最新のラテン映画&DVD(ブラジル、メキシコ、アルゼンチンetc…)をワンポイント診断。
大絶賛から辛口コメントまで、BOSSA独自の視点で切り込みます。
MEXICO BRASIL ARGENTINA CUBA COLOMBIA
PERU URUGUAI CHILE、BOLIVIA e outro
中南米映画アーカイブ(2010~21)
タイトル
監督・出演☆解説&感想 鑑賞日時
【ブラジル】
ピンク・クラウド A nuvem rosa
監督・脚本:イウリ・ゲホバージ、出演:ヘナタ・ジ・レリス、エドゥアルド・メンドンサ、カヤ・ホドリゲス、ジルレイ・ブラジウ・パエス、ヘレナ・ベケル/触れると10秒で死に至るピンク色をした謎の雲が出現し、外出制限で人々は家から一歩も出られない状況に。ジョヴァナは初めて会ったばかりの男性ヤーゴと、二人きりで部屋に閉じ込められる。ピンクの雲は消えないまま、月日は過ぎ、二人は子どもを授かるが、二人の関係には亀裂がはいり、家庭内別居が始まる。
閉じ込められた状況は世界中が経験したことなので、十分に感情移入できた。ただし閉そく感、恐怖心を経験したこともあり、予想通りの展開で新鮮さは感じず。運よくコロナはワクチンが出来て、ただの風邪レベルにまで落ち着いたが、もし、3年前の今頃のように、即死に至る病のまま、今も閉じ込められていたら、彼らのようになっていたかもしれない。ピンクの雲が出来てから誕生した子どもは、雲が大好きになるという設定は恐ろしく感じたが、そうなる気持ちもわからなくはない。今の赤ちゃんたちは、マスクをしない人を怖がるようになるかもしれないなあ。人間は単に生かされている生き物にすぎないことを実感した。2023.1
私はヴァレンティナ VALENTINA
監督:カッシオ・ペレイラ・ドス・サントス/出演:ティエッサ・ウィンバック|グタ・ストレッサー/ブラジルのミナス州の小さな街に引っ越してきた17歳のヴァレンティナ。トランスジェンダーであることを伏せて、女子として学校へ通い始めるが、校長からは、父親の署名がないと通称は使えない、と言われてしまう。母子家庭のヴァレンティナは友だちの手を借り、父親を探そうとする。ある夜、仮装パーティで、悪魔の仮装をした男に下半身を触られたヴァレンティナは犯人捜しを始める。同時に、ヴァレンティナは男だと揶揄する映像が拡散され…。
性的マイノリティの差別を扱った映画は数多く見てはいるが、これは高校生の話で、実際にトランスジェンダーの子が演じていることもあり、リアルかつストレートに偏見への苦しみが伝わってきた。ヴァレンティナと親友の関係性にはほっこりさせられたが、一方で差別をするマッチョたちのやり方が暴力的で辛いものがあった。母親は聖人ではないのだが、ヴァレンティナとしっかり向き合っていたのがよかった。説教じみたことは言わないけど、ヴァレンティナの苦しみを受け止めていた。監督自身がゲイということなので、誰かモデルになった人もいるのかも。
とても良い映画なので、もっとたくさんの人に見てもらいたいのだけど…。映画の日なのに客が一人って、それはないでしょ、でした。2022.4
これは君の闘争だ ESPERO TUA (RE)VOLTA
監督:エリザ・カパイ/2013年6月、ブラジル・サンパウロの路上で公共交通料金賃上げに対する大規模な抗議デモが起きた。初めはバス料金20セントに対する要求だったものが、次第に物価上昇や重税、人種差別など、様々な問題に対する抗議へと広がっていった。そして2015年10月、サンパウロの高校生たちが公立学校の予算削減案に抗して自らの学校を占拠し始めた。
デモが起こった背景を良く知らなかったので、勉強になった。学生たちのパワーに頼もしさを感じた。未来が見えない香港のデモと違い、ブラジルのデモは少しは光が見えるのが救い。デモも祭りにしてしまう国民性もあるのでしょう。同じことの繰り返しで正直、飽きてしまった。もう少し違う切り口も欲しかった。2022.3
いんちきーズ os salafrarios
監督:ペドロ・アントニオ 出演:マルクス・マジェーラ | サマンタ・シュムーツ |
カイート・マイニエル/絵の贋作で詐欺を働くクロビスのもとに義理の妹ロアーニがやってくる。詐欺師にキッチンカーをだまし取られたロアーニは、兄の詐欺に手を貸すことに。
ブラジルらしいおバカ丸出し、マシンガントーク炸裂のコメディ。全編爆笑コントが続くので、見ていて疲れるが、何も考えたくないときに見るには最高のコメディです。2022.1 Netflix
プリジョネイロ 7 PRISIONEIROS
監督:アレクサンドル・モラット 出演:クリスチャン・マリェイロス | ロドリゴ・サントロ |
ブルーノ・ホーシャ/サンパウロ州の農村部カタンドゥバで家族と暮らしていたマテウスは、生活のためにサンパウロ市に出稼ぎに行くが、そこでは自由を奪われた囚人のような暮らしが待っていた。廃品工場の経営者ルカに対しマテウスは反発するが…。
ブラジルの労働者の過酷な現実をシビアに描いた作品。非人道的な扱いに反発しながらもマテウスが徐々に彼らのやり方に染まっていってしまう現実が痛々しい。美形俳優ロドリゴ・サントロが汚れ役に徹していた。顔だけじゃないロドリゴにブラボー。
辛い展開
人生のコンマ O Vendedor de Sonhos
ジャイミ・モンジャルジン監督、 Dan Stulbach, Cesar
Troncoso出演/心理学者ジュリオが高層ビルから飛び降りようとしているところに、なぞの男が近づき、声をかける。彼の言葉で自殺を踏みとどまるが…。 人間の内面に訴えかけるスピリチュアルもの。説教くさいので苦手なタイプの映画だった。2022.2
Netflix
【メキシコ】
ニューオーダー NUEVO ORDEN
監督:ミシェル・フランコ
出演:ナイアン・ゴンサレス・ノルビンド | ディエゴ・ボネータ |
モニカ・デル・カルメン/富豪の大豪邸で娘マリアンの結婚パーティが開かれているが、町では暴徒と化した市民が、街を破壊していた。そんな中、かつての使用人が、病気の妻のためにカンパしてほしいとやってくる。マリアン以外の家族は適当にあしらうが、マリアンは助けたい一心で、使用人と一緒に街へ出かける。
行き過ぎた格差社会の行く末を描いているようにみえて、実は過去のホロコーストや軍政下のアルゼンチンの凄惨なジェノサイドを彷彿とさせる悲劇へとつながる。出口なし、すくいなしの展開。フランコ監督の悲劇的世界観は、とんがってた若いころなら好きだったけど、今は、少しでも希望を持ちたいと思ってしまう。年とるとはこういうことなのかも。すごいとは思うけど、辛すぎて苦手な映画。2023.4
フリーダ・カーロの遺品 -石内都、織るように
監督:小谷忠典
出演:石内都/メキシコを代表する女性画家、フリーダ・カーロ。2004年、死後50年を経て、遺言により彼女の遺品数百点が公開された。そして2012年、その遺品を撮影するプロジェクトが立ち上がり、日本を代表する女性写真家・石内都のもとに依頼が届く。メキシコシティにあるフリーダの生家にしてフリーダ・カーロ博物館でもある通称“青い家”で行われた、3週間にわたる撮影の過程に密着したドキュメンタリー。フリーダの遺品を通して過去を想像するというよりは、石内さんという一人のカメラマンの気持ちの変化に焦点があたっていたのがユニークだった。友人が自殺したのをしって号泣するシーンとかもあり、海外で暮らす孤独感などを勝手に想像したりした。いつかメキシコに行ってみたい。2023.3
バルド、偽りの記録と一握りの真実 Bardo(o falsa cronica de
unas cuantas verdades)
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、ダニエル・ヒメネス・カチョ出演/LAに住むドキュメンタリー作家は、久しぶりに故郷メキシコへと帰郷することに。彼は、自分のルーツであるメキシコを愛しながらも、故郷の家族とは距離を感じる。米国では異国人扱いされ、故郷でも疎外感を感じてしまった男は、過去の記憶や幻想に取りつかれていく。自分とは何ものなのか。そんなことをずっと考えさせられる哲学的な作品で、正直よくわからなかったのだが、一観客である自分も、自身を見つめ直しながら映画を見る、という今までにない感覚は新鮮だった。
コメディ色がもう少しあれば、さらによかったのだが…。イニャリトゥ監督は、今までの作品とは違うテイストに挑戦していて、攻めてるなあ。さすがです。ダニエルって、今まで癖強い役が多かったのだが、今回は等身大の役だった。思っていたより若くてイケメン。冒頭の砂漠のシーンなど、スクリーンならではの美しさも楽しめた。配信で何度か見直してみると、また違った感想が生まれそう。奥が深い映画でした。2022.12
母の聖戦 La Civil
監督:テオドラ・アナ・ミハイ、出演:アルセリア・ラミレス、アルバロ・ゲレロ、アジェレン・ムソ、ホルヘ・A・ヒメネス/シエロのひとり娘ラウラが犯罪組織に誘拐された。要求に従い20万ペソの身代金を支払うがラウラは帰ってこない。警察に相談しても相手にされず、別居中の夫も頼りにならない。ラウラは一人で犯罪組織を監視しはじめ、密かに軍の中尉に協力を依頼する。
娘思いのやさしい母だったラウラが、娘を取り戻すために危険な組織に近づいていく過程がリアルに描かれていて見ごたえがあった。この作品にはモデルがいて、最初はドキュメンタリーを撮る予定だったが、あまりに危険すぎるのでフィクションにしたとのこと。さらにこのモデルになった母親は殺害されてしまったという監督の話を聞き、背筋が凍った。身近な人でも信用できない閉そく感の中で生きる苦しみは想像を絶するものがある。米国でも安全ではないのだが、中南米から多くの人々が命をかけて米国に密入国しようとするのは、経済的理由だけではなく一般市民でも死と隣り合わせという社会背景があるのだろう。メキシコの犯罪ものは何作も見ているので食傷気味だったが、監督も主役も女性ということで、比較的暴力シーンも少なく心理描写が丁寧で見やすかった。2022.11
コップ・ムービー Una pelicula de policias
★
アロンソ・ルイスパラシオス監督、ラウル・ブリオネス、モニカ・デル・カルメン出演/女性警官テレサと相棒のモントーヤは警察官になった経緯と日常を独白する。やがて二人は恋をしてラブ・パトロールと冷やかされるようになる。ここまではドキュメンタリー風のフィクション。その後、映画は撮影裏話というドキュメンタリーに変わり、さらに、実際のテレサとモントーヤが登場。そして、警察組織の腐った現実へと話が進んでいく。今まであまり見たことがないような構成で次は何がくるの?っていうワクワク感もある。フィクション部分では恋話もあってコミカルなのだが、後半はぐっと笑えない現実に進んでいく。映像も凝っていてて飽きさせないし、音楽もスタイリッシュ。ルイスパラシオス監督(『グエロス』『Museo』)は将来有望。メキシコの映画界は人材豊富だ。ベルリン国際映画祭2021芸術貢献賞受賞。2022.1
Netflix
人生はコメディじゃない EL COMEDIANTE
監督:ロドリゴ・グアルディオラ、監督・主演:ガブリエル・ナンシオ、出演カサンドラ・シアンゲロッティ |
アドリアーナ・パス/売れない劇作家ガブリエルは引きこもりがちな日々を送っている。それでもある女性から宇宙人と交信できる、といった話を聞かされたり、子どもが欲しいという女友だちから精子を提供してほしいと言われるなど、少しずつ生活に変化も見え始め、新しい生き方を考えはじめるのだが…。
こだわりが強くプライドの高いガブリエルが、ユニークな女性たちに翻弄されていく展開は興味深いのだが、くどい台詞が多くてちょっと退屈。もう少しブラックコメディなテイストだったら楽しめたのに。残念。グアダラハラ映画祭では撮影賞受賞。2022.1
Netflix
ダンス・オブ・41 El baile de los 41
監督:ダビ・パブロス(『囚われた少女たち』)、出演:アルフォンソ・ヘレラ エミリアーノ・スリータ マベル・カデナ フェルナンド・ベセリル
ロドリーゴ・ビラーゴ/1900年初頭のメキシコ。大統領の娘と結婚した議員イグナシオには若い男性の恋人がいた。イグナシオは密かに入会していた貴族的なゲイの会合に恋人を誘う。一方、妻は夫の冷たさに心を痛めるていた。ゲイの会合が密告され、41人がさらし者にされた、という衝撃の実話を映画化。どちらかというとゲイとは知らずに結婚してしまった妻に感情移入してしまった。イイグナシオを演じたアルフォンソ・ヘレラのルックスには惚れ惚れ。2022.1
Netflix
【アルゼンチン】
コンペティション Competencia oficial
ガストン・ドゥプラット監督、ペネロペ・クルス、アントニオ・バンテラス、オスカル・マルティネス出演/大富豪の起業家から映画製作を依頼された天才女性監督は、世界的大スター俳優と、老練な一流舞台俳優を呼びつけ、演技指導を始める。エゴが強すぎる3人はまったく気が合わず…。
大がかりな舞台装置のような空間を使い、ユニークな演技指導をするシーンは舞台を見ているような感覚になった。3人の会話劇が中心なので、字幕だと今一つ、皮肉などが伝わらない感あり。スター3人を起用しながら、とんでもない方向にいく、というストーリーなのだだが、この映画もスター3人を起用しながら、退屈な展開になってしまっていた。残念。2023.3
アルゼンチン1985 ~歴史を変えた裁判~ ★
サンティアゴ・ミトレ監督、リカルド・ダリン、ピーター・ランサーニ出演/1985年。暗黒の軍事独裁政権下で行われた数々の殺人、誘拐、拷問、人権侵害を指揮した軍の幹部らを裁くためにストラセラ検事は立ち上がるが、幹部が命じたという証拠を探すのは困難を極める。若き副検事や法を信じる若者たちの手を借りることで、徐々に証人たちも集まり…。アメリカ映画でもよく見られる法廷ものの定番ではあるのだが、検事をヒーロー扱いせず、若者たちの奮闘ぶりにもスポットが当たっているので、青春ドラマとしても見ることができた。ミトレ監督の作品は硬いイメージだったが、この映画は重いテーマの割にはとっつきやすかった。非人道的な行いを徹底的に裁くスタイルは米国でも好まれるので、GGだけでなく、アカデミー賞も受賞ありそうだ。2023.1
Amazon にて
雨あられ Granizo
Marcos Carnevale監督、Guillermo FrancellaPeto
MenahemRomina
Fernandes出演/人気者のお天気キャスターは、大粒の雹が降ることを予測できず、非難の的になる。娘の住む故郷に身を隠すが、娘には冷たくされ…。最初はコメディなのだが、途中から雲行きが怪しくなり…。アルゼンチン映画らしいコメディとB級ホラーが混ざりあった映画だった。「笑う故郷」にテイストは似ているのだが、エンディングには?だった。2022.9
Netflix
コブリック大佐の決断 Koblic
セバスティアン・ボレンステイン監督、リカルド・ダリン、オスカル・マルティネス、インマ・クエスタ出演/軍事政権下、空軍のパイロットのコブリックは、生きたまま人を空まで運び、突き落とす軍のやり方に絶望し、身を隠すことを決意する。誰も知らない村で暮らし始めるが…。身を隠しているのに、女と不倫してしまうのが、なんでかねえ。そこがアルゼンチン男らしいのでしょうか。ダリンが主演の割には、今一つな内容でした。2023.1
Amazonにて
ミリオンダラー・スティーラー El robo del siglo
アリエル・ウィノグラッド監督、ディエゴ・ペレッティ、ギレルモ・フランセーヤ、パブロ・ラゴ、ルイス・ルケ出演/2005年、アルゼンチンの都市。フェルナンドはある銀行の下に広い下水道が通っていることに気付き、そこからトンネルを掘って銀行に侵入できないかと考える。実際にあった銀行強盗の話をドラマ化した作品。前に実在の犯人が出てくるドキュメンタリーを見ていたので、ドラマ的に新しさもななく…。実在の人物の方が個性的だったというのもあるので。こちらを先に見てた方が楽しめたのかも。残念。2023.1
Amazon にて
悪夢は苛む DISTANCIA DE RESCATE
監督:クラウディア・リョサ
出演:マリア・バルベルデ | ドロレス・フォンシ |
ヘルマン・パラシオス/スペインから幼い娘と共にアルゼンチンの田舎に引っ越してきた若い母アマンダは、隣人カローラから息子のダビが幼いころに病気になった話を聞かされる。心理的な怖さがじわじわ伝わってきた。リョサ監督の前作も見ているのだが、テイストが違う。謎の隣人を演じたドロレスは何もしていないのに怪しげな雰囲気がよく出てきた。病気はおそらく村の水質汚染が原因なのはわかるのだが、そこには踏み込まず一人の女性の不安感にしぼった演出はさすがです。2022.8
Netflixにて
逃走のレクイエム Plata Quemada (2000年)
マルセロ・ピニェイロ監督、レオナルド・スバラーリャ、エドゥアルド・ノリエガ、ドロレス・フォンシ出演/1965年のブエノスアイレス郊外。双子と呼ばれるネネとアンヘル、そして怖いもの知らずのクエルボらは現金輸送車を襲撃。大金を奪い、ウルグアイに逃げるが、次々に仲間が捕まり…。「俺たちに明日はない」「明日に向かって撃て」を彷彿とさせる逃亡劇。冷静なネネをレオナルド・スバラーリャ、自由人のアンヘルをエドゥアルド・ノリエガが演じている。美しい男二人の関係が見どころ。実話が元になっているとのこと。原作も読んでみたくなった。2022.7
セルバンテス文化センターにて
明日に向かって笑え! La Odisea de los Giles
監督・脚本:セバスティアン・ボレンステイン、出演:リカルド・ダリン、ルイス・ブランドーニ、チノ・ダリン、ベロニカ・ジナス/2001年アルゼンチン。元サッカーのスター選手フェルミンは、放置されていた施設で農業組合を作るため出資を募る。住民たちの協力により資金が集まるが、現金を銀行に預けた翌日、金融危機で預金が凍結され、さらに悪徳弁護士に彼らの資金をだまし取られてしまう。
アルゼンチンの金融危機を背景にした市民たちの逆襲を描いている。前半はシリアスな悲劇が続くので、これってコメディ?と思ったが、後半はグッとスピード感が出てきてワクワクさせられる展開。キャラクターの強い出資者たちだけだと正直、華がないのだが、そこにフェルミンのイケメンの息子も絡ませることでエンタメ色もプラスされ、楽しく見ることができた。カタキ役のアタフタ感、間抜け感もケッサクです。2021.6
【キューバ】
【コロンビア】
MEMORIA メモリア
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン 出演:ティルダ・スウィントン
| エルキン・ディアス |
ジャンヌ・バリバール/頭の中で鳴り響く謎の爆発音に悩まさる女性が、その原因を探ろうする。理解するのは無理だとは思っていたのだが…。よくわからない…。森の中の長回しのシーンにはひきつけられるものあり。後半、魚の形をした謎の物体が出てきて、これは「2001年宇宙の旅」なのかあ?とも思ったのだけど。過去と現在と未来の出会い、みたいなものなのでしょうか。最後までそれって、必要?と思ったのだが、妹との関係性。音と映像はアートでした。2022.3
ラ・ハウリア La Jauria
監督:アンドレス・ラミレス・プリード、出演:ジョジャン・エステバン・ヒメネス/ある犯罪を犯して厚生施設に送り込まれた青年は、そこで肉体労働を強制される。南米らしいよくある作品で、特に新しさも感じず。2022.10
TIFFにて
【ペルー】
パクチャ
監督:ティト・カタコラ/ペルーアンデス高地のアイマラ族に伝わる、アルパカの毛刈りの儀式を撮影したドキュメンタリー。アルパカたちが可愛かっただけに祭りのお供えにされたのは気の毒ではあったが、まあ仕方ないか。濃い毛色のアルパカは貴重なんだ、ということも初めてしまった。黒いアルパカもいたのにはびっくり。2022.7
セルバンテス文化センターにて
名もなき歌 CANCION SIN NOMBRE
監督:メリーナ・レオン、出演:パメラ・メンドーサ |
トミー・パラッガ |
ルシオ・ロハス/1988年、情勢不安により夜間外出禁止のリマでじゃがいもの街頭売りをしている先住民の女性ヘオルヒナ。妊娠中の彼女は、妊婦に無償医療を提供するというラジオの宣伝を聞きある産院を訪れ無事女児を出産する。だが、赤ん坊は検査をすると言って連れていかれたまま戻ってこない。警察や裁判所は有権者番号のない彼女を相手にしてくれず、藁にもすがる思いで新聞社に押し掛ける。一方、記者ペドロは、ゲイであることを隠しながら暮らしていた。実際に起こった事件が基になっているという。欧米では子どもができない夫婦などが養子を貰うのは割と日常的に行われているようだが、その裏で誘拐、売買が行われている、という事実に驚愕した。子どもを養子に貰うなら実の母親のことも知るべき、とは以前から思っていたのだが、誰かわからないとか写真だけで済ませると、こういう犯罪が起こるうる。貧しい先住民のためまともな社会保障も得られない現実がヒシヒシと伝わってきた。モノクロ映像も役者の演技もよかった。ただ記者がゲイであることは、ちょっととってつけた感がある。マイノリティへの差別も描きたかったのだろうけど、盛り込みすぎに感じた。2022.7
セルバンテス文化センターにて
アンダーグラウンド・オーケストラ
エディ・ホニグマン監督/パリの地下鉄構内、あるいは街角で、さまざまな音楽家が思い思いの楽器を演奏し、糧を得ている。ベネズエラやサラエボ、ルーマニアから移民としてやってきた彼らの奏でる演奏と、過酷な現実を切り取った音楽ドキュメンタリー。国や事情は違えど故郷を離れた人々の寂しさは同じ。異国の地で懸命に生きる彼らに感情移入できた。とても良質の映画でした。2021.11
ペルー映画祭にて
忘却
エディ・ホニグマン監督/ペルーの首都リマに生きる老バーテンダー、路上パフォーマンスで日銭を稼ぐ若者や子どもたちの日常を追ったドキュメンタリー。サンパウロと似ているなあ、と思い出しながら見てました。2021.11
ペルー映画祭にて
ユートピアクラブ 消えた真実
ヒノ・タッサラ監督、レンゾー・シューレル/ロッサーナ・フェルナンデス・マルドナード/カルロス・ソラーノ出演/2002年7月、若者に人気のリマのクラブ「ユートピアクラブ」で火災事故が起き29人の若者が命を落とした。遺族たちは杜撰な経営を行っていたクラブのオーナーを訴えるが、政治も絡みまっとうな裁判が行われないでいた。ジャーナリストのフリアンは遺族や現場にいた人物にコンタクトをとり、真実に迫っていく。
実話の映画化。ホワイトカラーの恵まれた家族が事件によって悲劇に見舞われる、という、国際映画祭などではあまり取り上げられない内容だったので新鮮だった。映画の構成は拙さを感じもどかしかった。前半のドキュメンタリー風なテイストと、最後のドラマチックな展開のバランスが悪くて、唐突な感じがした。ハリウッドでリメイクすれば、もっと面白くなりそうな内容ではあった。2021.12
ペルー映画祭にて
【ウルグアイ】
【チリ, ボリビア、パラグアイ、ベネズエラ、エクアドル、グアテマラ、パナマほか】
1976 (チリ) ★
監督:マヌエラ・マルテッリ監督、アリン・クーペンヘイム、ニコラス・セプルベダ、ウーゴ・メディナ/ピノチェト独裁政権下のチリ。医師の夫がいる裕福な主婦カルメンは司祭から、足に傷を負った若い男の世話を頼まれる。反体制派への弾圧が続く中、カルメンは、密告や尾行の恐怖に怯えながらも、男の世話を続ける。
遺体や拷問など、直接的な描写をあえて排除し、不穏な音楽と、カルメンの表情だけで恐怖心を描く心理描写が秀逸。シンプルな展開なのだが、カルメンの気持ちに感情移入して飽きずに見れた。監督は1976年に亡くなった祖母のことを想像して、この映画を作ったとのこと。独裁政権下を描いた作品は数多くみてきたが、今までの作品とはまた違った角度から描いていて興味深かった。監督は、「マチュカ」に出演していた少女とのこと!名作なので、こんなに立派なクリエーターに育っていたことがとても嬉しいです。TIFFにて 2022.10
真珠のボタン EL
BOTON DE NACAR
監督:パトリシオ・グスマン/西パタゴニアには、水の遊動民(ノマド)として生きた先住民がいた。ある時、西パタゴニアの海底でボタンが発見された。そのボタンはかつて祖国と自由を奪われた先住民への迫害の歴史を語り、さらにはピノチェト独裁政権下で政治犯として海に葬られた人々の記憶へとつながっていく。パタゴニアの雄大な自然の風景から、先住民の悲しい歴史へ。そして軍政時代、多くの行方不明者が飛行機から海へ落とされた虐殺の歴史へとつながる社会派ドキュメンタリー。3部作のラストを飾るにふさわしい、チリという国の負の歴史を静かなトーンで表現していて、見ごたえがあった。Amazon
2022.6
カナルタ 螺旋状の夢 KANARTA: ALIVE IN DREAMS
監督:太田光海/日本人監督が、かつて首狩り族として恐れられたシュアール族の村で村長夫婦の家に住み込み、アマゾンのジャングルで大自然とともに生きる彼らの日常を見つめるとともに、そうした営みの中で培われ受け継がれてきたユニークかつ奥深い世界観に迫っていくドキュメンタリー。
先住民族の村長がサービス精神が旺盛で、キャラクターが魅力的なので、飽きずに見ることができた。アマゾンに生息する薬草の話など、興味深い。妻が創るユカの煮込みスープには、唾を入れることで塩味と酵素でうまみがでるという。唾を入れるというのが現代人にとってはちょっと引くのだが、考えてみればそれは生き物の知恵の一つ。一方、彼らは原始的な生活だけでなく、町に出て水の浄水設備を要求したり、息子に高度な学問を受けさせたりしており、現代の生活と伝統的生活、両方を上手く折り合いをつけて生きているのがリアルだった。先住民族だってテレビでサッカーの試合は見て興奮するし、お洒落な洋服は着たいし、ジャングルを歩くために頑丈な長靴を履く。二択ではなく両立している生活に好感が持てた。主演俳優賞が貰えそうな個性の強いキャラクターとの出会いにアッパレです。2021.10
ベネズエラ)
報復の街をあとに ~ペドロ12歳の旅立ち~ La familia
監督:
グスタボ・ロンドン・コルドバ/ベネズエラの下町で暮らすペドロは、ある少年とトラブルになり彼を刺してしまう。被害者がスラム街に住む子供だと知ったペドロの父は、息子を連れて町を出る。貧困層の日常で起こった悲劇を描いた作品。富裕層の家の壁塗りやパーティーの給仕をしながらも、父子は日々の暮らしもままならないという現実が痛々しかった。生きるのに精いっぱいの父を見ながら、反抗的だった息子の態度が徐々に変化していく過程は見どころ。ではあるのだが、今一つ話に入り込めず。2022.10
Gyao
パナマ)
チャンス! メイドの逆襲 CHANCE
監督:アブナー・ベナイム 出演:ローサ・ロレンゾ、アイダ・モラレス、フランシスコ・ガットルノ/大統領選に立候補した実業家の夫と富裕層出身の妻のもとで働く二人のメイドトーニャとパキータ。10年もの間働いてきたが給料は2カ月も未払いだ、コロンビアで暮らす息子の授業料が払えないと訴えるパキータだが、夫婦は無視。トーニャとパキータは一家を軟禁。
派手に見えても中身は借金だらけという富裕一家のもとで働くメイドの下剋上をコミカルに描いている。パナマが舞台だが、格差社会のブラジルでもよく描かれる世界と共通点が多い。面白く見れました。2022.3
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