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ブエノスアイレス国際映画祭08レポート

Buenos Aires 2008.4.8-4.14

初アルゼンチン

laplata

2008年4月8日、サンパウロから、飛行機でわずか3時間で、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスへ。
快晴の上空から見た泥色の大河ラ・プラタは、悠然と大地に根を張っている。
これが大陸を流れてきた大河の河口なのか…。
島国日本ではお目にかかれない雄大な景色に少々興奮する。

定刻の2時にブエノスアイレス到着。
エザイア空港は、大国の首都にある国際空港のわりには、とてもこじんまりしている。まるで那覇空港のようだ。
着いて早々の第一印象は、
人少なーい、ATMがなーい、T/Cが使えなーい。
そして、サービス悪ーい。
ナイナイ尽くしの空港だ。

空港バス(leonバス38ペソ=約1300円)に揺られて約45分で市内へ。
サンパウロに比べて蒸し暑いが、坂がないので街歩きはしやすそうだ。
町の雰囲気、住んでいる人々の顔は、サンパウロとはまるで違う。
ブエノスは、あきらかにブラジルとも日本ともまったく違う、異国情緒の漂う街だ。
ホステルに荷物を置き、さっそく地下鉄(スブテ)に乗って映画祭のメイン会場ABASTOショッピングセンターへ。
地下鉄はなんと0.9ペソ(30円!)サンパウロの5分の1である。
ちなみに、スーパーで買った水は1.25ペソ(40円)、ビール2.2ペソ(75円)。これでもインフレだそうです。
ブエノスに赴任したかった…。

ABASTOショッピングセンターのあるB線(赤線)は、元丸の内線の車両が使われていて、所々に日本語の表示がある。こんなに遠くで日本のアンティークが大事に使われていることがうれしく、親しみを感じる。
ただし、乗客は、陽気ですぐ話しかけてくるブラジル人とは明らかに感じが違い、なんだかみんな冷たそう。ほとんどが鼻スジがすっと通った白人で、体つきも華奢である。
さっそく地下鉄の駅を降り間違えてしまい慌てるが、ブラジル人風に気やすく、「queria voltar(戻りたい)」
と話しかけたら、隣にいた女性は「?volver?」と、言って、親切に教えてくれた。
見かけは冷たそうだが、単にブラジル人のように人なつこくないだけのようだ。
ポルトガル語も満足に話せない私だが、着いて早々、スペイン語とポルトガル語の微妙な違いに気づかされる。

ちなみにブエノス滞在1週間で覚えたポ語とス語の微妙な違いは以下。意味は通じるが、使い方が違う単語が多々あり。
・ ドアの表示;押はempujeでポ語のempurreとほぼ同じだが、引くは、アルゼンチンではtire。ブラジルではpuxe。
・ 「戻る」はポ語ではvoltar。ス語では volverアルモドバル映画でしっかり学んだはずが、とっさに出てこなかった。
・ 映画の「ingresso(入場券)はどこで売ってるの?」と聞いても「?」って顔されてしまう。ス語では「entrada」というそうです。
・ 朝の挨拶はBuenos Diasだと思っていたら、みんな、ボンヂーア、と言っている。「ポル語話してるの?」と、友人に確かめたら
Bien dia と、言っているそうです。でも、私はボンヂーア、で通していました。


ブエノスアイレス国際映画祭

4月8日
映画祭初日、事務局でプレス用のパスをもらうが、映画のカタログは在庫切れ、といわれてしまう。
初日から在庫切れ?ちょっと解せない。
フリーで配っていたスケジュールと地図は、すべてスペイン語。さらに、映画の制作国が載っていない。
国際映画祭、と銘打ってはいるが、アルゼンチン国内向けの映画祭、といった感じである。
映画のラインナップは、欧米ものがほとんどで、南米映画は品薄だ。予想していた映画祭とはちょっと違うかも…。
それでも、毎日、プレス用の試写は午前中にあり、一般用の映画のチケットは1日2枚づつ、10時から配られる、と教えてもらう。
とりあえず映画を見ることだけはできそうだ。

オープニングは、4月8日の夜8時からTeatro 25 de Mayoで行われたが、会場が遠いし、ブラジルでロングラン中のドキュメンタリー映画「Jogo de Cena」だったので、無理して見に行く必要もないか、と、翌日に備える。

4月9日
朝10時に事務局へ行き、見たい映画を伝えるが、思うようなチケットはとれず。 釜山映画祭のようにはいかないようだ。
初日1本目はアルゼンチンのドキュメンタリー映画「Construccion de una ciudad」。田舎町で暮らす市井の人々にインタビューしたほのぼのドキュメンタリー。
2本目は、メキシコの若手俳優ディエゴ・ルナが監督したドキュメンタリー「J.C.Chavez」。英語字幕がなくて最初は戸惑ったが、メキシコの元人気ボクサー、チャベスの栄光と挫折の映像と、本人への密着取材を織り交ぜた見ごたえのある作品。D・ルナ、監督として開花するかも?次回作にも期待大である。

4月10日
1本目はアメリカのミシシッピが舞台の家族ドラマ「Ballast」。孤独な男と母子が奇妙な縁で近づいたり離れたりしながら少しずつ寄り添っていく。静かなドキュメンタリータッチの映画だが嫌いじゃない。銃を手にしないと人と向き合えない少年、という設定がいい。Lance Hammer監督の将来性を感じた。
2本目は、サンタフェ通りにある映画館で、アキ・カウリスマキの「Sonic Mirror」。
すでに各国の映画祭で上映されている作品だが、ここブエノスでは初めて、ということで、劇場前の道に長い列ができている。小洒落た若者が大勢。さすがカウリスマキである。
ジャズ・ドラマーBilly Cobhamが、サルバドールの打楽器グループ「Male de Bale」の子供たちと一緒に演奏したり、オーストリアの養護施設でコンサートを行った模様を追った音楽ドキュメンタリー。演奏シーンとインタビューが上手に構成されていて、ライブ会場にいるような気分になった。大満足!
プレス用チケットをゲットできなかったcinema cosmo(Callao駅近く)へ行ってみると、一般用チケットは簡単に入手できた。6ペソ(約200円)という安さ。普段の映画は15ペソだそうだが、やはり映画祭は特別価格のようだ。ということで、3本目はフランス映画「Actress」を鑑賞。期待以上に面白く、隣に座っていたオバさんも笑いっぱなしでした。

4月11日
1本目はアルゼンチンの「El sueno del perro」。あまりに退屈で退出者続出。
2本目は、メキシコ映画「Ano Una」。10代の若者の淡い恋心を写真とモノクロームでつづった洒落たコメディ。
3本目は、スペインの「Pas a Nivell」。 海の家でバイトする若者の怠惰な日常をそのまま描いていたが、見ている側も退屈に…。
というわけで、この日は3本中、2本が退屈モード。まあ、こういう日もあるでしょう。気を取り直して、明日に期待!

4月12日
1本目はアルゼンチンのドキュメンタリー「El pais del diablo」。インディオのルーツを追ったドキュメンタリー。
2本目は、アルゼンチン映画「Los paranoicos」。何をやってもうまくいかない若者の日常をコミカルに描いた青春ストーリー。

4月13日
日曜の朝。この日は、朝一番でドイツ映画界の奇才ヘルツォークの新作ドキュメンタリー「Encounters at the end of the world」の上映がある。ダメもとで、プレス用チケットがあるか聞いてみるが、品切れ。やっぱりねえ。
即、一般用チケット売り場に向かうが、すでに長蛇の列。日曜の朝ですからねえ。
それでも諦めず並んでいたが、目の前の電光掲示板には、Esgotada(売り切れ)の文字が…。あーあ。
残念だが、諦めも肝心。ヘルツォーク作品には、きっとどこかで再会できる、と期待して、別の作品を見に行くことにする。
気を取り直して見た1本目は、2007年のバルセロナ映画祭ノミネート作品「Yo」。スペインの港町が舞台のちょっと変わったミステリー。2本目は、チリ映画「El cielo」。パタゴニアの島で暮らす人々の厳しい暮らしを描いた悲しい物語。
3本目、閉めはやっぱりアルゼンチン映画で、ということでアルゼンチンのインディーズ映画「Luego」。雨の日曜の午後、ということもあり、会場はおしゃれな若者たちでごったがえしている。
若い女性監督も来場していたのだが、挨拶はそっけない。上映後、質問を受け付けたが、誰も手を上げない。おしゃべり好きのブラジル人に慣れてしまっていたので、反応の違いに驚く。けっこうみんな映画を楽しんでいたんだけどねえ。

というわけで、はじめてのブエノスアイレス映画祭では、計13本を鑑賞。言葉の問題もあり、うまくチケットがとれなかったりもしたが、1年目はこんなものだろう。 雰囲気を味わえただけでも満足の映画祭だった。

【映画祭コンペの結果】
インターナショナル部門
ballast作品賞:Intimidades de Shakespeare y Victor Hugo (Yulene Olaizola監督・メキシコ)
監督賞:Lance Hammer監督(「Ballast」) -左・写真
特別賞:Profit Motive and the Whispering Wind(John Gianvito監督・米)
Una semana solos (Celina Murga監督・アルゼンチン)
男優賞:リー・カーション(「Help Me Eros」)
女優賞:Liu Dan(「Night Train」)

アルゼンチン映画部門
優秀作品賞:Unidad 25 (Alejo Hoijman監督)
監督賞:Gonzalo Castro監督 (「Resfriada」)
特別賞:「suden」

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ブエノスアイレスの街の様子
(写真をクリックすると拡大サイズでご覧いただけます。)

obe サン・ニコラス San Nicolas
オベリスコという白い塔がそびえたつ中心街は、人と車でいっぱい。地下鉄(スブテ)の乗り換え地点にもなっています。歴史のあるコロン劇場もこの場所にあります。
ちょうど、北京オリンピックの聖火リレーが行われた日だったので、中国の旗を持った人たちが大勢集まっていました。
ウワサでは、マラドーナも聖火リレーに参加したとかしないとか。生マラドーナを見れず残念!

5月広場
 Plaza de Mayo
歴史のある建物に囲まれた5月広場も一見の価値あり。
ブエノスアイレスのかつての栄光を物語る素晴らしい眺めです。
写真中央のピンクの建物(カサ・ロサーダ)は1800年代に建てられた大統領府。
広場から4ブロック先に在るカフェ「トルトーニ」は、1858年に建てられた歴史のあるカフェで、アンティークの小物や、絵画がたくさん飾られていました。(写真右下)

1 2 tortoni

pa パレルモ PALERMO
中心街から、地下鉄D線に乗って、プラサ・イタリア駅で下車。15分ほど歩くと、パレルモの商店街にたどり着きます。
こじんまりとしたお洒落な店が並び、街路樹もとてもキレイ。のんびり散歩して、疲れたらカフェで休む。 そんな休日を楽しみたいお気に入りのスポットです。 日本に比べると皮製品が格段に安いので、ついつい財布のヒモが緩むかも。
歩き疲れたので、アイスクリーム屋のベンチで休んでいると、杖をついたお爺さんがやってきたので、ちょっとおしゃべり。スペイン語はほとんど話せないのですが、ポルトガル語と英語でなんとなく会話ができました。

re レコレータ RECOLETA
映画祭メイン会場のABASTO向かいのバス停から124番のバスに乗ると、サンタフェ通りを経由してレコレータという高級住宅街にたどり着きます。
エビ―タのお墓のある墓地を中心にしたレコレータは、高級ブティックと、ゴシック調の豪華マンションが立ち並び、人と車でごった返した中心街とは別世界。

parq 訪れた日がちょうど日曜だったため、ブティックは全部閉まっていましたが、その代わり、広場でアート市が開かれていました。
アクセサリーや家具、バッグなど、洒落たアート製品がたくさんあり、広場に併設したショッピングモール「ブエノスアイレス・デザイン」にはレストランも入っています。
あいにくの曇り空で真冬並みに寒かったので、公園を見ながらランチでも、という気分にはなりませんでしたが、寒い中、大勢の人が集まっていました。

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ホテル

ブエノスアイレスは、洋服や交通費はブラジルや日本と比べて、格安なのですが、ホテルの料金は思ったほど安くはありませんでした。
今回の旅では、インターネットでホテル探しを敢行。
便利なサン・ニコラス地区のホステルと、callao駅近くの三ツ星ホテル、そして、アメリカ資本のホテルに泊まってみました。
ホステルでは、バックパッカーの人たちと旅情報の交換ができる、という利点がありますが、バスルームが男女兼用で落ち着かなかったり、鍵が古くて一度締めると開かなくなるなど、不便も感じました。(バスルーム兼用個室で30USドル)

次に泊まった「callao nuevo hotel」は、古くて小さいホテルですが、部屋は広くバスルームもとてもきれい。 エアコンが壊れていたり、大通り沿いで、昼間は騒音がひどいなど、不満もありましたが、ホステルに比べたら、居心地はよかったです(1泊US50ドル)。

最終日に泊まった「Beat Western Hotel」には、部屋に電子レンジがあり、TVではアメリカのドラマが見れる、といいう利点がありましたが、1泊80ドルは、ちょっと割高感がありました。

食事

アルゼンチンといえば、肉、ということで、金曜の夜は、ブエノスに住んでいる友人と、肉の鉄板焼き(パリジャーダ)を食べにいきました。
店には8時ごろ着いたのですが、人は誰もいない…。
ちょっと寂しいな、と思っていたら、30分もすると人が続々やってきました。
味はとてもシンプルな塩味で、牛の首筋の肉(脂?)は、はじめて食べる食感でおいしかったです。10時過ぎに店を出たのですが、店の前は長蛇の列。ブエノスでは、週末の夜は9時以降がディナー・タイムのようです。
昼には、定食屋で野菜を注文したのですが、茹でただけのキャベツ、かぼちゃ、人参、ジャガイモが山盛り出てきたときには、思わずのけぞってしまいました。
あまり、調理をせず、素材のまま出すのがブエノス風?
また、フードコートの軽食屋でヤキソバを頼んだら、パンがついてきたのにも、びっくりしました。アルゼンチンは、ブラジルと違い、主食はパンのようです。
サンタフェ通りにあったパン屋でかったエンパタッタ(チーズや、ひき肉、ほうれん草などが入ったパイ)は、とってもおいしくて、サンパウロまで買って帰りました。

タンゴ

ダンスの心得はまったくありませんが、タンゴの本場アルゼンチンに来て、ダンスを見ないで帰るのはもったいない。
ということで、ホテル近くのテアトロ・アストラルで始まったばかりのタンゴSHOW「Miguel Angel ZottoのTANGO×2」を見に行きました(2階席60ペソ=約2千円)。
te はじめてみる生のタンゴ。プロの足裁きと、決めポーズの美しさに、うっとり…。
ダンスというのは、優雅に見えますが、実はすごい運動量なんだろうなあ。
客席は、2階席までほぼ満席。年配の人が圧倒的に多かったです。 ちなみに隣に座っていたのは南米一周旅行をしているというオーストラリアの熟年夫婦でした。
SHOWが終わったのは12時近くでしたが、土曜の夜だったので、レストランはもちろん、本屋も開いていて、大勢の人でにぎわっていました。ですから、危険を感じることなく、ホテルまで徒歩で帰宅。真夜中ということを忘れてしまいそうになりました。

帰国
st 帰国日の4月14日は、前日の悪天候がうそのように、晴れ渡っています。
でも、空気は冷たく、日本でいえば秋晴れ、といった感じ。
どこかへ遠出したい気分でしたが、時間もないので、フロリダ通りで買い物。見始めると止まらないのがショッピング好きの女のサガ。
時間ぎりぎりまで歩き回り、慌ててホテルに戻って、ハイヤーで空港へ。
来たときとはうって変わり、道も空いていて30分もしないで到着。
この距離で80ペソ(約2700円))はちょっと高いな、と感じましたが、 運転手とのカタコトおしゃべりは楽しかったので、素直に支払いました。
悪名高いアルゼンチン航空ですが、行きも帰りもほぼ定刻通り。快適な空の旅でした。(写真はリバープレートのサッカー場)
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