サンパウロ国際映画祭08 Mostra08 de SP   10月17日~30日

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2008年で32回目を迎えた「サンパウロ国際映画祭 Mostra08」が、10月17日から約2週間にわたって開催されました。
今年は、現代に生きるブラジル先住民族の抱える問題に鋭くメスをいれたブラジル・イタリア合作映画「Bird Watchers(TERRA VERMELHA)」でスタート。
そして、ラテン系スター、ベニチオ・デル・トロ、ロドリゴ・サントロをゲストに迎えた超大作「CHE」で華々しく幕を閉じました。

ベニチオ・デル・トロ&ロドリゴ・サントロ来場!

映画祭最終日の10月30日、夜7時、フレイカネカ・ショッピングの映画館で2本同時に行われた上映会はどちらも満席。
ラテンアメリカが誇る2大スターのゲスト登場まで、みんなソワソワと落ち着きがありません。
7時10分過ぎ、待ちに待ったゲストが現れると、会場は一瞬どよめき、続いて大きな拍手!!
でも、東京や釜山の映画祭のように、黄色い声も追っかけファンの姿もなく、意外にみんな冷静で、大人の反応。
デル・トロ登場のときに、私は思わず奇声を発しそうになりましたが、周りがあまりにも落ち着いているので、気持ちを押し殺して、座席で一人小躍りしておりました。

photo1 R・サントロはポルトガル語で、B・デル・トロはスペイン語で、プロデューサーのローラ・ビックフォードは英語で挨拶。
トータル5分ぐらいで、もう終わり???
という感じでしたが、デル・トロの姿を拝めただけで十分です。
R・サントロは故郷ブラジルということもあり、装いも雰囲気もリラックス・ムードでしたが、デル・トロは、ちょっと緊張気味。派手なパフォーマンスもなく、シャイな雰囲気が好印象でした。
(写真・会場が暗かったため、ひどい手ぶれ)
彼の出演作は、かなり見ておりますが、「21グラム」の苦悩するデル・トロが私の中ではBEST1です。

上映作品「CHE」は、チェ・ゲバラが参加したキューバのジャングルでのゲリラ戦の様子をドキュメンタリー風に伝えた超大作。
ソダーバーグ監督作品の特徴でもあるハンディ・カメラを使ったリアルな映像が印象的でした。
全編スペイン語、字幕はポルトガル語のみと、私にとってはかなりの悪条件でしたが、デル・トロの迫真の演技は見ごたえがありました。

日系移民100周年

2008年は、日系移民100周年。ということで、日本もかなりクローズアップされていました。シンボルマークは、日系人アーチストのトミエ・オオタケが手掛け、映画上映の前に流れるテーマ曲は、琴の音。奇妙な日本ではなく、ブラジル人の目からみた日本らしさ、がうまく表現されていました。

KIHACHI映画、ブラジル上陸!

日本映画の特集上映では、日本の誇る職人監督・岡本喜八の作品が選ばれ、妻でありプロデユーサーの岡本みね子氏がサンパウロ入りしました。
今回の映画祭では、岡本監督のの作品39本のなかから、東宝時代、独立プロ時代含めて14本の映画が上映されました。
みね子氏は、岡本監督と二人三脚で映画制作した独立プロ時代の苦労話や、オカモト・タッチと呼ばれる独特のリズムをもったカット割りについて、熱く語ってくれました。
かつて、「岡本、狂ったか」と酷評され、1週間で打ち切りになった「殺人狂時代」が、今になって評価されている、という話は印象に残りました。
「失敗作に傑作あり」ということでしょうか。
また、もっともヒットした作品「大誘拐」が、今回の映画祭に持ってこれず残念だったという話もしてくれました。
同時通訳は初めてという不慣れな若い通訳の青年を気遣いながら、 「岡本の映画を見てください。そこに彼の心が入っています」という言葉で締めくくったみね子氏。
夫の夢を信じ、夫と共に生きてきた、たくましいニッポン女性の姿は、同じ日本人女性として、とても誇らしく感じました。

座談会会場;CLUBE da MOSTRA
Espaco Unibanco de Cinema Sala 4 (Rua Augusta, 1475)
10月26日(日)17h30~“TOQUE KIHACHI”

映画祭の楽しみ方

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アジアの映画祭では、遅くても1ヵ月前には、上映作品の情報が公開され、チケット販売も始まりますが、ここは南米ブラジル。ビジネス都市サンパウロであっても、アジアのように用意周到、とはいきません。
毎年、改善されてはいるようですが、なかなかアップされない公式サイトや、開催当日になっても出来上がらないパンフレット、日々変わるスケジュールなどなど、アジアとの違いは多々あります。

2008年の場合、上映作品すべて見ることができるパスポートや、20回または40回分のパック券の販売は、映画祭開始1週間前の土曜日からはじまりました。 チケット配布は、昨年と同じくコンソラソン駅降りてすぐのConjunt National(Av.Paulista, 2073)。
昨年はパック券を買い損ねて、チケットとりに苦労したので、今年は確実にゲット!と、UOLネットの情報を毎日チェック!直前、発売日を間違えて慌てるハプニングもありましたが、なんとか購入できました。
20回券165レアル。全部使いきれるかどうかもわからないし、少々高い気もしましたが、1回8レアルですし、上映4日前からチケットを買えるのも魅力です。
ただ、このパック券を購入できなくても、インターネットで前売りチケットが買えますし、当日、上映1時間前に劇場に行けば、超話題作以外は、購入は可能です。
東京国際映画祭のように、すべて前売りで完売、などということは、ほとんどありません。
そこが南米らしいユルさの良いところ。

そしてもうひとつ、ありがたいユルさは、映画祭終了後も、4、5日間、延長上映があるところ。もし、時間がどうしても合わずに見逃してしまった作品があっても、諦めずに、ウェブ情報をチェックしましょう。
2008年は11月5日(水)まで延長され、使い残したパック券も使うことができました(ただし当日劇場交換のみ)。

&映画祭を楽しむ上で大切なグッズ、カタログとタイムテーブルもゲットしましょう。
パック券購入者は、詳細の載っているカタログとタイムテーブル、そしてポスターの3点セットを10レアルで手に入れることができました。

【チケット】
PERMANENTE INTEGRAL(全作鑑賞可)R$390
PACOTE PROMOCIONAL 20 INGRESSOS(20回券)R$165
PACOTE PROMOCIONAL 40 INGRESSOS(40回券)R$285
INGRESSOS INDIVIDUAIS (1回券・月-木)R$14
INGRESSOS INDIVIDUAIS (1回券・金・土・日)R$18


レビュー、受賞結果

今年の映画祭では、ラテンをはじめとする世界各国の映画、20本以上を鑑賞。
仕事帰りの夜中の鑑賞が続いたので、疲れがたまりましたが、なんとか途中でギブアップせずに完走することができました。
もっとも印象に残ったのはメキシコ映画の「The Desert Within (DESIERTO ADENTRO)」。Rodorigo Pla監督のたぐいまれな才能を感じさせる1本。
そして、ベネチア映画祭でも話題になったイタリア・ブラジル合作映画「Birdwatchers (TERRA VERMELHA)」。
現代に生きるインディオの人々の苦悩、現代社会との摩擦を描いた映画です。
ほか、ブラジルの名俳優、Matheus Nachtergaeleの初監督作「A FESTA DA MENINA MORTA」、
日本人監督がボリビアのウユニ塩湖で暮らす人々の暮らしぶりを描いた「パチャママの贈り物 」、
若いエチオピア人学者が祖国の戦争によって人生を狂わされる「TEZA」などなど、見ごたえのある作品にたくさん出会うことができました。
そして、忘れてはならないのが「CHE」。
ベニチオ・デル・トロの演技はマラビリョーゾ!でした。

各映画のレビューはこちら

【SP映画祭08 結果発表】
コンペ部門の作品賞は、出産を機にノイローゼに陥った若い女性の再生を丁寧に描いたドイツ映画「The Stranger in Me」。
女性監督ならではの、きめ細かな心理描写が秀逸でした。
観客賞のブラジル映画部門では、リオに続いて「Apenas o Fim」が受賞しました。

優秀作品;The Stranger in Me(Emily Atef 監督・独)
優秀女優賞;Susanne Wolff(THE STRANGER IN ME)
批評家賞;Aquele Querido Mes de Agosto(Miguel Gomes 監督・ポルトガル)
ヤング賞;Veronica(Mauricio Farias 監督・ブラジル)

観客賞
海外長編部門;Jodhaa Akbar(Ashutosh Gowariker 監督・インド)
海外ドキュメンタリー部門; Youssou Ndour(Elizabeth Chai Vasarhelyi 監督・米)
ブラジル・ドキュメンタリー部門; Loki(Paulo Henrique Fontenelle 監督)
ブラジル長編部門; Apenas o Fim(Matheus de Souza 監督)
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リオ国際映画祭 Festival do Rio 08     9月25日~10月9日

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2008年のFestival do Rio~リオ国際映画祭は、9月25日からスタート。初参加だったため、あらかじめサイトで情報を、と意気込んでいたのだが、そこはリオ。サンパウロよりもユルイユルイ。映画祭初日を迎えても、公式サイトは更新されず、メールで問い合わせてもナシのつぶて…。

レポート

映画祭開始から1週間後。ヤキモキさせられた公式サイトは更新されたが、チケットの売り切れ情報など、詳細はわからない。当日チケットは取れるのだろうか…。
と、つい、心配グセが出そうになったが、ここはブラジル、なんとかなるでしょー。映画観れなかったらビーチでのんびりすればいいですしね~

10月4日。サンパウロから快適なバスに乗り、夕方、リオ到着。タクシーを使わず、黄色い路線バスに乗車(2.6R$)。
ネットで予約したアパートは、コパカバーナ・ビーチからは少し遠いが、閑静な住宅街にあって雰囲気がいい。サンパウロにはない、しっとりとした余裕のようなものが感じられる。
でも、すぐそばには、Wサレス監督の映画「リオ・ミレニアム」の舞台になったと思われるファベーラの入り口がある。
景色のいい高台にはファベーラ、海のそばには高級住宅街、というのが、なんともリオらしい景観だ(日本なら逆なのだが)。

のんびりする間もなく、地下鉄ボタフォゴ駅から歩いてすぐのEspaco de Cinemaにある映画祭BOX OFFICEへ。街は「ホントに映画祭やってるの?」と、疑うぐらいのんびりムードだったが、さすがに映画館は映画好きであふれかえっている。
ここで映画祭グッズ、プログラム(2R$)とカタログ(20R$)を購入。
映画のチケット代は一般13R$(一部の会場では6R$)。
パックの20回券(130R$)、50回券(260R$)も発売されたようだが、発売日等の情報は得られず。
チケットはサンパウロより若干安いがプログラムとカタログは割高。
ただし、オデオンで上映された平日昼間の上映は一律2R$!

夜は、オデオンで上映されるアルゼンチン映画「La Leonera」を見に行く予定だったが、すでに売り切れの表示が。監督(パブロ・トラペロ)と出演者(ロドリゴ・サントロ)の来場が予想されるので、ぜひ行きたかったのだが…。
せめて外の様子だけでも、と、思ったのだが、激しい夕立が降り始め、断念!
今日は初日だし、軽ーく見られそうなコメディでも、ということで、ボタフォゴ駅降りてすぐの映画館 EstacaoBotafogo で上映していた、サム・ロックウェル&アンジェリカ・ヒューストン主演のシニカル・コメディ「CHOKE」を見に行く。

日系移民100周年

今年は日系移民100周年ということで、ここリオでも日本映画が数多く上映されていた。
北野武監督の「アキレスと亀」、青山監督の「サッド・バケイション」ほか、小林政広監督、山田洋次監督の特集などなど。
宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」も上映予定だったが、何が理由かわからないが、すべてキャンセルになっていた。

映画館

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ゲスト挨拶つきの上映は、おもにセントロの映画館オデオンで行われていた。
それほど大きな映画館ではないが、歴史を感じさせる雰囲気のいい映画館で、地下鉄の駅名もCINELANDIA。上映前には、毎回のように、長い列ができていた(写真)。

プレスセンターは、地下鉄の駅から離れたセントロの Pavolhao do Festival (Rua Barao de Tefe,75,Zona Portuaria) に設置され、監督との座談会等が開かれていた。
地下鉄の駅から遠く、また「どうしても会いたい」というゲストもいなかったため、今回は、一度も訪れず。

また、映画祭は、ボタフォゴ、セントロ等、地下鉄で回れる中心街の映画館のほか、郊外の町BARRAや、GAVEAの映画館でも行われた。
BARRA da TIJUCA の映画館 Barra Point は、シケイラ・カンポス駅からBARRA行きメトロバスに乗り、大ファベーラと、断崖絶壁の岩山を経由して約20分。大通りの途中にある小さなショッピング内にあった。
新しく作られた郊外の街で、歴史や風情のあるリオ中心街とはまったく違う雰囲気である。
ちなみに、BARRAに向かうバスから見えた車窓の景色は、レブロン、サン・コンハードと続く美しい海岸線あり、断崖絶壁あり、そして大ファベーラあり、と、リオらしさが十二分に楽しめる観光バス並みの面白さ。穴場の観光スポットとして一見の価値あり。Vale a pena!

レビュー、受賞結果

【Festival do Rio 08 結果発表】
`はじめてのリオ映画祭では、10本を鑑賞。
もっとも気にいったブラジル映画が優秀賞をとって歓喜したり、
時間合わせに見に行ったデ・パルマ監督の「リダクテッド」が、予想を上回る面白さだったり、
逆にアルゼンチン映画は、ちょっと期待はずれだったり…、と、驚き続きとなりました。コンペ部門の結果は以下。
優秀長編映画賞;Se Nada Mais Der Certo (Jose Eduardo Belmonte監督)
*都会で暮らす3人の男女の無軌道な生きざまを描いたクライム・ストーリー。
今回の映画祭で一番、気にいった作品だったので、この受賞は心からうれしい!
一押しの個性派俳優ジョアン・ミゲル(Estomagoの主演俳優)も出演しています。

優秀ドキュメンタリー賞;Estrada Real da Cachaca (Pedro Urano監督)

優秀監督賞;Matheus Nachtergaele監督 (A Festa da Menina Morta)
ブラジル屈指の個性派俳優。主演ダニエルの名演技と個性的な映像美に魅せられた。初監督作品とは思えぬ質の高さにびっくり!

優秀男優賞;Daniel de Oliveira (A Festa da Menina Morta)
エキセントリックなゲイの祈祷師役を熱演。たちまちダニエルの虜になりました。

優秀女優賞;Caroline Abras (Se Nada Mais Der Certo)

優秀短編賞 Melhor curta de ficcao
"Blackout" Daniel Rezende監督、W・マウラ出演
二人の男が倉庫で怪しげな会話をしていると、そこにカメラがあることに気づき…。 ブラックな笑いがちりばめられた洒落たコメディ。

特別賞;Jards Macale - Um morcego na Porta Principal(Marco Abujamra監督)

選外優秀賞;Apenas o Fim (Matheus Souza監督)
別れを決め、最後のデートをする若い男女のキュートなラブ・ストーリー。 観客賞も受賞。監督も訪れた会場では、二人の会話に笑いが絶えませんでした。

FIPRESCI優秀作品賞;頭のない女 A Mulher Sem Cabeca (Lucrecia Martel監督)
日本で開催されたラテン映画祭でも上映されました。残念ながら未見です。

【観客投票結果】
優秀長編映画;Apenas o Fim (Matheus Souza監督)
優秀長編ドキュメンタリー;Loki(Paulo Henrique Fontenelle監督)
異色のアーチスト、Arnaldo Baptistaの活動を追った音楽ドキュメンタリー。

リオ映画祭では、映画以外にも、カフェ・コロンボ、オスカー・ニマイヤーのニテロイ現代美術館などなど、観光も楽しみました。詳細はこちら
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