旅先で出会ったCINEMAたち

釜山編 pusan
2004.10.10-10.12

2046

2004年10月7-15日に開催された「第9回釜山国際映画祭」に参加してきました。

映画「チング」の舞台、釜山の町へは、日本からたったの2時間、のはずでしたが…。


10月9日*日本 ---旅立てないっ
10月10日*日本→釜山 ---やっと旅立つ
10月11日*釜山  ---旅日記スタート
10月12日*釜山→日本
釜山映画祭の主な上映作品


10月9日

テレビの台風情報を気にしながら旅支度をする。
−大型で強い台風が関東地方に上陸します。成田エクスプレスは午後から運休です…。
どこのチャンネルも同じニュースを流している。自称“晴れ女”を撤回しなければならないようだ。空港に1泊する覚悟で家をでる。

4:00PM
高速バスは定刻どおり空港に到着。風雨は強くなってきたが、飛行機も飛んでいる。ホッとして、チェックインカウンターに並ぶ。フライト情報では定刻出発の予定。
ところが…。
30分もしないうちに、カウンター内で不穏な動き。航空会社の係員が全員集められ、何か指示されている。
ついにきたか…。
案の定、係員から「6時15分発のNW5便は飛べません」と告げられる。
(以下、係員との押し問答)
Q.夜まで待って飛ぶことはないんですか?
A.ほぼ、無理です。
Q.明日の便に振り替えてもらうとか、もしくは払い戻しはできますよね?
A.お客様のチケットはITチケットのため、私どもでは何も対応できません。お買い求めの旅行会社に聞いて下さい。
Q.昨日、台風のときはどうするのか、旅行会社に聞いたら「航空会社に聞いて下さい」っていわれたんですけど…
A.それは間違っています。ITチケットは私どもでは何もできません。
Q.そんなあ。旅行会社はもう営業時間外だし、連休だから旅行が終わるまで連絡とれないんですよ。私たちが支払った飛行機代はどうなっちゃうんですか。丸々損するってことですか?
A.私どもに言われましてもどうすることもできません。電車が止まる前にはやくお帰りになられたほうが…。
Q.近くのホテルをとってもらうことはできないんですか?
A.ご紹介するだけならできますが、すでに近くのホテルは満室に近いです。

 半べそ状態(ほんとはキレる寸前)の私をあざ笑うかのように、航空会社の係員は笑顔でビジネスライクに答えるだけ。
そうこうしてるうちに、嵐はどんどんひどくなる一方。パニック状態で頭も働かないので、とりあえず家に帰ることにする。

7:00PM
家に帰宅するが、どうにも腹の虫が収まらない。同行者から「空港のHPで確認したら、NW5便は翌日便となっている」と連絡が入ったため、すぐに空港のインフォメーションに電話してみる。
が、電話はつながらない。このときすでに、航空会社とは連絡がとれない時間になっていた。

9:00PM
時間がたてばたつほど、悔しい気持ちがフツフツと湧いてくる。台風のせいとはいえ、責任をなすりつけあう態度に腹が立ったので、航空会社と旅行会社に苦情のメール&ファックスを送る。 何ヶ月も前から楽しみにしていた釜山行きが、こんなにもあっさりダメになってしまうなんて…。おまけに、払い戻しも振り替えもできないなんて、ひどい!
怒りがおさまらないまま、就寝。

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10月10日

6:00AM
起床。まだ、昨日の興奮が冷めていない。
ダメで元々で成田空港に電話したところやっと通じた。
Q.昨晩出発予定のNW5便が翌日便になったとHPに書いてあったんですが、何時発でしょうか。
A.時間はまだ出ておりませんが………。お近くにお泊りですか?
Q.いいえ。家からなんですが。 A.午前中、早い時間に飛ぶ可能性がありますので、すぐ空港に来られたほうがよいと思いますよ。
半分、寝ぼけていたのだが、慌てて同行者に電話して、とりあえずもう1度空港へ向かうことにする。

7:00AM
きっと乗れる! そう祈りながら、嵐のおさまった道をマイカーのミニカで飛ばす。

9:00AM
空港に到着。
同行者が一足早く着いていて、NW5便がたった今、朝9時10分に出発したことを教えてくれた。
「そんなあー。せっかく来たのに…」
朝6時に電話した段階で出発は未定だったのに、9時に出発した、とはどういうこと???
チケットを持っていた客をはなから無視してない??
 と、キレそうになったが、どういうわけか、航空会社の係員は昨日とはうって変わってとても親切。「IT券だから…」などとは一言も言わず、別の便に乗れないか一生懸命探してくれた。

10:00AM
結局、午前便は満席で取れず、夕方6:15発のNW5便なら乗れるという。まだ、朝の10時なんだけどなあ。係員が、空港の食事券か、近くのホテルの部屋を用意すると言ってくれたので、部屋で待つことにする。ほんとは今ごろ、釜山にいて、映画みてるはずなんだけど…。
でも、クヨクヨ考えても仕方ないので、部屋でテレビを見ながらのんびり過ごす。
*教訓1:ITチケットというのは係員の言ったとおり、基本的には振り替えも払い戻しもできないチケットだそうです。ただし、絶対的な規則ではなく、今回のように「特別措置」もあるようです。
ですから、しつこい客だと思われても、気にせず苦情は即、言うべきです。泣き寝入りほどばからしいものはありません。私は土曜の晩に苦情メールをいれたおかげで、NWからお詫びのマイルをGETしました。

*教訓2:たとえ飛行機が飛ばない、と言われても、しばらく空港でねばるか、近くのホテルをとって待機すべきだったかもしれません。私は、言われたまま素直に家に帰ってしまったために、翌日便を逃しました。もっとも、空港で徹夜してクタクタになって旅立つのがいいかどうかはわかりませんが。
6:00PM
さすがに今日は定刻出発。のはずが、大阪からの乗り継ぎ便の到着が遅れ、1時間近く出発が遅れる。まだ、昨日の台風の混乱が尾を引いているようだ。ここまで待たされたのだからイライラしても仕方ない、と達観する。

9:00PM
約2時間のフライトでやっと釜山へ到着!
気持ち的には26時間、飛行機の中で待たされていた感じ。こんなに釜山を遠く感じるなんて…。
空港から繁華街の南浦洞までは、タクシーで30分ぐらい。タクシー代は1万6000W。ちょっと高い気がしたが、もう文句言うのも疲れたので、素直に払う。 南浦洞にあるフェニックスホテルは、場所は最高なのだが、かなり古い。ちょっと、がっかりしたけど、慣れれば古さも気にならない。
外は、夜10時過ぎだというのに、大勢の人でにぎわっている。PIFF(Pusan International Film Festival)広場には、ステージが組まれ、町は映画祭一色。お世辞にも綺麗とはいえない街並みだけど、アットホームな雰囲気である。

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10月11日

7:00AM
起床。目当ての「あわび粥」を食べにガイドブックで見つけた「済州家(チェジュガ)」 へ。写真と同じ緑色のお粥。けっこうなボリュームである。味は見た目よりも淡白だったので、キムチや佃煮と一緒に食べる。店は日本人だらけ。さすがに、地元の人は、朝から1万Wもするお粥は食べないのだろう。

プレス1 食後、地下鉄を乗り継ぎ、釜山映画祭メイン会場の海雲台へ。南浦洞から約40分ほどかかる。ちょっと遠いなあ。
海雲台はリゾート地で、町の雰囲気も空の色も空気も、南浦洞とはまるで違う。
駅前の「sfnz」というビルの中に、釜山映画祭のプレスセンターがあり、そこで、プレスIDカードをもらう。システムがよくわからなかったが、プレスIDで見られるチケットは限られていて、 すでに売り切れてしまった作品も多い。10時に始まるW・ベンダースの新作「Land of Plenty」も、 11時に南浦洞で上映する戦争映画「R−Point」も、すでに間に合わない&売り切れと言われ、泣く泣く諦める。

プレス 悔やんでも仕方ないことなので、午前中の映画鑑賞は諦め、海雲台のビーチを散歩。お天気もよく、暖かくて、気持ちいい。
豪華リゾートホテル「パラダイスホテル」で記者会見があったので、ちらっと様子を見に行く。
会見場は、こじんまりしていて、アットホームな雰囲気である。日本の「山形ドキュメンタリー映画祭」の主催者が賞を授与されていた。
最近の映画業界では、韓国と日本は友好関係にあるのだろう。
釜山映画祭のラインナップを見ても、日本の映画がたくさん上映され、俳優や監督が大挙して映画祭に参加している。お隣のアジアの国とはいえ、日本の映画が異国で話題になるのは、ちょっとうれしいものである。邦画に対しては、つい評価が厳しくなりがちだけど、異国にくると、やっぱり自分は日本映画が好きなんだなあ、と感じる。

2:00PM
 南浦洞に戻り、フィリピンの元大統領夫人イメルダ・マルコスの半生を追ったドキュメンタリー映画「イメルダ」を鑑賞。(映画評はこちら
 客の入りはいまいち。エンターテイメント作品ではないし、月曜の昼間だからまあ、こんなものだろう。英語のナレーションがさっぱり聞き取れなかったため、半分は寝てしまう。

プレス1 4:00PM
PIFF広場にはだいぶ人が集まってきている。映画祭グッズを売る店、チケットのディスカウントショップなどに若者が集まっている。

5:00PM
 続いて、韓国の奇才ホン・サンス監督の「女は男の未来だ」を鑑賞。ホン・サンス監督らしい味のある人間ドラマだった。(映画評はこちら)映画上映の前に、お客さんの一人が前に呼ばれ、何かプレゼントされていた。おそらく入場者数が100番目か何かだったのだろう。
プレス1
 夜になると、PIFF広場は人、人、人だらけ。ここは、新宿歌舞伎町のような場所なのだろう。ステージ上のスクリーンには、映画祭の様子が映し出され、誰だかわからないけど、ゲストも来ていた。
 映画館の前で記念撮影する人がいたり、スターのカレンダーもらうために長蛇の列ができていたり…。 一部のコアな客だけでなく、みんなが映画祭を楽しんでいて、大学の学園祭のような雰囲気である。
次の映画まで時間がないので、焼肉もチゲ鍋も諦め、屋台でパジョン(ねぎ焼き)とキムパブ(海苔巻)を食べる。 おいしくて安くて、店のおばちゃんも親切。
8:00PM
 8時の回はどれもプレス用チケットでは売切れ。だが、なぜか一般では売っていたので、 無国籍映画「パラダイス・ガールズ」のチケットを一般チケットで買う(5000W)。
夜の回ということもあり、映画館はさすがに満席。適当な席に座っていたら「指定席だよ」と言われてしまう。 慌ててチケットをみたら、なんと、偶然にも自分の席の隣に座っていた。(映画評はこちら

10:00PM
さすがに今から海雲台に行く気もしないので、おとなしくホテルに帰って寝ることにする。明日にはもう日本に帰らなければならないなんて、早すぎる…。

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10月12日

9:00AM
映画は11時からなので、その前に家への土産を買いに行く。チャガルチ駅前の農協は大きいスーパーで、品物も豊富。 生活必需品が何でもそろっている。おばちゃんが作ってくれたキムチとエゴマキムチを安く買う。 真空パックにしてくれなかったけど、安さには代えられない。


プレス1 11:00AM
韓国のコメディ映画「最後の狼 ウルフ・リターンズ」
を見る。すでに韓国では上映された映画だったため、客は外国人が多い。 (映画評はこちら
映画終了後、外に出ると、PIFF広場ではちょうどキム・キドク監督(写真・左)がゲストに呼ばれていた。残念ながら言葉がわからないので、写真だけとって、最後の腹ごしらえに出かける。
表通りから1本中に入った細い道には、食べ物屋がずらりと並んでいる。ガイドブックで見つけた店「南浦サンゲタン」は、一見わからりづらくて、通り過ぎてしまったが、鶏のマークを頼りに見つける。
客は地元の人と観光客が半々ぐらい。数種類のキムチと一緒に、グツグツと煮立った「サンゲタン」登場。なぜか、お酒まで一緒にでてきた。
店員さんが、塩で味付けし、ぐちゃぐちゃと混ぜてくれる。
うまそう…。
ソウルで食べた「サンゲタン」とまたちょっと違い、味はかなり淡白。自分で塩を入れて調整しながら食べる。
朝鮮人参やナツメ、ニンニクのエキスがジワジワ胃に染みて、身体がぽかぽかしてくる。風邪気味だったけど、元気を取り戻した気分になる。
 今回は、焼肉も鍋も食べれなかったけど、食の楽しみはまた来るときまでとっておこう。
食事が終わると、もうすることもないので、空港へ。道は空いていて、30分もかからなかった。釜山の空港はソウル国際空港とは比べ物にならないほど、小さくて何もすることないので、ぼんやりと飛行機を待つ。  今回の旅は、日程の半分以上、空港で過ごしていた気分だったが、たまにはこんなこともあるだろう。
また、来年。今度は、もうちょっとゆっくり釜山&映画を楽しむ旅にしたいものだが、旅にハプニングはつきもの。 これもまた、よき思い出となりました。

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【第9回釜山国際映画祭受賞結果及び主な上映作品】
あまりにも短い滞在で、ほとんど映画も見られなかったので、以下におもな上映作品(韓国映画限定)を紹介します。
映画祭初日の10月7日には野外上映場で開幕式が開かれ、韓国の俳優アン・ソンギ(「眠る男」)と、女優イ・ヨンエ(「JSA」)が司会を担当。
オープニング作品は香港のウォン・カーウァイ監督の「2046」だった。 
地元韓国からは五十八作品が出品。注目は、二つの国際映画祭で監督賞を受賞したキム・キドク監督の二作品 (ベルリンでの受賞作「サマリア」とベネチアでの受賞作「3-iron 空き家」)。
カンヌで作品賞を受賞したパク・チャヌク監督の「オールドボーイ」も上映された。
観客賞はアサノ、キョン2、アベチャンら日本でおなじみのスターが出演した「survive style5+」(関口現監督)。
 また最優秀アジア新人作家賞には「チャーミング・ガール(ジョンアという女)」を出品したイ・ユンギ監督が受賞。

 【主な上映作品】 ★は鑑賞した作品
★Woman is the future of man 「女は男の未来だ」 ホン・サンス監督(「豚が井戸に落ちた日」)、ユ・ジテ(「オールドボーイ」「春の日は過ぎ行く」)、キム・テウ、ソン・ヒョナ出演 映画監督志望のホンジュンは恋人と別れ、アメリカに留学。その後、ホンジュンの後輩ムノは彼女に近づき関係を持つ。7年後、再会したムノとホンジュンは、酔った勢いで彼女に会いに行くことに…。
★The Wolf Returns「最後の狼」 ク・ジャホン監督、ヤン・ドングン、ファン・ジョンミン出演 都会でのきつい捜査に疲れきった刑事がムイ村というド田舎に赴任。村の派出所は、仕事がほとんどなく、元刑事は昼寝三昧の毎日。ところが、その派出所が閉鎖になると知った男は、大きな事件を画策する。
3-iron「空き家」
ベネチア映画祭監督賞受賞作
キム・キドク監督、イ・スンヨン出演 空き家を捜して寝泊りしている男が、忍び込んだ家で、夫に虐待される女と出会う。
Samaritan girl「サマリア」
)ベルリン映画祭監督賞受賞作
キム・キドク監督、クァク・ジミン、ハン・ヨリム出演 旅行資金のために、チャットで会った男と援助交際をする女子高生ヨジンとチェヨン。ある日、ヨジンの目の前でチェヨンが自殺。ヨジンは今までチェヨンが寝た男たちに会いに行く。
Old Boy「オールドボーイ」
カンヌ映画祭グランプリ受賞作
パク・チャノッ監督、チェ・ミンシク、ユ・ジテ出演 ある男が何者かに拉致され、15年後に開放される。犯人の目的は何だったのか…。男は執拗に犯人を追っていく。
Spin kick「回し蹴り」 ナム・サングッ監督、キム・ドンワン、ヒョンビン、ジョアン出演 高校のテコンドー部が、過去の栄光を取り戻そうと奮闘する。
R-Point (アル・ポイント) コン・スチャン監督(「カル」の脚本)、カン・ウソン、ソン・ビョンホ出演 ベトナム戦争末期。ホンバウの戦闘でただ一人生き残ったチェ・テイン中尉は、部隊長から、死亡したとされながら相次ぐ救命要請を寄せてくる18人の隊員の生死を確認するよう命ぜられる。
Low life「下流人生」 イム・グォンテク監督(「風の丘を越えて」)、チョ・スンウ(「ラブ・ストーリー」)、キム・ミンソン出演 イ・スンマン大統領率いる自由党政権末期。高校生のテウンは友達の敵討ちに行った際、代議士候補の息子にナイフで刺されてしまう。事件をきっかけに、テウンは代議士候補の娘と恋に落ちるが…。
The big Swindle 「犯罪の再構成」 チェ・ドンフン監督、パク・シンニャン、ヨム・ジョンア出演 派手に銀行強盗をした五人の男だったが,盗んだ金が消えてしまう。誰の仕業なのか追跡していくうちに予想外の展開に…。
Someone Special「知ってる女」

チャン・ジン監督(「ガン&トークス」)、チョン・ジェヨン、イ・ナヨン出演

プロ野球の2軍外野手チソンは、恋人から振られ、解雇通知を受けた日、やけくそになって飲みつぶれる。翌朝、目を覚ますとそこはモーテルの1室で…。
The bad Utterences「チンピラの言い方」 チョ・ボムク監督 都会生活に憧れる10代の若者が、おしゃれな江南地区に引っ越してくる。だが、華やかな生活とはほど遠く、失敗続きで…。

My mother, the Marmaid 「人魚姫」
パク・フンシッ監督、チョン・ドヨン(「スキャンダル」)、パク・ヘイル(「殺人の追憶」)出演 郵便局で働くナヨンは、失踪したち父親を探しに両親の故郷に向かう。そこで、自分とウリ2つの顔をした20歳の母親と遭遇する。


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