感染を防ぐために、すべての犬を“犬ヶ島”に追放すると宣言する。隔離された犬たちは野犬化。そんなある日、小林市長の養子アタリが、愛犬スポッツを探しにやってくる。 動物の殺処分や、政治家の腐敗、感染症の蔓延、といった今起こっている社会問題に対して、黒沢映画「七人の侍」をモチーフに、犬たちが立ち向かう社会派アニメ。ウェス・アンダーソン監督作は、いつも変ちくりんだけどコミカル、というイメージだったが、このアニメはコミカルさ6はさほど感じず。映像が奇天烈だったけど。オノ・ヨーコまで声で出演していたのには驚きでした。2018.6

美しい星
吉田大八監督、出演:リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子ほか/テレビでお天気キャスターを務める大杉重一郎はある日、不思議な光に包まれたのをきっかけに自分が火星人だと自覚する。また二人の子供は水星人、金星人と思い込み…。似たような映画を見てしまったせいか、新鮮味なし。

オレの獲物はビンラディン ARMY OF ONE
監督:ラリー・チャールズ、出演: ニコラス・ケイジ、ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ/腎臓の透析をしながら、日々米国愛を叫び続ける男ゲイリーは、オサマ・ビンラディンを捕まえるために、あの手この手でパキスタンに向かおうとする。いっちゃってる男をニコラスが狂演。笑えます。このおっさん、本物が最後にでてきて、風貌もそっくりでした。今は何してるのかな。もちろんトランプ支持者でしょうが。

残像 POWIDOKI AFTERIMAGE
アンジェイ・ワイダ監督、出演: ボグスワフ・リンダ/著名な前衛画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、第二次大戦後のポーランドで、ソ連の全体主義を否定したことで、様々な迫害を受ける。表現の自由を奪われ、生きるすべも失ってしまう芸術家の生き様は痛々しいが、それでも彼の不器用さに尊さも感じた。ポーランドは今、また、政治が全体主義的な方向に向かっているという報道もある。自由を奪い偏った思想に扇動していくような政治家に、世の中はどうしてついていってしまうのか。そこには長いもの、強いものには、まかれていたほうが安全、という保身が働くのだろう。ヒトは弱いものだから…。

しあわせな人生の選択 TRUMAN
監督:セスク・ガイ、出演:リカルド・ダリン、ハビエル・カマラ、ドロレス・フォンシ/舞台俳優のフリアンは妻と離婚し愛犬のトルーマンと暮らしている。余命宣告された彼は、カナダから訪ねてきた親友トマスと、トルーマンの里親探しをし始める。寂しそうなトルーマンの表情にキュンキュンしてしまった。親友との別れにどう向き合えばいいのか、戸惑っているトマスに感情移入。地味な話ではあるが、名優二人の名演技あってこその上質の人間ドラマ。2018.6

静かなる復讐 TARDE PARA LA IRA
監督:ラウール・アレバロ、出演:アントニオ・デ・ラ・トレ、ルイス・カイェホ、ルト・ディアス、ラウール・ヒメネス/宝石店の強盗の一味として捕らえられていた男が出所してきた。一方、妻は、懇意になった寡黙な男に引かれでいく。ストーリー展開が途中で読めてしまった。普通のサスペンス。

灼熱 THE HIGH SUN
監督:ダリボル・マタニッチ、出演:ティハナ・ラゾヴィッチ、 ゴーラン・マルコヴィッチ/クロアチア人とセルビア人の民族紛争がもたらした悲劇の中で、紛争前夜の1991年、
紛争終結後の2001年、現代の2011年という3つの時代に生きる、ともに民族の異なる
3組の男女の愛を見つめたドラマ。2011年、マリヤとルカ――紛争の面影も消え
たザグレブに暮らす大学生のルカはセルビア人の恋人マリヤが今も暮らす隣村へ向かう…。30年は長いようで短い。戦争は数年で終わっても、その後には、個々人に遺恨が残る。30年でも憎しみや悲しみは消えることはない。普段は意識しなくても、心の根っこの部分には残ってしまう。戦争はそういうものだ。ゲームではない。

セールスマン THE SALESMAN
監督:アスガー・ファルハディ、出演:シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥス
ティ、ババク・カリミ/劇団員のエマッドとラナ。舞台“セールスマンの死”の稽古で忙しいさなかに、自宅アパートに危険がおよび立ち退きを余儀なくされる。あわてて前に住んでいた女の荷物が残る部屋に引っ越すが、間もなくラナが部屋で何者かに暴行させる。見ごたえのある心理サスペンス。犯人探しの過程も、探し出した後も、人間のいやな部分を見せ付けられた感じ。

20センチュリー・ウーマン 20TH CENTURY WOMEN
監督:マイク・ミルズ、出演:アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグ/1979年のサンタバーバラ。シングルマザーのドロシアは、15歳の少年ジェイミーの教育係に、下宿人のアビーと早熟な高校生ジュリーを選ぶ。世代的にジェイミーと同じなので、時代背景に共感をもてた。2018.5

バーバリアンズ セルビアの若きまなざし VARVARI
監督:イヴァン・イキッチ、出演:ジェリコ・マルコヴィッチ、ネナド・ペトロヴィッチ、ヤスナ・ジュリチッチ/コソボ独立に揺れる2008年のセルビアを舞台に、サッカーの試合だけが楽しみの少年たちの日常を切り取ったドキュメンタリー風作品。ケン・ローチの「明日へのチケット」と「トレスポ」を足して2で割ったようなテイスト。唯一違うのが彼らの背景。セルビアのブルーカラーの若者たちが、コソボ独立に反対しているという事実すら知らないので、勉強になりました。2018.6

淵に立つ
監督: 深田晃司、出演:浅野忠信、筒井真理子、太賀、古舘寛治/金属加工工場を営む鈴岡利雄の元に刑期を終えて出所した八坂が訪れる。利雄は、妻に断りもせず、住み込みで雇うことを決めてしまう。物語はありがちではあるのだが、八坂の登場で家族が壊れていく過程の描き方がうまい。役者もそれぞれ名演技で感情移入できる。好きなタイプの作品ではないのだが、評価もうなづける秀作。

ベイビー・ドライバー BABY DRIVER
監督:エドガー・ライト、出演:アンセル・エルゴート、ケヴィン・スペイシー/天才的なドライビング・テクニックを買われ、ギャングのボス、ドクの下で“逃がし屋”として働く青年ベイビー。子どもの頃のトラウマで耳鳴りに悩まされ、iPodが手放せないベイビーは、ウェイトレスのデボラと出会い恋に落ちる。いたって普通のエンタメ作品。

インターンシップ THE INTERNSHIP
監督:ショーン・レヴィ、脚本・出演:ヴィンス・ヴォーン、オーウェン・ウィルソン 、(ウィル・フェレルがカメオ出演)/時計のセールスマン・コンビ、ビリーとニックは仕事を失い、“Google”のインターンシップ募集に応募。若いITオタクたちに囲まれ、IT音痴の二人は悪戦苦闘する。グーグルの会社の中が遊園地みたいでうらやましくもあったが、若者たちとのギャップを感じる中年二人には大いに共感できました。スマホ中毒の日本の若者にもぜひ見て欲しい1本。

海よりもまだ深く(2016)
監督:是枝裕和、出演:阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮、樹木希林/作家で興信所で働く篠田良多は15年前に新人賞を受賞したものの、その後は鳴かず飛ばず。妻の響子には愛想を尽かされ、一人息子の真悟を連れて家を出て行かれてしまった…。面白くみれました。テレビドラマっぽかったですけどね。2018.3

エイリアン バスターズ THE WATCH
監督:アキヴァ・シェイファー、出演:ベン・スティラー、ヴィンス・ヴォーン、ジョナ・ヒル/コストコ店長エヴァンは、ある日、職場の警備員が何者かに惨殺されたことから、町の安全を守るため悪友三人とともに自警団を結成。そんな彼らの目の前に現れたのは地球外生命体=エイリアンだった!コッテコテのB級コメディ。ヴィンスはあくまで脇役でいい味だしてたけど、スティラー主演コメディが、実はあんまり好きじゃないってことが確信に変わった。2018.3

グランド・セントラル
監督:レベッカ・ズロトヴスキ、出演:タハール・ラヒム、レア・セドゥ/フランスの原発で作業員として働く男女の恋愛と彼らが抱える不安を描いた作品。フランスのトップ俳優が出ているのに、日本ではDVDスルーっていうのがなあ、これも東京電力への忖度なんでしょうけど。こういう映画こそ、東京電力が資金提供して上映してほしい。現実を隠さずオープンに!!


ピンク・スバル
監督:小川和也、出演:アクラム・テラーウィ、小市慢太郎/パレスチナの西岸地区との境界線沿いに位置するイスラエルの街タイベを舞台に、妹の結婚式を目前に買ったばかりのスバル・レガシィを盗まれた主人公が、愛車を取り戻すべく奔走する。テーマと舞台に惹かれて見てみた。日本人がナイーブな中東問題に目をむけたことは評価します。


アルゲリッチ 私こそ、音楽! BLOODY DAUGHTER
監督: ステファニー・アルゲリッチ、出演:マルタ・アルゲリッチ/世界的天才ピアニストであり父親の違う3人の娘の母でもある女性マルタ・アルゲリッチの波瀾万丈にして自由奔放な半生を、三女のステファニーが長編初監督で描いた音楽ドキュメンタリー。ピアニストであり恋多き女だった母を密着したファミリー映画。若くして生んだ中国系の長女の存在には驚いたが、しっかり仲良くやっているようでよかったですね、という感じ。2018.4

永遠と一日 ETERNITY OF A DAY
監督:テオ・アンゲロプロス、出演:ブルーノ・ガンツ/北ギリシアの港町テサロニキ。不治の病を自覚している老作家アレクサンドレは、難民の少年と出会った…。初めてのアンゲロプロス作品だったので、感動したのを覚えているが、DVDのせいか前ほど感動も印象に残るシーンもなく…。映画館で見直したい。

こうのとり、たちずさんで THE SUSPENDED STEP OF THE STORK 
監督:テオ・アンゲロプロス、出演:マルチェロ・マストロヤンニ、ジャンヌ・モロー、グレゴリー・カー/国境の難民に密着した番組をつくりに来たアレクサンドロスは、難民の中に失踪して死んだと思われていた大物政治家らしい男を発見する…。2大スターの抑えた演技、存在感を見事に引き出しながら、アンゲロプロスの真骨頂ともいえる絵画的な風景美も要所で光っていて、スクリーンで見直したくなった。お気に入りの1本です。2018.4

シテール島への船出 VOYAGE TO CYTHEREA
監督:テオ・アンゲロプロス、出演:ジュリオ・ブロージ、ヨルゴス・ネゾス/映画監督アレクサンドロスは「シテール島への船出」という映画の主役選びをしている。一方で、家族を捨てロシアに亡命していた父親が帰ってくる…。とくに印象に残った場面も少なく、劇中劇と現在の境が曖昧で難しく感じた。父はなぜロシアに亡命したのか時代背景がよくわからず…。監督の「社会主義に理想を求めた時代の終焉」というコメントを聞いてなるほど~と思いました。2018.4

シェイプ・オブ・ウォーター THE SHAPE OF WATER
監督:ギレルモ・デル・トロ、出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、オクタヴィア・スペンサー/1962年、アメリカ。口の利けない孤独な女性イライザは、政府の極秘研究所で掃除婦として働いていた。ある日彼女は、研究所の水槽に閉じ込められていた不思議な生きものと出会う。アマゾンの奥地で原住民に神と崇められていたという“彼”に心奪われ、人目を忍んで“彼”のもとへと通うようになる。水の怪物と孤独な女性のピュアな恋を描いているのだが「美女と野獣」というよりは「ET」と「カイロの紫のバラ」をミックスさせたような映画。ギレルモ監督らしく怪物の動きに拘りを感じた。とくにウルウルした目の動きがすばらしくて引き込まれた。個人的には悪役道まっしぐらのマイケル・シャノンが期待どおりの演技を見せてくれてうれしかったです。アカデミー賞とベネチア賞ダブル受賞なのは少々出来過ぎな気もするが万人受けする作品ということでしょう。時代設定を米ソ冷戦下にしたのも批評家には受けたのかも? 2018.4

スコルピオ SCORPIO
監督:マイケル・ウィナー、出演:バート・ランカスター、アラン・ドロン/スパイと2重スパイの追いつ追われつサスペンス。二大俳優が演じていたので見てみたが、さほど面白くもなく。

ヒア アフター HEREAFTER
監督:クリント・イーストウッド、出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス/ジャーナリスト、マリーは、東南アジアでのバカンスで津波に襲われ、九死に一生を得る。一方、霊能者のジョージは自分の能力を使うことを拒み続けていた…。可もなく不可もなく…。2018.3

ブランカとギター弾き BLANKA
監督:長谷井宏紀、出演:サイデル・ガブテロ、ピーター・ミラリ/マニラの路上で窃盗や物乞いをしながら暮らしている孤児の少女ブランカは、盲目のギター弾き、ピーターと出会う。物語はステレオタイプではあるのだが、少女役の子の演技と歌が素晴らしかった。盲目のピーターは、映画撮影後に亡くなったということ。合掌。

夜空はいつでも最高密度の青色だ 
監督:石井裕也、出演:石橋静河、池松壮亮、三浦貴大、松田龍平、田中哲司/看護師の美香は親への仕送りのために夜はガールズバーで働いている。一方、慎二は建設現場で日雇いとして働く日々。二人は何度となく、渋谷の雑踏で偶然出会う。
 冷めた目線で世の中を見ている美香の独白が面白くて苦笑い。不器用な若い男女が出会い、少しずつお互いに心を開いていくまでが丁寧に描かれていて好感がもてた。なにより、二人の役者がとっても魅力的でした!石橋静河と松田龍平の共演もうれしかった。優作も喜んでいるはず、きっと。

ラストベガス LAST VEGAS
監督:ジョン・タートルトーブ、出演:マイケル・ダグラス、ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、ケヴィン・クライン、メアリー・スティーンバージェン/ビリー、パディ、アーチー、サムは悪ガキ時代からの大親友4人組。老人となったある日、ビリーが若い恋人と結婚を決意。超豪華キャストの軽ーいコメディ。楽しかったです。2018.4


キングスマン KINGSMAN: THE SECRET SERVICE
監督:マシュー・ヴォーン、出演:コリン・ファース、マイケル・ケイン、タロン・
エガートン、サミュエル・L・ジャクソン/高級テーラー“キングスマン”で仕立て
職人として働く英国紳士のハリー。その正体は国際的スパイ組織“キングスマン”のエース・エージェント。ハリーは、17年前に殺されたスパイ仲間の息子エグジーをスカウトする。小気味よくておしゃれなアクション映画ではあったが、ここまでヒットした理由はわからず。個人的には、もっと笑いや皮肉が欲しかったです。2018.3

殺し屋たちの挽歌 THE HIT
スティーブン・フリアーズ監督、音楽:パコ・デ・ルシア、エリック・クラプトン、出演:ジョン・ハート、ティム・ロス、ラウラ・デル・ソル、テレンス・スタンプ/強盗仲間を裏切り、スペインで隠れ住む男の元へ二人の殺し屋が現れた。二人の目的は、組織のボスが待つパリへ男を連れていくこと。逃亡中に巻き込まれ人質となった女が加わり、奇妙な4人組の旅が始まった……。今となっては超豪華なスタッフ&キャスト。時代を感じさせるスタイリッシュな映像にしびれました。2018.3

ダンケルク DUNKIRK
監督:クリストファー・ノーラン、出演:フィオン・ホワイトヘッド、トム・グリン=カーニー、ジャック・ロウデン、ジェームズ・ダーシー、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィ、マーク・ライランス/第二次世界大戦のフランス北端ダンケルクはドイツ軍の猛攻にあい、多くの兵士が海から脱出を試みる。だが、空爆や魚雷で避難船は次々に沈没。イギリスからはヨットや漁船など民間船が救出に参加。民間船の船長ドーソンも息子とともにダンケルクへ向け船を走らせる。最新鋭戦闘機のパイロット、ファリアーも危険を承知の上で援護のために飛び立つ。海と空と陸を舞台に、逃げては撃たれ、逃げては撃たれが繰り返されるだけの映画なんだが、飽きずに見入ってしまった。ノーラン監督の力技。とくに主役もいない群像劇と悲惨な撤退現場。敵と戦うのではなく逃げる、ということに焦点を当てた点に新しさを感じた。2018.3

パレード
監督:行定勲、出演:藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、林遣都、小出恵介/都内のマンションをルームシェアする4人の男女。映画会社に勤める直輝、イラストレーターで雑貨屋店員の未来、大学3年生の良介、そして琴美は若手人気俳優と熱愛中。近所で通り魔殺人事件が起こり、もう一人金髪の青年が現れる。原作も読んでいて好みではなかったので、映画もそれなり…でした。2018.3

ネオン・デーモン THE NEON DEMON
監督: ニコラス・ウィンディング・レフン、出演:エル・ファニング、キアヌ・リーヴス 、クリスティナ・ヘンドリックス/16歳の田舎娘ジェシーは、トップモデルになる夢を叶えるためLAへ。美貌が人々の目に止まるがモデル仲間に不穏な空気が流れる。レフン監督らしい怪しい雰囲気全快のサスペンス。アートとホラーの間をいったりきたりする感じがちょっと苦手かも。

南の島のリゾート式恋愛セラピー COUPLES RETREAT
監督:ピーター・ビリングスリー、出演:ヴィンス・ヴォーン、ジェイソン・ベイトマン、ジャン・レノ/妻と離婚の危機を迎えたジェイソン。彼らは関係改善のためにと南国リゾートで行われるカップル・セラピーの参加を計画。さらに、一人あたりの予算を軽減しようとデイヴら3組のカップルを巻き込み、8人で現地へ向かうことに。優雅な休暇を満喫できると信じていたデイヴたち。しかし、そのツアーはカップル・セラピーへの強制参加が主体だった。かるーいコメディ。可もなく不可もなく。

H story
監督:諏訪敦彦、出演:町田康、ベアトリス・ダル/ベアトリス・ダルを主演に迎え「二十四時間の情事」のリメイクとしてスタートした「H story」。だがダルは、40年前の古いテキスト通りに演技することに違和感を覚える。メイキングのような作りなんだが、徐々に主演女優と日本人作家の一晩の交流につながっていくのが面白い。見づらい構成ではあるのだが、後半は引き込まれた。本家の「二十四時間の情事」もドキュメンタリー風だったし、結果的に現代版としてしっかり収まっていた。2018.4

ユキとニナ
監督:諏訪敦彦、イポリット・ジラルド、出演:ノエ・サンピ、アリエル・ムーテル/フランス人のパパと日本人のママを両親に持つユキは、パリに暮らす9歳の女の子。同い年のニナとは大の仲良しだが、離婚を決意したママは、ユキを連れて日本に帰るつもりだと話す。2人は、ユキの両親を仲直りさせようとある作戦を実行。さらに家出を決意して郊外の森へと向かう。両親の不仲、という同じ悩みを抱えた少女二人がかわいかったです。2018.4

奇跡のシンフォニー AUGUST RUSH
監督:カーステン・シェリダン、出演:フレディ・ハイモア、ケリー・ラッセル、 ジョナサン・リス=マイヤーズ、テレンス・ハワード、ロビン・ウィリアムズ/養護施設で育った11歳の少年エヴァン。生まれつき類い希な音感を持つ彼は、会ったことのない両親との再会を信じ、音に導かれるように街へ飛び出す。一方、実の親で著名なチェリストのライラは子どもは死んだと聞かされ、父でギタリストのルイスは子ども存在すら知らなかった。音楽がつなぐ奇跡の物語はいいもんですね。ディズニーアニメ化とかできそうなピュアなお話。よかたです!2018.1

希望のかなた TOIVON TUOLLA PUOLEN
監督:アキ・カウリスマキ
出演:シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン/シリアを逃れ、フィンランドの首都ヘルシンキに流れ着いた青年カーリドは妹ミリアムを探すため収容施設を脱走。一方、洋品店をたたみ妻とも別居したヴィクストロムは、場末のレストランを買い取る。いつものカウリスマキのユルユルの世界に、深刻な難民問題をストレートにぶち込んでいて、ある意味新鮮だった。難民申請却下されたり、町のチンピラから襲撃されたり、カーリドの過酷な毎日とは裏腹に、客のこないレストランでたるそうに働く面々の抜け間がたまらなくおかしい。そんなダメダメ軍団が、カーリドのために一肌脱いじゃう後半が小児気味よくて心がほっこりしました。&いきなり登場した不細工に巨大化しか食卓の上のサボテンが最後まで気になってしまった。2018.1

グランド・ジョー JOE
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン 、出演:ニコラス・ケイジ、タイ・シェリダン/山で木に毒を注入して切り倒す仕事に従事する刑務所帰りの男は、父親から虐待されいてる少年とであう。くらーーい映画で見ていてつらくなりました。2018.1

午後8時の訪問者 THE UNKNOWN GIRL
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督、出演:アデル・エネル 、 オリヴィエ・ボノー、 ジェレミー・レニエ/医者のジェニーは、診察時間後に鳴らされたベルを無視。翌日、警察から監視カメラに写った少女の遺体が発見されたと知らされる。罪悪感から彼女の身元を調べ始めるが。一つのことに固執する人間を徹底して追いかける内容はダルデンヌ監督作品らしいのだが、今回はそのしつこさがノーマルだったせいか、個性が感じられず。

ゴールデン・ボールズ HUEVOS DE ORO
監督:ビガス・ルナ、出演:ハビエル・バルデム、エリザ・トゥアティ、マリア・デ・メディロス、マリベル・ベルドゥ、ベニチオ・デル・トロ/野心家のベニトは、不動産業をはじめ、恋人クラウディアがいながら銀行員の娘と結婚。多くの女と金に愛され、成金道を突っ走っていたが、車の事故を起こしたことで人生が狂い始める。見事にスターになった俳優たちの若かりし頃の作品。エロいシーンも満載だがスポーツみたいでいやらしくないのがなんともラテンらしい。バルデムはジゴロ役がぴったりでした。

ザ・イースト THE EAST
監督:ザル・バトマングリッジ、製作:リドリー・スコット、出演:ブリット・マーリング、アレキサンダー・スカルスガルド、エレン・ペイジ/元FBIエージェントのジェーンはセキュリティ会社に雇われ環境運動団体“イースト”へ潜入する。彼らの目的は大企業の不正を正すことと知ったジェーンはリーダー、ベンジーの思想に共感。イーストはある製薬会社の重役が集まるパーティーで、彼らが製造した薬で副作用に苦しむ人々が大勢いることを知ってもらうため、その薬を飲み物に注入する。
こういった方法も犯罪ではあるけど、こうでもしなきゃ不正が明るみにでないのであればやむなし、という気にさせられた。実話に基づくらしい。こういう骨太の映画、もっと日の目をみてもいいと思った。スコット兄弟はエンタメ作品とりながらも、社会派ものを製作しているのがすばらしい。2018.1

ジョン・ウィック JOHN WICK
監督:チャド・スタエルスキ、出演:キアヌ・リーヴス、 ジョン・レグイザモ、ウィレム・デフォー/妻ヘレンを亡くし小犬デイジーと暮らすジョンは、町のチンピラに愛犬を殺され愛車マスタングを奪われる。犯人への復讐に立ち上がるが…。役者陣が豪華なので見てみたが…人気があるのがよくわかりません。2018.1

人生タクシー TAXI
監督・出演:ジャファル・パナヒ/2010年にイラン政府から20年間の映画監督禁止令を受けた映画作家パナヒ監督が自らタクシー運転手に扮し、客たちとのやり取りをカメラに収めたドキュメンタリー風異色作。らしい映画で想像通り。最後にカメラを壊されるシーンに監督の反骨精神がこめられている、と感じた。

ソロモンの偽証
成島出監督、出演:藤野涼子、板垣瑞生、 佐々木蔵之介 、夏川結衣、 尾野真千子/クリスマスの朝、雪が降り積もった城東第三中学校の校庭で2年A組の生徒・柏木卓也の死体が発見される。飛び降り自殺と判断されるが、いじめグループによる殺人だったと訴える匿名の告発状が届く。よくできた青春サスペンスだと思ったが、ながーい映画にする必要性を感じず。とくに後編が長すぎ。2018.1

東の狼
監督: カルロス・M・キンテラ、出演:藤竜也、大西信満、小堀正博/キューバ出身のカルロス・M・キンテラ監督が、絶滅したニホンオオカミが最後に見かけられた場所として知られる東吉野村を舞台に、ニホンオオカミに取り付かれた猟師アキラを追った異色作。藤竜也の存在感がものすごくて、圧倒されっぱなし。暴走するベテラン猟師と、彼に引退を迫る若い猟師とのぴりぴりした関係は、日本の会社でもよく見られる光景で、身につまされた。
 黒木監督がキューバでとった「キューバの恋人」の主人公アキラのその後、という形式で撮られていて、アキラが愛したキューバ人女性の姿もインサートされている。アキラがイベントで聞かされるキューバの歌「Lo Material」は、どうやらアキラにとってつらい過去の思い出らしいのだが、その辺は分かりづらくてちょっと残念。俳優さんたちも監督の意図を理解するのが大変だったようだが、キューバ社会の現実を奈良に投影した作品、と考えるとすごく奥が深い作品なのだろう。社会主義国の表現の自由のなさ、なども感じながら見てみると面白いです。

密偵
監督:キム・ジウン、出演:ソン ・ガンホ、コン・ユ、ハン・ジミン、鶴見辰吾、オ
ム・テグ、シン・ソンロク、イ・ビョンホン/1920年代の日本統治時代。日本警察で働く朝鮮人イ・ジョンチュルは、武装独立運動団体の義烈団を監視しろとの特命を受け、義烈団のリーダーで写真館の主キム・ウジンに接近する。キャストが豪華なので久々に韓国映画を劇場で鑑賞。面白かったけどあんまりあとに残らず。

ライオンは今夜死ぬ LE LION EST MORT CE SOIR
監督:諏訪敦彦、出演:ジャン=ピエール・レオ 、ポーリーヌ・エチエンヌ/南仏コート・ダジュール。死と向き合う演技に難儀するベテラン俳優のジャンはかつての恋人ジュリエットが住んでいた古い館を訪れ、彼女の亡霊と出会う。即興演出の諏訪監督の作品、はじめてみてみたが、子ども達の演技が自然で、レオもすっかりおじいさんで、微笑ましい映画でした。上映後の三浦友和と監督とのトークも楽しめました。

ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択 CERTAIN WOMEN
監督: ケリー・ライヒャルト、出演:ローラ・ダーン、クリステン・スチュワート、ミシェル・ウィリアムズ、ジェームズ・レグロス/弁護士の女は、妻の死から立ち直れない男を担当し、立てこもり事件に巻き込まれる。一方、家族と寒村で暮らし始めた女性は夫との関係がギクシャクし…。立場の違う女たちの姿を追ったオムニバス。重い雰囲気が全体的に漂っていて見づらい映画でした。演技派女優たちの競演ということで見てみたが…。難しい。


2017年
時はどこへ? Where Has Time Gone?
監督:ウォルター・サレス、アレクセイ・フェドルチェンコ、マドゥル・バンダールカル、ジャーミル・X・T・クベカ、ジャ・ジャンクー/ジャ・ジャンクーがプロデューサーを務め、BRICS5か国の監督たちが「時間」をテーマに競作したオムニバス。ブラジルで起こったダムの決壊事故で父が行方不明になった少年は、現実を受け入れられずの父親を探し続ける。インドでは、裕福だが孤独な老人が町で出会った少年に携帯電話の使い方を教えてもらい意気投合。各々の国の事情を背景にした人間ドラマに仕上がっていたが、どれも薄味で印象に残らず。2017.11 フィルメックスにて

君の名は。
監督:新海誠、声の出演:神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ/彗星の接近を1ヵ月後に控えた日本。田舎町の女子高生・三葉は東京の男子高校生と入れ替わってしまう。戸惑いつつも、メモを残してやりとりしながら、少しずつ事実を受け止めていく瀧と三葉。高校生の入れ替わり話は、なつかしの青春映画の焼き直しではあるのだが、東京と田舎、男と女、そして微妙な時間のずれの行ったりきたり感が絶妙で思わず引き込まれた。音楽もうまい。かなり斜に構えてみていたのだが、けっこう感動してしまった。空前の大ヒットも納得。2017.11

タンジェリン TANGERINE
監督:ショーン・ベイカー、出演:キタナ・キキ・ロドリゲス、マイア・テイラー/クリスマス・イブ。出所したばかりのトランスジェンダーの娼婦シンディは親友のアレクサンドラとおしゃべりに夢中。シンディは彼氏が白人女と浮気していたと知り、女のもとへ乗り込む。アルメニアからの移民のしょーもない連中なんだけど、嫌いになれない端っこ感。全編アイフォンで撮影したというのも画期的。それぞれがしょーもないクリスマスをすごすはめになるんだけど、悲壮感も絶望感もなくちょっとだけ元気をもらえました。2017.12

超高速!参勤交代
監督:本木克英、出演:佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志、寺脇康文、西村雅彦 /湯長谷藩の藩主・内藤政醇らは1年の江戸詰めを終えて帰郷。そこに舞い込んだ再度の“参勤交代”の下命。金も人手もない小藩へのいじめともいえる命令に対し、5日で江戸に参勤すべく、一大作戦を決行するのだったが…。江戸が舞台のこてこてコメディ。単純で楽しかったけど、そんなに評価されるほどの映画かな、率直な感想。2018.1

T2 トレインスポッティング T2 TRAINSPOTTING
監督:ダニー・ボイル、出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー、ロバート・カーライル/スコットランド、エディンバラ。仲間を裏切り、大金を持ち逃げしたマーク・レントンはオランダから20年ぶりに帰郷した。ジャンキーのスパッドは相変わらずのクズっぷり。シック・ボーイは場末のパブを経営。そして狂人ベグビーは脱獄を決行する。しょーもない若者の20年後もそこそこ、しょーもないんだけど、唯一スパッドだけがいろんな才能に目覚めていく過程が面白かったです。2017.11

ふきげんな過去
監督:前田司郎、出演:小泉今日子、二階堂ふみ、高良健吾、板尾創路/北品川で小さな食堂を営む家族と暮らす女子高生・果子のもとに18年前に死んだはずの伯母・未来子が現れた。未来子は果子が赤ん坊の頃に爆弾事件を起こし、死んだことになっていたのだ。思いがけない同居人の出現に、果子の不機嫌はマックスに。ふみちゃんのふくれっつらが、かわいかった。もっとはちゃめちゃな映画なのかな、と思ってたけど割りと普通。2018.1

夜に生きる LIVE BY NIGHT
監督・出演:ベン・アフレック、エル・ファニング、ブレンダン・グリーソン、シエナ・ミラー、ゾーイ・サルダナ、クリス・クーパー/禁酒法時代のボストン。警察幹部の三男ジョーはアイルランド系マフィアが仕切る賭博場を襲撃。そこでボス、ホワイトの愛人エマと出会い恋に落ちる。やがてホワイトと敵対するイタリアン・マフィアの傘下に入り、ホワイトが牛耳るフロリダ州タンパへ向かう。出演者が豪華なので見てみたがとくに可もなく不可もなく…。内容は見飽きた勘あり。キューバ人妻役が美しくて存在感があった。KKKの襲撃など今でも続く南部の人種偏見にもしっかりスポットを当てていたのは○。2017.12

ラビング 愛という名前のふたり LOVING
監督:ジェフ・ニコルズ、出演:ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、マートン・ソーカス、ニック・クロール/1958年、バージニア州。白人男性リチャード・ラビングは、幼なじみで恋人の黒人女性ミルドレッドから妊娠を告げられ結婚を決意。しかしバージニアでは異人種間の結婚が法律で禁じられていたため、2人はワシントンDCで結婚の手続きを済ませる。まもなく二人の愛の棲家に保安官らが現れ二人は逮捕される。下った判決は離婚するか25年間の州外退去。愛するファミリーや故郷を捨てDCで暮らし始めるが、世の中は公民権運動真っ只中。不遇の境遇に疑問を感じた妻は運動家に訴え出る。実在する夫婦の長く静かな戦いを真摯に描いた社会派ドラマ。ラビング夫妻の存在を初めて知った。今でも世界にはいろんな差別がはびこっている。彼らは、宗教や肌の色の違いを超えた絆、世界平和の象徴みたいなものだ。ノーベル平和賞は、名前も知らない彼らにこそふさわしいと感じた。2017.11

50年後のボクたちは TSCHICK
監督:ファティ・アキン、出演:トリスタン・ゲーベル、アナンド・バトビレグ、メルセ/14歳のマイクは裕福だが、母がアル中で父は浮気中という家庭で孤独な日々を送っている。学校でも人気者タチアナに声を掛けることもできない。ある日、ロシア中央部からの移民チックが転校生としてやってくる。不良で嫌われ者のチックは、夏休みが始まったころマイクの家に盗んだオンボロ車に乗って現われる。二人は南部“ワラキア”を目指して旅に出るのだったが…。少年二人の羽目外しロードムービー。かわいいお話で終始微笑みながら映画を見ることができた。アキン監督らしい皮肉さは感じられなかったが、監督が原作のファンというので忠実に描いたのでしょう。原作者は脳腫瘍で亡くなったとのこと。この原作を書いたときも死を覚悟しての執筆だったと知り、本を読んでみたくなった。しかも同じ年だし。2017.10

J:ビヨンド・フラメンコ Jota de Saura
監督:カルロス・サウラ/出演:サラ・バラス、ミゲル・アンヘル・ベルナ、カルロス・ヌニェス、カニサレス/スペイン映画の巨匠カルロス・サウラはスペイン北東部の民族舞踊「ホタ」の歴史と魅力に迫った音楽ドキュメンタリー。サウラの手にかかるとなんでも芸術作品なのだが、ホタはフォークダンスなのでしょう。日本でいえば盆踊りみたいなもの?フラメンコのルーツが知れて勉強になりました。2017.10 ラテンビート映画祭にて

サッドヒルを掘り返せ Sad Hill Unearthed
監督:ギジェルモ・デ・オリベイラ/出演:セルジオ・レオーネ、エンニオ・モリコーネ、クリント・イーストウッド/マカロニ・ウエスタンの名作『続・夕陽のガンマン』が公開されてから約50年。映画を愛するファンのグループは、クライマックスのロケ地となったスペインの荒野を訪れる。彼らは変わり果てた“Sad Hill墓地”を撮影当時の状態に戻すため掘り起こし始める。映画オタクの聖地再生の物語をシンプルに追っていて好感が持てました。2017.11 ラテンビート映画祭にて
スキン~あなたに触らせて~ Pieles
監督:エドゥアルド・カサノバ/出演:カンデラ・ペニャ、アナ・ポルボロサ、カルメン・マチ/生まれつき両目のないラウラはピンクに彩られた娼館で、子供の時から客の相手をさせられている。人と違った口を持つサマンサは街でチンピラに絡まれ、人より背の低いバネッサは人気キャラクターの着ぐるみタレントとして働き詰めの毎日を送っている。一方、外見は健常者のクリスティアンは「自分の脚を切断したい」という衝動が抑えきれずにいた…。身体の一部が他人とは違う人間たちの悲哀に光を当てた異色のダークコメディ。フリークスの人々の苦労をストレートに描くのではなく、パステルピンクや淡い紫を使っておとぎの国風に描いた斬新さが受けたのでしょう。ポップアート的世界、嫌いじゃないけど、大好きでもないからなあ。微妙。2017.10 ラテンビート映画祭にて

ホーリー・キャンプ! La llamada
監督:ハビエル・カルボ、ハビエル・アンブロッシ/出演:マカレナ・ガルシア、アンナ・カスティーリョ、ベレン・クエスタ/歌が大好きな十代の女の子マリアとスサナは教会のサマーキャンプに参加する。キャンプには古い慣習を守ろうとするシスターや、本心をさらけ出せない内気なシスター、ミラグロスがいた。マリアとスサナは堅苦しい教会の規律に反抗し…。ブロードウェイ的な涙と笑いのあるミュージカルかと想像していたら、かなり奇天烈な展開でちょっとついていけなかった。けど、若い勢いを感じられて微笑ましかったです。神様がホイットニー歌うっていう感覚が今時のスペインの若者には受けたんだろうけど、日本人の中年には、目からウロコでした。2017.10 ラテンビート映画祭にて

Most Beautiful Island
監督・出演:アナ・アセンシオ/出演:ナターシャ・ロマノヴァ、デビッド・リトル/若い女性ルシアナは、過去の辛い出来事から逃れるためニューヨークで新しい生活を始める。だが不法移民のルシアナが出来る仕事は限られており生活は苦しい。そんな時、ロシア系移民でバイト仲間のオルガから、破格の報酬を手にできる秘密のパーティーに誘われる…。秘密クラブで何をさせられるかドキドキしたら、意外と平気だった?的なストーリーで想像と違っていた。ある意味斬新だけど、まさか冒頭のゴキブリがカギだったとは…。彼女の過去、子供を亡くしたようだったけど、はっきりせず。いろんな意味で不思議な作品でした。2017.10 ラテンビート映画祭にて


甘き人生 FAI BEI SOGNI
監督:マルコ・ベロッキオ、出演:ヴァレリオ・マスタンドレア、ベレニス・ベジョ☆1969年、トリノ。9歳のマッシモは母を突然失う。ジャーナリストとして成功を収めたマッシモは母の死の真相を未だに知らずにいた。子供が母の死を受け止められないのはわかるのだが、中年になってもトラウマを抱えているのが理解できず。小説家の実話らしいのですが…。がっかり感はあったが、影と光の微妙な映像には引き付けられたので、映画感でみてよかった、と思うことにします。2017.8

アメリカン・ギャングスター AMERICAN GANGSTER
リドリー・スコット監督、出演:デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、キウェテル・イジョフォー、キューバ・グッディング・Jr、ジョシュ・ブローリン☆1968年ニューヨーク。黒人ギャングのボスに育てられたフランク・ルーカスは、ボスの座を引き継ぎ麻薬“ブルー・マジック”の取引で富と権力を手にする。
一方、ニュージャージーの刑事リッチーは、ブルー・マジックの捜査を進めるうち、フランクの存在に辿り着く。見応えのある実話もの。ワシントンはさすがの存在感で、ドキドキしました。2017.7

オデッセイ THE MARTIAN
監督:リドリー・スコット、出演:マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、ジェフ・ダニエルズ、マイケル・ペーニャ☆火星の有人探査計画“アレス3”は、いきなり猛烈な砂嵐に見舞われ、ミッション開始早々に中止を余儀なくされる。さらに、クルーの一人で植物学者の宇宙飛行士マーク・ワトニーが、撤収作業中に折れたアンテナの直撃を受けて吹き飛ばされ行方不明に。
宇宙でずっと一人なのかと想像していたが、クル―が助けに来る話だったのが意外だった。シンプルに楽しめるSF。2017.6

オーバー・フェンス
監督:山下敦弘、出演:オダギリジョー、蒼井優、松田翔太ほか☆妻子と別れ、故郷の函館で職業訓練校に通いながら失業保険で暮らす男、白岩は、キャバクラで、聡というホステスと出会う。かなり期待してしまったせいかまったく受け付けられない作品にがっかり。聡ののキャラも、彼女に惹かれる白岩も、伏線なさすぎて薄っぺらく感じた。山下監督は女を描くのが苦手なのかもね。がっかり×3。2017.6

オクジャ/okja 
監督:ポン・ジュノ、出演:ティルダ・スウィントン、ポール・ダノ、アン・ソヒョン、ピョン・ヒボン☆アメリカの大企業が開発した遺伝子により巨大なブタが生み出された。その中の一匹オクジャを韓国の村で育てている少女は、オクジャの危機を救うためアメリカへと向かう。グエムルのような映画をイメージしていたが、また毛色の違ったシニカルコメディだった。役者もCGも金かけてる感あり。その割に意外と普通、というのが率直な感想。2017.8

神様の思し召し SE DIO VUOLE
監督:エドアルド・ファルコーネ、出演:マルコ・ジャリーニ、アレッサンドロ・ガスマン☆天才心臓外科医トンマーゾは、医大生の息子から“神父になりたい”と言われ動揺。彼が尊敬する神父のピエトロに近づき正体を暴こうとする。
シンプルなファミリードラマ。普通。2017.6

ギミー・デンジャー GIMME DANGER
監督:ジム・ジャームッシュ、出演:イギー・ポップ、ロン・アシュトン、スコット・アシュトン、ジェームズ・ウィリアムソン☆1967年にアメリカのデトロイト近くの街で結成されたバンド“イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ”の歴史とメンバーたちに迫った音楽ドキュメンタリー。イギーはワイルドなパフォーマンスや素行が目立ってはいたが、一番元気で長生きしているというのがなんとも皮肉。メンバーとの確執もあまりなかったのは、イギーのナチュラルな性格によるのかも。ニコやデビッド・ボウイに愛されたのもわかる気がした。ストゥージズのメンバーのその後は、早死したり、タクシーの運転手になったり、大学に行きシリコンバレーで会社員になったり、と様々。それでも再結成出来たことは奇跡だわ~。随所にジム・ジャームッシュ監督らしさも感じられ、イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ愛に溢れた作品でした。2017.9


十年
監督:クォック・ジョン、ウォン・フェイパンほか☆5人の若手監督が10年後の香港をテーマに競作したインディーズ作品。テロ防止法を成立させるために、政治家の暗殺を画策する政府を描いた「エキストラ」。北京語が話せないため空港で客を載せられなくなったタクシー運転手の悲哀を描いた「方言」、地元産という言葉が取締の対象になった「地元産の卵」など、今後来るかもしれない窮屈な10年後をシニカルに描いている。香港だけでなく日本でもあり得る話だわ…。自由より規制が重視される世界の到来を憂う…。2017.8

新宿スワン2
監督:園子温、出演:綾野剛、浅野忠信、伊勢谷友介、深水元基/シマ拡大の必要に迫られた山城は、滝マサキ率いる武闘派スカウト会社ウィザードが仕切る横浜への進出を決断する。滝と因縁がある関とともに同地へと送り込まれる龍彦だったが…。パート1の関が大のお気に入りだったので期待してみたのだが、1にはまったく及ばない退屈な作品。園監督にしては大人しい感じがして物足りなかった。残念2017.9

すばらしき映画音楽たち SCORE: A FILM MUSIC DOCUMENTARY
監督:マット・シュレイダー、出演:ハンス・ジマー、ダニー・エルフマン、ジョン・ウィリアムズ/数々のハリウッド映画を彩ってきた映画音楽と名作曲家たちにスポットを当て、映画史に燦然と輝く名曲たちがどのようにして生まれたのか、その知られざる誕生秘話を、当事者たちが率直に語る貴重なインタビューを通して明らかにしていく音楽ドキュメンタリー。スクリーンで観たいと思う映画の基準を一にドラマ、二に音楽と決めているので、映画音楽の良し悪しは大事な要素。若い頃に好んで見ていた米国映画の音楽のインパクトの強さは秀逸であり、そんな良き時代の映画音楽にスポットを当ててくれたことに感激した。ただ、映画の後半の21世紀のハリウッドエンタメ映画は自分にとって身近なものではなくなったので飽きてしまったのも事実。「ロッキー」「ジョーズ」「未知との遭遇」等々、音楽を聴いただけで映画のワンシーンを思い出せるエンタメ作品、あったよなあ。サウダージ。2017.10

スティーヴとロブのグルメトリップ THE TRIP
監督: マイケル・ウィンターボトム、出演:スティーヴ・クーガン、ロブ・ブライドン、マルゴ・スティリー、クレア・キーラン、ベン・スティラー☆イギリスにある人気レストランの絶品料理を約一週間かけて食べ歩くという、おいしいグルメレポート旅行の仕事が舞い込んだスティーヴは芸人ロブに声をかけることに。英語のネイティブなら笑えるのかもしれないけど…。まったくダメでした。2017.7

選挙 CAMPAIGN
監督:想田和弘☆川崎市議会議員補欠選挙。40歳の山内和彦は成り行きから自民党公認候補となり、縁もゆかりもない川崎の地で、“どぶ板選挙”を戦い抜く。恐ろしいまでの泥臭さ。選挙というのはまやかしだね。とくに自民党公認は要注意。呆れてしまった。車の中で夫を攻める妻に同情した。2017.8
ティエリー・トグルドーの憂鬱 LA LOI DU MARCHE
監督:ステファヌ・ブリゼ、出演:ヴァンサン・ランドン、カリーヌ・ドゥ・ミルベック☆失業した51歳のティエリー・トグルドーは、障害のある息子と妻を抱え家のローンも払えない。スーパーマーケットの監視員の職に着くが、同僚の不正や万引きを監視する生活に心をすり減らす。真面目だけが取り柄の悩める男の苦悩を描いた作品ではあるのだが、印象に残ったのは妻とのダンスの時。生活は大変だけど、家族がいるのっていいよね。2017.6
永い言い訳
監督:西川美和、本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心、深津絵里出演☆作家の津村啓は事故で妻を亡くす。同じ時間に若い女性と密会中だったことから後ろめたさをぬぐえないでいた。遺族への説明会で、妻と一緒に亡くなった親友の家族と知り合う。トラック運転手で家を明けがちな陽一のために、2人の子どもの面倒を見ることにする。
原作者が監督ということで、見やすくいい意味で遊びのない映画に仕上がっていた。妻への贖罪の気持ちを、明るく振舞ったり、子供の世話をすることでやり過ごそうとする津村が痛々しく感じた。幼い妹と子供のような純真なお父さんのために、一人気を張って頑張っている長男君が不憫で不憫で…。思ったよりも毒の少ないシンプルな家族の物語でした。
2017.6

ニュースの真相 TRUTH
監督:ジェームズ・ヴァンダービルト、出演:ケイト・ブランシェット、ロバート・レッドフォード、デニス・クエイド☆2004年9月、米CBSの看板報道番組『60ミニッツII』では、再戦を目指すジョージ・W・ブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑という一大スクープを特集するが、証拠に偽造の疑いが浮上し、アンカーマン、ダン・ラザーが事実上の降板に追い込まれた事件を、女性プロデューサー、メアリー・メイプスの自伝を基に映画化。
 この事件を知らなかったので興味深くみれた。証拠が偽物ではあったが、ブッシュが兵役なんて務めていなかったのは誰がみても明らか。それが政治家。と、一般日本人の感覚だと諦めてしまうのだが、やっぱりメディアはそうであってはならない。日本のメディアにはこういう批判精神を忘れないでほしいものです。2017.6

ハクソー・リッジ HACKSAW RIDGE
メル・ギブソン監督、出演:アンドリュー・ガーフィールド、ヴィンス・ヴォーン☆熱心なキリスト教徒のデズモンドは、看護師のドロシーと恋に落ちるも、激化する第2次世界大戦に心を痛め、衛生兵になるべく陸軍に志願する。しかし訓練で銃に触れることを拒絶し、上官や他の兵士たちから執拗ないやがらせを受ける。軍法会議で彼の主張が認められ沖縄の前田高地、通称ハクソー・リッジへ赴いたデズモンドは凄惨な殺し合いを目の当たりにする…。銃を持たず助けることでヒーローになった男の実話。ウルウルのお涙頂戴ものかと構えていたが、戦場シーンがあまりにも悲惨で前半のまどろっこしさが吹っ飛んだ。
塚本監督の「野火」とはまったく逆の描き方をしているのだが、戦場は人間を獣にする、という反戦のメッセージはどちらからも伝わった。ガーフィールドは「沈黙」で信仰を捨てる神父を演じ、こちらでは信仰を全うした兵士を演じている、というのが興味深い。しかもどちらも舞台は日本。
 うがった見方かもしれないが、キリスト教を貫いた兵士がいたのだから、前線で闘った米兵にイスラム教徒だっていたはず。その映画を見てみたいと思った。
 最近夢中のヴィンス・ヴォーンが鬼なんだけど愛がある教官を魅力的に演じていました!&オーストラリア人のメルがこの映画を撮ってくれたことは意味があると思う。第三者視点で監督に徹したメル様。復活にブラボーです!2017.7

FAKE
監督:森達也、出演:佐村河内守、森達也☆ゴーストライタ―騒動で時の人となった佐村河内守氏に密着したフェイク?ドキュメンタリー。人を騙しておきながら反省よりも不満ばかり言っている佐村河内氏に同情心はなかったのだが、世間をだました手腕はさすがというか、見ているうちに自分も彼の言う嘘八百を信じそうになったから恐ろしい。彼の妻や全盲の女性、聾唖の友人等、ピュアな人たちはまるで彼の信者のよう。こうやって人は人を洗脳していくのか、と見ていて恐ろしくなった。自分は他人を疑ってかかる人間なのだが「信じるものは救われる」という言葉もあるように、信じ切ったほうが人は幸せになれることもある。ただ、信じたものが危険な人やモノだった時、詐欺やテロ戦争が起こるのかもしれない。ことしもっと人間的な良心や常識が破綻している人がオウムの麻原に似ている。

僕が結婚を決めたワケ THE DILEMMA
監督:ロン・ハワード、出演:ヴィンス・ヴォーン、ケヴィン・ジェームズ、ジェニファー・コネリー、ウィノナ・ライダー☆シカゴ。実業家のロニーは、大学時代からの親友ニックを相棒に、車のエンジン・デザイン会社を営んでいた。エンジニアのニックはロニーの友人ジェニーヴァと結婚し、独身のロニーにとって彼らは理想の夫婦。またロニーも、ジェニーヴァに紹介されたオーナー・シェフのベスと愛し合っているものの互いを束縛しない関係に満足し、幸せな日々を送っている。だがある日、ロニーはジェニーヴァから“今プロポーズしなければベスを失う”と忠告されたことを機に結婚を意識し始め、ついには翌月のベスの誕生日にプロポーズすることを決意する。そして数日後、プロポーズの場所にしようと植物園の下見に訪れたロニー。ところが、そこでジェニーヴァの浮気現場を目撃してしまう。以来、ニックにその事実を知らせるか否か悩むと同時に、自らも結婚への踏ん切りがつかなくなってしまうロニーだが…。

ミニー&モスコウィッツ MINNIE AND MOSKOWITZ
監督:ジョン・カサヴェテス、出演:ジーナ・ローランズ、シーモア・カッセル、ジョン・カサヴェテス☆セレブな女と労働者の男の出会いと恋を描いた作品。ジーナとシーモアの存在感が光ってました。
ランド・オブ・ザ・デッド LAND OF THE DEAD
監督:ジョージ・A・ロメロ、出演:サイモン・ベイカー、デニス・ホッパー、ジョン・レグイザモ☆増殖したゾンビと、高層ビルで暮らす金持ちと権力者。そして社会に不満を抱く労働者たち。混沌とした近未来の人間模様を描いた社会派ホラー。
昔みた王道ゾンビは怖かったが、この作品のゾンビたちには同情すら覚えた。単純だけど面白かったです。2017.8

ローサは密告された MA' ROSA
監督:ブリランテ・メンドーサ、出演:ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス、アンディ・エイジェンマン☆マニラのスラム街で怠け者の夫と雑貨店を営むローサ。生活の苦しい夫婦は、家計を支えるために少量の麻薬も扱っていたが、ある時警察のガサ入れに遭い、逮捕されてしまう。そして警察署に連行されるや、多額の見逃し料を要求される夫婦だったが…。
或る終焉 Chronic
監督:ミシェル・フランコ、出演:ティム・ロス、サラ・サザーランド、ロビン・バートレット出演☆看護師デヴィッドは末期患者の在宅看護の仕事に従事している。しかし患者との強い絆を築いたことで家族に誤解され解雇されてしまう。
暗い過去を払拭できずにいる看護師の献身的な姿を、冷めた視点が追いかけるドキュメンタリー風作品。人の死がテーマではあるのだが、ドラマチックにしない視点が気にいった。メキシコの新人監督の今後の作品が楽しみです。2017.3

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ EXIT THROUGH THE GIFT SHOP
監督:バンクシー、ナレーション:リス・エヴァンス☆覆面アーティスト、バンクシーが自ら監督し、ストリート・アートの世界にユニークな切り口で迫る異色のアート・ドキュメンタリー。路上アートは南米では盛んだが日本の価値観には合わないのが残念。バンクシーやティエリーのようなぶっ飛んだアーチストの姿を見ると安心するのは、自分が日々、ガチガチに凝り固まった価値観の中で生きているからなのかもしれない。2017.1

映画と恋とウディ・アレン WOODY ALLEN: A DOCUMENTARY
監督:ロバート・B・ウィード、出演:ウディ・アレン☆ウディ・アレンの生い立ちから経歴、ミューズたちとの関係にも迫ったドキュメンタリー大作。映画監督をするのが中毒のようなアレン。作品の良し悪しよりも多作であることが、彼のモチベーションなのだろう。オタクで神経質というイメージだったが、人の意見も聞く監督というのは意外でした。それが女にもてる所以?いつまでも少年のようなハートを持った監督なのでしょう。いつまでもお元気でいてほしい。2017.1
く。

EDEN/エデン
監督:ミア・ハンセン=ラヴ、出演:フェリックス・ドゥ・ジヴリ、ポーリーヌ・エチエンヌ、ヴァンサン・マケーニュ☆90年代のパリ。大学生のポールは、ディスコのDJに夢中になり、仲間と一緒にCheersを結成する。ドラッグや恋愛、失恋、仲間の自殺等を経ながらポールは年を重ねる。
 監督の兄がモデルということ。年代的に通じるものがあり感情移入しながら楽しめた。そうはいってもオシャレで開放的なパリジャンの青春と、地味な東京の大学生では共通点はほぼないのですけど。監督はオリビエ・アサヤスのパートナーで、両親は哲学者らしい。この映画の共同脚本は元DJの兄ということで、かなり自伝色が濃い内容。ミア監督はフランス版ソフィア・コッポラ、といった感じかな。2017.2

オマールの壁 OMAR 
監督: ハニ・アブ・アサド、出演: アダム・バクリ、リーム・リューバニ、ワリード・ズエイター☆パレスチナに暮らすパン職人オマールは分離壁を乗り越え、恋人ナディアやナディアの兄に会いに行っていた。ある日、オマールは仲間と共にイスラエル兵の狙撃を企てるが、オマール一人がイスラエル警察に捕まり、激しい拷問を受ける。捜査官のラミはオマールに釈放と引き換えに仲間を売るよう迫る。恋や友達との遊びに夢中になる若い男女の嫉妬心や猜疑心、裏切りの物語は世界共通のもの。ただしパレスチナでは、それがスパイ行為や逮捕、拷問、生死を分けた取り返しのつかない悲劇につながってしまう。見終わったあとのやりきれなさが半端じゃなかったです。パレスチナの悲劇はいったいいつまで続くのか…。2017.1

イレブン・ミニッツ 11 MINUT
監督:イエジー・スコリモフスキ、出演:リチャード・ドーマー、パウリナ・ハプコ☆午後5時前、新婚の夫は、映画監督との面接に向かった妻のいるホテルへ向かう。前科者の男はそのホテルの前でシスターたちにホットドックを売り、救急車は妊婦の救出に向かう…。様々な立場の人間たちが、ある時間、ある場所で偶然出会うまでの10分を追った群像ドラマ。最初は複雑でよくわからなかったが、エンディングは見応えあり。思わず、もう一度見直してしまいました。複数の楽器が即興演奏をしながら一つにまとまるフリーJAZZ風な映画だった。超クールなエンディングに脱帽!2017.6

ウエディング・クラッシャーズ WEDDING CRASHERS
監督: デヴィッド・ドブキン、出演:オーウェン・ウィルソン、ヴィンス・ヴォーン、クリストファー・ウォーケン、レイチェル・マクアダムス、ブラッドリー・クーパー、ウィル・フェレル☆離婚仲裁人として働くジョンとジェレミーの趣味は“結婚式荒らし”。身分を偽り見知らぬ人の結婚式に紛れ込んで女性たちを口説くゲームに興じている。財務長官の娘の結婚式に忍び込んだ二人は、娘の妹たちとお近づきに。
キャストが豪華なので見てみたが、普通のコメディでした。ヴィンス・ヴォーンにちょっとだけお熱。2017.5

オアシス:スーパーソニック OASIS: SUPERSONIC
監督:マット・ホワイトクロス、出演:オアシス☆1994年にデビュー後、音楽シーンの頂点へと登り詰め、2009年に解散した英国のロック・バンド“オアシス”の結成、兄弟の関係等を追ったドキュメンタリー。兄ノエルと弟リアムがなぜ仲違いしたのか、そのルーツや性格の違いがわかって興味深かった。ノエルは才能あるけど、嫌味な野郎なんだろうな。正確悪くても音楽が良ければいいんですけどね。2017.6

葛城事件 
赤堀雅秋監督、三浦友和、南果歩、新井浩文、若葉竜也、田中麗奈出演
☆金物屋を営む葛城清は念願のマイホームを建て理想の家庭を築く。だが清の高圧的な支配により、二人の息子や妻の心が崩壊し始める…。高度成長期にみんなが夢を見て実現してきたマイホーム。男はその形に固執し、息子や妻が彼の価値観の強要に苦しんでいることも気づかない。清は行き過ぎ、異常にも見えるのだが、自分の父親と考え方は似ている。ということは自分も一歩間違えば、彼の子供や妻のようになっていたのかも…。誰も幸せになれない辛い映画なのだが、目をそらすことができないほど、ひきつけられた。TVドラマでは、いい人しか演じない三浦友和が、映画では悪人・汚れ役に挑み、見事に怪演していることにも感動でした。2017.4

スティーブ・ジョブズ STEVE JOBS
ダニー・ボイル監督、マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット☆1984年。Macintosh発表会の40分前。“ハロー”と挨拶するはずのマシンが何も言わず、激高するジョブズ。そこに元恋人クリスアンが、娘のリサを連れて現われる。
3つの時代の新作発表会の舞台裏でイライラしているジョブスの姿を追いかけながら、彼の人となりをあぶりだす異色のドラマ。娘リサの認知を拒んだり、学費を払わないと言ったり、父としてはとんでもないサイテー男。だけど「マック」への異常な愛が、世界に革命をもたらすほどの製品を生んだ。変人の発明家ですねジョブスは。人間的に優れている人が成功者なのではない。ジョブスの幸せは、一般人とは違ったということは間違いないでしょう。2017.4

日本で一番悪い奴ら
監督:白石和彌、出演:綾野剛、YOUNG DAIS、植野行雄、ピエール瀧、中村獅童☆柔道選手、諸星は鳴り物入りで北海道警察に入るが、正義感が空回りし役立たず。そんな諸星に、先輩刑事の村井は裏社会に協力者をつくれとアドバイスする。言われるままに実践し覚醒剤や拳銃の摘発を重ねる諸星は、点数を稼ぐために悪事に手を染めていく。
正義の人から悪人への転がり方が極端で卒倒したが、さすが綾野。見事にキレキレの演技を見せてくれました。大満足!2017.6

ブエノスアイレス 春光乍洩 HAPPY TOGETHER
監督:ウォン・カーウァイ、撮影:クリストファー・ドイル、出演:レスリー・チャン、トニー・レオン、チャン・チェン☆アルゼンチンへとやってきた、ゲイのカップル、ウィンとファイ。二人は車でイグアスの滝を目指すがたどり着けない。お金を貯めるため、ファイはタンゴ・バーで働き始めるが、ウィンは夜な夜な遊び歩き大勢の男たちと刹那的関係を繰り返していた…
20年ぶりの鑑賞。当時は映画の舞台ブエノスアイレスの街に憧れたものだが、実際に行ったら意外と普通だったので、やはりこれはドイルの映像の力なんだ、と再確認。今回はブエノスへの憧れよりも、二人の関係に絞って見てみた。お互いが死ぬほど欲しているのに、思いが強すぎて衝突してしまう…。せつないです…。レスリーはなんてセクシーなんでしょう。唯一無二のアジアスターだった…。報われぬ愛、レスリー、南米…いろんな意味でサウダージな映画でした。2017.6

ブルックリン BROOKLYN
監督:ジョン・クローリー、シアーシャ・ローナン、ドーナル・グリーソン、エモリー・コーエン出演☆アイルランドの閉鎖的な町で姉と母と暮らすエイリシュは、姉ローズの計らいで単身アメリカへと渡る。ブルックリンの高級デパートで売り子として働きはじめるが馴染めずホームシックになる。そんな中、ダンスパーティで知り合ったイタリア系の青年トニーと付き合いはじめる。朝ドラ「ひよっこ」のような物語だが、茨城からではなく海を渡って別の国への出稼ぎ、というのだから規模が大きい。地味な話だけど、エイリシュにしっかり感情移入できました。アイルランド移民がブルックリンに多かった、という歴史を知らなかったので興味深かったです。2017.6

僕とカミンスキーの旅 ICH UND KAMINSKI
監督:ヴォルフガング・ベッカー、出演:ダニエル・ブリュール、イェスパー・クリステンセン、アミラ・カサール、ドニ・ラヴァン、ジェラルディン・チャップリン☆鳴かず飛ばずの美術評論家ゼバスティアンは、忽然と姿を消した盲目の天才画家マヌエル・カミンスキーの本を出版して一発当てようともくろむ。ダニエル・ブリュールのコミカルな演技を始めてみたので新鮮だった。美術界を皮肉った部分も多いのだろうが、美術界に疎いのでその辺はよくつかめず。単純に凸凹コンビの珍道中ものとして楽しめた。2017.5

ムーンライト MOONLIGHT

バリー・ジェンキンズ監督、トレヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、マハーシャラ・アリ出演☆
舞台はマイアミ。内気な少年シャロンは、麻薬中毒の母ポーラと2人暮らし。学校では仕草が女っぽいことからリトルと呼ばれいつもいじめられていた。麻薬ディーラーのフアンは、そんなシャロンを家に招く。シャロンの成長を3つの時代で追った青春ドラマ。とてもナイーブな映画。内気なシャロンがびくびくしながらもフアンに心を開く過程が美しく、やさしく描かれていて好感が持てた。黒人コミュニティが舞台だと、犯罪、ドラッグ、ラップ、ブラザーが定番だが、その定番に馴染めないゲイの青年に光を当てた点が新鮮だった。シャロンが大人になってからの変貌ぶりには驚いたが、マッチョになったのは亡きフアンへの憧れでもあるのだろう。鎧をまとった元いじめられっ子が、初恋の相手と再会するシーンもドキドキでした。地味な展開なので評価は分かれるとは思うが、余韻に浸れるステキな映画でした。2017.4

ライク・サムワン・イン・ラブ LIKE SOMEONE IN LOVE
監督:アッバス・キアロスタミ、出演:奥野匡、高梨臨、加瀬亮、でんでん☆老齢の元大学教授タカシは、デートクラブを通じて女子大生、明子を家に呼ぶ。翌朝、タカシが明子を大学まで車で送り届けると、そこに明子を束縛する恋人ノリアキが現われる。
キアロスタミ監督と日本のコラボ映画。あまり話題にならなかったけど、いい意味で見やすい映画。デートクラブの仕事や恋人の束縛にうんざりしている女子大生、悠々自適生活だが孤独な老人、エキセントリックな青年、それぞれの個性が丁寧に描かれていて、それぞれの背景が見え隠れする。イランの監督なのに日本人のことをよくわかっていらっしゃる。脱帽です。キアロスタミ監督新作をもう見れないのが残念でなりません。2017.6



カンバセーション…盗聴… THE CONVERSATION
フランシス・フォード・コッポラ監督、ジーン・ハックマン、ジョン・カザール、アレン・ガーフィールド、ハリソン・フォード出演☆サンフランシスコでプロの盗聴屋を生業とするハリーは、「殺される」とおびえる若い二人を盗聴。依頼主への不信感を募らせる。「盗聴」行為は今でも米国のお家芸だが、そんな闇稼業にスポットをあてた傑作。若い頃に見た時はピンとこなかったが、今見ると面白さがジワジワ染み出ていた。ラストのどんでん返しもショッキング&出世前のハリソン・フォードが嫌な役で出ているのも見もの。2017.3

グランドフィナーレ YOUTH
監督: パオロ・ソレンティーノ、出演:マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ、ジェーン・フォンダ☆世界的音楽家フレッドは現役を引退しアルプスの高級リゾートホテルで隠遁生活を送っている。同じホテルに宿泊する親友で映画監督のミックや、若い俳優、エキセントリックな娘らが集い、フレッドを中心に人間模様が描かれる。主役級俳優が豪華で優雅な高級リゾートに一堂に会しているのを見るだけでも価値あり。ソレンティーノ監督って力があるのですね~。映画的には、なるほどねえ、って感じかな。とくに可もなく不可もなく。音楽はよかったです。2017.2

クロエ
監督:アトム・エゴヤン、ジュリアン・ムーア、リーアム・ニーソン、アマンダ・セイフライド出演☆大学教授の夫デビッドとひとり息子のマイケルとともに何不自由ない毎日を送る産婦人科医のキャサリンは、夫の浮気を疑い始める。キャサリンは偶然出会った美女に夫を誘惑するよう依頼する。夫への疑念と、若い美女に惹かれていく心の揺れをムーアが見事に演じていた。フランス映画のリメークとのこと。フランス版も見てみたくなった。2017.1

最後のマイ・ウェイ CLOCLO
監督:フローラン・エミリオ・シリ、出演:ジェレミー・レニエ、ブノワ・マジメル出演☆フランソワ一家はスエズ運河の国有化で失職しモナコに移住。生活費を稼ぐため息子クロードは楽団で職を見つける。父親はそんな息子を認めなかったが、クロードはアイドル歌手となっていく。「マイウェイ」の元歌がフランスの歌だと知らなかったので驚き。「恋するシャンソン人形」の歌手との恋と別れも目から鱗でした。伝記映画としてはステレオタイプで、スター歌手のエキセントリックな裏の顔もありがちな話。ただ主役を演じたジェレミーが今までの役と真逆のタイプで、演技の上手さの度肝をぬいた。死に方が、またなんとも不思議な事故で…。人の一生って一寸先はわからないものですね。2017.2

サウルの息子 SAUL FIA
監督: ネメシュ・ラースロー、出演:ルーリグ・ゲーザ☆アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の死体処理部隊で働くユダヤ人のサウルは、ある一人の少年の死に衝撃を受け、彼は自分の息子と思い込み、きちんと埋葬するために危険か行動に出る。ホロコースト映画は数多く見てきたが、かなり異色の作りになっている。人の死に鈍感にならざるを得ない極限状況において、一人の男が少年の遺体へ執着する。それもかなり病的に。映像は何度も、男の後ろ姿やアップを映し、その背後の無残な遺体の一部や人々の悲鳴、銃声だけを観客に小出しにすることで悲惨さを想像させる、という手法だ。あえてぼかす、はっきりさせないことで、観客自身も疑似体験するそれが辛くて辛くて…。カンヌやアカデミーでの評価も納得の意欲作です。2017.2

新宿スワン
園子温監督、綾野剛、山田孝之、沢尻エリカ、伊勢谷友介、金子ノブアキ、深水元基出演☆金髪天パーの熱血男、龍彦は、チンピラに絡まれたところを助けてくれた真虎に誘われスカウトの道へ。一方、敵対するスカウトマンで、龍彦に異様なほどライバル心を燃やす秀吉には苦い過去があった。
小気味いいチンピラ映画!役者陣がみんな生き生きしていて、園子温ワールド全開でおおいに楽しめた。屈折した秀吉を演じた山田孝之が最高。龍彦への羨望と嫉妬がジワジワ伝わってくる演技でした。ブラボー!2017.1

シチズンフォー スノーデンの暴露 CITIZENFOUR
監督:ローラ・ポイトラス、出演:エドワード・スノーデン☆2013年、ローラ・ポイトラス監督はシチズンフォーと名乗る人物から、NSA(国家安全保障局)が米国民の膨大な通信データを秘密に入手しているという内部告発のメールを受信する。監督は、リオで暮らすジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドとともに香港へと向かう。ホテルで2人を待っていたのは、エドワード・スノーデンという元CIA職員の青年だった。スノーデンの勇気ある告発がスパイ映画そのもので鳥肌がたった。世界中が超管理社会の今、いつ自分が非国民にされ摘発されるかもわからない。きな臭い世の中に絶望感さえ感じます。こういう窮屈な世の中では厭世的な文化に逃げるしかない。だから私は地味に厭世文化に没頭します。2017.4

青天の霹靂
監督:劇団ひとり、出演:大泉洋、柴咲コウ、劇団ひとり☆売れないマジシャンの晴夫はホームレスとなった父の死の知らせを受ける。父の遺品整理中、雷に撃たれた晴夫は、40年前の浅草にタイムスリップする。定番の「バックトゥーザフューチャー」もの。安心して見られる心温まるお話でした。若き日の父と息子のやりとりが楽しかった。ひとりはマルチな才能あるよなあ。2017.4
セトウツミ
監督:大森立嗣、池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ出演☆成績優秀だけど人嫌いの内海と、元サッカー部のお調子者・瀬戸。放課後に二人で座りこんで話す日常を淡々と追ったコメディ。くだらないんだけど、ほんわかする二人の会話が面白くて、気持ちがほっこりしました菅田君サイコー!大森監督、さすが!不釣り合いなタンゴ調のBGMもいい感じでした。大満足。2017.3

ザ・キャピタル マネーにとりつかれた男 LE CAPITAL
コスタ・ガブラス監督、ガド・エルマレ、ガブリエル・バーン出演☆フランスの大手銀行で思いがけず頭取に抜擢された男と、海千山千の幹部やステークホルダーたちとの関係を辛辣に描いた社会派ドラマ。主演俳優はフランスのコメディアンとのこと。渋いです。ガブラス監督らしい生真面目な作品だが見応えありました。2017.3

ぜんぶ、フィデルのせい LA FAUTE A FIDEL!
ジュリー・ガヴラス監督、ニナ・ケルヴェル、ジュリー・ドパルデュー、ステファノ・アコルシ出演☆1970年のパリ。9歳の少女アンナは名門カトリック女子小学校に通うお嬢様。スペインの貴族階級出身で弁護士の父フェルナンドと雑誌記者の母マリーというコンサバな家族だったが、フランコ政権下のスペインから逃げてきた叔母と従姉妹の出現で家族に変化が生まれる。チリのアジェンテ政権成立を、フランスで暮らす少女の目から描いたというのが面白い。左翼で映画監督の父をもつジェリー監督の自伝的部分もあるのでしょう。名作「ミッシング」をもう一度見たくなった。2017.3

聖杯たちの騎士 KNIGHT OF CUPS
脚本・監督:テレンス・マリック、出演:クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマン☆脚本家リックは、セレブの世界に浸りながらも満たされない日々を送っている。妻との別れを経たリックは、年も立場も違う女性たちと逢瀬を重ねるが…。予想通りの難解さで、何度かウトウトしてしまったが、荘厳なクラシックの名曲と、ルベツキが手掛ける映像美、そして名優たちの独白が絶妙なコラボを生み出していた。自然の映像には引き付けられたが、都会のシーンは飽きてしまったのが正直なところ。ところどころ、うならせるセリフもあったのだが、見終わったらすべて忘れてしまいました。それもまたマリックのマジックなのかもしれません。2017.1

団地
監督:阪本順治、藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工出演☆大阪近郊の団地の住人となった清治とその妻ヒナ子。二人は最愛の息子を事故で亡くした寂しさを表にだすことなく日々のほほんと暮らしている。だが、ひょんなことから清治が引きこもり生活を始めたことで、妻が夫を殺したのでは、と噂になってしまう。
噂好きの団地妻たちがエスカレートしていく様と、否定せず便乗するヒナ子がケッサク。楽しくみていたのだが…。後半、まさかまさかの展開には正直ついて聞けず。阪本監督、随分遊んだよなあ。クセモノ役者陣の存在感がさすがでした。2017.4

追憶の森 THE SEA OF TREES
監督: ガス・ヴァン・サント監督、マシュー・マコノヒー、渡辺謙、ナオミ・ワッツ出演☆富士山の麓に広がる青木ヶ原樹海。妻の死から立ち直れず、死に場所を求めてアメリカからやって来たアーサーは、森の奥深くで助けを求める日本人と出会う。喪の辛さをえぐるような映画。ガス監督自身も神経症なのかなあ。個人的な死生観が垣間見えて、心配になりました。2017.1

ナビィの恋
監督:中江裕司、西田尚美、村上淳、平良とみ出演☆粟国島に帰ってきた奈々子は祖母ナビィと昔の恋人の悲恋を知る。景色は綺麗だったけどまったくはまれず。2017.3

裸足の季節 MUSTANG
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン、出演:ギュネシ・シェンソイ☆トルコの小さな村に住む5人姉妹の数奇な人生を描いた作品。軟禁状態なわりにのびのび暮らす少女たちには頼もしさも覚えたが、叔父の性的暴行を臭わせるくだりからシリアスになってしまい、暗い気持ちになってしまった。2017.3

ヴィクトリア VICTORIA
監督:ゼバスチャン・シッパー、ライア・コスタ、フレデリック・ラウ、フランツ・ロゴウスキ出演☆3ヵ月前にスペインからベルリンに来たばかりのヴィクトリアは、酔っ払い集団と意気投合し、真夜中のベルリンを闊歩する。
孤独な娘が不良共に絡まれ仲間になっていくストーリーは青春映画の定番なのだが、この映画はずっと一台のカメラで追いかけ、ドキュメンタリー風に撮っているのが面白い。ヴィクトリアを演じた女優も存在感あり。おバカに見えて、実は元クラシックピアニスト志望だったり、後半からは自ら進んで犯罪に手を貸したり…生命力の強さも感じた。ベルリン受賞も納得です。2017.2

ブロンド少女は過激に美しく SINGULARIDADES DE UMA RAPARIGA LOURA
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ、出演:リカルド・トレパ出演☆リスボンを出発した列車の中、一人の男が隣に座る見知らぬ婦人にある打ち明け話を始める。叔父の店で会計士として働いていたマカリオは、仕事場の向かいの窓にたたずむ若いブロンドの娘に恋をする。感想は…男100歳で若いブロンド娘の映画を撮れてしまう監督にアッパレ!2017.1

ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲 FEHER ISTEN
監督:コルネル・ムンドルッツォ、出演:ジョーフィア・プソッタ、シャンドール・ジョーテール☆雑種犬の飼い主には税金を課す町で暮らす13歳の少女リリは母の留守中愛犬のハーゲンと共に父のもとに預けられる。社会から虐げられたハーゲンは野犬となり闘犬として売られてしまう。
ハーゲンの表情の変化が圧巻。カンヌで特別賞も納得の名演技だった。雑種犬の差別は今の欧米で起こっている移民排斥とも通じるものがある。野犬たちの叛乱はテロそのもの。憎しみの負の連鎖は続く…。実社会でもリリのような救世主が現れないかなあ。2017.4

ボーダーライン SICARIO
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ、出演:エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン☆FBI女性捜査官ケイトはメキシコの麻薬組織の壊滅という極秘任務を帯びた特殊部隊にスカウトされる。チームに同行する謎のコロンビア人アレハンドロは、正義や法を破る手荒な方法で麻薬組織に挑んでいく。
エンタメ作品かと思いきや、かなり辛辣な社会派犯罪映画だった。米対メキシコの話にコロンビアの組織が絡んでいたのね…。実際にありそうな話。
メキシコとコロンビアの麻薬組織を太らせた張本人は米国のクライアントなのに、米国はさも正義のように叫んでいる現実を呪いたくなった。2017.1

香港、華麗なるオフィス・ライフ 華麗上班族 OFFICE
監督: ジョニー・トー、出演:シルヴィア・チャン、チョウ・ユンファ、イーソン・チャン☆香港か中国の近未来風オフィスを舞台に、企業のトップとスタッフたちの人間模様もコミカルに描いたミュージカル。歌も踊りも素人で軽い感じなのが、クレイジーキャッツの無責任男シリーズを彷彿とさせた。セリフもかなりシニカルでしたし。高度経済成長期には、この手の金儲け主義経営者を皮肉った映画が受けるのかもしれない。ユンファがすっかりお年寄りになってしまっていたのが、悲しかったです…。社長役はもうちょっと色気のあるカリーナ・ラうあたりに演じてほしかったなあ。ちょっと残念。ジョニー・トーも新境地開拓なのか、それとも息抜きなのか。かなり今までとテイストが違っていました。ただ、日本では受けないわな。公開しなかったのは正解かも。2017.2

マジック・イン・ムーンライト MAGIC IN THE MOONLIGHT
監督:ウディ・アレン、出演:アイリーン・アトキンス、コリン・ファース、マーシャ・ゲイ・ハーデン、エマ・ストーン☆天才マジシャンのスタンリーは、大富豪カトリッジ家の人々に取り入るむ若き霊能者ソフィの正体を暴こうと屋敷に出向く。『ラ・ラ・ランド』で大輪の花を咲かせたエマが主演の作品。軽くてカワイイお話。アレンの先物買いには頭が下がります。2017.1

モヒカン故郷に帰る
監督:沖田修一、出演:松田龍平、柄本明、前田敦子、もたいまさこ☆モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン、田村永吉。恋人の由佳が妊娠したのをきっかけに、彼女を連れて7年ぶりに瀬戸内海の戸鼻島に帰郷する。良くも悪くも定番の日本のホームドラマ。見飽きた感あり。2017.2

ラ・ラ・ランド La La Land
監督:デイミアン・チャゼル、出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、J・K・シモンズ☆ロサンゼルスの映画スタジオのカフェで働く女優志望のミアは、オーディションを受けては落ち込む日々を送っている。一方、ジャズピアニストのセバスチャンはフリージャズを愛し、いつか自分好みの店を持つことを夢見ている。偶然が重なって恋に落ちた二人は、各々の人生に迷いながらも邁進していく。
 いきなり交通渋滞の中でダンスが始まるオープニングと、ほろ苦いエンディングにセンスの良さが凝縮されていた。やるなあという感じ。ただ、期待が大きすぎ、前半はちょっとディズニー映画の実写版みたいで飽きてしまった。
歌もダンスもヒロインの容姿も、超一級品ではない、手が届きそうな親しみやすさが受けたのかもしれないが、個人的には本格派ミュージカルが好みだな。
後半はドラマ仕立てになり、ミュージカルなんだけど、華やかさよりほろ苦い気分が勝ってしまった。なんとも不思議な余韻でした。
古き良きハリウッドへのオマージュ風なんだけど、スマホがやたら出てくることとか、フリージャズ好きらしい主人公のキャラと、彼が好んで弾くテーマソング曲のミスマッチ感とか…違和感もたくさんあって不思議ちゃんでした。まあ異種格闘技ミュージカルってことで良しとしましょう!2017.3


ロブスター THE LOBSTER
監督: ヨルゴス・ランティモス、出演: コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、ジョン・C・ライリー、レア・セドゥ☆妻に去られ、独身となったデヴィッドは、犬にされた兄とともにとあるホテルに送られる。そこは45日以内にパートナーを見つけなければ、動物へと姿を変えられてしまう施設。森に隠れる独身者を狩った人数分、命が延長される規則だ。ユニークなSF映画。シニカルな設定は私好みだが、どうも話の展開についていけず…。キャストが超豪華な割にインディペンデントに徹した内容。もうひと工夫あれば楽しめたのに…。2017.1


2016年

ザ・ガンマン THE GUNMAN
ピエール・モレル監督、ショーン・ペン、イドリス・エルバ、レイ・ウィンストン、ハビエル・バルデム出演☆コンゴ共和国で大臣の暗殺を請け負った特殊部隊の傭兵ジムは、仲介者フェリックスから国外へ逃亡するよう命じられる。8年後、再びコンゴで何者かに襲われたジムは、自分を狙った敵の正体を突き止めるべく行動を開始するが…。アカデミー賞常連のショーン・ペンとバルデムが、普通のアクション映画で普通の演技をしていることが新鮮でした。特に裏もないエンタメ作品。たまに見ると楽しいですね。2016.12

コードネーム U.N.C.L.E THE MAN FROM U.N.C.L.E.
監督:ガイ・リッチー、出演:ヘンリー・カヴィル、アーミー・ハマー出演☆東西冷戦真っ只中の1960年代前半。アメリカCIAの敏腕エージェント、ナポレオン・ソロは、東ベルリンの自動車整備工場で働く女整備士ギャビーと、彼女の父親で天才科学者ウドを探しに出かける。リッチー監督、マドンナと離婚後に作品も復活!という触れ込みだったのだが…。まったく入り込めず。2016.12

さよなら、人類
ロイ・アンダーソン監督、ニルス・ヴェストブロム、ホルゲル・アンデション出演☆第71回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作。冴えないセールスマン、サムとヨナタンの奇妙な日々。騎馬隊が出てきたり、ガス室がでてきたり…たぶん風刺なんだと思うが、ちんぷんかんぷんでした。2016.11

ジョーのあした -辰吉丈一郎との20年-
監督: 阪本順治、ナレーション: 豊川悦司、出演:辰吉丈一郎☆阪本順治監督が、辰吉を20年間にわたってインタビューした人生ドキュメンタリー。1995年8月、生涯現役にこだわりつづける辰吉の人生をあえてドラマチックに描かず、淡々とインタビューする監督の冷めた視点が好感が持てた。沢木幸太郎とはまた違ったボクサーへの愛を感じた。2016.11

人生はローリングストーン THE END OF THE TOUR
監督: ジェームズ・ポンソルト、出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ジェイソン・シーゲル出演☆ローリング・ストーン誌の若手記者デヴィッドは、人気作家のデヴィッド・フォスター・ウォレスに取材に出かける。田舎で犬と暮らすウォレスとの共同生活や会話から、彼の孤独に触れていく。
この作家の存在を知らなかったので興味深かった。40代で自殺してしまったとのこと。日本のタイトルとDVDの写真は内容とテイストが違いすぎ。ロック好きの破天荒キャラの作家かと思ったら、まったく違う。このミスリードの売り方、どうかと思う。2016.11

灰とダイヤモンド POPIOL I DIAMENT
監督: アンジェイ・ワイダ、出演:ズビグニエフ・チブルスキー☆第二次世界大戦末期のポーランド。反ソ連派のテロリスト、マチェックは、ソ連から来た政治家の暗殺に失敗。再び彼を殺すため、同じホテルに宿をとり機会をうかがう。エンディングのシーンがあまりに鮮烈なため、そこまでの経緯はほとんど覚えていなかったので、見直したのだが…。暗殺者の心理描写よりも周りの人々の様子を描くシーンが多く、意外と普通で少々興ざめ。この映画の評価は、スタイリッシュなラストシーンと、主演俳優が若くして亡くなってしまったことなども絡んで名作といわれるようになったのかも。2016.11

ブルーに生まれついて BORN TO BE BLUE
監督: ロバート・バドロー、出演: イーサン・ホーク、カーメン・イジョゴ☆ジャズ・トランペット奏者のチェット・ベイカーは、その端正なルックスも相まって1950年代に一世を風靡する。しかしドラッグに溺れ表舞台から姿を消してしまう。恋人ジェーンは献身的にサポートし、チェットは再び舞台に立つ。似てるー。かっこいー。ドラッグ中毒だったことは知っていたのだが、意外に長生きしたのですね。内容的にはちょっと退屈だったけど、音楽はクールでした!2016.12

MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間 MILES AHEAD
監督・主演ドン・チードル、ユアン・マクレガー、エマヤツィ・コーリナルディ出演☆1970年代、音楽活動を休止して部屋にこもっていたマイルスの元に音楽雑誌の記者が訪ねてくる。マイルスは、元妻フランシスの思い出にすがり、新曲を作れずにいたが、レコード会社は彼の新作音源を奪おうとする。
ドン・チードルのマイルスへの愛が詰まった作品。演奏シーンはハービー・ハンコック、上イン・ショーター、グラスパーらが担当、という豪華さ。マイルスの回想を交えた苦悩の日々を負った極めて私的な作品でえ、エンタメ性には欠けていたが、嫌いじゃないです。
2016.12

マネー・ショート 華麗なる大逆転 THE BIG SHORT
監督:アダム・マッケイ、出演:クリスチャン・ベイル、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット、マリサ・トメイ☆2005年。金融トレーダーのマイケルは、不動産抵当証券に信用力が低いはずのサブプライム・ローンが組み込まれていることに気づき、破綻は時間の問題だと見抜く。同じ頃、若き銀行家ジャレッドやヘッジファンド・マネージャーのマークもまた、バブル崩壊を予想していた。
 サブプライムローンの破綻のからくりに興味はあったのだが、金融用語が多すぎて何だかよくわからず…。バブルはいずれ終わるってこと、みんなが知識として知ってはいるんだけど、それがいつ頃来るのかの予想は難しい。だから投資に失敗してしまう。欲深く、楽観的で愚かな人間のサガ…。10年前にブラジルに住んでいたころ、日本のバブル期と同じだと感じていたはずなのに、ブラジル投信を買ってしまっている自分の愚かだ、と深く反省いたしました…。2016.12

ミニー・ゲッツの秘密 THE DIARY OF A TEENAGE GIRL
監督:マリエル・ヘラー、出演:ベル・パウリー、アレキサンダー・スカルスガルド出演☆70年代、10代の女の子が母親の恋人に恋をして、バージンを捧げたことをきっかけに性の虜になっていく青春ドラマ。少女役が体当たり演技。性の虜を明るいテイストで仕上げているのが今風でした。2016.11

リリーのすべて THE DANISH GIRL
監督: トム・フーパー、出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィカンダー出演☆1926年のコペンハーゲン。風景画家のアイナー・ヴェイナーは肖像画家の妻ゲルダに頼まれて、女性モデルの代役を引き受けたことをきっかけに、自分の内なる性に目覚める。リリーと名乗り女装を始めたアイナーは、次第にアイナーを抹殺し、リリーとして生きたいと思い始める。
20年代にあった実話、というのが驚きだった。時代が時代だけに、さぞつらかったことでしょう。妻も辛い、けど本人はもっと辛い…。命を懸けて性転換手術に挑んだリリーの人生を掘り起こしてくれた監督にアッパレです。2016.12

ルーム Room
レニー・アブラハムソン監督、ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ、ジョーン・アレン、ショーン・ブリジャース、ウィリアム・H・メイシー、トム・マッカムス出演☆5歳の誕生日を迎えたジャックは、天窓しかないルームに母親と閉じ込められている。2人はある男に監禁されていた。母親は真実を明かす決断をし脱出のためにジャックに芝居をうたせる。
母と息子の健気さと二人の演技の上手さで、結末はわかっていてもハラハラ、ウルウルでした。監禁からの脱出劇よりも、解放後の二人の関係性の物語のほうがリアルで丁寧に描かれていたのも好感が持てた。大事な大事なかわいい息子は、監禁された7年の間に生まれた子供…。実父の拒否反応がリアルで胸が痛くなりました。これから先、ジャックが物心ついた時に、また難関が待ち受けているんだろうなあ。強姦されて子供が出来た人の悲劇は一生消えない。でも子供に罪はない。想像しただけで辛いです…。2016.12


ブラックハット BLACKHAT
マイケル・マン監督、クリス・ヘムズワース、タン・ウェイ、ヴィオラ・デイヴィス、ワン・リーホン出演☆サイバー・テロリストによって香港の原子炉やアメリカの金融市場が深刻な被害を被る。米国と香港の共同捜査チームは、ハッキングの罪で服役している天才プログラマー、ハサウェイをチームに加える。
ネットでつながった時代の犯罪は、国境や人種を超え、世界のどこでも攻撃できる恐ろしさをもっている。そんな社会への警笛として捉えると社会派犯罪ものとしてはよくできた作品だと思った。一方で、細かいところにB級感もあり。敵が香港・ロシア・コロンビアの犯罪集団とか、ハッキングの小道具がUSBメモリーとか。古すぎだよっと突っ込み入れたくなりました。チャイナの兄妹が魅力的。「ラスト、コーション」の主役だったと思い出し、再見したくなりました。2016.11

大唐玄奘 Xuan Zang
フォ・ジェンチイ監督、ホァン・シャオミン、シュー・ジェン出演☆「西遊記」の三蔵法師のモデルとして知られる玄奘法師は、インドから唐へ経を持ち帰るため、長く厳しい旅にでる。シルクロードの厳しい自然に対峙した三蔵法師の苦しみが延々続くのかと思ったら、インドについてからの話もけっこう長くて、飽きてしまった。
主演のシャオミンは正統派二枚目で人気があるのも納得。『山の郵便配達』が好きな映画なので期待したがテレビドラマっぽい筋立てでちょっと期待外れ。2016.10 東京国際映画祭にて

THE OLIVE TREE El Olivo
イシアル・ボジャイン監督、アナ・カスティージョ、ハビエル・グティエレス、ペップ・アンブロス出演☆20歳のアルマは村の養鶏場で働いている。12年前、庭にあった樹齢2千年のオリーブの大木を、アルマの父親がわずかな金のために売り飛ばしたことをきっかけに、祖父は心を閉ざし、話すことも食べることもやめてしまっていた。祖父の切なる願いを感じ取ったアルマは、オリーブの木を取り戻そうとする。実話がもとになっているとのこと。奇跡が起こらないエンディングは私好み。エンディングを進言した監督&脚本家の娘さんにブラボーです。2016.10 ラテンビート映画祭にて

シング・ストリート 未来へのうた SING STREET
ジョン・カーニー監督、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、ルーシー・ボーイントン、マリア・ドイル・ケネディ出演☆1985年、大不況にあえぐアイルランドの首都ダブリン。父親の失業で公立学校へ転校した14歳のコナーは、自称モデルの美女ラフィーナに一目惚れ。“僕のバンドのビデオに出てくれ”と言ってしまい、慌ててメンバーを集め始める。
かわいい青春映画。80年代を忠実に再現していて笑っちゃいました。音楽もとってもよかったです。2016.8

ジャニス:リトル・ガール・ブルー JANIS: LITTLE GIRL BLUE
エイミー・J・バーグ監督、ジャニス・ジョプリン、クリス・クリストファーソン出演☆1970年10月4日、わずか27歳の若さでこの世を去った伝説の女性シンガー、ジャニス・ジョプリンの生涯と知られざる素顔に迫る音楽ドキュメンタリー。
ドキュメンタリーとしてはそれほど琴線に触れる出来ではなかったが、久しぶりにジャニスの歌声を聴けただけで満足。

ジャクソン・ハイツ In Jackson Heights
フレデリック・ワイズマン監督☆米国ニューヨークのクイーンズに位置するジャクソン・ハイツ地区は、中南米や南アジアからの移民が多く暮らす人種の坩堝だ。人々は母国の言語や文化を大切にしながら独自のコミュニティを形成している。またジャクソン・ハイツ地区には、移民だけでなくセクシャル・マイノリティの人々も多く暮らし、様々な活動を行っている。教会やモスク、コインランドリー、クラブなどに集うマイノリティの日常をやさしい視点でとらえたドキュメンタリー大作。ジャクソンハイツのことを知らなかったので興味を持てた。彼らはトランプ大統領誕生に心を痛めているんだろうなあ。米国の少数派にエールを送りたい。2016.10 ラテンビート映画祭にて

スモーク・アンド・ミラーズ El hombre de las mil caras
アルベルト・ロドリゲス監督、エドゥアルド・フェルナンデス、カルロス・サントス、ホセ・コロナド出演☆かつてスペイン政府管轄の秘密組織に属し、テロリストの捜査に当たっていた元スパイのフランシスコ・パエサは、政府の裏切りにより国外での生活を余儀なくされていた。やっとスペインに戻ってきたパエサの元へ、治安警察所長だったルイス・ロルダンが大金を手に現れ、驚くべき依頼をする…。
これが実話というから驚き。からくりがよくつかめなかったので、もう一度ぐらい見てみたい。2016.10 ラテンビート映画祭にて

ソレダケ / that's it
石井岳龍監督、染谷将太、水野絵梨奈、渋川清彦、村上淳、綾野剛出演☆戸籍を奪われ、アンダーグランドでしか生きる術のない大黒は裏社会のカネを盗み激しい拷問を受ける。
ロック映画の原点、ここにあり!って感じ。拷問シーンは痛いけど、嫌いじゃない世界。染谷と綾野の対決シーンはグッときた。2016.8

ドリーム ホーム 99%を操る男たち 99 HOMES
ラミン・バーラニ監督、アンドリュー・ガーフィールド、マイケル・シャノン、ローラ・ダーン出演☆デニスは不況で職を失い自宅を差し押さえられてしまう。冷酷に立ち退きを迫って富を得てきた不動産ブローカーのカーバーは、デニスを自分の片腕として雇いはじめる。サプライム・ローン問題を不動産屋側から描いた社会派ドラマ。人から恨みを買うことで富を得るストレスに少なからず同情。マシンにならなきゃやってられないなあ。マイケル・シャノンは存在感抜群。いい役者です。2016.9

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 TRUMBO
ジェイ・ローチ監督、ブライアン・クランストン出演☆ハリウッドの売れっ子脚本家ダルトン・トランボは、赤狩りの的になり、収監される。仕事を失ったトランボは家族を養っていくために、「ローマの休日」やB級映画の脚本を偽名で書くようになる。まったく知らなかった事実なので興味深かった。エクストン、うまいよなあ。自粛とか圧力とか、表現者にはつきものだけど、屈することなく続ける人を尊敬します。2016.9

ブリッジ・オブ・スパイ BRIDGE OF SPIES
スティーヴン・スピルバーグ監督、イーサン・コーエン,ジョエル・コーエン脚本、トム・ハンクス、マーク・ライランス出演☆米ソ冷戦下の1957年、ニューヨーク。ルドルフ・アベルという男がソ連のスパイ容疑で逮捕される。国選弁護人として彼の弁護を引き受けたジェームズ・ドノヴァンは、捕虜となったアメリカ人パイロットのパワーズとアベルとの交換のためにベルリンへ向かう。
実話、ということ。冷戦下の水面下の闘いは見応えあり。この弁護士の経歴をみたら、キューバとの冷戦時代に捕虜となった米国人の奪還にも一役かったとのこと。続編あり、と見ました。2016.9

ラブ&ピース
園子温監督、長谷川博己、麻生久美子出演☆虐めにあっていたサラリーマンが、ひょんなことからスターになる物語。亀の怪物が出てきたり、なんでもあり、の奇天烈映画。この世界、はまるかはまらないかはあなた次第。私はまったくはまれず。2016.9

わたしはマララ HE NAMED ME MALALA
デイヴィス・グッゲンハイム監督、マララ・ユスフザイ出演☆女子にも教育をと訴え2012年にタリバンに頭部を銃撃されるも奇跡的に一命を取りとめた15歳の少女マララ・ユスフザイ。やがて回復した彼女は暴力に屈することなく再び立ち上がり、女子教育の必要性を訴え世界各地で精力的に活動を続け、2014年には史上最年少でノーベル平和賞を受賞する。
立派すぎて実話とは思えないんだけど、彼女のお父さんも信念の人なんだよね。自由な社会をもっとかみしめて大事にしなきゃ、と思いました。2016.9

アメリカン・ドリーマー 理想の代償 A MOST VIOLENT YEAR
J・C・チャンダー監督、オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステイン、デヴィッド・オイェロウォ、アルバート・ブルックス出演☆1981年のニューヨーク。オイル会社を起業して成功した移民のアベルは事業拡大のために土地の購入を決意。しかしオイルタンクローリーが襲われる嫌がらせが多発する。
業界内のカルテルや潰し合いがからんだ陰湿な話。アイザックとジェシカというお気に入り俳優が出ていたので見てみたが、背景が複雑でわかりにくかった。タンクローリーの運転手の悲惨な末路が悲しすぎる。アメリカでの成功を夢見てやってきたのであろう移民の現実がリアルに伝わってきた。2016.6

アリスのままで STILL ALICE
リチャード・グラツァー監督、ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン、 クリステン・スチュワート出演☆充実した日々を送る50歳の大学教授アリスは若年性アルツハイマー病と宣告される。遺伝性で子どもたちにも発症のリスクがあると分かった。子どもたちにも動揺が広がる中、病気は徐々に進行しはじめる。
記憶を失っていく過程がリアルで怖くなったが、人間誰でも死ぬ前には同じようになるのだから受け入れなければなりませんよね…。ジュリアンの演技、素晴らしかったです。2016.8

紙の月
吉田大八監督、宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、小林聡美、田辺誠一出演☆エリート会社員の夫と2人暮らしの主婦梨花は、銀行の営業レディとして顧客の信頼を得るが、ある日、顧客の甥・光太から声を掛けられたことで転落の人生を歩み始める。
ドラマで先に見てしまったので、新鮮味もなく…。主婦の憂鬱を描いた作品。だんだんこの手の作品が受け入れられなくなっている自分がちょっぴりみじめ…。2016.7

ビッグ・アイズ BIG EYES 
ティム・バートン監督、エイミー・アダムス、クリストフ・ヴァルツ、ダニー・ヒューストン出演
☆1958年。マーガレットは、幼い娘ジェーンを連れて家を飛び出し似顔絵描きのバイトで生計を立てはじめる。ある日、口の達者なウォルター・キーンと出会い彼に口説かれ結婚するが、ウォルターは、マーガレットの描く瞳の大きな子どもの絵を自分の絵と偽り売り出す。
夫のいいなりになって絵を描き続けるマーガレットが不憫で不憫で…。それだけにハワイに逃げてからの反撃はスカッと気持ちよかったです。エイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツ、二人の俳優の演技が素晴らしかった!2016.7

ミスター・ダイナマイト:ファンクの帝王ジェームス・ブラウン
MR. DYNAMITE: THE RISE OF JAMES BROWN
アレックス・ギブニー監督、ジェームス・ブラウン出演☆ジェームス・ブラウンの波瀾万丈の人生を追った音楽ドキュメンタリー。活動家やビジネスマンとしての顔などにも焦点を当てている。アリとは逆で、英雄というより黒人版トランプみたいなところもあったようで…。信念よりも目立つの重視。そんな、あまり尊敬されない部分もJBらしいですけどね。2016.7

ルビー・スパークス RUBY SPARKS
ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス監督、ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、アントニオ・バンデラス、アネット・ベニング出演☆天才と騒がれ若くして華々しいデビューを飾った小説家のカルヴィン。しかしその後が続かず極度のスランプ状態に。彼は、セラピストのアドバイスで理想の女の子“ルビー・スパークス”をヒロインにした小説を書き始める。すると突然、現実の世界で彼の前にルビーが現れる。
カワイイお話。夢と現実は同じにはなり得ないけど、希望のもてる結末も少女チックでした。脚本とルビー役が、エリア・カザンの孫、ということです。同じセレブのソフィア・コッポラに作風似てるかも。2016.6

おみおくりの作法 STILL LIFE
ウベルト・パゾリーニ監督、エディ・マーサン、ジョアンヌ・フロガット出演☆民生委員メイは孤独死した人の身辺整理をして最後の旅立ちを見届けている。解雇を言い渡されたメイはすぐ目の前に住んでいた老人の孤独死を知り、最後の仕事として彼の家族、友人を探しはじめる。日本でリメイクできそうな繊細な男のささやかな人生を描いている。せつないお話でした。2016.5

ゴッド・ギャンブラー レジェンド 賭城風雲
バリー・ウォン監督、チョウ・ユンファ、ニコラス・ツェー、キミー・トン、チャップマン・トー出演☆伝説のギャンブラー・ケンはマカオで友人の息子クールに弟子入りを志願される。インファナルアフェアのスタッフ&キャストにユンファが加わったので見てみたけど、おふざけエンタメに仕上がっていました。残念。2016.5

光りの墓 CEMETERY OF SPLENDOR
アピチャッポン・ウィーラセタクン監督、ジェンジラー・ポンパット・ワイドナー、
バンロップ・ロームノーイ、ジャリンパッタラー・ルアンラム出演☆タイの東北部の施設に原因不明の病気“眠り病”にかかった兵士たちが収容されていた。ボランティアのジェンは眠る男たちの魂と交信できる特殊な能力を持っていた。相変わらずのアピワールドで、なんだかようわからん映画でしたが、静寂と自然の風景は心地よく、心のリフレッシュにはなりました。2016.4

フレンチアルプスで起きたこと FORCE MAJEURE
リューベン・オストルンド監督、ヨハネス・バー・クンケ、リーサ・ローヴェン・コング出演☆フレンチアルプスにスキーにやって来たスウェーデンの一家4人はテラスで昼食をとっていた際、人工雪崩に巻き込まれる。大事には至らなかったが、その時夫トマスが一人で逃げたことに対し、妻は執拗に非難し始める。追い詰められたトマスは…。
ヨーロッパ映画にありがちな、男女のなじり合いが延々続く映画。苦手です…。2016.5

ヘイル、シーザー! HAIL, CAESAR!
コーエン兄弟監督、ジョシュ・ブローリン、ジョージ・クルーニー、オールデン・エアエンライク、レイフ・ファインズ、ジョナ・ヒル、スカーレット・ヨハンソン出演☆1950年代のハリウッド。ハリウッドの裏方エディのもとに、シーザーを演じるスター俳優ウィットロックが誘拐された、という報告が届く。一方、若いロデオ乗り俳優は、急きょクラシック映画の出演を依頼され…。50年代のハリウッドを舞台にしたシニカル・コメディ。コーエン兄弟らしい皮肉が込められた作品なのだが、日本人には理解しにくい、思想や宗教がからんだ皮肉が込められているので、入り込めず…。ユダヤ目線なのか、そうではないのか…。当時のコミュニストがソビエト万歳だったことをおちょくってる感じ?でも、それだけじゃないよね??正直、よくわかりませんでした…。2016.5

舞妓 Haaaan!!!
水田伸生監督、阿部サダヲ、堤真一、柴咲コウ出演☆サラリーマン鬼塚は熱狂的な舞妓ファン。念願の京都支社への転勤が決まり、彼女の富士子をあっさりと捨てて京都入り。
おばかはーん、的なドタバタコメディ。ちょっとついていけませんでした。

マジカル・ガール MAGICAL GIRL
カルロス・ベルムト監督、バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ出演☆余命宣告された日本のアニメ好きな娘アリシアのため、失業中の父ルイスはプレミア就きのアニメのコスチュームを手に入れようとする。ある日、心に闇を抱えた人妻バルバラから誘われたルイスは彼女を脅し大金を手に入れようとする。
アニメ好きな少女と父の物語かと思ったら、怪しげなSMの世界やら性倒錯の爺さんの話やら、いろいろ絡んできて、息つくひまもないぐらい。えーっつ?の連続でした。不思議だけどなんだかおもしろい。悲劇だけど悲惨ではない。もう一度見てみたらまた違った発見ができそう。2016.5

マーシュランド LA ISLA MNIMA
アルベルト・ロドリゲス監督、ラウール・アレバロ、ハビエル・グティエレス、アントニオ・デ・ラ・トレ出演
☆フランコ独裁政権の影響が残る1980年、スペインのアンダルシア地方“マーシュランド”で少女2人が惨殺された。刑事のフアンは、若いペドロとコンビを組み事件の捜査にあたる。事件の背後に、少女売春や薬の密売といった大人たちの闇組織が浮かびあがる。スペインでゴヤ賞独占したらしいが、いつもなんでこんなに暗いのが多いのか…。ラテンの人って普段は陽気で明るいんだけど、辛辣な救われない映画が好きみたいです。嫌いじゃないけど、警官の許されない過去まで出てきちゃうと、気持ちが沈みすぎ…。2016.5

味園ユニバース
山下敦弘監督、渋谷すばる、二階堂ふみ出演☆バンド「赤犬」のマネジャー、カスミは親が残した音楽スタジオを切り盛りしている。ある日、ライブ中にひとりの男がふらりと現われるや、マイクを奪って歌い出す。その歌声に圧倒されたカスミは、記憶喪失な男をポチ男と名付け、世話をすることに。
二階堂ふみと山下ワールドが、がっちりはまった快作。すばる君もよかったですが、やっぱり、ふみちゃんの存在感は圧巻。2016.5

緑の光線 LE RAYON VERT
エリック・ロメール監督、マリー・リヴィエール出演☆バカンスを誰と過ごすか思い悩む若い女性のリアルな姿を追った映画。
30年ぶりに見たけど、これは、当時、若いオンナだったから、感情移入できたんだなあ、と実感。今見ると、痛すぎる~。ということは、つまりはリアル過ぎて、ということなんですが。こんな映画を、当時すでにおっさん、もとい初老であったロメール監督がとってしまうことに驚き。若い女の気持ちがわかるおじいさん。モテたんだろうなあ。
これぞフランス映画、という会話中心映画なので、好き嫌いは分かれるでしょう。
この映画を見た後で、“緑の光線”を見ようとして見たことはあるけれど…、運命の人とは出会っていないんだわ、未だに。2016.5

ラブ&マーシー 終わらないメロディー LOVE & MERCY
ビル・ポーラッド監督、ジョン・キューザック、ポール・ダノ、エリザベス・バンクス、ポール・ジアマッティ出演☆1961年に弟のデニス、カールや従兄弟のマイク・ラブらとバンド、ザ・ビーチ・ボーイズを結成したブライアン・ウィルソン。陽気なサーフィン・ミュージックを生んだ天才ブライアンは、高圧的な父との関係や、精神に深刻な問題を抱えていた…。
若いブライアンと中年のブライアンを別人が演じることで、その苦悩の年月の長さが想像できた。名曲が生まれるスタジオでの録音シーンも音楽映画として見応えはあったが、この映画はそこではなく、ブライアンの心の葛藤に焦点が当たっていた。ヒット曲のある音楽家に食いつき、権利をむさぼるハイエナ男を、またまたジアマティが演じていたのが印象的。統合失調症と診断し強い薬を与えてコントロールしてたのが実話なんてひどい話。ブライアンの老後が幸せであることを願うばかりです。2016.5

龍三と七人の子分たち
北野武監督、藤竜也、近藤正臣、中尾彬、吉澤健、小野寺昭、安田顕ほか出演☆70歳になる元ヤクザの龍三は、息子家族のもとで肩身の狭い思いをしていた。龍三は昔の仲間を集め、詐欺や悪徳商法で荒稼ぎしている集団に立ち向かう。武監督、今回は遊びまくってました。藤竜也の女装まで見てしまって…。くっだらないけど笑ってしまいました。2016.5

アンジェリカの微笑み O ESTRANHO CASO DE ANGELICA
マノエル・ド・オリヴェイラ監督、リカルド・トレパ、ピラール・ロペス・デ・アジャラ出演☆若くして亡くなった美女アンジェリカの遺影を任された青年は、彼女の不思議な微笑みに心を奪われる。古典的寓話ではあるのだが、アンジェリカの映像にCGを取り入れているのが今風。オリヴェイラ監督101歳のときの作品ということ。それだけでアッパレです。2016.1

消えた声が、その名を呼ぶ THE CUT
ファティ・アキン監督、タハール・ラヒム、シモン・アブカリアン出演☆1915年、オスマン・トルコの街マルディンに住むアルメニア人の鍛冶職人のナザレットは、憲兵から連行され奴隷のように働かされる。処刑場で奇跡的に生き延びた彼は、妻と子を探すため、シリア、キューバ、そしてアメリカ大陸へと旅を続ける。
懐かしささえ覚える、ドクトル・ジバゴ風大河ドラマ。アキン監督の今までの作品のテイストとまったく違うので正直戸惑ったが、新境地という意味ではいい挑戦をだったのかもしれない。アルメニア人の虐殺という日本では馴染みの薄い負の歴史を知れたことでも見た価値があった。中東でのキリスト教対イスラム教の争いは、今も激しく、ISによる虐殺が行われている。歴史は繰り返す、というより延々にこの2大宗教は相いれないのか…。宇宙から共通の敵でも現れないかぎり終わりのない争いなのか…。絶望さえ感じた。匿ってくれたアレッポの石鹸工場。実話ではないけれど、今はどうなっているんだろう。現実を、いろいろと考えさせられる作品だった。 2016.1

ニーナ・シモン ~魂の歌 WHAT HAPPENED, MISS SIMONE?
リズ・ガーバス監督☆黒人のジャズシンガー、ニーナ・シモンの波乱の人生を追ったドキュメンタリー。クラシックのピアニストになるのが夢だった少女時代、ブラック・パンサーに傾倒し、プロテストソングを歌っていた時代、心を病みながら子供を育て、アフリカに渡った話などなど、ドラマよりもドラマチックな生きざまで見応えがあった。アカデミー賞ノミネートも納得の力作です。2016.1

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 THE IMITATION GAME
モルテン・ティルドゥム監督、ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ ジョーン・クラーク、マシュー・グード出演☆1939年。ドイツ軍の暗号機“エニグマ”の解読のためイギリス軍は数字の天才たちを集め、密かに解読チームが組織される。孤高のアラン・チューリングはクロスワードパズルの天才女性ジョーンの理解を得ながらエニグマ解読に挑む。戦時下の秘密の作戦よりもアランの心の闇の物語のほうに引き込まれた。タイトルがちょっとなあ。学生時代に出会った同級生への想い、彼との突然の別れ、そして同性愛が罪であった時代の窮屈さ…。ゲイ映画としてフューチャーしたほうがよかったのに。一人の天才青年の苦悩する姿をカンバーバッチが好演していました。2016.2

海街diary
是枝裕和監督、吉田秋生原作、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ出演☆鎌倉の古い家に暮らす幸、佳乃、千佳の香田三姉妹。父が死に腹違いの妹すずを引き取ることになった3人の生活に少しずつ変化が生まれる。女子たちの個性が丁寧に描かれていて好感はもてるのだが、若干、男監督目線の理想の女性たちではありました。すずちゃんがかわいすぎ~。是枝監督はロリコンだね、決定。2016.3

女が眠る時
ウェイン・ワン監督、ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ出演☆泣かず飛ばすの中年作家は妻に連れられ伊豆のリゾートホテルに滞在する。プールサイドで初老の男と若い女性のカップルを見かけた作家は彼らの生活を覗き見るようになる。
中年男の妄想が暴走していく様をしつこく描いている。謎の二人に取りつかれた作家を西島が好演していました。ただ、忽那が演じた若い娘と作家の妻のキャラがなあ。心がまったく読めず、完全男目線だったので少々イライラしてしまった。女を人形扱いするのは意図的なのだろうが、正直この手の映画は苦手です。2016.2

キャロル CAROL
トッド・ヘインズ監督、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ出演☆1952年。クリスマス目前のニューヨークの高級百貨店で売り子をしているテレーズは、子供への贈り物を買いにきた美しい女性キャロルに目を奪われる。キャロルの家に招かれたテレーズは、夫に罵倒されるキャロルの姿を目撃してしまう。
キャロルの優雅さにうっとり…。テレーズでなくても惹かれてしまいます。ハイスミスが別名で発表した小説が原作とのこと。まだまだ封建的だった50年代に女性同士の恋愛は描けないだろうなあ。ハイスミス自身の人生も知りたくなりました。2016.2

サンドラの週末 DEUX JOURS, UNE NUIT
ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督、マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジョーネ出演☆工場労働者のサンドラは休職から復帰しようとした矢先、会社から解雇を言い渡される。撤回してほしければ同僚16人のうち過半数がボーナスを諦めることに賛成する必要があるとい言われ、サンドラは一人一人の家を回って、自分に投票してくれるよう説得に回る。労働者それぞれの事情をサンドラとの会話だけであぶりだしていく様にブラボー!地味な映画ですが、ダルデンヌ監督らしさがにじみ出ている作品でした。ラストのサンドラの決断もかっこよかったです!2016.3

サンバ SAMBA
エリック・トレダノ監督、オマール・シー、シャルロット・ゲンズブール、タハール・ラヒム出演☆セネガルからフランスに出稼ぎに来て10年になる青年サンバはビザの更新を忘れたことで国外退去を命じられる。移民支援協会のアリスはサンバに強く惹かれるが、サンバは仕事になかなかありつけない日々が続く。アフリカ人なのに名前はサンバ。音楽もブラジル風で親友は似非ブラジル人移民。ブラジル好きとしてはブラジルの使い方が安易だなあ、とは思うけど「ブラジル人と言った方が仕事も女も見つけやすい」という北アフリカからの移民ウイルソンの言葉に真実が見えた。この展開だと現実ではサンバは強制送還だよなあ。でもエンタメ作なのでハッピーエンドにしてました。理想のエンディングに現実の厳しさも感じつつ…。2016.2

サン★ロレンツォの夜 LA NOTTE DI SAN LORENZO
パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督、オメロ・アントヌッティ、マルガリータ・ロサーノ出演☆第二次大戦末期。トスカーナ地方の村人たちはドイツ軍とファシストの虐殺から逃れるため村を脱走する。カンヌ映画祭審査員特別グランプリ受賞。近所の知り合いがファシストとなり黒いシャツを着て昔の仲間を殺す状況が、再び起こることのないよう祈るばかりです。ファシストが生まれる状況に今、近い気がして不安になった。2016.2

ストレイト・アウタ・コンプトン STRAIGHT OUTTA COMPTON
F・ゲイリー・グレイ監督、オシェア・ジャクソン・Jr、コーリー・ホーキンズ、ジェイソン・ミッチェル、ポール・ジアマッティ出演☆1986年カリフォルニア州コンプトン。暴力とドラッグが蔓延する街で、元ドラッグディーラーのイージー・EはDJのドクター・ドレー、アイス・キューブらとともにN.W.A.を結成。黒人の現実をラップにしてライブを始める。大ブレイクするN.W.A.だったが、彼らの人気を食い物にする裏方連中が現れ、メンバー間で確執が生まれる。いたってシンプルなミュージシャンの成功物語。少々長すぎの感じもしたが、ラップ創成期のミュージシャンはほとんど知らなかったので新鮮に感じた。アイス・キューブ役はアイス・キューブの息子が演じているとのこと。どうりでそっくり。音楽盛りだくさんなので劇場で見て大正解でした。2016.4

天使が消えた街 THE FACE OF AN ANGEL
マイケル・ウィンターボトム監督、ダニエル・ブリュール、ケイト・ベッキンセイル、ヴァレリオ・マスタンドレア出演☆イタリア・トスカーナ州の古都シエナでイギリス人留学生エリザベスが殺害され、ルームメイトのアメリカ人留学生ジェシカ・フラーとその恋人ら3人が逮捕された。映画監督トーマスは事件の映画化の取材を始めるが、次第に現実と妄想の挟間で苦悩し始める。社会派ウィンターボトム監督らしくない、一人の男の心の揺れに切り込んだ作品。監督自身の物語なのかも、と思わせるぐらい、妄想シーンが多かった。映画監督も大変な仕事ですよね…。2016.2

ディーパンの闘い DHEEPAN
ジャック・オーディアール監督、アントニーターサン・ジェスターサン出演☆内戦下のスリランカから逃れるため、元兵士のディーパン、若い女性ヤリニ、母を亡くした少女イラヤルは疑似家族としてフランスへ入国。麻薬組織が牛耳る怪しげな団地で、管理人として暮らしはじめる。絶えず不安感から逃れられないディーパンと、少しずつ心をひらくようになったヤリニの関係が丁寧に描かれていた。麻薬の売人とのヤリニの関係があやふやで?でしたが…。難民として逃げてきた移民たちの過酷な現実が描かれていた。日本人にとっては身近でないだけにこういうリアルな映画は貴重です。2016.3

ナイトクローラー NIGHTCRAWLER
ダン・ギルロイ監督、ジェイク・ギレンホール、レネ・ルッソ出演☆事故現場でスクープ写真を狙い、TV局に売りつける仕事を始めたルイスは、ある日、殺人事件の現場に遭遇する。スクープ合戦に躍起になるテレビ業界の裏側を鋭くえぐった作品。スクープに取りつかれ、狂ったようにエスカレートしていくルイスをギレンホールが熱演していた。016.2

127時間 127 Hours
ダニー・ボイル監督、ジェームズ・フランコ出演☆27歳の青年アーロンは慣れ親しんだブルー・ジョン・キャニオンで大きな落石に右腕を挟まれ、谷底で身動きがとれなくなってしまう。絶望感との孤独な戦いに挑んだアーロンは、抜け出す方法を懸命に模索する。水もなくなり、限界が近づいたアーロンは自分の腕の切断を決意する。
結末は知っていても、辛くて痛くて…。ほぼ一人だけの戦いを、回想や幻覚も交えながら飽きずに見せるテクニックはさすがアカデミー賞受賞監督。格闘するフランコも素敵でした。2016.3

ブラック・スキャンダル BLACK MASS
スコット・クーパー監督、ジョニー・デップ、ジョエル・エドガートン、ベネディクト・カンバーバッチ出演☆1975年、サウスボストン。アイリッシュ系ギャングのボス、ジェームズ・バルジャーは、イタリア系マフィアと激しい抗争を繰り広げていた。バルジャーは幼なじみのFBI捜査官ジョンを利用し、イタリア系マフィア潰しにかかる。
テーマも役者も一流なのに…。退屈な仕上がりでもったいない。最近の米国のマフィアものって駄作が多いのはなぜだろう。「グッロフェローズ」で終わった感あり。2016.2

FRANK -フランク-
レニー・アブラハムソン監督、ドーナル・グリーソン、マイケル・ファスベンダー、マギー・ギレンホール出演☆ミュージシャンを夢見る青年ジョンは、ひょんなことからインディ・バンド“ソロンフォルブス”のメンバーに。バンドのフロントマン、フランクは、張りぼてのマスクをかぶり続ける男だった。フランクとジョンとの関係が丁寧に描かれていた。インディーズバンドものらしいこれぞインディーといえる作品。実話というのがまた驚き。2016.3

ヘイトフル・エイト THE HATEFUL EIGHT
クエンティン・タランティーノ監督、サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、デミアン・ビチル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン出演☆南北戦争後の雪のワイオミング。賞金稼ぎのジョン・ルースと悪党のデイジー、ウォーレン、そして新任保安官クリスはミニーの店で猛吹雪をやり過ごす。その店には先約の男たちがおり…。
馬車のシーンが長すぎて飽きてしまったが後半はタランティーノ節さく裂。もっと単純な話にすればより楽しめたのになあ。クセモノぞろいの豪華キャストと、鬼女ジェニファーの、オンナを殴り捨てた体当たり演技に脱帽。アカデミー助演女優ノミネートにも納得。2016.3

暴走車 ランナウェイ・カー EL DESCONOCIDO
ダニ・デ・ラ・トレ監督、ルイス・トサル、エルビラ・ミンゲス、ゴヤ・トレド、ハビエル・グティエレス、フェルナンド・カヨ出演☆銀行支店長のカルロスは、子供たちを学校に送る車で一本の電話を受ける。「車のシートに爆弾を仕掛けた。止まると爆発する。死にたくなければ、42万ユーロ用意しろ」。追いつめられたカルロスと犯人の電話での攻防が始まる…。昔みた電話ボックスに閉じ込められた男の映画に似てるかな~。ハラハラドキドキ感は楽しめたけど犯人の動機がシンプルすぎてちょっとがっかり。もうひとひねり欲しかったです。2016.3

ビースト・オブ・ノー・ネーション BEASTS OF NO NATION
キャリー・フクナガ監督、エイブラハム・アッター、イドリス・エルバ出演☆西アフリカのある国で内戦が勃発。家族を皆殺しにされた少年は、ゲリラ集団に拾われ、野獣と化していく。人殺しを強要され、隊長の玩具にされながら、少年たちが洗脳されていく過程がリアル。フクナガ監督らしい丁寧な人間描写がフクナガ監督らしかった。Gグローブ賞でイドリス・エルバが助演男優賞ノミネートされている。2016.1

プリズナーズ PRISONERS
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール、ヴィオラ・デイヴィス、マリア・ベロ、テレンス・ハワード、ポール・ダノ出演☆ペンシルヴェニア州の田舎町でケラーの6歳になる愛娘が、隣人の娘と一緒に忽然と姿を消してしまう。警察は現場近くで目撃された怪しげなRV車に乗っていた知的障害の青年アレックスを逮捕するが、証拠不十分で釈放される。ケラーはアレックスが何かを知っていると確信し彼を拉致し監禁する。化け物の幼児誘拐モノは今までいろいろ見てきたが、被害者の父が容疑者を監禁、拷問する、という展開が新鮮だった。ハリウッドらしいエンディングには少々拍子抜けした。一番の被害者はアレックス、という仕掛けをもう少し掘り下げてほしかったなあ。アレックスを演じたポール・ダノの演技が素晴らしかったです。2016.1

炎のごとく
加藤泰監督、菅原文太、倍賞美津子、中村玉緒、若山富三郎、国広富之出演☆江戸末期。大阪の問屋の息子、仙吉は人を殺して諸国を放浪し、瞽女のおりんと知り合う。賭場で行商の仕事をしながらおりんと幸せに暮らしていたが、やくざの抗争に巻き込まれ、おりんが殺されてしまう。豪華スターの夢の競演。新選組ありやくざの仁義話あり、と盛りだくさんのエンタメ作品で楽しめた。加藤監督の遺作だそうです。2016.1

ルー・リード:ロックンロール・ハート
ティモシー・グリーンフィールド・サンダース監督、ルー・リード、パティ・スミス、デビッド・ボウイ出演☆ルーの魅力をゆかりのある人物がかたるドキュメンタリー。演奏シーン満載でCD聴きたくなりました。デビッド・ボウイもルーも逝ってしまったのよね…。時代の終焉を感じました。


エレニの帰郷 TRILOGIA II: I SKONI TOU HRONOU ★★
テオ・アンゲロプロス監督、ウィレム・デフォー、ブルーノ・ガンツ、イレーヌ・ジャコブ 、ミシェル・ピッコリ出演
☆時代に翻弄された母エレニの人生を映画にするため奔走する映画監督の男は、一方で、心を病んだ娘との関係に悩んでいた。
時代は遡り50年代。彼の母親エレニは、ギリシャ難民としてソ連の町テミルタウで暮らしていた。そこで愛するスピロスと再会。だが間もなく二人は逮捕され、別の人生を歩みはじめる。スピロスとの間に出来た息子とも引き裂かれたエレニは、イスラエル難民ヤコブと共に生き始めるが…。
多くの難民を生んだ20世紀のヨーロッパを舞台に、故郷を追われた男女のすれ違いや、支え合う姿を、独特の切り口で詩的に描いている。
現代と過去が交錯していくので、正直、見やすい映画ではないのだが、構成の複雑さを忘れさせてくれるのが、静止画のように美しい映像美。
テミルタウの町の静かな雪の風景、そこを走る列車、工場の煙突の煙…。スターリンの銅像がたくさん集められた倉庫…、破壊されたテレビの中で呆然と立ち尽くす男…等々。
スクリーンを静止画でしばらく見ていたい気持ちにさせられ、映画館はまるで極上の美術館のよう。
ドキュメンタリー作品とは真逆の、計算つくされた映像の中に、アンゲロプロス監督の揺るぎない社会批判精神が埋めこまれている。ただ美しいだけでは終わらない、怒りや激しさも兼ね備えているのがアンゲロプロス作品の魅力である。
この作品では、時代に翻弄されたエレニと彼の夫、そしてエレニを一途に想い続けたヤコブにもスポットをあてている。
イスラエルに行くのが夢だったはずのユダヤ人ヤコブが、エレニと別れるのを躊躇するシーンのブルーノ・ガンツの苦悩顔…、忘れられません。
さらに、年老いたヤコブがエレニに「僕には帰る場所がない」と叫ぶシーン…。今思い出しただけでも言葉につまるほどの迫真の演技で、心を鷲づかみにされました。
ブルーノ・ガンツ、あらためてすごい俳優です。
アンゲロプロス監督の新作をもう二度とスクリーンで見ることができないのは、残念でならないが、彼の作品は、何度みても飽きがこないと確信した。ぜひ、映画館で何度でもリバイバル特集をしてほしい。2014.2

孤独な天使たち IO E TE ★★
ベルナルド・ベルトルッチ監督、ヤコポ・オルモ・アンティノーリ、テア・ファルコ、ソニア・ベルガマスコ出演
☆うちにこもりがちな14歳のロレンツォは、スキー合宿に行くと偽り、家のアパートの地下室に隠れて過ごすことにする。母親の干渉から逃れ、自由な生活を謳歌していたところに、酔った異母姉オリヴィアが転がり込む。
奔放な姉は、ロレンツオの生活を引っかきまわしたあげく、麻薬中毒から抜けるため、激しい嘔吐を繰り返す。
引きこもりがちな少年の小さな冒険の最中に現れた姉。姉とは言いながらも、一緒に暮らしたこともい彼女との暮らしの中で、姉の孤独感や父をとられた寂しさをな感じとり、少しだけ大人に成長する。シンプルな青春映画なのだが、自分の10代を思い出し、胸がキュンキュンしてしまい…、極めつけは、大好きなスペース・オデティでのダンス。去年みたスペイン映画でも同じようなシーンがあったが、印象はまったく違って、こちらは、涙こぼれそうでした。今年劇場でみた映画ではナンバー1の胸キュン。車いすでベルトリッチ監督はこの映画を撮ったそうですが、傑作です。昔の大きな映画とはもちろん比べ物にならないけれど、小さな映画でも手を抜かないベルトリッチ。やっぱり、偉大なる監督です。2013.8

ゼロ・グラビティ GRAVITY★★
アルフォンソ・キュアロン監督、サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー出演
☆女性エンジニアのストーン博士は、ベテラン宇宙飛行士コワルスキーのサポートを受けながら船外での修理作業に当たっていた。その時、ロシアが自国の衛星を爆破したことが原因で大量の破片が軌道上に散乱し、猛烈なスピードでスペースシャトルを襲う。衝撃で漆黒の宇宙へと放り出された2人は互いを繋ぐ1本のロープを頼りに、絶望的な状況の中、奇跡の帰還を信じて決死のサバイバルを繰り広げるが…。
3D映画に今まで感動したことがなかった私が、はじめて“3Dって楽しい”と思えた歴史的作品である。最初から最後まで、自分自身が無重力空間にいるような錯覚に陥り、ストーン博士の生死をかけたチャレンジを共有できた。映画、というよりはアトラクションのような感覚。キュアロン監督の代表作になることは間違いなし! 2013.12

ダラス・バイヤーズクラブ DALLAS BUYERS CLUB ★★
ジャン=マルク・ヴァレ監督、マシュー・マコノヒー、ジャレッド・レトー、ジェニファー・ガーナー出演
☆1985年のテキサス州ダラス。マッチョなロディオ・カウボーイ、ロンは、突然医者からエイズで余命30日と宣告される。治療薬を探し回り、米国では認可されていない薬を求めてメキシコへと向かったロンは、大量の代替治療薬を購入。自分のためだけでなく、多くのエイズ患者のために非合法会員組織“ダラス・バイヤーズクラブ”を立ち上げる。
エイズ感染者が死を迎えるまでを描いたお涙頂戴の悲劇なのかと思ったら、いい意味で期待外れ。
余命30日の宣告を受けた瀕死の男が、生き抜くために、エイズにきく薬を求めて世界中を飛び回り、会員制の無認可薬販売業を初めてしまう、というアメリカンドリーム的な展開に、みるみる引き込まれてしまった。
ただの顔だけ俳優かと思っていたマコノヒーの迫真の演技には脱帽。そして、オネエのビジネスパートナーを演じたジャレッド・レトーの可愛らしさにもアッパレ。しぐさが自然で抱きしめたくなっちゃうような魅力あり。
ペプチドTとビタミンがエイズの進行を抑えるなんて、まったく知らなかったので、薬についてもかなり勉強になった。
医者や製薬会社のモルモットになるのはゴメンだ。FDAが牛耳る米国製薬業界の裏側もちらちら見えてきて社会派映画としても見応えがあった。2014.3


The Wolfpack
監督:クリスタル・モーゼル/出演:アングロ兄弟☆アングロ兄弟は、エキセントリックな父に外出を禁じられ、子供のころからNYのロウアー・イーストサイドのアパートの部屋に閉じこもって暮らしている。兄弟の唯一の娯楽は映画。自らをWolfpackと呼び、『バットマン』『レザボア・ドッグス』等のパロディー映画を手作りで製作していた。ある日、兄弟の一人が部屋からの脱出に成功したことで、彼らの生活が変わり始める。
子供をたくさん作って閉じ込める父の心理は、新興宗教の教祖に近いものを感じた。父の勢力が弱くなったことで、彼らが自由をつかみにいけてよかったです。一歩間違えば、一家総心中なんてこともあったかもしれないのに…。日本でもこういう家族、いるんだろうなあ。2015.10 LBFFにて

バルセロナ3D 炎のバラ Barcelona la rosa de fuego
監督:マヌエル・ウエルガ/声の出演:菊池凛子☆世界的な観光都市バルセロナの街並みや市場、墓地、祭り、働く人々の姿など、観光名所だけでは知り得ない日常の暮らしと、街そのものが醸し出す魅力に迫ったドキュメンタリー。
カメラがグルグル動く3Dは苦手です…。バルセロナには行ってみたくなったけどね。2015.10 LBFFにて

Closed Rooms(英題) Habitaciones cerradas
監督:ルイス・マリア・グエル/出演:アドリア-ナ・ウガルテ、アレックス・ガルシア、ベア・セグーラ☆著名な画家アマデオ・ラックスの孫娘ビオレタは祖父が暮らした古い邸宅の隠された部屋で女性の遺体を発見する。スペイン社会の背景がもう少しわかれば楽しめた気はしますが。実話かと思ったけど違うようです。殺したと思いこんだ弟の行方が気になってしまった。2015.10 LBFFにて

Paco de Lucia: A Journey(英題)Paco de Lucia: La Busqueda
監督:フランシスコ・サンチェス・バレラ/出演:パコ・デ・ルシア☆史上最高のフラメンコギター奏者パコ・デ・ルシアは、2014年に66歳の若さで亡くなった。息子であるフランシスコ・サンチェス・バレラ監督が、父であり偉大なる音楽家パコ・デ・ルシアの音楽への飽くなき情熱と探求心にスポットをあてながら、貴重なライブ映像、晩年のインタビュー、幼いころの写真等を交えて、彼の人生をひも解いてゆく。
パコで超絶テクニック、JAZZ時代にとくに関心あり。フラメンコの世界だけに留まらなかったことでバッシングも受けたみたいですが、だからこそ世界に知れたんだし。奥の深さを感じました。2015.10 LBFFにて

グラン・ノーチェ!最高の大晦日 Mi Gran Noche 
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア/出演:ラファエル、ペポン・ニエト、カロリーナ・バング☆失業中のホセは大晦日の番組収録のエキストラの仕事を紹介され、正装してスタジオへ。そこは不眠不休で楽しむことを強いられた人間たちがひしめき合う大宴会場だった。一方、舞台裏では大物歌手アルフォンソがトラブルに巻き込まれ…。スタジオに閉じ込められたクセ者たちの大晦日の狂乱をブラックに描いた人生狂騒曲。ドタバタ感がドリフのノリで楽しめました~。ラファエルの歌も昭和歌謡チックで懐かしさがプンプン。国は違えど流行り歌って共通点あるのですね。2015.10 LBFFにて

クッキング・アップ・ア・トリビュート Cooking Up a Tribute
監督:アンドレア・ゴメス、ルイス・ゴンサレス/出演:ジョアン・ロカ、ジョセップ・ロカ、ジョルディ・ロカ☆世界有数のレストラン「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」のシェフであるロカ兄弟とスタッフは、5週間もの間レストランを休業し、世界各国の食文化を学ぶ旅に出かける。彼らは、世界の伝統的料理や食材に敬意を払いながら数々の新しいメニューを生み出していく。市場にならぶカラフルな食材を見るのは好きなんだけど、料理の映像は飽きちゃうのよねえ。2015.10 LBFFにて

ジミー、野を駆ける伝説 JIMMY'S HALL
ケン・ローチ監督、バリー・ウォード、シモーヌ・カービー出演☆1932年のアイルランド。元活動家のジミーが10年ぶりに祖国の故郷へと戻ってきた。穏やかに暮らすことを望んだが、村の若者たちから閉鎖されたホール(集会所)を再開してほしいと懇願される。コミュニストとカソリックの確執は、日本人にはピンと来ないのだが、ヨーロッパでは根深いことはうかがえる。カソリックの神父やシスターが悪者になる映画が多いし。
ローチ監督らしい真摯な作品で見やすかったです。実在の人物とのこと。殺されなかったのがせめてもの救い。2015.12

ダイナマイトどんどん
岡本喜八監督、火野葦平原作、
菅原文太、宮下順子、北大路欣也、嵐寛寿郎、金子信雄、岸田森出演☆
昭和25年、北九州一円では昔かたぎの岡源組と新興の橋伝組の抗争が激化し一触即発の状態となった。抗争を民主的に解決するために野球大会が始まった。
文太さんの軽いノリと欣也さんの二枚目ぶりが際立つエンタメ作品。岡本作品らしい躍動感も楽しめました。2015.12

博士と彼女のセオリー THE THEORY OF EVERYTHING
ジェームズ・マーシュ監督、エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ出演☆
1963年、ケンブリッジ大学大学院で理論物理学を研究する天才学生スティーヴン・ホーキング。彼はジェーンと恋に落ちるが、ALSと診断され、余命2年を宣告される。だが、ジェーンはひるむことなくスティーヴンと結婚。結婚2年目には長男のロバートも誕生。余命を越えて生き続けるスティーヴンは世界的研究者としての地位を確立していく。
 身障者の感動秘話ものって正直苦手なので、触手が伸びなかったのだが、試しに見てみたら、意外や意外、美談にとどめない夫婦の物語に仕上がっていて好感が持てた。夫の看病と子育てに追われる妻の不倫と、それを傍観する夫。どちらの気持ちも丁寧に描かれていた。エディ君はさすがの演技。不倫してしまう妻の気持ちもわかるなあ。夫婦の愛は永遠じゃないってことは、半世紀生きると結婚せずとも痛感しているので。2015.12

FOUJITA
小栗康平監督、オダギリジョー、中谷美紀、加瀬亮、りりィ出演☆1920年代、パリ。日本人画家フジタは、“乳白色の肌”と評された裸婦の絵が評判となりエコール・ド・パリを代表する時代の寵児となる。夜ごとの宴会で自由を謳歌するが、第二次大戦勃発で帰国。
パリでの狂乱から一転し、軍に協力して数多くの戦争画を描きはじめる。
 小栗監督らしいゆったりとしたテンポのアート作品で、あたらしいオダギリジョーが見られた。狂乱のパリと民話の世界の日本の対比が興味深かった。何を言いたいのか、正直わからない部分もあるが、それもふくめてアート。アーチスト藤田を描くのにふさわしい作品だ。もう一度、時間がたったあと見てみたい。2015.12

眠る男
小栗康平監督、安聖基、クリスティン・ハキム、役所広司出演☆温泉の湧く山間の町の農家に、山から転落して以来、意識不明のまま眠りつづける男・拓次がいる。同級生の上村は言葉を返すことのない拓次に語りかける……。
眠る男との思い出をそれぞれ村人が語る、藪の中形式かと思ったらそうでもなく、眠る男とは別の日常を淡々と描きながら、眠る男との関係を少しずつ披露していく物語だった。不思議な映画だ…。というのが正直な感想。2015.11


悪童日記 A NAGY FUZET
ヤーノシュ・サース監督、アンドラーシュ・ジェーマント、ラースロー・ジェーマント、ピロシュカ・モルナール出演
☆第2次大戦末期。ブダペストに暮らす双子の兄弟は、両親のもとを離れ、田舎にある祖母の農園に疎開する。“魔女”と呼ばれる祖母との生活で強さを身に着けた双子は、迎えに来た母を拒絶する。
東欧の寒村の風景と、双子の少年の凛とした瞳、そして不健康に太った強欲な祖母。原作のファンだったが、原作のトーンがぴったり映像にはまっていてうれしくなった。また、原作を読み返してみようと思った。祖母を演じた役者の存在感にはあっぱれです。2014.9

悪人
李相日監督、妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、樹木希林、柄本明出演
☆土木作業員の祐一は、出会い系サイトで知り合った佳乃にバカにされ、殺害してしまう。祐一は紳士服量販店に勤める孤独な女と逃避行の旅へ出る。
小説を読んだものの、今一つ男目線なのが気になって、映画も見る気になれなかったのだが、意外や意外、映画は孤独な女の目線で描かれていて、共感できた。さすが李監督。深津絵里の演技が光っていました。2014.11

アップサイドダウン 重力の恋人 UPSIDE DOWN
フアン・ソラナス監督、キルステン・ダンスト、ジム・スタージェス、ティモシー・スポール出演
☆天と地、逆方向の二つの重力が存在する世界で、若い男女アダムとエデンは恋をする。許されぬ恋の果てに引き裂かれた二人は、10年後、再び再会。しかしエデンは記憶を失っていた。アダムはエデンの働く巨大企業“トランスワールド社”の社員となり、危険な上の世界への潜入を試みるが…。
重力が二つある世界、という発想がまずユニーク。複雑なSF世界の映像もテクニカルで、この映画はやっぱりスクリーンで見るべきだったと大反省。
偉大なる父フェルナンド・ソラナスの映画「ラテンアメリカ/光と影の詩」では、人々が後ろ方向に動く、というシーンが出てくるが、この映画の発想の原点を感じた。
支配する側で生きる女性に会うために、重力の違いを乗り越えようとする健気なアダムがかわいくて胸打たれました。二人の恋物語はごくごくシンプルな展開なのだが、アダムが皺とりクリームの開発者、という設定は、「未来世紀ブラジル」に出てくる整形ババアを思い出させるものあり。いろんな名作から影響を受けているのでしょう。今後の作品にも期待大。2014.3

アンダー・ザ・スキン 種の捕食 UNDER THE SKIN
ジョナサン・グレイザー監督、スカーレット・ヨハンソン、ポール・ブラニガン出演
☆スコットランドで謎の美女が出現。バンを運転し次々と男に声を掛け、誘いに乗った男たちが姿を消しはじめる。彼女の正体は、宇宙からやって来た謎の生命体だった。
70年代のSFテイストの作品。懐かしさも覚えました。男たちを食い物にする宇宙人役、スカーレットにぴったり。あの女になら食われても本望では?すごい女優です。2015.9

オールドボーイ Old Boy
スパイク・リー監督、ジョシュ・ブローリン、エリザベス・オルセン、シャールト・コプリー、サミュエル・L・ジャクソン出演
☆1993年10月。泥酔したジョー・デュセットが目を覚ますと、見知らぬ部屋に監禁されていた。ニュースで彼は、妻が殺害され、自分が容疑者にされたこと、幼い娘ミナが養子に出されていることを知る。20年の歳月が流れるが…。韓国版とほぼ同じ展開。スパイク・リーらしさも感じられず、ちょっと残念。でも、韓国版をずいぶん忘れていたので、新鮮な気持ちで見れました。2015.9

ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して JIMMY P.
アルノー・デプレシャン監督、ベニチオ・デル・トロ、マチュー・アマルリック出演
☆1948年。アメリカ・インディアンのジミーは、大戦から帰還後、原因不明の頭痛に悩まされる。フランス人精神分析医のジョルジュは、彼の治療を始める。
実在する精神科医が書いた記録の映画化。医学書風で少々難しかったですが、デルトロがインディアン役を好演してました。2015.9

ショート・ターム SHORT TERM 12
デスティン・ダニエル・クレットン監督、ブリー・ラーソン、ジョン・ギャラガー・Jr出演
☆「ショートターム」は家族の虐待などから避難してきた10代の少年少女たちを一時的に預かる短期保護施設。ケアマネージャーのグレイスは、同僚メイソンと同棲中だが、結婚に踏み切れずにいる。グレイスは少女のころ受けた父からの性的虐待のトラウマから逃れられずにいた。新しく入所した少女ジェイデンからも同じ闇を感じたグレイスは、彼女を救おうとする。
繊細な少年少女たちの描き方が自然で、辛いテーマではあるのだが、気持ちがやさしくなれました。とってもいい映画。2015.9

誰よりも狙われた男 A MOST WANTED MAN
アントン・コルベイン監督、フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォー、ロビン・ライト、グリゴリー・ドブリギン出演
☆ハンブルクにやってきたテロ対策チームのバッハマンは、チェチェン人青年イッサ密入国を知り、彼を追い始める。政治亡命を希望するイッサは女性弁護士アナベルに助けを求める。
地味だけど本格的なスパイもので見応えあり。シーモア・ホフマンの遺作。惜しい人を亡くした…。2015.9

共喰い
青山真治監督、菅田将暉、木下美咲、篠原友希子、光石研、田中裕子出演
☆昭和63年の下関市。父とその愛人・琴子と暮らす17歳の遠馬は、実の母・仁子の営む魚屋で時間をつぶしたり、彼女と寺で逢引をする夏を過ごしていた。琴子の妊娠を知った遠馬は、彼女を無理やり犯そうとしてしまう。
父と同じ忌まわしき暴力の血と葛藤する青年を菅田君が熱演。胸くそ悪くなる話ではあるが、母親役の田中裕子も存在感があり、見応えありました。2015.9

日本のいちばん長い日
岡本喜八監督、笠智衆、山村聡、三船敏郎、志村喬、高橋悦史、藤田進出演
☆日本の敗戦が決定的となった昭和二十年八月、特別御前会議でポツダム宣言の受諾が正式に決定した。だが終戦に反対する陸軍将校たちはクーデターを計画、一方、終戦処理を進める政府は天皇陛下による玉音放送を閣議決定する。長い映画でしたが、首相、陸軍大臣、将校たち、それぞれの立場から終戦を描いているので、飽きずに見ることができた。重いテーマでありながら、岡本監督らしい躍動感やコミカルさも感じられ見やすかった。現代版は見る気にならないけど、この映画は映画館で見る価値のある作品。2015.8

フランシス・ハ FRANCES HA
ノア・バームバック監督、グレタ・ガーウィグ、ミッキー・サムナー、アダム・ドライバー出演
☆ブルックリンで暮らすダンサーの卵フランシス。親友のソフィーとルームシェアをして楽しく毎日を送っていたが、ダンサーとしての行き詰まりを痛感し、ソフィーは家を出ていき…。男にもてない女のキャラは世界共通。フランシスの愚直な言動は自分と通じる部分もあり、かなり感情移入してしまった。でもフランシス大好きです。2015.8

マッドマックス Madmax
ジョージ・ミラー監督、メル・ギブソン、ヒュー・キース=バーン出演
☆数十年ぶりにスクリーンで鑑賞。妻を殺されるシーンとその後の復讐しか覚えてなかったけど、同僚との友情や、家族を連れて逃げるくだりもあったのですね。メル様のブルーアイズにうっとり。2015.11

マッドマックス 怒りのデス・ロード MAD MAX: FURY ROAD
ジョージ・ミラー監督、トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース=バーン出演
☆元警官マックスは、資源を独占し、一帯を支配する独裁者イモータン・ジョー率いるカルト的戦闘軍団に捕まり、彼らの“輸血袋”として利用される。女戦士フュリオサは、ジョーの5人の妻を助け出し、逃亡を企てる。
いきなりのド迫力にしっかり心を鷲づかみされました。世界観はマッドマックス2ですね。こちらも好きな作品だったのでうれしいです。
ジョージ・ミラー監督もかなり高齢だろうに、すごいなあ。オーストラリア映画界はホント実力派が多いですね。悪人役がパート1と同じ役者というのがすごいよなあ。メル様もカメオ出演してほしかったです。2015.11

ミッドナイト・ガイズ  STAND UP GUYS
フィッシャー・スティーヴンス監督、アル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン、 アラン・アーキン、ジュリアナ・マルグリーズ出演
☆28年間服役したギャングのヴァル。出所した彼は、元仲間ドクとともにハメを外して楽しむが、ドクは彼らのボスから翌朝10時までにヴァルを始末するよう命じられていた。もう一人の仲間ハーシュは不治の病にあったが…。ベタベタなアメリカンコメディだが、役者陣が豪華で、それぞれ味のある演技だったので、十二分に楽しめました。2015.8

赤線地帯
溝口健二監督、京マチ子、若尾文子、木暮実千代、三益愛子、沢村貞子出演
☆売春禁止法案のニュースが話題の時代、「夢の里」の女たちは、それぞれの事情を抱えながら客を取る。結核の夫と乳飲み子のために体を売る中年女、息子が会いに来ても会えない女、客をだまし金をため込むしっかり者等々、女たちのキャラがそれぞれしっかりあり、女優陣もまた豪華。京マチ子が若くてムチムチしていたのも新鮮でした。溝口監督の遺作ということ。飽きさせない脚本で、面白かったです。2015.6

I'M FLASH!
豊田利晃監督、藤原竜也、松田龍平、水原希子、仲野茂、永山絢斗、大楠道代出演☆宗教団体の若き三代目教祖、吉野ルイは、流美という謎の女とドライブ中に事故にあう。流美は意識不明の重体になるが、ルイの母と姉が事故をもみ消し、ルイは3人のボディガードとともに南の島に身を隠す。
音楽とキャストに惹かれて見てみたが、ハードボイルドものなのか、社会派なのか、どっちつかず感あり。ボディーガードからの視点に絞って描けばもう少し見やすかったのかも。ただし、シナロケの名曲をチバユウスケが歌ったエンディングは最高でした!2015.4

インヒアレント・ヴァイス INHERENT VICE
ポール・トーマス・アンダーソン監督、トマス・ピンチョン原作、ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、キャサリン・ウォーターストン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ、エリック・ロバーツ出演
☆70年代のLA。私立探偵ドックの前に元カノ、シャスタが現れた。彼女は不動産王ミッキーの愛人で、ミッキーの妻とその浮気相手がミッキーを病院送りにしようと企んでいる、と聞かされる。警察と探偵と悪者が入り乱れたサスペンス風ブラック・コメディー。次々と現れる曲者たちのキャラと、ホアキンの髪型の変遷を単純に楽しんで見ていました。この手の作品にしてはちょっと長すぎ。もう少しシンプルにしてほしかったかも。ドックの天敵刑事を演じたブローリンが超ケッサク。いいキャラ出してました。うまい俳優だわ!不動産王としてチラッと出てくる渋いおっさんが、エリック・ロバーツだと知って驚き。しっかり俳優続けてるのですね。うれしいかぎり。2015.5

エリジウム
ニール・ブロムカンプ監督、マット・デイモン、ジョディ・フォスター、ワグネル・マウラ、アリース・ブラガ、ディエゴ・ルナ出演
☆2154年。地球は人口増加と環境破壊で荒廃が進み、超富裕層は、完璧な環境の宇宙基地「エリジウム」で暮らしている。地球で働くマックスは、工事現場で致死量の放射線を浴び、5日の命と診断される。エリジウムに飛び、あらゆる病気を治す医療ポッドに入って生き延びたい、と願うマックスは、富裕層を誘拐し、データを盗む賭けに出る。
ほぼ半分はスペイン語で、脇役がブラジルとメキシコ出身俳優なので、これはラテン映画とも呼べるでしょう。フォスターが以外とあっさり死んでしまったのが拍子抜けでしたが、究極の格差社会への警笛とも言える作品で好感が持てました。2015.8

オーバー・ザ・ブルースカイ THE BROKEN CIRCLE BREAKDOWN
フェリックス・ヴァン・フルーニンゲン監督、ヨハン・ヘルデンベルグ、ディディエ出演
☆アメリカのルーツ音楽ブルーグラスのバンドでバンジョーを弾くディディエは、タトゥーアーチストのエリーゼと出会い、恋に落ちる。だが二人の最愛の娘が白血病に侵されてしまう。二人の激しい愛と幼い子供の短い命…さらにはエリーゼの選択…。辛すぎるわ。不治の病映画は苦手です…。2015.6

KANO ~1931 海の向こうの甲子園~
マー・ジーシアン監督、永瀬正敏、坂井真紀、ツァオ・ヨウニン、大沢たかお出演
☆1931年、日本統治時代の台湾。それまで1勝もしたことのなかった弱小チーム嘉義農林学校野球部に、かつて名門校の監督をしていた近藤兵太郎が指導者として迎えられる。指導が実を結び、ついには台湾代表として甲子園の切符を手にする。感動の実話、とのこと。台湾人と日本人の混合チームの活躍にはウルウルしたけど、ちょっと長すぎ。予定調和感をぬぐえず。2015.11

これは映画ではない THIS IS NOT A FILM
ジャファル・パナヒ監督・出演、モジタバ・ミルタマスブ出演
☆世界的名匠パナヒは、2010年、反体制的な活動を理由にイラン当局によって拘束され、20年間の映画製作禁止と6年間の懲役という重い刑が言い渡される。自宅軟禁中のパナヒ監督が、モジタバ・ミルタマスブ監督の協力のもと、個人的なビデオを撮り始める。
最初は、少々退屈だったのだが、ゴミ集めの大学生のお兄さんが出てきたり、外で祭りの花火がなったり、閉じ込められた監督の個人的な思い以外のシーンが出てきてから、ぐっと引き込まれた。同監督は新作「タクシー」でも同じ手法でベルリンで金熊賞とってるのよね。超豪邸に住んで何も不自由なく暮らしているのに、政治的には自由がないなんて…。そういう状況が想像できないので、最初は戸惑いましたが、これがイランの現実なんでしょう。いくら欧米が経済封鎖しても、この国はへっちゃらな感じ。資源があるってすごいことですね。2015.11

シュナイダーVSバックス
アレックス・ファン・ヴァーメルダム監督・出演、トム・デウィスペラーレ、マリア・クラークマン、アネット・マレルブ出演
☆妻と子を愛するシュナイダーの裏稼業は一流ヒットマン。湖のほとりに住む子殺しのバックスを殺せ、と命じられ、現場に向かおうとするが、途中で珍客と出会い…。一方、バックスも同じ元締めから、シュナイダーを殺せ、と命じられていた。若い愛人やナーバスな娘、さらには奇天烈な父と愛人までやってきて…。家庭人の殺し屋二人に次々と降りかかる災難をコミカルに描いたエンタメ作品。単純に面白い。よくできてる。これはハリウッドがリメイクしたがる作品だわ。重い作品ばかりが続いていたので、スカッとしました。2015.10 TIFFにて

黒衣の刺客 THE ASSASSINS 
ホウ・シャオシェン監督、スー・チー、チャン・チェン、妻夫木聡出演
☆唐代の中国。女道士のもとで刺客として育てられたインニャンは、13年後、両親のもとへと返される。が、彼女に課された使命は、権力者となったかつての許婚ティエンの暗殺だった。シャオシェン監督作品というよりは、カーウアイ監督が好みそうな歴史モノなのだが、そこはシャオシェン。静寂や独特の空間の切り取り方は健在で、刺客の物語なのに、心が穏やかになれた。揺れる布の間からのぞくスーチーの姿、霧の中の風景等々、色使い等々、すべてがアートで、上質の絵画を見ている気分にさせられた。アンゲロプロス作品との共通点あり。
ひぐらしや鈴虫の虫の音や、太鼓の音など、BGMも圧巻。シャオシェン監督の芸がもう一段上がった感あり。洗練された大人のアート映画でした。スタイル抜群のスーチーの立ち居振る舞いも美しかったです。2015.10

シェフ 三ツ星フードトラック始めました CHEF
ジョン・ファヴロー監督、ジョン・ファヴロー、ソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、スカーレット・ヨハンソン、オリヴァー・プラット、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニー・Jr出演
☆LAの一流レストランで総料理長を務めるカールは、料理評論家の来店に備え、革新的な新メニューで挑もうとするが、オーナーに却下された挙げ句、評論家にも酷評されてしまう。ブチ切れて店をクビになったカールは、前妻が育てる息子を連れ、キューバ料理の移動販売を始めることに。
ラテンのノリが満載のハートフルコメディ。ツイッターでの発言失敗やユーチューブでの宣伝拡大など、SNSをキーにしているのが今風で面白い。豪華キャストにも驚きでした。物語はごくシンプルでしたけどね~。2015.9

ジャージの二人
中村義洋監督、堺雅人、鮎川誠、水野美紀、田中あさみ、ダンカン出演
☆32歳の息子は、カメラマンの父に誘われ、北軽井沢の山荘へと避暑に向かう。息子は妻に浮気をされ仕事も辞めて小説家を目指していた…。鮎川さん見たさに鑑賞。朴訥とした話し方はそのまま。学校ジャージも鮎川さんが着るとカッコイイ。やっぱり好きだわ~。深夜ドラマ風の映画で、肩の力を抜いて見れました。2015.9

チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密 MORTDECAI
デヴィッド・コープ監督、ジョニー・デップ、ポール・ベタニー、グウィネス・パルトロー、ユアン・マクレガー出演
☆破産寸前の美術商チャーリー・モルデカイは、修復中に盗まれたゴヤの幻の名画を捜索して欲しいと、学生時代の恋のライバルの刑事から依頼される。普通の演出…。この手のコメディは、「ブタペスト・ホテル」のような世界にもできるのになあ。デップの出演作、最近は不作続きです。用心棒のポール・ベタニーはよかったけど。2015.12


鑑定士と顔のない依頼人 THE BEST OFFER
ジュゼッペ・トルナトーレ監督、ジェフリー・ラッシュ、シルヴィア・フークス、ジム・スタージェス、ドナルド・サザーランド出演
☆美術鑑定士オールドマンは、女性の肖像を描いた名画を不正に入手し、自分のコレクションに加えている。ある日、亡くなった両親が遺した家具や美術品の鑑定をしてほしいという若い女性からの依頼が舞い込む。対人恐怖症の若い女性とオールドマンは、ドア越しに会話を続けるうち、心を通わせるが…。
孤独で偏屈な男が、本気で女性を愛するようになるまでの心理描写が秀逸。若い機械オタクの男とオールドマンの関係がよく分からず、ラストのどんでん返しは、少々腑に落ちなかったが、すべては初めから仕掛けられていた、ということでしょう。
オールドマンを演じたラッシュの演技のうまさが光る渋い作品でした。2015.8

グローリー/明日への行進 SELMA
エヴァ・デュヴァネイ監督、デヴィッド・オイェロウォ、トム・ウィルキンソン、カーメン・イジョゴ、ティム・ロス出演
☆1965年、アメリカ。ノーベル平和賞を受賞したキング牧師は、黒人の選挙人登録を妨害し続ける南部アラバマ州での抗議運動に力を入れていた。そんな中、セルマから州都モンゴメリーへと向かう黒人のデモ行進が白人の州警察らによって襲撃される事件が起きる。セルマの行進について無知だったので興味津々。キング牧師の人生をドラマチックに描くのではなく、セルマの人々にスポットを当てていたのが好感が持てました。監督は黒人女性とのこと。史実に忠実かどうかは別にして、見応えがありました。2015.6

コーヒーをめぐる冒険 OH BOY
ヤン・オーレ・ゲルスター監督、トム・シリング、マルク・ホーゼマン、フリーデリッケ・ケンプター出演
☆ベルリンで暮らす青年ニコは、コーヒーが飲みたくてもいつも振られっぱなし。ATMにキャッシュカードを吸い込まれ、無一文になったニコは街で、かつての同級生と遭遇する。ついてない男の受難の一日物語は、個人的に思い入れあり。コミカルでさほど重大事件も起こらないあたりが私好み。小品ではあるが監督のセンスの良さが光っていました。2015.7

ゴーン・ガール GONE GIRL
デヴィッド・フィンチャー監督、ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー出演
☆母の書いた本で有名になったエイミーは、創作上の完璧なエイミーに強いコンプレックスを抱いていた。イケメンのニックと恋に落ち、結婚するが、5年後、エイミーは突然姿を消してしまう。美しい人妻の謎めいた失踪事件は茶の間の注目を集め、夫ニックに疑いがかかる…。フィンチャー監督らしい、後味の悪いサスペンス。ほぼ予想通りの展開なのだが、それでもエイミーの極悪女ぶりにドギマギしてしまった。執念深い人間に捕まったら死ぬまで地獄だわ…。恐ろしや~。2015.8

シンプル・シモン SIMPLE SIMON
アンドレアス・エーマン監督、ビル・スカルスガルド、マルティン・ヴァルストロム出演
☆他人とのコミュニケーションが不得手なアスペルガー症候群の青年シモンは、唯一の理解者である兄のサムと暮らし始める。が、シモンのせいで兄は恋人と喧嘩別れ。シモンは大好きな兄と相性ぴったりの“完璧な恋人”を探し始める。シモンの純粋さが微笑ましかったけど、少々、現実離れしている感あり。2015.8

日本侠客伝 花と龍
マキノ雅弘監督、高倉健、星由里子、二谷英明、津川雅彦、藤純子、若山富三郎出演
☆九州若松が舞台の任侠映画。健さんのかっこよさと藤純子の粋な美しさは何度見てもほれぼれします。若大将の永遠の恋人だと思っていた星由里子が、おきゃんな健さんの恋人役だったのが新鮮。かわいかったです。2015.8

フライト FLIGHT
ロバート・ゼメキス監督、デンゼル・ワシントン、ドン・チードル、ケリー・ライリー、ジョン・グッドマン出演
☆アトランタ行きの旅客機が突如制御不能に陥り墜落。機長のウィトカーは、天才的な操縦テクニックで犠牲者を最小限にとどめる。奇跡の着陸はマスコミに賞賛されヒーローとなる。しかし、彼はアルコール中毒という秘密を抱えていた。
飛行機事故の奇跡の生還物語かと思っていたらまったく違って、アル中パイロットの苦悩を描いた人間ドラマ。アル中がばれれば刑務所行き、ばれなければヒーロー。エンディングは予想できたのだが、その決断までの心の葛藤は見ていて心が痛むほどリアル。Dワシントンが、悪役を見事に演じ切っていた。タイトルは「フライト」ではなく、酒に溺れた状態と、飛行機の制御不能をかけて、「ノーコントロール」のほうがよかったのに。2015.8

ほとりの朔子
深田晃司監督、二階堂ふみ、鶴田真由、太賀出演
☆大学受験に失敗した優等生の朔子は、血縁ではない叔母・海希江に誘われ、夏の終わりの2週間を海の見える田舎町で過ごす。二階堂ふみのイメージビデオかと思うぐらい、彼女の存在感をクローズアップした青春映画でした。福島から避難してきた不登校の高校生、孝史役、いい味出してるなあ、と思ったら中野英雄の息子ということ。名脇役として、これからも期待大。物語は予定調和で、少々がっかり感もあり。いけてる叔母だったはずが、実はむっつりスケベ系エロ教授と不倫してたり、やたら軽いラブホ支配人が元彼だったり…。大人の世界ってウラあるよねえ。それに反発もせず傍観している朔子が素敵でした。2015.6

るろうに剣心
大友啓史監督、佐藤健、蒼井優、綾野剛、吉川晃司、香川照之ほか出演
☆太刀が話題でシリーズものなので、試しに見てみたが…。飽きてしまった。人斬りにはもっと哀愁がないとなあ。綾野剛が人斬り役のほうがよかったのに。2015.8

ローマ環状線、めぐりゆく人生たち SACRO GRA
ジャンフランコ・ロージ監督
☆ローマの環状高速道路“GRA”に焦点を当て、大都市の辺縁に暮らす人々の悲喜こもごもの人生を見つめたドキュメンタリー。都会の片隅で暮らす人々の個性に真摯に向き合っている。ローマに行ったことがあればもっと楽しめたかも。この種の映画はやっぱり映画館で見るべきだったわ。2015.8

ワールズ・エンド
エドガー・ライト監督、サイモン・ペグ、ニック・フロスト、マーティン・フリーマン、ロザムンド・パイク出演
☆若い頃の悪友を連れてビールのハシゴ飲みツアーに出かけた男は、青い血を持つモンスターたちと戦う羽目に。おバカなドタバタ映画でまったく入れず。シャーロックのワトソン君とか、ゴーンガールの悪女を演じたパイクとか、人気スター勢ぞろいのわりに、コッテコテのB級コメディでした。2015.8

パリ、ただよう花 LOVE AND BRUISES
ロウ・イエ監督、コリーヌ・ヤン、タハール・ラヒム出演
☆北京からパリに恋人に会いにやってきた中国人留学生のホアは恋人に振られた日、労働者マチューと出会い身体を許してしまう。二人はセックスに溺れていくが、お互いに境遇の違いを感じはじめる。
アバズレと陰口をたたかれても仕方ないほど恋愛依存体質のホアの態度には正直腹が立ったけど、スアレス似のマチューの男くささにどうしようもなく惹かれてしまったことだけは同情できた。自伝的小説が原作とのことです。原作者もファムファタール系なんでしょうね。うらやまし~。2015.6

郊遊<ピクニック> STRAY DOGS
ツァイ・ミンリャン監督、リー・カンション、ヤン・クイメイ出演
☆家のない父親と幼い2人の子ども。父は毎日、高級マンションの広告看板を持って路上に立ち続けている。子どもたちはスーパーの食品売り場で試食巡りをして飢えをしのいでいた。
ミンリャン監督作、久々に見ましたが、カンションが相変わらずものすごい存在感。
スーパーの女はなんだかよくわかんなかったけどね。オシャレでもなんでもない女のマンションの壁の色が現代アートチックだった、そのアンバランス感がミンリャンらしかったです。2015.6

複製された男 ENEMY
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ジョゼ・サラマーゴ原作、ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ出演
☆大学講師アダムは映画を鑑賞していたとき、端役の中に自分と瓜二つの俳優を発見。取り憑かれたように俳優のことを調べ始める。瓜二つな人間同士のなりすましものはよくある話ではあるのだが、アンソニーの身重の妻が何やら秘密をもっていそうなミステリアスな雰囲気で、そこが気になって仕方なかった。エンディングがあまりにも唐突で、原作を読んでみたくなりました。2015.7


川の底からこんにちは
石井裕也監督、満島ひかり、遠藤雅、志賀廣太郎、岩松了出演
☆「しょうがない」が口癖のOL佐和子は、田舎でシジミ加工業を営む父の忠男が倒れたとの知らせを受ける。仕事を辞めた子持ちの恋人、健一とともに、渋々田舎へ戻るが…。
シジミ工場のおばちゃんたちのキャラに爆笑。スリップ姿のおばちゃんたちの映像が目に焼き付いて離れず。銭湯でしょっちゅう見てるはずなんだけど、あえて人の着替え姿って見ないしね。満島の“張った”演技も嫌味がなく、彼氏役の遠藤のおとぼけ感とうまくマッチしていて安心感がありました。遠藤雅君、昔好きだったんだけど、すっかりオジサンだわ。いろんな意味で懐かしさ満載のコメディでした。2015.4

サニー 永遠の仲間たち SUNNY
カン・ヒョンチョル監督、ユ・ホジョン、シム・ウンギョン、チン・ヒギョン出演
☆専業主婦のナミは、母の見舞いに行った病院で高校時代の親友チュナと再会。チュナは仲良しグループ“サニー”のリーダーだった。余命2ヵ月宣告を受けたチュナはナミに昔の仲間を探してほしいと頼む。ベタベタすぎて痒くなるような展開。韓国映画らしくはありますが、私にはダメでした…。2015.6

ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~ GET ON UP
テイト・テイラー監督、ミック¥ジャガー製作、チャドウィック・ボーズマン、ネルサン・エリス、ダン・エイクロイド出演
☆アメリカ南部で極貧生活を送っていたJBは、窃盗の罪で服役中、慰問に訪れたボビー・バードと出会う。彼の家に引き取られ、一緒にバンド活動を始めたJBは、すぐにその才能を開花させる。
JBの成功物語&メンバーとの確執等は、ほぼ予想通り。もう少し、音楽やノリに対するこだわりについて知りたかったかも。JBの入門編という感じでした。横浜体育館で見たJBのことを懐かしみながら見てしまった。エイクロイドがマネージャー役として出ていたのが妙にうれしく「ブルースブラザーズ」を思い出したり…。いろんな意味で昔懐かし~でした。2015.6

JIMI:栄光への軌跡 JIMI: ALL IS BY MY SIDE
ジョン・リドリー監督、アンドレ・ベンジャミン、ヘイリー・アトウェル出演
☆1966年、キース・リチャーズの恋人リンダ・キースは、ステージで演奏する無名の黒人ギタリストジミの演奏に魅せられる。才能に惚れ込んだリンダは、彼をアニマルズのメンバー、チャス・チャンドラーに紹介、ジミはロンドンへと渡る。バンド“ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス”を結成したジミは、イギリス国内で注目を浴びるようになる。
シアトル出身なのにイギリスで火が付いた経緯など、ほとんど知らなかったジミヘンのサクセスストーリーは興味深かった。ただ、全体の展開がまったりしていて、演奏シーンよりも、恋人とのイチャイチャとかが多くて退屈だった。何人か途中で帰ってしまうサラリーマン風観客もいたけど、ちょっと気持ちわかります。ジミヘンの音や汗が伝わってくるような映画であって欲しかった。残念。2015.4

ジャージー・ボーイズ JERSEY BOYS
クリント・イーストウッド監督、ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン、マイケル・ロメンダ、ヴィンセント・ピアッツァ、クリストファー・ウォーケン出演
☆ニュージャージー出身の4人組ヴォーカル・グループ、フォー・シーズンズの栄光と挫折の物語を描く。誰でも知っているオールディーズ曲「シェーリー」「君の瞳に恋してる」の作曲者が、タモリ倶楽部のテーマ曲と同じ人物だったことに驚き。典型的なアメリカンドリーム&挫折ストーリーで、安心してみることができた。オールディーズが好きなので、やっぱり劇場で見るべきだった、とちょっと後悔。2015.4

ジゴロ・イン・ニューヨーク FADING GIGOLO
ジョン・タートゥーロ監督・主演、ジョン・タートゥーロ、ウディ・アレン、ヴァネッサ・パラディ、シャロン・ストーン出演
☆NYの本屋を自分の代で潰してしまったマレーは、花屋で働く親友のフィオラヴァンテをジゴロに仕立て、性に飢えた有閑マダムを客に売春ビジネスを始める。調子に乗ったマレーは、厳格なラビの未亡人アヴィガルを言葉巧みに勧誘。しかしフィオラヴァンテとアヴィガルは、本当に恋に落ちてしまい…。
監督はタートウーロとなっていますが、この世界はアレン監督の真骨頂。タートゥーロがモテモテのジゴロ役なんて初めてみたけど、見てるうちにかっこよく見えてきたから不思議。さすが役者です。黒人の子供達がかわいくて、微笑ましかったです。2015.5

スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~ LA VOZ DORMIDA
ベニト・サンブラノ監督、インマ・クエスタ、マリア・レオン、マルク・クロテット出演
☆1939年、フランコ政権に対し反対運動を続けるオルテンシアは、妊娠中にも拘わらず刑務所行きとなる。アンダルシアの田舎で暮らす妹ペピータは姉を出所させようと、マドリードに渡り、協力者の医者宅でメイドとして働き始める。
スペイン内戦時、コミュニストの家族を持った、若い女性の目からみた不安社会を真摯に描いている。日本の鎖国時代と真逆の、踏絵シーンが印象的。カソリックのシスターが鬼のシスターとなってフランコ政権に加担していた、という事実にぞっとした。
信仰するのもしないのも自由、発言するのもしないのも自由、恋をするのもしないのも自由。そういう社会が当たり前と思って普段は生活しているが、権力者によって間違った方向に支配されると、すべての自由が奪われてしまう恐れもある。
 自由は与えられたものではない。自分の力で守るべきもの。そんなことを考えずにはいられなかった。妹を演じた女優さん、素敵でした!2015.5

セッション WHIPLASH
デイミアン・チャゼル監督、マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、ポール・ライザー出演
☆一流のドラマーを目指し音楽大学に入学した青年ニーマンは、ある日、フレッチャー教授の目に止まり、彼のバンドにスカウトされる。フレッチャーは、ニーマンへ常軌を逸したしごきを敢行。必死に食らいつくニーマンだったが…。
度を越したしごき、今でいうパワハラ、モラハラのシーンは心が痛くなるほど激しくて、中学時代に教師にいじめられていたトラウマが再燃するほど。それだけに、ラストのフレッチャーとの攻防は、爽快だった。音楽の質とか関係なく、ニーマンがフレッチャーの禿げ頭を叩きまくっているイメージが重なり、笑ってしまいました。
JAZZドラマーという設定だけど、映画的にはパンクのノリ。スポ根ドラマ風で懐かしさすら覚えました。2015.4

近松物語
溝口健二監督、長谷川一夫、香川京子、南田洋子出演
☆京烏の大経師内匠に嫁いだ女おさんが、手代の茂兵衛に金の無心をしたことをきっかけに二人の人生が狂い始める…。近松門左衛門作『大経師昔暦』が原作。女たちの所作の色っぽさ、脇の男たちの嫌らしさがお見事。

ハナ 奇跡の46日間 KOREA
ムン・ヒョンソン監督、ハ・ジウォン、ペ・ドゥナ、ハン・イェリ、パク・チョルミン 、キム・ウンス出演
☆90年代、韓国女子卓球のエース、ジョンファは、北朝鮮のリ・プニ選手とメダルを争うライバル関係にあった。1991年4月に日本の幕張で開催される世界選手権に、韓国と北朝鮮は統一チーム“コリア”で参加することが決まる。ジョンファは北朝鮮の実力者リ・プニとダブルスを組むことになるが…。
韓国映画らしいベタな感動物語、ではあるのだが、それよりも、91年に統一コリアとして世界選手権で優勝、しかも幕張で、という事実をまったく知らなかったことが驚き。日本は当時、卓球が弱かったのでニュースにもならなかったのだろうけど。南北統一という夢に沸いた当時の会場の様子を見て、韓国&北朝鮮の人たちの境遇について、考えさせられた。大国のいがみ合いの道具にされ、分断されたまま放置されている両国の和解はいつになったら実現するのか…。ハ・ジウォン、ペ・ドゥナという韓国の2大女優が出演しているのに日本での扱いが小さかったのも気になりました。2015.4

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)BIRDMAN OR (THE UNEXPECTED VIRTUE OF IGNORANCE)
アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督、マイケル・キートン、ザック・ガリフィナーキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズブロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン出演
☆元人気ヒーロー映画「バードマン」の主演俳優リーガンは、再起をかけ、ブロードウェーでレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』を原作とする舞台を自ら脚色・演出・主演で製作する。楽屋でのリーガンは、バードマンの妄想に取りつかれ、超能力を発揮。一方、舞台の上では、思い通りにいかないことばかり…。
ショービズ界のシニカルな裏話とリーガンの妄想を、ワンカメラ風ショットで追いかけた異色のコメディ。過去のイニャリトゥ作品とはかなりテイストが違って、重さは感じず。絶えず流れるフリージャズのドラムの響きと、動き回るカメラワークが絶妙で、これは、即興ジャズ映画だな、と勝手に解釈。この作品にアカデミー賞をあげちゃうハリウッドの懐の深さにアッパレ。リーマンの最後の選択は、やっぱりイニャリトゥだわ、というのが率直な感想です。2015.4

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
吉田大八監督、佐藤江梨子、佐津川愛美、永作博美、永瀬正敏出演
☆北陸の村に、両親の訃報を受け、東京から女優志願の澄伽が戻ってきた。トラブルメーカーで、目的のためには手段は選ばない超自意識過剰の勘違い女。長男の嫁は、後妻の連れ子である長男や、澄伽の実の妹との関係が普通でないことに気づきはじめる。
サトエリの魅力爆発!勘違い女役がぴったりです。グロテスク漫画の天才である妹も、やたら能天気でうざい嫁も、冷酷なのか、やさしいんだか複雑な兄も、個性豊かなキャラをみんな好演していました。澄伽は痛い女だけど、あの容姿だったら男が狂うのは無理ないし、嫌われたってへっちゃら感の裏に潜む、傷つきやすいナイーブさを秘めている。そんな愛らしい女をサトエリが見事に演じてました!2015.4

ラッシュ/プライドと友情 RUSH 
ロン・ハワード監督、クリス・ヘムズワース、ダニエル・ブリュール、オリヴィア・ワイルド出演
☆英国出身でプレイボーイののジェームズ・ハントと、ドイツ出身の生真面目なニキ・ラウダは、F3時代からの宿命のライバル。1976年、2人はF1の年間チャンピオンを巡って熾烈なデッドヒートを繰り広げる。2連覇を目指すフェラーリのラウダは、序盤から年間チャンピオン争いを優位に進めていたが、悪天候の第10戦ドイツGPで悲劇が起こる。
評判になっていたのだが、スクリーンで見逃してちょっと後悔。二人の確執、キャラもしっかり描かれていたし、なによりもレースシーンがかっこよかったです!2015.4

理想の恋人.com MUST LOVE DOGS
ゲイリー・デヴィッド・ゴールドバーグ監督、ダイアン・レイン、ジョン・キューザック、エリザベス・パーキンス、クリストファー・プラマー、ダーモット・マローニー、ストッカード・チャニング出演
☆8ヵ月前に離婚したばかりのサラは姉のキャロルに促され出会い系サイトで彼氏探しを始める。キャストが豪華なので見てみたが…。軽いタッチのラブコメドラマでした。2015.6

ローマ法王の休日 HABEMUS PAPAM
ナンニ・モレッティ監督・出演、ミシェル・ピッコリ、イエルジー・スチュエル 出演
☆ローマ法王が逝去し、新法王選出のコンクラーヴェが開催された。運命の悪戯か、まったく予想されていなかった無名の枢機卿メルヴィルが新法王に決定してしまう。メルヴィルは、硬くなに新法王のスピーチを拒否するが…。
皮肉たっぷりのコメディ。モレッティ監督らしいです。ローマ正教の裏側を映画にできるイタリアという国にアッパレです。国民の反応はどうだったんでしょうか?歓喜する国民全員を唖然とさせるエンディングには、信徒ではない私でさえ、開いた口がふさがらず。2015.4

浪人街 RONINGAI
黒木和雄監督、マキノ雅広総監修、原田芳雄、樋口可南子、石橋蓮司、杉田かおる おぶん、伊佐山ひろ子、中尾彬、佐藤慶、田中邦衛、勝新太郎出演
☆江戸の下町で、夜鷹が次々と斬られる事件が発生する。権力を傘に悪行を繰り返す一党に、反骨の浪人たちが立ち上がる……。
ダメダメ浪人、原田芳雄と、そんな男に惚れちゃった樋口可南子が素敵。脇に徹した勝新の存在感も抜群で、十二分に楽しめました。
脚本もしっかりしてるし、役者陣も個性豊か、そして監督の演出力。3拍子揃っているので安心感あり。昔の名作って、いつみても古さを感じない強さがある。2015.4

私の男 
熊切和嘉監督、浅野忠信、二階堂ふみ、モロ師岡、三浦貴大、高良健吾、藤竜也出演
☆奥尻地震で家族を失った孤児の花は、遠縁だという男、淳悟に引き取られる。紋別でひっそりと暮らしていた6年後、二人をよく知る大塩は、二人の危うい関係を目撃してしまう。
物悲しい北海道の風景と、抜群の存在感で危うい二人を演じた浅野と二階堂の演技力にアッパレ。予想どおりの展開ではあるが、ぐいぐい引き込まれた。2014年日本映画は、北海道が舞台の2作が抜群でした。(ほかはほとんど見てませんが)2015.4

あなたを抱きしめる日まで PHILOMENA
スティーヴン・フリアーズ監督、ジュディ・デンチ、スティーヴ・クーガン出演
☆アイルランドの修道院で子供を産み、3歳になる子供と生き別れてしまった老女フィロミナ。50年経っても息子を忘れらない彼女は、元エリート政治記者マーティンとともに、息子探しの旅にでる。生き別れた息子はエリート弁護士になっていた、というだけではお涙頂戴のありがちドラマで終わるのだが、息子が隠してた事実や、修道院のシスターたちの非道な行いまでの展開がインパクトがあり思わず涙。さすがフリアーズ監督、実話の脚色ではありますが、巧みなドラマ展開にうなりました。インテリ役のイメージが強いジュディだが、メロドラマ好きのお人よし老婆の役も上手い。安心して見れる秀作です。2015.4

アメリカン・スナイパー AMERICAN SNIPER
クリント・イーストウッド監督、ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス出演
☆山で鹿を追う生活をしていたクリス・カイルは、祖国を守るためネイビー・シールズの狙撃手となり、イラクへ出征する。クリスは、その驚異的な狙撃の精度で味方の窮地を幾度も救っていく。子供と母親を狙い撃ちしなければならないクリスの苦悩、ストレスがジワジワ伝わってくる戦争映画。けっして戦争礼讃ではないことは感じられたが、前半部分をカットして、もう少しクリスの内面や、アメリカに戻ってからのトラウマなどに重点を置いてほしかった、というのが正直な気持ち。妻との出会いや弟との関係、軍隊の訓練とか、ありきたり過ぎてはやくすっ飛ばしてほしくなりました。実話なので、いろいろ配慮が必要だったのかなあ。何がびっくりってブラッドリーの肉体大改造ぶりには驚きでした。筋肉増強剤使ったんだろうなあ。身体に悪そう。2015.3

ある過去の行方 THE PAST
アスガー・ファルハディ監督、ベレニス・ベジョ、タハール・ラヒム、アリ・モサファ出演
☆元妻マリー=アンヌと離婚手続きをとるため、テヘランからパリに戻ったイラン人男性アーマド。彼は思春期の娘から、マリー=アンヌに新しい恋人がおり、その恋人には昏睡状態の妻がいると聞かされる。娘が激しく結婚を反対する理由が明かされるまでがもどかしくて、少々飽きてしまった。元夫にも気持ちが残っている感のあるマリーにまったく感情移入できず。2015.3

イーダ IDA - FORMERLY SISTER OF MERCY
パヴェウ・パヴリコフスキ監督、アガタ・クレシャ、アガタ・チュシェブホフスカ出演
☆1962年、社会主義体制下のポーランド。戦争孤児として田舎の修道院で育てられた見習い尼僧アンナは、唯一の肉親、叔母ヴァンダを訪ねることを勧められる。ヴァンダから、本当の名前はイーダで、ユダヤ人であることを告げられたアンナは、過去に両親と暮らした家を訪れる。
ポーランドのユダヤ人が戦時中、どのような迫害を受けていたかは察しがついたが、イーダの両親だけでなく、彼らを虐げた住民の罪や、叔母ヴァンダの後悔についても丁寧に描かれていた。両親の遺骨を持ち帰るシーンで終わってしまったら嫌だなあ、と思っていたのだが、その後のふっきれたイーダの大胆な思い出作りまで描いてくれたのでぐっと好感度アップ。過去の清算も大事だが、若いイーダにもっと大切なのは前を向くこと。2015.4

ウィズネイルと僕 WITHNAIL AND I
ブルース・ロビンソン監督、ポール・マッギャン、リチャード・E・グラント出演
☆“僕”とウイズネイルは売れない役者同士。酒と薬に溺れる二人は、ある初冬の週末、ロンドンを逃れ、叔父の田舎の別荘へ…。60年代の英国が舞台のゲイムービー。時代を反映してなのか、二人の関係はあくまでも単なる友達風。でも、随所で男根のようなフォルムの木や道具が映し出されたり、女がまったく出てこなかったり、明らかに同性愛を意識した作りになっていた。おそらく当時は斬新だったのでしょう。同性愛が裁かれる時代だった60年代の英国らしい映画でした。2015.3

黄金のメロディ マッスル・ショールズ MUSCLE SHOALS
グレッグ・“フレディ”・キャマリア監督、リック・ホール、アレサ・フランクリン、ミック・ジャガー、ボノ、スティーヴ・ウィンウッド、パーシー・スレッジ出演
☆アラバマ州の綿花畑が広がる田舎町マッスル・ショールズに、リック・ホールという無名の男が小さな音楽スタジオを造った。のちにこのスタジオで、R&Bシーンを席巻した数々の名曲が生み出されることになる…。なぜ、南部の田舎でスタジオが造られることになったのか、伝説的音楽スタジオの歴史を振り返る音楽ドキュメンタリー。
まだ人種差別が激しかった南部の田舎で、黒人歌手パーシー・スレッジの「男が女を愛する時」が録音された、ということにまずびっくり。しかもバックは地元の白人ミュージシャン。「スタジオの中では肌の色なんて関係ない」というフレーズが印象的。その後、ウィルソン・ピケットやアレサ・フランクリンをスターダムに押しあげ、マッスル・ショールズは世界のミュージシャンに注目されるようになる。イギリス人のストーンズがわざわざアメリカ南部の田舎まで録音しにいくほどの魅力って何だろう?おそらくリック・ホールの音楽愛が大きいのでしょう。
 映画でも音楽でも、小さな劇場や配給が次々に倒産していく日本の現状は、文化的貧困状態と言っても過言ではない。リックのような熱い思いを持った個人が地道に文化を継承していくしか、道は残っていないのかもしれません。2015.3

キャピタリズム マネーは踊る CAPITALISM: A LOVE STORY
マイケル・ムーア監督・出演
☆2008年9月、証券会社リーマン・ブラザーズが破綻、これを契機に金融危機が巻き起こり、世界は空前の大不況に陥った。銀行に借入のある庶民は、家を追い出され、パイロットは安い給料のあまりバイトをしなければ食べて行けず…。一方、政府は庶民の苦しみなんて知らん顔で、大企業のために国民の税金をつぎ込み…。こんなキャピタリズム=資本主義はもういらない!と、声を上げたドキュメンタリー。ムーア監督作の割には、おフザケ感は抑えめ。多くの庶民や議員にインタビューし、過去のルーズベルトの演説なども織り交ぜながら、米国の経済政策へ、ストレートに疑問を投げかけている。
 今の日本でも同じようなことが起こりつつあるので、他人事とは思えず。パイロットってそんなに給料安いのか。ドイツ人の自殺パイロットも、満たされない不満を抱えていたのかも…。などなど、今起こっていることと照らし合わせて見てしまった。日本はアメリカやブラジルみたいに国民が声を上げないから、このままいくと、どんどん庶民ばかりが損をして、生きづらくなるのかなあ、嫌だなあ。思わず日本から逃げ出したくなりました。2015.4

ヴァン・ゴッホ VAN GOGH
モーリス・ピアラ監督、ジャック・デュトロン、アレクサンドラ・ロンドン、ベルナール・ル・コク出演
☆1890年、売れない天才画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは、オーヴェル村の医師ガシェと懇意になり、娘マルグリットと恋に落ちる。画商の弟テオは、兄の行いを諭すが…。ゴッホの晩年を描いた作品。耳切り事件の後、ということで比較的穏  やかなゴッホの生活を淡々と描いている。ピアラは、知る人ぞ知る名監督ということだが、いたって普通、というのが正直な感想。2015.4

二重生活 浮城謎事 MYSTERY
ロウ・イエ監督、ハオ・レイ、チン・ハオ、チー・シー、ズー・フォン出演
☆中国湖北省の武漢市。ある日、何かから逃げてきたような形相の若い女性が、若者の乗った車にはねられ死亡する。彼女はやり手IT企業社長ヨンチャオの愛人だった…。その数日前、社長の妻ルー・ジエは、ママ友サン・チーから誘われて行ったカフェで、夫ヨンチャオの浮気現場を目撃してしまう。今時のオシャレな若社長のふしだらな二重生活を描くのかと思ったら、意外にも視点は浮気された妻視点。夫の秘密が2時間ドラマチック風で特別新鮮さも覚えず、正直期待外れでした。ロウ・イエ作品では「スプリング・フィーバー」が最も好きかな。正妻の娘と同じ保育園に、愛人との間にできた息子を通わせる男の歪んだ心理を、もっとえぐり出して欲しかった。2015.4

マダム・イン・ニューヨーク ENGLISH VINGLISH
ガウリ・シンデー監督、シュリデヴィ、アディル・フセイン、メーディ・ネブー出演
☆料理上手のインド人専業主婦シャシは、家族の中で自分だけ英語が出来ないことにコンプレックスを抱いている。ある日、ニューヨークに暮らす姉の娘の結婚式の手伝いを頼まれ、一人で米国を訪れたシャシは、家族に内緒で、英語学校に入学する。
保守的なインド社会の典型的主婦の小さな冒険を微笑ましく描いている。あまりにも展開がありきたり過ぎて、途中で飽きてしまった。保守的な夫、従順な妻のキャラがいかにもインド。主役はインドの国民的スターとのことで、現地ではおそらくヒットしたのでしょう。
ハイソな妻なのに、今時インドであんなに英語がわからない、ってどうなの??時代設定をもっと古くすればよかったのに。ちょっとリアリティがなさすぎ。2015.4

物語る私たち STORIES WE TELL
サラ・ポーリー監督、サラ・ポーリー、マイケル・ポーリー、ハリー・ガルキン出演
☆女優兼監督のサラ・ポーリーが、若くしてこの世を去った母と、自分の生い立ちについて調べはじめる。自分の私的な秘密を、ドキュメンタリー映画として世界に公開してしまう勇気にまず脱帽。可愛い顔しているけど、意志の強い女性なのでしょう。サラの監督としての才能は演出家である実父の才能を受け継いでいるのかもしれませんね。お母さんが何度か結婚しているせいで、兄や姉がいろいろいて、ちょっと混乱。2人ぐらいに絞ってくれればもっと見やすかった気がします。サラもすごいけど、育ての父マイケルの寛大な心にアッパレです。2015.4

シャトーブリアンからの手紙 LA MER A L'AUBE
フォルカー・シュレンドルフ監督、レオ=ポール・サルマン、マルク・バルベ出演
☆1941年10月。ドイツ占領下のフランス。シャトーブリアンのショワゼル収容所には、政治犯として17歳の少年ギィが収容されていた。ある日、ドイツ将校が何者かによって暗殺され、まもなくヒトラーから“報復として収容所のフランス人150名を処刑せよ”との指令が届く。ユダヤ人収容所のガス室送りを扱った映画は様々見てきたが、フランスの政治犯の大量処刑については知らなかったので勉強になりました。「カティンの森」もそうだったが、戦争による犠牲者の物語は、まだ解明されていないものも多いのでしょう。緊張で痙攣を起こしてしまった若きドイツ兵の姿がもっとも痛々しく描かれていたのが印象に残った。2015.3

リスボンに誘われて NIGHT TRAIN TO LISBON
ビレ・アウグスト監督、ジェレミー・アイアンズ、メラニー・ロラン、ジャック・ヒューストン、ブルーノ・ガンツ、レナ・オリン、シャーロット・ランプリング出演
☆スイスの高校教師グレゴリウスは、身投げしようとした女性を助ける。彼女が残した1冊の本とリスボン行きの切符に導かれ、リスボンを訪れたグレゴリウスは、著者アマデウを訪ねる。
軍事政権時代の若者たちと、年老いた後の容姿がそれぞれ違和感なく引き継がれていたので、時代が前後しても、混乱せずに見れた。キャストが超豪華。ブルーノ・ガンツ、ナラ・レオン、シャーロットなど、ヨーロッパを代表するベテラン俳優陣が続々登場。70年代の若き活動家の物語ではあるが、社会派映画というよりは、ノスタルジックな一期一会ストーリーだった。若きアマデウを演じたジャック・ヒューストン。ジョニー・デップにちょっと似ていて要注目。2015.4

ワレサ 連帯の男 WALESA. CZLOWIEK Z NADZIEI
アンジェイ・ワイダ監督、ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、アグニェシュカ・グロホウスカ出演
☆ポーランドの労働運動の旗手レフ・ワレサの自宅をイタリアの著名な女性ジャーナリストが訪れた。インタビューに答えるワレサは1970年12月に起こった食料暴動について語り始める。ポーランドの労働者を率い、何度も逮捕されながら、国民的英雄として人気を博し、ノーベル平和賞受賞や大統領の地位にまで上りつめたワレサの半生を真摯に描いた伝記映画。ワレサの弱さや庶民的な部分を描き、英雄扱いやドラマチックさを排除したところがワイダ監督らしい。ただし、他のワイダ監督作に比べると、テレビドラマ風の伝記もので斬新さは感じず。2015.3

キューティー&ボクサー CUTIE AND THE BOXER
ザカリー・ハインザーリング監督、篠原有司男、篠原乃り子出演
☆ボクシング・ペインティングなど前衛的活動で世界的に活躍するニューヨーク在住の現代美術家、篠原有司男と妻で画家の篠原乃り子の40年にわたる波瀾万丈のアーティスト生活を描いたヒューマン・アート・ドキュメンタリー。NYに渡った貧乏アーチストのリアルな日常を、妻の視点から描いた作品。過激な一面だけではない、しみったれた日常もさらけ出したシノハラファミリーにあっぱれです。2014.11

あなたへ
降旗康男監督、高倉健、田中裕子、佐藤浩市、草なぎ剛、余貴美子、綾瀬はるかほか出演
☆富山の刑務所で指導技官を務める倉島英二のもとにある日、亡き妻・洋子からの絵手紙が届く。そこには、“故郷の海を訪れ、散骨してほしい”と記されていた。
健さんの遺作。富山から長崎まで車で旅をする間に出会う人々とのさりげない交流をやさしく描いている。遺作にふさわしい、健さんの気持ちが込められた作品。ほっこりしました。2014.12

ウルフ・オブ・ウォールストリート THE WOLF OF WALL STREET
マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、ジョナ・ヒル、マーゴット・ロビー出演
☆80年代後半のウォール街。ベルフォートは天才的な話術で株を売って儲け、26歳で社員700人の大企業のトップにまで上り詰める。美しい妻と再婚し、毎晩パーティー三昧の超セレブ生活を送っていたが…。
実在する株ブローカーの破天荒人生。相変わらずディカプリオのクレイジーな演技が暴走気味でした。長い映画だしね…。それでも、今までのスコセッシ映画のディカプリオよりは、彼の良さがでてた気がします。リアルにセレブですしね。日本でもヒルズ族とか呼ばれたIT長者の半生は似たり寄ったりなのかも。ちょっと長すぎ~とは思いましたが、テンポがいいので、飽きずにみれました。2015.1

エクソダス:神と王 EXODUS: GODS AND KINGS
リドリー・スコット監督、クリスチャン・ベイル、ジョエル・エドガートン、ジョン・タートゥーロ、シガーニー・ウィーヴァー、ベン・キングズレー、マリア・バルベルデ出演
☆無頼派古代エジプト王国。王女に拾われ、国王の息子ラムセスと兄弟同然に育てられたモーゼは、自分が奴隷ヘブライ人であることを知らされる。国王の死後、ラムセスはモーゼを追放。9年後、彼は神の啓示を受け、虐げられているヘブライの民を解放すべくエジプトへと戻るのだったが…。
出エジプト記を映画化。子供のころみた「十戒」の印象が強くつい比較してしまった。リドリー・スコットなので、圧倒的な迫力シーンを期待したのだが、ちょっと期待はずれ。3D仕様を2Dに見たせいかもしれないが…。ベイルは見間違うほど筋肉隆々で、さすが七変化俳優。2015.2

ジャッジ 裁かれる判事 THE JUDGE
デヴィッド・ドブキン監督、ロバート・ダウニー・Jr、ロバート・デュヴァル、ヴェラ・ファーミガ出演
☆ヤリ手弁護士のハンクは、地元で長年判事を務め、人々の尊敬を集める父ジョセフとは折り合いが悪く絶縁状態。だが、母の葬儀の後、父が事故を起こし、殺人容疑で逮捕されてしまう。
父と息子の確執と和解を演技派二人がじっくりと演じている。心身ともに衰えていきながらもプライドを捨てきれない父を演じたデュバルが圧巻。ダウニーJrも見事に再生したなあ、としみじみ。派手さはないですが、飽きずに腰をすえて見れました。2015.1

自由と壁とヒップホップ SLINGSHOT HIP HOP
ジャッキー・リーム・サッローム監督
☆初のパレスチナ人ヒップホップグループ“DAM”の音楽は、国境や年齢、性別などを超え、希望を失った若者や女性、子供たちに夢を与えていた。しかし、ヨルダン西区とガザ地区の行き来を禁止されている彼らは、ジレンマを抱えていた…。ヒップホップは差別や貧困など、抑圧された社会で暮らす若者の叫びを代弁するアートなんだと実感。黒人やアラブ人など、生まれた時から抑圧されている人々と日本人は育った環境が違いすぎる。日本のヒップホップとは別物と考えたほうがいいのかも。パレスチナの若者にとって、トゥパクが神扱いされているのが驚いた。トゥパクってすごいアーチストだったのですね。トゥパクの映像、もう一度見てみたくなった。2015.2

そこのみにて光輝く
呉美保監督、綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子出演
☆北の港町で、自堕落な生活を送る達夫は、パチンコ屋で知り合った青年、拓児の家で姉の千夏と出会う。千夏は、脳こうそくで寝たきりの父、仮釈放中の弟を支えるため、売春宿で身体を売っていた。抜け出したくても抜け出せない底辺生活を送りながら、突っ張り続ける千夏の姿にウルウル。そんな千夏を次第に愛するようになる達夫の心理描写も丁寧で好感がもてた。バカやりながら悲しみを抱えた弟役の菅田君が最高でした。今後が楽しみなバイプレーヤーです。2015.2

薄氷の殺人  白日火 BLACK COAL, THIN ICE
ディアオ・イーナン監督、リャオ・ファン、グイ・ルンメイ出演
☆1999年夏。中国華北地方の石炭工場からバラバラにされた死体の一部が次々と発見される。真相が解明されぬまま5年が過ぎたある日、またバラバラ死体が発見される。元刑事のジャンは、被害者がいずれも5年前の被害者の若き未亡人ウー・ジージェンと関係があることを突き止める。
凄惨な殺人事件と謎の未亡人、そしてその女に強く惹かれていく刑事…。さびれた中国の地方都市を舞台にした複雑な人間関係を描いている。昔の日本のアングラ映画っぽくもあり、妙な懐かしさを覚えた。日本語のタイトル、どんぴしゃです。ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。2015.1

メキシカン・スーツケースTHE MEXICAN SUITCASE
トリーシャ・ジフ監督☆
2007年、失われたと思われていた4,500枚にのぼる歴史的ネガが、突如メキシコで発見される。“メキシカン・スーツケース”と呼ばれるその箱の中には、ロバート・キャパ、ゲルダ・タロー、デヴィッド・シーモアという3人の伝説的写真家が捉えたスペイン内戦の真実が詰まっていた。
戦場で命を落とした写真家たちの遺志を感じずにはいられない一作。偶然のタイミングだったのだが、日本のジャーナリスト後藤健二さんの拉致事件が起こっていたときに見たので、より感情移入してしまった。キャパもタロも、そして後藤さんも、志し半ばでの最期となってしまったけれど、彼らの遺志は必ず誰かに受け継がれると信じたい。半世紀たっても、危険と隣り合わせの戦場ジャーナリストという仕事が存在することにやりきれなさを覚えました…。2015.1

LIFE! THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY
ベン・スティラー監督・出演、クリステン・ウィグ、アダム・スコット、キャスリン・ハーン、シャーリー・マクレーン、ショーン・ペン出演
☆「虹を掴む男」のリメイク。雑誌『LIFE』で写真整理の仕事に就くウォルターは、『LIFE』最終号を飾るはずだった写真のネガが行方不明になっていることを知り、カメラマンを追って旅にでる。空想と現実をいったりきたりするタイミングが絶妙。エンディングにはホロリでした。2015.1

関東緋桜一家
マキノ雅弘監督、藤純子、鶴田浩二、高倉健、若山富三郎、菅原文太、藤山寛美、片岡千恵蔵出演
☆藤純子引退記念、東映のオールスターキャストがうれしい豪華なエンタメ作。
健さんの「おひけえなすって」や、鶴田浩二の貫録の着流し姿、藤純子の立ち回り、と、「よっ、ニッポン一!待ってました!」と掛け声をあげてしまいたくなりました。文太さんは脇役だったのがちょっと残念だったけど、まあ、御三家がいたら文太さんは脇になっちゃうかもね。藤山寛美まででてきちゃってしっかり笑かしてもらえて最高のエンタメ作。藤純子ってホントの大スターだったんですね。きっぱりやめて、梨園の妻になったのがまた潔い。今や演技派ベテラン女優っていうのもまた素晴らしい。こういう女優、今はなかなか生まれませんよね。2015.2

昭和残侠伝 死んで貰います
マキノ雅弘監督、高倉健、加藤嘉、荒木道子、藤純子、池部良出演
☆「昭和残侠伝」の第七弾。深川の老舗料亭「喜楽」に生まれた秀次郎は、傷害事件を起こし逮捕される。服役中に父が死去、関東大震災が起こり義理の妹も死亡、継母は盲目となってしまう。出所した秀次郎は、息子だと告げずに「喜楽」の板前として働き始める。
妖艶な芸者役の藤純子と健さんのカップルが美しくてうっとり。義理と人情のドラマも見応えあって、上質な任侠ものでした。池部良も素敵でした!2015.2

サイド・エフェクト SIDE EFFECTS
スティーヴン・ソダーバーグ監督、ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ出演
☆富豪の夫がインサイダー取引の罪で服役中、若妻エミリーはうつ病に悩まされる。ようやく夫が出所した矢先、エミリーは夢遊病を発症し、無意識に夫を刺殺してしまう。彼女に新薬を処方したことを問題視された精神科医バンクスは、エミリーの病いに疑いを抱く。
精神科医と精神病患者のピリピリした緊張関係が秀逸。ジュード・ロウの個性が生かされた演技を久々みて、うれしくなりました。ルーニー・マーラ、あまり知らない女優だったけど「トラッシュ」にも出てたのね。今後に期待大。2015.2

単騎、千里を走る。RIDING ALONE FOR THOUSANDS OF MILES
チャン・イーモウ監督、高倉健、寺島しのぶ、リー・ジャーミン、チュー・リン出演
☆漁師の高田の元に、確執があった息子・健一が重病との報せが届く。高田は、健一が、中国で撮影したがっていたある俳優に会いに行く。
言葉がわからない中国で、息子の思いを遂げようとする頑固な父の心の旅をドキュメンタリー風に描いている。健さんは絵になる俳優だなあ、と実感。中国の山の中にたっているだけで、美しい。健さん以外はほぼ素人の山岳民ということで、朴訥なセリフ回しも味がありました。撮影の裏話を撮ったメイキングがまた秀逸。映画館で見なかったことをちょっと後悔。2015.2

はじまりのうた BEGIN AGAIN
ジョン・カーニー監督、キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ、ヘイリー・スタインフェルド、アダム・レヴィーン、キャサリン・キーナー出演
☆音楽プロデューサーのダンは、会社をクビになり、バーで酔いつぶれる。そんなダンが出会ったのは、弾き語りの若いイギリス人歌手グレタ。大スターになった恋人デイヴに裏切られたばかりのグレタに、ダンはアルバムを作ろうと持ちかける。
熱さだけが取り柄のキュートなダンを演じたマーク・ラファロにもうメロメロで、目が完全にハートになってしまいました~。マルーン5のアダムの歌もフルコーラスで聴けたし、映画館で見て大成功。久々にシンプルな青春映画を映画館で堪能。若返った気分。2015.2

ハンナ・アーレント HANNAH ARENDT
マルガレーテ・フォン・トロッタ監督、バルバラ・スコヴァ、アクセル・ミルベルク出演
☆ホロコーストを生き延びたユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントは、ナチスの重要戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判に立ち会い、その傍聴記を発表。アイヒマンを極悪非道ではなく凡庸な小役人と評したことで、ユダヤ人社会から激しいバッシングを受ける。
第三者の目からみれば、おそらくアイヒマンは自分の意思をもたないヒトラーのロボットに過ぎなかったのだろう。それは、オウムの実行犯にも通じるものがある。ただ、被害者家族にしてみれば、ロボットだろうが、罪の重さに変わりはない。ハンナは、アイヒマンのことを極悪非道、と非難してしまえば、ことは丸く収まったはず。だが、そうはしなかったハンナ。見たこと感じたことを正確に伝えることに使命感を持った、まさにジャーナリストの鏡。真似できません。頭が下がります。2015.2

百円の恋
武正晴監督、安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、根岸季衣出演
☆実家で自堕落な毎日を送る32歳の一子は、出戻り中の姉や母と大げんかをして一人暮らしを始める。100円ショップの深夜バイトを初め、少しづつ社会とかかわるようになった一子は、近所のボクシングジムで汗を流すボクサー、狩野と知り合い…。
安藤サクラの身体の変貌がお見事。でぶでぶブヨブヨの不摂生太りから、ボクシングに夢中になることでシャープになっていく身体。まるで別人のよう。人間ってすごいですねえ。ボクシングのトレーニングシーンは「ロッキー」ですね。
一子と最低男たちの関係も面白いし、「熱い奴が苦手」という新井浩文のセリフも納得。自分も、熱い奴は苦手なはずなのに、スポーツに入れ込んでる人を見るのは好きなんだよなあ。この矛盾は何でしょう。自分に足りない部分へのあこがれ、なのかもしれません。
2015.10.4

悲情城市 A CITY OF SADNESS
ホウ・シャオシェン監督、トニー・レオン出演
☆数十年ぶりに見ましたが、やっぱりトニーの表情に癒され、母性がくすぐられました。この映画を通して初めて台湾の悲しい歴史を知ったので、感慨深いものがありました。2015.12

フォックスキャッチャー FOXCATCHER
ベネット・ミラー監督、スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、シエナ・ミラー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ出演
☆1984年のロス・オリンピックで金メダルを獲得したレスリング選手マーク・シュルは、生活が苦しく引きこもる日々を送っていた。ある日、大財閥デュポン家の御曹司ジョン・デュポンが、マークを呼び出し、敷地内にレスリング・チーム“フォックスキャッチャー”を作りたい、と持ち掛ける。
大富豪と内にこもりやすいレスラーの緊張した関係が重くて息苦しくて…。こんなにどんよりした雰囲気のスポーツ映画は初めて。オリンピックでのメダル獲得シーンを見ても、気持ちは落ち込むばかり…。いわゆる普通のお父さんでいいコーチで明るいキャラの兄が、神経症気味のデュポンや、弟マークにとっては嫉妬の対象となってしまったのが、なんともやり切れず。デュポンの心の闇は、誰にも共有できない。富豪すぎるが故の孤独、ともいえるでしょう。2015.2

昔々、アナトリアで ONCE UPON A TIME IN ANATOLIA
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督、ムハンメト・ウズネル、イルマズアルドアン出演
☆男を殺し、土に埋めた罪で捕まった男と、現場検証に向かう刑事。暗闇の荒野で、現場はなかなか見つからず、犯人も覚えていず、周りはいらだつばかり…。警官たちの憂鬱や裏話を、現場探しのなかで見せていく、という設定がなんともユニーク。画面が終始暗く、動きがすくないので、正直、DVDで見るのはつらいものがあったが、ジェイラン監督の個性はしっかり生きている作品でした。2015.2

クスクス粒の秘密 LA GRAINE ET LE MULET/THE SECRET OF THE GRAIN
アブデラティフ・ケシシュ監督、アビブ・ブファーレ、アフシア・エルジ出演
☆仕事を失った港湾労働者の男は、義理の娘とともに、港でチュニジア料理の船上レストランを開くことを決意。だが、レストラン開業までに多くの困難が持ち上がり…。クスクス料理の天才である元妻、口うるさい娘、浮気癖のある息子など、家族関係が複雑に絡み合い、みんなが言いたい放題なので、見ていてかなり疲れた。中東アラブ系映画にありがちなんだけど、苦手なくどさだった…2015.1

サバイビング・モロッコ DEATH FOR SALE
フォージ・ベンサイーディ監督、フェド・ベンシェムジ、イマーネ・エルメクラフィ出演
☆街のこそ泥マリクは、酒場のダンサー、ドゥニアに夢中になるが、彼女が警察に逮捕されてしまう。刑事は、ドゥニアの釈放と引き換えに、マリクへ情報屋となるよう命じる。
騙しだまされ…の展開が絶妙で楽しく見れました。2015.1

Three Monkeys ~愚かなる連鎖~
ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督、ヤヴーズ・ビンゴル、ハティジェ・アスラン出演
☆トルコの海の街で、ある政治家がひき逃げ事故を起こす。男は知り合いの運転手エユップに、大金と引き換えに身代わりを頼む。エユップが刑務所に入っている間、金の受け取りは息子と妻が引き受けたが、妻が政治家と関係を持ってしまう。
男が事故の身代わりになったことをきっかけに、家族が崩壊していく様がリアルに描かれている。さえないオヤジ運転手の妻が、やけに色っぽくて美人すぎると思ったら…。あれよあれよと物語がドツボにはまっていくのが面白い。ジェイランの作品は地味で暗いんだけど、妙な余韻がある。後味は悪いが嫌いじゃない。2015.1

ブルージャスミン BLUE JASMINE
ウディ・アレン監督、ケイト・ブランシェット、アレック・ボールドウィン、ルイス・C・K出演
☆投資成金の夫とのセレブ生活が崩壊し、妹の住むサンフランシスコへとやって来たジャスミン。独り言が止まらず、プライドも捨てられないジャスミンは、再びセレブな生活へ戻ろうとするが…。神経衰弱気味の元セレブ女を演じたケイトにアッパレ。かわいそうな女ではあるのだが、笑ってしまった。ウディ・アレン節健在。姉と真逆で下品な男好きな妹のキャラも受けました。2015.1


殺人の告白 CONFESSION OF MURDER
チョン・ビョンギル監督、チョン・ジェヨン、パク・シフ、キム・ヨンエ出演
☆1990年、女性連続殺人事件を担当したチェ刑事は、あと一歩のところで犯人を捕り逃す。15年が経過し時効が成立。その2年後、イ・ドゥソクという男が自分が犯人と名乗り出で本を出版する。
ハラハラ感、スピード感、悪役の怪しい美しさも完璧の上質のサスペンス。トン・マッコルの時から好きだったけどジェヨンはやっぱりいい味だしてます。種明かしも予想外、とってつけたようなハッピーエンドでもないのが私好み。監督はまだ新人ということ。今後が楽しみです。2014.12

シャニダールの花
石井岳龍監督、綾野剛、黒木華、刈谷友衣子、伊藤歩出演
☆女性の胸に寄生する花を使った新薬の研究所で働く大瀧は、花の母親となる女性たちのセラピスト響子に惹かれていく。
かつてパンク映画の急先鋒だった石井監督なので、過去作品とは真逆の静かな女性映画なのに驚いた。若い主演二人の魅力が十二分に出ていて好感が持てました。2014.12

ストックホルムでワルツを MONICA Z
ペール・フリー監督、エッダ・マグナソン、スベリル・グドナソン、シェル・ベリィクヴィスト出演
☆スウェーデンの田舎町に暮らすシングルマザーのモニカ。電話交換手の仕事をしながらも、ジャズ・シンガーとしての成功を夢見る日々。そんなある日、ジャズ・クラブのステージに立つ彼女の歌声を聞いた評論家から、ニューヨークで歌うチャンスをもらうモニカだったが…。
「ワルツ・フォー・デビー」好きとしては、モニカとエバンスの関係が気になったのだが、この映画はモニカの成功と挫折の物語をドラマチックに描いている。可憐な美貌に似合わないクーガーっぷりには驚かされたが、スターとしてのし上げる女はやっぱり根性悪いぐらいじゃないとね。クライマックスの「ワルツ・フォー・デビー」には涙腺ゆるみっぱなし。何度聞いてもいい歌だわ~。2014.12

孤独な嘘 SEPARATE LIES
ジュリアン・フェロウズ監督、トム・ウィルキンソン、エミリー・ワトソン、ルパート・エヴェレット出演
☆会社役員を務めるジェームズは妻のアンと共に郊外で暮らしている。ある時、ジェームズ邸に通う家政婦の夫が何者かの車に轢かれ、命を落としてしまう。富豪の放蕩息子、ビルが容疑者となるが、ビルの車に同乗していたのはアンだった…。大人の男女の愛憎を繊細に描いている。いい人=夫に満足できない妻よりも、夫目線で描かれているのが新鮮でした。3人の演技派俳優の技が光った秀作。2014.9

シモンの空 L'enfant d'en haut
ウルスラ・メイヤー監督、ケイシー・モッテ・クライン、レア・セドゥ出演
☆スイスの高級リゾート地で、観光客から金目の物を盗んで生活費を稼ぐ12歳の少年シモン。姉のルイーズは、シモンが泥棒で稼いだ金に依存しつつ、男たちと遊び歩いている。姉の新しい恋人に嫉妬したシモンは…。 ベルリン国際映画祭特別銀熊賞。コソ泥シモンと姉の関係が暴かれるクライマックスは秀逸。シモンがウソをついて憧れるリッチな家族との関係も涙を誘った。それでもたくましく生きてほしい、と思わせる、とってもいい映画。2014.9

罪の手ざわり 天注定 A TOUCH OF SIN
ジャ・ジャンクー監督、チャオ・タオ、チアン・ウー、ワン・バオチャン出演
☆職を失った炭鉱夫のダーハイは、同級生の実業家ジャオと村長に激しい怒りを募らせる。湖北省で風俗サウナの受付係をしているシャオユーは、札束で殴られセックスを強要される…。中国の各地を舞台に底辺で暮らす人々の苦しみや怒りを丁寧に切り取ったオムニバス。派手さはないけど、胸が苦しくなるような悲しみが伝わってきました。カンヌ2013脚本賞。2014.11

ジャ・ジャンクー、フェンヤンの子 A GUY FROM FENYANG: JIA ZHANGKE
ウォルター・サレス監督、ジャ・ジャンクー、ワン・ホンウェイ、チャオ・タオ、ユー・リクウァイ出演
☆ジャ・ジャンクーの過去作品と、彼の生い立ちに焦点を当てた見応えのあるドキュメンタリー。彼の映画のミューズ、チャオ・タオとの出会いのエピソードや、父との思い出話など、興味深かった。ジャンク―作品は大好き、というわけではないのだが、なぜか縁がある。最初に見たのは香港国際映画祭お『世界』。満員の会場と監督、主演女優の華やかな舞台挨拶が印象に残っている。その後、『プラットフォーム』『青い稲妻』はDVDで、『長江哀歌』は映画館で見た。『長江哀歌』の主演俳優が監督の従兄というのも初めて知ったが、いい演技してた記憶がある。もう一度、彼の作品を見返してみたくなりました。2014.11 東京フィルメックスにて

花嫁と角砂糖 A CUBE OF SUGAR
レザ・ミルキャリミ監督、サイド・プールサミミ出演
☆イランで暮らすファミリー。末娘が海外で暮らす金持ちと結婚することになり、結婚式のために、親戚が集まってくるが…。
昔みたインド映画をほうふつとさせる作品。女性たちの衣装や家のつくりは、古くさいのだが、しっかりとスマホや携帯電話、パソコンでのテレビ電話を利用しているその違和感が面白かった。伝統的生活にこだわりながらも、現代の機器は否応なしに浸食している。イランの若者たちの将来はどうなっていくのだろう。遠い中東の国の未来が気になってしまった。2014.11

パッション PASSION
ブライアン・デ・パルマ監督、レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、カロリーネ・ヘルフルト出演
☆野心にあふれたクリスティーンは、広告会社の支社長として敏腕をふるっている。優秀な部下イザベルのアイデアを自分の手柄にしたクリスティーンは、反撃した部下への嫌がらせを敢行。イザベルは、心を病み、クリスティーンの奴隷となるのだが…。クリスティーンとイザベルの激しい女の嫉妬心が見応えあり。こういうシンプルなサスペンスは久しぶり。デパルマの腕の見せ所って感じて大いに楽しめた。フランス映画のリメイクだそうです。2014.11

バックコーラスの歌姫たち 20 FEET FROM STARDOM
モーガン・ネヴィル監督、ダーレン・ラヴ、メリー・クレイトン、リサ・フィッシャー、タタ・ヴェガ、クラウディア・リニア出演
☆輝かしいスターたちと競演しながらも日に当たらないバックシンガーたちにスポットを当てたドキュメンタリー。抜群の歌唱力があっても舞台の中央に立てるのは一握り。スターになるのが正しい人生とも思わないが、やっぱり挫折感や卑屈な気持ちはあるよね、よーくわかります。それでも、おばちゃんになっても好きな歌を歌い続けられるのはバックコーラスのほうなのかも。
ホイットニーみたいな栄光と挫折の激しいスター人生も見てしまった今となってはしみじみ思えます。自分もジャズを歌っていた時期もあったけど、いつも発表会に居心地の悪さを抱いていた。根っからのコーラス向きな性格なんだと実感。見終わった後、華やかでない人生を送る多くの人々、みんなに乾杯したくなりました。2014.12


ROOM237
ロドニー・アッシャー監督
☆スタンリー・キューブリック監督が1980年に手がけた伝説的ホラー映画「シャイニング」の数々のシーンをファンの目から解剖していくドキュメンタリー。超マニアックなので、途中で飽きてしまいました…。2014.12

6才のボクが、大人になるまで。BOYHOOD 
リチャード・リンクレイター監督、パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレイター、イーサン・ホーク出演
☆テキサスの田舎町に住む6歳の少年メイソンは、母と姉と3人暮らし。父は離婚してアラスカに放浪中。
母は、キャリアアップを目指して遠くの大学への入学を決意する。
12年にもわたって同じ家族(同じ役者)を追い続け、1本の映画にしてしまう、というその発想がまず圧巻。娘役が監督の実娘ということもあるのだろうけど、よく完成させたよなあ、というのが率直な感想。
少年役の子の顔が七変化するのも面白い。ちょうど15歳ごろが気持ち悪い顔になってて、大丈夫かあ?と心配したけど、18歳にはしっかりイケメンになってました。パトリスの体型の変化もやばかったけど、そこも自然体。イーサンもパトリスも12年の間に実際に子供ができたり、離婚してるんだよね。そんな役者たちの実人生と勝手にリンクさせながら見てしまいました。映画の内容はごくごくシンプルな、人生いろいろ物語なんだけど、発想と作り方にアッパレ。2014.12

マラヴィータ MALAVITA
リュック・ベッソン監督、マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロ製作、ロバート・デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、トミー・リー・ジョーンズ出演
☆フランス・ノルマンディ地方の田舎町に引っ越してきたブレイク一家。主のフレッドは元マフィアのボスでFBIの保護証人プログラムで身を隠す日々を送っている。ところが家族は揃いも揃って過激で…。楽しかった―!映画が「グッド・フェローズ」に変わっていたというエピソードが一番のヒットでした。2014.11

毎日かあさん
小林聖太郎監督、小泉今日子、永瀬正敏、古田新太出演
☆漫画家サイバラと、アルコール依存症と格闘中で入退院を繰り返す夫、カモシダ。二人が築いたファミリーの別れまでを描いた作品。元夫婦だった長瀬とキョンキョンが、どんな夫婦役を演じたのか興味があってみてみたが、あんまり現実感のない映画だった。サイバラの漫画と人生は興味があるので、映画化は一通り見ているのだが、浅野忠信がカモシダを演じた映画のほうが哀愁があって私は好きです。監督、どんな人?と思って検索したら、上岡龍太郎の息子だったのに驚きました。2014.11

マチェーテ・キルズ MACHETE KILLS
ロバート・ロドリゲス監督、ダニー・トレホ、ミシェル・ロドリゲス、ソフィア・ベルガラ、カルロス・エステベス、レディー・ガガ、アントニオ・バンデラス、ジェシカ・アルバ、デミアン・ビチル、メル・ギブソン出演
☆マチェーテ1が最高に楽しかったのだが、パート2はガガやメルまで出てきてしまい、話がなんだかとっちらかってました。2014.12

マップ・トゥ・ザ・スターズ MAPS TO THE STARS
デヴィッド・クローネンバーグ監督、ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、ジョン・キューザック、ロバート・パティンソン出演
☆フロリダからハリウッドにやってきた若い女性アガサは、エキセントリックな中年女優ハヴァナの付き人の仕事を得る。顔にやけどの跡があるアガサに興味を持った若い運転手は、アガサと深い関係になる。
一方、ハヴァナが通うセラピスト、ワイス一家は、息子のベンジーが子役スター。豪華なセレブ生活を送っていたが、過去に大きな秘密を抱えていた。
みんなが怪しげ度満載のクローネンバーグ監督らしい作品で、大好きです。ただ、激しい頭痛と戦いながらの鑑賞だったため、思うように楽しめず。最近のクローネンバーグの映画の中では一番の出来だとは感じました。もう一度見直したい作品。2015.1

嗤う分身 THE DOUBLE
リチャード・アイオアディ監督、ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン出演
☆内気で存在感の薄い青年サイモンの会社に、ある日、自分と売り二つの男ジェームズが現れる。上司にも女性たちにも人気のジェームスは、次第にサイモンを利用するようになり…。
じめっとした陰湿なテイストではあるのだが、どこか笑えるシニカルさもあり、嫌いじゃない世界。昔のコーエン兄弟作品っぽくて共感もてました。寝てしまったのが残念。もっと入り込めたらきっと楽しめたのになあ。2014.12

ふがいない僕は空を見た
タナダユキ監督、永山絢斗、田畑智子、窪田正孝、小篠恵奈、銀粉蝶、原田美枝子出演
☆高校生の卓巳は友人に誘われて行ったアニメの同人誌販売会で、あんずと名乗るアニメ好きの主婦・里美と出会う。卓巳は、彼女とのコスプレ情事に溺れる。
貧乏青年を演じた窪田君見たさに借りてみた。田畑智子と永山の不倫&情事シーンがやっぱり印象に残ったかな。SEXシーンを美化していないのが好印象。窪田君に肩入れしてたせいか、不倫に走る主婦にはまったく感情移入できず。2014.11

レッド・ファミリー RED FAMILY
イ・ジュヒョン監督、キム・ギドク脚本、キム・ユミ、チョン・ウ、ソン・ビョンホ出演
☆郊外の住宅地に暮らす仲睦まじい4人家族。ところが、その正体は妻役のベクを班長とする北朝鮮のスパイ・グループだった。ギドクが脚本なので、もっと毒々しいエグイ展開を期待していたら、お涙頂戴の古臭いストーリーと演出でがっかり…。2014.11

私の、息子 CHILD’S POSE
カリン・ペーター・ネッツァー監督、ルミニツァ・ゲオルギウ、ボグダン・ドゥミトラケ出演
☆ルーマニアの首都で暮らす有名建築家のコルネリアは、一人息子バルブが交通事故で少年を死なせてしまったことに衝撃を受ける。金とコネを利用して警察の捜査に介入するなど、なりふり構わぬ裏工作に奔走するのだったが…。2013年ベルリン国際映画祭金熊賞。いい大人なのに息子の人生へ異常なまでに干渉する母の姿が痛くて痛くて…。母じゃないから気持ちわからず、ただただ辛かったです。2014.11


エル・ニーニョ El Nino
ダニエル・モンソン監督、ルイス・トサル、ヘスス・カストロ、セルジ・ロペス、イアン・マクシェーン出演
☆麻薬取引に手を染めた命知らずの若者たちと、密売組織の捜査に全力を注ぐ二人の警官。麻薬密売の巣窟と言われる危険なジブラルタル海峡を舞台に繰り広げられる、犯罪組織と警察の攻防を描く。スペイン、イギリス、モロッコ等、複雑な境界をもつジブラルタル海峡ならではのサスペンス。船とヘリコプターの追いかけっこというのが新鮮で楽しめた。イケメン男ニーニョの恋愛話はちょっとハリウッドっぽくて、好きになれなかったけど、そのほかは気に入りました!2014.10 ラテンビート映画祭にて

エル・ソムニ-夢の饗宴ー  El Somni El Celler de Can Roca
フランク・アルー監督、ジョアン・ロカ、ジョセップ・ロカ、ジョルディ・ロカ出演
☆バルセロナ郊外にある世界有数の高級レストラン「エル・セジェール・デ・カン・ロカ」のシェフ、ロカ三兄弟が作り出す芸術的料理の数々を、幻想的な映像と、魅惑的なオペラで表現した究極の美食の会の舞台裏を描いたドキュメンタリー。別世界でリッチなイベントには興味を持ったが、ちょっとスタッフのコメントが多すぎてみていて、落ち着かなかった。料理の映像と音楽だけでも十分楽しめたのになあ。残念。2014.10 ラテンビート映画祭にて

Flowers Loreak
ホセ・マリ・ゴエナガ、ジョン・ガラーニョ監督、ナゴレ・アランブル、イジアル・アイツプル、イジアル・イトゥーニョ出演
☆身体に不安を抱える中年女性アネのもとに、ある日、匿名の花束が届いた。以来花束は、毎週、同じ時間に届くが、贈り主はわからない。アネは謎の人物からの花束に密かなときめきを覚える。一方、ルルデスは口うるさい義母との関係に問題を抱えていた。花の送り主を挟んで、揺れる女性の心理を丁寧に描いていて好感が持てる作品。バスク語ってまったくスペイン語と共通点なしなのが、興味深かったです。2014.10 ラテンビート映画祭にて

ガラパゴス・アフェア ―悪魔に侵された楽園― The Galapagos Affair: Satan Came to Eden
ダニエル・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン監督、ケイト・ブランシェット、トーマス・コレッチマン、ダイアン・クルーガー声の出演
☆1930年代、ダーウィンの進化論で名高い野生動物の楽園ガラパゴス諸島で起こった連続失踪・怪死事件の謎に迫ったリアルな「藪の中」ドキュメンタリー。ガラパゴス諸島といえばイグアナ、ゾウガメ、ぐらいしか知らなかったので、人間が棲んでいるというのがまず新鮮。自然の中で暮らすために移住した人々の間で起こったドロドロの人間関係が写真を通じて伝わってきて興味津々。トラブルメーカーのクーガー女が作ったチープなリアル映画が一番印象に残りました。2014.10 ラテンビート映画祭にて

Living Is Easy with Eyes Closed Vivir es facil con los ojos cerrados
ダビド・トルエバ監督、ハビエル・カマラ、ナタリア・デ・モリーナ、フランセスク・コロメール出演
☆66年、ジョン・レノンが映画の撮影でスペインを訪れると知った英語教師アントニオは、憧れのジョン・レノンに会いに旅に出る。道中、若い女性ベレン、家出少年のファンホと出会い、彼らを乗せてアントニオの旅は続く…。とってもシンプルなロードムービー。あまりにもシンプルすぎて見飽きた感あり。2014.11 ラテンビート映画祭にて

スガラムルディの魔女 Las brujas de Zugarramurdi
アレックス・デ・ラ・イグレシア監督、ヒューゴ・シルヴァ、マリオ・カサス、カロリーナ・バング、テレール・パベス、カルロス・アレセス、カルメン・マウラ出演
☆白昼堂々と強盗計画を実行したホセとその仲間が、実際に魔女伝説の地として知られる町、スガラムルディに迷い込み、恐ろしい魔女たちの洗礼を受けることに。人喰い魔女たちからの大脱出を描いたジェットコースタームービー。
女は怖い、がテーマのエンタメ作品。後半に出てきた怪物には大爆笑。「トガリネズミ」にも出ていた妻役のマカレナ・ゴメス、いい味だしてます。2014.10 ラテンビート映画祭にて

トガリネズミの巣穴 Musaranas 
エステバン・ロエル、フアンフェル・アンドレス監督、マカレナ・ゴメス、ナディア・デ・サンティアゴ、ルイス・トサル出演
☆舞台は1950年代のマドリード。不気味なアパートの一室に引きこもり、妹とだけしか接触を持たない中年女性モンセは、ある日、階段から落ちて助けを求める若い隣人カルロスを、部屋にひき入れる。一度引きずり込まれたら二度と外には出られない、巣穴のような密室で起こる猟奇的事件を描いたホラー。
狂った姉モンセの顔がとにかく怖くて怖くて…。残虐なシーンを音や色で表現しているのだが、思わず顔を覆ったり声出したり、飛び上がったり、と久々にみた本格ホラーを十二分に堪能できました。怖かったけど、もう一度見てみたい。「ミザリー」をクラシカルにしたテイスト、気に入りました! 2014.10 ラテンビート映画祭にて

ビースト 獣の日 El dia de la Bestia
アレックス・デ・ラ・イグレシア監督、アレックス・アングロ、アルマンド・デ・ラツア、サンティアゴ・セグーラ出演
☆黙示録の研究者で司祭のアンヘルは「1995年12月25日、世界を滅ぼす悪魔“反キリスト”がマドリードに降臨する」という黙示録のメッセージを解読。悪魔退治のため、自ら悪に手を染め、悪魔との接触を試みる。
信仰心の強いスペインで、カソリックや聖書をここまで皮肉った作品を20年前に作った監督の挑戦にまず拍手。宗教感は日本人にはちょっと理解しにくいのだが、シンプルにブラック・コメディとして楽しむことができた。主演を演じた俳優は1か月前に事故で亡くなったそうです。いぶし銀演技でした。一番気に入ったキャラはデスメタル男の母親。あれが魔女の原点とみました。2014.10 ラテンビート映画祭にて

いとしきエブリデイ EVERYDAY
マイケル・ウィンターボトム監督、シャーリー・ヘンダーソン、ジョン・シム出演
☆服役している父親の帰りを待ちわびながら、父親不在の日々を長期にわたって過ごすある一家の日常を、子どもたちの成長を丁寧に描き出す。ドキュメンタリー風に子供たちの姿を追っているのが好感が持てた。2014.8

海と大陸 TERRAFERMA
エマヌエーレ・クリアレーゼ監督、フィリッポ・プチッロ、ドナテッラ・フィノッキアーロ、ミンモ・クティッキオ出演
☆イタリアの南部に浮かぶ小島で暮らす漁師たしは、観光客の受け入れでなんとか生計を立てている。20歳の青年フィリッポとその祖父は、アフリカから危険を冒して逃げてきた難民を匿うことになる。
美しい海の景色と反比例するかのような、アフリカの難民たちの過酷な人生。きれいごとだけで済まされない現実を見せられて心が痛くなりました。2014.7

エスケイプ・フロム・トゥモロー ESCAPE FROM TOMORROW
ランディ・ムーア監督、ロイ・エイブラムソン、エレナ・シューバー出演
☆失業した父親が、それを隠したまま家族と過ごす夢の国のテーマパークで、不気味な幻想に苛まれていく。ディズニー・ワールドで無許可撮影を敢行したことがすごい。正直、物語はB級でよくわからず、だったが。いろいろ深読みできそうなホラー映画でした。2014.8

家族の灯り O GEBO E A SOMBRA
マノエル・ド・オリヴェイラ監督、マイケル・ロンズデール、クラウディア・カルディナーレ、ジャンヌ・モロー出演
☆ヨーロッパの小さな港町。帳簿係のジェボは、失踪した息子ジョアンの嫁と、妻と3人でつつましく暮らしている。ある日、突然ジョアンが家に姿を現わすのだが…。一幕ものの静かな作品。エンディングは少々ショッキングだったが、味わい深かった。2014.7

凶悪
白石和彌監督、山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴出演
☆雑誌の編集部に、死刑囚の須藤から手紙が届いた。そこには殺人事件の黒幕を裁いてほしい、と記されていた。顔をそむけたくなるような残忍なシーンが続いたので見ていて辛かったが、各々の迫真の演技は見応えあり。2014.7

グレン・グールド GENIUS WITHIN: THE INNER LIFE OF GLENN GOULD
ミシェル・オゼ監督
☆伝説の天才ピアニスト、グレン・グールドの素顔に迫る音楽ドキュメンタリー。ほとんどグールドのことを知らなかったので新鮮でした。2014.8

グレート・ビューティー/追憶のローマ LA GRANDE BELLEZZA
パオロ・ソレンティーノ監督、トニ・セルヴィッロ、カルロ・ヴェルドーネ、サブリナ・フェリッリ出演
☆作家のジェップは、夜な夜なセレブリティたちのパーティーに顔をだし、享楽的な人生を送っている。初恋の女性エリーザの訃報を聞き、大きな喪失感に見舞われたジェップの価値観が変わりはじめる…。
フェリーニ作品をほうふつとさせる、懐かしのイタリア映画の香りが漂う大人の映画。大勢の人物が、脈絡なく出てくるので、正直わかりづらかったのだが、まったく身近でないイタリアンセレブの世界は興味深かったです。2014.9

恋するリベラーチェ BEHIND THE CANDELABRA
スティーヴン・ソダーバーグ監督、マイケル・ダグラス、マット・デイモン、ダン・エイクロイド、ロブ・ロウ出演
☆希代のエンターテイナー、リベラーチェは、純朴な動物好きな青年スコット・ソーソンと出会い、彼を雇い入れる。やがて恋人同士となった二人だったが…。マイケルのオネエ演技と、デイモンの変貌は見応えあり。さすが、の演技でした。今ならゲイであることを隠す必要もないのだろうけど…。ギラギラと脂ぎった70年代エンタメ界の裏話も興味深かったです。2014.9

ザ・プラマー/恐怖の訪問者 THE PLUMBER
ピーター・ウィアー監督、ジュディ・モリス出演
☆夫の留守中、毎日訪れる配管工。水道の修理は一向にはかどらず、浴室はどんどん破壊される。妻の恐怖は増幅し……。シンプルなサイコスリラー。見応えありました。2014.8

少年H
降旗康男監督、水谷豊、伊藤蘭、吉岡竜輝、小栗旬、早乙女太一出演
☆昭和初期の神戸。仕立屋を営む父・盛夫とクリスチャンの母・敏子、2歳下の妹・好子の家族4人で暮らす少年Hは、戦争前の息苦しい社会の中でも、自分の目で見て考えることの大切さを学んでいく。素直に、いい映画でした。かわいい顔してけっこう現実的な母のキャラが好き。2014.8

そして父になる
是枝裕和監督、福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー出演
☆エリート会社員、野々宮は、息子が赤ん坊の時に取り違えられた事実を知らされる。
取り違えられた息子たちの戸惑いと、父になりきれない男の成長を静かに描いている。いい映画でした。2014.7

プロミスト・ランド PROMISED LAND
ガス・ヴァン・サント監督、マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド出演
☆大手エネルギー会社の幹部候補スティーヴは、スーとともにある田舎町を訪れる。彼の目的は、シェールガス採掘権を町ごと買い占めること。ところが、地元の老教師が反対の狼煙を上げ、さらには環境活動家のダスティンが現れ、彼らの買収を妨害し始める。
シェールガス採掘の汚染の実態というのをまったく知らなかったので身のつまされた。原子力にしろガスにしろ石油にしろ、エネルギーを生み出すには、リスクが伴うものだと実感。エンディングは少々、納得できず、だったが。「たかが仕事」と割り切ったマクドーマンドにもっとも感情移入できた私も相当乾いてしまっているんだ、と痛感した。2014.8

タイピスト! POPULAIRE
レジス・ロワンサル監督、ロマン・デュリス、デボラ・フランソワ出演
☆田舎から都会へ出てきたローズは、ルイの経営する保険会社に秘書として採用された。ルイは彼女の特技である“タイプの早打ち”に注目し、タイプライター早打ち世界大会への出場を持ちかける。ちょっとドジなローズのキャラがいかにもフランスのコメディ、という感じ。かわいかったです。2014.9

ホドロフスキーのDUNE JODOROWSKY'S DUNE
フランク・パヴィッチ監督、アレハンドロ・ホドロフスキー、ミシェル・セイドゥー出演
☆カルトな人気を不動のものにしたホドロフスキー監督は、1975年、SF大河小説『デューン』の映画化に取り組む。その一大プロジェクトには、メビウスやダン・オバノン、H・R・ギーガーをはじめとした各界のトップ・アーティストが集結し、大いに注目を集めた。しかし結果的には資金難に陥り、撮影を前に頓挫してしまう。
ホドロフスキーのDUNE、見てみたかったよなあ。リンチの駄作と言われる「DUNE」の前にこんな逸話があったとは。新進気鋭のレフン監督がホドロフスキーを尊敬していると知れたのもよかったです。子供のように無邪気なホドロフスキー、まだまだ現役で頑張ってほしい。2014.9

アクト・オブ・キリング THE ACT OF KILLING
ジョシュア・オッペンハイマー監督
☆1965年から66年にかけて、インドネシアで発生した大虐殺。加害者のリーダー、アンワル・コンゴと仲間たちは今でも、大手を振って生き延びている。
本作は、そんな殺人部隊にカメラを向け、惨殺再現ドラマの制作風景や、彼らの日常を追ったドキュメンタリーである。
殺人マシンのリーダーと仲間たちのふてぶてしさ、品のなさには、思わず顔をしかめてしまった。罪の意識もなく生き続けられる感性に、最初は怒りさえ覚えたのだが、よく考えれば、彼らの感情が麻痺しているのは、持って生まれたものではなく社会が作り出したもの。作られた殺人マシンなのだと思うとぞっとした。
チンピラ軍団のデブのリーダーのキャラはムカつくけど、かなり間抜けで、笑ってしまった。コメディアンの素質あるのにね。
かなりエグい、と聞いてはいたが、思ったほど衝撃も受けず、淡々と見ることができた。日本にも戦時中はこういう悪魔のような軍人が大勢いたのだろう。すべては現実…。認めたくはないけど、いたって普通の人間である自分にも、どこかに悪魔が潜んでいる気がして気がめいってしまいました…。2014.5

悪の法則 THE COUNSELOR
リドリー・スコット監督、マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、ハビエル・バルデム、ブラッド・ピット出演
☆敏腕弁護士は、出来心から闇ビジネスに手を出してしまう。実業家ライナー、仲介人ウェストリー、そしてライナーの恋人など、味方か敵かわからない怪しげな連中と、麻薬カルテルとの攻防に巻き込まれていく。
豪華役者人が魅力のクライムサスペンス。容赦ない悪人たちの制裁が怖くてぞっとした。けど、思ったほどゾクゾク感はなし。2014.7

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 INSIDE LLEWYN DAVIS
ジョエル&イーサン・コーエン監督、オスカー・アイザック、キャリー・マリガン、ジョン・グッドマン、ジャスティン・ティンバーレイク、ギャレット・ヘドランド出演
☆舞台は1961年、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ。フォークシンガーのルーウィンは、友人宅を転々としながら、場末のバーで歌う日々を送っている。裕福な友人宅から逃げた猫に翻弄されたり、シンガー仲間の恋人から、妊娠を告げられるなど、踏んだり蹴ったりの毎日。さらにはNYからシカゴまで、怪しげな男二人と旅をする羽目になり…。60年代の実在のフォークシンガー、デイヴ・ヴァン・ロンクがモデルとのこと。でも、実話かどうか、よりも、オスカーの歌声にもうメロメロ。役者としても注目していたのだが、顔だけじゃなく、声がセクシーで、酔いしれてしまった。コーエン作品らしく、クスッと笑える小細工が面白くて、肩の力を抜きながら見れた。この映画の準主役である猫ちゃんの可愛さもグッド。地味な物語ではあるのだけど、好みです。無口なドライバーを演じた役者、かっこいい、と思ったら、「オン・ザ・ロード」ギャレット・ヘドランドでした。チョイ役でしたが、存在感あり。2014.6

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ ONLY LOVERS LEFT ALIVE
ジム・ジャームッシュ監督、ティルダ・スウィントン、トム・ヒドルストン、ミア・ワシコウスカ、アントン・イェルチン出演
☆デトロイトのロック・ミュージシャン、アダムは、血液を病院で買いながら生き延びているバンパイア。モロッコのタンジールに暮らす妻イヴが久しぶりに訪れ、満ち足りた時間を過ごす。しかし、イヴの妹エヴァの訪問でその静かで穏やかな日常が狂いはじめる。
バンパイア映画好きだったので、昔は選んで見ていたのだが、ここ10年はすっかりご無沙汰。人を傷つけずに生き延びることを選んだはずのバンパイア・カップルの末路が悲しかったです。ティルダとトムバンパイア役にぴったり。二人の雰囲気と寄り添い加減が心地よかったです。2014.5

とらわれて夏 LABOR DAY
ジェイソン・ライトマン監督、ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス出演
☆シングルマザーのアデルは、一人息子ヘンリーとともに味気ない毎日を送っている。ある日、スーパーマーケットで、ケガをしている男に声を掛けられ、車で連れ帰るよう脅される。まもなく男は、脱獄して逃げているフランクと判明。犯罪者でありながら、母子へ真摯に接するフランクに、アデルは次第に惹かれていく。
寂しい女がたくましい男に惹かれていく女性心理が丁寧に描かれていて好感が持てた。物語はお決まりのパターンだが、ウィンスレットの上手さが光ってました。2014.6
関連CINEMA:「JUNO/ジュノ」「マイレージ、マイライフ」

グランド・ブダペスト・ホテル THE GRAND BUDAPEST HOTEL
ウェス・アンダーソン監督、レイフ・ファインズ、F・マーレイ・エイブラハム、エドワード・ノートン、マチュー・アマルリック、シアーシャ・ローナン、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォー、レア・セドゥ出演
☆1932年のズブロッカ国。高級ホテルの常連客が亡くなり、遺産の絵画が、懇意にしていたコンシェルジュ、グスタフに相続された。遺族は、絵画を奪おうとするが、グスタフとベルボーイのゼロは絵画を守るために奔走する。
ブラジルで自殺したという作家シュテファン・ツヴァイクの世界観に影響を受けたアンダーソン監督のオリジナル作品。一風変わったお伽話風なのだが、ナチスドイツの台頭や、迫害をうける人々の様子を皮肉たっぷりに描いていて、見ごたえあり。衣装(キューブリック作品のデザイナー)やセットも豪華。キャストはオールスター。機内の古い画面で見てしまったのがもったいないぐらいの力作でした。2014.6

her/世界でひとつの彼女
スパイク・ジョーンズ監督、ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、スカーレット・ヨハンソン出演
☆未来のロサンゼルス。セオドアは、離婚調停中の妻キャサリンとの思い出を断ち切れず、傷心の日々を送っている。そんな彼の心を癒してくれるのは、最新式人工知能“サマンサ”。セクシーで知的なサマンサの虜になったセオドアは本気で恋をしてしまう。
二人の恋の会話が字幕なし英語だったため、ほとんど聞き取れず。それでも、スカーレットのセクシーさと、繊細なセオドアのキャラには引き込まれるものがありました。2014.6

ロボコップ ROBOCOP
ジョゼ・パヂーリャ監督、ジョエル・キナマン、ゲイリー・オールドマン、マイケル・キートン、アビー・コーニッシュ、サミュエル・L・ジャクソン出演
☆2028年。巨大企業オムニコープはロボット技術を世界を支配している。ある日、肢体を失った警官アレックス・マーフィは、手術により、最強のサイボーグ警官“ロボコップ”として復活する。
80年代の名作を「エリート・スクワッド」の監督、パジーリャがリメイク。肢体を失った警官がロボットとして復活する。旧作はチープさと、主役の魅力が印象的だったのだが、今作はチープでもなく、主役もいまひとつだったので、ピンとこず…。2014.6

帰郷 Withering
ミロシュ・プシッチ監督、ブラニスラフ・トリフノヴィッチ、ボリス・イサコヴィッチ出演
☆セルビアの田舎に、ベオグラードで働いていたヤンコが帰ってきた。夫を亡くしたあと、一人で家を守ってきた母は、家の修理をして出迎えるが、息子はスイスに移住すると言い出す。いつも陽気な酒場の主は、ヤンコの帰郷を喜ぶ一方、息子の自殺以来心を閉ざした妻、娘のアルコール依存といった問題をかかえていた。
セルビアの田舎の風景を見て「ライフ・イズ・ミラクル」を思い出し、トラブルだらけだけど、それでも明るい酒場のオヤジのキャラが、クストリッツア作品と同じだ、と思ってうれしくなったり…。バルカンの人々の半ばやけっぱち風の明るさ・豪快さが自分はやっぱり好きなんだと再確認。田舎を飛び出したい息子世代の葛藤、土地に縛られる親世代のこだわり、それぞれどこの世界でも共通のテーマだし、各々に共感できた。よくこなれた脚本だし、出演者もそれぞれ名演技だったので、てっきり年配の監督かと思ったら若くてびっくり。海外を拠点にせず、セルビアで活動しているとのこと。今後の作品が楽しみです。2014.7 SKIPシネマ映画祭にて

マージン・コール MARGIN CALL
J・C・チャンダー監督、ケヴィン・スペイシー、ポール・ベタニー、ジェレミー・アイアンズ、ザカリー・クイント、デミ・ムーア、スタンリー・トゥッチ出演
☆大手投資銀行で大量の職員が解雇された。リスク管理部門の責任者エリックは、会社を去る際、若い部下ピーターにUSBメモリを渡し解析を依頼。会社が大きな負債を抱えていることに気づいたピーターは、上司に報告する。
世界を混乱に陥れる大金融危機が、こんな小さな火種から生まれることにショックを覚えた。破産状態にあることに気づかず、もしくは隠して投信を運用し続ける会社ってけっこう多いのかも。映画としては地味で盛り上がりにかけたが、内容はかなりリアル。役者陣も豪華で見応えあった。投信は少し儲かった時点で売るほうが、大やけどしなくてよのかも。肝に銘じます。2014.7

ローマでアモーレ TO ROME WITH LOVE
ウディ・アレン監督・出演、 アレック・ボールドウィン、ロベルト・ベニーニ、ジェシー・アイゼンバーグ、エレン・ペイジ出演
☆ローマ旅行中に出会ったイタリアンと婚約したジェリーは、フィアンセ家族と自分の両親を引き合わせる。シャワー中オペラを歌う娘の婚約者の父の美声に魅せられた父親は、彼を担ぎ出してオペラ界への復帰を目論む。一方、建築家の卵ジャックは小悪魔的な恋人の親友によろめき、平凡なイタリア人は突然有名人になり、田舎者のイタリア人夫婦はコールガールや中年俳優と出会い…。ローマを舞台に、小市民の夢のようなお話を面白おかしく切り取ったアレン監督真骨頂のライトコメディ。皮肉は抑え目に、あり得ない夢のようなエピソードをつなげていて、終始笑顔で見ることができた。シャワーを浴びながらオペラ、のシーンは笑いが止まらず。建築家は自分の若いころを回想して若者に進言しているのか、現実なのかちょっとわかりにくかったけど、それもまたあり得ない感があって面白かったです。最近のアレン映画の中では久々にツボにはまった作品です。2014.7

Una pistola en cada mano
Cesc Gay監督、ハビエル・カマラ、リカルド・ダリン、ルイス・トサル、エドワルド・ノリエガ出演
☆中年男たちの日常を切り取ったオムニバスドラマ。すべて、二人の会話だけのオムニバスなので、字幕なしで見るのはきつかったです。オールスターキャストは魅力でしたが、会話が理解できず残念。2014.7

華麗なるギャツビー THE GREAT GATSBY
バズ・ラーマン監督、レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイア、キャリー・マリガン、ジョエル・エドガートン出演
☆青年ニックは、隣の豪邸で、夜な夜な豪華なパーティを開く謎の男ギャツビーに興味を抱く。まもなくニックの従妹とギャツビーが、かつて恋人同士だったことを知るのだが、従妹は対岸の豪邸で富豪の男の妻となっていた。
本が好きなのでつい比べてしまったのだが、デイジー役のマリガンはイメージ通りでよかったです。ディカプリオは、イメージとちょっと違うんだよなあ。好みもあるけどね。パーティシーンは、ラーマン監督の真骨頂という感じ。派手な演出が上手です。2014.5

サルヴォ
ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ監督
☆シチリアの殺し屋サルヴォは、敵対するマフィアの家で、盲目の妹と出会う。
血で血を洗うマフィアの抗争映画かと思っていたら、盲目の女性と冷徹な殺し屋の愛の物語。殺しのシーンや盲目の女性の恐怖感などに、音が効果的に使われていて新鮮に感じた。正直、見やすい映画ではないけれど、二人の監督の次回作も見てみたくなりました。イタリア映画祭にて 2014.4

チョコレートドーナツ ANY DAY NOW
トラヴィス・ファイン監督、アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ出演
☆舞台は1979年のアメリカ。ドラッグクイーンとして舞台に立つルディは、店の客だった検事のポールと知り合い、恋に落ちる。ある日、隣に住む女が薬物所持で逮捕され、一人ダウン症の少年マルコが残されてしまう。見かねたルディは、彼を引き取ろうとするが、ゲイであることが障害になり…。
今やオネエは日本でも認知されているが、70年代は、米国でも、まだゲイに対する偏見に満ちていた。そんな閉鎖的な社会状況や、マイノリティーの生きにくさが丁寧に描かれていて好感がもてた。エンディングにルディが歌うミュージカル風「I shall be released」、新鮮でした。名曲はどんなバージョンでも心にしみます。
麻薬中毒の母親を持ったダウン症の少年が不憫で不憫で…。運命って残酷。でも、受け入れるしかないこともある。悲しい結末だったけど、なぜかさわやかさが残る映画でした。2014.6

トラブゾン狂騒曲 ~小さな村の大きなゴミ騒動 DER MULL IM GARTEN EDEN
ファティ・アキン監督
☆2005年、アキン監督は、祖父母の故郷であるトルコ北東部トラブゾン地域の村チャンブルヌを初めて訪れた。やがて美しい田園風景が広がる村は、ゴミ捨て場による悪臭に悩まされることになる。
ゴミや汚泥、汚水の映像が延々と続く不快さ。できれば見たくない光景なのだが、現実から目を背けることはできない。
都会の繁栄と反比例するかのように、美しかった村がゴミに潰されていく悲しさが伝わってきた。
「こんな環境ではもう住めない、住みたくない」と話す若いカップル、「誰もいなくなっても住み続ける」とかたくなな老人。福島原発事故の放射能汚染地域の人々と重なって、身につまされた。2014.5

25年目の弦楽四重奏 A LATE QUARTET
ヤーロン・ジルバーマン監督、フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー、クリストファー・ウォーケン、マーク・イヴァニール出演
☆弦楽四重奏団“フーガ”のリーダー、ピーターのパーキンソン病が発覚した。彼の引退宣言が、残された3人の間に不協和音をよんでいく。ロバートは、第1ヴァイオリンを弾きたいと言い出し、妻でヴィオラのジュリエットにさえ否定されてしまう。
大人4人の関係性を丁寧に描いた秀作。地味な物語ではあるのだが、芸達者4人が、微妙な心の揺れをしっかりと演じていた。ホフマンの遺作となってしまったのが、残念無念…。2014.5

シャンドライの恋 BESIEGED
ベルナルド・ベルトルッチ監督、デヴィッド・シューリス、タンディ・ニュートン出演
☆教師の夫が政治活動の罪で逮捕され、アフリカから逃亡してきたシャンドライは、ピアノ教師キンスキーの家で住み込み家政婦として働きはじめる。キンスキーは、シャンドライに恋心を抱くが、彼女は夫がいることを告げる。
二人の気持ちが、少しずつ近づいていく過程の心理描写が絶妙。描き方は上品かつ繊細で、大きな展開はないのだが、まったく飽きがこない。キンスキーの奏でるピアノの調べが、シャンドライへのあふれる想いに聞こえてきて、心地よかったです。この映画、若い頃にみたら退屈に感じていたのかもしれない。中年になったからこそ感じられるベルトリッチ映画の官能美に、遅ればせながらはまっています。2014.4

ドリーマーズ THE DREAMERS
ベルナルド・ベルトルッチ監督、マイケル・ピット、エヴァ・グリーン、ルイ・ガレル出演
☆舞台は68年の5月革命。映画館経営者への抗議デモを通じて双子の姉弟イザベルとテオと知り合ったアメリカ人留学生マシューは、両親の不在中、彼らの家に移り住む。
3人は、毎日のように映画の名シーンを演じ、酒とタバコの日々を送る。
大人になれない双子の姉弟の危うい関係と、彼ら二人の間に入り込んだマシュー。この微妙な三角関係にちょっとついていけず、戸惑った。性描写は「ラスト・タンゴ~」に通じる淫靡さはあるのだが、色気というよりは”若気のいたり”。激化するデモの中で双子とマシューの意見が食い違うエンディングが、彼らの今後を物語っているのだろう。2014.5

ベルトルッチの分身(1968) PARTNER
ベルナルド・ベルトルッチ監督、ピエール・クレマンティ出演
☆内気で孤独な青年が、過激な分身に支配されていくさまを追った実験的映画。若い監督の冒険心と、時代を感じさせる難解さ。正直、なんだかピンときませんでしたが、意欲作、ということでよしとしましょうか。2014.5

ブリングリング THE BLING RING
ソフィア・コッポラ監督、エマ・ワトソン、ケイティ・チャン、タイッサ・ファーミガ出演
☆新入生マークは、自分の醜さに激しいコンプレックスを持っているイケてない高校生。そんな彼に近づいたのは、ブランドが好きな少女レベッカ。ある日、二人はセレブがパーティで家を留守にする情報を入手。セレブの自宅を調べて豪邸へ侵入し、アクセサリーや服、バッグを盗み出す。やがて彼らのゲームはエスカレートし、レベッカの友人クロエとニッキー、サムも加わり、高校生強盗団、と化していく。
実話というのが面白い。ソフィアならではのポップさ、オシャレさに好感が持てました。デビュー作の短編にテイストがかなり近いかな。ゲーム感覚でセレブの金品を奪っていくシーンがポップで楽しかったです。音楽もグッド! 2014.5

チキンとプラム CHICKEN WITH PLUMS
マルジャン・サトラピ監督、マチュー・アマルリック、エドゥアール・ベール、マリア・デ・メディロス出演
☆バイオリニストのナセル・アリは、命よりも大切なバイオリンを妻に壊され、絶望して死ぬことを決意。死を末までの間、様々な過去を思い出す。映像がキュートで構成も凝っていて、おもしろくはあるんだけど、なぜか飽きてしまった。
もともとはアニメ作家、ということで納得。すべてのキャラが、なんだか人形っぽくて、感情移入できなかった。正直、苦手な分野です。2014.5

ヒトラーの贋札 THE COUNTERFEITER
ステファン・ルツォヴィツキー監督、カール・マルコヴィクス、アウグスト・ディール出演
☆第二次世界大戦の最中、ナチスはイギリスの経済を混乱に陥れるため精巧な贋ポンド札の製造を計画する。この作戦に呼ばれたのは、ユダヤ人の強制収容所にいた男たち。贋作師サリーは、将校たちの言われるままに贋札づくりに没頭するが、印刷技師ブルガーは、ナチにすり寄るサリーに反抗する。
実話、ということがまず興味深い。贋札によってヒトラー大帝国が勝利していたかも、と思うとゾッとした。生きるためにおもねるか、命を張って信念を貫くか。究極の選択を強いられるような世の中は、いつやってくるかわからない。日本も、近い将来、戦前のような思想統制や粛清が行われるかも…。他人事でない怖さを感じてしまった。2014.5

もうひとりの息子 LE FILS DE L'AUTRE
ロレーヌ・レヴィ監督、エマニュエル・ドゥヴォス、パスカル・エルベ、ジュール・シトリュク出演
☆テルアビブに暮らすフランス系イスラエル軍人の18歳になる息子ヨセフが、実の子供でないことが判明。湾岸戦争の混乱の中で、パレスチナ人の子供と取り違えられたというのだ。両方の家族は、敵対する関係にありながら、ひそかに交流を持ち始める。
辛い状況に置かれながらも、二人の青年がそれぞれの環境を理解していく過程を丁寧に描いている。でも、現実はこんなにすんなりいかないだろうなあ。
監督がフランス人女性ということなので、こうあってほしい、という第三者から見た「願い」が込められていると感じた。2014.5

マイ・マザー I KILLED MY MOTHER
グザヴィエ・ドラン監督・出演、アンヌ・ドルヴァル、フランソワ・アルノー、スザンヌ・クレマン出演
☆17歳の青年は、口うるさい母との諍いがたえない。ボーイフレンドの家に入りびたり、女教師に救いを求めるが、母息子の関係は改善されず、ついに寄宿舎へ入れらてしまう。
まずドランの美しさに魅入ってしまった。こんな美少年が監督の才能もあるなんて、天は二物を与えるのですね。母と息子のやり取りがかなりリアル。おそらく自伝的要素が強いのでしょう。親子関係の難しさは国が違っても同じですよね。2014.5

アメリカン・ハッスル AMERICAN HUSTLE
デヴィッド・O・ラッセル監督、クリスチャン・ベイル、ブラッドリー・クーパー、ジェレミー・レナー、エイミー・アダムス、ジェニファー・ローレンス、マイケル・ペーニャ、ロバート・デニーロ出演
☆クリーニング屋兼詐欺師のアーヴィンと愛人のシドニーは、ある日、FBI捜査官リッチーにつかまり、ある囮捜査に加担するよう命じられる。3人は、人気者の市長を巻き込み、カジノ建設やアラブの石油王からの投資話を持ちかける。お人よしの詐欺師が、高圧的なFBIの囮捜査官と一緒になって政治家の汚職をしかけるうちに、大物マフィアまで絡んできてしまう。これが実話だというから米国という国は恐ろしい。まあ、日本でも裏では何やってるか…、ですが。髪の毛の薄さを気にする小心者のアーヴィンとヤンキー系若妻とのやりとりが、どつき漫才を見ているようでケッサク。Jローレンスはビッチな役がほんと上手。七変化俳優ベイルも、今回はだらしのない脂肪がたっぷりついたお腹を披露していて、役者魂にあっぱれ。2014.3

アデル、ブルーは熱い色 LA VIE D'ADELE
アブデラティフ・ケシシュ監督、アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥ出演
☆高校生のアデルは、町ですれ違った青い髪の女性エマに一目ぼれ。レズビアンの集まるバーで彼女と再会し、二人は強く惹かれあう。
大胆なセックスシーンが話題ではあったのだが、あそこまで延々見せられると、さすがにおなか一杯…。もちろんセックスシーンだけではなく、アデルの心の不安感や、エマとの関係も丁寧に描かれているので、秀作ではあるのだが、それにしてもセックスシーンが長すぎ…。性にオープンなフランスらしい作品ですね。
心身ともに惹かれあってはいても、アデルの元を去ってしまうエマ。アーチストとして高みを目指したい彼女の選択には納得でした。アデルは魅力的ではあるんだけど、エマにとって、生きるための優先順位が変わってしまった、ということなのでしょう。
エマと再会したアデルが人目もはばからずエマに迫るシーンが痛々しくて、若いころの失恋の痛手を思い出し…。アデルのこれからの人生にエールを送りたくなりました。2014.4

アルバート氏の人生 ALBERT NOBBS
ロドリゴ・ガルシア監督、グレン・クローズ、ミア・ワシコウスカ、アーロン・ジョンソン出演
☆19世紀のアイルランド。ホテルで働くアルバートは、女性であることを秘密にし、禁欲的な日々を送っている。ある日、塗装屋に部屋を貸すよう命じられたアルバートは、彼に女の姿を見られてしまう。だが、その塗装屋も男装する女性であった。
女であることを捨て、若い女性に恋をしてしまった中年アルバートの悲しき人生をグレンが抑えた演技で熱演。長年舞台で演じてきた作品の映画化、ということで、思い入れも強いのだろう。女性映画の名士ロドリゴ・ガルシアが、これまた上品に監督していて、好感が持てた。同性愛だろうが異性愛だろうが、秘密を持ちながら人に恋をする苦しみは共感できる。若い女が生きのいい男に夢中になる気持ちもわかるし…。地味だが、丁寧な心理描写が印象に残った。ロドリゴ監督の作品ははずれがありませんね。2014.4

異人たちの棲む館 Magnifica presenza
フェルザン・オズペテク監督、エリオ・ジェルマーノ、マルゲリータ・ブイ出演
☆役者を夢見るパン職人は、引っ越した家で50年前の幽霊たちと遭遇する。
幽霊たちの背景が戦前の恐怖政治時代、という設定がイタリアらしい。シリアスな物語を軽いノリでコミカルに描いているので見やすかったが、反面、浅さが気になってしまった。2014.4

L.A. ギャング ストーリー
ルーベン・フライシャー監督、ジョシュ・ブローリン、ライアン・ゴズリング、ショーン・ペン、ニック・ノルティ、エマ・ストーン出演
☆1949年、ロサンゼルス。誰も手が出せない犯罪組織のボス、ミッキー・コーエンに対し、オマラ巡査部長は、極秘部隊を結成。署内のはみ出し者6人で、ギャングたちに戦いを挑む。
豪華キャスト、おしゃれな衣装、派手なドンパチ等、見どころ満載のギャング・エンタメ作品。これ、実話なんですね。ミッキーを演じたペンの威圧感はさすが。すっかりデニーロの後継者です。あんまり好きな顔ではないのだが、やっぱりゴズリングは魅力あるわな、と再確認。色気?でしょうか。2014.4

恋のロンドン狂騒曲 YOU WILL MEET A TALL DARK STRANGER
ウディ・アレン監督、ナオミ・ワッツ、アントニオ・バンデラス、ロジャー・アシュトン=グリフィス、ジョシュ・ブローリン、ポーリーン・コリンズ、アンソニー・ホプキンス出演
☆40年連れ添った夫アルフィが突然、男を磨きだし、離婚されてしまったという妻ヘレナが、カウンセラーに救いを求めてきた。一方、娘サリーも、処女小説で当てて以来鳴かず飛ばずの夫ロイとの関係が危うい。名門ギャラリーで働き始めた彼女は、ジゴロ風オーナー、グレッグに恋心を抱く。
老夫婦と娘夫婦、4人の恋の模様をコミカルに描いたライト・コメディ。すっかり毒が抜けてしまった感があり物足りなさも残る最近のアレン監督だが、気楽なラブコメとして肩の力を抜いて見る分には十分楽ししめたので○。80過ぎの老監督が、まだまだ健在でいてくれることがうれしいです。ホプキンスはふつうの爺ちゃん演じてもふつうに見えないのよね。なんだろ、あの存在感。すごすぎます。2014.4

ストロベリーナイト
佐藤祐市監督、竹内結子、西島秀俊、大沢たかお、小出恵介、染谷将太ほか出演
☆警視庁捜査一課の警部補、姫川玲子率いる姫川班は、暴力団のチンピラ殺害事件を追ううちに、警察上層部が隠そうとする真実に迫っていく。
暴力団同士の抗争事件が、過去の冤罪自殺事件につながっていく展開がスリリングで見応えあり。大沢たかお演じる若頭の影の部分に姫川が惹かれてしまうのも納得。大沢たかおは、仁先生みたいな正統派役も、今回のような汚れ役も両方、ぴったりはまるのがすごいです。ドラマは見ていなかったけど、楽しめました。2014.4

その夜の侍
赤堀雅秋監督、堺雅人、山田孝之、綾野剛、田口トモロヲ、新井浩文出演
☆町工場を営む健一は、5年前にひき逃げで最愛の妻を失って以来、妻が最後に残した留守録を日に何度も聞く生活から抜け出せずにいた。一方、2年の服役を終えて出所したひき逃げ犯の木島は、更生のかけらも見せず、暴力で憂さを晴らす日々を送っている。ある日、健一の義理の弟は、木島に呼びつけられ、健一からの嫌がらせ手紙を見せられる。
人間のクズのような木島と、復讐に取りつかれた被害者の夫の「その夜」までの日々を負った人間ドラマ。油の乗り切った曲者俳優陣が豪華。それぞれに個性全開で見応えありました。後半は意外と浪花節、だったのが意外。暴力シーンが痛かったです。2014.4

それでも夜は明ける 12 YEARS A SLAVE
スティーヴ・マックィーン監督、キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ポール・ジアマッティ、ルピタ・ニョンゴ、ブラッド・ピット出演
☆南北戦争前。ニューヨークに暮らす音楽家のソロモンは自由黒人として、穏やかに家族と暮らしていた。ある日、2週間の興行に誘われたソロモンは、興行主に騙され、奴隷市場に送られてしまう。
「ルーツ」の時代から、黒人奴隷の過酷な物語は映画で数多く語られてきたので、それほど期待していなかったのだが、監督がアーチスト、ということもあり、絵画のような映像美に見いるシーンがいくつかあった。ソロモンが木につるされている横で、ほかの奴隷たちが日常生活を送っているシーン、綿花畑のシーンなど、本筋よりも印象に残った。
病的な農園主を演じたファスベンダー、油にのってる感じ。商業主義的ハリウッド映画に走らず、これからも味のある映画に出続けてほしいものです。2014.4


タンゴ・リブレ 君を想う TANGO LIBRE
フレデリック・フォンテーヌ監督、フランソワ・ダミアン、セルジ・ロペス、ジャン・アムネッケル、アンヌ・パウリスヴィック出演
☆刑務所の看守JCは、趣味のタンゴ教室でアリスという女性に強くひかれる。翌日、JCは収監されている夫に会いに来たアリスを見かける。アリスは夫の親友であるドミニクとも親密な関係にあった…。
刑務所を舞台に繰り広げられる男女の三角関係、そこにダンスという要素も加わる、という設定がユニーク。フランス映画らしからぬブルーカラー色の強い恋愛ドラマで、好感が持てた。アリスを演じた女優が脚本を書き、おそらく監督のパートナーでもあるらしい。たいして美しくもないアリスがモテすぎなのが、少々鼻についたが、文化の違い、ということで…。2014.4


ちゃんと伝える
園子温監督、AKIRA、伊藤歩、高岡蒼甫、高橋惠子、奥田瑛二出演
☆史郎は、高校サッカー部の鬼コーチとして知られた父が突然倒れ、病院に運ばれたと知り動揺する。父と一緒に湖に釣りに行くことを楽しみにしていた史郎だったが、彼自身が進行性胃がんを宣告されてしまう。不治の病ものは、苦手なので避けていたのだが、園監督ということで見てみたが…。園監督らしからぬスタンダードな展開でちょっと拍子抜け。強いて挙げれば、史郎が彼女に「もし、俺がガンだったら結婚してくれる?」と聞いたときの、彼女の反応が現実的で好感が持てた。園監督にはお涙ちょうだい系は似合わない。2014.4

テイク・シェルター TAKE SHELTER 
ジェフ・ニコルズ監督、マイケル・シャノン、ジェシカ・チャステイン、シェー・ウィガム出演
☆工事現場で働くカーティスは、ある日、恐ろしい大災害の悪夢にうなされるようになる。不安にかられたカーティスは家族や同僚の説得も聞かず、家の庭に巨大なシェルターを作りはじめる。
カーティスは予知能力があったのか、それとも心の病なのか。結論は明かさずに、彼の心の不安感を丁寧に描いていて、見応えがあった。ヘルツォーク監督作品で、親を殺した男役を演じたときからシャノンには注目していたのだが、彼の存在感はピカ一。カーティスを愛しながらも彼を信じきれない妻を演じたチャスティンも素敵でした。この実力派二人の演技と、繊細な心理描写が見事にマッチした秀作。震災を経験した後なので、彼の過剰防衛反応も妙に納得がいきました。2014.4

マリーゴールド・ホテルで会いましょう THE BEST EXOTIC MARIGOLD HOTEL
ジョン・マッデン監督、ジュディ・デンチ、ビル・ナイ、ペネロープ・ウィルトン、トム・ウィルキンソン、マギー・スミス出演
☆高級リゾート・ホテルで、穏やかな老後生活をするためにインドを訪れた英国人一向は、辿り着いたホテルを見て愕然とする。そこは廃墟同然で、若き支配人ソニーがいるだけだった…。
昔、残酷な別れをした相手を探しにやってきた判事、夫を亡くし生きがいを失った女性、老後資金を娘に貸してしまい文無しになった夫婦など、さまざまな事情を抱えた老人たちの個性が丁寧に描かれているオーソドックスな群像劇。英国を代表する老俳優たちの競演。彼らに絡むのはアカデミー賞受賞作で主演した若きインド人俳優、という、メジャーな顔ぶれ。展開は読めるけど、安心して見られたのでマル。2014.4


偽りなき者 JAGTEN
トマス・ヴィンターベア監督、マッツ・ミケルセン、トマス・ボー・ラーセン出演
☆デンマークの小さな町で幼稚園の教師として働くルーカスは、親友のちいさな娘クララから口にキスをされ、やさしく注意をする。大好きな先生から拒絶され傷ついたクララは、ルーカスの陰部を見た、と嘘をつく。この小さな嘘を鵜呑みにした園長や大人たちは、潔白を訴えるルーカスの言葉に耳を貸さず、町中が彼を犯罪者扱いする。
冤罪の恐ろしさ、集団心理の残酷さがビシビシと心に突き刺さり、見ていて胸が苦しくなった。嘘ついちゃったクララはもちろんいけないんだけど、分別のない小さい彼女に誘導尋問する園長が諸悪の根源。きちんと検証もせず、一人の人間を破滅に追いやった罪は重い。ただ、もし、自分があの町の人間だったら、やっぱりルーカスを色眼鏡で見るだろうなあ。この映画は罪を着せられたルーカスだけでなく、彼の息子の心の痛みにもふれているのがいい。何の罪もない家族まで、巻き込まれてしまう恐ろしさ。日本人は集団でよってたかる傾向が強いので、この映画のような話はほんとに他人事ではありません。
ルーカスを演じた男優はデンマークの名優とのこと。カンヌ国際映画祭主演男優賞もなっとくの力作です。2014.3

HUNGER/ハンガー
スティーヴ・マックィーン監督、マイケル・ファスベンダー、リーアム・カニンガム出演
☆1981年、北アイルランドのメイズ刑務所。政治犯でありながら、それを認められないIRAの囚人たちは、ボビー・サンズを中心に、看守たちへの反抗を続ける。囚人服着用の拒否や汚物の垂れ流しをしながら抵抗する囚人に対し、看守は激しい拷問を繰り返す。
あらゆる手を尽くしても変わらない惨状に、サンズは、最後の手段としてハンガー・ストライキの実行を決意する。
政治犯に対する激しい拷問のシーンは何度見ても目を覆いたくなるが、一方、汚物で壁を塗りたくる、という抵抗の仕方は初めて知ったので新鮮だった。監督が芸術家ということもあるのだろうが、汚物で描いた壁の現代アートの荒々しさには釘づけになった。匂いは幸い画面から伝わらないので、美しくも思えてしまった。
物語の後半は、実在する政治犯のハンガー・ストライキの様子をドキュメンタリー風に追っていく。がりがりに痩せ細っていくファスベンダーの体当たり演技には驚かされた。
実際に、サンズのハンガー・ストライキの様子は毎日テレビで放送されていたとのこと。ここまでして、信念を貫こうとする人間がいることがまず信じられない。サンズを演じたファスベンダーがキリストとダブって見えてしまった。映画館で見れてよかったです。2008年カンヌ国際映画祭カメラドール受賞作品。 2014.4

殺し LA COMMARE SECCA
ベルナルド・ベルトルッチ監督、フランチェスコ・ルイウ、ジャンカルロ・デ・ローザ出演
☆ローマの公園で中年娼婦が殺された。警察は、コソ泥の青年たちや、休暇中の兵士などから証言を集めて行く。
羅生門的スタイルで物語が展開していく定番のミステリーなのだが、当時のローマの庶民の風貌や習慣などが新鮮で興味深かった。原作はパゾリーニでベルトリッチの処女作というだけでも、やっぱり外せない古典です。2014.3

ジャッキー・コーガン KILLING THEM SOFTLY
アンドリュー・ドミニク監督、ブラッド・ピット、リチャード・ジェンキンス出演
☆ある日、チンピラ2人が犯罪組織の賭場を襲撃。殺し屋ジャッキー・コーガンは、組織から事件の始末を依頼される。終始、陰鬱な雰囲気で、山も谷もなく淡々としていて、飽きてしまいました…。がっかり。2014.3

人生の特等席 TROUBLE WITH THE CURVE
ロバート・ロレンツ監督、クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン、ロバート・パトリック出演
☆大リーグのベテランスカウトのガスは、弁護士で娘のミッキーと、ドラフトに向けて、高校生のスカウト旅行に出かける…。野球好きなので、選手の品定めをするくだりは興味深かったけど、父と娘の関係性や娘と元野球選手との恋愛話があまりにも予定調和でがっかり。もっと、野球の玄人受けする内容にすればよかったのに…。2014.3

人生、ブラボー! STARBUCK
ケン・スコット監督、パトリック・ユアール、ジュエリー・ルブルトン、アントワーヌ・ベルトラン出演
☆草サッカー好きのダヴィッドは、若かりし頃、金のために精子提供をしていた過去があった。ある日、533人もの生物学上の“父親“であると告げられ、さらに142人の子どもから身元開示の裁判を起こされてしまう。ダヴィッドは、興味本位で自分の子供たちの様子を見にでかけるのだが、感情移入してしまい…。
精子提供して生まれた子供が500人以上、という突拍子もない設定がまず面白い。お人よしのダヴィッドのキャラも親しみがわくし、友人の弁護士のオマヌケぶりも笑いを誘う。後半の展開はありきたり感はあったが、安心して見られるコメディだった。フランスの映画かと思ってたらカナダ映画でした^^;。2014.3

スノーピアサー 
ポン・ジュノ監督、パク・チャヌク製作、クリス・エヴァンス、ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、ジェイミー・ベル、オクタヴィア・スペンサー、ジョン・ハート、エド・ハリス出演
☆雪と氷に閉ざされた近未来の地球。“スノーピアサー”と呼ばれる列車の中では、権力者にエンジンを支配され、前方には富裕層、後方には貧民層という格差社会が出来上がっていた。最後尾に乗るカーティスらは、劣悪な環境に不満を募らせ、ついに革命を起こすのだが…。
「未来世紀ブラジル」に通じる世界、と言われていたので期待しすぎてしまい、最初の1時間は、ありがちな話でちょっと飽きてしまったが、エド・ハリス演じる権力者の登場からは、ぐっと引き込まれた。
なぜ、カーティスが自己批判を繰り返しているのか、貧困層から子供がさらわれた意味は?、などなどの種明かしが最後の30分に凝縮されている。もう少し小出しにしていけば、より楽しめた感はあるが、SFとしては一級品。「未来世紀ブラジル」と世界感は似ているのだが、コミカルさやシニカルさがないので、比べるのはちょっと違うかな。あちらはモンティ・パイソン、こちらは韓国ですから、仕方ないですよね。
ジュノ監督、チャヌク製作だと、これだけ豪華な世界的キャストを集められるのですね。日本より韓国映画のほうが映画界では評価が高い、ということの表れなのでしょう。2014.2

東ベルリンから来た女 BARBARA 
クリスティアン・ペッツォルト監督、ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト、ライナー・ボック出演
☆統一前の東ドイツの田舎町に、ベルリンからバルバラという女医が赴任してきた。彼女は、秘密警察に監視される身にあり、西側で暮らす恋人と密かに逢瀬を重ねていた。バルバラの同僚医師アンドレは、そんな彼女に興味を抱く…。
東ドイツの抑圧的な生活の中で、自由を求める女性たち。バルバラは静かに賢く西への逃亡を計画し、過酷な労働を強いられている若い女はストレートに「逃げ出したい」と叫ぶ。
そして、監視員の片棒を担がされている医師も、重圧に押しつぶされそうになっている…。
立場が違う人間たちの心理が丁寧に描かれている。一方的に当時の東ドイツ批判をするのではなく、医者として、人間としてどう生きるべきなのか、いろいろと考えさせられた。
体制批判もいいけれど、一個人としての誇りも大事。邦題に偽りあり、だったが、バルバラの選択の潔さに、心がうたれた。ベルリン映画祭銀熊賞も納得の秀作。2014.3

舟を編む
石井裕也監督、松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木華、渡辺美佐子、池脇千鶴出演
☆1995年。クソ真面目な馬締は、辞書『大渡海』の編集部に配属される。お調子者の同僚やベテラン編集委員に助けられながら、馬締は辞書の編集に没頭していく。
辞書編集、という超地味な世界を映画化したことにまずは拍手。真面目君を演じた龍平も、お調子者のジョーもステキで好感が持てた。真面目な人柄にみんなが手を差し伸べる、悪人の一人も出てこない、やさしいお話。ある意味、非現実的な夢物語なんだけど、心が一瞬だけでも、ほんわかしたのでよしとしましょう。2014.3

千年の愉楽
若松孝二監督、寺島しのぶ、高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太、井浦新出演
☆紀州の山間の村で、中本という男が愛人の夫に刺されて命を落とした。その同じ日、産婆のオリュウノオバは、中本の血をつぐ赤ん坊を取り上げる。美しい容姿を持つ中本の男たちは、女に溺れ、不幸を引き寄せて行く。
逃れられない“業”を持つ中本の男たちを、彼らを取りあげた産婆の思い出として語っていく。新、高良、高岡と、それぞれ別な個性をもつ色男たちをキャスティングした若松監督にまずアッパレ。そして、見事に魅力的な演技をした男たちにも脱帽。寺島しのぶも抑えた演技で聖母のような産婆を熱演している。
そして、終始流れている三味線の音色と、山間の風景…。これが中上ワールドなのだろうか。中上文学に精通しているわけではないのだが、ぐっと引き込まれる作品だった。結果的にこれが遺作となった若松監督だが、集大成にふさわしいと感じたのは私だけではないはず。
“宿命”を変えることのできない人間が、どのように生きていくのか。人は、何か大きな力によって生かされている、と感じずにはいられなかった。2014.3



愛の残像 La frontiere de l'aube
フィリップ・ガレル監督、ルイ・ガレル、ローラ・スメット出演
☆写真家のフランソワは、人妻で女優のキャロルと恋に落ちるが、2人の関係はすぐに終わってしまう。1年後、新しい恋人と幸福な日々を過ごしていたフランソワだったが、いないはずのキャロルの姿が見えるようになり……。主演は監督の息子のルイ・ガレル。
精神を病み自殺した恋人の霊に付きまとわれる男の苦悩を描いた後半は面白かったです。が、フランス映画にありがちな恋人たちのピロートークが中心の前半は、正直退屈。モノクロ映像はスタイリッシュでした。2013.11

アンコール Song for Marion
ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督、テレンス・スタンプ、バネッサ・レッドグレーブ出演
☆偏屈爺を演じた元二枚目テレンス・スタンプと、末期がんでありながらコーラスに夢中になる前向きな妻役のバネッサ。二人の名演につきる。先のよめる定番お涙ちょうだいドラマなのだが、歌のシーンはやっぱり涙腺が緩みました。2013.11

アンダーカヴァー WE OWN THE NIGHT
ジェームズ・グレイ監督、ホアキン・フェニックス、マーク・ウォールバーグ、エヴァ・メンデス、ロバート・デュヴァル出演
☆警官一家に生まれながら、ヤクザ者となったボビーは、彼の兄でニューヨーク市警の警官ジョセフが撃たれたことをきっかけに、警官対マフィアの血で血を洗う抗争に巻き込まれていく。
ボビーがなぜヤクザ者になったのか、キャラクターがいまひとつピンとこなかったが、ホアキンもマイキーも、父役のデュバルもいい味だしていたので、見ごたえはありました。2013.11

暗殺の森 IL CONFORMISTA
ベルナルド・ベルトルッチ監督、ジャン=ルイ・トランティニャン、ドミニク・サンダ、ステファニア・サンドレッリ出演
☆マルチェロは少年の頃、彼を犯そうとした男を射殺した暗い過去を持つ男。ファシストのスパイになった彼は、パリ亡命中の教授に近づく。教授夫人アンナに強くひかれ、彼女から夫を逃がして、と懇願されるが…。
暗い政治背景と、ドミニクの魅力、二人の危うい関係、そして計算された構図…。学生の頃にみたときは、この映画の魅力に気づかなかったのだが、20年ぶりの鑑賞では、洗練された映画であることをあらためて気付かされた。
多くを語らず、説明しないマルチェロの心の闇や、マルチェロの妻の内面なども、伝わってくる大人の映画。古さを感じさせない深い映画でした。2013.8

アウトレイジ ビヨンド
北野武監督・主演、西田敏行、三浦友和、小日向文世、加瀬亮ほか出演
☆前組長が殺されてから5年後。ヤクザ組織“山王会”のトップには、前組長を裏切った加藤が上り詰め、若い石原が若頭として強肩をふるっていた。悪徳刑事・片岡は、大友を仮出所させ、加藤への復讐を促す。
『仁義なき戦い』を見たばかりなので、いろいろと比較してしまったが、基本は同じですね。単純明快。血で血を洗うヤクザ社会。誰も信用できません。強面ぞろいのベテランの間で、必死で負けまいと吠えてる加瀬君にアッパレ!役の石原と同じく、加瀬君自身も、心の中は怯える子犬みたいにビビっていたのでしょう。武監督の人選に拍手。2013.8

アウト・イン・ザ・ダーク Out in the Dark
ミハエル・メイヤー監督
☆パレスチナ人の学生ニメルはイスラエル側のクラブで弁護士ロイに出会い恋に落ちる。ニメルは家族に内緒でロイとの逢瀬を重ねるが、テロ活動家の兄の友人によって、ニメルの行動が明るみになる。
同性愛が許されないイスラム教と、敵対するイスラエル人との付き合い、という2重苦の恋愛。きついよなあ。個人的には、二人の関係よりも、ハラハラドキドキのサスペンス、という面で十二分に楽しめました。監督は気さくなアメリカ人。今後の作品に期待できそう。2013.7 レズ&ゲイ映画祭にて

新しい人生のはじめかた LAST CHANCE HARVEY
ジョエル・ホプキンス監督、ダスティン・ホフマン、エマ・トンプソン、アイリーン・アトキンス出演
☆×イチのCM作曲家ハーヴェイは、イギリスに暮らす一人娘の結婚式のためロンドンへと向かう。しかし、再婚した元妻の家族の和に入れず、疎外感を味わう。
一方、気むずかしい母親を抱えた中年のケイトも、お見合い相手に振られ、人生を諦めかけていた…。
大人の男女の恋愛の話しより、バツ一男が、娘の結婚式で寂しい思いをする話のほうが、丁寧に描かれていて、好感が持てた。ホフマンはやっぱり演技が上手い!2013.9

アンを探して
宮平貴子監督、穂のか、ロザンナ、吉行和子、ダニエル・ピロン、ジョニー・サー、紺野まひる出演
☆最愛の祖母を亡くした傷心の日本人少女、杏里は、祖母の初恋に人を探しに、カナダのプリンス・エドワード島に降り立つ。心温まる物語、ではあるのだが、飽きてしまった。「赤毛のアン」子供の頃は好きだったよなあ、などと、思いだしてはみたものの、すっかり荒んだ私の心はプリンス・エドワード島の景色にもさほど感動できず。道徳の時間に見せられるような作品でした。2013.12

エリックを探して LOOKING FOR ERIC
ケン・ローチ監督、スティーヴ・エヴェッツ、エリック・カントナ、ステファニー・ビショップ出演
☆マンチェスターで暮らす郵便配達員エリックは、2度の結婚に失敗し、不良の息子二人に手を焼いている。最初の妻リリーを裏切ったことを未だに引きずっている エリックは、リリーとの娘の赤ん坊をあずかることになる。
そんな自信がもてないエリックの前に、マンチェスターUの英雄、エリック・カントナが現れた。
カントナがどれだけの英雄か知らないのだが、自信のもてない中年男にしゃれた助言を与える役がぴったり。前半はちょっと冗長で飽きてしまったが、息子のために一肌脱ごうとする後半、ぐっと面白くなりました。仲間っていいね~。2014.2

カルラの歌 CARLA'S SONG 
ケン・ローチ監督、ロバート・カーライル、オヤンカ・カベサス、スコット・グレン、サルヴァドール・エスピノーザ出演
☆ロンドンのバスの運転手は、無銭乗車したニカラグア移民の女性につよく興味をもち、彼女に手を差し伸べる。強いトラウマを持つ彼女のために、共にニカラグアへ行くが、そこは過酷な内戦状態にあった…。
規則に縛られるのが嫌いな運転手と、家のないニカラグア移民の女性の恋物語、にとどまらず、ニカラグアでの内戦の内幕にまでも迫った社会派映画。
ニカラグアに舞台が移ってからの後半は、とくに見応えありました。ノンポリだった若い男が、中米の過酷な現実に触れるくだりが、黒木監督の「キューバの恋人」にテイストが似ているかも。カーライル、やっぱり味があっていい俳優です。
ケン・ローチ作品で一番好きな映画になりました。2014.2

革命前夜(1964) PRIMA DELLA RIVOLUZIONE
ベルナルド・ベルトルッチ監督、フランチェスコ・バリッリ、アドリアーナ・アスティ、アレン・ミジェット、モランド・モランディーニ、クリスティーナ・パリセット出演
☆パルマで暮らす青年ファブリツィオは、魅力的な叔母との恋愛に溺れるうちに、コミュニストの同士たちとの関係に違和感を覚えはじめる。
若かりし頃のベルトリッチが挑んだ感が伝わる実験的な映画。カメラワークや台詞が凝っていて、見応えがありました。時代を感じさせる映画、という意味では興味深かった、かな。2014.1

家族~イラン、もう一つの戦争~ A RESPECTABLE FAMILY
マスウド・バクシ監督、ババク・ハミディアン、メルダッド・セディギャン出演
☆数十年ぶりに西洋からイランに帰省した大学講師は、革命混乱期に殉死した兄アミルや父との確執を思い出す。イラン社会の裏側を描いている。身内でさえ信じられない絶望感…。辛かったです。大学で生徒たちに見せている映画はアミール・ナデリ監督の古い作品。見てみたい。2014.2

気球クラブ、その後
園子温監督、深水元基、川村ゆきえ、長谷川朝晴、永作博美、いしだ壱成出演
☆気球クラブのリーダー村上がバイク事故を起こした、との知らせが二郎に届いた。5年前に、少しだけ参加したクラブで、今はみどり以外とはほとんど接点がなかった。だが、回想していくうちに、村上の彼女、美津子との微妙な関係を思いだす。
素人テイストのホームビデオ撮影で、若者のバカ騒ぎを追っているだけの安っぽさを演出しながら、不思議とグイグイ引き込まれていく。園監督って天才だわ。どっかで見たことあるな、と思ったら「桐嶋~」と似ている。「桐嶋」よりもこちらが先なので、こちらがオリジナルだろう。やたらとエッチでグイグイ迫ってくるみどりよりも、謎めいた美津子を回想してしまう二郎の気持ち、男じゃなくても分かります。夢追い人の村上が、特別魅力的に描かれていないのも、リアル。だけど、美津子はやっぱり村上に心底惚れちゃっていたんだ、ということが次第に見えてくると、とても切ない気持ちになりました。気をてらわずとも感動を伝えられる園監督の才能にアッパレです。2014.2

君と歩く世界 DE ROUILLE ET D'OS
ジャック・オーディアール監督、マリオン・コティヤール、マティアス・スーナールツ出演
☆クラブの用心棒アリは、客とトラブルになった女性ステファニーと知り合う。まもなくステファニーはシャチの調教時に事故に巻き込まれ両脚を失う。一方、アリは5歳の息子や姉夫婦との生活でもトラブルが絶えずにいた。
ジャケやタイトルとはテイストが違う、とは聞いていたが、見事にいい意味で期待を裏切る内容。足を失ったステファニーよりも、荒くれ者アリの視点で描かれていて、二人の関係も恋愛というより同志、という感じ。恋愛よりもアリと息子との関係や、仕事の問題など、生活臭のプンプンするテイストで私好み。
オーディアール監督らしい、出来そこない目線が気に行った。5歳の息子が超カワイイ。そしてアリの不器用さがまたキュート。女が放っておけない獣的魅力たっぷりでした。2014.3

渋谷
西谷真一監督、綾野剛、佐津川愛美、松田美由紀、ARATA、大島優子、石田えり出演
☆新米雑誌ルポライターの男は、渋谷で見かけた母子の喧嘩に遭遇。娘の後を追うが、彼女は風俗嬢だった。原作が藤原新也で、主演が綾野、ということで、かなり期待してみたのだが…。
インディーズっぽいテイストなんだけど、台詞がテレビドラマでした。シャワーのシーンで突然、綾野が泣いたのには興ざめでした。監督がNHKの演出家だから仕方ないか。役者陣が豪華なだけに、残念。2014.1

青春残酷物語
大島渚監督、桑野みゆき、川津祐介、久我美子、渡辺文雄出演
☆大学生の真琴は、中年男の車に乗り、ホテルに連れ込まれそうになったとき、清という大学生に助けられる。
二人は翌日、男から奪った金で遊び回り、真琴は清のマゾヒスティックな魅力に夢中になっていく。
悪の魅力に取りつかれる男女の激しい恋愛をスタイリッシュに描いている。日活映画っぽいテイストで大島映画の中では見やすい部類なのだが、姉と元恋人が元革命戦士、という設定に大島映画らしさが出ていた。桑野みゆきって小悪魔の魅力ムンムンでかっこいいわあ。美人じゃないけどカッコよさとエロさを兼ね備えている。こういう女優さん、今はいないよなあ。2014.2

ソウルガールズ THE SAPPHIRES
ウェイン・ブレア監督、クリス・オダウド、デボラ・メイルマン、ジェシカ・マーボイ出演
☆68年のオーストラリア。虐げられていたアボリジニの三姉妹、ゲイル、シンシア、ジュリーは、歌のコンテストに出場。差別的な目にさらされるが、飲んだくれの司会者デイヴに見出される。デイヴは、アメリカで流行しているソウル・ミュージックを3人に歌わせ、ベトナムへ米兵の慰安にでかける。
実在するアボリジニの姉妹ユニットの活躍を描いたサクセス・ストーリー。ノリノリのソウルミュージックと、アボリジニの迫力ある歌声がたっぷりの、ミュージカルチックな物語。
戦場の現実を描くのを極力避け、ハッピーを前面に打ち出しているので、正直、物足りなさは感じたが、子供も楽しめるファミリー映画なのでよしとしましょう。2014.1

太陽に灼かれて UTOMLYONNYE SOLNTSEM
ニキータ・ミハルコフ監督・主演、オレグ・メンシコフ、インゲボルガ・ダクネイト、ナージャ・ミハルコフ出演
☆36年、ドミトリはかつての恋人で幼なじみマルーシャの家を訪れる。マルーシャはロシア革命の英雄コトフ大佐の妻となり、ナージャという娘がいた。
ドミトリが突如戻ってきたのにはある理由があった…。
美しく穏やかなロシアの田園風景と家族の暮らし。その背景に見え隠れするスターリンの恐怖政治…。後半30分で、愛すべき二人の男のいまわしい過去が明るみに出るのだが、それまでののどかな雰囲気とのギャップが大きすぎてショッキングだった。
スターリンのイラストが空に上がるエンディングの衝撃。夢に出てきそうで恐ろしかったです。3部作の1作目、ということだが、この物語の続きは見たくない、と思ってしまった。
将軍と娘の感動の再会物語よりも、将軍に人生を狂わされたドミトリの悲惨な一生のほうが興味あり。2014.2

旅人は夢を奏でる TIE POHJOISEEN
ミカ・カウリスマキ監督、ヴェサ=マッティ・ロイリ、サムリ・エデルマン出演
☆ピアニストのティモの前にある日、3歳の時に別れた父親レオが現れた。レオはティモを強引にドライブに誘い出す。トラブルメーカーの父親のキャラは親しみをもてたのだが、父と息子の珍道中が、息子の出生の秘密にまで迫っていく唐突さについて行けず…。ロードムービー好きなので、少々辛口になってしまった。やっぱりアキ監督作のほうが私は好きです。2014.2

鉄くず拾いの物語 EPIZODA U ZIVOTU BERACA ZELJEZA
ダニス・タノヴィッチ監督、セナダ・アリマノヴィッチ出演
☆ボスニア・ヘルツェゴヴィナで暮らすロマのナシフは、妻セナダの手術のために、鉄くずをひろい続ける…。
黙々と鉄くずを拾い続けるナシフを延々と映すので、睡魔に襲われ、うとうとしている間に映画が終わってしまった…。1時間ちょっとの作品。こんなに寝てしまった映画ははじめてかも。もっと、体調いいときに見ればよかった、と激しく後悔。
実際に無保険で苦しめられた本人たちが演じているので、ドキュメンタリーのようでした。2014.1

テッド TED
セス・マクファーレン監督・声の出演、マーク・ウォールバーグ、ミラ・クニス出演
☆友だちのいない少年ジョンが、神様にお願いをすると奇跡が起こった。大好きなテディベア“テッド”に魂が吹き込まれ、人間のように喋り出したのだ。27年後。テッドに頼り切りなダメ中年になりさがったジョンに、同棲中の彼女が不満を爆発させる。
テッドの台詞が笑えました!もっとブラックなのかと想像してたんだけど…、子供も見る映画にシニカルさを求めるのに無理がありましたね、反省。2014.2

手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく
森下孝三監督、声の出演:吉永小百合、堺雅人、吉岡秀隆
☆争いが続く2500年前のインド。厳しいカースト制度の時代、コーサラ国で奴隷の子として生まれた少年チャプラは、身分を隠したまま権力者の養子の地位を得る。その頃、対立するシャカ国では、待望の王子シッダールタが誕生する。
手塚アニメ、ということで見てみたが、戦闘シーンが多くて飽きてしまった。3部作の1作目、ということなので、ブッダの物語ではなく、奴隷の少年の波乱万丈の一生がメイン。テレビアニメの域を超えてないのが残念でした。2014.1

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅 NEBRASKA
アレクサンダー・ペイン監督、ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、ステイシー・キーチ出演
☆モンタナ州に暮らす老人ウディは、100万ドルの賞金が当たったというインチキな手紙を真に受け、歩いてネブラスカまでとりに行く、と言いだす。息子のデイビッドは、止めても聞かない父を連れて、渋々車でネブラスカへ向かう。旅の途中、父の故郷に立ち寄るのだが…。
半分ボケちゃってるおじいちゃんがかわいくてかわいくて…。ブルース・ダーン名演でした!やたら口うるさいおばあちゃんも絶妙で、老夫婦の掛け合いをもっと見たかったな。
古い写真のようなモノクロ映像も映画のテイストにぴったりマッチしていたし、おじいちゃんの故郷の町の風景も60年代っぽくて、タイムスリップ感が出ていた。さすがペイン監督、はずしませんねえ。地味だけど気持ちがほんわかできる映画。2014.2

ヒッチコック HITCHCOCK
サーシャ・ガヴァシ監督、アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレット・ヨハンソン、トニ・コレット出演
☆1959年。次回作の企画に悩むヒッチコックは、実在の殺人鬼エド・ゲインをモデルにした小説『サイコ』の映画化を決意する。
妻アルマが脚本家としてヒッチコックを支えていたという事実を知らなかったので興味深かったです。二人の名優の競演は見応えあり。ただ、映画の展開としては改善の余地あり、かな。今一つ物語に引き込まれず。残念。2014.2

武士の家計簿
森田芳光監督、堺雅人、仲間由紀恵、草笛光子、西村雅彦、松坂慶子、中村雅俊出演
☆江戸時代後半。加賀藩に仕える猪山家の八代目、直之は、家の財政状況を調べ直してみると、なんと借金の総額は年収の2倍にも膨れあがっていた。お家存亡の危機と悟った直之は、家財一式を売り払い借金返済に充てることを決断する。森田監督の遺作なんだけど、あっさり味すぎで、映画館で見てたら多分居眠りしていただろうなあ。2014.2

フライング・スマグラー 俺たちは便器を運ぶ GANGSTER EXCHANGE
ディーン・バイラモヴィッチ監督、クリストファー・ラッセル、ノブヤ・シマモト出演
☆特殊な技術で覚せい剤を便器に仕立て上げ、その運び屋を任された男たちの騒動を描いている。覚せい剤が便器に変身するというアイデアは斬新だが、あとは予定調和のヤクの運び屋とヤクザたちの追いつ追われつゲーム。日本人のチンピラ役はなかなか味があってよかったけど…。可もなく不可もなく、といった感じです。2014.1

ムーンライズ・キングダム MOONRISE KINGDOM
ウェス・アンダーソン監督、ジャレッド・ギルマン、カーラ・ヘイワード、ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ 、フランシス・マクドーマンド出演
☆1965年、アメリカの小さな島。少年サムは所属するボーイスカウトのサマー・キャンプ中、置き手紙を残し、姿を消す。親の過干渉にうんざりしていたスージーと駆け落ちしたのだ。草原で落ち合った2人は、秘密の場所“ムーンライズ・キングダム”を目指す。
アンダーソン監督作なので、奇妙奇天烈を想像して身構えていたのだが、以外と普通のかわいらしいラブストーリー。時代設定や草原が舞台の駆け落ちなど、「小さな恋のメロディ」に通じるものあり。ちょっとひねったオマージュを感じました。駆け落ちする若い二人のキャラもそこそこ過激ででも微笑ましく、クスッと笑えるライトな作品でした。脇を固める豪華キャストも出すぎず、いい塩梅に存在感を出している。個性豊かなアンダーソン節を期待したファンは、物足りなさも感じたかもしれないが、こういう万人受けするテイストもよかったです。2014.1

藁の楯
三池崇史監督、大沢たかお、松嶋菜々子、岸谷五朗、伊武雅刀、永山絢斗、藤原竜也、山崎努出演
☆大物の孫娘が惨殺され、容疑者清丸が逮捕された。大物は全国紙に“清丸を殺害すれば10億円を支払う”との広告を掲載。清丸は次々に命を狙われる。福岡県警から東京へ移送の際、5人のSPが警備につくことになるが…。
三池監督なので、もう少し過激な演出を期待したのだが、いたって普通のサスペンス。TVのSPで十分な内容でした。猟奇的な殺人者役の藤原竜也、やっぱり上手い!2014.2

麒麟の翼 ~劇場版・新参者~
土井裕泰監督、阿部寛、新垣結衣、溝端淳平、松坂桃李、三浦貴大、劇団ひとり、田中麗奈、中井貴一出演
☆日本橋の翼のある麒麟像の下で男性の刺殺体が発見された。容疑者として浮かんだ若者は、青柳のバッグを持って現場近くの公園から逃走した際、車に轢かれて死亡する。事件は被疑者死亡として解決するかに思われたが…。
容疑者の青年と恋人のドラマ、そして被害者の男と息子のドラマ。二つの過去を加賀が追う展開がスリリングで引き込まれた。
息子の罪を一人で背負った父の思いよりも、罪から目を背けたことへの罪悪感に苦しむ息子のほうに感情移入してしまったのは、自分に子供がいないからなのかも…。
贖罪がテーマの物語に弱いので、涙腺が緩みっぱなしでした。
原作がしっかりした作品はやっぱり見応えがありますね。2013.12

クリスマス・ストーリー UN CONTE DE NOEL
アルノー・デプレシャン監督、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン=ポール・ルシヨン、アンヌ・コンシニ、マチュー・アマルリック、メルヴィル・プポー、キアラ・マストロヤンニ出演
☆アベルとジュノン夫婦は、長男ジョゼフを幼いころ白血病で亡くしている。ある日、妻ジュノンが難病を宣告され、骨髄移植が必要になる。ドナーになれるのは、一家の問題児アンリと、精神病院に入院していた長女の息子。
アンリは、クリスマス休暇に、6年ぶりに姿を現す。
トラブルメーカーの次男を演じたマチュー、さすがの味のある演技。生のマチューはオーラなかったけど、演技に入ると光るのよねえ。これぞ演技派。
ドヌーブは貫禄の存在感。愛せなかった次男から骨髄をもらう、という複雑な役どころながら、動揺を見せない凛とした女がぴったりでした。
ストーリーは興味深かったのだが、少々長過ぎ。三男の嫁の恋話は正直、余計。人間関係が途中までよくわからなくて、飽きてしまった。フランス映画にありがちの冗長さが気になった。2013.12

クリスマスのその夜に HJEM TIL JUL HOME FOR CHRISTMAS
ベント・ハーメル監督、トロンド・ファウサ・アウルヴォーグ、クリスティーネ・ルイ・シュレッテバッ出演
☆舞台はノルウェーの小さな町。妻と子供に未練たっぷりの男パウルはクリスマスの夜にこっそり家を覗きに行き…。その友人で医師のクヌートは、コソボ出身のカップルの出産を手伝わされる。少年トマスは、クリスマスを祝わないイスラム教徒の女の子ビントゥとの時間を楽しむ。故郷に帰る電車賃もないヨルダンは、かつて恋仲だった女性と再会するが…。
冴えないクリスマスを過ごした私に、ぴったりはまった、冴えない小市民のクリスマス物語。馴染みの薄いノルウェーの人々でも、寂しいのは一緒なのね…。寂しさを共有できただけで満足です。2013.12

十三人の刺客
三池崇史監督、役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、古田新太、松本幸四郎、稲垣吾郎、市村正親ほか出演
☆江戸末期。暴君・明石藩主の松平斉韶暗殺の密命を受けた新左衛門は、甥の新六郎をはじめ十一人の腕に覚えある男たちを集める。
13人の刺客たちの個性と、クライマックスの戦闘シーン。どちらも見応えのあるエンタメ作品で十二分に楽しめた。古い作品は脚本が作り込まれているから、リメイクしても面白いんだよねえ。松ジュンの「隠し砦」も面白かったし。骨組みのしっかりした脚本と、三池監督お得意の活劇シーンがぴったりはまった秀作です。2014.1

第七の封印 DET SJUNDE INSEGLET
イングマール・ベルイマン監督、マックス・フォン・シドー、グンナール・ビョルンストランド出演
☆56年作品。騎士アントニウスは、帰途、死神と出会いチェスの勝負をする。黙示録の聖句からとったようだが、難解でよくわからず。死神の風貌だけが、妙に印象に残った。2014.1

野いちご SMULTRON-STALLET
イングマール・ベルイマン監督、ヴィクトル・シェストレム、イングリッド・チューリン出演
☆57年作品。医師イサクは50年に及ぶ業績を讃えられ、名誉博士号授与に赴く前夜、自分が死ぬ夢を見る。彼は息子夫婦の運転で式場のあるルンドへ向かうが、途中、青年時代を過ごした旧宅に立ち寄り、原っぱの野いちごに、積極的な弟に奪われた婚約者サラ(アンデショーン)を想い出す。その後、彼がめとった妻はくだらない男と密通し、彼を傷つけたのだ。邸を発ってしばらくして、ヒッチハイクの三人組を拾うが、そのうちの一人、女学生のサラ(アンデショーンの二役)は昔の想い人にそっくりで、彼は思うままに過ごせなかった自らの青春を悔いる。次に乗せたのは、彼らの車と事故を起こしかけた夫婦者。しかし、その口論があまりにうるさいので降ろしてしまう。が、再びまどろむイサクの夢で、その無知と人生の空疎さをあげつらうのは、夫婦者の夫だった。イサクはそこで初めて、息子エヴァルドの嫁マリアンヌの苦悩を知る。息子もまた自分と似て厭世的で人生を楽しんでいない……。式典を終えたイサクは、例の三人組の祝いの訪問を受ける。勲章よりもそうした、人とのつながりの価値を思い知ったイサクのその夜の夢は、青春の頃に戻りサラに再会する幸福なものだった。人生が走馬灯のように、とはよく言うが、このように老いて、若き日を回想できるものなのか。そのためにも生きねばなるまいと思わせる映画です。

ビフォア・サンセット BEFORE SUNSET
リチャード・リンクレイター監督、イーサン・ホーク、ジュリー・デルピー出演
☆「恋人までの距離(ディスタンス)」の続編。1夜限りの恋から、9年ぶりに再会したアメリカ人のジェシーとフランス人のセリーヌ。二人は、再会を誓った日に会えなかったわけや、今までの思いを語りはじめる。
自分を偽っていたセリーヌが、徐々に本心を見せ始める過程が秀逸。ジェシー側はほとんど聞き役なのがちょっと物足りなかったかな。映画館でみたら、飽きてしまったかも。食後にゆっくり見るのに最適の恋物語でした。2014.1

ニューイヤーズ・イブ NEW YEAR'S EVE
ゲイリー・マーシャル監督、ハル・ベリー、サラ・ジェシカ・パーカー、ジェシカ・ビール、ジョン・ボン・ジョヴィ、アビゲイル・ブレスリン、ロバート・デ・ニーロ出演
☆ニューヨークの大晦日。タイムズスクエアでのカウントダウン・イベントを取り仕切るクレア、元恋人のロックスターとの再会で動揺するケータリング会社のローラ、病院のベッドで新年を迎える瀕死の男等々、ニューヨークで暮らす大みそかの人々の様子を追った銀像劇。
お決まりのパターンではありますが、それぞれの関係性も面白く、役者陣が豪華なので、楽しんで見れました。2013.12

僕はラジオ RADIO
マイク・トーリン監督、キューバ・グッディング・Jr、エド・ハリス、アルフレ・ウッダード、デブラ・ウィンガー出演
☆1976年、サウスカロライナ州アンダーソンのハナ高校アメフトチームは名コーチ、ジョーンズのもと、猛練習に励んでいた。その練習を毎日見学していたのは、ラジオ好きの知的障害者の青年。生徒が彼をイジメたことをきっかけに、ジョーンズは彼に、練習の手伝いをさせることにする。
知的障害の黒人青年とアメフトコーチの熱い友情物語。男同士の友情話には昔から涙腺が緩むので、涙涙の連続…。グッティングがうまい!そしてエドもステキ!そして、彼らの周りの人々も静かに二人を見守り、理解し…。これぞヒューマンドラマ。実話ということで、最後に本人たちの映像も出てくるのがまたうれしい。久々にすさんだ気持ちが癒されました。2013.12

ポリス/サヴァイヴィング・ザ・ポリス CAN'T STAND LOSING YOU
アンディ・グリーヴ監督、スティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランド出演
☆英国の伝説的バンド、ポリスの誕生、解散、再結成をめぐる内幕を、ギタリスト、アンディ・サマーズが語っていく音楽ドキュメンタリー。
ポリスといえばスティング、だったので、目からウロコのネタがたくさんあって楽しめました。アンディがポリスに加入したとき、すでに30過ぎてたというのは驚き。スティングとスチューがガキみたいに喧嘩している側でアンディーが冷静でいる姿に笑ってしまいました。
才能はスティング、アンディーはリーダー的な役割だったのでしょう。
バンドにありがちな解散前の確執は、よくあることだし、誰が悪いわけでもない。ある意味、必然なのかもしれませんね。時を経て再結成した3人の表情がステキでした。2013.12

ラスト・ミニッツ A COMMON MAN
チャンドラン・ラットナム監督、ベン・キングズレー、ベン・クロス出演
☆スリランカの警察に爆弾テロの予告電話が入った。犯人は、4人のテロリスト受刑者の釈放を要求する。
テロで亡くなった人たちの弔いをこめて、一人の小市民が復讐をはじめる社会派映画。
なのだが、せっかく名優を使ったのに、男の背景や人間性に迫っていないので、たんなる復讐、で終わってしまっているのが、残念。2014.1


イノセンテの描く未来 Inocente 
ショーン&アンドレア・ニックス・ファイン監督、イノセンテ出演
☆個性的なフェイス・ペインティングで自分を飾っている15歳の少女イノセンテ。彼女には、住む家がない。9年もの長い間、国境の町サンディエゴの隅っこで、ホームレス生活を送っているのだ。イノセンテは、そんな過酷な生活環境にもめげず、アーティストになる夢を追い続ける。
ラテン系不法移民の絶望的な暮らしの現実と、少女イノセンテの描く、色鮮やかな絵画の数々が強く印象に残るハート・ウォーミングな短編ドキュメンタリー。2013年アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門作品賞受賞ほか、世界の映画祭で数々の賞を受賞した話題作である。
イノセンテの描くハートマークに胸キュン。幼い息子二人を連れて、トボトボと歩くイノセンテのママの姿も印象に残ってます…。切なくもなったけど、イノセンテのこれからの未来に乾杯!2013.10 ラテンビート映画祭にて

イル・ディーヴォ -魔王と呼ばれた男- IL DIVO
パオロ・ソレンティーノ監督、トニ・セルヴィッロ出演
☆イタリアの悪名高き権力者の裏の顔を思い切り茶化した暴露ドラマ。構成がユニークなのだが、政治家がいっぱい出てきて、誰が何だかさっぱりわからず。最初、字幕なしで見たときに、こりゃ、字幕ないと無理、と思ったのだが、字幕付きでみてもやっぱりよくわかりませんでした。イタリアの政治家しらないので、きつかったです。2013.9

ウィラーヤ Wilaya
ペドロ・ペレス・ロサード監督
☆西サハラ難民キャンプで生まれ、スペインに里子へ出された一人のサハラウィ人女性、ファティメトゥが実母の死の知らせを聞き16年ぶりに帰ってきた。ファティメトゥは、数日の滞在を予定していたのだが、兄から、サハラに残って身障者の姉の面倒を見るよう命じられる。難民キャンプの人々の暮らしぶりを淡々と描いているのと、テーマには好感がもてたのだが…。
カメラワークが素人並みで、意味不明のワンショットを多用しすぎて、見ていてはきそうになった。基本的な映像技術はやっぱり大切だと痛感。役者は素人でも味がでるけど、技術の未熟さは不快なだけ。2013.10 難民映画祭にて

噂のギャンブラー LAY THE FAVORITE
スティーヴン・フリアーズ監督、ブルース・ウィリス、レベッカ・ホール、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ出演
☆実在の女性プロ・ギャンブラーの自伝を映画化、とのことだが、正直、面白みにかけた。フリーアズ監督、ということで期待しすぎたせいもあるかも。この手のだましだまされタイプは、スピード感が命のような気がします。
キュラソー島がタックスヘイブンというのをはじめてしりました。ジョーンズやバレンティンの故郷ですが、オランダはこの島を利用して稼いでいるのでしょうね。2013.10

桐島、部活やめるってよ
吉田大八監督、神木隆之介、橋本愛、東出昌大、大後寿々花出演
☆バレー部キャプテンで学校のスター桐島が、突然退部したらしいとの噂が校内を駆け巡る。この噂をめぐり、桐島の彼女や友人たちは右往左往。一方、映画研究部員や吹奏楽部部長は、別のことで悩みを抱えていた…。
同じ時間軸を、違った角度から描いていく、という手法は昔からあるので、特別斬新さは感じず。なので、前半はたるかったです。でも、吹奏楽部の女の子の、イケメンをひそかに思う気持ちや、映画部と彼女の場所取りをめぐるやりとりは、高校生らしくて好印象。ただ、日本アカデミーとるほどの作品かあ?と、思ったら、やっぱり日本テレビ製作でした。「日本アカデミー賞」じゃなくて、「日テレアカデミー」に変更しろと言いたいです。
2013.10

クロッシング・デイ WHAT DOESN'T KILL YOU
ブライアン・グッドマン監督、マーク・ラファロ、イーサン・ホーク、アマンダ・ピート出演
☆子供のころからチンピラ生活を続け、酒とクスリにおぼれて、刑務所に入れられた男と、その相棒。心のやさしい男と、悪の道でのし上がろうとする相棒の友情と別れを描いている。
暗いテーマなので、気持ちが沈んでしまったが、苦悩するマーク・ラファロはステキでした。あらためて、演技派だよなあ。イーサン・ホークはすっかりマッチョになってしまい…。繊細な演技をしていたころのほうが好みでした。犯罪に手を染めて育った監督自身が半生映画化。
2013.12

五月の雲
ヌリ・ビルゲ・ジュイラン監督
☆故郷の村に帰った映画監督の男は、森の木を守ることに没頭している老いた父に映画出演を依頼する。甥の少年は、生卵をポケットに入れて割らなければ、時計を買ってくれる、という祖母の言葉を信じていたが…。
トルコの田舎町の風景と、ちょっといたずら好きの少年の瞳が印象に残る静かな作品。
前半は正直、たるかったが、後半、少年がちょっとずつ動き出してからは、笑える場面も多々あり、面白くみれました。独特のウィットに富んだ作品。2013.9 地中海映画祭にて

コンテイジョン CONTAGION
スティーヴン・ソダーバーグ監督、マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ出演
☆香港の出張から帰国後、突然はげしい痙攣を起こして女性が死亡した。まもなく世界中で謎のウイルスが蔓延する。専門家たちは、抗体の開発を急ぐ一方、マスコミは、フリー・ジャーナリスト、アランの言動に注目する。
なぞの疫病、SNSによる風評など、現代社会を見事に風刺したドキュメンタリータッチの映画。俳優陣が超豪華で見応えありました。2013.11

幸せのポートレート THE FAMILY STONE
トーマス・ベズーチャ監督、サラ・ジェシカ・パーカー、ダイアン・キートン、クレア・デインズ、レイチェル・マクアダムス、ダーモット・マローニー、ルーク・ウィルソン出演
☆潔癖症のメレディスは、恋人エヴェレットの家でクリスマス休暇を過ごすことにする。自由奔放な家族とソリがあわないメレディスは、ホテルに逃げ込み、妹を呼びつけるが…。
おきまわり感いっぱいのクリスマス・ラブ・ストーリー。脇キャラもステレオタイプで面白みにかけたが、メレディスのエキセントリック・キャラは笑えた。酔っぱらって踊り出すシーンは、サラの演技の見せどころ。こういう女、いるいるー。2013.12

ステキな金縛り
三谷幸喜監督、深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、浅野忠信、中井貴一出演
☆弁護士エミは、資産家の妻を殺害した容疑で捕まった男の弁護を担当することに。幽霊が見えるエミは、事件の夜、山奥の旅館で容疑者の上に乗っていたという落ち武者の霊・六兵衛を、裁判に担ぎ出す。楽しかったです~。でもそれだけ。2013.11

世界にひとつのプレイブック SILVER LININGS PLAYBOOK
デヴィッド・O・ラッセル監督、ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァー、クリス・タッカー出演
☆妻の浮気が原因で精神を病んだパットは、風変わりな若い女性ティファニーと出会う。彼女もまた、夫を事故で亡くして以来、心に問題を抱えていた。
ガラスのハートを持つ二人が美男美女なのに対し、脇が揃いもそろって地味な風貌なのがいい。なんてことないストーリーなのだが、二人を見守る脇役陣の温もりを感じる、優しい映画だった。ラッセル監督はデビュー作「スパンキング~」にテイストが戻った感じ。キャラクター設定が秀逸です。2013.11

ダラスの熱い日 EXECUTIVE ACTION
デヴィッド・ミラー監督、バート・ランカスター、ロバート・ライアン、ギルバート・グリーン出演
☆元CIA高官ら、タカ派の大物は、リベラルな政治を推進するケネディに危機感を覚え、彼の暗殺を画策する。
これぞ社会派、と呼べる硬派な作品。70年代ならではの観客に媚びない作りに脱帽。1度見ただけではよくわからなくて、何度も見ているうちに、引き込まれてしまった。
もしこれが、本当だとしたら…、恐ろしいことだが、あり得る話。日本の財政界でも、いろんなドロドロした非人道的な策略があるのでしょう。最も信じられないのが政治家、というのが何とも皮肉な話です。2013.12

朝食、昼食、そして夕食 18 COMIDAS
ホルヘ・コイラ監督、ルイス・トサル、セルヒオ・ペリス=メンチェータ、ペドロ・アロンソ出演
☆サンティアゴ・デ・コンポステラで暮らす人々の日常を、食事をキーワードに描いた群像劇。路上ミュージシャンを演じたルイス・トサルが、今までと違ったテイストの自然な演技をしていたので、一瞬誰だかわからず。ゲイカップルと兄との激しい喧嘩、倦怠気味の夫婦の日常、年の離れたカップルの別れなどなど、小さな日常を繊細に描いていた。個人的にはまったのは、歌手のオーディションで突然父親が倒れてしまうお話。ついてないよね…、と思いながら不謹慎にも笑ってしまいました。そうそう、人生はいいことばかりじゃないってこと。みんな辛いことを抱えながらも、小さな幸せをみつけようとしてもがいているのよね…。ちょっぴり気持ちが楽になれました。2013.12

天使の分け前 The Angels' Share
ケン・ローチ監督、ポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショウ、ゲイリー・メイトランド出演
☆ケンカの絶えない人生を送るロビーは、恋人レオニーや子供のために人生を立て直そうとするが、トラブルから抜け出せない。奉仕活動指導者のハリーからスコッチウイスキーの奥深さを教わったロビーは、仲間とともに1樽100万ポンド以上する高級ウイスキーを盗みだすことを思いつく。
ブルーカラーの青年が利き酒師になるほのぼの話かと思ったら、高額な銘酒を盗むお話だったのが驚きでした。高額なウイスキーを落札した金満オヤジが、すりかえられたウイスキーを試飲するシーンには、思わずガッツポーズ。皮肉のきいた展開が楽しめた。2013.11

ハーモニー 心をつなぐ歌 HARMONY
カン・テギュ監督、キム・ユンジン、ナ・ムニ、カン・イェウォン出演
☆お腹の子どもを夫の暴力から守るために殺人を犯した囚人のジョンヘを中心に、女囚たちが、合唱団を結成する。韓国映画らしい、お涙頂戴ネタの連続で、中だるみ…。それでも、死刑囚との最期の別れのシーンには、こんな荒んだ私でも涙してしまいました。ホロリ…。2013.11

ブラック・スネーク・モーン BLACK SNAKE MOAN
クレイグ・ブリュワー監督、サミュエル・L・ジャクソン、クリスティナ・リッチ、ジャスティン・ティンバーレイク出演
☆アメリカ南部の田舎町を舞台に、セックス依存症の若い白人女性と、彼女を更正させようと鎖に繋いで監禁してしまう敬虔な初老の黒人ブルースマンの奇妙な心の交流を描く異色のヒューマン・ドラマ。
アバズレ役をクリスティナ・リッチが好演していた。地味な作品だが、役者も豪華で人物描写も丁寧で好感がもてた。2013.11

容疑者 CITY BY THE SEA
マイケル・ケイトン=ジョーンズ監督、ロバート・デ・ニーロ、フランシス・マクドーマンド、ジェームズ・フランコ、エリザ・ドゥシュク出演
☆NY市警の敏腕刑事ビンセントは、麻薬の売人が殺された事件を追ううちに、容疑者が実の息子だと知らされる。
父と息子の確執と再生を丁寧に描いている。ジャンキーの息子を演じたフランコに脱帽。今や監督業も手がける名優の仲間入りを果たしているフランコの出世作と言えるでしょう。デニーロも食う怪演でした。2013.12

リオの男 L'HOMME DE RIO
フィリップ・ド・ブロカ監督、ジャン=ポール・ベルモンド、フランソワーズ・ドルレアック出演
☆ベルモントとその妻が、アマゾンの秘宝をめぐる殺人事件に巻き込まれるエンタメ作品。「レイダース」の元ネタと言われているだけあり、見ごたえ十分。パリからブラジルへ渡り、リオ、ブラジリア、そしてアマゾンへと舞台をかえてベルモントが大活躍。コミカルなシーンも満載で、楽しめました。もっと評価されてもよい、世界をまたにかけたロケが見どころの娯楽作。妻役の女優はカトリーヌ・ドヌーブの姉で25歳で事故で亡くなっているとのこと。そういう意味でも貴重な作品。2013.11

REDリターンズ RED 2
ディーン・パリソット監督、ブルース・ウィリス、ジョン・マルコヴィッチ、メアリー=ルイーズ・パーカー、イ・ビョンホン、アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ出演
☆元CIAのフランクは、元相棒マーヴィンらとともに、消えた小型核爆弾を追う。フランクらはかつての殺し屋仲間に命を狙われ…。
キャストの豪華さに惹かれ、久々に公開翌日の日曜映画の日に劇場で鑑賞。隣のお兄さんが映画に興味ないみたいで、落ち着きがなかったのが気になりました。彼女に連れられしぶしぶ来てる人も多いのでしょうね、この手のエンタメ作品は。
殺し屋最年少が40過ぎのビョンホンという珍しいオールドスター勢ぞろいのアクションエンタメ。演技派ぞろいで楽しめました。レクター博士を彷彿とさせるホプキンスのキャラや、ウィリスの元カノ・ロシアの美女の風貌がデミ・ムーアに似ていたり…。小ネタにはうけました。2013.12

ジョルダーニ家の人々 LE COSE CHE RESTANO
ジャンルカ・マリア・タヴァレッリ監督、パオラ・コルテレージ、クラウディオ・サンタマリア、ロレンツォ・バルドゥッチ出演
☆ローマに暮らすジョルダーニ家は、技術者の父と元医者の母を中心に、素直な4人の子供たちも立派に育った愛にあふれる理想的なブルジョワ一家だった。その家族に、末息子の交通事故死、という悲劇が訪れる。母は心を病み、不倫していた父は家を出、家族はバラバラになってしまう。
崩壊した家族の再生物語を丁寧に描いた大河ドラマ。昔、NHKで見たようなステレオタイプの人間ドラマで、それほど心は動かされず。ただ、不法移民の母娘の人生を絡めたところがイタリアらしいかな。『輝ける青春』があまりに素晴らしかったので、比較してしまいました。ナイーブなニノとその女友達の関係が、青春していて、かわいかったです。2013.10

どら平太
市川崑監督、役所広司、浅野ゆう子、宇崎竜童出演
☆“どら平太”という仇名の役人の活躍を描いた作品。黒澤、市川の共同脚本、ということで見たのだが、台詞と現代役者の雰囲気が合っていないのか、違和感あり。歌舞伎役者の濃い演技のほうがぴったりくるような…。
期待していただけに、残念!2013.10

奈緒子
古厩智之監督、上野樹里、三浦春馬、笑福亭鶴瓶、柄本時生、綾野剛出演
☆長崎県波切島の高校の陸上部が、駅伝で勝利するまでを描いた青春物語。役者陣が豪華なのと、綾野剛みたさに見てみたが…。高校生役は初々しくてよかったけど、監督役はツルベじゃないだろ、と突っ込みたくなりました。綾野君の走りはプロ並みにステキでした。2013.10

ブランカニエベス Blancanieves
パブロ・ベルヘル監督、マリベル・ベルドゥ、ダニエル・ヒメネス・カチョ、アンヘラ・モリーナ出演
☆人気闘牛士の娘カルメン。彼女が生まれると同時に母は亡くなり、父は意地悪な継母と再婚。カルメンは邪悪な継母に虐げられる幼少を過ごす。ある日、継母の策略で命を奪われかけた彼女は、"こびと闘牛士団"の小人たちに救われ、「白雪姫(ブランカニエベス)」という名で彼らとともに見世物巡業の旅に出る。そんな中、女性闘牛士として頭角を現したカルメンは、行く先々で圧倒的な人気を得るようになるのだが…。
台詞なし作品ながら、モノクロ映像の美しさに引きつけられた、あっという間の2時間。力作です。意地悪継母のマリベル・ベルドゥや、父役のカチョの存在感にも圧倒された。2013.10 ラテンビート映画祭にて

ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル El Artista y la Modelo
フェルナンド・トルエバ監督、ジャン・ロシュフォール、クラウディア・カルディナーレ、アイーダ・フォルチ出演
☆1943年夏、スペイン国境近くのフランスのとある村。二つの戦争を経験し、生きる希望を失っていた80歳の彫刻家クロスは、妻が連れてきた美しい娘メルセに心を奪われる。スペインのフランコ軍から逃れてきたというメルセに魅せられたクロスは再び創作意欲を取り戻していく。
絶望の縁にある老アーチストが、モデルと向き合うことで、生きる喜びを取り戻していくまでの心の揺れを、名優ロシフォールが熱演。さすがの演技力は圧巻でした。監督が構想段階で彼に演じてもらいたいと決めていた、というだけあり、適役でした。静かな映画だが、しっかりと反戦も描かれている。モデルは、ただ妖艶なだけでなく、レジスタント活動に身を投じるジャンヌダルクのような女性、というのも好印象。凛々しさと美しさを兼ね備えた彼女の未来にも乾杯!深くて味わいのある素敵な映画でした。2013.10 ラテンビート映画祭にて

パブロ Pablo
リチャード・ゴールジェヴィッチ監督、ジェフ・ブリッジス、アンディ・ガルシア、アンジェリカ・ヒューストン出演
☆映像の魔術師スタンリー・キューブリック監督に「天才」と絶賛され、『博士の異常な愛情』『時計じかけのオレンジ』等、数々の斬新なタイトル・デザインを手がけた伝説のアーティスト、パブロ・フェロ。彼の名前は一般の人々の間では無名に近いが、映画業界では名の知れ渡ったカリスマ・アーティストである。
映画では、革命前のキューバ出身である彼の生い立ちと、家族と共に米国へ移住してからの思い出を、ユニークなアニメーション映像で紹介。また、70歳を超えた今も現役で活躍する彼のエキセントリックなライフスタイルや人柄を、ジェフ・ブリッジス等、そうそうたる俳優&監督陣が語っていく。監督はリオ・デ・ジャネイロ出身の新鋭リチャード・ゴールジェヴィッチ。
タイトルバックや予告編専門のアーチストがいること事態知らなかったので、興味津々。キューブリック作品や、あのストップ・メイキング・センスの鉛筆文字までデザインしていたなんて、驚きでした。ハル・アシュビーと親友で彼を看取った話には涙…。
あくまで影の存在であり、生活も苦しかったみたいだけど、彼に目をつけた制作陣にも脱帽です。フラッシュバックが多くて、目がチカチカしてしまったけど、テンポがあって面白かった。アニメでなんども繰り返される「ディス・イズ・サウナ」に笑わせてもらいました。
2013.10 ラテンビート映画祭にて

イノセント・ガーデン STOKER
パク・チャヌク監督、リドリー&トニー・スコット製作、ミア・ワシコウスカ、ニコール・キッドマン、マシュー・グード、ダーモット・マローニー出演
☆豪邸に暮らす少女インディアは、父を不審な事故で亡くしてしまう。葬儀の日、長年行方不明だった父の弟チャーリーが姿を現わし、インディアたちと一緒に暮らし始める。
怪しげな映像は秀逸。飛行機の小さな画面で見たのが悔やまれる。映画館だったらもっとゾクゾクさせられたはず。ドラマの展開はごくごくシンプルだったが、薄幸感が染み出た主演のミアは存在感あり。「キャリー」のシシーを思い出しました。2013.7

オン・ザ・ロード ON THE ROAD
ウォルター・サレス監督、サム・ライリー、ギャレット・ヘドランド、クリステン・スチュワート、トム・スターリッジ出演
☆フランス系移民の若い作家サルは、無軌道に生きる青年ディーンとともに、アメリカ各地を放浪する旅に出る。日々、享楽を求めて生きていたディーンだったが、新しい彼女に子供ができ、カリフォルニアに移住。家庭に収まるかにみえたが…。
ディーンに魅せられた友人たちが、作家や時代のイコンとなって大成し、彼自身は病的なまでに浮浪を続ける、というエンディングに、哀愁を感じずにはいられなかった。
シンプルにワクワクするロードムービーとして見れなかったのは、自分の感受性が鈍ったからなのかなあ。この映画、20年前に見ていたら、感じ方も違った気がする。
アメリカ&メキシコ各地の旅のシーンは、サレス監督の真骨頂。解放感があって大画面ならではのスケールを感じた。少々散漫な印象も受けたが、小説が散漫だから仕方ないのかも。
あらためて、原作に再トライしてみよう、と思わせる言葉には表せない魅力を感じる映画だった。2013.9

希望の国
園子温監督、夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵、清水優、梶原ひかりほか出演
☆長島県で酪農を営む泰彦は、痴呆の妻、智恵子と息子夫婦と穏やかな日々を送っていた。ある日、巨大地震と津波が発生し、原発が事故を起こす。
庭が原発から半径20kmの境界線となってしまった一家は、強制退去を免れるが、泰彦は、若い息子夫婦に自主避難を進める。
ずっと見るのを躊躇していた。リアルな恐怖心を思い出したくなかったから…。あれから2年半が経つけれど、被災した時の家の様子、停電して真っ暗な中での闇なべ、そして原発に対する恐れ…、様々なことを思い出し、胸が締め付けられる思いがした。時間がたって、みんな忘れたフリしてたけど、まだまだ原発事故は終わっていない。当事者である日本人よりも、世界が汚染水を問題視していることを、今回のオリンピック開催地決定の報道で明らかになった。原発から30キロ圏内に実家がある自分だからこそ、感じることのできるリアルな危機感を、発信していかねば、と強く思った。
この映画は正直、荒削りで、同じようなシーンの繰り返しで長過ぎだし、こなれてない感はあるのだけれど、映画としてのクオリティは低くても、監督やスタッフ、そして福島の人々の思いだけはひしひしと伝わってきた。ザッツ・問題提起映画です。エログロだけじゃない園監督のリアルを見せてもらいました。2013.9

再会の街で REIGN OVER ME
マイク・バインダー監督、アダム・サンドラー、ドン・チードル、ジェイダ・ピンケット=スミス、リヴ・タイラー出演
☆歯科医アランは、ある日、大学時代のルームメイト、チャーリーを街で見かけ声を掛けるが、彼は気づかずにそのまま去ってしまう。チャーリーは、911テロで家族を失って以来、人と関わることを拒否し、心を閉ざしてしまっていた。
そうか、9月か…。あれから何年だろう…。お涙頂戴映画は正直苦手なのだが、アダム・サンドラー演じるチャーリーのキャラがキュートなので、好印象。順風満帆に見えるアラン自身の悩みもさりげなく丁寧に描かれていて、気持ちがほっこりしました。生きてりゃ色々あるよね。ラスト、チャーリーが病的な美人とうまくいってしまうのだけは、解せなかったけど、まあ、ヒューマンドラマだから仕方ないですね。2013.9

砂漠でサーモン・フィッシング SALMON FISHING IN THE YEMEN
ラッセ・ハルストレム監督、ユアン・マクレガー、エミリー・ブラント、クリスティン・スコット・トーマス、アムール・ワケド出演
☆英国の水産学者ジョーンズ博士のもとに、砂漠の国イエメンに川をつくって鮭釣りができるようにしてほしいという依頼が、投資会社のハリエットから舞い込む。依頼主はシャイフというイエメンの大富豪。実現は不可能に思われたが、中東との関係のイメージアップを目論む英国政府が、この計画に目をつけ…。
イエメンと鮭、という意外な組み合わせが面白い。その計画に乗ってしまう英国政府の間抜けな政治家たちのやり取りも、ウィットに富んでいて、ケッサク。スコット・トーマスは単なる美人女優じゃないですね。コメディも抜群に上手い。素敵な役者をそろえているし、夢のある映画ではあるんだけど、物語が白人と金持ちイエメン人の関係だけで終わってしまっているのが気になった。なぜシャイフの計画に反対するのか、そのあたりを見せてくれないので、単なる悪党が計画を邪魔してる、とだけしか思われない。綺麗な二人のラブストーリーも、軽く感じてしまった。発想は面白いとは思うけど、白けてしまった。2013.9

トゥ・ザ・ワンダー TO THE WONDER
テレンス・マリック監督、ベン・アフレック、オルガ・キュリレンコ、ハビエル・バルデム出演
☆アメリカ人のニールとフランス人のマリーナは、フランスで出会い、激しい恋に落ちた。マリーナの連れ子とともに3人でアメリカで暮らしはじめたが…。
二人の出会いから別れまでを、木漏れ日と大地、詩的な台詞によって紡いでいく、抒情詩的作品。クラシック音楽と、やさしい光を放つ映像美が印象的な、マリック監督らしい作品で、心地よい眠りへと誘われた。
この作品は“映画”と呼ぶより“アート”と呼んだ方がマッチする。感覚に訴えかけてくる作品。美男美女の恋人役は有名俳優である必要ないですね。『アルゴ』で監督としても出世したアフレックが、あえてこの作品にトライしたのはなぜだろう?あまりにも毛色の違う作品なので、アフレックの真意を知りたくなりました。マリック作品見た後の感想は、いつも「う~ん、よくわかんない。でも気持ちは良かったからまあ、満足」。大満足、とは言えないのが私が俗物である証拠なのかも。2013.9

踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望
本広克行監督、織田裕二、柳葉敏郎、深津絵里、小栗旬ほか出演
☆湾岸署で誘拐事件が発生。数時間後には被害者が射殺体で発見される。そんな中、真下の息子が誘拐される。
毎度おなじみ~。どんどんつまらなくなっている、と感じるのは私だけ?どこが、ファイナルなんじゃー、って突っ込みたくなりました。それでもやっぱり青島は好きですけどね。2013.8

かぞくのくに
ヤン・ヨンヒ監督、安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン、宮崎美子、津嘉山正種出演
☆70年代、北朝鮮への“帰国事業”に参加し、16歳で北朝鮮に移住したソンホが、脳腫瘍の治療のために25年ぶりに日本に帰ってきた。朝鮮総連の幹部である父に反発していた妹リエは、兄との再会を心から喜ぶ。だが、兄には常に北朝鮮の監視がつき、脳腫瘍の治療も3カ月ではできない、と断られてしまう。
日本と北朝鮮の違いを兄と妹、それぞれの視点から、丁寧に描いている。
60年代の在日朝鮮人の若者を描いた『パッチギ』と、見比べてみると面白いかも。
自由のない北朝鮮での生活に戻ることを選んだ兄の姿と、その兄が欲しいといっていたスーツケースを引いてあるく妹の姿が、印象に残った。
心に染みてくる作品です。2013.6

この愛のために撃て A BOUT PORTANT
フレッド・カヴァイエ監督、ジル・ルルーシュ、エレナ・アナヤ、ロシュディ・ゼム出演
☆看護助手のサミュエルは、出産を間近に控えた妻ナディアと幸せな日々を送っていた。ある日、帰宅した彼は暴漢に襲われ、妻を誘拐されてしまう。3時間以内に一人の入院患者を病院から連れ出せ、と指令を受けたサミュエルは…。評判の割に面白味にかけるサスペンスでした。2013.7

人生はノー・リターン ~僕とオカン、涙の3000マイル~ THE GUILT TRIP
アン・フレッチャー監督、バーブラ・ストライサンド、セス・ローゲン出演
☆アメリカでは有名だけど日本では知られていないコメディアン、セスと大物バーブラがタッグを組んだ母子の珍道中コメディ。普通に面白かったです。飛行機の中でみるのにはぴったりでした。飛行機内にて 2013.7

ソラリス SOLARIS
スティーヴン・ソダーバーグ監督、ジェームズ・キャメロン製作、ジョージ・クルーニー、ナターシャ・マケルホーン、ジェレミー・デイヴィス出演
☆惑星ソラリスを探査中の宇宙ステーション内で不思議な現象が頻発。地球との交信も途絶えてしまった。調査に出向いた心理学者ケルヴィンは、死んだはずの愛する妻と遭遇する。
宇宙船の中のみでの、心理ドラマ。死者との再会をした男の苦悩を描いている。期待してみたのだが、今一つピンとこず。タルコフスキー版も眠い作品だが、奥行きが違う気がしました。2013.8

奪命金 LIFE WITHOUT PRINCIPLE
ジョニー・トー監督、リッチー・レン、デニス・ホー、ラウ・チンワン出演
☆香港警察のチョン警部補(リッチー・レン)は仕事を口実にいつも話をそらしていた。
ヤクザのパンサー(ラウ・チンワン)は、逮捕された兄貴分の保釈金集めに奔走。投資会社社長ドラゴンに頼むが…。一方、高利貸しチャンは、銀行の地下駐車場で強盗に襲われる。チョン警部補は、事件を追いはじめる…。
三者三様の立場から一つの事件を描いていくオムニバス風アクション映画。トー監督らしい展開。お決まり、とも言えるが、そのお決まりが楽しいのよねえ。でも、ちょっと飽きたかな。2013.7

映画監督ジョニー・トー 香港ノワールに生きて
イヴ・モンマユール監督、ジョニー・トー、サイモン・ヤム、リッチー・レン、アンソニー・ウォン、レオン・カーフェイ、ルイス・クー出演
☆フランス人映像作家が、2003年から8年間に及び、ジョニー・トー監督についての取材を敢行。トー監督作品常連俳優や、監督仲間たちのインタビューでつないだドキュメンタリー。
メンバーが豪華!サイモン・ヤムのお兄さんが警察のお偉いさん、というトリビアもあり。2013.7

伝説のディヴァイン
ジェフリー・シュワルツ監督
☆ボルティモアでいじめられっ子として育ったハリスが、いかにしてディヴァインへと変貌を遂げたのか?ディバインの人となりに迫った伝記ドキュメンタリー。毒々しくて派手派手なディバインの姿からは想像もつかないほど、シャイで繊細な人だったのね…。まだまだゲイが認知されていない時代だったから、生きにくかったことでしょう。もっと、いろいろ作品に出て欲しかったです。2013.7 レズ&ゲイ映画祭にて

嘆きのピエタ PIETA
キム・ギドク監督、チョ・ミンス、イ・ジョンジン出演
☆孤独なイ・ガンドは、債務者を障害者にして保険金で借金を返済させる悪徳取り立て屋をしている。ある日、ガンドは母だと名乗るミソンという女に付きまとわれる。身体を張ってガンドにつくすミソンに、次第に心を開きはじめるのだが…。
暗い映像と容赦ない暴力の連続で、陰鬱な気持ちにさせられる前半。ミソンと出会ってからのガンドの表情の変化が印象的な中盤。そして、ミソンの正体が明かされる劇的展開の後半。起承転結がこれほど明確な作品は、ギドクには珍しい気がする。
良く言えばエンタメ色が濃い作品。それでも、映像はしっかりギドクカラ―なので、ギドク作品フリークでも十二分に満足できる。
テーマはずばり、暴力と母性。主役の二人以外に、債権者の家族の母性もしっかりと描いている。母の愛のすさまじさに、鳥肌がたちました。2013.7

熱波 TABU
ミゲル・ゴメス監督、テレサ・マドゥルガ、ラウラ・ソヴェラウ、アナ・モレイラ、カルロト・コッタ出演
☆リスボンである老女が亡くなった。隣人は、彼女のかつての恋人に会いに行く。時代は遡り、アフリカのタブー。若き妻は、近所に住む若い男と強く魅かれ合うが…。
現在と過去の2部構成。1部はピンとこなかったが、2部のアフリカ編は、映像も雰囲気も趣があって心地よい気分にさせられた。
若い二人の逢引シーンも美しく、音楽もぴったりマッチしている。奇をてらった内容ではないのだが、センスの良さを感じる映画だった。2013.8

HAZARD ハザード
園子温監督、オダギリジョー、ジェイ・ウェスト、深水元基、池内博之出演
☆日本での退屈な日常に嫌気がさし、刺激を求めて単身ニューヨークへと渡った青年シンは、ニューヨークの犯罪都市“HAZARD”を求めて歩き回る。日本人のリーとタケダに出会ったシンは、彼らと一緒に盗みを働き、夜の街を歩き回る。
2002年に撮影し、公開まで4年もかかったという作品。ジョーも園監督も今は大物だが、まだまだインディだった時代の映画で、荒削りだが、勢いを感じる映画だった。騒ぎ回るシーンが多いので、正直、疲れたけど、「傷だらけの天使」に通じる、危うい若者たちの無軌道な生活がリアルに描かれていた。本当に危ない場所でゲリラ撮影だったらしい。さすが園監督です。2013.8

ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン BRIDESMAIDS
ポール・フェイグ監督、クリステン・ウィグ、ローズ・バーン、メリッサ・マッカーシー出演
☆30代独身のアニーは、開業したケーキ店がつぶれ、恋人にも捨てられ、チャライ金持ち男に遊ばれ…どん底生活を送っている。ある日、大親友リリアンが結婚することになり、アニーはブライズメイドのリーダーを頼まれる。ところが、リリアンの彼の上司の妻がしゃしゃり出てきて、アニーの計画はことごとくつぶされてしまう。
もっとドタバタなのかと思ったが、ボロボロになるアニーの姿が痛々しくて、笑えません…。パーティー会場をぶっ壊すアニー見てて、とっても悲しい気持ちになりました。コメディとドラマの間の作品。どっちつかず、の感あり。2013.8

ミート・ザ・ペアレンツ MEET THE PARENTS
ミート・ザ・ペアレンツ2 MEET THE PARENTS
ジェイ・ローチ監督、ロバート・デ・ニーロ、ベン・スティラー、テリー・ポロ、オーウェン・ウィルソン、ダスティン・ホフマン、バーブラ・ストライサンド出演
☆彼女との結婚を認めてもらうため、元CIAの頑固者の父親に気に入られようと奮闘する姿を描いたシチュエーション・コメディ。お決まりの展開なんだけど、大物俳優が大げさに演じるのが面白かったです。でも、それだけ、でしたけどね。2013.8

マリリン 7日間の恋 MY WEEK WITH MARILYN
サイモン・カーティス監督、ミシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン出演
☆1956年、マリリン・モンローは、ローレンス・オリヴィエ監督・主演作「王子と踊り子」の撮影のためロンドンに降り立つ。ナーバスなマリリンのために、撮影が滞り、オリヴィエは苛立つ。一方、夫アーサー・ミラーも、マリリンを置いて帰国してしまう。そんな中、オリヴィエからマリリンの見張り役を命じられたのは、第3助監督のコリン・クラークだった。
ガラスの心を持ったマリリンをミシェル・ウィリアムズを好演。顔的には別顔なんだけど、よくトライしたよなあ。女優魂を感じた。レミゼ見てから、エディ・レッドメインが気になっていたのですが、この映画でも、いい味だしてました。プロフィールみたら、王子のご学友で超名門の出らしい。気品は隠せないですね。イギリス紳士らしい若者に期待大。2013.10

横道世之介
沖田修一監督、高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛、余貴美子ほか出演
☆舞台は1980年代。長崎から上京した世之介は、お茶目な性格で誰からも愛されている。ホテルでバイトしながら、法政大学に通い、サンバサークルに入ったり、年上の女性に引かれたり、お嬢様とお付き合いしたり…。いわゆる普通の大学生活をエンジョイする。
そんな彼との思い出を、大人になった友人たちが回想していく。
映画的には、いわゆる可もなく不可もなく、の出来だとは思うのだが、自分の大学時代といろいろリンクすることが多すぎて客観的に見られず。原作者は自分と同世代に同じ大学に通っていたので、そうなるのは当然なんですけどね。
事故で亡くなったカメラマンのT君や、ホテルでバイトしていたY君のことを思い出し、かなりセンチになりました。思わず、同世代の友人に勧めたら、半分はすでに原作本、読んでました。私が遅過ぎだったのね^^;。2013.9

酔いがさめたら、うちに帰ろう。
東陽一監督、浅野忠信、永作博美、高田聖子、利重剛ほか出演
☆戦場カメラマン塚原は、アルコール依存症から抜けられず、人気漫画家の妻と離婚。アルコール病棟に入院し、個性的な患者たちと接していく。
アルコール依存症とガン、という救いようのない病気にむしばまれた鴨志田の半生を描いた作品。ついてない人生。はたから見ればそうなんだけど、この映画は、暗さを排除し、鴨志田の晩年を穏やかに描いていて好感が持てた。本当の最期はどうだったのか、分からないけど、西原のマンガを通して鴨ちゃんのことを追いかけていたので、心にジンジン響いてきました。浅野忠信、上手! 2013.7

オンリー・ゴッド ONLY GOD FORGIVES
ニコラス・ウィンディング・レフン監督、ライアン・ゴズリング、クリスティン・スコット・トーマス、ヴィタヤ・パンスリンガム出演
☆バンコクで白人の男が、風俗嬢を殴り殺す事件が発生。それをきっかけに、次々と報復の殺人が起こっていく。 怪しげなバンコクの夜の雰囲気と、ライアンとクリスティンの奇妙な母息子関係がうまくマッチして、独特の世界が描かれていた。レフン監督は、デビッド・リンチ好き、とみた。突然タイの歌謡曲を歌い出す暗黒街のボスの威圧感もすごかったです。2013.7 バンコクにて(2014日本公開)


桃(タオ)さんのしあわせ 桃姐/A SIMPLE LIFE ★★
アン・ホイ監督、ロジャー・リー原作・製作、アンディ・ラウ、ディニー・イップ、チン・ハイルー、ワン・フーリー、アンソニー・ウォン、サモ・ハン、ツイ・ハーク出演
☆家政婦として60年、一つの家族を支えてきたタオさんは、今、その一家の一人、ロジャーと猫のカカと共に暮らしている。ロジャーの母や姉一家はアメリカに移住し、ロジャーとタオさんだけが香港に残されたのだ。そのロジャーも、中国と香港を行き来する毎日。会話もほとんどない味気ない生活を送っていた。
 そんなある日、タオさんが脳卒中で倒れてしまう。後遺症で身体がうまく動かせなくなったタオさんは、一家に迷惑をかけまいと、施設に入ることを決意する。
 ロジャーは、頻繁に施設に通いはじめ、タオさんを献身的に介護し始める。
☆☆香港のある一家を陰で支え続け、自分の家族を持たなかったタオさんは、外から見れば孤独な老人かもしれない。けれど、献身的にロジャーの家族に尽くしたタオさんは、家族のみんなから愛されていた。
決して出しゃばらず、人に頼ろうとせず、いつも笑顔を忘れないタオさん。
そんなタオさんが、ロジャー一家にとってどれだけ大切な人だったかを、小さなエピソードを積み重ねながら丁寧に描いていく。
タオさんと同じ年のロジャーの母は、タオさんに助けられた思い出を語り、ロジャーの姉は、子供の頃、タオさんにかわいがられていたロジャーに焼きもちを焼いたと話し、ロジャーの友達も、タオさんが作り置きしていた牛タン煮を食べながら、タオさんに電話して明るく励ます…。
みんなに愛されていたことが伝わってきて、見ているこちらも、タオさんと一緒になってついほほ笑んでしまった。
一方で、とっても素敵なタオさんには、子供も夫もいない。だから、大みそかと正月には、人のいない施設で静かに暮らさなければならない。もちろん、アメリカのロジャー一家からは新年の祝いの電話が入るし、忘れられたわけではない。
それでも、タオさんの生活の基本は孤独。猫のカカと二人で過ごすのがタオさんの人生なのだ。孤独であることをしっかりと受け止め、愛するロジャー一家にも頼ろうとしない。
タオさんは、とても自立した女性でもあるのだ。
 同じ施設にいた老女にいつもきつく接していた娘が、母が亡くなった時に泣きじゃくっている姿を見て、タオさんは何を思ったのだろう。
私には、ケンカのできる母子の関係性をうらやましく感じたのだが、タオさんも同じだったのではないだろうか…。
タオさんと献身的なロジャーの微笑ましい関係も、もちろん涙を誘うのだが、ロジャーに気を使ってしまうタオさんの謙虚さ。そしてその奥の孤独感に、胸をうたれてしまった。
 人の幸せのはかり方は、千差万別。家族に囲まれ、愛されていればそれに越したことはないのかもしれない。けれど、家族がいなくても、病気になっても、施設に入らなければならなくても、タオさんのように、最後にみんなに愛され、生を全うできれば、それはとても幸せなことだと思う。
 こんなにも、大好きになってしまったタオさんを演じたのはディニー・イップ。香港の大女優の入魂の演技は、ベネチア映画祭女優賞も納得!の素晴らしさでした。
 映画を見終わった後も、タオさんのほほ笑みが頭から離れず、周りの人にやさしく接したくなりました^^。

最後にもう一言:
この映画のプロデューサー、ロジャー・リーの家政婦の実話を、傑作『女人、四十』のアン・ホイが監督。アンディも共同プロデューサーとして名を連ね、ノーギャラで出演したとのこと。この豪華なスタッフ陣に加え、脇が超豪華!冒頭、いきなりツイ・ハークとサモハンが出てきちゃうし、アンソニー・ウォンは介護施設の経営者として登場。『インファナル・アフェア』のキョン役チャップマン・トーなんて、歯医者として一瞬出てくるだけ。ほかにも見たことある役者たちが、チョイ役で出てくるのも見ものです。彼らも、タオさんの魅力に引き寄せられたのかも?!
&タオさんの相棒、猫のカカが超キュート。耳が小さくて手足が丸っこい、まるでぬいぐるみみたいな猫ちゃん。どこから見つけてきたのでしょう? 個性的なカカの風貌に夢中になってしまいました。2011.11

The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛 ★★
リュック・ベッソン監督、ミシェル・ヨー、デヴィッド・シューリス出演
☆ビルマの独立運動を率いた英雄アウンサン将軍を父に持つスーチーは、幼いころに父の暗殺という悲劇に襲われる。その後、ビルマを離れ、英国で暮らしていたスーはチベット研究者のマイケルと幸せな結婚をし、二人の子供の母となっていた。
ビルマで暮らす母が倒れたという知らせを受け、里帰りしたスーの前に、父アウンサン将軍を今でも崇拝する民主化運動家たちに迎えられる。
軍事政権は、彼らを激しく弾圧し、アウンサンの一人娘であるスーも目の敵にされる。
 民主化運動のリーダーとしてビルマにとどまることを決意したスーに対し、英国に残る夫も彼女をバックアップするが、ビルマ政府は、スーを自宅軟禁し、家族との連絡も取れなくなってしまう。
 ミャンマーのイメージといえば、「ビルマの竪琴」「自宅軟禁されるスーチーさん」ぐらいだったのだが、この映画で初めて自宅軟禁までの経緯や、長い軟禁生活について知ることができ、とっても勉強になった。映画は、もちろん政治がらみの裏話も出てはくるのだが、中心はあくまで、スーチーさん家族。ベッソン監督作品とは思えないほど、オーソドックスで憂いのある人間ドラマに仕上がっていた。
 普通の主婦だったスーチーさんが、英雄の娘ということで、始めは祭りあげられただけかもしれないが、運動家たちの熱意や、軍事政権の非情さに触れ、彼女自身がリーダーとして徐々に成長していくまでが、丁寧に描かれていた。
 ニュースでは、スーチーさんが、自宅でインタビューされる様子しか映しだされないのだが、その裏に、家族との長い別居生活、さらには夫との死別、という悲劇が起こっていたなんて露ほども知らなかった。
スーチーさんとその家族の忍耐力と深い愛に、なんども涙してしまいました…。
何よりも、ミシェル・ヨーの演技が素晴らしい!容姿も似てるが、凛とした強さがにじみ出ていて、終始、彼女の行動に引きつけられた。これはアカデミー賞主演女優賞ノミネートは間違いなしね!
映画の字幕はミャンマーではなく「ビルマ」だったのが気になって調べてみたら、ミャンマーは軍事政権がつけた名前であり、イギリスは今でもこの国名を承認していないそうです。日本でも、ミャンマーが再び「ビルマ」と呼ばれる日が来ることを切に願っています。2012.8

ヒミズ
園子温監督、古谷実原作、染谷将太、二階堂ふみ、渡辺哲、光石研出演
☆15歳の少年、住田は、貸しボート屋を営む母と一緒に小さなバラックで暮らしている。周囲には家をなくした大人たちがテントを張って生活しており、住田は彼らの間ではちょっとしたヒーローである。
一方、学校では一風変わった生徒だったが、クラスメートの茶沢景子は、そんな住田をストーカーする日々を送っていた。
 ある日、酒に酔った父親が家にやってきた。激しく殴られた住田は、父への憎しみを募らせてゆく。
震災前に撮影していた映画を、震災後、急きょ一部変更して撮り直したという園監督渾身の傑作である。正直、園監督作はグロテスクすぎて苦手だったのだが、震災後、監督の中に何かが芽生えたのだろう。絶望的な環境で暮らす住田の生活に、どこかほのぼのとした愛を感じ、心が温かくなりました。
日本の青春映画の中で、ベスト10に入る傑作。住田君の魅力にメロメロで、私も茶沢さんみたいにストーカーしたくなりました。後半の茶沢さんは、女の鏡!あの強さには敬服。ま、映画ですけどね。2012.11

ボブ・マーリー ルーツ・オブ・レジェンド MARLEY ★★
ケヴィン・マクドナルド監督、ボブ・マーリー出演
☆ジャマイカの英雄ボブ・マーリーの一生を、彼の家族やバンドメンバーらにインタビューをし、過去のニュース映像なども交えた見応えのあるドキュメンタリー大作。
レゲエを世界に広めたミュージシャン、というイメージが強かったのだが、国内では音楽だけではなく政治にまで影響を与える大物だったことを初めてしった。さらに、多くの女性を愛してきたことや、それでも女たちに恨まれなかったことなど、興味深い話がゴロゴロしていて、まったく見飽きず。真のカリスマ、とはこういう人のことを言うのだろう。
そして、得てしてカリスマは、人よりも早く召されてしまうんですね…。2012.10

悪人に平穏なし No habra paz para los malvados
エンリケ・ウルビス監督、ホセ・コロナド、ロドルフォ・サンチョ、エレナ・ミケル出演
☆マドリッドの中年捜査官サントス・トリニダは、泥酔して立ち寄った酒場で、怪しげな男たちと遭遇し、事件を起こしてしまう。サントスは、事件の発覚を恐れて、現場から逃走した目撃者の足取りを追い始めるが、まもなく、目撃者の背後に不穏な動きをする犯罪組織があることを突き止める。
2004年にマドリッドで起きた爆弾テロ事件をベースにした作品で、スペイン本国で話題を呼んだ。2012年のゴヤ賞では作品・監督・主演男優など計6部門を受賞。
冒頭でいきなり酔っぱらって3人殺害する悪徳警官サントスにまずびっくり。正当防衛とはいえない殺し方で、そのへんがラテンだよなあ。でも、目撃者を追い掛けるうちに、そいつらが実は何か不穏な動きをしていることが徐々に分かってくる。サントスが何かに取りつかれたかのように捜査を続ける様がカッコイイ!誰かに似ている、と思ったら「野獣死すべし」の優作だ。
実際に起こってしまったテロが元になっている、ということだが、日本人にとってマドリッドのテロは身近ではないので、正直、実話かどうかということは気にならなかった。でも、スペインの人たちは、様々な思いでこの作品をみたのでしょう。
日本人が震災の映画を見るときのように…。
ストーリーが複雑で、ちょっと分かりづらいのだが、一にも二にも悪徳警官サントスの魅力に尽きる作品です。2012.9

愛のむきだし LOVE EXPOSURE
園子温監督、西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ、渡辺真起子、渡部篤郎出演
☆母を亡くし、神父となった父と二人暮らしのユウのもとにある女が転がり込む。父はその女に溺れ、ユウは父に懺悔するために、悪いことを探すようになる。
破天荒な若者3人の物語をパンクに描いた快作。好きだわ―、この世界。若いころ見たらもっと楽しめたかも。ちょっと長過ぎの感はあるのだが、テンポもいいし、役者3人も魅力的。オウムを彷彿とさせる新興宗教も絡ませ、社会派としての見応えもありました。2013.2

愛、アムール AMOUR
ミヒャエル・ハネケ監督、ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ、イザベル・ユペール出演
☆品格のある老夫婦ジョルジュとアンヌ。誰もがうらやむ二人だったが、ある日、アンヌが発作を起こしてしまう。
老老介護の悲しい現実を淡々と描きつつ、二人の深い愛をにじませる大人の映画。
日に日に衰えて行く妻も痛々しいが、一人で介護をしながら孤独と闘う夫の姿は見ていて辛くて…。
「病院には戻りたくない」っていう妻の気持ちもわかるが、夫のことを思うのなら「施設にいれていいよ」と、言ってあげて欲しかった…、というのが実感です。ハネケ作品の中では、もっともシンプルで万人受けする映画。2013.4 参考CINEMA:「ピアニスト」「白いリボン」

アニマル・キングダム ANIMAL KINGDOM
デヴィッド・ミショッド監督、ジェームズ・フレッシュヴィル、ガイ・ピアース出演
☆メルボルンに住む17歳のジョシュアは、母の死後、疎遠だった母の実家に預けられる。祖母ジャニーンを中心とする一家は、強盗や麻薬売買で生計を立てる犯罪一家だった。
救いようのない現実を突きつけられた感じ。事件を起こすDV一家も似たような状況なんでしょう。2013.5


きっと、うまくいく 3 IDIOTS
ラージクマール・ヒラニ監督、アーミル・カーン、カリーナ・カプール出演
☆名門工科大に入学したファランとラージューは、富豪の息子で自由人のランチョーと出会う。学力至上主義の学校の中で、3人は青春を謳歌する。10年後。ファランとラージューは、行方知れずのランチョーを探しに出かけるが…。
なつかしのハリウッドエンタメ作品のノリを、現代のインドで再現した感じの青春ドラマ。歌あり笑いあり、涙あり。これぞエンタメの王道!自殺率の高い現代インドの問題や、貧富の差なども盛り込みながら、決して深刻にならない軽さが心地よかったです。インドの熱さ&パワーが画面からあふれ出ていました。2013.3

キック・オーバー GET THE GRINGO
エイドリアン・グランバーグ監督、メル・ギブソン、ピーター・ストーメア出演
☆2002年に軍隊を動員して制圧したという実在の刑務所“エル・プエブリート”をモデルにしたクライム・アクション。スラング交じりのスペイン語がほとんどまったく聞き取れず…。メル様のアクションを久々に見せていただき、往年のファンとしては嬉しかったです。2013.4

グランド・マスター 一代宗師 THE GRANDMASTER
ウォン・カーウァイ監督、トニー・レオン、チャン・ツィイー、チャン・チェン、マックス・チャン、ワン・チンシアン出演
☆1930年代の中国。北の八卦掌の宗師、宮宝森は引退を決意。弟子の馬三は、日本占領軍と手を結ぶ。一方、南の詠春拳の宗師、イップ・マンは、宮宝森の娘と手合わせをする。
かなり期待していったので、いきなりの説明台詞の応酬にがっかり。今までのカーウアイ作品とも、カンフー映画「イップマン」とも違っていた。カーウアイの新境地なのか、スランプなのか。見る人によって評価は分かれるだろう。それでも、ツイイーの色っぽい映像は秀逸。トニー扮するイップマンは完全に脇役です。
がっかり度は高かったものの、映像クオリティはさすが。ただ、クリストファー・ドイル撮影時代がやっぱり私は好みです。2013.6

汚(けが)れなき祈り BEYOND THE HILLS
クリスティアン・ムンジウ監督、コスミナ・ストラタン、クリスティナ・フルトゥル アリーナ出演
☆2005年にルーマニアの修道院で起こった事件を基にした悲劇。アリーナとヴォイキツァは孤児院で一緒に育った親友だったが、ヴォイキツァは戒律の厳しい修道院で修道女になる。アリーナはヴォイキツァを説得し、一緒に暮らそう、と言い出すが…。
2005年という、つい最近の話とは思えないほど、閉鎖的な世界にひいてしまった。カルト教団と大差ない自己中心的な集団。信仰の是非について考えさせられた。主演の二人コスミナ・ストラタンとクリスティナ・フルトゥルがカンヌで女優賞を受賞。ムジンジウ監督は脚本賞。2013.4

コズモポリス COSMOPOLIS
デイヴィッド・クローネンバーグ監督、ロバート・パティンソン、ジュリエット・ビノシュ、サラ・ガドン、ポール・ジアマッティ、サマンサ・モートン、マチュー・アマルリック出演
☆若き投資家エリックは、リムジンでなじみの床屋を目指す。リムジン内で、仕事も私生活も完結している富豪の青年の日常を描く。
クローネンバーグ作品らしい怪しさは健在だったが、なぜか不思議世界に漬かれず…。エリックが唯一人間らしさを露にする、床屋の店主とのやりとりに、唯一救いを感じた。
「ビデオ・ドローム」でバーチャルな近未来を描いた監督が、20年後に現実となったバーチャルな現代社会を風刺した、ということでしょうか。2013.5


最強のふたり INTOUCHABLES
エリック・トレダノ監督、フランソワ・クリュゼ、オマール・シー出演
☆最愛の妻を亡くし、自らもパラグライダーの事故で首から下が麻痺してしまった大富豪のフィリップ。彼は、ガラの悪い黒人青年ドリスを介護人として雇う。フィリップを障がい者扱いせず、ズケズケとモノを言うドリスに戸惑うフィリップだったが、二人はいつしかかけがえのない親友となっていく。
想像通りのハートフル・ヒューマンドラマだが、実話ということが世界中の観客の興味を引いたのでしょう。クラシック音楽とファンク、両極端の音楽を二人が楽しむシーンが最も印象に残った。現在は、二人とも結婚して幸せに暮らしているそうです。2013.6

サッド ヴァケイション
青山真治監督、浅野忠信、石田えり、宮崎あおい、板谷由夏、オダギリジョー、中村嘉葎雄ほか出演
☆北九州の港。中国からの密航者を手引きしていた健次は、家族を亡くした少年アチュンを自分の家に連れ帰る。兄が連続殺人犯の知的障害者ユリと、3人で暮らし始めた健次は、タクシー運転手として働きはじめる。ある日、乗客・間宮の家で、健次は、自分と父を捨てた母と再会する。
社会から弾かれてしまった人々が寄り集まる運送会社を舞台に、人間の葛藤と小さな優しさを描いた秀作。青山監督作品の中では、比較的見やすい人間ドラマに仕上がっていた。2013.2

ジャンゴ 繋がれざる者 DJANGO UNCHAINED
クエンティン・タランティーノ監督、ジェイミー・フォックス、クリストフ・ヴァルツ、レオナルド・ディカプリオ、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン出演
☆南北戦争前夜のアメリカ南部。ドイツ人歯科医シュルツは、黒人奴隷ジャンゴを相棒に、賞金稼ぎの旅を続ける。ジャンゴの妻でドイツ語を話せるブルームヒルダを救出するため、二人はある策を練る…。
タランティーノらしいハチャメチャさを封印し、南部の黒人奴隷制度にまっこうから対決を挑むドイツ人と黒人コンビの戦いを真摯に描いている。激しいドンパチはラストのクライマックスまで出てこないのも意外な展開で驚きました。脚本賞を受賞したのも納得の、よく出来たストーリー。役者陣もそれぞれ個性全快(とくに、サミュエルが最高!)で、見応えがありました。一方で、ハチャメチャさを期待してしまうと、ちょっと肩すかしを食らうかも。個人的には好きな作品です。2013.3

シュガーマン 奇跡に愛された男 SEARCHING FOR SUGAR MAN
マリク・ベンジェルール監督
☆70年代にアメリカでデビューしたロドリゲスは、誰からも知られることなく姿をけすが、彼の歌は南アフリカで反アパルトヘイトの象徴として爆発的なヒットを生んでいた…。
ロドリゲスの数奇な運命があまりにもドラマチックで涙…。アフリカでのライブシーンはホントなの?と疑いたくなるぐらい。不思議なことってあるもんですね。アカデミー賞ドキュメンタリー賞受賞も納得の感動作でした。2013.4

J・エドガー J. EDGAR
リント・イーストウッド監督、レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、アーミー・ハマー出演
☆FBI長官フーバーは、回顧録の作成のために、過去を語り始める…。大統領さえ手出しができなかった男の裏の顔は興味深かったのだが、全体的に暗くて退屈でした。2013.4

しゃべれども しゃべれども
平山秀幸監督、国分太一、香里奈、八千草薫、伊東四朗出演
☆古典落語に固執する話し家と、落語を勉強する人々との出会いを描く。予定調和の人情モノ。ドラマ「タイガー&ドラゴン」とは比較にならないほど、退屈でした。2013.3

しわ ARRUGAS
イグナシオ・フェレラス監督、パコ・ロカ原作
☆元銀行員のエミリオは、養護老人施設に送られる。一方、おせっかいな同室のミゲルは、痴ほうの老人をだまして金をちょろまかしていた。暗くなりがちな介護施設の物語をアニメという形でやわらかく、やさしく描いている。痴ほうが進んだ友人エミリオのために、改心して献身的に尽くすミゲルの姿は、涙を誘います。2013.5


TOKYO!
ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノ監督、藤谷文子、加瀬亮、伊藤歩、ドニ・ラヴァン、香川照之、蒼井優、竹中直人出演
☆個性派監督3人が、それぞれの視点で東京を切り取ったオムニバス。「ホーリー・モーターズ」にも出てきた怪物も、夢ばかり語る自称映画監督も、引きこもりの男も、それぞれ味があり、東京にいそうな(怪物以外)なキャラ。かなり気に入りました。
うそ臭い東京ではなく、等身大の東京を描いてくれたことに感謝です。2013.6


ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~ BEASTS OF THE SOUTHERN WILD
ベン・ザイトリン監督、クヮヴェンジャネ・ウォレス、ドワイト・ヘンリー出演
☆バスタブ島で暮らす6歳の少女ハッシュパピーは、飲んだくれの父親ウィンクから、生きる術を学ぶ。やがて、バスタブに嵐がやってきた…。物質社会とは一線を画した小さな村で、自然とともに生きる少女の姿がたくましく、そして美しい。豚小屋のような家で暮らしているのに、どこかメルヘンチックで、すがすがしい気持ちにさせられた。新人監督の力量を感じました。今後の作品に期待大。2013.4

ホーリー・モーターズ HOLY MOTORS
レオス・カラックス監督、ドゥニ・ラヴァン、エディット・スコブ、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ、ミシェル・ピコリ出演
☆なぞの男オスカーは、毎朝、白のリムジンに乗って仕事に向かう。彼の仕事とは、大企業の社長、怪物、父親など、依頼された人物になりきること。同じ仕事をするかつての恋人と再会したオスカーは、彼女の飛び降り自殺を目撃する。
他人を演じる、とはいっても単なる俳優ではない。いわゆる奇妙な人物になりきるので、オスカーはどれが本当の姿なのか、自分でもわからなくなっている。多重人格者の苦悩、とでもいおうか。
深読みすればいくらでも引き出しがありそうな映画なのだが、ごくシンプルに「オスカーが演じる人物のどれに一番惹かれるかな」などと比較しながら鑑賞していた。個人的には墓地で暴れる怪物が、もっとも印象に残りました。2013.4


ザ・マスター THE MASTER
ポール・トーマス・アンダーソン監督、ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス、ローラ・ダーン出演
☆アル中の元海兵隊員フレディは、“マスター”と呼ばれる男が率いる新興団体と行動を共にし始める。
壊れた男を演じたホアキンの演技には度肝を抜かれたし、マスターとの関係性も興味深かったのだが、独特の世界感について行けず…。期待が大きかっただけに、残念でした。関連CINEMA:「マグノリア」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「パンチドランク・ラブ」「ブギーナイツ」2013.4

真夜中のピアニスト DE BATTRE MON COEUR S'EST ARRETE
ジャック・オーディアール監督、ロマン・デュリス、ニエル・アレストリュプ、オーレ・アッティカ出演
☆悪徳不動産ブローカーのトムは、ピアニストへの夢を捨てきれず、ある中国人女性からレッスンを受け始める。一方、仕事では手荒な制裁を受け…。
デュリスがカッコよかったです。2013.3

モテキ
大根仁監督、森山未來、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子、金子ノブアキ出演
☆素人童貞(?)の31歳、藤本は、音楽ライターとして働き始める。ツイッターで知り合ったみゆきにゾッコンだが、彼女には年上の彼氏がいる。みゆきの親友、るみ子から告白された藤本は、勢いで寝てしまうが…。
TVのほうが正直面白かったけど、要所要所での音楽の使い方はさすが。エンディングは、えー?!そっちかよ、でした。藤本のキャラは、恋を成就させちゃダメでしょ。2013.6

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い EXTREMELY LOUD AND INCREDIBLY
CLOSE
スティーヴン・ダルドリー監督、トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー出演
☆9.11アメリカ同時多発テロで最愛の父を失った少年オスカーは、ある日、父の遺品の中から一本の鍵を見つける。封筒に書かれていた“ブラック”の文字に、父のメッセージが隠されている、と思い込んだオスカーは、一人でニューヨーク中のブラック氏をたずねて歩く。
少年が、父の死から立ち直るまでの「喪の仕事」もの。アスペルガー気味の少年の心が痛々しくて、つらい気持ちになったが、BLACKのナゾが、ドラマチックではないことは好感がもてた。2013.6


ヤング≒アダルト YOUNG ADULT
ジェイソン・ライトマン監督、シャーリーズ・セロン、パットン・オズワルト、パトリック・ウィルソン出演
☆ヤングアダルト小説のゴーストライターをしている37歳のメイビスは、高校時代の恋人バディに会うため帰省。彼との復縁を望むが…。気持ち、わからなくもないので、心がちょっぴり痛くなりました。つらくても現実を生きていかなきゃならないんだよね。誰でも。2013.6


こわれゆく女 A WOMAN UNDER THE INFLUENCE
ジョン・カサヴェテス監督、ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク、マシュー・カッセル出
演☆心が繊細すぎる妻を演じたジーナ・ローランズの鬼気迫る演技に、自分の心まで苦しくなってしまった。2013.4

ラヴ・ストリームス LOVE STREAMS
ジョン・カサヴェテス監督・出演、ジーナ・ローランズ、ダイアン・アボット、シーモア・カッセル出演
☆同名劇の映画化。ロバートは離婚歴のある人気作家。姉のサラは夫と離婚。娘から母との同居を拒まれてしまう。そううつ気味の弟と姉。それぞれの葛藤を描きながら、二人が再会し、ぶつかり合いながらも支え合う、という展開が絶妙。テンションが高い作品でどっと疲れましたが、見応えありました。ベルリン映画祭グランプリ受賞。2013.4

絞死刑(1968)
大島渚監督、佐藤慶、渡辺文雄、足立正生、小松方正、尹隆道ほか出演
☆死刑執行した男が、生き返り、看守たちが規則を巡って右往左往する社会風刺コメディ。舞台劇っぽくて面白くは見れたが、ちょっと疲れました…。2013.3

日本春歌考
大島渚監督、荒木一郎、岩淵孝次、田島和子、小山明子、伊丹一三出演
☆高校生四人組は、試験場で出会ったある女生徒に魅せられる。大学教授の死と、ある美少女を強姦する妄想に取りつかれた青年たちの姿を描いた作品。正直、よくわからなかったが、斬新さを追求する時代を感じさせる映画ではあった。2013.3

座頭市と用心棒(1970)
岡本喜八監督、勝新太郎、三船敏郎、米倉斉加年、岸田森、若尾文子出演
☆「座頭市」シリーズ第二十作。チョロチョロこすい悪事を働く座頭市に爆笑。岡本監督らしいスピード感。三船、若尾文子など、ビッグスターの競演も楽しい痛快エンタメ!2013.2

仁義なき戦い(1973)
深作欣二監督、菅原文太、松方弘樹、田中邦衛、渡瀬恒彦、金子信雄、梅宮辰夫出演
☆シリーズ第1作。敗戦直後の広島・呉。復員してきた広能は山守組の一員に。「アウトレイジ」の原点ここにあり!誰も信じられない世界。容赦ない殺し合いも、文太さんや梅宮さんがやると超スタイリッシュ。深作監督の偉大さ、10代の頃に気付いていればなあ…。2013.5

戦場のメリークリスマス MERRY CHRISTMAS, MR. LAWRENCE
大島渚監督、デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、トム・コンティ出演
☆ジャワ奥地の捕虜収容所に送られたイギリス兵捕虜と、日本兵の微妙な友情を描いた作品。
子供の頃にテレビで見て以来だったが、英国人捕虜と日本兵の関係性が繊細に描かれていて、心に染みた。タケシが酒に酔って笑いながら言う「MERRY CHRISTMAS, MR. LAWRENCE」や、坂本龍一が、生き埋めにされたボウイの髪を切り取るシーン、ロレンスがタケシの元を訪れるラストシーンなど、印象に残る場面が多々ありました。音楽も最高。あらためて、素敵な映画、と再確認できました。2013.3

日本の夜と霧
大島渚監督、桑野みゆき、津川雅彦、小山明子、渡辺文雄ほか出演
☆安保闘争で結ばれた新聞記者・野沢と運動家・玲子の結婚式に、逮捕状の出ている全学連の太田が乱入した。
太田の乱入をきっかけに、行方不明となった仲間の話、過去の裏切りの糾弾などが、行われる。
4日で上映打ち切り、大島の松竹退社、と当時話題となった作品。若松監督はこの映画に触発された、と言っていたので、過激な内容を予想していたのだが、過激、というよりは、学生運動家たちの末路をリアルに描いているバリバリの社会派映画だった。出演していた監督夫人でさえ、「よくわからなかった」と言っているぐらいなので、私がわからなくて当然なのだが、当時の若者の熱気は、伝わってきた。面白い映画、とは言えないが、「社会派映画とはこういうものぞ」なのでしょう。自分は社会派エンタメ作が好き、と訂正いたします。2013.1


SP 革命篇
波多野貴文監督、岡田准一、堤真一、香川照之、真木よう子出演
☆内閣不信任案の採決が行われようとしていた国会議事堂が、テロリストに占拠される。テレビは時々見ていたので、続編としては面白く見れたが、とくにあっと驚く展開もなし。2013.4

探偵はBARにいる
橋本一監督、 大泉洋、 松田龍平、小雪出演
☆札幌が舞台の探偵コメディ。内容はごくごくシンプル。悪役を演じた高島弟に、時の流れを感じました。昔は、熱血ホテルマン役で万人に愛されるキャラだったのにね。イメージって恐ろしい…。2013.5

ミッション・トゥ・マーズ MISSION TO MARS
ブライアン・デ・パルマ監督、ゲイリー・シニーズ、ティム・ロビンス、ドン・チードル出演
☆NASAは人類初の火星への有人飛行を成功させた。だが調査中の先発隊が謎の怪現象に襲われ、突如連絡を絶ってしまう。宇宙の映像の美しさが印象に残りました。役者もベテランぞろいで見ていて安心感あり。ドキュメンタリー風な作りも好感がもてた。2013.4

ライフ・アクアティック THE LIFE AQUATIC WITH STEVE ZISSOU
ウェス・アンダーソン監督、ビル・マーレイ、オーウェン・ウィルソン、ケイト・ブランシェット、アンジェリカ・ヒューストン、ウィレム・デフォー、ジェフ・ゴールドブラム、セウ・ジョルジ出演
☆海洋探検家兼ドキュメンタリー監督のスティーヴ・ズィスーの前に息子と名乗る青年ネッドが現れた。お決まりの淡々としたコメディ。ハエ男の濃い顔は存在感あるよねえ。セウがまったく話さずBGM担当に徹してました。2013.3 参考CINEMA:「天才マックスの世界」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」「ダージリン急行」

ファンタズマ O Fantasma
ジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督、リカルド・メネセス、ベアトリス・トーケイト出演
☆リスボンのゴミ清掃員として働く青年セルジオの日常と、奇妙な強姦事件をリンクさせた不思議な映画。正直、理解には苦しんだが、斬新でした。監督とパートナーの装いが超オシャレで、そちらの方が印象に残った。2013.4

裏切りのサーカス TINKER TAILOR SOLDIER SPY
トーマス・アルフレッドソン監督、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディ出演
☆東西冷戦時代、英国諜報部の老スパイ、スマイリーは、ソ連の2重スパイを突き止めるよう指令を受ける。人間不信に陥りそうな展開で、誰が敵か味方かよくわからず。2013.2

王になった男 MASQUERADE
チュ・チャンミン監督、イ・ビョンホン、リュ・スンリョン、ハン・ヒョジュ出演
☆朝鮮15代目の王・光海君は、影武者として旅芸人のハソンを雇いいれる。
ビョンホンが、暴君と影武者を演じるエンタメ作品。よくも悪くもビョンホンがすべての映画。普通に楽しめました。2012.12

キナタイ -マニラ・アンダーグラウンド- KINATAY
ブリランテ・メンドーサ監督、ココ・マルティン出演
☆警察学校に通うベッピングは結婚式を挙げる金のために、闇の仕事を手伝うはめになる。
フィリピンの新鋭監督の作品。テイストは香港インディペンデントに近いかな。生々しい解体シーンはえぐかったです。2013.1

おとなのけんか CARNAGE
ロマン・ポランスキー監督、ジョディ・フォスター、ケイト・ウィンスレット、クリストフ・ヴァルツ、ジョン・C・ライリー出演
☆11歳の子ども同士が喧嘩し、一方が前歯を折るケガを負う。加害者側のカウアン夫妻は、被害者ロングストリート夫妻の家を訪れるが、カウアンは、仕事の電話の応対に追われ、妻は嘔吐して大事な本を汚してしまう。
大人の対応をしていた4人が、次第に本性をあらわにし、酒に酔って言いたい放題…という舞台劇の映画版。ポランスキーがこんな映画を撮るのねえ。珍しい。芸達者4人がそろっていたので、飽きずに見れたけど…。DVDで見て正解の映画でした。2013.1

CUT
アミール・ナデリ監督、西島秀俊、常盤貴子、菅田俊、でんでん、笹野高史出演
☆アート映画を愛する監督の秀二は、今の映画界を嘆き、過去の遺産となりつつある芸術映画の自主上映をすることを生きがいに生きている。ある日、兄が借金のトラブルで死んでしまう。兄が自分の映画のためにヤクザから金を借りていたと知った秀二は、残った借金を数日で返すため、殴られ屋を始める。
 病的なまでにストイックな秀二の行動は、兄への償いであり、自分への罰、なのだろうが、あまりに痛々しくて、つい目を背けたくなった。溝口や黒沢、小津など、日本の偉大な監督たちへのナデリ監督の思いがヒシヒシと伝わってきて、同じ日本人として嬉しく、また一映画ファンとして、秀二の叫びは胸に強く響いた。
映像が重なるシーンもアートで美しかったし、西島の迫真の演技も見応えあったし、十二分に満足できる内容で、スクリーンで見なかったことを後悔しました。
秀二の殴られ屋カウントダウン100に重なる映画の中に、クストリッツアの『ジプシーのとき』やバベンコ監督の『ピショッテ』が入っていたのを見て、一人ほくそ笑んでしまった私もかなりの映画キチです。2013.1

海炭市叙景
熊切和嘉監督、佐藤泰志原作、谷村美月、竹原ピストル、加瀬亮、小林薫、南果歩ほか出演
☆函館市がモデルの“海炭市”で暮らす市井の人々の人生模様をオムニバスタッチで描いた作品。造船所の縮小でリストラされた工員と妹の悲しい別れや、プラネタリウムで働く中年男の悲哀、心を病んだ妻を抱えたガス屋のいらだち等々が、やさしい視点で描かれている。
寒々しい町の風景と人々の悲しみがじんわりと心に染みてきました。寒い冬に一人で見ると寂しくなります…。2013.1

さや侍
松本人志監督、野見隆明、熊田聖亜、板尾創路、柄本時生、りょう、ROLLY、腹筋善之介出演
☆刀を捨て、さやだけを持つようになった武士、野見勘十郎は、脱藩の罪で捕えられる。母を亡くして以来、笑顔をなくした若君を、一日一芸で30日の間に笑わせられたら無罪放免、できなければ切腹という、業を言い渡された勘十郎に、娘のたえと門番たちが知恵を出し合うが…。一発ギャグを30日やる、という修業中のお笑い芸人のようなことを映画にしてしまったマッチャンには拍手!でも、映画館で見る作品ではないよなあ。面白かったけどね。2013.2

幸せへのキセキ WE BOUGHT A ZOO
キャメロン・クロウ監督、マット・デイモン、スカーレット・ヨハンソン、トーマス・ヘイデン・チャーチ、コリン・フォード出演
☆妻の死から立ち直れない一家は、郊外の閉鎖された動物園を買い取り、再建に立ち上がる。
嘘のようなホントの話。キャメロン・クロウ監督なので、音楽を期待したのだが、特別印象に残らず。物語はハートフルな普通のドラマ。息子君の初々しい演技が光ってました。さすが青春映画の名手クロウ監督です。2013.1

テルマエ・ロマエ
武内英樹監督、阿部寛、上戸彩、北村一輝、笹野高史、市村正親ほか出演
☆古代ローマ帝国から現代の日本にタイムスリップした浴場設計技師ルシウスは、現代日本の銭湯からヒントを得て、古代ローマの浴場改革に乗り出す。
 ギャグ漫画が原作、ということで発想が超ユニーク。日本の古い銭湯に集まるじっちゃんと、古代ローマ人の競演が最高におかしかったです。後半も、そのノリで行ってほしかったんだけど、急にマジな物語になってしまったのが残念。2013.2

ナチョ・リブレ 覆面の神様 NACHO LIBRE
ジャレッド・ヘス監督、ジャック・ブラック、エクトル・ヒメネス、アナ・デ・ラ・レゲラ シスター・エンカルナシオン出演
☆たぶん舞台はメキシコの田舎町。修道院の食事係ナチョは、レスラーになってお金を稼ぐことを思いつく。
爆笑!とまではいかず、ほどほどに楽しめた。たぶん、メキシコの有名レスラーが出てるんだろうけど、わからないからね。もうちょっとメキシコ色が強ければなあ。2013.1

ニーチェの馬 THE TURIN HORSE
タル・ベーラ監督、ボーク・エリカ、デルジ・ヤーノシュ出演
☆荒涼とした大地の中の一軒家で暮らしているのは貧しい農夫と娘。会話もなく淡々と暮らす二人の日常を描いていく。タル・ベーラ作品はDVDで見るとキツイ、とは分かっていたのだが、やっぱり重過ぎてみ続けられず。難解で何を言いたいのかよくわからなかったが、勇気をだして映画館で見れば、その深さを感じることができるのかも。かなり反省。2013.2

ハウスメイド THE HOUSEMAID
イム・サンス監督、チョン・ドヨン、イ・ジョンジェ、ユン・ヨジョン、アン・ソヒョン出演
☆1960年のキム・ギヨン監督作「下女」のリメイク。上流階級の豪邸でメイドとして働くウニは、先輩メイドのビョンシクに鍛えられながら、家事をこなしていく。ある晩、主人のフンの求めに応じたウニは彼の子を身ごもる。秘密に気付いたビョンシクは、妻とその母に報告してしまう。
淫靡な雰囲気と薄幸なメイドを演じたドヨンにアッパレ。定番のストーリーではあるのだが、楽しめました。2013.1

ハードロック・ハイジャック AIRHEADS
マイケル・レーマン監督、ブレンダン・フレイザー、スティーヴ・ブシェミ、アダム・サンドラー、ジョー・マンテーニャ出演
☆売れないロックバンドがラジオ局を乗っ取り…。
超豪華メンバーのわりに、B級ノリのコメディでした。2013.1

舞台よりすてきな生活 HOW TO KILL YOUR NEIGHBOR'S DOG
マイケル・カレスニコ監督、ケネス・ブラナー、ロビン・ライト・ペン、リン・レッドグレーヴ出演
☆劇作家のピーターは、妻のメラニーから赤ちゃんが欲しいと迫られていたが、実は大の子供嫌い。ある日、エイミーという足の不自由な少女が向かいに引っ越してくる。妻はエイミーを可愛がるが…。
偏屈で子供っぽい劇作家のつぶやきがウィットに富んでいて、クスクス笑いっぱなし。ウディ・アレンの初期作品に似ているけど、あそこまで台詞の応酬ではなく、もうちょっと大人し目なのも見やすかった。こういう小品、もっとたくさん見たいなあ。2013.2

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~
根岸吉太郎監督、松たか子、浅野忠信、室井滋、伊武雅刀、広末涼子、妻夫木聡、堤真一出演
☆酒と女に溺れ、破滅的に生きる小説家・大谷は、行きつけの飲み屋から5千円を盗んで消えてしまう。幼子を抱えた妻・さちは、借金を返すために、店で働き始める。
ダメ男を愛してしまった妻の忍耐を描いてはいるのだが、不思議と痛々しくないので見やすかった。大谷を演じた浅野はぴったり。松たか子はこの演技で賞を総なめだったが、そんなにいいかなあ。何を演じても松たか子、なんだよね。まあ、主演女優にありがちですが。
2013.1

塀の中のジュリアス・シーザー CESARE DEVE MORIRE
パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督、コジーモ・レーガ キャシアス、サルヴァトーレ・ストリアーノ出演
☆ローマ郊外にあるレビッビア刑務所。ここで行われている演劇実習の演目が『ジュリアス・シーザー』と発表される。重犯罪の受刑者たちはオーディションを経て、役につき、練習に夢中になっていく。
受刑者たちが真剣に演劇に取り組む様を淡々と追ったドキュメンタリー。短い作品でちょっと拍子抜け。76年に入所した終身刑の男の悲しい眼差しが印象に残った。2013.1

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山下敦弘監督、川本三郎原作、妻夫木聡、松山ケンイチ、忽那汐里出演
☆東大安田講堂事件が起きた1969年、東大を卒業後、念願のジャーナリストとなった沢田は、先輩記者の中平とともに、爆破テロを計画しているという梅山と出あう。中平は彼をニセモノと疑うが、不思議な魅力を持つ梅山に沢田は振り回され…。
20年前に原作を読んだ時は、まだ何も知らない学生だったということもあるのだろうが、衝撃も感動もまったく違った印象で、かなりがっかり。梅山に振り回される沢田の気持ちもわからなくはないが、時代と若さゆえの過ちだったのでしょう。
尊敬する川本さんの風貌と妻夫木は似ても似つかないので違和感あり。2013.1

やさしい嘘と贈り物 LOVELY, STILL
ニコラス・ファクラー監督、マーティン・ランドー、エレン・バースティン、アダム・スコット、エリザベス・バンクス出演
☆スーパーで働く孤独な老人ロバートの隣にメアリーという女性が越してきた。二人はたちまち親しくなるが、実は、ロバートはアルツハイマーで…。
家族を忘れてしまった夫のために、新しくできた恋人のふりをして、夫に近づこうとする妻の献身的な姿と、少年のように恋にときめくロバートがかわいくて、心がほっこりしました。
エンディングは悲しいんだけど、でも、人はいつかは死ななきゃならないのだし、こんなに家族に愛されてるロバートは幸せ者ですね~。2013.2

善き人 GOOD
ヴィセンテ・アモリン監督、ヴィゴ・モーテンセン、ジェイソン・アイザックス出演
☆1930年代、ベルリンの大学で文学を教えるジョンは、ヒトラーに気に入られ、渋々ナチスへ入党。リベラルなピアニストの妻や、ユダヤ人の親友は、彼の変化に戸惑い…。
アモリン監督は「汚れた心」では、戦後の日本人の争いを描き、こちらではドイツ、とブラジルにとどまらないワールドワイドな視野を持っていることに感心。
時代に翻弄された善き人は、戦後、生きる屍のように生きたのか、それとも過去を忘れてい生きたのか…。彼のとった行動は責められない。誰でも、自分がかわいいし…。
辛い内容ではあったが、真摯な映画で好印象。2013.1

レ・ミゼラブル LES MISERABLES
トム・フーパー監督、ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、エディ・レッドメイン、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエン出演
☆パンを盗んだ罪で19年間も監獄で過ごしたジャン・バルジャンは、仮出獄後に姿を消し、市長にまで上り詰める。経営する工場の女工ファンテーヌが、自分のせいで解雇され、娼婦になって、死んでいったと知ったバルジャンは、彼女の残した少女を引き取る。
ずい分前だがミュージカルも見ていたので、前半は舞台と一緒、と引き気味で見ていたのだが、学生たちの革命運動のあたりから、ぐいぐい引っ張られ、感動でウルウル…。
この作品の魅力というのは、耳に残るパワフルな音楽につきるだろう。
バルジャンの娘に一目ぼれする青年を演じたエディ・レッドメインの声に惚れぼれ。次回作も要チェックだわ。2013.2

シンパシー・フォー・デリシャス SYMPATHY FOR DELICIOUS
マーク・ラファロ監督・出演、クリストファー・ソーントン、ジュリエット・ルイス、ローラ・リニー、オーランド・ブルーム出演
☆カリスマDJのディーンは、事故で下半身不随になり車いす生活を余儀なくされる。車で暮らし、施しを受けながら暮らすディーンは、ある日、自分の手に、不治の病を治す力が宿っていることを知ってしまう。
 思いがけず、「神の手」を授かった一人の男の苦悩と、彼の力を利用する人々の騒動を描いた人間ドラマ。実際に事故で身障者となったソーントンが脚本・主演ということで、ディーンの心情が丁寧に描かれていて見応えがあった。
 人間というのは、なんともおろかで、過ちを繰り返す生き物なのか…。それでも、少しの良心に支えられて生きているんだよなあ。などなど、人生についていろいろと考えさせられました。地味な映画ではありますが、とてもよい映画で、ますますマークが好きになりました。2013.1.1

アルゴ ARGO
ベン・アフレック監督・主演、ブライアン・クランストン、アラン・アーキン、ジョン・グッドマン出演
☆79年、革命が起こったイランでは、旧国王の逃亡を許した米国に対し、民衆の怒りが爆発。アメリカ大使館を占拠して、52人の職員を人質にとる事件が発生する。
6人の大使館員は秘かに脱出し、カナダ大使の私邸に逃げ込む。だが、イラン革命軍に見つかれば命はない。CIAの人質奪還専門家、トニー・メンデスは、架空の映画『アルゴ』のロケをでっち上げ、6人をスタッフとして偽装させて出国させる、という計画を思いつく。
イラン大使館の事件はなんとなく聞いてはいたが、大使館員がカナダ大使宅に逃げていた、という話までは知らず、驚きの連続。サスペンスとしても、巧みに構成されていて、脱出シーンでは、ハラハラドキドキ。アフレックは監督としての才能がホント、あるわ、と実感。
ただ、質の高い映画ではあるのだが、イランの民衆が野蛮にしか描かれていなかったのが、違和感あり。大使館員もカナダ大使も無事に帰国して、バンバンザイ、なのはわかるが、軍に嘘をついてくれたイラン人メイドのその後も描いて欲しかった。彼女は想像の人物なのか?本当にウソをついてくれたのか、はっきりしないが、彼女のその後も伝えるべきだと思った。2012.12

サイの季節 Rhino Season / Fasle Kargadan ha
バフマン・ゴバディ監督、ベヘルーズ・ヴォスギー、モニカ・ベルッチ出演
☆クルド人の詩人サヘルは、イラン革命後、反政府的な詩を書いたことで投獄され、激しい拷問を受ける。一方、最愛の妻ミナはサヘルの死を告げられ、失意のまま、元運転手の求婚を受ける。30年後に釈放されたサヘルは、ミナを探し始めるが…。
元イランの名優で今は米国で暮らすヴォスギーの存在感と、幻想的な映像美に終始圧倒されっぱなし。ゴバディ監督は『亀~』ではクルド人難民の子供たち、『ペルシャ猫~』ではイランの若いバンドマンたちを描いたが、今作ではがらりと変わって、悲しい運命を強いられた老夫婦の愛の物語をしっとりと描いている。
かなり大人向けの作品で、今までとはテイストも違うのだが、ゴバディ監督の才能が感じられる秀作である。
美しいミナの悲しみの表情、30年の獄中生活によって刻み込まれたサヘルの深い皺…。
辛い映画ではあるのだが、二人の間にある、目に見えない絆は感じとることができた。
ゴバディ監督が来場出来なかったのは、本当に残念だったのだが、次回作ではぜひ来日してほしい。ゴバディ監督にすっかり夢中になりました。東京フィルメックス2012にて 2012.12

ギマランイス歴史地区(仮題)Historic Center / Centro Historico
ペドロ・コスタ、マノエル・ド・オリヴェイラ、アキ・カウリスマキ、ビクトル・エリセ監督
☆『バーテンダー』:歴史地区にあるバーで働く一人の男の1日を台詞なしで描いた作品。『命の嘆き』:ヴェントゥーラは、精神を病み、エレベーターの中で過去の"亡霊"と対話する。『割れたガラス』:19世紀半ばに創設され、2002年に閉鎖された紡績工場リオ・ヴィゼラで働いていた人々の思いをつなげたドキュメンタリー。『征服者、征服さる』:ギマランイス城には毎日、観光客の集団が押し寄せてくる。
4監督の個性がそれぞれ出ていたオムニバス作品。個人的には、エリセ監督のドキュメンタリーが感慨深かったです。東京フィルメックス2012にて 2012.12

ピナ・バウシュ 夢の教室 TANZTRAUME
アン・リンセル監督
☆ダンス経験のない40人の10代の子供たちが、10ヵ月後のピナの代表作『コンタクトホーフ』の舞台に立つまでの訓練の様子を描いたドキュメンタリー。
「よくわかんなーい、なぜ?」と疑問を投げかけ、ぎこちなく動く子供たちが、徐々にダンスの面白さに魅せられ、真剣に取り組みはじめる姿が印象的だった。ピナはすでにガンになっていたのであろう。かなり痩せていたのだが、子供たちの演技を見守る姿は、オーラがありました。2012.12

ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー DEUX DE LA VAGUE
エマニュエル・ローラン監督、フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、 ジャン=ピエール・レオ出演
☆ヌーベルバーグの旗手、フランソワ・トリュフォー監督とジャン=リュック・ゴダールの関係に迫ったドキュメンタリー。
友情から決別まで、周囲の証言をもとに構成。社会派インテリで理屈っぽいゴダールと、ブルーカラー出身のアーチストのトリュフォー。まあ、上手くいくわけないですよね。トリュフォー派なのですが、ゴダールの「勝手にしやがれ」は大好きです。2012.12

人生はビギナーズ BEGINNERS
マイク・ミルズ監督、ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン 、ゴラン・ヴィシュニック出演
☆38歳独身男オリバーは、70過ぎの父から、突然ゲイであることを告白される。新聞にパートナー募集記事を出し、若い恋人を見つけて第二の青春を謳歌する父の姿に戸惑うオリバーだったが、そんな父から人生を楽しむ術を学んでいく。
内気な男の再生物語を父のカミングアウトに絡めて描いたキュートな作品。監督の実話、ということ。不思議でちょっとコミカルなノリが気に入りました。2012.12

SHAME -シェイム-
スティーヴ・マックィーン監督、マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガン出演
☆ニューヨークのインテリ独身男ブランドンは、一見優等生だが、内面では、セックス依存症という悩みを抱えていた。娼婦とのセックスや動画をみての自慰行為が日常になっていたブランドンの元に、奔放な妹シシーが現れる。
普通に恋愛したいのにできない、性的悩みを抱えたブランドンが超セクシー。苦悩する男をファスベンダーが見事に演じていた。こちらを先に見てから「メソッド」を見たほうがよかったかも。彼の心理は結局明かされず、何も解決はしないのだが、妹シシーを愛している、ということだけは伝わってきた。妹の歌う憂いのある「ニューヨーク・ニューヨーク」を聞きながら涙するブランドンには、ぐっときました。シシーを演じたキャリー・マリガンの体当たり演技にも脱帽。イギリスの新鋭、ファスベンダーとマリガンに、拍手!2012.12

ケンタとジュンとカヨちゃんの国
大森立嗣監督、松田翔太、高良健吾、安藤サクラ、宮崎将、柄本佑、洞口依子、新井浩文、柄本明出演
☆施設育ちの青年、ケンタとジュンは、職場の先輩・裕也にいじめられ、復讐を決意。実は、ケンタの兄が裕也を襲う事件を起こしたことで、ケンタは揺すられていたのだ。職場を襲ってトラックとバイクを盗んだ二人は、ナンパしたブスな女の子カヨちゃんとともに、兄が収監されている網走へ向かう。
底辺で生きる3人の若者の逃避行を描いた作品。70年代の青春映画を彷彿とさせる力作ではあったのだが、今一つウソ臭く感じてしまった。3人ともブルーカラーの割にオシャレでイケメンということや、恵まれた育ちの2世俳優が演じている、ということもあるのかも。
海外のこの手の作品だと、本当に犯罪歴のある素人を使ったり、貧民街出身だったりするのだが、日本ではそれが難しいということもあるのでしょう。それだけ、貧困層が身近ではないっていうことでもあるのだけど。同じ肉体労働者ものなら「サウダージ」のほうがリアルで面白く感じた。2012.12

夏時間の庭 SUMMER HOURS
オリヴィエ・アサイヤス監督、ジュリエット・ビノシュ、シャルル・ベルリング、ジェレミー・レニエ出演
☆パリ郊外の小さな町にある一軒の邸宅で、一人で暮らす母エレーヌが、急死した。3人の子どもたちは、母の暮らした家や、多くの美術品の遺産相続の件で、話し合いを始めるが…。
母は愛していたけど、死後の財産分与になると愛だけでは解決できない。家を売りたい妹と弟。思い出深い家を残したい兄…。どこの国でも同じような問題は起こるものですね。
金がらみの話ではあるのだが、ギスギス感はなく、母の残した美術品のエピソードなども交えて、温かみのある作品に仕上がっていた。『カルロス』など、とがった作品が多い監督、というイメージだが、こういうファミリー映画も作れるんですね。2012.12 参考CINEMA:「イルマ・ヴェップ」「5月の後 Something in the Air」「カルロス」

ミラル MIRAL
ジュリアン・シュナーベル監督、ルーラ・ジブリール原作、ヒアム・アッバス、フリーダ・ピント、アレクサンダー・シディグ、オマー・メトワリー、ウィレム・デフォー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ出演
☆1948年、イスラエル建国宣言1ヵ月前のエルサレム。パレスチナの孤児たちを我が家に保護したヒンドゥ・フセイニは、孤児のための学校“ダール・エッティフル(子供の家)”を創設。一方、継父の虐待から逃れてダンサーになったナディアは、刑務所で知り合った友人の兄ジャマールと結婚し、ミラルを産む。
 1978年。7歳になったミラルは、ダール・エッティフルと父の家の2重生活を送り始める。
イタリアの超美人キャスター、ルーラの半生を描いているとのこと。パレスチナの悲しい歴史とミラルの成長を真摯に描いた感動作である。パレスチナ人の目からみた作品ではあるのだが、ユダヤの友人との交流も描かれるなど、すべての人々がいがみ合っているわけではないことがうかがえ、ほっとさせられた。
昨年、パレスチナは国連で国と認められた。まだまだ両国のいがみ合いは続くのだろうが、少しずつでもイスラエルとパレスチナが歩み合っていけるような社会であってほしい。この映画をみて、心からそう思いました。2012.12 参考CINEMA:「夜になるまえに」「バスキア」「潜水服は蝶の夢を見る」

海燕ホテル・ブルー
若松孝二監督、片山瞳、地曵豪、井浦新、大西信満出演
☆友人たちと現金輸送車を襲撃し、一人逮捕されてしまった青年が出所した。男は自分を裏切った友人たちを探すうちに、大島のさびれたバーにたどり着く。
おろかな男たちが、一人の幽霊みたいな女に虜になっていく、ただそれだけの映画。安く撮ったのが見え見えの作品なのだが、大島名物”月の沙漠”の中を裸で走るシーンは圧巻。遊び心たっぷりの作品でした。若松監督って、初心を忘れない青臭さが魅力だったのかもしれません。最後に駆け足でたくさん作品とれて、よかったですね。突然の死ではあったけど、見事なエンディングに拍手!2012.12 参考CINEMA:「実録・連合赤軍」「天使の恍惚」「三島由紀夫」

赤軍派-PFLP 世界戦争宣言
足立正生監督
☆70年代のパレスチナ・ゲリラの様子と、赤軍派へのインタビューを交えたドキュメンタリー。素人が撮った映像みたいなのがつづくので、正直退屈ではあったのだが、当時のパレスチナゲリラたちの、しょぼい軍事訓練の様子は興味深かった。何百年も貧しく、戦いを強いられてきたパレスチナの民。21世紀を迎えても変わらない実情には、絶望感さえ覚えます…。2012.12 参考CINEMA:「幽閉者 テロリスト」「美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生」

天使の恍惚
若松孝二監督、吉沢健、本田竜彦、横山リエ出演
☆米軍の武器倉庫を襲撃した過激派組織・秋は、トップの裏切りにより、冬の連中に武器を奪われてしまう。
当時の過激派たちの内紛にエロを絡めた画期的作品。笑っちゃうシーンもたくさんあって、荒井晴彦が言ったようにパロディーっぽくもあったのだが、当時の若者の勢いが伝わってきて、新鮮な作品だった。山下洋輔トリオの演奏は圧巻。2012.12  参考CINEMA:「実録・連合赤軍」「天使の恍惚」「三島由紀夫」「海燕ホテル・ブルー」

美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生
フィリップ・グランドリュー監督
☆60年代後半に若松孝二監督作で多くの脚本を手がけ、その後パレスチナに渡り日本赤軍に参加、97年にレバノンで逮捕拘留された後、2000年に強制送還された足立正生監督。そんな足立監督が、自分の人生を振り返っていくドキュメンタリー。語りの内容が抽象的で、正直よくわからなかったのだが、おそらくパレスチナ人とのハーフである小さな娘と遊ぶシーンが印象的だった。世界を変えようとパレスチナに向かった足立の挫折感と、静かな余生、小さな幸せは画面の足立の姿から伝わってきた。2012.12 参考CINEMA:「幽閉者 テロリスト」「赤軍派-PFLP 世界戦争宣言」

幽閉者 テロリスト
足立正生監督、田口トモロヲ、PANTA、大久保鷹、ARATA出演
☆独房の過酷な幽閉生活で混乱と狂気に襲われるテロリストの姿を描く。モデルは、日本赤軍のメンバー、岡本公三。
ホンモノを知っている監督の作品なので、いろいろ想像してしまった。幻覚のように出てくる母親や牧師など、よくわからない感が70年代風で興味深かったです。2012.12 参考CINEMA:「赤軍派-PFLP 世界戦争宣言」「美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう/足立正生」


家の鍵 LE CHIAVI DI CASA
ジャンニ・アメリオ監督、ジュゼッペ・ポンティッジャ原作、キム・ロッシ・スチュアート、アンドレア・ロッシ、シャーロット・ランプリング出演
☆ジャンニは、出産で恋人を失ったショックから障害のある我が子パオロを妻の親戚に預ける。15年後、親戚の代わりにパオロをミュンヘンからベルリンのリハビリ施設へ連れて行くことになったジャンニは、無邪気で風変わりなパオロに戸惑う。子育てを放棄した若い父親と一風変わった息子の珍道中を丁寧に描いたろーどムービー。イタリアの正統派らしい真面目な映画でした。パオロの演技に拍手!2012.7

EVA<エヴァ> Eva
キケ・マイジョ監督、クラウディア・ヴェガ、ダニエル・ブリュール、ルイス・オマール、アルベルト・アンマン出演
☆舞台は近未来の2041年。エンジニアのアレックスは、雪に閉ざされたサンタイレーネのロボット研究所に10年ぶりに戻り、少年のロボットの製作にとりかかる。
一方、かつての恋人ラナは、兄ダビッドと結婚。一人娘エヴァを授かっていた。エヴァの個性にひかれたアレックスは、彼女をモデルにロボットを作りたいと願うが…。
時代設定は近未来なのだが、雰囲気は70年代。デビッド・ボウイの『スペース・オデティ』がキー曲として使われていたり、と作風は若いのだが、中年でも十分楽しめる作りになっていた。正直、ストーリー展開はステレオタイプではあったが、エバがかわいかったのでマル。2012.9

大鹿村騒動記
阪本順治監督、原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、松たか子ほか出演
☆長野県大鹿村では、300年以上にわたり、村歌舞伎が行われている。大鹿歌舞伎の花形役者である善は、歌舞伎の準備に追われていたが、ある日、親友と駆け落ちした元妻が舞い戻ってくる。彼女は認知症を患い、今の夫ではなく善を夫だと思い込んでいる。善は渋々、彼女と暮らしはじめるが…。
原田芳雄の遺作、ということで、かなり期待して見たのだが、舞台風のシンプルな物語でちょっと拍子抜け。原田芳雄は、長い俳優人生で、反社会的な悪人から、社長、善人まで幅広い役をこなしてきたが、最後に選んだのは、歌舞伎だった、のか…。映画の人、というイメージが強かったが、舞台出身だし、本質は舞台俳優だったのかもしれません。瀕死の舞台挨拶が今でも目に焼き付いて離れないけど、死ぬまで役者をつらぬいた男に拍手!映画の出来については、つべこべ言わないでおきます。2012.9

俺たちサボテン・アミーゴ Casa de mi pade
マット・ピエドモント監督、ウィル・フェレル、ディエゴ・ルナ、ガエル・ガルシア・ベルナル出演
☆老後をのんびり過ごすため、メキシコにある父の牧場に移住してきたアルマンドだったが、まもなく牧場が借金漬けであることが判明。やり手でイケメンのビジネスマン、兄のラウールは、父の負債問題を解決すると兄に約束する。
みんながみんなドあほなおバカ・コメディ。笑えましたがちょっと疲れた…。この手の作品は家で酒でも飲みながら、バカ笑いしてみたいですね。日本の映画館って大笑いしヅライので…。2012.9 ラテンビート映画祭にて

危険なメソッド A DANGEROUS METHOD
デヴィッド・クローネンバーグ監督、マイケル・ファスベンダー、キーラ・ナイトレイ、ヴィゴ・モーテンセン、サラ・ガドン、ヴァンサン・カッセル出演
☆精神科医ユングは、若い患者ザビーナに対話療法を施し、彼女が性的トラウマを抱えていることを突き止める。回復したサビーナはユングの助手を務め、二人は恋愛関係に発展する。
ユングとフロイトの関係よりも、ユングとサビーナの関係とユングの人間としての苦悩を描いている。歴史に名を残した精神科医のあまりの女々しさに、苛立ちを覚えるほど、ユングはある意味人間的。それに対しフロイトの学者らしい厳格さ、冷たさが興味深くて、もっとフロイトの本質に迫って欲しかった。クローネンバーグ監督ということで、心の奥の“狂気”を描いてくれるはず、と期待してしまったせいか、わりと普通でちょっと退屈だった。
舞台の映画化ということなので、まあ仕方ないかな。ユングを演じたファスベンダーの演技は光っていました。要注目。2012.10

人生万歳! WHATEVER WORKS
ウディ・アレン監督、ラリー・デヴィッド、エヴァン・レイチェル・ウッド出演
☆元物理学者のボリスは、自殺願望に取りつかれている中年男。ある夜、南部から家出してきた若い娘メロディと出会い、アパートに泊めてやることに。二人の奇妙な関係は恋愛に発展し、年の差結婚!しかし、彼女の母親が田舎から出てきたことで、少しずつ二人の関係が変わっていく。久々にアレンのシニカル台詞満載のコメディを見ました。アレンは出ていないが、彼の分身ともいえる神経症のボリスが、超おかしい。後半は、保守的だったメロディの母がアートに目覚め、二人の男と愛し合っちゃったり、メロディの父親が男に目覚めちゃったり、となんでもあり、なのがまたケッサク。最近の洗練されたアレン映画には正直、飽き飽きしていたので、このノリが純粋に嬉しかったです。2012.9

情熱のピアニズム MICHEL PETRUCCIANI
マイケル・ラドフォード監督、ミシェル・ペトルチアーニ出演
☆36年の短い生涯を全力で駆け抜けたフランスの天才ジャズ・ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニの数奇な人生を追った音楽ドキュメンタリー。
背が伸びず、骨が折れやすい障害を持って生まれたミシェルは、ミュージシャンだった父や兄の影響で、ピアニストとしての才能を開花される。障害をコンプレックスと思わず、生き急いでいるかのように、フランス、ニューヨークで演奏活動を続け、結婚・離婚を繰り返す。
わずか38年の人生だったのに、なんという濃い人生。子供にも障害が遺伝する確率が高い、と知りながらも、子供を望み、その子供が同じ障害者だった、という話に、並はずれた強さ、を感じた。他人がどう思おうが、自分のしたいように生きたミシェルに脱帽です。彼の波乱の物語は興味深かったのだが、もうすこし演奏シーンもじっくりと見たかったです。2012.10

それでもぼくはやっていない
周防正行監督、加瀬亮、役所広司、瀬戸朝香ほか出演
☆フリーターの青年は、面接へ向かう途中で女子高生に痴漢と間違えられ、警察に捕まってしまう。認めて罰金を払えばすぐに釈放されるよ、とブタ箱仲間や刑事に言われるが、青年はやっていない、と言い続ける。
冤罪なんて特殊なケースと思っていたが、痴漢なら十分あり得ること。警察の取り調べ内容やブタ箱仲間の助言など、面白くてつい見入ってしまった。さすが周防監督。詳細まで徹底的に調べたのでしょう。自分だったらどうするだろう…。私だったら、警察に屈して、ウソを言って出してもらっちゃうだろうなあ。だけど、悔しさは一生残っていくはず。
警察も政府も信用できないのが現実。でも、絶望ではない。そんな現実を受け止め、生き延びていくのが大事な気がした。2012.10

闘牛に賭ける男
舛田利雄監督、石原裕次郎、北原三枝、二谷英明ほか出演
☆闘牛興行の夢にかける熱い男と彼を慕う女優、そしてその彼の三角関係を、日本、スペイン、フランスを舞台に描いたエンタメ作品。60年代の日活映画をスクリーンで見たのは初めてだったので、新鮮だった。ヨーロッパ・ロケが中心で、これって裕次郎と三枝さんのプレ新婚旅行だったんじゃなの?と疑いたくなるほど。高度成長時代の日本の活気が伝わってきて楽しかったです。2012.9 ラテンビート映画祭にて

Virginia/ヴァージニア
フランシス・フォード・コッポラ監督、ヴァル・キルマー、ブルース・ダーン、エル・ファニング出演
☆泣かず飛ばずのミステリー作家ボルティモアは、自分の本を車に積んで田舎町の本屋を回る日々を送っていた。かつてエドガー・アラン・ポーが滞在したこともあるというある町で、胸に杭を打ち込まれた身元不明の少女の死体が発見された。年老いた保安官は、彼に、この事件を題材にミステリーを書くよう勧められる。
怪しげな雰囲気は、どことなくデビット・リンチ風。でも、そこはコッポラなので意味不明な方向へは進んでいかず…。アート作品なのかエンタメ作なのか、なんだかどっちつかずで見ていて戸惑いを覚えた。コッポラも撮りたいものだけを撮る作家になってしまったのね…。最後にもうヒト花!を期待したいのですが。2011.10

ブルジョワジーの秘かな愉しみ LE CHARME DISCRET DE LA BOURGEOISIE
ルイス・ブニュエル監督、ジャン=ピエール・カッセル、デルフィーヌ・セイリグ、フェルナンド・レイ出演
☆南米のミランダ国の駐仏大使とその友人一行は、ブルジョワ仲間の家を訪れるが、夕食の約束は明日だと言われ…。スノッブなブルジョワたちの裏の顔は、不倫や麻薬取引など、嘘だらけ。彼らの食事のシーンと、それぞれが見る悪夢を交錯された実験的な作りでありながら、雰囲気はあくまでブルジョワたちの日常…。とっても不思議な映画ではあるのだが、意外と見やすかった。ブニュエルは、フランス時代と初期のスペイン時代とはまったく作風が違うのが驚き。奥深さは感じたが、理解できるか、と言われたら…。2012.11

ママと・私のグローイング・プラン Girl in Progress
パトリシア・リヘン監督、エヴァ・メンデス、シエラ・ラミレス、マシュー・モディーン出演
☆17歳で出産したグレースは、メイドとウエイトレスの仕事を掛け持ちしながら、娘アンジーダッドを一人で育ててきた。その娘も13歳になり、思春期特有の悩みを抱えていたが、グレースには娘の変化に気づく余裕はなく、妻のある医師との恋愛に溺れている。
授業中、大人になるためのステップについて話を聞いたアンジーダッドは、大人になるための経験を積んで、母親から独立する計画を練り始める。
メキシコの女性監督パトリシア・リヘンが、早く大人になりたいと願う少女と、大人になりきれない母、二人の成長物語を、女性ならではの細やかな視点で描いている。
娘の母への反発はよーくわかります。一方、若い母の気持ちもわからなくはない。どちらにも感情移入できました。とってもかわいい作品でした。2012.9 ラテンビート映画祭にて

モンスターズ/地球外生命体 MONSTERS
ギャレス・エドワーズ監督、スクート・マクネイリー、ホイットニー・エイブル出演
☆地球外生命体がアメリカとメキシコの国境付近で繁殖し、危険地帯となってしまった近未来。
現地を取材中のカメラマン、コールダーは、メキシコに足止めされている社長令嬢サマンサを無事にアメリカまで送り届ける指令を受ける。
期待して見たのだが、なんてことはない、普通のモンスター映画。とくにひねりも社会風刺もなく…。退屈でした。2012.10

La chispa de la vida
アレックス・デ・ラ・イグレシア監督、ホセ・モタ、サルマ・ハエック、フェルナンド・テヘロ出演
☆失業中の元宣伝マン、ロベルトは再就職活動もままならず、失意の日々を送っている。かつてロベルトが、コカコーラのキャッチコピー「La chispa de la vida !」を生み出したことなど、もう誰も知らないのだ。
ある日、美術展の彫像と一緒に宙吊りにされた挙句、落下するというアクシデントに見舞われる。一夜にして有名人となったロベルトは、事故現場に駆けつけた妻ルイサに、人生を賭けた大博打に打って出る、と言い放つ。
頭に鉄棒が突き刺さり、死を目の前にした男が、自分のラストショーを仕掛け、家族のために大金を残そうとする。イグレシア監督らしい、ブラックな内容で、笑っていいのか困ってしまったが、でも、コメディでもあるので…。エンディングは正直ショックでしたが、最終的には、金ではなく愛、という結論は○。2012.10 ラテンビート映画祭にて

ある嘘つきの物語 モンティ・パイソンのグレアム・チャップマン自伝
A Liar's Autobiography - The Untrue Story of Monty Python's Graham Chapman
ビル・ジョーンズ 、ベン・ティムレット、ジェフ・シンプソン監督、グレアム・チャップマン、ジョン・クリーズ、テリー・ギリアム、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペイリン出演
☆モンティ・パイソンのメンバー、グレアム・チャップマンが80年に書いた自伝を、3Dアニメを使って映画化。89年に他界したチャップマンが生前に自伝の朗読を録音しており、本作は死後23年を経た新作でありながらナレーションに本人の声が用いられている。
テリー・ジョーンズの息子とその仲間が撮ったブラックでお下劣なモンティ・パイソンへのオマージュ。パイソンおたくではないので、何がなんだか、半分はよくわかりません~ん、だったが、それがパイソンらしくもあり…。ゲイなのは公言していて、アル中は隠していた、というエピソードが、グレアムの恥じらいを感じてよかったです。48歳でガンで亡くなっていたとは知らなかった。伝説的コメディ集団は、孫の世代までも語られていくのでしょうね。時代を感じつづ、しみじみ…。2012.10 東京国際映画祭にて

5月の後 Something in the Air
オリヴィエ・アサイヤス監督、ローラ・クレトン、クレモン・メタイェル出演
☆68年の5月革命に間にあわなかった世代の青春ドラマ。ヴェネチア国際映画祭で最優秀脚本賞受賞。
監督の自伝的作品ということ。今一つ、盛り上がらない学生運動や、半端な恋愛等々、何をどうしていいかわからず悶々としている危なっかしい若者の姿がリアルだった。
いろんな人物が出てきて、混乱してしまうこともあったが、青春の苦さは伝わってきました。2012.10 東京国際映画祭にて

強奪のトライアングル
ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、ジョニー・トー監督、サイモン・ヤム、ルイス・クー、スン・ホンレイ、ラム・カートン、ラム・シュー出演
☆金に困っている3人の男は、あるお宝の隠し場所情報を入手。悪徳刑事やヤクザらが、彼らをしつこく追い回す。
3人の監督が、一つの物語をリレー形式でつないだアクション映画。クライマックスを担当したジョニー・トーは、さすが!の面白さでした。2012.8

コーマン帝国 CORMAN'S WORLD: EXPLOITS OF A HOLLYWOOD REBEL
アレックス・ステイプルトン監督、ロジャー・コーマン、ジュリー・コーマン出演
☆低予算B級映画のカリスマ、ロジャー・コーマンに迫ったドキュメンタリー。名前だけは知っていたが、本物を見たのは初めて。作品からは想像できないような紳士で驚き。
無名時代のジャック・ニコルソンやデニーロ、いまやハリウッドの大監督となったロン・ハワードやジョナサン・デミまで登場し、彼の作品のお金のなさを暴露していたのは笑えました。2012.11

子供たちの王様 孩子王 KING OF THE CHILDREN
チェン・カイコー監督、シェ・ユアン出演
☆中国の山奥の学校に赴任した若い教師“やせっぽち”は、教科書も持っていない子供たちに、どうやって国語を教えていいのか戸惑う。やせっぽちの教え方に異を唱えた王福は、竹切りを生業にする父を手伝いながら、学校に通う生徒だった。
貧農の子供たちのくったくのない笑顔、やせっぽち先生のボロボロの風貌と、水墨画のように美しい霧と山の風景が、不思議とマッチした詩的な作品だった。チェンカイコーも初期はこんな素朴な映画をとっていたのねえ。なんどか睡魔に襲われたが、趣のある作品でした。2012.7

サン・ジャックへの道 SAINT-JACQUES... LA MECQUE
コリーヌ・セロー監督、ミュリエル・ロバン、アルチュス・ドゥ・パンゲルン出演
☆母親の遺産相続の条件に、サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの巡礼の旅を突き付けられた個性の違う3人の兄弟は、しぶしぶツアーに参加する。ツアーには、字の読めないアラブ系の青年や、ガンに冒された女性など、さまざまな人々がいて…。
エステベスの映画を見たばかりだったので、内容がダブったが、こちらのほうがオリジナルなんですよね。遺産目当ての3兄弟のエピソードはありきたりで退屈だったが、アラブの青年の物語にはちょっと感動。2012.8

真実への旅路
トム・マクローリン監督、ジュリア・オーモンド , マハーシャラルハズバズ・アリ , リサ・アリンデル・アンダーソン出演
☆知的障害の少女を強姦した罪で捕えられた男カルヴィンが無実だと訴えていると知った弁護士秘書のジャネットは、カルヴィンの無実の罪を晴らすために奔走する。実話の映画化。無実の証明のために動きだしてから10年以上もかかって、やっと釈放された、というのが、リアル。東電OL事件も、15年後の釈放だったら、一度起訴されると、それを覆すのがいかに大変か、伝わってきた。「諦めない」強い意志も持ったカルヴィンとその家族、そしてジャネットに脱帽です。2012.8

ソフィアの夜明け EASTERN PLAYS
カメン・カレフ監督、フリスト・フリストフ、オヴァネス・ドゥロシャン出演
☆ブルガリアの首都ソフィアで暮らす工員のイツォは、トルコ人一家が若者の過激派グループに襲われているのを助け、怪我をしてしまう。薬物依存の治療をしながら、夢を持てずに生きていたイツォは、トルコ人一家の娘と親しくなっていく。
一方、兄イツォに、過激派グループと一緒にいるところを見られてしまった弟も、新しい一歩を踏み出すことを決意する。
ブルガリアといえば、ヨーグルトと力士の故郷、というイメージしかないのだが、移民問題や経済問題など、様々な事情をかけた国、ということが見てとれた。
若者の再生物語ではあるのだが、主演俳優が直後に亡くなった、というのを聞いていたので、悲しい気持ちになりました。なかなか味のある役者さんだったのに…。合掌。2012.7

ダブルフェイス 秘めた女 NE TE RETOURNE PAS
マリナ・ドゥ・ヴァン監督、ソフィー・マルソー、モニカ・ベルッチ、ブリジット・カティヨン出演
☆自分が別人のように思える女は、記憶のない過去を求めて旅にでる。サスペンスタッチなんだけど、ハラハラ感はあまりなく、なんだか中途半端。せっかく人気の美人女優使っているのにもったいない内容でした。2012.8

ナイン・ソウルズ 9SOULS
豊田利晃監督、原田芳雄、松田龍平、千原浩史ほか出演
☆刑務所から脱走した同室の男たち9人は、富士山のふもとに眠っているというお宝を求めて旅にでる。
原田芳雄追悼の気持ちで借りてみたが、なかなか見応えのある隠れた名作。連ドラはこれが元ネタだったのね~。父を殺した若者を演じた松田龍平がまだまだ初々しく、でも鋭さ、怖さを秘めていてかっこよかったです。9人それぞれの個性や事情もそれぞれ説得力があったし、さすがは豊田監督。仲間が次々姿を消し、彼らを車で待つ原田芳雄の姿は哀愁が漂っていて色っぽかったです。やっぱり原田芳雄はTVドラマより映画でこそ映える役者です。2012.9

眠れる美女 Bella Addormentata
マルコ・ベロッキオ監督、イザベル・ユペール、トニ・セルヴィッロ、アルバ・ロルヴァケル、ミケーレ・リオンディーノ、マヤ・サンサ、ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ出演
☆昏睡状態の少女の尊厳死を巡ってイタリア全土が大騒ぎとなった2009年の実際の事件を基に、様々な立場の人間の苦悩を描いた作品。
エキセントリックな弟役のファブリツィオ・ファルコはヴェネチア国際映画祭で最優秀新人賞を受賞。
イタリアの巨匠が超豪華な俳優陣で撮った作品。尊厳死については、世界の共通のテーマではあるのだが、もし日本だったらこれほど大騒ぎにはならないでしょう。そのへんが、やはりカソリックの本家だなあ、と感じた。
反対派の「人の命は神にしか委ねることはできない」という思想もわかるのだが、だったら人工呼吸器で延命することは、神の行いに反していないのか、ということになるわけで…。
娘を呼吸器につないで女優のキャリアを捨てた女、「楽にして」という妻の願いを聞いて呼吸器を止めた議員、その父を許せない若い娘…。さまざまな立場の心理が丁寧に描けていて、さすがのクオリティでした。2012.10 東京国際映画祭にて

ハッピー・フライト VIEW FROM THE TOP
ブルーノ・バレット監督、グウィネス・パルトロー、マーク・ラファロ、キャンディス・バーゲン、マイク・マイヤーズ出演
☆田舎生活や怠惰な家族にうんざりしていたドナはテレビで見たカリスマ・スチュワーデスに憧れてスチュワーデスになる。だが、ローカル線だけのシケた仕事に飽き足りないドナは、優しい彼を振って、業界大手のロイヤルティ航空に入社する。
なんの仕掛けもない超トラディショナルなアメリカン・ドリームコメディ。マイク・マイヤーズは唯一突き抜けていて面白かったけど、豪華キャストも意味ないじゃーん。ブラジル人のバレット監督なので期待していたのだが、がっかり…。私のマーク・ラファロが出てたので、許しましょう。2012.7

プロヴァンスの贈りもの A GOOD YEAR
リドリー・スコット監督、ラッセル・クロウ、マリオン・コティヤール、アルバート・フィニー出演
☆ロンドンのやり手トレーダー、マックスは、長年疎遠になっていた叔父の遺産相続のために、叔父の所有するプロヴァンスのワイナリーへ向かう。
子供の頃に叔父と過ごした日々を懐かしく思いながらも、ワイナリーを売る決心をしたマックスの前に、叔父の隠し子だという若いアメリカ人女性が現れる。
原作者ピーター・メイルがリドリー・スコットの親友、ということらしいが、リドリー・スコットがこんなライトなヒューマンドラマを作ったということにまず驚き。
名監督なだけあって、それなりに面白く描かれていましたが、普通、というのが率直な感想。ラッセル・クロウのコミカルな演技はあまり見たことがなかったので、新鮮でした。2012.7

プンサンケ 豊山犬
チョン・ジェホン監督、キム・ギドク脚本・製作総指揮、ユン・ゲサン、キム・ギュリ、キム・ジョンス出演
☆北と南を行き来して、思い出の品やビデオレターなどを届ける男は、ある日、北から亡命した要人の愛人イノクを運ぶよう、依頼を受ける。
国境を超え、危険を冒す「トランスポーター」。運び屋はまったく言葉を発さず、ひたすらカッコイイ。そして、彼をとりまく、北と南、双方の諜報部員が間抜けでおろか。社会批判精神にあふれた内容ではあるのだが、ちょっと劇画チックで拍子抜け。ギドクが監督していれば、もうちょっと違ったのかも。期待しすぎてしまいました。よくできた面白い作品ではあるのだが、今までのギドク作品と比べると、少々期待外れ。2012.8

ミッドナイト・イン・パリ MIDNIGHT IN PARIS
ウディ・アレン監督、オーウェン・ウィルソン、ニナ・アリアンダ、カート・フラー出演
☆脚本家のギルは、婚約者とともにパリを訪れるが、婚約者の友人や両親とはそりが合わない。夜中に散歩に出かけたギルが、あるバーに足を踏み入れると、そこは、フィッツジェラルド夫妻やピカソ、ダリ、ヘミングウェイなどが語り合う、華やかな20年代のパリだった。
アレンらしい小シャレた台詞が懐かしく感じた。楽しかったけど、ワクワク感はなかったかな。いい意味で定番コメディだった。2012.8

君を想って海をゆく WELCOME
フィリップ・リオレ監督、ヴァンサン・ランドン、フィラ・エヴェルディ、オドレイ・ダナ出演
☆フランスの海辺にあるカレには、中東から多くの不法移民がやってきて、イギリスへ渡るための危険を冒している。イラク国籍のクルド難民ビラルはまだ17歳だったが、ロンドンに移住した恋人に会うために、カレまでやってきた。友人たちとトラックの荷台に隠れて密航しようとするが、二酸化炭素検査を逃れるためにビニール袋を被ることに、恐怖心を抱くビラルは、ドーバー海峡を泳いで渡ることを思いつく。
一方、元メダリスト・スイマーで今は市民プールで働くシモンは、妻に出て行かれ失意の日々を送っていた。カレは、なけなしの金でシモンに泳ぎの指導を依頼する。
 カレの無謀な計画に呆れ、諦めるよう諭していたシモンが、彼の熱意にほだされ、援助するようになるまでが丁寧に描かれていた。一方で気になったのはフランス政府の厳しい取締り。難民だから強制帰国はさせない、と言っているクセに、生活の支援はまるでナシ。イギリスへの密航ももちろん取り締まる、ではどうやって生きて行けばいいの?である。シモンや彼の妻が難民支援をやっていることで管理局から目をつけられるのも解せない。
『ル・アーブルの靴みがき』では、少年の密航をみんなが手伝い、管理局も見逃してくれるというおとぎ話に仕上げていたが、こちらはかなりリアルである。
おそらくフランスでは、この難民の扱いが問題になっているのでしょう。
失敗にくじけず、ドーバー海峡に挑むカレの姿が痛々しくて、やりきれなくなりました。2012.6

きっと ここが帰る場所 THIS MUST BE THE PLACE
パオロ・ソレンティーノ監督、ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド出演
☆元ロックスターで風変わりなシャイアンは、ダブリンの豪邸で消防士の妻ジェーンと静かに暮らしていた。ある日、父の危篤の知らせが届き、30年ぶりにニューヨークへ帰省する。疎遠になっていた父が、ホロコーストの生き残りで、死ぬまでナチの残党ランゲを追いつづげていたと知ったシャイアンは、父に代わってランゲを探す旅に出る。
見かけは厚化粧の中年ロッカー風なんだけど、性格は超シャイで話し方もオネエ調。一方、株で大儲けした大富豪で、真逆のタイプの妻とも愛し合っている。なんとも不思議なシャイアンのキャラが面白くて、見ていて飽きがこなかった。正直、父の代わりにナチの残党を追う、というエピソードは彼のキャラにそぐわない気がしたが、ショーン・ペンがそのあたりの複雑さを見事に演じていた。一にも二にもペン様の演技力が光った作品だった。2012.7

キラー・インサイド・ミー THE KILLER INSIDE ME
マイケル・ウィンターボトム監督、ジム・トンプソン原作、ケイシー・アフレック、ケイト・ハドソン、ジェシカ・アルバ出演
☆1950年代の西テキサス。温和な保安官助手フォードは町の風紀を乱す売春婦ジョイスのもとを訪れる。フォードはジョイスの態度に切れ、封印していたマゾヒスティックな性癖を露わにする。
 婚約者がありながら、ジョイスとの情事を重ねるフォード。町の有力者の息子がジョイスに入れ込んでいると知ったフォードは二人の殺人を企てる。
 静けさと暗さを併せ持つケイシーの存在感に脱帽。兄ベンとはまた違った魅力がある。
ジム・ドンプソンの陰湿な世界を見事に描いたウインターボトム監督のワザにもアッパレです。地味な内容ではあるが、演技、演出、そして原作のクオリティの高さが光った逸品。2012.7

グーグーだって猫である
犬童一心監督、小泉今日子、上野樹里、加瀬亮、森山中ほか出演
☆漫画家、麻子は、最愛の猫サバの急死後、子猫グーグーと出会う。大島弓子原作のほのぼの映画。日常の小さな出来事を丁寧に切り取っていて、心がほっとさせられました。が、正直私好みではないのよね…。猫がかわいかったので○。2012.6

ゲスト GUEST
ホセ・ルイス・ゲリン監督
☆2007~8年にゲリン監督が世界各国の映画祭へゲストとして招かれた際、映画祭会場とは無縁の人々にハンディカメラを向けて彼らの生活に迫っていく大作ドキュメンタリー。2時間以上あり、あの『シルビア~』の監督作品ということで、ついていけるかなあ、と見るまでは不安だったが、空けてびっくり。キューバ、ブラジル、コロンビア、マカオ、フィリピンなどの質素に暮らす人々の懐に入って、彼らの生の言葉を引き出している社会派ドキュメンタリーに仕上がっていた。監督いわく、作品のうち半分は『シルビア~』タッチで、半分は『ゲスト』寄り、ということ。私は断然『ゲスト』のほうが好み。
サンパウロのセ広場で説法する人、仕事もなく座っているだけの人、カラオケ歌う人など、あのちょっと異様な雰囲気のセントロの人々の様子が懐かしくて、思わずサウダージ。住んでいた頃は寄ってこられないようピリピリしていた地域だが、今となってはそれも懐かしい思い出…。またキューバ編では、貧民街で寄り集まって暮らす人々の本音にも迫っていて、興味深かった。
 監督は話し方も穏やかで、社会派ドキュメンタリーを撮るようなタイプには見えなかったが、二面性を持った所が魅力なのかもしれない。2012.7

孤独なツバメたち ~デカセギの子どもに生まれて~
津村公博、中村真夕監督
☆浜松で暮らす出稼ぎ日系ブラジル人の子供たちの運命にスポットを当てたドキュメンタリー。日系ブラジル人を扱ってくれたのはありがたいのだが、ドキュメンタリーとしては、少々物足りなさも感じた。家族と一緒にブラジルに戻り、ブラジルでは働きながら家族を支える女性、仕事がなくても日本にしがみつき夢を語る男、ブラジルに戻ったものの馴染めずにまた日本に戻りたいという元ヤンキー、ダンスに夢中だった少年はアマゾンに戻り、現地のダンス好きと仲間になり…。
リアルなブラジル人の姿を描いていて好感が持てた。日本でのインタビューだけでなくブラジル帰国後の姿も追ってくれたのがとくにBOM! 
 欲を言えば、少年少女たちへのインタビューだけでなく、彼らを取り巻く家族や日本人からの視点なども描けば、もっと、厚みのある社会派ドキュメンタリーになった気がする。道徳の時間に見せられる説教番組風だったのが、ちょっと惜しい感じ。
 日本人でもブラジル人でも、ダンスとか勉強とか、やりたいものがはっきりしている子供は前向きに生きられるんだよねえ。彼らのその後もぜひ見てみたい。2012.6

11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち
若松孝二監督、井浦新、満島真之介、寺島しのぶほか出演
☆ノーベル賞受賞も噂される絶頂の三島は、金嬉老事件や、過激化する学生運動のニュースに関心を持つとともに、次第に民兵組織の結成に動き出す。
三島文学のファンという単純な理由から三島に関心を持ち、また、極左翼側だと思ってい若松監督がどのように三島を描くのか興味があって映画館に足を運んだ。
クールなインテリ風アラタ君が三島を演じたというのが斬新で、ひ弱な小説家が肉体改造にはまり、さらに過激な右翼思想に突き進む様が興味深かった。
三島という人物の複雑な内面にはあえて切り込まず、「盾の会」思想と三島に染まっていく若い学生たちの視線から描いていたのが新鮮だった。
 学生運動とは対極にあった若者ではあるのだが、国を憂う、という意味では同じ。そんな純粋な若者に死を選ばせ、未来を奪った三島の罪は重い、と感じてしまったのは、私だけだろうか。
立派な鎧をつけてはいるが、内面は甘えん坊で、究極のナルシスト。森田だけを選んでの自決はゲイカップルのドラマチックな心中、と見てとれなくもない。(正直、思想は理解できないので…)。三島の自決は必然であった、と諦めもついたのだが、森田が不憫で仕方なかった。三島に「給料払うから事務長になってくれ」と言われながら、脱退した持丸のその後が気になって調べたら、意外な事実もわかり…。いろいろな意味で、考えさせられた映画でした。2012.6

ヒア アフター HEREAFTER
クリント・イーストウッド監督、マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス出演
☆フランス人の女性キャスター、マリーは、バカンスで津波に遭遇し九死に一生を得る。臨死体験が忘れられないマリーは本を書くことを決意する。
サンフランシスコで暮らすジョージは有能な霊能者でありながら、自分の力を使うことに違和感を覚えている。
ロンドンに住む少年マーカスは、双子のジェイソンを交通事故で亡くし、里子に出される。
イーストウッドが死後の世界や霊の映画を撮るとようになってしまったか…。80過ぎれば誰でも死を身近に感じるのだろうし、必然、ではあるのでしょうが、ちょっと寂しくも感じました。あの黒沢明だって、晩年は、らしくない「夢」を撮ったことですし…。
アジア、フランス、アメリカ、ロンドン。国も人種も年齢も違う人間たちが、「死」というテーマによってつながっていく過程が丁寧に描かれていた。
冒頭の津波のシーンはCGなのだろうが、良く出来ている。311直後に上映ストップになったことに「やり過ぎ」と思っていが、この映像をスクリーンで見るのは、ちょっときつかったかも。あらためて、日本人は、大きな災難を経験をしてしまったんだなあ。2012.6

ファウスト FAUST
アレクサンドル・ソクーロフ監督、ヨハネス・ツァイラー、アントン・アダシンスキー、イゾルダ・ディシャウク出演
☆ヴェネチア国際映画祭グランプリ(金獅子賞)受賞作。生きる意味を探し求める善良な男ファウストが、彼を誘惑する悪魔の出現によって運命を大きく揺さぶられていくさまを、監督の自在な解釈と幻想的かつ荘厳な映像美で描き出していく。
 19世紀初頭。神秘的な森に囲まれたドイツの町。世の中のあらゆる謎を探求するファウスト博士は、研究を続けるため高利貸マウリツィウスのもとを訪れる。するとファウストは、マウリツィウスの策謀にはまって町で出会った美しい少女マルガレーテに心奪われてしまう。やがて彼女を手に入れたい一心で、マウリツィウスが提示する契約書にサインしてしまうファウストだったが…。

屋根裏部屋のマリアたち LES FEMMES DU 6EME ETAGE
フィリップ・ル・ゲ監督、ファブリス・ルキーニ、サンドリーヌ・キベルラン、ナタリア・ベルベケ、カルメン・マウラ出演
☆1962年のパリ。資産家のシュベールは、スペイン人メイドたちの暮らす屋根裏部屋に入り浸りはじめ…。
フランコ時代のスペインから、フランスに多くの出稼ぎ家政婦がいた、という事実を知らなかったので、興味深く見れた。ドラマ展開はお決まりでしたけどね。2013.2

預言者 UN PROPHETE
ジャック・オーディアール監督、タハール・ラヒム、ニエル・アレストリュプ、アデル・バンシェリフ出演
☆19歳のアラブ系青年マリクは刑務所の中で、コルシカ・マフィアのボスに目を付けられ、アラブ人殺人を強要される。マリクはセザールの使いっ走りをしながら、刑務所の勢力図や生きる術を学んでいく。
フランスのノワール映画といえばオディアールで決まり!臆病な犬のような目をしながら、しっかりと人間たちを観察し、彼らの間を泳ぎながらのし上がるマリクの生きざまは見応えあり。カンヌ国際映画祭グランプリも納得の傑作です。2013.4

わたしたちの宣戦布告 LA GUERRE EST DECLAREE
ヴァレリー・ドンゼッリ監督、ヴァレリー・ドンゼッリ、ジェレミー・エルカイム出演
☆若い夫婦に息子アダムが誕生。だが、彼は難病に冒されていた。
よくある涙涙の難病ものではなく、子育てに不慣れな夫婦の成長物語に仕上がっている。
難病を克服したから、明るいテイストで描けるんでしょうね。2013.2

ヤギと男と男と壁と THE MEN WHO STARE AT GOATS
グラント・ヘスロヴ監督、ジョージ・クルーニー、ユアン・マクレガー、ジェフ・ブリッジス、ケヴィン・スペイシー出演
☆新聞記者ボブは、怪しげな超能力者を取材後、イラク戦争の取材へ。そこには超能力者から聞いた強力なスーパー能力者エリンがいた…。
アメリカお得意のパロディおバカ映画かと思ったら、実話に基づいている、というから驚き。(ユアンがフォースを学ぶ設定なんて『スターウォーズ』じゃん…)
超豪華な俳優使ってるわりには、キャラ設定も甘いし、ストーリーもとっちらかってるし、コミカルさも中途半端。いろんな意味で、“もったいない”作品でした。2012.6

八日目の蝉
成島出監督、井上真央、永作博美、小池栄子、森口瑤子、田中哲司ほか出演
☆父の不倫相手・希和子に誘拐され、4歳になるまで育てられた恵理菜は、成人後も、家族との関係に違和感を抱えていた。ある日、妻子のある男との子供を身ごもった恵理菜は、産むことを決意。フリーライターの女性と過去を巡る旅に出る。
トラウマを抱えた女性の再生物語。過去と現在の絡ませ方が絶妙で、唸らせる構成。奥寺脚本の技あり!薫ちゃんを演じた子役の上手さにも拍手!正直、あまり期待していなかったのだが、誘拐犯、誘拐された母、そしてトラウマを抱えた恵理菜、それぞれの立場の女性に感情移入してしまった。泣かせるぜぃ。
ただ、この映画、男側の事情や感情はほぼ無視されている。エロスがまったく描かれていない、と評価の低い評論家もいたが、確かに男から見れば、キレイ事なのかもね。男には男の言い分もあるのでしょうし。2012.6

ラム・ダイアリー THE RUM DIARY
ブルース・ロビンソン監督、ジョニー・デップ、アーロン・エッカート、マイケル・リスポリ出演
☆1960年、プエルトリコにやってきたジャーナリストのポールは、曲者ぞろいの同僚とともに、自堕落な日々を送っていた。実業家サンダーソンの婚約者に一目ぼれしたポールは彼の仕事を手伝いながら、彼女に近づくが…。
ハンター・トンプソンの映画と言えばギリアムの『ラスベガスをやっつけろ』であるが、この映画は、トンプソンの若いころのお話。
めちゃくちゃのラリラリ映画を期待したのだが、中途半端に正義感に燃えちゃっててがっかり。見やすいドラマ仕立てにするのか、アングラに徹するか、はっきりさせないとこういう結果になるのでしょう。デップは心身ともに、すっかり骨抜きにされちゃったのでしょうか?離婚を気に原点に戻ってくれらばよいのだけど。2012.7

私の中のあなた MY SISTER'S KEEPER
ニック・カサヴェテス監督、キャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ボールドウィン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァ出演
☆2歳の時に白血病を宣告されたケイトのために、両親はドナーになるための次女を作ることを決意。ケイトは次女アナの身体に助けられ、命を長らえる。だが、11歳になったアナが突然弁護士を雇い、もうドナー手術は受けない、と宣言する。
「妹が母を訴える」というのは一つのエピソードにすぎない。物語は家族それぞれの悲しみを丁寧に描いていく。ニック監督らしい細やかな人物描写で、お涙頂戴の難病モノが苦手なひねくれ者でも自然に涙がこぼれました。2012.7

Balibo (2009)
ロバート・コノリー監督、アンソニー・ラパリア、オスカー・アイザック出演
☆1975年、内戦状態にあった東ティモールに取材に出かけたオーストラリアのTVクルーが行方不明になった。東ティモールの役人ジョゼ・ハモス・オルタから、彼らの捜索協力を依頼されたフリージャーナリストのロジャー・イーストは、渋々東ティモールへ向かう。ロジャーは、行方不明の5人の足取りを追ううち、危険な国境付近へと足を踏み入れる。
東ティモールでの混乱が本格的に報道されるようになったのは、日本では21世紀になってから、という印象が強いのだが、実は70年代から始まっていた、という事実に衝撃を受けた。
インドネシアに侵攻されながらも、20年にわたって抵抗運動を続けた東ティモールの人々は、2002年の独立をどんな思いで迎えたのだろう。
お涙頂戴のドラマチックな展開に逃げず、ロジャーの目を通して東ティモールが侵攻されていく緊迫感を真摯に描いている。まさに正統派の社会派映画である。
「東ティモール人が何百人殺されようが、世界は誰も注目しない。でも外国人のジャナリストが犠牲になると、世界が東ティモールの現状に目を向けるものだ」というオルタの台詞は、辛辣だが的を得ている。
死をもって東ティモールの現状を報道したロジャーの生きざまも素晴らしいが、それが当時の日本に(今の日本にも)伝わっていなかったというのが、なんとも虚しい。
この映画はオーストラリア映画ではあるのだが、役者にはアメリカ等で活躍しているメジャー級を使い、質もかなり高い。(オーストラリアの映画賞まで受賞しているのに、日本ではまったく話題にならず、無視されているようだ…。)
英雄オルタを演じたオスカー・アイザックがステキで、さっそく調べたら『ドライブ』でスキンヘッドの隣人を演じたイケメンでした。要チェック!(グアテマラ出身。ジュリアード出身の音楽家でもあるそうです。秋公開のマドンナ監督新作「W.E.」にも出演!) 2012.5 東ティモールのイベントにて

アーティスト THE ARTIST
ミシェル・アザナヴィシウス監督、ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジェームズ・クロムウェル出演
☆女優の卵ペピーは、サイレント映画のスター、ジョージに憧れて、撮影所を訪ねる。彼の映画のエキストラとして出演したことをきっかけに、スターの階段を上っていく。時代はトーキー映画に移るが、サイレント映画に固執するジョージは落ちぶれて行く。3D映画時代に、あえて時代を遡ってモノクロ・サイレント映画を作ってしまったスタッフにまず脱帽。ステレオタイプのサイレント映画ではあるのだが、飽きずに楽しめたのは、それだけクオリティーが高いということでしょう。サイレント映画の時代など知らない現代人だからこそ、面白く感じたのかも知れませんが…。いい意味で、優等生の映画でした。主演賞総なめのデュジャルダンもクラーク・ゲーブル似でステキでしたが、犬の演技?には驚き!アニマル賞があれば間違いなく大賞です。2012.5

アレクサンドリア AGORA
アレハンドロ・アメナーバル監督、レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック出演
☆舞台は4世紀末のエジプト、アレクサンドリア。天文学者ヒュパティアは、弟子たちから厚い信頼を得ていた。一方、町では、キリスト教徒とユダヤ教徒の対立が激化していた。人間同士の信頼が、宗教戦争に巻き込まれていくのは、4世紀だろうが21世紀だろうが同じこと。人間は何と愚かな生きものなのか…。
ドラマの作り方も丁寧で、さすがアメナバール。見応えがありました。ヒュパティアを思う若き奴隷を演じたマックス(ミンゲラ監督のご子息!)と、ヒュパティアに求婚した弟子を演じたオスカー・アイザックが、どちらも魅力的で、惚れてしまいました。今後が楽しみな二人です。2012.5

イップ・マン 序章/葉問
ウィルソン・イップ監督、ドニー・イェン、サイモン・ヤム、池内博之出演
☆ブルース・リーの師匠として知られる“詠春拳”の達人、イップ・マン(葉問)の人生を描いたシリーズものの1作目。舞台は1930年代の広東省佛山。“詠春拳”の達人として知られるイップ・マンは、平和な日々を送っていたが、まもなく日本軍が侵攻。イップも仕事を失くし、炭鉱労働者として働きにでる。空手の名手でもある日本軍将校・三浦は、労働者の中からファイターを探しては、部下と闘わせていた。旧友が三浦に殴り殺されたと知ったイップ・マンは、自ら戦いの場に挑む。
イップマンが日本軍に武術を教えるよう言われ、それを断って香港に逃げた、というのが事実なようだ。1作目より先に2作目が日本公開されたのは「1作目では日本軍が敵だから」という裏事情が見え見えでちょっと嫌な気持ちになりました。事実は事実として、しっかり受け止めないと…。
ただ、悪役の池内君がカンフーの素人なので、ファイトシーンが、リアルじゃなかったのがちょっと残念。2作目のサモハンキンポーとドニーの戦いがあまりにも強烈だったので、比較してしまった(池内君にはちょっと気の毒でした。演技はよかったですけどね)。2012.6

終わりなき叫び A SCREAMING MAN
マハマト=サレ・ハルーン監督、ユースフ・ジャオロ、ディオク・コマ出演
☆舞台は内戦中のチャド。元水泳チャンピオン選手のアダムの仕事は高級ホテルのプール監視員だ。だが、経営者が変わった途端、仕事を息子に譲るよう迫られ、アダムはプライドを傷つけられる。
仕事を奪われることに怯える初老の男の心の葛藤を丁寧に描いている。息子を軍隊に取られてからの父親としての苦悩は痛々しい。地味な映画ではあるが、西洋人がほとんど絡まないアフリカ発作品ということでは、意味のある映画だと思った。カンヌ2010で審査員賞を受賞している。2012.5

さすらいの女神(ディーバ)たち TOURNEE/ON TOUR
マチュー・アマルリック監督・主演、ミランダ・コルクラシュア、スザンヌ・ラムジー出演
☆フランスで仕事を干されたプロデューサー、ジョアキムは、アメリカでキャバレーの舞台演出家となっていた。踊り子たちを連れ、フランスでの凱旋ツアーに出かけるが…。
ストリップと曲芸がミックスされた、ニュー・バーレスクと呼ばれるキャバレー芸があることを初めて知ったので、興味深かった。女優たちはプロではなくニュー・バーレスクの踊り子ということ。とてもTVでは見れないような下品かつ危ない芸の連続で、この映画はやっぱりスクリーンで見るべきだったな、と後悔。プロデューサーの裏事情は、ありきたりでフランス映画で何度か見たことあるような設定。それよりも、踊り子たちの生きざまにもっとスポットを当てて欲しかったかも。マチューは相変わらず、ダメ男がぴったり。2010年カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞にも輝いている。2012.5

パレルモ・シューティングPALERMO SHOOTING
ヴィム・ヴェンダース監督、カンピーノ、ジョヴァンナ・メッツォジョルノ、デニス・ホッパー出演
☆写真家フィンは、生活に疲れ、死への思いに取りつかれるようになる。イタリアのパレルモへ出かけたフィンは、何者かに命を狙われている、と感じ始め…。
映像がスタイリッシュ。この映画はやっぱり映画館で見たかったなあ。
『ベルリン天使の詩』にテイストは似ているが、退屈、と感じてしまったのはなぜ?悪くはないんだけど…。デニス・ホッパーは、彼らしい存在感で、遺作にふさわしい役(死神)でした。合掌。2012.5

ファミリー・ツリー THE DESCENDANTS
アレクサンダー・ペイン監督、ジョージ・クルーニー、シャイリーン・ウッドリー、アマラ・ミラー、ニック・クラウス、ボー・ブリッジス出演
☆一族が広大な土地を所有するオアフ島の弁護士マット・キングの生活は、妻の事故で一転。昏睡状態の妻に変わり、思春期の次女と、ませた長女に翻弄され、さらには、妻の不倫相手まで発覚してしまう。
美しいハワイを舞台にしたファミリー・ドラマ。雰囲気はのんびりなのだが、内容はけっこう辛辣。そのバランスが絶妙でさすがペイン監督。暗くなりがちな問題をさらり描いている。
マットは正直、クルーニーより、もっとダサいオッサンのほうが合っている気がしたが、そうなると客を呼べないし、イケメンが3枚目を演じる姿も初々しかったので、よしとしましょう。派手さはないが、安心してみれるほのぼの映画でした。2012.5

別離 JODAEIYE NADER AZ SIMIN
アスガー・ファルハディ監督、レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ出演
☆テヘランに住む女性シミンは娘の将来を考え、海外への移住を夫ナデルに打診。だが、ナデルは痴呆症の父の介護を理由に移住出来ないと言い出す。ナデルは父の介護のために家政婦を雇うが、彼女は身重の身体だった。誰も悪人はいないのだが、それぞれが問題を抱えていて、そのために歯車が狂って行く…。夫は父の介護のことでエキセントリックになり、妻は将来のために海外移住に固執。家政婦は身体が辛くても生活のために稼がなくてはならず…。
幸せになりたいだけの人たちが、みんなで苦い経験をしてしまう。何よりも気の毒だったのが、そんな大人たちに否応なしに振り回されてしまった娘。
イランに限らず、どんな社会でも起こり得る問題だけに、切ない気持ちになった。正直後味のいい映画ではないが、アカデミー賞受賞も納得の質の高い人間ドラマでした。2012.5 アカデミー賞外国語映画賞受賞。参考CINEMA『彼女が消えた浜辺』

星の旅人たち THE WAY
エミリオ・エステヴェス監督・出演、マーティン・シーン、デボラ・カーラ・アンガー、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン出演
☆眼科医の父は、確執のあった繊細な息子が、スペインのサンチアゴ巡礼の途中で事故に遭った、との知らせを受ける。フランスで息子の亡骸と対峙した父は、息子の遺灰と共に、サンチアゴ巡礼の旅へ出かける。
父と息子、二人三脚で作った巡礼の物語。私生活では過激なイメージが強いマーティン・シーンだが、息子の監督作に主演するなんて、親子関係は良好のようです。
定番のロードムービーで、新鮮さはなかったが、役者陣も芸達者をそろえていて、安心して見れました。2012.5

MAD探偵 7人の容疑者/神探
ジョニー・トー監督、ラウ・チンワン、ラム・カートン、ケリー・リン出演
☆ホー刑事は、奇行がきっかけで刑事を辞めたバンを訪ね、ある連続殺人事件の協力を依頼する。
アンディと競演した「暗戦 デッドエンド」のラウ・チンワンのいかれた探偵役が面白くて、事件そっちのけで楽しめた。もっといろいろ出ればいいのに…。イケメンではないが、個性的なラウ・チンワンにちょっぴり夢中。2012.5

マネーボール MONEYBALL
ベネット・ミラー監督、ブラッド・ピット、ジョナ・ヒル、フィリップ・シーモア・ホフマン、ロビン・ライト出演
☆弱小球団オークランド・アスレチックスのGMビリー・ビーンは、少ない資金で勝てるチームを作るため、データマンのピーターを引き抜く。
スター選手を無視した選手獲得に、ほかのスタッフたちは反発するが…。
金持ち球団が、ホームランを打てるスター選手をそろえても、必ずしも1位にはなれない、ということは、今の日本のプロ野球ですでに証明されているので、ビリーの手法に驚きは感じなかったが、当時のメジャーでは画期的だったのでしょう。
下剋上があるからスポーツの世界は面白いのよね~。スカウトにそそのかされてプロ入りし、一流になれずに終わったビリーの半生は、実話なのだろうけど、正直興味なし。そんな話はゴロゴロしているのですし。それより、もっと、データ分析の面白さに突っ込んで描いて欲しかった。まあ、ブラピ主演のハリウッド映画に、そんなマニアックな作品を望むのが無理ですけど。期待していなかったので、ほどほどに楽しめました。2012.5

みんな元気 EVERYBODY'S FINE
カーク・ジョーンズ監督、ロバート・デ・ニーロ、ドリュー・バリモア、ケイト・ベッキンセイル、サム・ロックウェル出演
☆妻を失くした初老の男が成人した子供たちの元を訪れる。子供たちはそれぞれ事情を抱えていたが、父親の前では幸せなふりをしていた…。地味ではあるが、人物の描き方が丁寧で心地よい家族ドラマに仕上がっていた。デニーロ主演でも、日本では未公開なんて、時代を感じました…。2012.6

ラビット・ホール Rabbit Hole
ジョン・キャメロン・ミッチェル監督、ニコール・キッドマン、アーロン・エッカート、ダイアン・ウィースト、サンドラ・オー出演
☆子供を事故で亡くした母と父の苦しみと癒し方を、それぞれの立場から描いていく。心がえぐられるような内容で、見ていて辛かったが、真摯な気持ちで見ることができた。
Jキャメロン・ミッチェル監督作品とは思えない(まったくエロじゃない!夫婦のラブシーンすらない)、大人の人間ドラマに仕上がっていました。ミッチェル監督、やっぱり只者じゃありません。2013.4

レッド・ライト RED LIGHTS
ロドリゴ・コルテス監督、ロバート・デ・ニーロ、キリアン・マーフィ、シガーニー・ウィーヴァー出演
☆科学者マーガレットとトムは、伝説の超能力者サイモン・シルバーの嘘を暴こうと動き出すが…。
スペイン人監督と豪華役者陣、にひかれて見に行ったのだが…。つまらなかったです。2013.2

ルート・アイリッシュ ROUTE IRISH
ケン・ローチ監督、マーク・ウォーマック、アンドレア・ロウ、ジョン・ビショップ出演
☆民兵としてイラクで働いていたファーガスは、親友フランキーの死の知らせを故郷リバプールで聞く。会社側からは、敵の襲撃に遭って死亡したと聞かされるが、フランキーの持っていた携帯電話には、衝撃的な映像が残されていた。
社会派監督らしいシビアな内容で心が痛んだが、一方、ドラマの展開としては納得いかない部分が多々あり。ローチ作品にしては、詰めの甘さが気になった。ファーガスが、執行猶予中でイラクに行けない、という縛りが、ドラマのスピード感を阻害していたし、親友の恋人とすぐに恋仲になったり、謎の女は謎でもなんでもなかったり…。やっぱり、観客が納得できる展開でないと、いくら一流の社会派監督でも評価は辛くなりますね。2013.4

WIN WIN ダメ男とダメ少年の最高の日々
トム・マッカーシー監督、ポール・ジアマッティ、エイミー・ライアン、ボビー・カナヴェイル出演
☆高齢者福祉専門の弁護士マイクは、収入面で不安を抱える日々を送っている。認知症の資産家レオの担当になったマイクは、彼の後見人になって、月1500ドルの収入を得ることを思いつく。そんなある日、レオの孫息子カイルが現れ…。
高齢者の介護と、弱小レスリングチームを絡めた、ちょっとビターなファミリー・ドラマ。
善人なんだけど、ちょっとズルしてしまうマイクや、妻に浮気された小心者の親友、生活のために父親の財産をあてにするダメ娘など、小市民的ダメキャラがしっかり描かれていて、それぞれに感情移入できました。オトナたちに翻弄されるカイル君も無表情ながら熱演。レスリングのうまい素人さんを使ったのも成功した一因かも。人生、甘くないよね。それでも、どこかで折り合いをつけて生きて行かなきゃならないのよね~。少しだけ前向きになりたい気分のときに見ると、よい作品です。2013.4 参考CINEMA:「扉をたたく人」

50/50 フィフティ・フィフティ
ジョナサン・レヴィン監督、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、セス・ローゲン、アナ・ケンドリック、ブライス・ダラス・ハワード、アンジェリカ・ヒューストン出演
☆生真面目な27歳のアダムは、ある日突然、生存率50%のガンであると宣告されてしまう。
身近な人が重病や深い悲しみに遭遇したとき、どう接すればいいのか戸惑った経験がある人は少なくないはず。ウソだろ、と言って本気にしない人、かわいそう、と憐れんではくれるが距離をとろうとする人、無理やり明るくふるまって怒りを買ってしまう人などなど、パターンはいろいろ。どこにも正解はないし、当事者がどう感じるか、なのだけれど、結局は、素直に飾らず、いままでどおりで接することが一番なのかも、と思わせてくれる映画だった。実際に同じ経験をした人が脚本を書いた、ということでそのあたりがリアルでした。「ガン」を口説き文句で使えよ、と言ってくれる親友君のキャラは最高でした。2013.4

RADIO ON
クリストファー・ペティット監督、キース・グリフィス、ヴィム・ヴェンダース製作、デヴィッド・ビームス出演
☆モノクロのスタイリッシュな映像と音楽が印象的なオシャレなPVみたいな作品。70年代当初は、かなり前衛的な作品だったのでしょう。ちょっと退屈ではあったけどね^^;2013.3

ローラーガールズ・ダイアリー WHIP IT
ドリュー・バリモア監督・出演、エレン・ペイジ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ジュリエット・ルイス出演
☆テキサスの田舎町に暮らすブリスは、“ローラーゲーム”に魅せられ、親に内緒でチームに参加。才能を開花させるが…。
10代の女の子の成長を、ローラーゲームに絡めた青春ドラマ。王道の青春ものなんだけど、キャラがしっかり描かれていて、役者も芸達者を集めているので、十二分に楽しめました。バリモア監督、才能あるね。第2のジェーン・フォンダになれそう。2013.3

ワン・プラス・ワン ONE PLUS ONE
ジャン=リュック・ゴダール監督、ザ・ローリング・ストーンズ出演
☆ストーンズが「悪魔を憐れむ歌」をレコーディングする様子と、政治色の強い映像を絡めた実験的映画。ゴダールの70年代の作品は正直、よくわかりませーん。2013.2

ランナウェイズ THE RUNAWAYS
フローリア・シジスモンディ監督、クリステン・スチュワート、ダコタ・ファニング、マイケル・シャノン出演
☆1975年のLA。ジョーン・ジェットはエレキ・ギターを習いにいっても、女だから、と相手にされない。一方で、敏腕プロデューサーのキム・フォーリーは、女性ロックバンド結成をもくろんでいた。
デビッド・ボーイ命の少女シェリー・カーリーは、双子の姉にコンプレックスを持ち、セクシーな口パク歌真似でも、ヤジを飛ばされ、不遇の日々を送っていた。
強烈な衣装で「チュチュチュチュチュ…チェリー・ボム!」を歌う「ランナウェイズ」の姿は、子供ながらに強烈に覚えている。マドンナの先を行っていたんだよね。一発屋の感はあるが、ある意味先駆者。アイドル的売られ方をして消えて行ったが、今はどうしてるんでしょうか。
あの名子役ダコタの変身ぶりには驚きました。ドリュー・バリモアのようにいい役者になってくれるのを祈るばかりです。キムを演じたマイケル・シャノンもいい味だしてました。2012.6

ル・アーヴルの靴みがき LE HAVRE
アキ・カウリスマキ監督、アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダルッサン出演
☆北フランスの港町ル・アーヴル。靴磨きのマルセルの自慢は妻アルレッティ。貧しさの中でも幸せな日々を送っていた。一方、町ではアフリカからの密航者が大勢捕まる事件が発生。一人の少年が逃げ出して、包囲網が敷かれる。
少年を匿い、逃走を助けようとするマルセルと、夫に自分の病を隠し通す妻。心優しい二人の姿に町の人々もひと役買うようになる、カウリスマキ映画には珍しいハートフルな人間ドラマだった。妻役はカウリスマキ映画のミューズ、カティ。相変わらず無表情だけどいい味だしてました。フランスが舞台っていうのも、カウリスマキの遊び心なのでしょうか。ちょっと意外な作風でしたが、楽しめたので○。2012.5

少年と自転車 THE KID WITH A BIKE
ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督、セシル・ドゥ・フランス、トマス・ドレ、ジェレミー・レニエ出演
☆施設で暮らす反抗的な少年シリルは、立ちはだかる教師たちを振り切って父親が暮らしていたアパートへ向かう。だが、父親は引っ越した後だった。自分の自転車があるはずだ、と訴えるが、管理人は聞く耳を持たない。
ある日、美容師のサマンサが、シリルの自転車を買い戻した、と言って施設を訪れる。
シリルはサマンサに、週末だけ里親になって欲しい、と頼む。
親に捨てられたことを受け入れられず、愛を探し求めるシリルのまっすぐな行動に圧倒され戸惑いさえ覚えた。シリルのような子供が目の前にいたら逃げ出したくなるだろうなあ…。
ありきたりな説得では制することができない傷ついた少年の心を、主役のトマス君が見事に表現。オーディションで選ばれた新人とは思えないほど堂々とした体当たり演技だった。
おそらくサマンサは、最初は軽い気持ちで里親を引き受けたのだろう。彼氏に「俺とシリル、どちらか選べ」と言われた時にもし、シリルでなく彼を選んでいたなら、今ごろシリルは少年院暮らしだったかも…。
見ているだけで、シリルに振り回されて、へとへとになったのだが、それだけに、二人の雪解けは心からうれしく思えた。
一見、学校の道徳教材のようなシンプルなストーリーなのだが、シリルの迫真の演技(それはダルデンヌ兄弟の演出力でもあるのだが)が、物語に厚みを与えていた。カンヌ国際映画祭2011グランプリ受賞 2012.4

Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち PINA
ヴィム・ヴェンダース監督、ピナ・バウシュ出演
☆芸術家ピナ・バウシュ率いるヴッパタール舞踊団の名作舞踊の3D映像と、亡きピナとの思い出を団員たちが語っていくアート・ドキュメンタリー。
ピナの「カフェ・ミュラー」を初めて見たのは、アルモドバルの「トーク・トゥ・ハー」。ダンスはもちろん前衛的な舞台にも疎かったのだが、椅子が散らばった舞台の上で、倒れるような舞踊を演じるピナの姿には、大きな衝撃を受けたのを覚えている。このダンスの意図は、正直よくわからないのだが、ユニークでありながら美しい動きに、思わず見入ってしまった。
一度はピナの舞台を生で見たいと思っていたのだがそれも叶わず…。
そんな彼女の舞台をリアルに再現してくれたヴェンダースには大感謝である。
ピナが亡くなっているため、演者は主に彼女の弟子たちなのだが、国籍もフランス、スペイン、ブラジル、韓国など様々で体格も違うので、それぞれ個性的。
男がズボンを下ろすのを繰り返す演目や、キスから抱っこの動きを早送りしていく演目など、笑えるパフォーマンスもけっこうあるのが新鮮で、ますます彼女の劇団に興味を持った。
また、ヴェンダースのアイデアなのだろうが、高速道路の横や、殺風景な工場跡など、お世辞にも綺麗とはいえない場所での踊りもユニークで、見ていて飽きがこなかった。
現代舞踊は、日本よりもヨーロッパの方が人気があるのだろう。(ブラジルでも大野一雄が亡くなったときに、アートセンターで、しばらく追悼映像を流していた。)
機会があれば、ぜひ生で見てみたい。

ドライヴ DRIVE
ニコラス・ウィンディング・レフン監督、ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、ブライアン・クランストン、アルバート・ブルックス出演
☆寡黙な自動車修理工兼スタントマンの男は、母子家庭の隣人アイリーンと知り合い、徐々に心を開き始める。ある日、アイリーンの夫が刑務所から帰還。その夫は、借金をかたに強盗の手伝いを強要されていた。
クールな天才ドライバー、といえばJステイサムを思い出すが、こちらはもっと不器用で純なタイプ。ゴズリングは顔つきのせいか、偏執的で変態チックな役がよく似合うので、ナイスな配役だった。
ストーリーはシンプルでとくに斬新さはないのだが、低予算映画としてはよく出来ている。カーチェイスや、残虐なシーンも見ごたえあり。カンヌで監督賞を受賞したようだが、手堅い作品で、監督の今後にも期待できそう。
隣人を演じたキャリー・マリガンも、かわいらしくてgood。欲を言えば、悪党どもの関係が今一つ分かりづらく、不気味さにかけたかな。カンヌ国際映画祭2011監督賞受賞 2012.3

スーパー・チューズデイ
ジョージ・クルーニー出演・監督、ライアン・ゴズリング、フィリップ・シーモア・ホフマン、ポール・ジアマッティ、マリサ・トメイ出演
☆民主党予備選を控えた選挙事務所で働く若き広報官スティーブンは、スター性のある候補者モリスの当選を信じ、選挙運動に没頭している。そんなとき、対抗馬の参謀から呼び出され、引き抜きの話を打診される。
若きインターン、モリーと一夜を共にしたスティーブンは、モリーの携帯にモリスから電話が入り動揺。二人の仲を追及する。
民主党予備選を舞台に、候補者と側近たちの欲望渦巻く裏の顔にメスを入れた極上の社会派サスペンスだ。
スター候補の裏の顔は薄っぺらなエロ男、忠誠心を重んじる昔堅気の側近は、やり手の若手スタッフを信じようとしない。さらに対抗馬の側近はスティーブンに巧みに近付き、オハイオを牛耳る議員は、選挙の応援と引き換えに当選後の重要ポストを要求…。
若気の至りで、まんまと海千山千の策士らの術中にはまってしまったスティーブンも、後半で一気に反撃に出る。だが、その方法はスカッと気持ちのいい復讐とは言い難く、彼も、数年後には、老獪な権力者たちと同じ道を歩いていくのだろう、という灰色の未来を想像させる…。
まったくもって救いのない、ドロドロの政治の裏側。こんな連中に国が牛耳られているかと思うと、絶望感さえ覚える。もちろん、これはあくまでフィクションではあるのだが、原作者は実際に選挙戦のスタッフだったということで、似たようなことがなきにしもあらず…。
日本の政治家も似たり寄ったりで、権力大好きな連中が、裏で汚らしい取引しているのだろうね。
こんなお先真っ暗な問題提起映画を監督し、自らはダーティーで薄っぺらい政治家を演じたジョージ・クルーニーにはほんとに頭が下がります。
ヒーローものやアクション映画は他の人に任せ、自分はヒットを度外視した社会派ものに拘って、しっかり評価もされているのだから、大したもんです。
そんなジョージの心意気にほだされたのか、俳優陣は芸達者ばかり!アカデミー助演賞常連組がずらーり!彼らの演技も一見の価値ありです。
ハリウッド映画からはしばらく遠ざかっていたが、今年はもう少し、映画館に足を運んでみようと思います。2012.4

捜査官X 武侠
ピーター・チャン監督、ドニー・イェン、金城武、タン・ウェイ出演
☆1917年、強盗事件に巻き込まれた気のやさしいジンシーが悪人を退治した。村人はシンシーを讃えるが、捜査官のシュウは、彼の素性に疑いを持つ。
単純なカンフー映画が見たいと思って見に行ったのだが、予想外にサスペンス色が濃すぎてがっかり。物語は単純なんだから、もっとカンフー見せて欲しかったのに…。せっかくドニーや金城が出てるのに、二人の個性がちっとも生きていなかった。2012.4

ヘルプ ~心がつなぐストーリー~ THE HELP
テイト・テイラー監督、エマ・ストーン、ヴィオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサー、ジェシカ・チャステイン、アリソン・ジャネイ、シシー・スペイセク、メアリー・スティーンバージェン出演
☆舞台は黒人差別が根強いアメリカ南部の町ジャクソン。メイドとして働くエイビリーンは、新聞社に勤めるスキーターに、家事に関するコラムを書くので手伝って欲しい、と頼まれる。スキーターは自分を育ててくれたメイドが姿を消したことに不信感をいただいていたが、両親は理由を明かさない。
 一方、スキーターの幼なじみで、差別主義者の主婦ヒリーは、メイド専用のトイレを作るよう友人たちに進めている。料理上手で昔から働いているメイドのミニーは、彼女と衝突し解雇されてしまう。
 玉の輿にのった若い妻シーリアは、上流育ちでないことでヒリーたちから仲間はずれにされていたが、ミニーをメイドに雇い…。
保守的な町で起こったメイドたちの小さな反乱を、やさしい視点で描いた感動のヒューマン・ストーリー。現実にはもっと激しい嫌がらせや差別があったのだろうか、この映画は黒人差別を描いた社会派ものではない。時代が変わろうしている小さな町の人間模様を、様々な立場から丁寧に切り取った女性映画だ。
虐げられたメイドたち、保守的な世界に疑問を持ち始めたジャーナリストの卵、有意な白人社会を守ろうとする若い主婦、コンプレックスの強い繊細な主婦…。平穏そうに見える小さな町にも時代の波が押し寄せる。
この映画でもっとも悪役なのはヒリーだが、自分の生活や価値観を必死で守ろうとする彼女の態度もわからなくはない。嫌われることは勇気のいることだし…。
若いママたちの嫉妬を扱ったTVドラマっぽい、単純なキャラ設定が若干気にはなったが、若い主婦たちよりも1枚上手な黒人メイドたちの逞しさが楽しめた。
&娘たちの母親や上司を演じている役者は主役級の名女優ばかりなのにも驚き。
ヒリーの母親がシシ・スペイシクだとは、見終わるまで気づかず。
ちなみヒリーを演じた女優はロン・ハワードの娘さんだそうです。2012.4


エンター・ザ・ボイド ENTER THE VOID
ギャスパー・ノエ監督、ナサニエル・ブラウン、パス・デ・ラ・ウエルタ出演
☆東京の裏社会で暮らすドラッグ・ディーラーのオスカーは、警察に踏みこまれ、命を落とす。踊り子の妹リンダは、兄の死を受け入れられず…。
無国籍都市東京を空の上から眺め、混沌とした街と孤独な人間たちを追い掛けて行く…。映像はSFだが内容はインディーズ。世界観はテレンス・マリックに似ているかも。アルゼンチン出身のフランス人、ノエ監督の作品は初めて見たが、この摩訶不思議ワールドにはまれば、好きになれるかも?DVDで見たので、残念ながら睡魔との闘いでしたが…。2012.4

サルサ! SALSA!
ジョイス・シャルマン・ブニュエル監督、ヴァンサン・ルクール、エステバン・ソクラテス・コバス・プエンテ出演
☆クラシックのピアニストだったフランス人のレミは、サルサへの情熱が捨てきれず、クラシックを捨ててラテンの世界へ飛び込む。客が望んでいるのは褐色の肌、と言われたレミは、日焼けサロンで身体を焼き、ボンゴと名前を変えてダンスのレッスンを始める。
サルサのステップ練習の参考に、と思って借りてみたが、高度過ぎてついていけず。物語は極々シンプル。個人的には、音楽やダンスをもう少しじっくり見たかったけど…。ドキュメンタリーではないので仕方ないですね。2012.4

スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと SPANGLISH
ジェームズ・L・ブルックス監督、アダム・サンドラー、パス・ベガ、ティア・レオーニ出演
☆娘を連れてメキシコからLAに移住してきたフロールは、高収入を得るため、ハイクラスの白人家庭で家政婦として働き始める。エキセントリックな主婦デボラに翻弄されながらも、フロールは仕事をこなし、彼らの信頼を得るようになる。
だが、愛娘クリスティーナを別荘に連れて行ったことをきっかけに、二つの家族の関係が少しずつ崩れて行く。
メキシコ人であることに誇りを持っているフロールが、白人家庭で起こった家族の問題に巻き込まれていく様が、丁寧に描かれている。
利発で美人なフロールの娘をデボラがかわいがることで、母であるフロールや、デボラの娘がコンプレックスを感じてしまう、というのは頭では理解できるのだが、デボラも悪気があってやっているわけではないしなあ。
ルーツを重んじる古風なフロール対アグレッシブな典型的アメリカンのデボラ。
この映画は、フロール目線で描かれてはいるのだが、どちらにも良さがある。浮気しちゃってそれを堂々と告白し、泣きじゃくるデボラもかわいいところがあるし…。
夫が、美しくて古風なフロールに惹かれるのは、ありがちな展開。フロールと夫の関係よりも、女同士の戦いや、娘同士の関係をクローズアップして欲しかったかも。キャラがしっかりと描かれているので続編もみたくなった。2012.4

冷たい熱帯魚 COLDFISH
園子温監督、吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵、梶原ひかり、渡辺哲出演
☆熱帯魚店の店長・社本は、娘が万引で捕まったという知らせを受け、後妻の若い妻と引き取りに行く。その場にいた村田という男は、大きな熱帯魚屋のオーナーで、社本一家を店に連れていく。
強引な殺人鬼・村田に取り込まれていく一家の悲劇をエロ&グロテスクに描いた衝撃作。
人間解体のシーンは、思わず目をそむけてしまった。これを映画館で見せられたらちょっとキツイよなあ。力作であるのは認めるが、長谷川和彦の「青春の殺人者」を彷彿とさせる作品で、とくに斬新さは感じず。2012.4



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